説明

光ファイバを製造するための方法並びに管状半製品

石英ガラスプリフォーム又は石英ガラス構成部材の同軸の集合体の引き伸ばしによる光ファイバの製造方法は公知であり、この方法により、コア区域、コア区域を取り囲む内側クラッド区域、内側クラッド区域を取り囲む環状区域を有するファイバが得られる。上記方法から出発して、コアとクラッドとの間の境界面の高い品質及び低い曲げ感応性により傑出する光ファイバの低コストの製造方法のための方法、管状半製品並びに同軸の部材の集合体を提供するために、本発明により、環状区域の石英ガラスを、環状区域管の形で、少なくとも6000質量ppmの平均フッ素含有量を有する石英ガラスから準備し、前記環状区域管は、管の内部表面と管の外部表面とにより規定される壁部を有し、前記環状区域管の壁部にわたって半径方向のフッ素濃度プロフィールを調節し、前記フッ素濃度プロフィールは少なくとも1μmで最大10μmの層厚を有するフッ素貧有層を有し、前記フッ素貧有層内で前記フッ素含有量は管の内部表面に向かって低下し、かつ1μmの厚さを有する表面付近の領域では最大で3000質量ppmであることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石英ガラスプリフォーム又は石英ガラス部材の同軸の集合体を引き伸ばすことによる光ファイバの製造方法において、前記ファイバは、屈折率nKのコア区域と、前記コア区域を取り囲む屈折率nMiの内側クラッド区域と、前記内側クラッド区域を取り囲む、屈折率nFのドープされた石英ガラスからなる環状区域とを有し、nF<nMi<nKが当てはまる光ファイバの製造方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、光ファイバを製造するための管状半製品に関する。
【0003】
従来の技術
光ファイバ内でガイドされる光信号の減衰は、特にこのファイバの屈曲に依存する。小さな曲げ半径が比較的高い光学的減衰を引き起こす。この信号損失は、曲げ不感応性の光ファイバの使用により低減させることができる。この種のファイバは数年来公知であり、光ファイバ通信網を家屋まで敷設する(fiber-to-the-home; FTTH)という潮流に次第に関心が高まっている。この適用に際して、空間的な制限及び美観的な要求のために、特に小さな曲げ半径が望まれる。
【0004】
この種の曲げ不感応性の光ファイバは、WO 2010/003856 A1に記載されていて、上記導入部で述べた種類のファイバについての製造方法も公知である。曲げ不感応性の光ファイバは、屈折率nKのコア区域と、前記コア区域を取り囲む、屈折率nMiのクラッド区域と、前記クラッド区域を取り囲む、屈折率nFのフッ素をドーピングした石英ガラスからなる環状区域と、前記環状区域を取り囲む、屈折率nMaのドープされていない石英ガラスからなる外側層とを有するため、半径方向の屈折率プロフィールは、nMa>nF<nMi<nKが当てはまる。このファイバは、石英ガラスプリフォーム又は石英ガラス部材の同軸の集合体の引き伸ばしにより得られ、環状区域の石英ガラスはプラズマ−外付け法(Plasma-Aussenabscheideprozess)で作成され、管状又は棒状の支持体に、少なくとも1mmの層厚でかつnF≦1.4519の屈折率を有するフッ素ドープされた石英ガラスからなる環状区域層を作成する。
【0005】
この製造方法の経済性及び不良品となるリスクの最小化の観点で、このファイバの個別の構成部材が別個の製造工程で製造され、最後に初めて組み合わせられる場合が好ましい。
【0006】
この種の方法はEP 1 712 934 A1に記載されていて、この文献から導入部に記載された種類の半製品も公知である。大きい体積のプリフォームを製造するために、最終的に一定数の管状の又は棒状の個別構成部材から構成される半製品が挙げられる。この個別構成部材はこの場合にコアロッドであり、このコアロッドは相互に積み重ねされた複数のセグメントから構成されていてかつこのコアロッドは内側クラッド管の中に配置されている。この内側クラッド管は、外側クラッド管によって取り囲まれている。これらの構成部材は、互いに同軸に配置されていて、引き伸ばしプロセスにおいて光ファイバに直接線引きされる。
【0007】
ヒドロキシル基及び金属不純物、例えば塩素、アルミニウム又は鉄は、この線引きされるべきファイバの光学的透過に不利な影響を及ぼすことがある。これらの影響を最小化するために、内側クラッド管は高純度でかつ高価な石英ガラス品質からなる。他方で、この半製品のためのコストを全体として低く保つために、外側クラッド管は比較的高い濃度の不純物を有することが提案されている。
