光ファイバおよびそれを用いた光デバイス
【課題】 波長変換やOPA等の広帯域化が可能な光ファイバを提供する。
【解決手段】 光ファイバ10は、全長での平均零分散波長λ0において、周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下であり、長手方向に沿った零分散波長の変動が全長で±0.6nm以下である。光ファイバ10は、最大屈折率N1および外径2aを有する中心コア部11と、最小屈折率N2および外径2bを有するディプレスト部12と、最大屈折率N3を有するクラッド部13と、を少なくとも備える。各部の屈折率は「N1>N3>N2」なる関係を満たす。クラッド部の屈折率を基準として、中心コア部の比屈折率差をΔ+とし、ディプレスト部の比屈折率差をΔ−としたときに、差「Δ+−Δ−」が2.2%以上であり、中心コア部およびディプレスト部それぞれの外径の比Ra(=2a/2b)が0.2〜0.7の範囲にある。
【解決手段】 光ファイバ10は、全長での平均零分散波長λ0において、周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下であり、長手方向に沿った零分散波長の変動が全長で±0.6nm以下である。光ファイバ10は、最大屈折率N1および外径2aを有する中心コア部11と、最小屈折率N2および外径2bを有するディプレスト部12と、最大屈折率N3を有するクラッド部13と、を少なくとも備える。各部の屈折率は「N1>N3>N2」なる関係を満たす。クラッド部の屈折率を基準として、中心コア部の比屈折率差をΔ+とし、ディプレスト部の比屈折率差をΔ−としたときに、差「Δ+−Δ−」が2.2%以上であり、中心コア部およびディプレスト部それぞれの外径の比Ra(=2a/2b)が0.2〜0.7の範囲にある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高非線形性の光ファイバ、および、この光ファイバを用いた光デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
非線形光学現象を用いた波長変換等において、分散シフト光ファイバ等の高非線形性光ファイバは、非線形光学現象を発現させる媒体として用いられる(例えば特許文献1を参照)。このような用途の光ファイバの開発は、これまでは、非線形性の向上や分散スロープの低減に主眼が置かれている。しかし、分散スロープが低減すると、零分散波長の変動が大きくなってしまう。したがって、零分散波長の変動の低減が重要である。また、波長変換帯域の向上にとって重要な伝搬定数βの4階微分値β4には注意が払われていなかった。
【0003】
光ファイバの伝搬定数βの4階微分値β4を低減した方が帯域が拡がることは、例えば非特許文献1に記載されている。また、例えば、非特許文献2には、伝搬定数βの4階微分値β4が−5.8×10−56s4/mである光ファイバを用いた広帯域OPA(光パラメトリック増幅)が報告されている。しかし、この非特許文献2の第978頁の「B.Experimental Setup for OPA Gain Measurement」欄には「分散の変動が大きい」との記述があり、また、4階微分値β4の低減も充分ではない。非特許文献3には、4階微分値β4他のファイバパラメータの最適化を実施しているが、零分散波長の変動や直交偏波のカップリングなど実ファイバで大きな問題になる現象が考慮されていない。
【0004】
このように、光ファイバを利用する側から見たファイバパラメータの提案はあるが、光ファイバを製造する視点からは検討されておらず、提案されるようなパラメータを有する光ファイバを製造するのは困難であった。例えば、非特許文献4等には、ファイバ長100mで変換帯域91.3nmを有する光ファイバや、ファイバ長100mで変換帯域110nmを有する光ファイバが知られているが、光ファイバを単純に短くしたのみで分散パラメータの最適化はなされていない。
【0005】
非特許文献5には、中心コア部,ディプレスト部およびクラッド部を含む所謂W型の屈折率プロファイルを有する光ファイバについて、典型的な4階微分値β4の値として1.0×10−4ps4/km(=1.0×10−55s4/m)が示されている。実際には、W型の屈折率プロファイルであっても、4階微分値β4の値を調整可能であるが、4階微分値β4の重要性は考慮されていない。また、分散スロープが+0.013ps/nm2/kmと小さくすることで広帯域化を図っているが、実際には零分散波長の変動が大きいためか、四光波混合による波長変換の帯域が40nm以下に制限されている。
【特許文献1】特開平8−95106号公報
【非特許文献1】M. E. Marhic, et al.,Optics & Photonics News (September 2004) pp.21-25 (2004)
【非特許文献2】M-C. Ho, et al., J. of Lightwave Technol. Vol.19, No.7,pp.977-981 (2001)
【非特許文献3】M. Gao, et al., Optics Express, Vol.12, No.23,pp.5603-5613 (2004)
【非特許文献4】T. Okuno, et al.,OFC 2004, MF21
【非特許文献5】J. Hiroishi, et al., ECOC2002 Post Deadline Papers, PD1(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、実際の光ファイバで伝搬定数βの4階微分値β4の調整が可能であることを見出し、実際に4階微分値β4を低減することに加え、光ファイバの長さ方向の零分散波長の変動を抑制することで、波長変換やOPA等の広帯域化が可能であることを見出して、本発明を想到するに到った。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、波長変換やOPA等の広帯域化が可能な光ファイバ、および、このような光ファイバを用いた光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光ファイバは、全長での平均零分散波長λ0において周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下であり、長手方向に沿った零分散波長の変動が全長で±0.6nm以下であることを特徴とする。このような光ファイバを用いることにより、四光波混合による波長変換やOPA等の広帯域化が可能となり、例えば波長変換帯域幅を200nmとすることも可能である。なお、光ファイバの長手方向に沿った零分散波長の測定の方法は、例えば文献「L. F.Mollenauer, et al., Optics Lett., Vol.21, No.21, pp.1724-1726 (1996)」に記載されている。長手方向に沿って空孔が設けられたホーリー光ファイバであってもよいが、本発明の光ファイバは、中実のものとすることができることから、製造が容易であり、他の光ファイバとの融着接続が容易であり、さらに、長手方向に沿った零分散波長の抑制が容易である。なお、4階微分値β4の絶対値は、好ましくは1×10−56s4/m以下であり、更に好ましくは5×10−57s4/m以下である。
【0009】
本発明に係る光ファイバは、平均零分散波長λ0が1440nm〜1640nmの範囲にあるのが好適である。この波長帯域は、一般に光通信で用いられる帯域であるSバンド(1460nm〜1530nm),Cバンド(1530nm〜1565nm)およびLバンド(1565nm〜1625nm)を含み、安価な高出力レーザ光源の入手が容易である。
【0010】
本発明に係る光ファイバは、平均零分散波長λ0における実効断面積が15μm2以下であるのが好適である。この場合には、非線形性が大きくなるため、効率的な波長変換が可能である。
【0011】
本発明に係る光ファイバは、平均零分散波長λ0における分散スロープが+0.018ps/nm2/km以上であるのが好適である。この場合には、零分散波長の変動の抑制が比較的容易である。なお、平均零分散波長λ0における分散スロープは、より好ましくは+0.018〜+0.030ps/nm2/kmである。
【0012】
本発明に係る光ファイバは、平均零分散波長λ0における分散スロープの波長微分値が−0.00012ps/nm3/km〜−0.00008ps/nm3/kmの範囲にあるのが好適である。この場合には、零分散波長の変動の抑制が比較的容易である。
【0013】
本発明に係る光ファイバは、全長における偏波モード分散が0.2ps以下であるのが好適である。この場合には、偏波モード分散の影響を比較的小さくすることが可能であり、非線形光学現象が長時間に亘って安定して発現することが可能である。非偏波保持ファイバの場合には、偏波モード分散が小さい方が望ましく、好ましくは0.1ps以下であり、さらに好ましくは0.05ps以下である。
【0014】
本発明に係る光ファイバは、導波する基底モード光の直交偏波間のクロストークが全長で−15dB以下であるのが好適である。この場合には、偏波保持光ファイバとすることで、偏波モード分散の影響をほぼ無視することができ、非線形光学現象が長時間に亘って極めて安定して発現することが可能である。
【0015】
本発明に係る光ファイバは、最大屈折率N1および外径2aを有する中心コア部と、この中心コア部を取り囲み最小屈折率N2および外径2bを有するディプレスト部と、このディプレスト部を取り囲み最大屈折率N3を有するクラッド部と、を少なくとも備え、「N1>N3>N2」なる関係を満たし、クラッド部の屈折率N3を基準として、中心コア部の比屈折率差をΔ+とし、ディプレスト部の比屈折率差をΔ−としたときに、差「Δ+−Δ−」が2.2%以上であり、中心コア部およびディプレスト部それぞれの外径の比Ra(=2a/2b)が0.2〜0.7の範囲にあるのが好適である。このように、所謂W型の屈折率プロファイルを有していて、中心コア部の比屈折率差Δ+,ディプレスト部の比屈折率差Δ−および比Raが上記のような要件を満たすことで、分散特性の調整が容易となり、伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値の低減が容易となる。また、差「Δ+−Δ−」が3.1%以上であるのが好適であり、この場合には、非線形係数を20/W-km以上に大きくできる。また、ディプレスト部の比屈折率差Δ−が−0.1%〜−1.1%の範囲にあるのが好適であり、この場合には、伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値を更に低減することができる。
【0016】
本発明に係る光ファイバは、ファイバ長が500m以下であるのが好適である。このようにすることにより、波長変換帯域幅を拡大することが容易となる。
【0017】
本発明に係る光ファイバは、全長での平均零分散波長λ0が1440nm〜1640nmの範囲にあり、長手方向に沿った零分散波長の変動が全長で±0.6nm以下であり、平均零分散波長λ0において、周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下であり、実効断面積が15μm2以下であり、分散スロープが+0.018ps/nm2/km〜+0.030ps/nm2/kmの範囲にあり、分散スロープの波長微分値が−0.00012ps/nm3/km〜−0.00008ps/nm3/kmの範囲にあることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る光デバイスは、光ファイバと、波長λPのポンプ光を発生するポンプ光源と、波長λSのプローブ光を発生するプローブ光源と、を備え、ポンプ光およびプローブ光を光ファイバに導波させ、非線形光学現象によって新たな波長λIのアイドラ光を光ファイバから発生させることを特徴とする。この光デバイスに含まれる光ファイバは、上記の本発明に係る光ファイバであるのが好適である。この光デバイスでは、光ファイバにおける四光波混合を用いた波長変換により、ポンプ光波長λPおよびプローブ光波長λSの何れとも相違する新たな波長λIのアイドラ光が発生する。ポンプ光波長λPとプローブ光波長λSとの間の波長間隔が広くても、効率的に波長変換が可能である。なお、ポンプ光は1波長であってもよいが、2波長以上の複数光であってもよい。プローブ光も1波長であってもよいが、2波長以上の複数光であってもよい。ポンプ光としてコントロールパルスを光ファイバに入射することで、波長変換を応用した光スイッチにしたり、光分波器にしたりすることも可能である。また、ある光と同じ情報をもち、違う波長の新しい光子を発生させることもできるので、量子暗号通信用の光子ペアを生成したりすることも可能である。さらに、良い光源がない波長の光を容易に作ることもできるので、光通信分野だけでなく他の分野でも応用が可能である。
【0019】
本発明に係る光デバイスは、光ファイバに入射するポンプ光のパワーをPP-inとし、光ファイバに入射するプローブ光のパワーをPS-inとし、光ファイバから出射されるアイドラ光のパワーをPI-outとしたとき、ポンプ光の波長λPおよびパワーPP-inそれぞれを一定に保ち、プローブ光の波長λSを変化させた際のアイドラ光およびプローブ光それぞれのパワーの比r(=PI-out/PS-in)の変動率が3dB以下であるプローブ光の波長λSの範囲が100nm以上であるのが好適である。この場合には、極めて広帯域の波長変換が可能である。ポンプ光は複数波長であってもよいが、その場合でもポンプ光の条件は変化させなくてもよい。例えば、CバンドおよびLバンドを含む帯域の多波長信号光を、Eバンド(1360nm〜1460nm)およびSバンドを含む帯域の光に一括変換したりすることが可能である。比rの変動率が3dB以下であるプローブ光の波長λSの範囲は、好ましくは160nm以上であり、より好ましくは200nm以上であり、さらに好ましくは300nm以上である。
【0020】
本発明に係る光デバイスは、光ファイバに入射するポンプ光のパワーをPP-inとし、光ファイバに入射するプローブ光のパワーをPS-inとし、光ファイバから出射されるアイドラ光のパワーをPI-outとしたとき、ポンプ光の波長λPおよびパワーPP-inそれぞれを一定に保ち、ポンプ光およびプローブ光それぞれの波長の差「λP−λS」の絶対値が5nmであるときのアイドラ光およびプローブ光それぞれのパワーの比r(=PI-out/PS-in)の値に対して、差「λP−λS」の絶対値が50nm以上であるときの比rの変化率が3dB以下であるのが好適である。ポンプ光波長λPと光ファイバの零分散波長とは互いにほぼ等しいため、プローブ光として複数波長の光を入射し、プローブ光波長がポンプ光波長に近い場合には、プローブ光間での四光波混合が問題となる。しかし、プローブ光波長が零分散波長(≒ポンプ光波長)から50nm以上も離れていれば、分散の絶対値が1ps/nm/km程度以上となるので、プローブ光間の四光波混合はかなり抑制される。
【0021】
本発明に係る光デバイスは、光ファイバから出射されるプローブ光のパワーPS-outが、光ファイバに入射するプローブ光のパワーPS-inより大きいのが好適である。OPAによって、帯域の広い増幅が実現可能である。増幅器だけでなく、ポンプ光としてコントロールパルスを入射することで、スイッチにしたり光分波器にしたりすることも可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、波長変換やOPA等の広帯域化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
先ず、本発明を想到するに際して行った理論検討の内容について説明する。光ファイバにポンプ光(波長λP1,λP2)およびプローブ光(波長λS)が入射して、該光ファイバにおいて非線形光学現象(例えばパラメトリック過程の1種である四光波混合)が発現し、これに因り該光ファイバにおいて新たな波長のアイドラ光(波長λI)が発生する場合を考える。なお、波長λP1と波長λP2とは互いに等しくてもよく、その場合、これらの波長をλPで表す。
【0025】
光ファイバに入射するポンプ光λP1のパワーをPP1-inとし、光ファイバに入射するポンプ光λP2のパワーをPP2-inとし、光ファイバに入射するプローブ光λSのパワーをPS-inとする。このとき、光ファイバから出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outは、下記(1)式および(2)式で表される。Δβは、位相不整合量であって、下記(3)式で表される。γは、光ファイバの非線形係数であって、下記(4)式で表される。Leffは、光ファイバの実効長であって、下記(5)式で表される。また、4つの波長λP1,λP2,λS,λIは互いに近い値であるとして、これらの波長λを下記(6)式で近似する。なお、これらの式については、文献「K. Inoue et. al., J. of Lightwave Technol., Vol.10, No.11,pp.1553-1561, (1992)」に詳述されている。
【0026】
【数1】
【0027】
【数2】
【0028】
【数3】
【0029】
【数4】
【0030】
【数5】
【0031】
【数6】
【0032】
Lは光ファイバ長である。n2は波長λでの光ファイバの3次の非線形屈折率である。Aeffは波長λでの光ファイバの実効断面積である。αは波長λでの光ファイバの伝送損失である。βP1は波長λP1での光ファイバの伝搬定数であり、βP2は波長λP2での光ファイバの伝搬定数であり、βSは波長λSでの光ファイバの伝搬定数であり、βIは波長λIでの光ファイバの伝搬定数である。Dは縮退因子である。波長λP1と波長λP2とが互いに等しい場合には縮退因子は値1であり、波長λP1と波長λP2とが互いに異なる場合には縮退因子は値4である。
