説明

光ファイバケーブル

【課題】中間後分岐の際に、スロットコアのスロット溝内の光ファイバを傷つけることなく、光ファイバの口出し作業を容易に行う。
【解決手段】光ファイバケーブル1は光ファイバ3を内部に収納する1つのスロット溝5を備えたスロットコア7と、このスロットコア7の周囲を被覆するシース9と、を備える。前記シース9がスロット溝5の開口部11の側のシース厚をスロット溝5の開口部11の側と反対側のシース厚よりも相対的に厚くした偏心シース構造である。また、光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面においてケーブル中心Cを通りスロット溝5の開口部11の中央を結ぶ方向をY軸とし、ケーブル中心Cを通りY軸に直交する方向をX軸としたとき、Y軸がケーブル曲げ中立線となるように線状体をY軸および/又はその近傍に配設し、かつ、スロット溝5内に収納する光ファイバ3の位置がY軸にほぼ一致するように配設することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバケーブルに関し、特に光ファイバをスロットコアの内部に収納する1つのスロット溝を備えたスロットコアの周囲をシースで被覆している1溝スロットコア型の光ファイバケーブルであって、中間後分岐の際に前記スロット溝内の光ファイバを傷つけることなく、光ファイバの口出し作業を容易に行える光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバケーブルとしては、特許文献1に示されているように、光ファイバを内部に収納する1つのスロット溝を備えたスロットコアの周囲をシースで被覆し、このシースの内部にリップコード(引裂紐)を縦添えしている1溝スロットコア型の光ファイバケーブルであって、前記スロット溝の開口部側のシース厚がスロット溝の開口部側と反対側のシース厚よりも相対的に薄くした偏心シース構造であり、かつスロット溝の開口部側のシースの内側にリップコードを配設した構造である。
【0003】
また、特許文献2の光ファイバケーブルは、軸方向に連続した内外部を連絡したスリットを有するチューブの内部に光ファイバを収納したスリット付きルースチューブ型の光ファイバケーブルであって、前記スリット側のシース厚がスリット側と反対側のシース厚よりも相対的に薄くした偏心シース構造であり、かつスリット側のシースの内側にリップコード(引裂紐)を配設した構造である。
【0004】
また、特許文献3の光ファイバケーブルは、光ファイバを内部に収納する1つのスロット溝を備えたスロットコアの周囲をシースで被覆している1溝スロットコア型の光ファイバケーブルであって、複数の抗張力体がスロット溝の深さ方向に対して直交する方向に並列に配置しているので、ケーブル曲げ中立線はスロット溝の深さ方向に対して直交する方向であり、光ファイバがスロット溝の内部のケーブル中心に位置してケーブル曲げ中立線に配設された構造である。
【0005】
また、特許文献4の光ファイバケーブルは、防水型1溝スロットコア光ファイバケーブルの製造方法であって、光ファイバケーブルの製造時にスロットコアのスロット溝内に収納される光ファイバに必要な余長を確保するものである。
【0006】
また、特許文献5の光ファイバケーブルは、光ファイバを内部に収納する1つのスロット溝を備えたスロットコアの周囲をシースで被覆している1溝スロットコア型の光ファイバケーブルであって、2本の抗張力体がスロット溝の深さ方向に対して直交する方向でスロット溝を挟んで両側に配置しているので、ケーブル曲げ中立線はスロット溝の深さ方向に対して直交する方向であり、光ファイバがスロット溝の内部のケーブル中心に位置してケーブル曲げ中立線に配設された構造である。
【0007】
また、特許文献6の光ファイバケーブルは、1溝スロットコアをユニットとし、このユニットを複数集合してなる光ファイバケーブル構造である。
【0008】
また、特許文献7の光ファイバケーブルは、光ファイバテープ心線の歪みを緩和する1溝スロットコア型光ファイバケーブルであり、2本の抗張力体がスロット溝の深さ方向に対して直交する方向でスロット溝を挟んで両側に配置しているので、ケーブル曲げ中立線はスロット溝の深さ方向に対して直交する方向であり、光ファイバがスロット溝のケーブル中心付近に配設された構造である。
【特許文献1】特開昭62−291608号公報
【特許文献2】特開昭63−5313号公報
【特許文献3】特公平7−111493号公報
【特許文献4】特開平1−13106号公報
【特許文献5】実開平6−50009号公報
【特許文献6】特開平8−160265公報
