説明

光ファイバケーブル

【課題】スロットレス型光ファイバケーブルにおいてテンションメンバの構造を改善することにより、細径化・軽量化できるとともに、外被除去時の作業性、ケーブルの取り回し性を向上できる光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバケーブルを、光ファイバ心線と、光ファイバ心線に螺旋状に巻回された巻き付け材と、光ファイバ心線及び巻き付け材の全体を囲繞するように配せられたテンションメンバと、テンションメンバの周囲に形成されたポリエチレン外被と、を備えた構成とする。
テンションメンバは、高強度ポリエチレン繊維で構成され、その一部がポリエチレン外被の押出成形時に溶融されることによって、ポリエチレン外被と融着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルに関し、特に、スロットレス型の光ファイバケーブルに内設されるテンションメンバの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバ心線を溝型のスロットスペーサに集合したスロット型光ファイバケーブルに対して、スロットレス型と呼ばれる光ファイバケーブルが知られている。スロットレス型光ファイバケーブルは、スロットスペーサを用いないため、光ファイバケーブルの細径化を図ることができる。
図12は、24心スロットレス型光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
図12に示すスロットレス型光ファイバケーブル10は、6枚の4心光ファイバテープ心線101が光ファイバケーブル10の中心部に積層されて配置されている。光ファイバテープ心線101の周囲には、PPヤーン(ポリプロピレン・ヤーン)などからなる緩衝層102が配置されている。そして、その外側にポリエチレンなどからなる外被(シース)105が押出成形により形成されている。
【0003】
さらに、外被105内には、2本のテンションメンバ(抗張力体)103,103が光ファイバケーブル10の長手方向に埋設されている。テンションメンバ103,103は、ケーブル敷設時に作用する張力等により光ファイバテープ心線101に過度の応力が加わるのを防止するために設けられる。したがって、テンションメンバ103には引張に対する高い耐性が要求されるため、一般に、鋼線等の金属が用いられる。
また、外被105内には、中間後分岐を容易にすべく、2本の引裂紐104,104が緩衝層102に沿って光ファイバケーブル10の長手方向に埋設されている。
【0004】
上述したスロットレス型光ファイバケーブル10において、緩衝層102に吸水性繊維を使用することにより防水特性を向上したり(例えば、特許文献1)、緩衝層102にポリエチレン繊維を使用することで同一材料の外被と一体化させてリサイクルしやすくしたりする(例えば、特許文献2)など、新たな機能を追加する検討がなされている。
【特許文献1】特開2001−343567号公報
【特許文献2】特開2005−84355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図12に示す従来のスロットレス型光ファイバケーブル10において、テンションメンバ103を鋼等の金属で構成することは、光ファイバケーブル10の軽量化に対して障害となる。
また、2本のテンションメンバ103,103は、一般に中心に関して対称位置に配置されるため、テンションメンバ103,103を結んだ軸が必然的に曲げの中心となる。そのため、光ファイバケーブル10に曲げの方向性が出てしまい、ケーブルの取り回し性が低下する要因となっている。
さらに、スロットレス型光ファイバケーブル10においては、中間後分岐で外被除去をする際に鋭利な工具を使用して引裂紐104を取り出すために、誤って光ファイバ心線を断線させてしまう危険性がある。したがって、外被除去作業は、慎重に行う必要があり、時間がかかるものとなっている。
【0006】
本発明は、スロットレス型光ファイバケーブルにおいてテンションメンバの構造を改善することにより、細径化・軽量化できるとともに、外被除去時の作業性、ケーブルの取り回し性を向上できる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するためになされたもので、光ファイバ心線と、