【0033】
特に、波長λでの光ファイバの伝送損失αが無視し得るほど小さい場合には、上記(1)式は下記(7)式で近似される。この式から判るように、位相不整合量Δβが値0に近いほど、光ファイバから出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outは大きくなる。光ファイバ長Lが短いほど、「LΔβ/2」の値が小さくなり、光ファイバから出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outは、位相不整合量Δβの影響が小さくなる。
【0034】
【数7】
【0035】
また、周波数整合条件から、下記(8)式が成り立つ。したがって、上記(6)式は、下記(9)式に変換され得る。光ファイバにおいて広いプローブ光波長範囲で高効率な波長変換を実現するためには、上記(3)式で示される位相不整合量Δβは広い波長範囲でほぼ0になることが望ましい。上記(6)式または(9)式で表される波長λを周波数ωに変換すると、下記(10)式で表される。ここで、cは光速である。
【0036】
【数8】
【0037】
【数9】
【0038】
【数10】
【0039】
伝搬定数βは、(10)式で記述される周波数ωを中心にテーラー展開すると、下記(11)式で表される。また、周波数ωによる伝搬定数βのn階微分値は下記(12)式で表される。また、伝搬定数βの2階微分値β2,3階微分値β3および4階微分値β4は、波長分散D,分散スロープSおよび分散スロープの波長微分値(dS/dλ)との間に、下記(13)式〜下記(15)式で表される関係がある。
【0040】
【数11】
【0041】
【数12】
【0042】
【数13】
【0043】
【数14】
【0044】
【数15】
【0045】
ここで、波長λP1と波長λP2とが互いに等しい波長λPであるとすると、上記(9)式および(10)式から「λ=λP」および「ω=ωP」なる関係式が成立する。したがって、上記(8)式および(11)式を用いると、上記(3)式は下記(16)式となる。
【0046】
【数16】
【0047】
この(16)式から、ポンプ光波長λPにおける2階微分値β2および4階微分値β4それぞれの絶対値が小さいほど、位相不整合量Δβの絶対値が小さくなることが判る。また、2階微分値β2が零になるようにポンプ光波長λPを光ファイバの零分散波長と一致させるのが必ずしも好ましいわけではなく、4階微分値β4の影響を考慮したうえでポンプλP光波長を選ぶべきである。つまり、4階微分値β4が負の場合には、2階微分値β2が正となるように零分散波長よりも短波長となるようにポンプ光波長λPを選択するべきである。また、逆に4階微分値β4が正の場合には、2階微分値β2が負となるように零分散波長よりも長波長となるようにポンプ光波長λPを選択するべきである。
【0048】
次に、以上までの解析の結果に基づいて更に具体的に解析を行った結果について説明する。図1は、光ファイバから出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。横軸は、プローブ光波長λSであり、縦軸は、規格化したアイドラ光の強度をdB単位で記入したものである。ここでは、光ファイバに入射するポンプ光を1波長とし、光ファイバの零分散波長λ0を1570nmとし、零分散波長λ0における光ファイバの分散スロープSを+0.024ps/nm2/kmとし、光ファイバのファイバ長Lを100mとし、光ファイバの伝送損失αを0.20/kmとした。また、ポンプ光波長λPと光ファイバの零分散波長λ0とは互いに一致させた。そして、上記(1)式〜(6)式および(16)式を用いて、アイドラ光λIのパワーPI-outが相対的にどのように変化するのかを調査した。
【0049】
図1では、伝搬定数βの4階微分値β4について、一般的な値である1×10−55s/m、及び、2桁小さくした1×10−57s/mの、2つの場合について示した。図1中に示されるように、アイドラ光のパワーがピーク値に対して−3dB以上である(つまり、ピーク値に対して1/2以上である)プローブ光の波長幅(半値全幅)を「波長変換帯域幅」と定義する。ポンプ光波長λPと光ファイバの零分散波長λ0とが互いに等しいとき、伝搬定数βの2階微分値β2は0であるから、上記(16)式から判るように、伝搬定数βの4階微分値β4が小さいほど波長変換帯域幅は広くなる。
【0050】
図2は、波長変換帯域幅とポンプ光波長λPとの関係を示す図である。横軸は、「零分散波長λ0−ポンプ光波長λP」であり、縦軸は、波長変換帯域幅である。この図から、伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値が小さいほど、波長変換帯域幅の最大値が大きくなり、好ましいことがわかる。また、4階微分値β4が負の場合には、2階微分値β2が正となるように、ポンプ光波長λPは零分散波長λ0より小さくなり、4階微分値β4が正の場合には、2階微分値β2が負となるように、ポンプ光波長λPは零分散波長λ0より大きくなるが、これは(16)式で示されるとおりである。図2(a)と同図(b)との比較から、4階微分値β4の絶対値が等しければ、波長変換帯域幅もほぼ等しいことがわかる。
【0051】
この図2から、ファイバ長Lが100mである場合に、波長変換帯域幅が100nm以上と広くなり、「零分散波長λ0−ポンプ光波長λP」のトレランスは±0.6nm程度である。4階微分値β4が−10−55s4/mである場合は、波長変換帯域幅が100nm以上と広くなり、「零分散波長λ0−ポンプ光波長λP」のトレランスはやはり±0.6nmとなる。通常はポンプ光波長λPを一定に保つので、光ファイバの零分散波長λ0の変動を±0.6nm以下の範囲に抑制することが広帯域の波長変換には必要であるといえる。なお、このような零分散波長λ0の変動が抑制された光ファイバは、例えば、光ファイバ母材の長手方向の各位置で屈折率プロファイルを測定し、その測定結果に基づいて所望の特性を有する光ファイバが得られるように光ファイバ母材の外形を研削し、その研削した光ファイバ母材を線引することで、実現可能である。
【0052】
実際には、長手方向では光ファイバの零分散波長λ0が或る程度は変動してしまうので、波長変換帯域幅は小さくなってしまう。「零分散波長λ0−ポンプ光波長λP」が或る幅を持った際に波長変換帯域幅の最小値がどうなるのかを調査することによって、零分散波長λ0が変動したとき波長変換帯域幅がどの程度になるのかを検討した。図3は、波長変換帯域幅とポンプ光波長λPとの関係を示す図において波長変換帯域幅の最小値を説明する図である。図4および図5それぞれは、光ファイバの零分散波長λ0の変動幅の各値について、4階微分値β4の絶対値および光ファイバ長Lの各値における波長変換帯域幅を纏めた図表である。
【0053】
図4(a)は、零分散波長λ0の変動がない場合の波長変換帯域幅を示す。図4(b)は、零分散波長λ0の変動が±0.05nmである場合の波長変換帯域幅を示す。図4(c)は、零分散波長λ0の変動が±0.10nmである場合の波長変換帯域幅を示す。図5(a)は、零分散波長λ0の変動が±0.20nmである場合の波長変換帯域幅を示す。図5(b)は、零分散波長λ0の変動が±0.60nmである場合の波長変換帯域幅を示す。また、図5(c)は、零分散波長λ0の変動が±1.0nmである場合の波長変換帯域幅を示す。
【0054】
図4(a)に示されるように、零分散波長λ0の変動がない場合には、4階微分値β4が小さいほど波長変換帯域幅が大きくなることがわかる。例えば、ファイバ長Lが100mであるときには、図6に示されるとおりである。図6は、零分散波長λ0の変動がないファイバ長100mの光ファイバにおける波長変換帯域幅と4階微分値β4との関係を示す図である。この図に示されるように、4階微分値β4の絶対値が従来と同等の1×10−55s4/mであるときには、波長変換帯域幅は200nm以上とはなりえない。4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下である場合には、波長変換帯域幅は200nmを超え、好適である。また、4階微分値β4の絶対値が1×10−56s4/m以下である場合には、波長変換帯域幅は特徴的に大きくなり、300nm以上となる。なお、この波長変換帯域幅が200nmであれば、一般に光通信において信号光波長として用いられるSバンド,CバンドおよびLバンドが含まれるので好ましい。
【0055】
実際には、零分散波長λ0は±0.05nm〜±0.10nm程度は変動してしまう場合が多い。例えばファイバ長100mのときは、図7,図8に示されるとおりである。図7は、零分散波長λ0の変動が±0.05nmであるファイバ長100mの光ファイバにおける波長変換帯域幅と4階微分値β4との関係を示す図である。この図に示されるように、4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下である場合には、波長変換帯域幅は特徴的に大きくなり200nm程度以上となり、また、4階微分値β4の絶対値が1×10−57s4/m以下である場合には、波長変換帯域幅は300nm程度以上と極めて広くなることがわかる。図8は、零分散波長λ0の変動が±0.10nmであるファイバ長100mの光ファイバにおける波長変換帯域幅と4階微分値β4との関係を示す図である。この図に示されるように、4階微分値β4の絶対値が3×10−56s4/m以下であれば、波長変換帯域幅は200nm程度以上と拡大可能であり、好ましい。また、更に好ましくは、4階微分値β4の絶対値が2×10−56s4/m以下である。
【0056】
上記(7)式から判るように、光ファイバの長さLが長い方が、光ファイバから出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outのパワーが強く、効率が高い。これは、やはり、(7)式から、光ファイバに入射するポンプ光λPのパワーPPを大きくすれば解決できることが判る。図4および図5から、光ファイバの長さLが短いほど波長変換帯域幅が拡大することが明らかである。例えば、零分散波長λ0が±0.10nm程度変動している場合、図9に示されるようになる。図9は、零分散波長λ0の変動が±0.10nmである光ファイバにおける波長変換帯域幅とファイバ長Lとの関係を示す図である。この図から判るように、4階微分値β4を低減する効果が明確になるのは、ファイバ長Lが500m以下の場合である。図10は、波長変換帯域幅と零分散波長λ0の変動量との関係を示す図である。この図から判るように、零分散波長λ0の変動が大きいほど波長変換帯域幅が狭くなる。零分散波長λ0の変動が±0.6nm以上であれば、4階微分値β4を低減する効果が明確とならなくなる。
【0057】
このように、零分散波長λ0の変動を±0.6nm以下に抑制すれば、100nm以上という広帯域の波長変換が実現可能である。また、図4,図5および図10から、零分散波長λ0の変動が±0.6nm以上では、4階微分値β4の低減の効果はあまり大きくないが、零分散波長λ0の変動が±0.2nm以下であると、4階微分値β4を小さくする効果が現れて帯域幅が拡大するので、さらに好適である。
【0058】
次に、上記のような伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値を低減し得るような光ファイバの具体的な構成例について説明する。4階微分値β4の絶対値を低減し得るような光ファイバについての検討は、従来では為されてはおらず、本発明者により初めて為されたものである。上記(7)式から判るように、光ファイバの非線形係数γは、高い方が望ましく、特に10/W-km以上であるとよい。そのため、光ファイバの実効断面積Aeffは15μm2以下である方が望ましい。
【0059】
図11は、本実施形態の光ファイバ10の断面構造および屈折率プロファイルの好適例を示す図である。同図(a)は、光ファイバ10の長手方向に垂直な断面を示し、同図(b)は、光ファイバ10の径方向の屈折率プロファイルを示す。光ファイバ10は、最大屈折率N1および外径2aを有する中心コア部11と、この中心コア部11を取り囲み最小屈折率N2および外径2bを有するディプレスト部12と、このディプレスト部12を取り囲み最大屈折率N3を有するクラッド部13と、を少なくとも備える。
【0060】
中心コア部11,ディプレスト部12およびクラッド部13それぞれの屈折率は、「N1>N3>N2」なる関係を満たす。ここで、クラッド部13の屈折率N3を基準として、中心コア部11の比屈折率差をΔ+とし、ディプレスト部12の比屈折率差をΔ−とする。また、中心コア部11およびディプレスト部12それぞれの外径の比をRa(=2a/2b)とする。
【0061】
図12は、分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。ここでは、図11に示されるような構造の光ファイバ10において、中心コア部11の屈折率のα乗プロファイルにおけるα値を3とし、中心コア部11の比屈折率差Δ+を3.2%とし、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を−0.3%とし、零分散波長λ0を1550nmとした。
【0062】
この図から判るように、4階微分値β4にはRa依存性があり、Raが0.4以上であるときに4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下となり、特にRaが0.6付近であるときに4階微分値β4の絶対値が1×10−56s4/m以下となる。この光ファイバ10のその他の特性として、波長1550nmにおいて、実効断面積Aeffは9.8μm2であり、非線形係数γは24/W-km(XPM法での測定)であり、ファイバカットオフ波長は1400nmであり、伝送損失は0.6dB/kmであり、モードフィールド径は3.6μmであり、偏波モード分散は0.01〜0.1ps/km1/2である。なお、CW-SPM法による非線形係数γの測定値は、XPM法による非線形係数γの測定値の70%程度に小さくなることが知られている。
【0063】
また、この光ファイバ10は、曲げに非常に強く、30φの径に巻いても0.01dB/km以下の損失増である。また、この光ファイバ10は、通常のシングルモード光ファイバとの接続も可能であり、一般的な融着器を用いれば接続ロスを0.5dB程度とすることができ、モードフィールド径を拡大する方法を用いれば接続ロスを0.2dB以下とすることができる。
【0064】
図13も、分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。ここでは、図11に示されるような構造の光ファイバ10において、中心コア部11の屈折率のα乗プロファイルにおけるα値を3とし、中心コア部11の比屈折率差Δ+を3.5%とし、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を−0.35%とし、零分散波長λ0を1540nmとした。
【0065】
この図から判るように、この光ファイバ10は、全般的に4階微分値β4が小さいが、比Raが0.45付近および0.75付近それぞれで符号が変わっている。つまり、この付近の比Raで光ファイバ10を製造すれば、4階微分値β4が5×10−57s4/m以下であるような極めて小さな光ファイバ10を実現することが可能である。この光ファイバ10のその他の特性は、波長1550nmにおいて、実効断面積Aeffは9.1μm2であり、非線形係数γは26/W-km(XPM法での測定)であり、ファイバカットオフ波長は1450nmであり、伝送損失は0.9dB/kmであり、モードフィールド径は3.4μmであり、偏波モード分散は0.01〜0.1ps/km1/2である。
【0066】
また、この光ファイバ10も、曲げに非常に強く、30φの径に巻いても0.01dB/km以下の損失増である。また、この光ファイバ10は、通常のシングルモード光ファイバとの接続も可能であり、一般的な融着器を用いれば接続ロスを0.5dB程度とすることができ、モードフィールド径を拡大する方法を用いれば接続ロスを0.2dB以下とすることができる。
【0067】
以上のように、中心コア部11およびディプレスト部12を有するような構造の光ファイバであれば、4階微分値β4の調整が可能である。図14は、本実施形態の光ファイバの屈折率プロファイルの他の好適例を示す図である。同図(a)に示されるように、ディプレスト部11の外側に更に他の領域14があってもよいし、同図(b)に示されるように、領域14の外側に更に他の領域15があってもよいし、同図(c)に示されるように、中心コア部11とディプレスト部12との間に他の領域16があってもよいし、また、同図(d)に示されるように、中心コア部11にディップが存在してもよい。これら何れの場合にも、4階微分値β4の調整が可能であり、4階微分値β4の絶対値を小さくすることができる。
【0068】
偏波モード分散が低いほど波長変換帯域幅が広くなるので好ましい。光ファイバの全長で偏波モード分散は0.2ps以下であるとよい。光ファイバを偏波保持型(例えばPANDA型)とすることで、その光ファイバを導波する基底モード光の直交偏波間のカップリングを抑制することが可能であり、さらに好適である。直交偏波間のカップリングは、ファイバ長1kmであっても−15dB以下にすることが可能で、実使用のファイバ長ではさらに小さくすることができる。
【0069】