【0008】
この個別構成部材の個別の製造及びファイバ線引きプロセスの際のその最終的な組立は、確かに光ファイバの低コストの製造及び不良品となりうるリスクを低減することに寄与する。しかしながら、必然的に、組み立てられるべき個別構成部材間の付加的表面及び境界面が生じ、その結果、境界面の問題が増大し、境界面の品質の要求が高まる。この場合、境界面の領域内での気泡の形成に留意される。
【0009】
DE 10 2008 047 736 B3は、コアロッドの被覆のために、フッ素がドープされた石英ガラス管の使用を記載している。
【0010】
US 6,263,706 B1は、SiO2スート管中のフッ素濃度プロフィールの調節方法を開示している。好ましくは、このスート管は心棒の取り出し後に、スート管の外壁に沿ってフッ素含有のドーピングガスを導通させ、その内側穿孔にはガスを通さないか又はヘリウムを導通させることにより、気相を介してフッ素でドープする。こうして製造された屈折率プロフィールは、管の中心が最大値のほぼ放物線状である。
【0011】
DE 600 04 778 T2は、ゾルゲル法による、フッ素がドープされた石英ガラス体の製造を記載している。このフッ素ドーピングは、フッ素含有出発物質をゾルに添加することにより、特にテトラメチル−アンモニウムフルオリドの添加により行われる。この焼結後に、円柱状の石英ガラス試料は、屈折率が外側から内側に向かって低下する(従ってフッ素濃度が外側から内側に向かって増大する)屈折率推移を示す。最大フッ素濃度は中心に保たれている。周辺部へ向かって低下するフッ素濃度は、加熱によるフッ素の損失に起因する。
【0012】
US 3,981,707 Aは、フッ素ドープされた石英ガラス管のコラプスによる光ファイバの製造を記載していて、この石英ガラス管は不均一な半径方向でのフッ素濃度プロフィールを有し、この場合、フッ素濃度は管の中心で最大値を有し、かつ管の内壁及び管の外壁に向かって低下する。遊離する管表面の領域でのフッ素濃度低下は、フッ素がドープされた石英ガラスからなる管を高温で処理することにより生じる。
【0013】
DE 101 55 134 Cから、所定のクラッド/コア比率を有するコアロッドをPOD外付け法によって水素不含の雰囲気中でスート層を設け、引き続きこのスート層を乾燥させ、ガラス化することによるプリフォームの製造方法は公知である。このクラッドガラス中には30質量ppb未満のヒドロキシル基含有量が生じ、かつコアロッドに対する無欠陥の接触面が生じる。
【0014】
技術的課題設定
本発明の基礎となる課題は、コアとクラッドとの境界面の高い品質及び低い曲げ感応性により傑出する光ファイバを低コストで製造するための方法並びに管状半製品を提供することである。
【0015】
本発明の一般的記載
製造方法に関して上記課題は、導入部に述べた方法から出発して本発明の場合に、環状区域の石英ガラスを、環状区域管の形で、少なくとも6000質量ppmの平均フッ素含有量を有する石英ガラスから準備し、前記環状区域管は、管の内側表面と管の外側表面とにより規定される壁部とを有し、前記環状区域管の壁部にわたって半径方向のフッ素濃度プロフィールを調節し、前記フッ素濃度プロフィールは少なくとも1μmで最大10μmの層厚を有するフッ素貧有層を有し、前記フッ素貧有層内で前記フッ素含有量は管の内側表面に向かって低下し、かつ1μmの厚さを有する表面近傍領域では最大で3000質量ppmであることにより解決される。
【0016】
本発明の場合にこの環状区域用の石英ガラスは少なくともフッ素がドープされた石英ガラス管の形で提供され、前記石英ガラス管は「環状区域管」といわれる。
【0017】
フッ素がドープされた石英ガラス管は、SiO2粒子をフッ素を直接計量供給しながらガラス化して直接石英ガラス管にするいわゆるPOD法(プラズマ外付け)によるか、又はSiO2スート体(このスート体を後にフッ素でドーピングし、焼結させる)を形成させながらケイ素含有の出発化合物の加水分解又は熱分解によるCVD堆積法により作成される。
【0018】
残りの個別構成部材、つまりファイバの外側クラッド区域の作成のためのドープされた又はドープされていない石英ガラスからなる外側クラッド管及びファイバのコア区域及び内側クラッド区域の作成のためのコアロッドも、それぞれ別個のプロセスで作成し、引き続きファイバの製造のために同軸の部材の集合体の形に組み立てる。引き続き、この同軸の集合体をコラプスしてプリフォームにするか又は引き伸ばすか又はファイバに直接引き伸ばす。まずプリフォームを作成する場合に、このプリフォームは別個の方法工程で光ファイバに線引きされる。この場合又は予め、上記プリフォームは、例えば管の形状の更なる石英ガラスの付加によるか又は外付け法により付加的クラッド材料を備えていてもよい。