【特許文献7】特開平8−211261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来の特許文献1の光ファイバケーブルにおいては、スロット溝の開口部側のシース厚が薄いために、この部分のシースの機械的強度が劣化するという問題点があった。逆に、シースの機械的強度を確保するためには、スロット溝の開口部側のシース厚をある程度厚くすることが必要となるので、スロット溝部分に実装されているリップコードの取り出しや開口部側のシースの引き裂きを行い難くなるという問題点があった。
【0010】
さらには、スロット溝の開口部側のシースの機械的強度を最低限確保しながらシースの偏肉を施すと、光ファイバケーブルの外径が大きくならざるを得ないという問題点があった。
【0011】
また、リップコードを取り出す際、ナイフなどの切裂き工具の刃先でシースを切り裂く必要があるが、スロット溝の開口部側にリップコードが実装されているために、前記切裂き工具によってスロット溝内の光ファイバを傷つける恐れがあるという問題点があった。特に、中間後分岐時には光ファイバを傷つけることは致命的な障害となる。
【0012】
特許文献2の光ファイバケーブルにおいては、スリット側のシース厚が薄いので、上述した特許文献1の光ファイバケーブルとほぼ同様の問題点があった。
【0013】
特許文献3、特許文献5及び特許文献7の光ファイバケーブルにおいては、ケーブル曲げ中立線がスロット溝の深さ方向に対して直交する方向であり、光ファイバがスロット溝のケーブル中心に位置し、ケーブル曲げ中立線に配設した構造であるので、スロット溝の深さはケーブル中心より深くする必要があるため、スロットコアの強度が低下する。また、光ファイバはスロット溝の深さ方向に自由度があるので、光ファイバをスロット溝の深さ方向でケーブル中心に配置することが必ずしも容易ではなく、光ファイバがケーブル曲げ中立線から外れることがある。この場合、光ファイバに伸び歪みがかかったり、逆に光ファイバがスロット溝の内部で蛇行したりするという問題点があった。
【0014】
特許文献4の光ファイバケーブルにおいては、光ファイバの余長を確保するにはスロット溝の内部での自由度を確保するためにクリアランスを大きくしなければならず、ケーブル外径を大きく設計せざるを得ない問題があった。
【0015】
特許文献6の光ファイバケーブルにおいては、各ユニットを構成する1溝スロットコアにおいて、スロット溝の開口部とは反対の底部内にテンションメンバ(抗張力体)が配置されているのは、各ユニットのスロット溝の開口部が常に外側を向くように構成したものであり、基本的には、1溝スロットコア型の光ファイバケーブルとは異なる構成である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記発明が解決しようとする課題を達成するために、この発明の光ファイバケーブルは、光ファイバを内部に収納する1つのスロット溝を備えたスロットコアと、このスロットコアの周囲を被覆するシースと、を備える光ファイバケーブルであって、前記シースが前記スロット溝の開口部側のシース厚を前記スロット溝の開口部側と反対側のシース厚よりも相対的に厚くした偏心シース構造であると共に、光ファイバケーブルの長手方向に垂直な断面においてケーブル中心を通り前記スロット溝の開口部の中央を結ぶ方向をY軸とし、前記ケーブル中心を通り前記Y軸に直交する方向をX軸としたとき、前記Y軸がケーブル曲げ中立線となるように線状体をY軸及び/又はその近傍に配設し、かつ、前記スロット溝内に収納する光ファイバの位置が前記Y軸にほぼ一致するように配設したことを特徴とするものである。
【0017】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記線状体が、前記Y軸上に配設されていて、スロットコアとシースの両方の内部に埋設されていることが好ましい。
【0018】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記線状体が、前記Y軸上に配設されていて、スロットコアの内部のみに埋設されていることが好ましい。
【0019】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記線状体が、スロットコアの内部における前記Y軸上及びその近傍に配設されていて、Y軸上に1本の抗張力体が、Y軸の近傍に一対の抗張力体が埋設されていることが好ましい。
【0020】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記線状体が、鋼線又はFRPで構成されていることが好ましい。
【0021】