光ファイバは、例えば、最小曲げ径40φ程度以下の小型コイルに巻かれていてもよい。このとき、光ファイバの被覆外径が150μm以下など細くなる方が、コイルをより小型にすることができる。また、光ファイバのガラス部11の外径が100μm以下など細ければ、小型に巻いたときの巻き歪が小さくなるために破断する確率が小さくなったり、曲げ誘起複屈折による偏波モード分散の劣化を抑制できたりすることが可能である。
【0070】
以上ような特性を満たす光ファイバを実際に製造した。何れの光ファイバも、図11に示されるような構造を有するものであった。製造した光ファイバは、中心コア部11の屈折率のα乗プロファイルにおけるα値が3であり、中心コア部11の比屈折率差Δ+が2.5%であり、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−が−0.5%であり、比Raが0.6であり、コア径2aが4.7μmであった。この光ファイバは、零分散波長が1440nmであった。また、零分散波長1440nmにおいて、分散スロープが+0.0466ps/nm2/kmであり、分散スロープの波長微分値が1.66×10−4ps/nm3/kmであり、4階微分値β4が−3.8×10−56s4/mであり、実効断面積Aeffが11μm2であり、非線形係数γが21/W-kmであり、モードフィールド径が3.8μmであり、カットオフ波長が1.37μmであり、Cバンドにおける偏波モード分散が0.02ps/km1/2であり、4階微分値β4が低減された高非線形性光ファイバであった。
【0071】
また、製造した他の光ファイバは、中心コア部11の屈折率のα乗プロファイルにおけるα値が1.9であり、中心コア部11の比屈折率差Δ+が3.0%であり、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−が−0.6%であり、比Raが0.6であり、コア径2aが4.5μmであった。この光ファイバは、零分散波長が1640nmであった。また、零分散波長1640nmにおいて、分散スロープが+0.0231ps/nm2/kmであり、分散スロープの波長微分値が−9.63×10−5ps/nm3/kmであり、4階微分値β4が−3.4×10−56s4/mであり、実効断面積Aeffが11μm2であり、非線形係数γが18/W-kmであり、モードフィールド径が3.9μmであり、カットオフ波長が1.31μmであり、CバンドおよびLバンドにおける偏波モード分散が0.03ps/km1/2であり、4階微分値β4が低減された高非線形性光ファイバであった。
【0072】
次に、上記のような伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値を低減し得るような光ファイバのより一般的な設計例について説明する。ここでも、光ファイバは、図11に示されるような構造を有するものとし、中心コア部11の屈折率のα乗プロファイルにおけるα値を4とし、零分散波長を1550nmとした。
【0073】
図15は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を2.5%とし、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を−0.1%としたときの、分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。このときは、4階微分値β4の絶対値は7×10−56s4/m程度までしか小さくならず、好ましい例ではない。また、コア径2aは4μm程度であり、カットオフ波長は1400nm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffは12μm2程度であり、非線形係数γは17/W-km程度である。
【0074】
図16は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を2.5%とし、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を−0.2%としたときの、分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。このときは、4階微分値β4の絶対値は4×10−56s4/m程度まで小さくなり、好ましい。また、コア径2aは4μm程度であり、カットオフ波長は1400nm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffは12μm2程度であり、非線形係数γは18/W-km程度である。
【0075】
図17は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を2.5%とし、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を−0.3%としたときの、分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。また、図18は、このときの4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。このときは、4階微分値β4の絶対値は値0をとり得るので、好ましい例である。また、比Raが0.5程度から0.65程度まで、4階微分値β4の絶対値が1×10−56s4/m以下となるので、ファイバ製造における構造トレランスが広く、非常に好ましい。
また、コア径2aは4μm程度であり、カットオフ波長は1400nm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffは12μm2程度であり、非線形係数γは18/W-km程度である。
【0076】
図19は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を2.5%とし、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を−0.6%としたときの、分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。また、図20は、このときの4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。このときは、4階微分値β4の絶対値は値0をとり得るので、好ましい例である。ただし、4階微分値β4が0付近で小さくなる際には、比Raの小さな変動であっても4階微分値β4が大きく変動するため、ファイバ製造における構造トレランスがあまり広くない。また、コア径2aは4μm程度であり、カットオフ波長は1300nm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffは11μm2程度であり、非線形係数γは20/W-km程度である。
【0077】
次に、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を変化させた際の4階微分値β4と比Raとの関係について説明する。
【0078】
図21は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を2.5%としたときの4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。ここでは、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−の各値について4階微分値β4と比Raとの関係が示されている。Δ+が2.5%であるとき、Δ−が−0.2%程度以下であって差「Δ+−Δ−」が2.7%程度以上であれば、4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下となる。比Raが0.5〜0.6付近で4階微分値β4は最小値をとることがわかる。この付近で4階微分値β4の絶対値が小さい値であれば、製造トレランスが広くなり、Δ−が−0.4%〜−0.2%であると製造が容易である。また、Δ−が−0.5%〜−1.1%で比Raが0.2〜0.3であっても、4階微分値β4の絶対値が常に小さく、製造が容易となる。
【0079】
図22は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を2.0%としたときの4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。ここでも、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−の各値について4階微分値β4と比Raとの関係が示されている。その他の特性として、コア径2aが4.5μm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffが13〜15μm2程度であり、非線形係数γが13〜15/W-kmであり、カットオフ波長が1200〜1300nm程度である。Δ+が2.0%であるとき、Δ−が−0.2%程度以下であって差「Δ+−Δ−」が2.2%程度以上であれば、4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下となる。比Raが0.4〜0.6付近で4階微分値β4は最小値をとることがわかる。この付近で4階微分値β4の絶対値が小さい値であれば、製造トレランスが広くなり、Δ−が−0.4〜−0.25%であると製造が容易である。また、Δ−が−0.5%以下で比Raが0.2〜0.3であっても、4階微分値β4の絶対値が常に小さく、製造が容易となる。
【0080】
図23は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を3.0%としたときの4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。ここでも、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−の各値について4階微分値β4と比Raとの関係が示されている。その他の特性として、コア径2aが4.0μm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffが9〜10μm2程度であり、非線形係数γが22〜26/W-kmであり、カットオフ波長が1500〜1300nm程度である。Δ+が3.0%であるのとき、Δ−が−0.10%程度以下であって差「Δ+−Δ−」が3.1%程度以上であれば、4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下となる。比Raが0.4〜0.6付近で4階微分値β4は最小値をとることがわかる。この付近で4階微分値β4の絶対値が小さい値であれば、製造トレランスが広くなり、Δ−が−0.4〜−0.15%であると製造が容易である。また、Δ−が−1.0%〜−0.2%で比Raが0.2〜0.3であっても、4階微分値β4の絶対値が常に小さく、製造が容易となる。
【0081】
図24は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を3.5%としたときの4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。ここでも、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−の各値について4階微分値β4と比Raとの関係が示されている。その他の特性として、コア径2aが4.0μm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffが8〜9μm2程度であり、非線形係数γが28〜31/W-kmであり、カットオフ波長が1600〜1400nm程度である。Δ+が3.5%であるのとき、Δ−が−0.10%程度以下であって差「Δ+−Δ−」が3.6%程度以上であれば、4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下となる。比Raが0.4〜0.7付近で4階微分値β4は最小値をとることがわかる。この付近で4階微分値β4の絶対値が小さい値であれば、製造トレランスが広くなり、Δ−が−0.3〜−0.1%であると製造が容易である。また、Δ−が−0.7%〜−0.1%で比Raが0.2〜0.4であっても、4階微分値β4の絶対値が常に小さく、製造が容易となる。
【0082】
以上を纏めると、中心コア部11の比屈折率差Δ+とディプレスト部12の比屈折率差Δ−との差「Δ+−Δ−」が2.2%以上であり、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−が−0.1〜−1.1%であり、比Raが0.2〜0.7であると好ましい。また、差「Δ+−Δ−」が3.1%以上であり、Δ−が−0.1〜−1.1%であり、比Raが0.2〜0.7であると、実効断面積Aeffが11μm2以下と小さく、非線形係数γが20/W-km程度以上と大きくなるので、さらに好ましい。
【0083】
以上の計算結果から、4階微分値β4と分散スロープSとの関係を図示すると図25のようになり、また、4階微分値β4と分散スロープSの波長微分値(dS/dλ)との関係を図示すると図26のようになる。図25から判るように、分散スロープSは+0.018〜+0.030ps/nm2/km程度であるのが好ましい。さらには、分散スロープSは+0.022〜+0.028ps/nm2/km程度であれば、4階微分値β4の絶対値がさらに小さくなり得るため、さらに好ましい。また、図26から判るように、分散スロープSの波長微分値(dS/dλ)は−0.00012〜−0.00008ps/nm3/km程度であるのが好ましい。さらには、分散スロープSの波長微分値(dS/dλ)は−0.00011〜−0.00009ps/nm3/km程度であれば、4階微分値β4の絶対値がさらに小さくなり得るため、さらに好ましい。
【0084】
また、高非線形性光ファイバにおいて、分散スロープSが小さいと零分散波長λ0の変動が大きくなる。図27は、コア径2aの変動が1%あったときの零分散波長λ0の変動量と分散スロープSとの関係を示す図である。この図から判るように、零分散波長λ0の変動が大きいと、波長変換帯域幅を狭めてしまう。特に、分散スロープSは、+0.018ps/nm2/km以下では零分散波長λ0の変動が大きいので、+0.018ps/nm2/km以上であるのが好ましい。
【0085】
次に、本発明の光ファイバおよび光デバイスの実施例について説明する。図28は、実施例の光デバイス1の構成図である。この光デバイス1は、上述した光ファイバ10を備える他、ポンプ光源21、光増幅器22、バンドパスフィルタ23、偏波コントローラ24、プローブ光源31、偏波コントローラ34、光合波器40およびスペクトラムアナライザ50を備える。
【0086】
ここで用いた光ファイバ10は、図11に示されるような構造を有し、中心コア部11の比屈折率差Δ+が3.41%であり、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−が−0.14%であり、比Raが0.56であり、コア径2aが3.78μmであり、長さLが100mであった。また、この光ファイバ10は、零分散波長λ0が1562.3nmであり、波長1.55μmにおいて伝送損失が1dB/kmであり、実効断面積Aeffが9.4μm2であり、モードフィールド径が3.51μmであり、XPM法で測定した非線形係数γが25/W-kmであり、偏波モード分散が0.03ps/km1/2であった。また、この光ファイバ10は、零分散波長において、分散スロープSが+0.024ps/nm2/kmであり、分散スロープSの波長微分値(dS/dλ)が−0.00010ps/nm3/kmであり、伝搬定数βの3階微分値β3が4×10−41s3/mであり、伝搬定数βの4階微分値β4が+2×10−56s4/mであった。
【0087】
ポンプ光源21は、波長λPのポンプ光を発生する。プローブ光源31は、波長λSのプローブ光を発生する。本実施例では、ポンプ光波長λPは、光ファイバ10の零分散波長付近とした。また、プローブ光波長λSは、波長可変光源の出力範囲(1440〜1653nm)でスィープさせた。光増幅器22は、ポンプ光源21から出力されたポンプ光を光増幅して出力する。バンドパスフィルタ23は、光増幅器22から出力された光のうち波長λPの光を選択的に透過させて出力する。偏波コントローラ24は、バンドパスフィルタ23から出力されたポンプ光λPの偏波状態を制御して出力する。また、偏波コントローラ34は、プローブ光源31から出力されたプローブ光λSの偏波状態を制御して出力する。
【0088】
光合波器40は、偏波コントローラ24から出力されたポンプ光λPを入力するとともに、偏波コントローラ34から出力されたプローブ光λSをも入力して、これらポンプ光λPおよびプローブ光λSを合波して出力する。光ファイバ10は、光合波器40により合波されて出力されたポンプ光λPおよびプローブ光λSを入力する。本実施例では、光ファイバ10に入射するポンプ光λPのパワーPP1-inを+3dBmとし、光ファイバ10に入射するプローブ光λSのパワーPS-inを−5dBmとして、この光ファイバ10において四光波混合によりアイドラ光λIを発生させた。アイドラ光波長λIは「λI=(2/λP−1/λS)−1」なる式で表される。スペクトラムアナライザ50は、光ファイバ10から出力される光を受光して、その光のスペクトルを測定する。特に、本実施例では、スペクトラムアナライザ50は、光ファイバ10から出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outを測定した。