【0019】
単一モードファイバの場合に、クラッドガラスよりも低い屈折率を有する、フッ素がドープされた石英ガラスからなるこの環状区域は、光モードの付加的なガイドを生じる。標準的単一モードファイバと比べてモードフィールド径を著しく変化させないために、この環状区域はコアからいくらか離れていて、つまりコアからは内側クラッドガラス区域によって分離されている。それにより、この環状区域は、環状区域なしの標準的ファイバと比べてファイバを曲げた際に、標準的単一モードファイバとの互換性を損なうことなく、損失の減少を生じさせる。このことは、環状区域を有する曲げ不感応性のファイバを標準的ファイバと結合する場合に重要である。
【0020】
フッ素ドープされた環状区域管は、その壁部にわたって、コアロッドとの接触面の形成の際に、半径方向に管の内側表面へ向かって低下するフッ素濃度プロフィールを有する。これにより、引き伸ばしプロセスの際にコアロッドに対する境界面での気泡の形成は著しき低減されることが明らかになった。環状区域管の周辺領域におけるこの僅かなフッ素濃度の領域を、以後、「フッ素貧有層」とする。
【0021】
フッ素によるドーピングは、この環状区域の石英ガラスの屈折率の低下を生じさせる。この光ファイバの高い曲げ不感応性に関して、高いフッ素濃度、及びコアロッドと環状区域との間の急峻な屈折率変化が好ましい。従って、このフッ素含有量は少なくとも6000質量ppmに調節され、15000質量ppmまでであることができる。フッ素ドーピングにより生じる屈折率の低下は、ドープされていない石英ガラスの屈折率と比較して少なくとも2×10-4である。
【0022】
しかしながら、他方で、環状区域管の平均フッ素含有量の増大と共に、境界面での気泡発生の問題が高まる。従って、フッ素貧有層の気泡低減効果は、特に高い平均フッ素含有量の場合にはっきりと現れる。従って、本発明による方法は、6000質量ppm以上の高い平均フッ素含有量を有する環状区域環の場合により好ましくはっきりと現れる。この環状区域管の平均フッ素含有量とは、管壁部にわたる分光分析測定により生じたフッ素濃度であると解釈される。このフッ素貧有層は、この場合、この層の比較的僅かな層厚のためにほとんど影響が生じない。
【0023】
フッ素によるドーピングは、この環状区域の石英ガラスの屈折率の低下を生じる。上述のように、光ファイバの高い曲げ不感応性にとって、コアロッドと環状区域との間の急峻な屈折率変化が好ましい。フッ素濃度勾配及びそれによる半径方向の屈折率勾配は、それ自体に限っては望ましくない。しかしながら、意外にも、10μmより薄い層厚も許容可能であり、かつファイバの曲げ不感応性と境界面の品質との間の適切な妥協点が生じることが明らかとなった。1μmより薄い層厚の場合に、気泡形成の低下に関してあまり影響がないことが判明した。
【0024】
フッ素貧有層中でのフッ素含有量が低ければそれだけ、この環状区域管に対する境界面での気泡形成の問題もより低減する。この観点で、上記フッ素貧有層は、1μmの厚さを有する表面近傍領域で、3000質量ppm以下のフッ素含有量を有する。この表面近傍領域で特に低いフッ素含有量が、本質的に低い気泡形成に寄与する。
【0025】
フッ素貧有層とは、環状区域管の石英ガラス中でフッ素の最大濃度の80%未満のフッ素濃度を有する層厚であると定義される。同様に、フッ素が低減された表面領域は、環状区域管の石英ガラス中でフッ素の最大濃度の80%未満のフッ素濃度を有する層厚であると定義される。
【0026】
コアロッド方向に向かったフッ素濃度プロフィールの低下であることが重要である。しかしながら、この環状区域管が環状区域管の壁部にわたって半径方向にフッ素濃度プロフィールを有し、この環状区域管は管の外側表面に向かってフッ素濃度が低下する外側のフッ素貧有層も有する場合が好ましいことが判明した。
【0027】
それにより、環状区域と外側クラッド区域との間の境界面でも気泡形成の低減が生じる。外側のフッ素貧有層の寸法、フッ素濃度の低減の急峻さ、及び表面近傍領域での最大濃度に関しては、内側のフッ素貧有層の場合ほど厳しい要求は課されない。内側のフッ素貧有層についての更なる上述の寸法、プロフィール及び濃度は、何れの場合でも外側のフッ素貧有層にとって十分である。
【0028】
このフッ素貧有層は、4μm未満の層厚を有する場合が好ましいことが判明した。
【0029】
4μm未満の層厚は、ファイバの曲げ不感応性と、環状区域管に対する内側の界面の品質との間で、特に適した妥協点を生じさせる。
【0030】