この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記シースの内部にリップコードを縦添えし、かつ、前記リップコードが前記X軸を含む近傍の位置で前記シースの内側で、かつスロットコアの外周に配設した構造であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明によれば、スロット溝の開口部側のシース厚がスロット溝の開口部側と反対側のシース厚より相対的に厚いので、外力が作用してもスロット溝の内部の光ファイバの損傷を防ぐことができ、スロット溝の開口部側と反対側のシース厚が薄い部分の機械的強度は、スロットコアの底部で補填できる。
【0023】
また、光ファイバを収容している1溝スロットコアのスロット溝の開口部とは離れた位置で、ナイフなどの切裂き工具の刃先でシースに切り込みを入れ、シースの剥ぎ取り作業を開始するので、接続作業時に工具の刃先などで、光ファイバを傷つけることなく、光ファイバの口出し作業を行うことができる。
【0024】
また、ケーブル曲げ方向がスロット溝の深さ方向のY軸に対して90°の角度をなすX軸方向にのみ規制されるように線状体をY軸及び/又はその近傍に配設し、かつ、前記スロット溝内に収納する光ファイバの位置が前記Y軸にほぼ一致するように配設したので、光ファイバケーブルがX軸方向に曲げられても、光ファイバには伸縮が生じない。その結果、良好な伝送特性のある細径ケーブル設計を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図1(A)を参照するに、第1の実施の形態に係る光ファイバケーブル1は1溝スロット型の光ファイバケーブルであり、基本的には、光ファイバ3を内部に収納するための1つのスロット溝5を備えたスロットコア7と、このスロットコア7の周囲を被覆するシース9と、を備えており、上記のシース9は例えばポリエチレン樹脂などの樹脂からなり、スロット溝5の開口部11の側のシース厚がスロット溝5の開口部11の側と反対側のシース厚よりも相対的に厚くした偏心シース構造としている。
【0027】
上記の構成の1溝スロット型の光ファイバケーブル1にあって、光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面においてケーブル中心Cを通り前記スロット溝5の開口部11の中央を結ぶ方向をY軸とし、ケーブル中心Cを通り前記Y軸に直交する方向をX軸としたとき、前記Y軸がケーブル曲げ中立線となるように2本の線状態としての例えば抗張力体13,15をY軸上の図1において上下に配設している。すなわち、前記2本以上の複数の抗張力体13,15がY軸上に配置されることにより、必然的にY軸がケーブル曲げ中立線となる。
【0028】
この第1の実施の形態では、1本の抗張力体13がシース9のY軸上に配置されると共に、もう1本の抗張力体15がスロットコア7のY軸上に配置されている。この場合は、2本の抗張力体13,15の関係で、図2に示されているように、2本の抗張力体13,15を結ぶY軸上をケーブル曲げ中立線にしてX軸上の曲げ中心Oから曲率半径RでX軸方向の曲がり(図1(A)及び図2において横曲げ)となる。ちなみに、図3に示されているように、例えばケーブル中心Cを通るX軸をケーブル曲げ中立線にして、Y軸上の曲げ中心Oから曲率半径RでY軸方向に曲げ(図1(A)及び図3において縦曲げ)ようとしても、実際には2本の抗張力体13,15の関係で図3の状態の縦曲げは生じ難いものである。なお、抗張力体としては、鋼線やFRPなどを用いることができる。
【0029】
さらに、この実施の形態ではスロットコア7のスロット溝5が断面円形であるが、スロット溝5の断面形状は断面円形に限定されるものではない。このスロット溝5の内部に一又は複数の光ファイバ3が収納されるもので、図1(A)では光ファイバ3としては、合計10枚の光ファイバテープ心線が収納されている。なお、光ファイバ3がスロット溝5の内部に収納されるとき、光ファイバ3の周囲は空隙であっても、あるいは緩衝材が介在されていても良い。このいずれの場合でも、スロット溝5内に収納する光ファイバ3の位置は前記Y軸にほぼ一致するように配設されていることが特徴である。
【0030】
なお、光ファイバ3としては、光ファイバ素線、光ファイバ心線又は光ファイバテープ心線などが用いられる。
【0031】
さらに、この第1の実施の形態では、2本のリップコード17(Rip Cord;引裂紐)が前記シース9の内部に縦添えされており、前記2本のリップコード17はX軸を含む近傍の位置でシース9の内側で、かつスロットコア7の外周にY軸を中心に両側に対称的に配設された構造としている。なお、前記リップコード17はスロットコア7から光ファイバ3を取り出すための口出し時にシース9を引き裂くことに使用されるものである。なお、リップコード17は1本だけでも良く、本数は限定されない。
