説明

光ファイバアレイとその製造方法

【課題】 光ファイバアレイにカバーのない場合は、取扱いに細心の注意が必要となる。また、カバーのある場合も、従来は1枚ものであるため、接着剤を流すための穴をあける等、構造が複雑になる。
【解決手段】 カバーを、ファイバ用蓋30と被覆用蓋40との別部品で構成する。V溝20内に納めた裸ファイバ26全体の上は、ファイバ用蓋30で覆う。また基板後部18に載せた被覆部24の上は、被覆用蓋40で覆う。そして、これら2枚の蓋30、40間に、隙間50を形成しておく。そして、この隙間50から接着剤を流し込んで、蓋30,40、テープ光ファイバ22、V溝基板12を、一体に固着する。このようにすると、製造時に接着剤を入れやすく、また、カバー構造が簡単になる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバアレイ(光導波路と光ファイバとを接続する部品)と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4において、12はV溝基板で、少し厚肉の前部16とやや薄肉の後部18とが一体になっている。前部16に、複数のV溝20を横1列に設ける。各V溝20に、テープ光ファイバ22の裸ファイバ26を1本ずつ入れ、接着により固着する。また、基板後部18上に、テープ光ファイバ22の被覆部24を載せ、接着により固着する。
【0003】なお、図示しないが、テープ光ファイバ22の端部に、1枚の押さえ蓋をかぶせ、V溝基板12とでテープ光ファイバ22を挟持する場合もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】■カバーのない場合は、アレイの取扱いに細心の注意が必要となる。
■1枚のカバーで覆う場合は、接着剤を流す穴をあける等、構造が複雑になる。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は(図1参照)、裸ファイバ26全体の上を、ファイバ用蓋30が覆い、被覆部24の上を、被覆用蓋40が覆い、ファイバ用蓋30と被覆用蓋40との間が若干離れた状態(隙間50)において、ファイバ用蓋30及び被覆用蓋40、テープ光ファイバ22、並びにV溝基板12が、接着剤により一体に固着されていること、を特徴とする。
【0006】請求項2の発明は、上記構造の光ファイバアレイを製造する方法に係り、裸ファイバ26全体の上をファイバ用蓋30で覆い、被覆部24の上を被覆用蓋40で覆うとともに、前記ファイバ用蓋30と被覆用蓋40間に隙間50を形成しておき、当該隙間50から接着剤を流し込んで、ファイバ用蓋30及び被覆用蓋40、テープ光ファイバ22、並びにV溝基板12を一体に固着すること、を特徴とする。
【0007】上記のように、ファイバ用蓋30と被覆用蓋40との間に隙間50を設けると、この部分から接着剤を流し込むことができる。また、従来のように接着剤を流し込むために、カバーに穴を開ける必要が無くなるので、カバー構造が簡単になる。
【0008】なお、請求項3に記載のように、被覆用蓋40の底面に凹部42を形成し、両端の厚肉部44を、V溝基板の後部18に接触させて当該被覆用蓋40を被覆部24上にかぶせるとき、凹部42内に被覆部24が収まり、かつ凹部42の内壁と被覆部24との間に隙間ができるようにしておくと、製造時に、被覆用蓋40の内側全体に、接着剤が入り込みやすくなる。
【0009】
【発明の実施の形態】図1〜3について述べる。V溝基板12は、透明石英ガラス製で、前部16は1mmの厚み、後部18は0.81mmの厚みである。前部16に、複数(例えば16本)のV溝20を、例えば0.25ミリのピッチで設ける。各V溝20内に、0.125mmφの裸ファイバ26を入れる。
【0010】ファイバ用蓋30も、透明石英ガラス製で、図2のように、単純な四角板であり、厚さは0.8mm、前後幅は5.5mmである。
【0011】被覆用蓋40もまた、透明石英ガラスで、厚さは1mm、前後幅は7mmであり、図3のように、底面に凹部42を有する。凹部42の深さは0.4mmである。また、底面両端の厚肉部44の前面下部に、面取り部46を形成する。
【0012】裸ファイバ26上にファイバ用蓋30を被せ、治具で押さえる。そのとき、V溝20内にある0.125mmφの裸ファイバ26の上端縁は、基板前部16の上面より、僅か(例えば約0.02mm)上方に出ているため、基板前部16の上面とファイバ用蓋30との間に、同量の隙間ができる。