前記光ファイバ心線に螺旋状に巻回された巻き付け材と、
前記光ファイバ心線及び前記巻き付け材の全体を囲繞するように配せられたテンションメンバと、
前記テンションメンバの周囲に形成されたポリエチレン外被と、を備え、
前記テンションメンバは、高強度ポリエチレン繊維で構成され、その一部が前記ポリエチレン外被の押出成形時に溶融されることによって、前記ポリエチレン外被と融着していることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0008】
好ましくは、前記巻き付け材の全体若しくは一部は、吸水性繊維で構成されていることを特徴とする。
【0009】
さらに好ましくは、前記テンションメンバと前記ポリエチレン外被の融着部分において、前記ポリエチレン外被の内面に沿って長手方向に固定された引裂紐を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スロットレス型光ファイバケーブルにおいて、テンションメンバの構造を改善することにより、細径化・軽量化できるとともに、外被除去時の作業性、ケーブルの取り回し性を向上できる光ファイバケーブルが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る24心スロットレス型光ファイバケーブルの断面図であり、図2は第1実施形態に係る光ファイバケーブルの外観側面図である。なお、図1,2において、括弧書きで示している符号は、後述する第3実施形態に対応する。
図1,2に示すスロットレス型光ファイバケーブル1は、6枚の4心光ファイバテープ心線11が光ファイバケーブル1の中心部に積層されて配置されている。なお、4心光ファイバテープ心線とは、4本の光ファイバ心線を横一列に配し、樹脂で一体化したものである。
【0012】
光ファイバテープ心線11の周囲には巻き付け材12が螺旋状に巻回され、光ファイバテープ心線11全体を覆っている。巻き付け材12は、複数本(図1では8本)のポリプロピレン繊維で構成され、このポリプロピレン繊維が光ファイバテープ心線11に所定のピッチで巻かれている。ポリプロピレン繊維とは、複数のポリプロピレンフィラメント(原糸)を撚り合わせて1本とした繊維(紐)であり、例えば、低熱収縮PPヤーンなどがある。
巻き付け材12の構成(例えば、ポリプロピレン繊維の繊度や本数、巻き付けピッチなど)を適宜設定することで、所望の光ファイバ心線の引抜力(心線引抜力)を実現できるとともに、光ファイバテープ心線11のとび出しを効果的に防止できる。
【0013】
巻き付け材12の周囲には、全体を囲繞するようにテンションメンバ13が形成されている。テンションメンバ13は、複数本(図1では8本)の高強度ポリエチレン繊維で構成され、この高強度ポリエチレン繊維が巻き付け材12に沿って縦添えに配設されている。高強度ポリエチレン繊維とは、複数の高強度ポリエチレンフィラメント(原糸)を撚り合わせて1本とした繊維であり、例えば、東洋紡績社製のダイニーマ(登録商標)や、ハネウェル社のスペクトラ(spectraは登録商標)などが知られている。
テンションメンバ13の構成(例えば、高強度ポリエチレン繊維の繊度や本数など)を適宜設定することで、所望の光ファイバケーブルの引張力を実現できる。
例えば、後述する良好な心線引抜力を得るためには、繊維充填密度が2500dtex/mm2以上とするのが好ましく、さらには3500dtex/mm2以上とするのが好ましい。ここで、繊維充填密度とは、光ファイバケーブル3の断面において、外被15の内部の面積から光ファイバテープ心線が占める面積を引いた面積中の巻き付け材とテンションメンバを合わせた繊維が占める面積を意味する。
【0014】
そして、テンションメンバ13の外側にポリエチレンからなる外被(シース)15が押出成形により形成されている。この外被15の押出成形時の熱により、テンションメンバ13を構成する高強度ポリエチレン繊維の外周側は一部溶融され、外被15と密着することとなる。
また、外被15内には、中間後分岐を容易にすべく、2本の引裂紐14,14がテンションメンバ13に沿って光ファイバケーブル1の長手方向に埋設されている。