【0089】
図29は、実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。この図の縦軸は、アイドラ光λIのパワーPI-outの最大値を0dBとして規格化してある。また、この図には、ポンプ光波長λPが1562.0nm,1562.3nmおよび1562.6nmそれぞれの各値である場合について、アイドラ光パワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係が示されている。光ファイバ10の伝搬定数βの4階微分値β4が正であるから、ポンプ光波長λPが光ファイバ10の零分散波長λ0より長い場合に、波長変換帯域幅が広くなると予測される。
【0090】
実際に図29に示されるように、ポンプ光波長λPが1562.0nmであるときに波長変換帯域幅が126nmであり、ポンプ光波長λPが1562.3nmであるときに波長変換帯域幅が168nmであり、ポンプ光波長λPが1562.6nmであるときに波長変換帯域幅が220nmであった。すなわち、ポンプ光波長λPが零分散波長λ0より0.3nmだけ長い1562.6nmである場合に、波長変換帯域幅が最も広くなった。
【0091】
ただし、実施例では、プローブ光源31として実際に用いた波長可変光源の出力波長範囲の限界で、プローブ光λSが1653nmよりも長波長側では評価ができていない。そこで、上記(1)式〜(6)式および(16)式から、計算により、光ファイバ10から出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outを求めた。
【0092】
図30は、ポンプ光波長λPが1562.0nmであるときの光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。図31は、ポンプ光波長λPが1562.3nmであるときの光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。図32は、ポンプ光波長λPが1562.6nmであるときの光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。これらの図には、光ファイバ10から出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outの計算値が実線で示されている。
【0093】
図30および図31から判るように、ポンプ光波長λPが1562.0nm,1562.3nmである場合には、計算値と実測値とは互いに極めてよく一致している。一方、図32から判るように、ポンプ光波長λPが1562.6nmである場合には、計算値と実測値とは、互いによく一致しているものの、プローブ光λSが短波長側での一致があまりよくない。
【0094】
そこで、光ファイバ10の長手方向において±0.1nmの零分散波長λ0の変動があるとして再度計算すると図33に示されるようになる。この図に示されるように、零分散波長λ0の変動を±0.1nmとした場合、計算値と実測値とは互いに極めてよく一致する。したがって、この光ファイバ10は、ポンプ光波長λPが最適化されていない場合でも波長変換帯域幅が100nm以上と広く、ポンプ光波長λPが最適化された場合には波長変換帯域幅が220nmと極めて広い。また、零分散波長λ0の変動は±0.1nm程度と推測できる。これは、従来知られている90〜110nmの変換帯域を2倍とするものである。
【0095】
図34は、ポンプ光波長λPが1562.7nmであるときの光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。このように、プローブ光波長λSを更に長波長化して1562.7nmとすると、波長変換帯域(アイドラ光パワーPI-outがピーク値に対して−3dB以上であるプローブ光の波長帯域)は、連続的にはならず、2つの帯域に分割される。しかし、プローブ光波長λSがポンプ光波長λPから遠ざかっても高い波長変換効率が得られる。3dB内と定義した波長変換帯域幅は狭くなるが、OPAやスイッチといった光デバイスにとっては、プローブ光波長λSがポンプ光波長λPから遠いのでプローブ光の分散値が比較的大きく、プローブ光間での四光波混合などの問題が回避できる。
【0096】
図35は、実施例の光ファイバの長さを1000mとしたときのアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。また、図36は、実施例および従来例それぞれの光ファイバの波長変換帯域幅とファイバ長との関係を示す図である。上記(7)式や図9に示されるように、ファイバ長Lが長いほど波長変換帯域幅は狭くなる。モード間のカップリングの問題も加わり、偏波保持ファイバでない通常の光ファイバでは、従来、長さ500m以上で波長変換帯域幅が50nm以上になることはなく、長さ1000mでは波長変換帯域幅は20nm程度であった。これに対して、試作した実施例の光ファイバでは、4階微分値β4を低減する効果が大きく、ファイバ長が1000mであるときでも波長変換帯域幅は64nmと大きく広がった。
【0097】
このように、4階微分値β4の絶対値を5×10−56s4/m以下に抑制し、零分散波長λ0の変動を±0.6nm以下に抑制することで、100nm以上(好ましくは150nm以上、さらには200nm以上)と極めて広い波長変換帯域幅を有することがわかる。非常に広い波長範囲でパラメトリック過程が効率的に発生することから、通信・非通信用途での波長変換やOPA、光スイッチ、光分波器、サンプリングオシロ、などの光ファイバ型デバイスやアプリケーションを容易に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】光ファイバから出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図2】波長変換帯域幅とポンプ光波長λPとの関係を示す図である。
【図3】波長変換帯域幅とポンプ光波長λPとの関係を示す図において波長変換帯域幅の最小値を説明する図である。
【図4】光ファイバの零分散波長λ0の変動幅の各値について、4階微分値β4の絶対値および光ファイバ長Lの各値における波長変換帯域幅を纏めた図表である。
【図5】光ファイバの零分散波長λ0の変動幅の各値について、4階微分値β4の絶対値および光ファイバ長Lの各値における波長変換帯域幅を纏めた図表である。
【図6】零分散波長λ0の変動がないファイバ長100mの光ファイバにおける波長変換帯域幅と4階微分値β4との関係を示す図である。
【図7】零分散波長λ0の変動が±0.05nmであるファイバ長100mの光ファイバにおける波長変換帯域幅と4階微分値β4との関係を示す図である。
【図8】零分散波長λ0の変動が±0.10nmであるファイバ長100mの光ファイバにおける波長変換帯域幅と4階微分値β4との関係を示す図である。
【図9】零分散波長λ0の変動が±0.10nmである光ファイバにおける波長変換帯域幅とファイバ長Lとの関係を示す図である。
【図10】波長変換帯域幅と零分散波長λ0の変動量との関係を示す図である。
【図11】本実施形態の光ファイバ10の断面構造および屈折率プロファイルの好適例を示す図である。
【図12】分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。
【図13】分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。
【図14】本実施形態の光ファイバの屈折率プロファイルの他の好適例を示す図である。
【図15】分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。
【図16】分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。
【図17】分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。
【図18】4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。
【図19】分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。
【図20】4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。
【図21】4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。
【図22】4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。
【図23】4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。
【図24】4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。
【図25】4階微分値β4と分散スロープSとの関係を示す図である。
【図26】4階微分値β4と分散スロープSの波長微分値(dS/dλ)との関係を示す図である。
【図27】コア径2aの変動が1%あったときの零分散波長λ0の変動量と分散スロープSとの関係を示す図である。
【図28】実施例の光デバイス1の構成図である。
【図29】実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図30】実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図31】実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図32】実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図33】実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図34】実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図35】実施例の光ファイバの長さを1000mとしたときのアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図36】実施例および従来例それぞれの光ファイバの波長変換帯域幅とファイバ長との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
1…光デバイス、10…光ファイバ、11…中心コア部、12…ディプレスト部、13…クラッド部、21…ポンプ光源、22…光増幅器、23…バンドパスフィルタ、24…偏波コントローラ、31…プローブ光源、34…偏波コントローラ、40…光合波器、50…スペクトラムアナライザ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高非線形性の光ファイバ、および、この光ファイバを用いた光デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
非線形光学現象を用いた波長変換等において、分散シフト光ファイバ等の高非線形性光ファイバは、非線形光学現象を発現させる媒体として用いられる(例えば特許文献1を参照)。このような用途の光ファイバの開発は、これまでは、非線形性の向上や分散スロープの低減に主眼が置かれている。しかし、分散スロープが低減すると、零分散波長の変動が大きくなってしまう。したがって、零分散波長の変動の低減が重要である。また、波長変換帯域の向上にとって重要な伝搬定数βの4階微分値β4には注意が払われていなかった。
【0003】
光ファイバの伝搬定数βの4階微分値β4を低減した方が帯域が拡がることは、例えば非特許文献1に記載されている。また、例えば、非特許文献2には、伝搬定数βの4階微分値β4が−5.8×10−56s4/mである光ファイバを用いた広帯域OPA(光パラメトリック増幅)が報告されている。しかし、この非特許文献2の第978頁の「B.Experimental Setup for OPA Gain Measurement」欄には「分散の変動が大きい」との記述があり、また、4階微分値β4の低減も充分ではない。非特許文献3には、4階微分値β4他のファイバパラメータの最適化を実施しているが、零分散波長の変動や直交偏波のカップリングなど実ファイバで大きな問題になる現象が考慮されていない。
【0004】
このように、光ファイバを利用する側から見たファイバパラメータの提案はあるが、光ファイバを製造する視点からは検討されておらず、提案されるようなパラメータを有する光ファイバを製造するのは困難であった。例えば、非特許文献4等には、ファイバ長100mで変換帯域91.3nmを有する光ファイバや、ファイバ長100mで変換帯域110nmを有する光ファイバが知られているが、光ファイバを単純に短くしたのみで分散パラメータの最適化はなされていない。
【0005】
非特許文献5には、中心コア部,ディプレスト部およびクラッド部を含む所謂W型の屈折率プロファイルを有する光ファイバについて、典型的な4階微分値β4の値として1.0×10−4ps4/km(=1.0×10−55s4/m)が示されている。実際には、W型の屈折率プロファイルであっても、4階微分値β4の値を調整可能であるが、4階微分値β4の重要性は考慮されていない。また、分散スロープが+0.013ps/nm2/kmと小さくすることで広帯域化を図っているが、実際には零分散波長の変動が大きいためか、四光波混合による波長変換の帯域が40nm以下に制限されている。
【特許文献1】特開平8−95106号公報
【非特許文献1】M. E. Marhic, et al.,Optics & Photonics News (September 2004) pp.21-25 (2004)
【非特許文献2】M-C. Ho, et al., J. of Lightwave Technol. Vol.19, No.7,pp.977-981 (2001)
【非特許文献3】M. Gao, et al., Optics Express, Vol.12, No.23,pp.5603-5613 (2004)
【非特許文献4】T. Okuno, et al.,OFC 2004, MF21
【非特許文献5】J. Hiroishi, et al., ECOC2002 Post Deadline Papers, PD1(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、実際の光ファイバで伝搬定数βの4階微分値β4の調整が可能であることを見出し、実際に4階微分値β4を低減することに加え、光ファイバの長さ方向の零分散波長の変動を抑制することで、波長変換やOPA等の広帯域化が可能であることを見出して、本発明を想到するに到った。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、波長変換やOPA等の広帯域化が可能な光ファイバ、および、このような光ファイバを用いた光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光ファイバは、全長での平均零分散波長λ0において周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下であり、長手方向に沿った零分散波長の変動が全長で±0.6nm以下であることを特徴とする。このような光ファイバを用いることにより、四光波混合による波長変換やOPA等の広帯域化が可能となり、例えば波長変換帯域幅を200nmとすることも可能である。なお、光ファイバの長手方向に沿った零分散波長の測定の方法は、例えば文献「L. F.Mollenauer, et al., Optics Lett., Vol.21, No.21, pp.1724-1726 (1996)」に記載されている。長手方向に沿って空孔が設けられたホーリー光ファイバであってもよいが、本発明の光ファイバは、中実のものとすることができることから、製造が容易であり、他の光ファイバとの融着接続が容易であり、さらに、長手方向に沿った零分散波長の抑制が容易である。なお、4階微分値β4の絶対値は、好ましくは1×10−56s4/m以下であり、更に好ましくは5×10−57s4/m以下である。
【0009】
本発明に係る光ファイバは、平均零分散波長λ0が1440nm〜1640nmの範囲にあるのが好適である。この波長帯域は、一般に光通信で用いられる帯域であるSバンド(1460nm〜1530nm),Cバンド(1530nm〜1565nm)およびLバンド(1565nm〜1625nm)を含み、安価な高出力レーザ光源の入手が容易である。
【0010】
本発明に係る光ファイバは、平均零分散波長λ0における実効断面積が15μm2以下であるのが好適である。この場合には、非線形性が大きくなるため、効率的な波長変換が可能である。
【0011】
本発明に係る光ファイバは、平均零分散波長λ0における分散スロープが+0.018ps/nm2/km以上であるのが好適である。この場合には、零分散波長の変動の抑制が比較的容易である。なお、平均零分散波長λ0における分散スロープは、より好ましくは+0.018〜+0.030ps/nm2/kmである。
【0012】
本発明に係る光ファイバは、平均零分散波長λ0における分散スロープの波長微分値が−0.00012ps/nm3/km〜−0.00008ps/nm3/kmの範囲にあるのが好適である。この場合には、零分散波長の変動の抑制が比較的容易である。
【0013】