【0013】また、被覆部24端部上に、被覆用蓋40を被せ、治具で押さえる。このとき、被覆用蓋40の上面とファイバ用蓋30の上面とは、ほぼ同レベル(V溝基板12の底面を基準にして同じ高さ)になる。被覆用蓋40の両端の厚肉部44は、基板の後部18に接触する。そのとき、凹部42内に被覆部24が収まる(そのような寸法にしてある)。テープ光ファイバ22の厚さが0.3mmの場合、凹部42の内壁と被覆部24との間に、0.1mm隙間ができる。
【0014】上記のように、ファイバ用蓋30と被覆用蓋40間に、0.5mm程度の隙間50を作る。
【0015】以上のようにしておいて、隙間50から接着剤を流し込む。接着剤は、ファイバ用蓋30及び被覆用蓋40と、V溝基板12との間に存在する全ての隙間に入り込む。接着剤が硬化すると、ファイバ用蓋30及び被覆用蓋40、V溝基板12、並びにテープ光ファイバ22は、一体に固着される。図1(b)は、その状態を示す。
【0016】その後、前端面を、8度研磨して、完成する。
【0017】なお実際は、V溝基板12,ファイバ用蓋30,被覆用蓋40とも、複数個が横に連なった、横長のものを用いる。そして、複数個のアレイを同時に製作し、後で切り分ける。
【0018】なおまた、上記のように、基板前部16の厚みを1mm、ファイバ用蓋30の厚みを0.8mmとしておくと、V溝20内にある裸ファイバ26の中心(コアの中心)は、前部16の上面より下にある(例えば0.04mm程度下方)ので、裸ファイバ26は、端面における上下方向の、ほぼ中央に位置するようになる。このようにしておくと、光導波路と接続したとき安定であるし、また、逆接続も可能になる。
【0019】
【発明の効果】ファイバ用蓋30と被覆用蓋40との間に隙間50が設けてあるので、接着剤を入れやすく、また、カバー構造が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るもので、(a)は組立前の状態、(b)は組立後(研磨前)の状態を示す。
【図2】ファイバ用蓋30の、平面図と正面図と側面図を同時に示したもの。
【図3】被覆用蓋40の、平面図と正面図と側面図を同時に示したもの。
【図4】従来技術の説明図。
【符号の説明】
12 V溝基板
14 基板の本体
16 基板の前部
18 薄肉の基板後部
20 V溝
22 テープ光ファイバ
24 被覆部
26 裸ファイバ
30 ファイバ用蓋
40 被覆用蓋
42 凹部
44 厚肉部
46 面取り部
50 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】 前部16とやや薄肉の後部18とが一体になり、前記前部16に複数のV溝20が横1列に設けてあるV溝基板12の、前記V溝20に裸ファイバ26が1本ずつ入り、前記基板後部18上にテープ光ファイバ22の被覆部24が載り、前記裸ファイバ26全体の上を、ファイバ用蓋30が覆い、前記被覆部24の上を、被覆用蓋40が覆い、前記ファイバ用蓋30と被覆用蓋40との間が若干離れた状態において、前記ファイバ用蓋30及び被覆用蓋40、前記テープ光ファイバ22、並びに前記V溝基板12が、接着剤により一体に固着されていることを特徴とする、光ファイバアレイ。
【請求項2】 前部16とやや薄肉の後部18とが一体になり、前記前部16に複数のV溝20が横1列に設けてあるV溝基板12の、前記V溝20に裸ファイバ26を1本ずつ入れ、前記基板後部18上にテープ光ファイバ22の被覆部24を載せ、前記裸ファイバ26全体の上をファイバ用蓋30で覆い、前記被覆部24の上を被覆用蓋40で覆うとともに、前記ファイバ用蓋30と被覆用蓋40間に隙間50を形成しておき、当該隙間50から接着剤を流し込んで、前記ファイバ用蓋30及び被覆用蓋40、前記テープ光ファイバ22、並びに前記V溝基板12を、一体に固着することを特徴とする、光ファイバアレイの製造方法。
【請求項3】 被覆用蓋40の底面に凹部42が形成されていて、両端の厚肉部44を基板の後部18に接触させて、当該被覆用蓋40を被覆部24上にかぶせるとき、前記凹部42内に被覆部24が収まり、かつ凹部42の内壁と被覆部24との間に隙間ができるようにしてあることを特徴とする、請求項2に記載の光ファイバアレイの製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−137146(P2000−137146A)
【公開日】平成12年5月16日(2000.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−325970
【出願日】平成10年10月30日(1998.10.30)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】