【0015】
第1実施形態に係る光ファイバケーブル1の好ましい実施例及び評価結果を図3に示す。ここでは、0.3%伸び時の引張力、光ファイバテープ心線11の外被15又はテンションメンバ(高強度ポリエチレン繊維)13との固着の有無、心線引抜力により、光ファイバケーブル1の特性を評価している。
なお、0.3%伸び時の引張力は、ケーブルを無張力の状態で直線状に配置し、片端末を固定し逆端末を徐々に引っ張っていき、無張力の状態から0.3%伸びた時の負荷を測定することで得られる。
また、心線引抜力は、ケーブルを無張力の状態で直線上に配置し、ケーブルの片端末を固定し逆端末の光ファイバテープ心線を一括で引き抜き、光ファイバテープ心線が動き出した時の張力を測定することで得られる。
【0016】
一般に、光ファイバケーブルを布設する際の光ファイバの許容伸び歪みは0.3%以下とされている。また、光ファイバケーブルを人が引っ張って布設する場合、最大で294N(=30kgf)の引張力が加わるとされている。従って、0.3%伸び時の引張力が294N(=30kgf)以上であれば、引張に対する耐性が良好とされる。
光ファイバテープ心線11が外被15又はテンションメンバ13と固着していると、中間後分岐作業に支障をきたすなど不具合を生じるので、光ファイバテープ心線11の固着はないほうが望ましい。
心線引抜力f(N/10m)は、f<9.8のとき“×”、9.8≦f<19.6のとき“○”、f≧19.6のとき“◎”として評価される。心線引抜力が9.8N/10m以上であれば、光ファイバケーブルが温度変化による収縮や風圧による振動等で、ケーブル内の光ファイバ心線が長手方向に移動してしまい、損失増加若しくは断線を生じるという問題を生じないことが一般的に知られているため、これを評価基準としている。
【0017】
(実施例1)
図3に示すように、実施例1の光ファイバケーブル1において、光ファイバテープ心線11は、UV樹脂(一次被覆)による被覆を施した4本のシングルモード光ファイバ心線(外径:0.25mm)を横一列に配し、UV樹脂(二次被覆)で一体化した4心光ファイバテープ心線が、6枚積層されて構成されている。4心光ファイバテープ心線の寸法は、1.1(テープ幅)×0.3(テープ厚)mmである。
【0018】
巻き付け材12は、4本のポリプロピレン繊維(繊度:4444dtex)で構成され、このポリプロピレン繊維が光ファイバテープ心線11の周囲に一方向撚り(ピッチ:500mm)で重ね巻きされている。
【0019】
テンションメンバ13は、5本の高強度ポリエチレン繊維(繊度:5333dtex)で構成され、この高強度ポリエチレン繊維が巻き付け材12の周囲に縦添えに配設されている。
外被15はポリエチレンからなり、引裂紐14の埋設位置を示す外周凸部を除く寸法は、厚さ:2mm、外径:8mmである。
【0020】
(実施例2)
図3に示すように、実施例2の光ファイバケーブル1は、実施例1に比較して、巻き付け材12の巻き付けピッチが200mmとされている(重なり幅が大きい)点、テンションメンバ13が8本の高強度ポリエチレン繊維(繊度:1760dtex)で構成されている点が異なる。
【0021】
実施例1,2の光ファイバケーブル1において、0.3%伸び時の引張力は、それぞれ539N、304Nとなっている。これより、実施例1,2の光ファイバケーブル1は、引張に対する耐性が良好であるといえる。
光ファイバテープ心線11と外被15又はテンションメンバ(高強度ポリエチレン繊維層)13との固着は何れもなく、巻き付け材12により光ファイバテープ心線11は効果的に拘束されているといえる。
また、何れも心線引抜力は良好であり、巻き付け材12とテンションメンバ13の実装密度が適切に制御されているといえる。
【0022】
このように、第1実施形態に係る光ファイバケーブル1において、巻き付け材12は、外圧を緩和して光ファイバテープ心線11を保護するとともに、光ファイバテープ心線11を拘束することで光ファイバテープ心線11が外側にとび出して外被15と固着するのを防止する緩衝層として機能する。