この環状区域管を、好ましくは工具なしで、フッ素がドープされた石英ガラスからなる管状母材を線引きすることにより、管の内側表面及び管の外側表面にフッ素貧有区域の形成下で作成することができる。
【0031】
しかしながら、管状母材の加熱及びその加熱に伴う表面近傍の層からのフッ素の外方拡散により、一般に、平坦な濃度勾配に対して内側表面及び外側表面でフッ素の低減が生じる。管状母材の加熱時に温度及び加熱時間の選択により、フッ素の外方拡散を、上述の寸法及び濃度プロフィールを有するフッ素貧有層を生じるように調節することができる。適切な温度/加熱時間とのパラメータペアは、当業者に僅かな試験に基づいて決定できる。
【0032】
他のよりどころは、線引きされた環状区域管の外径は、好ましくは母材管の外径の10〜50%の範囲内であり、一般にこの外径は、30〜70mmの範囲内の外径を生じ、かつ環状区域管中での外径対内径の円柱比は、母材管の円柱比よりも0.2〜0.8小さい。
【0033】
これとは別に、この環状区域管は、その製造に応じて別々の方法工程で、所望の厚さ及び所定のフッ素濃度プロフィールを有するフッ素貧有層を作成するために加熱される。環状区域管を加熱する場合でも、僅かな試験に基づいて、温度及び加熱時間の選択によりフッ素の外方拡散を調節することができる。
【0034】
線引きプロセスにおける母材管の加熱又は環状区域管の加熱は、好ましくは、水素不含の雰囲気中での電気的加熱装置により行われる。
【0035】
それにより、環状区域管の表面領域へのヒドロキシル基の導入が低減される。
【0036】
特別な予防措置なしでは、母材管の線引きの後に規定寸法を上回る厚さのフッ素が低減された表面層が生じかねない。この結果を、環状区域管の加熱時に、十分な厚さのフッ素貧有層の調節の目的で、意図的に引き起こすこともできる。フッ素が低減された層の過剰な厚さは、フッ酸又はガス状のエッチング剤を用いたエッチングにより除去することができる。従って、この関連で、環状区域管の少なくとも管の内側表面は、母材管の線引きの後又は線引きの際に部分的に除去されることが実証された。
【0037】
この内側表面の除去により、フッ素貧有層の厚さを所定の規定寸法に低減し、同時に汚れのない、できる限り無欠陥の表面が作成される。この除去は、石英ガラスが水及びヒドロキシル基で負荷されることを避けるために、好ましくは気相エッチングにより行われる。
【0038】
フッ素が低減された表面層の厚さは、母材管の線引き後に又は環状区域管の加熱後に、15μm以上であることができる。重要であるのは、内側表面の引き続く除去の際に、この除去深さは予め作成されたフッ素が低減された表面層よりも浅いため、この表面層の一部が、所望の既定の厚さのフッ素貧有層として保持されることである。この点を考慮して、内側表面を除去する深さは、フッ素が低減された表面層の本来の厚さの10〜70%の範囲内である場合が好ましいことが判明した。
【0039】
フッ素貧有層中のフッ素含有量が低くなればそれだけ、環状区域管に対する接触面での気泡形成の問題がより低減する。この点を考慮して、このフッ素貧有層は上述の表面近傍領域で最大2000質量ppmのフッ素含有量を有する場合が好ましいことが判明した。1μmの層厚を有する表面近傍の層中での低いフッ素含有量は、低い気泡形成に本質的に寄与する。
【0040】
ヒドロキシル基含有量は、高いフッ素含有量と関連して、環状区域管に対する接触面の領域での気泡形成を引き起こしかねないことが判明した。従って、環状区域管の石英ガラスがフッ素貧有層の領域内で、1質量ppm未満、好ましくは0.5質量ppm未満の平均ヒドロキシル基含有量を有する方法手順が好ましい。
【0041】
フッ素貧有層中の少ないヒドロキシル基含有量は、例えば、母材管を環状区域管へ引き伸ばす際の加熱、又は環状区域管をフッ素貧有層の形成のための加熱を水素不含の雰囲気中で電気的加熱区域中で行う場合に達成される。
【0042】
僅かなヒドロキシル基含有量は、気泡形成を抑制するために、管状区域間と組み合わせられる他の個別構成部材の領域において均一であるのが好ましい。この関連で、10μmの層厚を有する表面層の領域中で0.5質量ppm未満のヒドロキシル基含有量を有するコアロッドの内側クラッド区域の石英ガラスを準備する場合が好ましいことが判明した。
【0043】
このコアロッドの表面近傍領域においてこの低いヒドロキシル基含有量は、例えば、このコアロッドを電気的加熱区域中で引き伸ばし、つまり、火炎研磨等のための水素含有火炎は使用しないことにより達成される。
【0044】
同じ理由から、外側クラッド区域の石英ガラスを、内側表面の領域内で10μmの層厚で0.5質量ppm未満のヒドロキシル含有量を有する表面層を有する外側クラッド管から準備する場合も好ましい。