本発明に係る光ファイバは、全長における偏波モード分散が0.2ps以下であるのが好適である。この場合には、偏波モード分散の影響を比較的小さくすることが可能であり、非線形光学現象が長時間に亘って安定して発現することが可能である。非偏波保持ファイバの場合には、偏波モード分散が小さい方が望ましく、好ましくは0.1ps以下であり、さらに好ましくは0.05ps以下である。
【0014】
本発明に係る光ファイバは、導波する基底モード光の直交偏波間のクロストークが全長で−15dB以下であるのが好適である。この場合には、偏波保持光ファイバとすることで、偏波モード分散の影響をほぼ無視することができ、非線形光学現象が長時間に亘って極めて安定して発現することが可能である。
【0015】
本発明に係る光ファイバは、最大屈折率N1および外径2aを有する中心コア部と、この中心コア部を取り囲み最小屈折率N2および外径2bを有するディプレスト部と、このディプレスト部を取り囲み最大屈折率N3を有するクラッド部と、を少なくとも備え、「N1>N3>N2」なる関係を満たし、クラッド部の屈折率N3を基準として、中心コア部の比屈折率差をΔ+とし、ディプレスト部の比屈折率差をΔ−としたときに、差「Δ+−Δ−」が2.2%以上であり、中心コア部およびディプレスト部それぞれの外径の比Ra(=2a/2b)が0.2〜0.7の範囲にあるのが好適である。このように、所謂W型の屈折率プロファイルを有していて、中心コア部の比屈折率差Δ+,ディプレスト部の比屈折率差Δ−および比Raが上記のような要件を満たすことで、分散特性の調整が容易となり、伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値の低減が容易となる。また、差「Δ+−Δ−」が3.1%以上であるのが好適であり、この場合には、非線形係数を20/W-km以上に大きくできる。また、ディプレスト部の比屈折率差Δ−が−0.1%〜−1.1%の範囲にあるのが好適であり、この場合には、伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値を更に低減することができる。
【0016】
本発明に係る光ファイバは、ファイバ長が500m以下であるのが好適である。このようにすることにより、波長変換帯域幅を拡大することが容易となる。
【0017】
本発明に係る光ファイバは、全長での平均零分散波長λ0が1440nm〜1640nmの範囲にあり、長手方向に沿った零分散波長の変動が全長で±0.6nm以下であり、平均零分散波長λ0において、周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下であり、実効断面積が15μm2以下であり、分散スロープが+0.018ps/nm2/km〜+0.030ps/nm2/kmの範囲にあり、分散スロープの波長微分値が−0.00012ps/nm3/km〜−0.00008ps/nm3/kmの範囲にあることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る光デバイスは、光ファイバと、波長λPのポンプ光を発生するポンプ光源と、波長λSのプローブ光を発生するプローブ光源と、を備え、ポンプ光およびプローブ光を光ファイバに導波させ、非線形光学現象によって新たな波長λIのアイドラ光を光ファイバから発生させることを特徴とする。この光デバイスに含まれる光ファイバは、上記の本発明に係る光ファイバであるのが好適である。この光デバイスでは、光ファイバにおける四光波混合を用いた波長変換により、ポンプ光波長λPおよびプローブ光波長λSの何れとも相違する新たな波長λIのアイドラ光が発生する。ポンプ光波長λPとプローブ光波長λSとの間の波長間隔が広くても、効率的に波長変換が可能である。なお、ポンプ光は1波長であってもよいが、2波長以上の複数光であってもよい。プローブ光も1波長であってもよいが、2波長以上の複数光であってもよい。ポンプ光としてコントロールパルスを光ファイバに入射することで、波長変換を応用した光スイッチにしたり、光分波器にしたりすることも可能である。また、ある光と同じ情報をもち、違う波長の新しい光子を発生させることもできるので、量子暗号通信用の光子ペアを生成したりすることも可能である。さらに、良い光源がない波長の光を容易に作ることもできるので、光通信分野だけでなく他の分野でも応用が可能である。
【0019】
本発明に係る光デバイスは、光ファイバに入射するポンプ光のパワーをPP-inとし、光ファイバに入射するプローブ光のパワーをPS-inとし、光ファイバから出射されるアイドラ光のパワーをPI-outとしたとき、ポンプ光の波長λPおよびパワーPP-inそれぞれを一定に保ち、プローブ光の波長λSを変化させた際のアイドラ光およびプローブ光それぞれのパワーの比r(=PI-out/PS-in)の変動率が3dB以下であるプローブ光の波長λSの範囲が100nm以上であるのが好適である。この場合には、極めて広帯域の波長変換が可能である。ポンプ光は複数波長であってもよいが、その場合でもポンプ光の条件は変化させなくてもよい。例えば、CバンドおよびLバンドを含む帯域の多波長信号光を、Eバンド(1360nm〜1460nm)およびSバンドを含む帯域の光に一括変換したりすることが可能である。比rの変動率が3dB以下であるプローブ光の波長λSの範囲は、好ましくは160nm以上であり、より好ましくは200nm以上であり、さらに好ましくは300nm以上である。
【0020】
本発明に係る光デバイスは、光ファイバに入射するポンプ光のパワーをPP-inとし、光ファイバに入射するプローブ光のパワーをPS-inとし、光ファイバから出射されるアイドラ光のパワーをPI-outとしたとき、ポンプ光の波長λPおよびパワーPP-inそれぞれを一定に保ち、ポンプ光およびプローブ光それぞれの波長の差「λP−λS」の絶対値が5nmであるときのアイドラ光およびプローブ光それぞれのパワーの比r(=PI-out/PS-in)の値に対して、差「λP−λS」の絶対値が50nm以上であるときの比rの変化率が3dB以下であるのが好適である。ポンプ光波長λPと光ファイバの零分散波長とは互いにほぼ等しいため、プローブ光として複数波長の光を入射し、プローブ光波長がポンプ光波長に近い場合には、プローブ光間での四光波混合が問題となる。しかし、プローブ光波長が零分散波長(≒ポンプ光波長)から50nm以上も離れていれば、分散の絶対値が1ps/nm/km程度以上となるので、プローブ光間の四光波混合はかなり抑制される。
【0021】
本発明に係る光デバイスは、光ファイバから出射されるプローブ光のパワーPS-outが、光ファイバに入射するプローブ光のパワーPS-inより大きいのが好適である。OPAによって、帯域の広い増幅が実現可能である。増幅器だけでなく、ポンプ光としてコントロールパルスを入射することで、スイッチにしたり光分波器にしたりすることも可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、波長変換やOPA等の広帯域化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
先ず、本発明を想到するに際して行った理論検討の内容について説明する。光ファイバにポンプ光(波長λP1,λP2)およびプローブ光(波長λS)が入射して、該光ファイバにおいて非線形光学現象(例えばパラメトリック過程の1種である四光波混合)が発現し、これに因り該光ファイバにおいて新たな波長のアイドラ光(波長λI)が発生する場合を考える。なお、波長λP1と波長λP2とは互いに等しくてもよく、その場合、これらの波長をλPで表す。
【0025】
光ファイバに入射するポンプ光λP1のパワーをPP1-inとし、光ファイバに入射するポンプ光λP2のパワーをPP2-inとし、光ファイバに入射するプローブ光λSのパワーをPS-inとする。このとき、光ファイバから出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outは、下記(1)式および(2)式で表される。Δβは、位相不整合量であって、下記(3)式で表される。γは、光ファイバの非線形係数であって、下記(4)式で表される。Leffは、光ファイバの実効長であって、下記(5)式で表される。また、4つの波長λP1,λP2,λS,λIは互いに近い値であるとして、これらの波長λを下記(6)式で近似する。なお、これらの式については、文献「K. Inoue et. al., J. of Lightwave Technol., Vol.10, No.11,pp.1553-1561, (1992)」に詳述されている。
【0026】
【数1】
【0027】
【数2】
【0028】
【数3】
【0029】
【数4】
【0030】
【数5】
【0031】
【数6】
【0032】
Lは光ファイバ長である。n2は波長λでの光ファイバの3次の非線形屈折率である。Aeffは波長λでの光ファイバの実効断面積である。αは波長λでの光ファイバの伝送損失である。βP1は波長λP1での光ファイバの伝搬定数であり、βP2は波長λP2での光ファイバの伝搬定数であり、βSは波長λSでの光ファイバの伝搬定数であり、βIは波長λIでの光ファイバの伝搬定数である。Dは縮退因子である。波長λP1と波長λP2とが互いに等しい場合には縮退因子は値1であり、波長λP1と波長λP2とが互いに異なる場合には縮退因子は値4である。
【0033】
特に、波長λでの光ファイバの伝送損失αが無視し得るほど小さい場合には、上記(1)式は下記(7)式で近似される。この式から判るように、位相不整合量Δβが値0に近いほど、光ファイバから出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outは大きくなる。光ファイバ長Lが短いほど、「LΔβ/2」の値が小さくなり、光ファイバから出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outは、位相不整合量Δβの影響が小さくなる。
【0034】
【数7】
【0035】
また、周波数整合条件から、下記(8)式が成り立つ。したがって、上記(6)式は、下記(9)式に変換され得る。光ファイバにおいて広いプローブ光波長範囲で高効率な波長変換を実現するためには、上記(3)式で示される位相不整合量Δβは広い波長範囲でほぼ0になることが望ましい。上記(6)式または(9)式で表される波長λを周波数ωに変換すると、下記(10)式で表される。ここで、cは光速である。
【0036】
【数8】
【0037】
【数9】
【0038】
【数10】
【0039】
伝搬定数βは、(10)式で記述される周波数ωを中心にテーラー展開すると、下記(11)式で表される。また、周波数ωによる伝搬定数βのn階微分値は下記(12)式で表される。また、伝搬定数βの2階微分値β2,3階微分値β3および4階微分値β4は、波長分散D,分散スロープSおよび分散スロープの波長微分値(dS/dλ)との間に、下記(13)式〜下記(15)式で表される関係がある。
【0040】
【数11】
【0041】
【数12】
【0042】
【数13】
【0043】
【数14】
【0044】
【数15】
【0045】
ここで、波長λP1と波長λP2とが互いに等しい波長λPであるとすると、上記(9)式および(10)式から「λ=λP」および「ω=ωP」なる関係式が成立する。したがって、上記(8)式および(11)式を用いると、上記(3)式は下記(16)式となる。
【0046】
【数16】
【0047】
この(16)式から、ポンプ光波長λPにおける2階微分値β2および4階微分値β4それぞれの絶対値が小さいほど、位相不整合量Δβの絶対値が小さくなることが判る。また、2階微分値β2が零になるようにポンプ光波長λPを光ファイバの零分散波長と一致させるのが必ずしも好ましいわけではなく、4階微分値β4の影響を考慮したうえでポンプλP光波長を選ぶべきである。つまり、4階微分値β4が負の場合には、2階微分値β2が正となるように零分散波長よりも短波長となるようにポンプ光波長λPを選択するべきである。また、逆に4階微分値β4が正の場合には、2階微分値β2が負となるように零分散波長よりも長波長となるようにポンプ光波長λPを選択するべきである。
【0048】
次に、以上までの解析の結果に基づいて更に具体的に解析を行った結果について説明する。図1は、光ファイバから出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。横軸は、プローブ光波長λSであり、縦軸は、規格化したアイドラ光の強度をdB単位で記入したものである。ここでは、光ファイバに入射するポンプ光を1波長とし、光ファイバの零分散波長λ0を1570nmとし、零分散波長λ0における光ファイバの分散スロープSを+0.024ps/nm2/kmとし、光ファイバのファイバ長Lを100mとし、光ファイバの伝送損失αを0.20/kmとした。また、ポンプ光波長λPと光ファイバの零分散波長λ0とは互いに一致させた。そして、上記(1)式〜(6)式および(16)式を用いて、アイドラ光λIのパワーPI-outが相対的にどのように変化するのかを調査した。
【0049】
図1では、伝搬定数βの4階微分値β4について、一般的な値である1×10−55s/m、及び、2桁小さくした1×10−57s/mの、2つの場合について示した。図1中に示されるように、アイドラ光のパワーがピーク値に対して−3dB以上である(つまり、ピーク値に対して1/2以上である)プローブ光の波長幅(半値全幅)を「波長変換帯域幅」と定義する。ポンプ光波長λPと光ファイバの零分散波長λ0とが互いに等しいとき、伝搬定数βの2階微分値β2は0であるから、上記(16)式から判るように、伝搬定数βの4階微分値β4が小さいほど波長変換帯域幅は広くなる。
【0050】
図2は、波長変換帯域幅とポンプ光波長λPとの関係を示す図である。横軸は、「零分散波長λ0−ポンプ光波長λP」であり、縦軸は、波長変換帯域幅である。この図から、伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値が小さいほど、波長変換帯域幅の最大値が大きくなり、好ましいことがわかる。また、4階微分値β4が負の場合には、2階微分値β2が正となるように、ポンプ光波長λPは零分散波長λ0より小さくなり、4階微分値β4が正の場合には、2階微分値β2が負となるように、ポンプ光波長λPは零分散波長λ0より大きくなるが、これは(16)式で示されるとおりである。図2(a)と同図(b)との比較から、4階微分値β4の絶対値が等しければ、波長変換帯域幅もほぼ等しいことがわかる。
【0051】
この図2から、ファイバ長Lが100mである場合に、波長変換帯域幅が100nm以上と広くなり、「零分散波長λ0−ポンプ光波長λP」のトレランスは±0.6nm程度である。4階微分値β4が−10−55s4/mである場合は、波長変換帯域幅が100nm以上と広くなり、「零分散波長λ0−ポンプ光波長λP」のトレランスはやはり±0.6nmとなる。通常はポンプ光波長λPを一定に保つので、光ファイバの零分散波長λ0の変動を±0.6nm以下の範囲に抑制することが広帯域の波長変換には必要であるといえる。なお、このような零分散波長λ0の変動が抑制された光ファイバは、例えば、光ファイバ母材の長手方向の各位置で屈折率プロファイルを測定し、その測定結果に基づいて所望の特性を有する光ファイバが得られるように光ファイバ母材の外形を研削し、その研削した光ファイバ母材を線引することで、実現可能である。
【0052】
実際には、長手方向では光ファイバの零分散波長λ0が或る程度は変動してしまうので、波長変換帯域幅は小さくなってしまう。「零分散波長λ0−ポンプ光波長λP」が或る幅を持った際に波長変換帯域幅の最小値がどうなるのかを調査することによって、零分散波長λ0が変動したとき波長変換帯域幅がどの程度になるのかを検討した。図3は、波長変換帯域幅とポンプ光波長λPとの関係を示す図において波長変換帯域幅の最小値を説明する図である。図4および図5それぞれは、光ファイバの零分散波長λ0の変動幅の各値について、4階微分値β4の絶対値および光ファイバ長Lの各値における波長変換帯域幅を纏めた図表である。
【0053】
図4(a)は、零分散波長λ0の変動がない場合の波長変換帯域幅を示す。図4(b)は、零分散波長λ0の変動が±0.05nmである場合の波長変換帯域幅を示す。図4(c)は、零分散波長λ0の変動が±0.10nmである場合の波長変換帯域幅を示す。図5(a)は、零分散波長λ0の変動が±0.20nmである場合の波長変換帯域幅を示す。図5(b)は、零分散波長λ0の変動が±0.60nmである場合の波長変換帯域幅を示す。また、図5(c)は、零分散波長λ0の変動が±1.0nmである場合の波長変換帯域幅を示す。
【0054】
図4(a)に示されるように、零分散波長λ0の変動がない場合には、4階微分値β4が小さいほど波長変換帯域幅が大きくなることがわかる。例えば、ファイバ長Lが100mであるときには、図6に示されるとおりである。図6は、零分散波長λ0の変動がないファイバ長100mの光ファイバにおける波長変換帯域幅と4階微分値β4との関係を示す図である。この図に示されるように、4階微分値β4の絶対値が従来と同等の1×10−55s4/mであるときには、波長変換帯域幅は200nm以上とはなりえない。4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下である場合には、波長変換帯域幅は200nmを超え、好適である。また、4階微分値β4の絶対値が1×10−56s4/m以下である場合には、波長変換帯域幅は特徴的に大きくなり、300nm以上となる。なお、この波長変換帯域幅が200nmであれば、一般に光通信において信号光波長として用いられるSバンド,CバンドおよびLバンドが含まれるので好ましい。