【0032】
上記構成により、この第1の実施の形態の光ファイバケーブル1の作用、効果を説明すると、スロット溝5の開口部11の側のシース厚がスロット溝5の開口部11の側と反対側のシース厚より相対的に厚いので、この部分の機械的強度が補填されているため、外力が作用してもスロット溝5の内部の光ファイバ3の損傷を防ぐことができる。しかも、スロット溝5の開口部11の側と反対側のシース厚が薄い部分の機械的強度は、スロット溝5の開口部11の側と反対側のスロットコア7の底部で補填されることになる。
【0033】
また、中間後分岐などで、光ファイバケーブル1から光ファイバ3の口出しを行うときは、図4(A)に示されているように、この第1の実施の形態では、先ず、光ファイバ3を収容しているスロットコア7のスロット溝5の開口部11とは角度90°離れたほぼX軸の位置で、ナイフなどの切裂き工具19の刃先をシース9に当てて切り裂いてから、シース9の内部からリップコード17を取り出す。このとき、リップコード17がX軸の近傍でシース9の内部に位置しており、かつこの部分のシース厚が比較的薄いので、リップコード17を取り出し易く、かつ、この部分にスロットコア7の壁が存在するので、光ファイバ3を傷つけることを防止できる。
【0034】
また、上記のように2本のリップコード17を取り出してから、このリップコード17を引っ張ると、シース厚が比較的薄いのでシース9を容易に引き裂くことができ、2本のリップコード17でシース9を2つ割りにするために、スロットコア7を容易に取り出すことができる。したがって、スロットコア7のスロット溝5の開口部11から所望の光ファイバ3を容易に取り出すことができる。
【0035】
また、この第1の実施の形態の光ファイバケーブル1は、ケーブル曲げ方向がスロット溝5の深さ方向のY軸に対して90°の角度をなす方向にのみ規制されるように、2本の抗張力体13,15をスロットコア7とシース9の内部のY軸上に実装しているため、図2に示されているように、Y軸をケーブル曲げ中立線にしてX軸上の曲げ中心Oから曲率半径RでX軸方向の曲がり(図1(A)及び図2において横曲げ)となるので、光ファイバ3の実装位置をケーブル曲げ中立線の位置(Y軸)にほぼ一致させることができる。
【0036】
一般的に、光ファイバケーブル1の断面方向では、曲げRの大きい側(曲げの外側)の光ファイバ3は伸び、逆に曲げRの小さい側(曲げの外側)の光ファイバ3は縮むので、マクロベンドが発生し、伝送損失の増加が生じるのであるが、この第1の実施の形態では、光ファイバケーブル1がX軸方向に曲げられても、光ファイバ3がケーブル曲げ中立線となるY軸上にほぼ一致しているので、光ファイバ3には伸縮が生じないことになる。その結果、光ファイバ3に伸び歪を印加することや、光ファイバ3の余りによる蛇行を防ぐことが可能となるので、光ファイバ3の伸び歪の低減のためにスロット溝5の内部に光ファイバ3の余長を確保したり、また、光ファイバ3の蛇行による損失増加を防ぐためにクリアランスを大きく設計したりする必要がないことから、良好な伝送特性のある細径ケーブル設計を達成することができる。
【0037】
図1(A)の変形例として図1(B)のような光ファイバケーブル1とすることができる。図1(B)において、図1(A)と同じ部材には同一の符号を符し、重複する説明を省略し、異なる点について説明する。図1(A)ではリップコード17をX軸を含む近傍の位置で前記シース9の内側で、かつスロットコア7の外周にY軸を中心に両側に対称的に配設された構造としているが、図1(B)においては、リップコード17をY軸上のシース9の下側の位置に配設しても対応することも可能である。この場合には、図4(B)に示されているように中間後分岐などで光ファイバケーブル1から光ファイバ3の口出しを行うときには、光ファイバ3を収容しているスロットコア7のスロット溝の開口部11とは角度180度離れたほぼY軸の下側の位置で、ナイフなどの切裂き工具19の刃先をシース9に当て切り裂いてからリップコード17を取り出す。このとき、リップコード17がY軸上でシース9の内部に位置しており、この部分のシース厚が比較的薄いので、リップコード17を取り出し易く、かつ、この不文にスロットコア7の壁が存在するので、光ファイバ3を傷つけることを防止することができる。その他の構成並びに効果は図1(A)同様である。
【0038】
次に、この発明の第2の実施の形態の光ファイバケーブル21について図面を参照して説明する。なお、前述した第1の実施の形態の光ファイバケーブル1とほぼ同様であるので、主として異なる部分のみを説明し、同様の部材は同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