【0045】
外側クラッド管はドープされた又はドープされていない石英ガラスからなり、好ましくはOVDスート成形法により及び引き続く塩素含有雰囲気中での脱水素、及び機械加工及びクラッド管への引き伸ばしを含めた焼結により作成される。
【0046】
外側クラッド管の内側表面の領域内での低いヒドロキシル基含有量は、外側クラッド管の内側表面を機械的に加工することによって作成することも可能である。
【0047】
この機械加工により、表面領域中でのいくらか高いヒドロキシル基含有量は、この場合に新たなヒドロキシル基を導入することなく除去することができる。
【0048】
フッ素貧有層の製造のための環状区域管の加熱は、炭素、環状区域管及び場合による他の個別構成部材からなる集合体の引き伸ばしの間に行うこともできる。この場合、加熱区域の長さ及び加熱区域を通過する集合体の送り速度は守らなければならない。この点に関して、加熱区域(mm)長さと母材管の送り速度(mm/min)との商は10min以上である場合が好ましいことが判明した。
【0049】
加熱区域の長さは、この場合少なくとも150mmであり、典型的には180〜250mmの領域内である。この環状区域管の表面領域の温度は少なくとも2200℃である。
【0050】
光ファイバを製造するための管状半製品に関して、上記の課題は、本発明により、前記半製品が少なくとも6000質量ppmの平均フッ素含有量を有する石英ガラスからなり、かつ前記半製品は管の内側表面と管の外側表面とにより規定される壁部とを有し、前記壁部にわたって半径方向のフッ素濃度プロフィールが調節され、前記フッ素濃度プロフィールは少なくとも1μmで最大10μmの層厚を有する内側のフッ素貧有層を有し、前記フッ素貧有層内で前記フッ素含有量は管の内側表面に向かって低下し、かつ1μmの厚さを有する表面近傍領域では最大3000質量ppmであることにより解決される。
【0051】
フッ素でドープされた石英ガラス管の形のこの半製品は、この場合、「環状区域管」という。これは、SiO2粒子をフッ素を直接計量供給しながら合成してガラス化して直接石英ガラス管にするいわゆるPOD法(プラズマ外付け;Plasma Outside Deposition)によるか、又はSiO2スート体(このスート体を後にフッ素でドーピングし、焼結させる)を形成させながらケイ素含有の出発化合物の加水分解又は熱分解によるCVD堆積法により作成される。
【0052】
この環状区域管は、上記方法を用いる光ファイバの製造のために用いられ、この場合、外側クラッド管及びコアロッドを含めて他の個別構成部材と一緒に同軸の集合体の形で、プリフォームに又はファイバに加工される。この場合、管の内側表面及び管の外側表面は軟化され、かつ他の石英ガラス−個別構成部材の石英ガラスと一緒に溶融する。この環状区域管のフッ素含有量に基づいて、接触面での気泡形成が生じることがある。
【0053】
この作用に対抗するために、本発明による環状区域管は、その壁部にわたって内側表面に向かって低下する半径方向にフッ素濃度プロフィールを有する。これにより、上記半製品の引き伸ばしの際のコアロッドに対する境界面での気泡の形成は著しく低減される。環状区域管の周辺領域におけるこの僅かなフッ素濃度の領域は、「フッ素貧有層」とする。
【0054】
フッ素によるドーピングは、この環状区域の石英ガラスの屈折率の低下を生じる。この光ファイバの高い曲げ不感応性に関して、高いフッ素濃度、及びコアロッドと環状区域との間の急峻な屈折率変化が好ましい。従って、この環状区域管のフッ素含有量は少なくとも6000質量ppmであり、15000質量ppmまでであることができる。ドープされていない石英ガラスと比べたこのフッ素ドーピングにより生じる屈折率の低下は、ドープされていない石英ガラスの屈折率と比較して少なくとも2×10-4である。
【0055】
しかしながら、他方で、環状区域管の平均フッ素含有量の増大と共に、境界面での気泡発生の問題が高まる。従って、フッ素貧有層の気泡低減効果は、特に高い平均フッ素含有量の場合にはっきりと現れる。従って、本発明による方法は、6000質量ppm以上の高い平均フッ素含有量を有する環状区域環の場合にはっきりと現れる。
【0056】
フッ素によるドーピングは、この環状区域の石英ガラスの屈折率の低下を生じる。上述のように、光ファイバの高い曲げ不感応性にとって、コアロッドと環状区域との間の急峻な屈折率変化が好ましい。フッ素濃度勾配及びそれによる半径方向の屈折率勾配は、それ自体に限っては望ましくない。しかしながら、10μm未満の層厚は受け入れられ、ファイバの曲げ不感応性と境界面の品質のと間の適切な妥協点が生じる。1μmより薄い層厚の場合に、気泡形成の低下に関してあまり影響がないことが判明した。