【0055】
実際には、零分散波長λ0は±0.05nm〜±0.10nm程度は変動してしまう場合が多い。例えばファイバ長100mのときは、図7,図8に示されるとおりである。図7は、零分散波長λ0の変動が±0.05nmであるファイバ長100mの光ファイバにおける波長変換帯域幅と4階微分値β4との関係を示す図である。この図に示されるように、4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下である場合には、波長変換帯域幅は特徴的に大きくなり200nm程度以上となり、また、4階微分値β4の絶対値が1×10−57s4/m以下である場合には、波長変換帯域幅は300nm程度以上と極めて広くなることがわかる。図8は、零分散波長λ0の変動が±0.10nmであるファイバ長100mの光ファイバにおける波長変換帯域幅と4階微分値β4との関係を示す図である。この図に示されるように、4階微分値β4の絶対値が3×10−56s4/m以下であれば、波長変換帯域幅は200nm程度以上と拡大可能であり、好ましい。また、更に好ましくは、4階微分値β4の絶対値が2×10−56s4/m以下である。
【0056】
上記(7)式から判るように、光ファイバの長さLが長い方が、光ファイバから出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outのパワーが強く、効率が高い。これは、やはり、(7)式から、光ファイバに入射するポンプ光λPのパワーPPを大きくすれば解決できることが判る。図4および図5から、光ファイバの長さLが短いほど波長変換帯域幅が拡大することが明らかである。例えば、零分散波長λ0が±0.10nm程度変動している場合、図9に示されるようになる。図9は、零分散波長λ0の変動が±0.10nmである光ファイバにおける波長変換帯域幅とファイバ長Lとの関係を示す図である。この図から判るように、4階微分値β4を低減する効果が明確になるのは、ファイバ長Lが500m以下の場合である。図10は、波長変換帯域幅と零分散波長λ0の変動量との関係を示す図である。この図から判るように、零分散波長λ0の変動が大きいほど波長変換帯域幅が狭くなる。零分散波長λ0の変動が±0.6nm以上であれば、4階微分値β4を低減する効果が明確とならなくなる。
【0057】
このように、零分散波長λ0の変動を±0.6nm以下に抑制すれば、100nm以上という広帯域の波長変換が実現可能である。また、図4,図5および図10から、零分散波長λ0の変動が±0.6nm以上では、4階微分値β4の低減の効果はあまり大きくないが、零分散波長λ0の変動が±0.2nm以下であると、4階微分値β4を小さくする効果が現れて帯域幅が拡大するので、さらに好適である。
【0058】
次に、上記のような伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値を低減し得るような光ファイバの具体的な構成例について説明する。4階微分値β4の絶対値を低減し得るような光ファイバについての検討は、従来では為されてはおらず、本発明者により初めて為されたものである。上記(7)式から判るように、光ファイバの非線形係数γは、高い方が望ましく、特に10/W-km以上であるとよい。そのため、光ファイバの実効断面積Aeffは15μm2以下である方が望ましい。
【0059】
図11は、本実施形態の光ファイバ10の断面構造および屈折率プロファイルの好適例を示す図である。同図(a)は、光ファイバ10の長手方向に垂直な断面を示し、同図(b)は、光ファイバ10の径方向の屈折率プロファイルを示す。光ファイバ10は、最大屈折率N1および外径2aを有する中心コア部11と、この中心コア部11を取り囲み最小屈折率N2および外径2bを有するディプレスト部12と、このディプレスト部12を取り囲み最大屈折率N3を有するクラッド部13と、を少なくとも備える。
【0060】
中心コア部11,ディプレスト部12およびクラッド部13それぞれの屈折率は、「N1>N3>N2」なる関係を満たす。ここで、クラッド部13の屈折率N3を基準として、中心コア部11の比屈折率差をΔ+とし、ディプレスト部12の比屈折率差をΔ−とする。また、中心コア部11およびディプレスト部12それぞれの外径の比をRa(=2a/2b)とする。
【0061】
図12は、分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。ここでは、図11に示されるような構造の光ファイバ10において、中心コア部11の屈折率のα乗プロファイルにおけるα値を3とし、中心コア部11の比屈折率差Δ+を3.2%とし、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を−0.3%とし、零分散波長λ0を1550nmとした。
【0062】
この図から判るように、4階微分値β4にはRa依存性があり、Raが0.4以上であるときに4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下となり、特にRaが0.6付近であるときに4階微分値β4の絶対値が1×10−56s4/m以下となる。この光ファイバ10のその他の特性として、波長1550nmにおいて、実効断面積Aeffは9.8μm2であり、非線形係数γは24/W-km(XPM法での測定)であり、ファイバカットオフ波長は1400nmであり、伝送損失は0.6dB/kmであり、モードフィールド径は3.6μmであり、偏波モード分散は0.01〜0.1ps/km1/2である。なお、CW-SPM法による非線形係数γの測定値は、XPM法による非線形係数γの測定値の70%程度に小さくなることが知られている。
【0063】
また、この光ファイバ10は、曲げに非常に強く、30φの径に巻いても0.01dB/km以下の損失増である。また、この光ファイバ10は、通常のシングルモード光ファイバとの接続も可能であり、一般的な融着器を用いれば接続ロスを0.5dB程度とすることができ、モードフィールド径を拡大する方法を用いれば接続ロスを0.2dB以下とすることができる。
【0064】
図13も、分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。ここでは、図11に示されるような構造の光ファイバ10において、中心コア部11の屈折率のα乗プロファイルにおけるα値を3とし、中心コア部11の比屈折率差Δ+を3.5%とし、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を−0.35%とし、零分散波長λ0を1540nmとした。
【0065】
この図から判るように、この光ファイバ10は、全般的に4階微分値β4が小さいが、比Raが0.45付近および0.75付近それぞれで符号が変わっている。つまり、この付近の比Raで光ファイバ10を製造すれば、4階微分値β4が5×10−57s4/m以下であるような極めて小さな光ファイバ10を実現することが可能である。この光ファイバ10のその他の特性は、波長1550nmにおいて、実効断面積Aeffは9.1μm2であり、非線形係数γは26/W-km(XPM法での測定)であり、ファイバカットオフ波長は1450nmであり、伝送損失は0.9dB/kmであり、モードフィールド径は3.4μmであり、偏波モード分散は0.01〜0.1ps/km1/2である。
【0066】
また、この光ファイバ10も、曲げに非常に強く、30φの径に巻いても0.01dB/km以下の損失増である。また、この光ファイバ10は、通常のシングルモード光ファイバとの接続も可能であり、一般的な融着器を用いれば接続ロスを0.5dB程度とすることができ、モードフィールド径を拡大する方法を用いれば接続ロスを0.2dB以下とすることができる。
【0067】
以上のように、中心コア部11およびディプレスト部12を有するような構造の光ファイバであれば、4階微分値β4の調整が可能である。図14は、本実施形態の光ファイバの屈折率プロファイルの他の好適例を示す図である。同図(a)に示されるように、ディプレスト部11の外側に更に他の領域14があってもよいし、同図(b)に示されるように、領域14の外側に更に他の領域15があってもよいし、同図(c)に示されるように、中心コア部11とディプレスト部12との間に他の領域16があってもよいし、また、同図(d)に示されるように、中心コア部11にディップが存在してもよい。これら何れの場合にも、4階微分値β4の調整が可能であり、4階微分値β4の絶対値を小さくすることができる。
【0068】
偏波モード分散が低いほど波長変換帯域幅が広くなるので好ましい。光ファイバの全長で偏波モード分散は0.2ps以下であるとよい。光ファイバを偏波保持型(例えばPANDA型)とすることで、その光ファイバを導波する基底モード光の直交偏波間のカップリングを抑制することが可能であり、さらに好適である。直交偏波間のカップリングは、ファイバ長1kmであっても−15dB以下にすることが可能で、実使用のファイバ長ではさらに小さくすることができる。
【0069】
光ファイバは、例えば、最小曲げ径40φ程度以下の小型コイルに巻かれていてもよい。このとき、光ファイバの被覆外径が150μm以下など細くなる方が、コイルをより小型にすることができる。また、光ファイバのガラス部11の外径が100μm以下など細ければ、小型に巻いたときの巻き歪が小さくなるために破断する確率が小さくなったり、曲げ誘起複屈折による偏波モード分散の劣化を抑制できたりすることが可能である。
【0070】
以上ような特性を満たす光ファイバを実際に製造した。何れの光ファイバも、図11に示されるような構造を有するものであった。製造した光ファイバは、中心コア部11の屈折率のα乗プロファイルにおけるα値が3であり、中心コア部11の比屈折率差Δ+が2.5%であり、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−が−0.5%であり、比Raが0.6であり、コア径2aが4.7μmであった。この光ファイバは、零分散波長が1440nmであった。また、零分散波長1440nmにおいて、分散スロープが+0.0466ps/nm2/kmであり、分散スロープの波長微分値が1.66×10−4ps/nm3/kmであり、4階微分値β4が−3.8×10−56s4/mであり、実効断面積Aeffが11μm2であり、非線形係数γが21/W-kmであり、モードフィールド径が3.8μmであり、カットオフ波長が1.37μmであり、Cバンドにおける偏波モード分散が0.02ps/km1/2であり、4階微分値β4が低減された高非線形性光ファイバであった。
【0071】
また、製造した他の光ファイバは、中心コア部11の屈折率のα乗プロファイルにおけるα値が1.9であり、中心コア部11の比屈折率差Δ+が3.0%であり、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−が−0.6%であり、比Raが0.6であり、コア径2aが4.5μmであった。この光ファイバは、零分散波長が1640nmであった。また、零分散波長1640nmにおいて、分散スロープが+0.0231ps/nm2/kmであり、分散スロープの波長微分値が−9.63×10−5ps/nm3/kmであり、4階微分値β4が−3.4×10−56s4/mであり、実効断面積Aeffが11μm2であり、非線形係数γが18/W-kmであり、モードフィールド径が3.9μmであり、カットオフ波長が1.31μmであり、CバンドおよびLバンドにおける偏波モード分散が0.03ps/km1/2であり、4階微分値β4が低減された高非線形性光ファイバであった。
【0072】
次に、上記のような伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値を低減し得るような光ファイバのより一般的な設計例について説明する。ここでも、光ファイバは、図11に示されるような構造を有するものとし、中心コア部11の屈折率のα乗プロファイルにおけるα値を4とし、零分散波長を1550nmとした。
【0073】
図15は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を2.5%とし、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を−0.1%としたときの、分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。このときは、4階微分値β4の絶対値は7×10−56s4/m程度までしか小さくならず、好ましい例ではない。また、コア径2aは4μm程度であり、カットオフ波長は1400nm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffは12μm2程度であり、非線形係数γは17/W-km程度である。
【0074】
図16は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を2.5%とし、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を−0.2%としたときの、分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。このときは、4階微分値β4の絶対値は4×10−56s4/m程度まで小さくなり、好ましい。また、コア径2aは4μm程度であり、カットオフ波長は1400nm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffは12μm2程度であり、非線形係数γは18/W-km程度である。
【0075】
図17は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を2.5%とし、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を−0.3%としたときの、分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。また、図18は、このときの4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。このときは、4階微分値β4の絶対値は値0をとり得るので、好ましい例である。また、比Raが0.5程度から0.65程度まで、4階微分値β4の絶対値が1×10−56s4/m以下となるので、ファイバ製造における構造トレランスが広く、非常に好ましい。
また、コア径2aは4μm程度であり、カットオフ波長は1400nm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffは12μm2程度であり、非線形係数γは18/W-km程度である。
【0076】
図19は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を2.5%とし、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を−0.6%としたときの、分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。また、図20は、このときの4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。このときは、4階微分値β4の絶対値は値0をとり得るので、好ましい例である。ただし、4階微分値β4が0付近で小さくなる際には、比Raの小さな変動であっても4階微分値β4が大きく変動するため、ファイバ製造における構造トレランスがあまり広くない。また、コア径2aは4μm程度であり、カットオフ波長は1300nm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffは11μm2程度であり、非線形係数γは20/W-km程度である。
【0077】
次に、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−を変化させた際の4階微分値β4と比Raとの関係について説明する。
【0078】
図21は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を2.5%としたときの4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。ここでは、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−の各値について4階微分値β4と比Raとの関係が示されている。Δ+が2.5%であるとき、Δ−が−0.2%程度以下であって差「Δ+−Δ−」が2.7%程度以上であれば、4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下となる。比Raが0.5〜0.6付近で4階微分値β4は最小値をとることがわかる。この付近で4階微分値β4の絶対値が小さい値であれば、製造トレランスが広くなり、Δ−が−0.4%〜−0.2%であると製造が容易である。また、Δ−が−0.5%〜−1.1%で比Raが0.2〜0.3であっても、4階微分値β4の絶対値が常に小さく、製造が容易となる。
【0079】