図5及び図6を参照するに、この光ファイバケーブル21が前述した光ファイバケーブル1と異なる点は、2本の線状体としての例えば抗張力体23,25がスロットコア7のY軸上に配置されることにある。このとき、2本の抗張力体23,25を配設する余裕をもたらすために、スロットコア7はY軸上の位置で図5において下側に突出する断面半円形状の突部27が設けられており、1本の抗張力体23がスロットコア7の内部に配置され、もう1本の抗張力体25が前記突部27内に配置されている。
【0040】
したがって、2本の抗張力体23,25の配置状態が前述した光ファイバケーブル1とは異なってスロットコア7の内部のY軸上に実装しているが、基本的には2本以上の複数の抗張力体23,25がY軸上に配置されているので、図6に示されているように、Y軸上をケーブル曲げ中立線にしてX軸上の曲げ中心Oから曲率半径RでX軸方向の曲がり(図5及び図6において横曲げ)となる。しかも、光ファイバ3がケーブル曲げ中立線となるY軸上にほぼ一致しているので、前述した光ファイバケーブル1と同様の理由で、良好な伝送特性のある細径ケーブル設計を達成することができる。
【0041】
また、リップコード17が設けられていない点も前述した光ファイバケーブル1とは異なる。しかし、リップコード17が無い場合でも、光ファイバ3を収容しているスロットコア7のスロット溝5の開口部11とは角度90°離れたほぼX軸の位置から、ナイフなどの切裂き工具19の刃先でシース9に切り込みを入れ、シース9の剥ぎ取り作業を開始するので、接続作業時に工具の刃先などで、光ファイバ3を傷つけることなく、光ファイバ3の口出し作業を行うことができる。
【0042】
なお、上記の突部27内に配置された1本の抗張力体25は、リップコードとして用いることも可能である。
【0043】
以上のように、第2の実施の形態の光ファイバケーブル21の作用、効果は、基本的には、前述した第1の実施の形態の光ファイバケーブル1とほぼ同様である。
【0044】
なお、前述した第2の実施の形態では、2本の抗張力体23、25がスロットコア7の内部のY軸上に実装されているが、2本以上の複数の抗張力体がシース9の内部のY軸上に実装されている場合も、同様の作用、効果をもたらすものである。
【0045】
次に、この発明の第3の実施の形態の光ファイバケーブル29について図面を参照して説明する。なお、前述した第1の実施の形態の光ファイバケーブル1とほぼ同様であるので、主として異なる部分のみを説明し、同様の部材は同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0046】
図7及び図8を参照するに、この光ファイバケーブル29が前述した光ファイバケーブル1と異なる点は、1本の線状体としての例えば抗張力体31がスロットコア7のY軸上に配置され、かつ、一対の線状体としての例えば抗張力体33,35がY軸を挟んでその近傍のスロットコア7内に対向するように配置されていることにある。
【0047】
この場合、ケーブル曲げ方向を制御することに関しては、Y軸を挟んでその近傍に対向する一対の抗張力体33,35が、Y軸上に配置された1本の抗張力体と同じ機能を有するので、前記一対の抗張力体33,35と他の1本の抗張力体31で、基本的には2本の抗張力体がY軸上に配置された状態と同じことになる。
【0048】
したがって、図8に示されているように、Y軸上をケーブル曲げ中立線にしてX軸上の曲げ中心Oから曲率半径RでX軸方向の曲がり(図7及び図8において横曲げ)となる。しかも、光ファイバ3がケーブル曲げ中立線となるY軸上にほぼ一致しているので、前述した光ファイバケーブル1と同様の理由で、良好な伝送特性のある細径ケーブル設計を達成することができる。
【0049】
また、リップコード17が設けられていない点も前述した光ファイバケーブル1とは異なる。この点は前述した第2の実施の形態と同様であるので、詳しい説明を省略する。なお、Y軸を挟んでその近傍に対向する一対の抗張力体33,35は、リップコードとして用いることも可能である。
【0050】
なお、ケーブル曲げ方向を制御することに関しては、上述したようにY軸を挟んでその近傍に対向する一対の抗張力体が、2対以上の複数対がY軸上に配置されても、同様の機能を有することになる。例えば、図9の第4の実施の形態の光ファイバケーブル37に示されているように、Y軸を挟んでその近傍に対向する一対の線状体としての例えば抗張力体33,35がスロットコア7の内部に配置され、Y軸を挟んでその近傍に対向する一対の線状体としての例えば抗張力体39,41がシース9の内部に配置されている。その他は、前述した第1及び第3の実施の形態の光ファイバケーブル1、29とほぼ同様である。