【0057】
フッ素貧有層中でのフッ素含有量が低ければそれだけ、この環状区域管に対する境界面での気泡形成の問題もより低減する。この観点で、上記フッ素貧有層は、1μmの厚さを有する表面近傍領域内で、3000質量ppm以下のフッ素含有量を有する。この表面近傍領域で特に低いフッ素含有量が、本質的に低い気泡形成に寄与する。
【0058】
このフッ素貧有層及びフッ素が低減された表面近傍領域は、本発明による方法による上記のように定義される。
【0059】
本発明による半製品の好ましい実施態様は従属請求項から生じる。従属請求項中に記載された半製品の実施態様が、本発明による方法につての従属請求項中に挙げられた方法様式に倣っている限り、補足される説明について、相応する方法の請求項についての上記の実施が参照される。
【0060】
この環状区域管は光ファイバの製造のために利用される。このために、別個のプロセスでそれぞれ作成されるドープされた又はドープされていない石英ガラスからなる外側クラッド管並びにコアロッド含めた他の個別構成部材と一緒に、部材の集合体の形に組み合わせられる。この集合体は、引き続きプリフォームに加工されるか又は直接ファイバに加工される。フッ素ドープされた環状区域管は、この壁部にわたって内側表面の方向で低減する半径方向のフッ素濃度プロフィールを有することが重要である。これにより、上記半製品の引き伸ばしの際のコアロッドに対する境界面での気泡の形成は著しく低減される。
【0061】
この環状区域管は、この環状区域管から線引きされる光ファイバにおいて高い曲げ不感応性を生じさせる。
【0062】
このコアロッドは、好ましくは、多数のコアロッドセグメントから構成されていて、これらのコアロッドセグメントは環状区域管内に軸方向に積み重ねて配置されている。このコアロッドのセグメント化は、任意の長さのコアロッド長さにより可能である。
【0063】
集合体中では、コアロッドと環状区域管との間に、好ましくは0.5〜2mmの範囲内の間隙幅を有するリング状のスリットが残るのが好ましい。同様のことが、この管状区域間と外側クラッド管との間のリング状のスリットにも当てはまる。
【0064】
この環状区域管の外径対内径の比の数は、2〜12mmの好ましい壁厚で、好ましくは1.4〜1.8の範囲内である。この環状区域管の長さは一般に1〜3mであり、この場合、複数の環状区域管部分が相互に積み重ねられて溶接されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】環状区域管の、管の外側表面の領域内でのSiO2及びフッ素の半径方向の濃度プロフィールを示すグラフを表す。
【図2】環状区域管の、管の内側表面の領域内でのSiO2及びフッ素の半径方向の濃度プロフィールを示すグラフを表す。
【0066】
実施例
次に本発明を、実施例及び図面を用いて詳細に説明する。
【0067】
通常のスート堆積法を用いてスート体を製造し、後からフッ素でドーピングする。
【0068】
このスート体のガラス化の後に、外径200mm、内径80mmを有する石英ガラス円柱体が得られ、この結果、2.5の外径対内径の比の数が生じる。この石英ガラスは、0.1質量ppmの平均ヒドロキシル基含有量及び6100質量ppmの平均フッ素含有量を有し、このフッ素含有量がドープされていない石英ガラスと比較して屈折率低下に作用する。
【0069】
この出発円柱体は、工具なしで、外径38mm、内径25mm及び壁厚6.5mmを有する環状区域管に引き伸ばされる。
【0070】
この出発円柱体は、水素不含の窒素雰囲気中で、少なくとも2200℃の温度を有しかつ170mmの長さ「L」を有する電気加熱区域に、10mm/minの送り速度「v」で供給されるため、L/vの商について10minの値が生じる。
【0071】
その後に得られた環状区域管は、特に高い表面品質を有する、熱変形により平滑化された管の内側表面により傑出している。この引き伸ばしプロセスの際の加熱により、環状区域管の管の内側表面及び管の外側表面の領域に、約5μmの厚さを有するフッ素が低減された表面層が形成される。
【0072】
この外側表面の領域内の相応する濃度プロフィールを図1が示す。縦軸には、フッ素(曲線2)及びSiO2(曲線1)についての濃度が、相対単位(SiO2及びフッ素のそれぞれの最大濃度に対する)でプロットされ、横軸には半径方向の位置が[μm]でプロットされている。その都度の濃度プロフィールの緩やかな上昇及びゼロ点のずれは、測定法の空間的分解能により生じる。
【0073】