図22は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を2.0%としたときの4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。ここでも、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−の各値について4階微分値β4と比Raとの関係が示されている。その他の特性として、コア径2aが4.5μm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffが13〜15μm2程度であり、非線形係数γが13〜15/W-kmであり、カットオフ波長が1200〜1300nm程度である。Δ+が2.0%であるとき、Δ−が−0.2%程度以下であって差「Δ+−Δ−」が2.2%程度以上であれば、4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下となる。比Raが0.4〜0.6付近で4階微分値β4は最小値をとることがわかる。この付近で4階微分値β4の絶対値が小さい値であれば、製造トレランスが広くなり、Δ−が−0.4〜−0.25%であると製造が容易である。また、Δ−が−0.5%以下で比Raが0.2〜0.3であっても、4階微分値β4の絶対値が常に小さく、製造が容易となる。
【0080】
図23は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を3.0%としたときの4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。ここでも、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−の各値について4階微分値β4と比Raとの関係が示されている。その他の特性として、コア径2aが4.0μm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffが9〜10μm2程度であり、非線形係数γが22〜26/W-kmであり、カットオフ波長が1500〜1300nm程度である。Δ+が3.0%であるのとき、Δ−が−0.10%程度以下であって差「Δ+−Δ−」が3.1%程度以上であれば、4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下となる。比Raが0.4〜0.6付近で4階微分値β4は最小値をとることがわかる。この付近で4階微分値β4の絶対値が小さい値であれば、製造トレランスが広くなり、Δ−が−0.4〜−0.15%であると製造が容易である。また、Δ−が−1.0%〜−0.2%で比Raが0.2〜0.3であっても、4階微分値β4の絶対値が常に小さく、製造が容易となる。
【0081】
図24は、中心コア部11の比屈折率差Δ+を3.5%としたときの4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。ここでも、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−の各値について4階微分値β4と比Raとの関係が示されている。その他の特性として、コア径2aが4.0μm程度であり、波長1.55μmにおいて実効断面積Aeffが8〜9μm2程度であり、非線形係数γが28〜31/W-kmであり、カットオフ波長が1600〜1400nm程度である。Δ+が3.5%であるのとき、Δ−が−0.10%程度以下であって差「Δ+−Δ−」が3.6%程度以上であれば、4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下となる。比Raが0.4〜0.7付近で4階微分値β4は最小値をとることがわかる。この付近で4階微分値β4の絶対値が小さい値であれば、製造トレランスが広くなり、Δ−が−0.3〜−0.1%であると製造が容易である。また、Δ−が−0.7%〜−0.1%で比Raが0.2〜0.4であっても、4階微分値β4の絶対値が常に小さく、製造が容易となる。
【0082】
以上を纏めると、中心コア部11の比屈折率差Δ+とディプレスト部12の比屈折率差Δ−との差「Δ+−Δ−」が2.2%以上であり、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−が−0.1〜−1.1%であり、比Raが0.2〜0.7であると好ましい。また、差「Δ+−Δ−」が3.1%以上であり、Δ−が−0.1〜−1.1%であり、比Raが0.2〜0.7であると、実効断面積Aeffが11μm2以下と小さく、非線形係数γが20/W-km程度以上と大きくなるので、さらに好ましい。
【0083】
以上の計算結果から、4階微分値β4と分散スロープSとの関係を図示すると図25のようになり、また、4階微分値β4と分散スロープSの波長微分値(dS/dλ)との関係を図示すると図26のようになる。図25から判るように、分散スロープSは+0.018〜+0.030ps/nm2/km程度であるのが好ましい。さらには、分散スロープSは+0.022〜+0.028ps/nm2/km程度であれば、4階微分値β4の絶対値がさらに小さくなり得るため、さらに好ましい。また、図26から判るように、分散スロープSの波長微分値(dS/dλ)は−0.00012〜−0.00008ps/nm3/km程度であるのが好ましい。さらには、分散スロープSの波長微分値(dS/dλ)は−0.00011〜−0.00009ps/nm3/km程度であれば、4階微分値β4の絶対値がさらに小さくなり得るため、さらに好ましい。
【0084】
また、高非線形性光ファイバにおいて、分散スロープSが小さいと零分散波長λ0の変動が大きくなる。図27は、コア径2aの変動が1%あったときの零分散波長λ0の変動量と分散スロープSとの関係を示す図である。この図から判るように、零分散波長λ0の変動が大きいと、波長変換帯域幅を狭めてしまう。特に、分散スロープSは、+0.018ps/nm2/km以下では零分散波長λ0の変動が大きいので、+0.018ps/nm2/km以上であるのが好ましい。
【0085】
次に、本発明の光ファイバおよび光デバイスの実施例について説明する。図28は、実施例の光デバイス1の構成図である。この光デバイス1は、上述した光ファイバ10を備える他、ポンプ光源21、光増幅器22、バンドパスフィルタ23、偏波コントローラ24、プローブ光源31、偏波コントローラ34、光合波器40およびスペクトラムアナライザ50を備える。
【0086】
ここで用いた光ファイバ10は、図11に示されるような構造を有し、中心コア部11の比屈折率差Δ+が3.41%であり、ディプレスト部12の比屈折率差Δ−が−0.14%であり、比Raが0.56であり、コア径2aが3.78μmであり、長さLが100mであった。また、この光ファイバ10は、零分散波長λ0が1562.3nmであり、波長1.55μmにおいて伝送損失が1dB/kmであり、実効断面積Aeffが9.4μm2であり、モードフィールド径が3.51μmであり、XPM法で測定した非線形係数γが25/W-kmであり、偏波モード分散が0.03ps/km1/2であった。また、この光ファイバ10は、零分散波長において、分散スロープSが+0.024ps/nm2/kmであり、分散スロープSの波長微分値(dS/dλ)が−0.00010ps/nm3/kmであり、伝搬定数βの3階微分値β3が4×10−41s3/mであり、伝搬定数βの4階微分値β4が+2×10−56s4/mであった。
【0087】
ポンプ光源21は、波長λPのポンプ光を発生する。プローブ光源31は、波長λSのプローブ光を発生する。本実施例では、ポンプ光波長λPは、光ファイバ10の零分散波長付近とした。また、プローブ光波長λSは、波長可変光源の出力範囲(1440〜1653nm)でスィープさせた。光増幅器22は、ポンプ光源21から出力されたポンプ光を光増幅して出力する。バンドパスフィルタ23は、光増幅器22から出力された光のうち波長λPの光を選択的に透過させて出力する。偏波コントローラ24は、バンドパスフィルタ23から出力されたポンプ光λPの偏波状態を制御して出力する。また、偏波コントローラ34は、プローブ光源31から出力されたプローブ光λSの偏波状態を制御して出力する。
【0088】
光合波器40は、偏波コントローラ24から出力されたポンプ光λPを入力するとともに、偏波コントローラ34から出力されたプローブ光λSをも入力して、これらポンプ光λPおよびプローブ光λSを合波して出力する。光ファイバ10は、光合波器40により合波されて出力されたポンプ光λPおよびプローブ光λSを入力する。本実施例では、光ファイバ10に入射するポンプ光λPのパワーPP1-inを+3dBmとし、光ファイバ10に入射するプローブ光λSのパワーPS-inを−5dBmとして、この光ファイバ10において四光波混合によりアイドラ光λIを発生させた。アイドラ光波長λIは「λI=(2/λP−1/λS)−1」なる式で表される。スペクトラムアナライザ50は、光ファイバ10から出力される光を受光して、その光のスペクトルを測定する。特に、本実施例では、スペクトラムアナライザ50は、光ファイバ10から出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outを測定した。
【0089】
図29は、実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。この図の縦軸は、アイドラ光λIのパワーPI-outの最大値を0dBとして規格化してある。また、この図には、ポンプ光波長λPが1562.0nm,1562.3nmおよび1562.6nmそれぞれの各値である場合について、アイドラ光パワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係が示されている。光ファイバ10の伝搬定数βの4階微分値β4が正であるから、ポンプ光波長λPが光ファイバ10の零分散波長λ0より長い場合に、波長変換帯域幅が広くなると予測される。
【0090】
実際に図29に示されるように、ポンプ光波長λPが1562.0nmであるときに波長変換帯域幅が126nmであり、ポンプ光波長λPが1562.3nmであるときに波長変換帯域幅が168nmであり、ポンプ光波長λPが1562.6nmであるときに波長変換帯域幅が220nmであった。すなわち、ポンプ光波長λPが零分散波長λ0より0.3nmだけ長い1562.6nmである場合に、波長変換帯域幅が最も広くなった。
【0091】
ただし、実施例では、プローブ光源31として実際に用いた波長可変光源の出力波長範囲の限界で、プローブ光λSが1653nmよりも長波長側では評価ができていない。そこで、上記(1)式〜(6)式および(16)式から、計算により、光ファイバ10から出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outを求めた。
【0092】
図30は、ポンプ光波長λPが1562.0nmであるときの光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。図31は、ポンプ光波長λPが1562.3nmであるときの光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。図32は、ポンプ光波長λPが1562.6nmであるときの光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。これらの図には、光ファイバ10から出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outの計算値が実線で示されている。
【0093】
図30および図31から判るように、ポンプ光波長λPが1562.0nm,1562.3nmである場合には、計算値と実測値とは互いに極めてよく一致している。一方、図32から判るように、ポンプ光波長λPが1562.6nmである場合には、計算値と実測値とは、互いによく一致しているものの、プローブ光λSが短波長側での一致があまりよくない。
【0094】
そこで、光ファイバ10の長手方向において±0.1nmの零分散波長λ0の変動があるとして再度計算すると図33に示されるようになる。この図に示されるように、零分散波長λ0の変動を±0.1nmとした場合、計算値と実測値とは互いに極めてよく一致する。したがって、この光ファイバ10は、ポンプ光波長λPが最適化されていない場合でも波長変換帯域幅が100nm以上と広く、ポンプ光波長λPが最適化された場合には波長変換帯域幅が220nmと極めて広い。また、零分散波長λ0の変動は±0.1nm程度と推測できる。これは、従来知られている90〜110nmの変換帯域を2倍とするものである。
【0095】
図34は、ポンプ光波長λPが1562.7nmであるときの光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。このように、プローブ光波長λSを更に長波長化して1562.7nmとすると、波長変換帯域(アイドラ光パワーPI-outがピーク値に対して−3dB以上であるプローブ光の波長帯域)は、連続的にはならず、2つの帯域に分割される。しかし、プローブ光波長λSがポンプ光波長λPから遠ざかっても高い波長変換効率が得られる。3dB内と定義した波長変換帯域幅は狭くなるが、OPAやスイッチといった光デバイスにとっては、プローブ光波長λSがポンプ光波長λPから遠いのでプローブ光の分散値が比較的大きく、プローブ光間での四光波混合などの問題が回避できる。
【0096】
図35は、実施例の光ファイバの長さを1000mとしたときのアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。また、図36は、実施例および従来例それぞれの光ファイバの波長変換帯域幅とファイバ長との関係を示す図である。上記(7)式や図9に示されるように、ファイバ長Lが長いほど波長変換帯域幅は狭くなる。モード間のカップリングの問題も加わり、偏波保持ファイバでない通常の光ファイバでは、従来、長さ500m以上で波長変換帯域幅が50nm以上になることはなく、長さ1000mでは波長変換帯域幅は20nm程度であった。これに対して、試作した実施例の光ファイバでは、4階微分値β4を低減する効果が大きく、ファイバ長が1000mであるときでも波長変換帯域幅は64nmと大きく広がった。
【0097】
このように、4階微分値β4の絶対値を5×10−56s4/m以下に抑制し、零分散波長λ0の変動を±0.6nm以下に抑制することで、100nm以上(好ましくは150nm以上、さらには200nm以上)と極めて広い波長変換帯域幅を有することがわかる。非常に広い波長範囲でパラメトリック過程が効率的に発生することから、通信・非通信用途での波長変換やOPA、光スイッチ、光分波器、サンプリングオシロ、などの光ファイバ型デバイスやアプリケーションを容易に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】光ファイバから出射されるアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図2】波長変換帯域幅とポンプ光波長λPとの関係を示す図である。
【図3】波長変換帯域幅とポンプ光波長λPとの関係を示す図において波長変換帯域幅の最小値を説明する図である。
【図4】光ファイバの零分散波長λ0の変動幅の各値について、4階微分値β4の絶対値および光ファイバ長Lの各値における波長変換帯域幅を纏めた図表である。
【図5】光ファイバの零分散波長λ0の変動幅の各値について、4階微分値β4の絶対値および光ファイバ長Lの各値における波長変換帯域幅を纏めた図表である。
【図6】零分散波長λ0の変動がないファイバ長100mの光ファイバにおける波長変換帯域幅と4階微分値β4との関係を示す図である。
【図7】零分散波長λ0の変動が±0.05nmであるファイバ長100mの光ファイバにおける波長変換帯域幅と4階微分値β4との関係を示す図である。
【図8】零分散波長λ0の変動が±0.10nmであるファイバ長100mの光ファイバにおける波長変換帯域幅と4階微分値β4との関係を示す図である。
【図9】零分散波長λ0の変動が±0.10nmである光ファイバにおける波長変換帯域幅とファイバ長Lとの関係を示す図である。
【図10】波長変換帯域幅と零分散波長λ0の変動量との関係を示す図である。
【図11】本実施形態の光ファイバ10の断面構造および屈折率プロファイルの好適例を示す図である。
【図12】分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。
【図13】分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。
【図14】本実施形態の光ファイバの屈折率プロファイルの他の好適例を示す図である。
【図15】分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。
【図16】分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。
【図17】分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。
【図18】4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。
【図19】分散スロープS,分散スロープの波長微分値(dS/dλ),伝搬定数βの4階微分値β4を、比Raの各値について纏めた図表である。
【図20】4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。
【図21】4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。
【図22】4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。