【0051】
また、他の実施例としては、Y軸を挟んで、その近傍に対向する少なくとも2対の抗張力体がスロットコア7の内部に配置される場合でも、あるいはシース9の内部配置される場合でもよい。
【0052】
以上のように、第3、第4の実施の形態の光ファイバケーブル29,37の作用、効果は、基本的には、前述した第1の実施の形態の光ファイバケーブル1とほぼ同様である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(A)、(B)はこの発明の第1の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。
【図2】図1(A)の光ファイバケーブルが、実際にX軸方向に曲げられた状態を説明する斜視図である。
【図3】実際に生じ難い曲がりであるが、図1(A)の光ファイバケーブルがY軸方向に曲げられた状態を説明する斜視図である。
【図4】(A)、(B)は図1(A)、(B)のそれぞれの光ファイバケーブルの口出しを行うときの説明図である。
【図5】この発明の第2の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。
【図6】図5の光ファイバケーブルが、実際にX軸方向に曲げられた状態を説明する斜視図である。
【図7】この発明の第3の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。
【図8】図7の光ファイバケーブルが、実際にX軸方向に曲げられた状態を説明する斜視図である。
【図9】この発明の第4の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 光ファイバケーブル(第1の実施の形態の)
3 光ファイバ
5 スロット溝
7 スロットコア
9 シース
11 開口部
13,15 抗張力体(線状体)
17 リップコード
19 切裂き工具
21 光ファイバケーブル(第2の実施の形態の)
23,25 抗張力体(線状体)
27 突部
29 光ファイバケーブル(第3の実施の形態の)
31,33,35 抗張力体(線状体)
37 光ファイバケーブル(第4の実施の形態の)
39,41 抗張力体(線状体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを内部に収納する1つのスロット溝を備えたスロットコアと、このスロットコアの周囲を被覆するシースと、を備える光ファイバケーブルであって、前記シースが前記スロット溝の開口部側のシース厚を前記スロット溝の開口部側と反対側のシース厚よりも相対的に厚くした偏心シース構造であると共に、光ファイバケーブルの長手方向に垂直な断面においてケーブル中心を通り前記スロット溝の開口部の中央を結ぶ方向をY軸とし、前記ケーブル中心を通り前記Y軸に直交する方向をX軸としたとき、前記Y軸がケーブル曲げ中立線となるように線状体をY軸及び/又はその近傍に配設し、かつ、前記スロット溝内に収納する光ファイバの位置が前記Y軸にほぼ一致するように配設したことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記線状体が、前記Y軸上に配設されていて、スロットコアとシースの両方の内部に埋設されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記線状体が、前記Y軸上に配設されていて、スロットコアの内部のみに埋設されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記線状体が、スロットコアの内部における前記Y軸上及びその近傍に配設されていて、Y軸上に1本の抗張力体が、Y軸の近傍に一対の抗張力体が埋設されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記線状体が、鋼線又はFRPで構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記シースの内部にリップコードを縦添えし、かつ、前記リップコードが前記X軸を含む近傍の位置で前記シースの内側で、かつスロットコアの外周に配設した構造であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−76897(P2008−76897A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257946(P2006−257946)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】