「フッ素貧有層」として、最大値の80%未満のフッ素濃度を有する層厚が定義される。これに該当する位置は、図1において「B」で示されている。SiO2の濃度は、この位置の値についての基準点(ゼロ点)を表す。80%の濃度値に該当する位置についてのゼロ点は、図1において「A」で表す。従って、このフッ素貧有層についての層厚は、80%の濃度値でのフッ素とSiO2との濃度プロフィールの距離A−Bから生じる。1μmまでの表面近傍領域内では、このフッ素濃度は2100質量ppm未満であり、かつフッ素が低減された表面層の厚さはこの場合約7μmである。この層は、環状区域管の円柱外側クラッドのためには受け入れられるが、円柱内側クラッドのためには最適ではない。
【0074】
従って、引き伸ばしの後に外側クラッドと同様のフッ素貧有層を有する環状区域管の内側表面は、エッチングガス(SF6)の熱いガス流を内側穿孔に導通させることによりエッチングされる。その後に内側の壁部に得られる濃度プロフィールは図2に示されている。SiO2(曲線2)及びフッ素(曲線1)の濃度プロフィールの比較から、内側表面の除去に基づきフッ素貧有層の厚さが約1.5μmの所定の既定値に調節され、同時に表面近傍領域において急峻な濃度推移が得られることが明らかである。このエッチングにより、汚れのないかつ無欠陥の表面が生じる。ここでも、フッ素貧有層とは、フッ素の最大濃度の80%未満のフッ素濃度を有する層厚であると定義され、この層は位置間隔A−Bにより読み取ることができる。フッ素貧有層内の平均フッ素含有量は3000質量ppmよりも高く、かつ1μmの内側の表面近傍領域内の平均フッ素含有量は、約2800質量ppmである。
【0075】
環状区域管の平均塩素含有量は200質量ppmであり、この環状区域管の石英ガラスの基準ヒドロキシル基含有量は0.1質量ppmである。しかしながら、この含有量は引き伸ばしプロセスにより、表面近傍では5質量ppm以上の最大値に高まる。しかしながら、引き続き気相エッチングにより、比較的高いヒドロキシル基含有量を有する層は除去されるため、1μmの層厚にわたって測定して、このフッ素貧有層の表面には最大0.4質量ppmの平均ヒドロキシル基が生じる。
【0076】
こうして得られた環状区域管は、ロッドインチューブ法におけるコアロッドの被覆のために使用される。このために、環状区域管から所望の長さを有する部分断片が切り出される。このコアロッドは、12mmの半径を有するGeO2でドープされたコア領域を有し、5.5mmの層厚を有するドープされていない石英ガラスからなる内側クラッドで取り囲まれている。
【0077】
このコアロッドは、環状区域管の内側穿孔部内に嵌め込まれ、これを更に、屈折率nMaを有するドープされていない石英ガラスからなるジャケット管で取り囲み、このジャケット管は外径175mm、内径40mm及び平均塩素含有量1800質量%を有する。
【0078】
これらの部材の同軸構成物を引き続き、線引き炉中に垂直方向に導入し、その炉内で下端部が部分的に軟化し始め、この軟化した領域からファイバが線引きされる。この場合、この環状区域管の外側及び内側の「フッ素貧有層」は、フッ素の外方拡散を抑制しかつ界面領域内での気泡形成を抑制する「パッシベーション層」として利用される。このように、上記フッ素貧有層は、コアロッド及びジャケット管に対して無欠陥の接触面及び界面に寄与する。
【0079】
不感応性の、外径125μmの曲げシングルモード光ファイバが線引きされ、この光ファイバは高いフッ素濃度を有する環状区域により傑出し、かつコア区域の外側領域に対して間隔を有する。この集合体の屈折率の半径方向の推移について、次の条件が当てはまる:nMa>nF<nMi<nK

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスプリフォーム又は石英ガラス部材の同軸の集合体の引き伸ばしにより、屈折率nKを有するコア区域と、前記コア区域を取り囲む屈折率nMiの内側クラッド区域と、前記内側クラッド区域を取り囲む屈折率nFのドープされた石英ガラスからなる環状区域と、前記環状区域を取り囲む外側クラッド区域とを有し、nF<nMi<nKが当てはまる光ファイバを製造する方法において、前記環状区域の石英ガラスを、少なくとも6000質量ppmの平均フッ素含有量を有する石英ガラスからなる環状区域管の形で準備し、前記環状区域管は管の内側表面及び管の外側表面により規定された壁部を有し、前記環状区域管の壁部にわたって半径方向のフッ素濃度プロフィールを調節し、前記フッ素濃度プロフィールは少なくとも1μmで最大10μmの層厚を有する内側のフッ素貧有層を有し、前記内側のフッ素貧有層中でフッ素含有量は管の内側表面に向かって低減しかつ1μmの厚さを有する表面近傍領域中では最大3000質量ppmであることを特徴とする、光ファイバを製造する方法。