【図23】4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。
【図24】4階微分値β4と比Raとの関係を示す図である。
【図25】4階微分値β4と分散スロープSとの関係を示す図である。
【図26】4階微分値β4と分散スロープSの波長微分値(dS/dλ)との関係を示す図である。
【図27】コア径2aの変動が1%あったときの零分散波長λ0の変動量と分散スロープSとの関係を示す図である。
【図28】実施例の光デバイス1の構成図である。
【図29】実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図30】実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図31】実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図32】実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図33】実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図34】実施例の光デバイス1の光ファイバ10から出射されたアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図35】実施例の光ファイバの長さを1000mとしたときのアイドラ光λIのパワーPI-outとプローブ光波長λSとの関係を示す図である。
【図36】実施例および従来例それぞれの光ファイバの波長変換帯域幅とファイバ長との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
1…光デバイス、10…光ファイバ、11…中心コア部、12…ディプレスト部、13…クラッド部、21…ポンプ光源、22…光増幅器、23…バンドパスフィルタ、24…偏波コントローラ、31…プローブ光源、34…偏波コントローラ、40…光合波器、50…スペクトラムアナライザ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全長での平均零分散波長λ0において周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下であり、長手方向に沿った零分散波長の変動が全長で±0.6nm以下であることを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記平均零分散波長λ0が1440nm〜1640nmの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記平均零分散波長λ0における実効断面積が15μm2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記平均零分散波長λ0における分散スロープが+0.018ps/nm2/km以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記平均零分散波長λ0における分散スロープの波長微分値が−0.00012ps/nm3/km〜−0.00008ps/nm3/kmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光ファイバ。
【請求項6】
全長における偏波モード分散が0.2ps以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光ファイバ。
【請求項7】
導波する基底モード光の直交偏波間のクロストークが全長で−15dB以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光ファイバ。
【請求項8】
最大屈折率N1および外径2aを有する中心コア部と、この中心コア部を取り囲み最小屈折率N2および外径2bを有するディプレスト部と、このディプレスト部を取り囲み最大屈折率N3を有するクラッド部と、を少なくとも備え、
「N1>N3>N2」なる関係を満たし、
前記クラッド部の屈折率N3を基準として、前記中心コア部の比屈折率差をΔ+とし、前記ディプレスト部の比屈折率差をΔ−としたときに、差「Δ+−Δ−」が2.2%以上であり、
前記中心コア部および前記ディプレスト部それぞれの外径の比Ra(=2a/2b)が0.2〜0.7の範囲にある、
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の光ファイバ。
【請求項9】
前記差「Δ+−Δ−」が3.1%以上であることを特徴とする請求項8記載の光ファイバ。
【請求項10】
前記ディプレスト部の比屈折率差Δ−が−0.1%〜−1.1%の範囲にあることを特徴とする請求項8または9に記載の光ファイバ。
【請求項11】
ファイバ長が500m以下であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の光ファイバ。
【請求項12】
全長での平均零分散波長λ0が1440nm〜1640nmの範囲にあり、
長手方向に沿った零分散波長の変動が全長で±0.6nm以下であり、
前記平均零分散波長λ0において、周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下であり、実効断面積が15μm2以下であり、分散スロープが+0.018ps/nm2/km〜+0.030ps/nm2/kmの範囲にあり、分散スロープの波長微分値が−0.00012ps/nm3/km〜−0.00008ps/nm3/kmの範囲にある、
ことを特徴とする光ファイバ。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の光ファイバと、波長λPのポンプ光を発生するポンプ光源と、波長λSのプローブ光を発生するプローブ光源と、を備え、
前記ポンプ光および前記プローブ光を前記光ファイバに導波させ、非線形光学現象によって新たな波長λIのアイドラ光を前記光ファイバから発生させる、
ことを特徴とする光デバイス。
【請求項14】
前記光ファイバに入射する前記ポンプ光のパワーをPP-inとし、前記光ファイバに入射する前記プローブ光のパワーをPS-inとし、前記光ファイバから出射される前記アイドラ光のパワーをPI-outとしたとき、
前記ポンプ光の波長λPおよびパワーPP-inそれぞれを一定に保ち、
前記プローブ光の波長λSを変化させた際の前記アイドラ光および前記プローブ光それぞれのパワーの比r(=PI-out/PS-in)の変動率が3dB以下である前記プローブ光の波長λSの範囲が100nm以上である、
ことを特徴とする請求項13記載の光デバイス。
【請求項15】
前記光ファイバに入射する前記ポンプ光のパワーをPP-inとし、前記光ファイバに入射する前記プローブ光のパワーをPS-inとし、前記光ファイバから出射される前記アイドラ光のパワーをPI-outとしたとき、
前記ポンプ光の波長λPおよびパワーPP-inそれぞれを一定に保ち、
前記ポンプ光および前記プローブ光それぞれの波長の差「λP−λS」の絶対値が5nmであるときの前記アイドラ光および前記プローブ光それぞれのパワーの比r(=PI-out/PS-in)の値に対して、前記差「λP−λS」の絶対値が50nm以上であるときの前記比rの変化率が3dB以下である、
ことを特徴とする請求項13または14に記載の光デバイス。
【請求項16】
前記光ファイバから出射される前記プローブ光のパワーPS-outが、前記光ファイバに入射する前記プローブ光のパワーPS-inより大きい、ことを特徴とする請求項13〜15の何れか1項に記載の光デバイス。
【請求項17】
光ファイバと、波長λPのポンプ光を発生するポンプ光源と、波長λSのプローブ光を発生するプローブ光源と、を備え、前記ポンプ光および前記プローブ光を前記光ファイバに導波させ、非線形光学現象によって新たな波長λIのアイドラ光を前記光ファイバから発生させる光デバイスであって、
前記光ファイバに入射する前記ポンプ光のパワーをPP-inとし、前記光ファイバに入射する前記プローブ光のパワーをPS-inとし、前記光ファイバから出射される前記アイドラ光のパワーをPI-outとしたとき、
前記ポンプ光の波長λPおよびパワーPP-inそれぞれを一定に保ち、
前記プローブ光の波長λSを変化させた際の前記アイドラ光および前記プローブ光それぞれのパワーの比r(=PI-out/PS-in)の変動率が3dB以下である前記プローブ光の波長λSの範囲が100nm以上である、
ことを特徴とする光デバイス。
【請求項18】
前記光ファイバに入射する前記ポンプ光のパワーをPP-inとし、前記光ファイバに入射する前記プローブ光のパワーをPS-inとし、前記光ファイバから出射される前記アイドラ光のパワーをPI-outとしたとき、
前記ポンプ光の波長λPおよびパワーPP-inそれぞれを一定に保ち、
前記ポンプ光および前記プローブ光それぞれの波長の差「λP−λS」の絶対値が5nmであるときの前記アイドラ光および前記プローブ光それぞれのパワーの比r(=PI-out/PS-in)の値に対して、前記差「λP−λS」の絶対値が50nm以上であるときの前記比rの変化率が3dB以下である、
ことを特徴とする請求項17記載の光デバイス。
【請求項19】
前記光ファイバから出射される前記プローブ光のパワーPS-outが、前記光ファイバに入射する前記プローブ光のパワーPS-inより大きい、ことを特徴とする請求項17または18に記載の光デバイス。
【請求項1】
全長での平均零分散波長λ0において周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下であり、長手方向に沿った零分散波長の変動が全長で±0.6nm以下であることを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記平均零分散波長λ0が1440nm〜1640nmの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記平均零分散波長λ0における実効断面積が15μm2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記平均零分散波長λ0における分散スロープが+0.018ps/nm2/km以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記平均零分散波長λ0における分散スロープの波長微分値が−0.00012ps/nm3/km〜−0.00008ps/nm3/kmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光ファイバ。
【請求項6】
全長における偏波モード分散が0.2ps以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光ファイバ。
【請求項7】
導波する基底モード光の直交偏波間のクロストークが全長で−15dB以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光ファイバ。
【請求項8】
最大屈折率N1および外径2aを有する中心コア部と、この中心コア部を取り囲み最小屈折率N2および外径2bを有するディプレスト部と、このディプレスト部を取り囲み最大屈折率N3を有するクラッド部と、を少なくとも備え、
「N1>N3>N2」なる関係を満たし、
前記クラッド部の屈折率N3を基準として、前記中心コア部の比屈折率差をΔ+とし、前記ディプレスト部の比屈折率差をΔ−としたときに、差「Δ+−Δ−」が2.2%以上であり、
前記中心コア部および前記ディプレスト部それぞれの外径の比Ra(=2a/2b)が0.2〜0.7の範囲にある、
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の光ファイバ。
【請求項9】
前記差「Δ+−Δ−」が3.1%以上であることを特徴とする請求項8記載の光ファイバ。
【請求項10】
前記ディプレスト部の比屈折率差Δ−が−0.1%〜−1.1%の範囲にあることを特徴とする請求項8または9に記載の光ファイバ。
【請求項11】
ファイバ長が500m以下であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の光ファイバ。
【請求項12】
全長での平均零分散波長λ0が1440nm〜1640nmの範囲にあり、
長手方向に沿った零分散波長の変動が全長で±0.6nm以下であり、
前記平均零分散波長λ0において、周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値β4の絶対値が5×10−56s4/m以下であり、実効断面積が15μm2以下であり、分散スロープが+0.018ps/nm2/km〜+0.030ps/nm2/kmの範囲にあり、分散スロープの波長微分値が−0.00012ps/nm3/km〜−0.00008ps/nm3/kmの範囲にある、
ことを特徴とする光ファイバ。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の光ファイバと、波長λPのポンプ光を発生するポンプ光源と、波長λSのプローブ光を発生するプローブ光源と、を備え、
前記ポンプ光および前記プローブ光を前記光ファイバに導波させ、非線形光学現象によって新たな波長λIのアイドラ光を前記光ファイバから発生させる、
ことを特徴とする光デバイス。
【請求項14】
前記光ファイバに入射する前記ポンプ光のパワーをPP-inとし、前記光ファイバに入射する前記プローブ光のパワーをPS-inとし、前記光ファイバから出射される前記アイドラ光のパワーをPI-outとしたとき、
前記ポンプ光の波長λPおよびパワーPP-inそれぞれを一定に保ち、
前記プローブ光の波長λSを変化させた際の前記アイドラ光および前記プローブ光それぞれのパワーの比r(=PI-out/PS-in)の変動率が3dB以下である前記プローブ光の波長λSの範囲が100nm以上である、
ことを特徴とする請求項13記載の光デバイス。
【請求項15】
前記光ファイバに入射する前記ポンプ光のパワーをPP-inとし、前記光ファイバに入射する前記プローブ光のパワーをPS-inとし、前記光ファイバから出射される前記アイドラ光のパワーをPI-outとしたとき、
前記ポンプ光の波長λPおよびパワーPP-inそれぞれを一定に保ち、
前記ポンプ光および前記プローブ光それぞれの波長の差「λP−λS」の絶対値が5nmであるときの前記アイドラ光および前記プローブ光それぞれのパワーの比r(=PI-out/PS-in)の値に対して、前記差「λP−λS」の絶対値が50nm以上であるときの前記比rの変化率が3dB以下である、
ことを特徴とする請求項13または14に記載の光デバイス。
【請求項16】
前記光ファイバから出射される前記プローブ光のパワーPS-outが、前記光ファイバに入射する前記プローブ光のパワーPS-inより大きい、ことを特徴とする請求項13〜15の何れか1項に記載の光デバイス。
【請求項17】
光ファイバと、波長λPのポンプ光を発生するポンプ光源と、波長λSのプローブ光を発生するプローブ光源と、を備え、前記ポンプ光および前記プローブ光を前記光ファイバに導波させ、非線形光学現象によって新たな波長λIのアイドラ光を前記光ファイバから発生させる光デバイスであって、
前記光ファイバに入射する前記ポンプ光のパワーをPP-inとし、前記光ファイバに入射する前記プローブ光のパワーをPS-inとし、前記光ファイバから出射される前記アイドラ光のパワーをPI-outとしたとき、
前記ポンプ光の波長λPおよびパワーPP-inそれぞれを一定に保ち、
前記プローブ光の波長λSを変化させた際の前記アイドラ光および前記プローブ光それぞれのパワーの比r(=PI-out/PS-in)の変動率が3dB以下である前記プローブ光の波長λSの範囲が100nm以上である、
ことを特徴とする光デバイス。
【請求項18】
前記光ファイバに入射する前記ポンプ光のパワーをPP-inとし、前記光ファイバに入射する前記プローブ光のパワーをPS-inとし、前記光ファイバから出射される前記アイドラ光のパワーをPI-outとしたとき、
前記ポンプ光の波長λPおよびパワーPP-inそれぞれを一定に保ち、
前記ポンプ光および前記プローブ光それぞれの波長の差「λP−λS」の絶対値が5nmであるときの前記アイドラ光および前記プローブ光それぞれのパワーの比r(=PI-out/PS-in)の値に対して、前記差「λP−λS」の絶対値が50nm以上であるときの前記比rの変化率が3dB以下である、
ことを特徴とする請求項17記載の光デバイス。
【請求項19】
前記光ファイバから出射される前記プローブ光のパワーPS-outが、前記光ファイバに入射する前記プローブ光のパワーPS-inより大きい、ことを特徴とする請求項17または18に記載の光デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
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【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2007−72182(P2007−72182A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259222(P2005−259222)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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