【請求項2】
前記環状区域管に環状区域管の壁部にわたって半径方向のフッ素濃度プロフィールを付与し、前記フッ素濃度プロフィールは管の外側表面に向かってフッ素濃度が低下する外側のフッ素貧有層を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記内側のフッ素貧有層は、4μm未満の層厚を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記環状区域管を、工具なしで、フッ素がドープされた石英ガラスからなる母材管の線引きにより、内側表面及び外側表面にフッ素貧有区域を形成させながら作成することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記環状区域管の少なくとも管の内側表面を、前記母材管の線引きの際又は線引きの後に部分的に除去し、前記管の内側表面を除去する深さは、フッ素が低減された表面層の当初の厚さの10〜70%の範囲内であることを特徴とする、請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素貧有層は、1μmの層厚を有する表面近傍層中で、最大2000質量ppmのフッ素含有量を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記環状区域管の石英ガラスは、フッ素貧有層の領域内で、1質量ppm未満の、好ましくは0.5質量ppm未満の平均ヒドロキシル基含有量を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記内側クラッド区域の石英ガラスを、10μmの層厚を有する表面層の領域内で0.5質量ppm未満のヒドロキシル基含有量を有するコアロッドから準備することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
光ファイバを製造するための管状半製品において、前記管状半製品は少なくとも6000質量ppmの平均フッ素含有量を有する石英ガラスからなり、前記管状半製品は管の内側表面と管の外側表面とにより規定される壁部を有し、前記壁部にわたって半径方向のフッ素濃度プロフィールが調節されていて、前記フッ素濃度プロフィールは少なくとも1μmで最大10μmの層厚を有する内側のフッ素貧有層を有し、前記内側のフッ素貧有層内でフッ素含有量は管の内側表面に向かって低下し、かつ1μmの厚さを有する表面近傍領域内で最大3000質量ppmであることを特徴とする、管状半製品。
【請求項10】
前記環状区域管の壁部にわたって半径方向のフッ素濃度プロフィールが調節されていて、前記フッ素濃度プロフィールは、管の外側表面に向かってフッ素濃度が低下する外側のフッ素貧有層を有することを特徴とする、請求項9記載の管状半製品。
【請求項11】
前記内側のフッ素貧有層は、4μm未満の層厚を有することを特徴とする、請求項9又は10記載の管状半製品。
【請求項12】
前記環状区域管は工具なしで溶融流中で作成される管の内部表面を有することを特徴とする、請求項9から11までのいずれか1項記載の管状半製品。
【請求項13】
前記フッ素貧有層は、1μmの層厚を有する表面近傍層中で、最大2000質量ppmのフッ素含有量を有することを特徴とする、請求項9から12までのいずれか1項記載の管状半製品。
【請求項14】
前記環状区域管の石英ガラスは、フッ素貧有層の領域内で、1質量ppm未満の、好ましくは0.5質量ppm未満の平均ヒドロキシル基含有量を有することを特徴とする、請求項9から13までのいずれか1項記載の管状半製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−521220(P2013−521220A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556516(P2012−556516)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053590
【国際公開番号】WO2011/110617
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(507332918)ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (17)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Quarzstrasse 8, D−63450 Hanau, Germany
【Fターム(参考)】