テンションメンバ13は、巻き付け材12と同様に緩衝層として機能するとともに、光ファイバテープ心線11に許容量以上の張力が加わらないように引張力を抑制する。テンションメンバ13は、高強度ポリエチレン繊維が縦添えに配されて構成されているので、光ファイバケーブル1に引張力が付与されたときに、ケーブルにねじれが生じることはない。
【0023】
第1実施形態に係る光ファイバケーブル1によれば、スロットレス型の構造とすることで光ファイバケーブル1の細径化を図ることができるとともに、テンションメンバ13が金属に比べて比重の小さい高強度ポリエチレン繊維で構成されているので光ファイバケーブル1の軽量化を図ることができる。
外被15内にテンションメンバが埋設されていないので、曲げの方向性がなくなり取り回し性が改善されるとともに、外被15の薄肉化が可能となり細径・軽量化を図ることができる。また、外被除去作業にパイプカッタを使用することができるので作業性が格段に改善される。
光ファイバテープ心線11には巻き付け材12が巻回されているので、光ファイバテープ心線11が外側に飛び出して外被15又はテンションメンバの融着部分と固着するのを防止することができる。また、巻き付け材12とテンションメンバ13の実装密度を制御することで、所定の心線引抜力を実現でき、心線移動を抑制できる。
【0024】
(第2実施形態)
図4は第2実施形態に係る24心スロットレス型光ファイバケーブルの断面図であり、図5,6は第2実施形態に係る光ファイバケーブルの外観側面図である。なお、図4〜6において、括弧書きで示している符号は、後述する第4実施形態に対応する。
第2実施形態に係る光ファイバケーブル2では、巻き付け材22を繊維の紐で構成している点で、第1実施形態に係る光ファイバケーブル1と異なる。光ファイバテープ心線11、テンションメンバ13、引裂紐14及び外被15の構成については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0025】
すなわち、光ファイバケーブル2において、光ファイバテープ心線11の周囲には、1本又は2本の紐状の巻き付け材22が所定のピッチで粗巻きされている。1本巻きの場合は図5に示す外観となり、2本交差巻きの場合は図6に示す外観となる。巻き付け材22は、例えば、ポリプロピレン繊維又はポリエステル繊維で構成される。
巻き付け材22の構成(例えば、ポリプロピレン繊維の繊度や本数(1又は2本)、巻き付けピッチなど)を適宜設定することで、光ファイバテープ心線11のとび出しを効果的に防止できる。
【0026】
第2実施形態に係る光ファイバケーブル2の好ましい実施例及び評価結果を図7に示す。光ファイバケーブル2の評価項目については第1実施形態と同様である。
【0027】
(実施例3)
図7に示すように、実施例3の光ファイバケーブル2において、光ファイバテープ心線11の構造は実施例1,2と同様である。
巻き付け材22は、1本のポリプロピレン繊維(繊度:4444dtex)で構成され、このポリプロピレン繊維が光ファイバテープ心線11の周囲に一方向撚り(ピッチ:200mm)で粗巻きされている。
【0028】
テンションメンバ13は、8本の高強度ポリエチレン繊維(繊度:5333dtex)で構成され、この高強度ポリエチレン繊維が巻き付け材22の周囲に縦添えに配設されている。
外被15はポリエチレンからなり、引裂紐14の埋設位置を示す外周凸部を除く寸法は、厚さ:2mm、外径:8mmである。
【0029】
(実施例4)
図7に示すように、実施例4の光ファイバケーブル2は、実施例3に比較して、巻き付け材22がポリエステル繊維(繊度:900dtex)で構成されている点、巻き付け材22の巻き付けピッチが100mmとされている点、テンションメンバ13が5本で構成されている点が異なる。
【0030】
(実施例5)
図7に示すように、実施例5の光ファイバケーブル2は、実施例4に比較して、巻き付け材22が2本のポリエステル繊維(繊度:222dtex)で構成されている点、巻き付け材22が巻き付けピッチ50mmで一方向撚り・交差巻き付けとされている点が異なる。
【0031】
実施例3〜5の光ファイバケーブル2において、0.3%伸び時の引張力は、それぞれ862N、500N、490Nとなっている。これより、実施例3〜5の光ファイバケーブル2は、引張に対する耐性が良好であるといえる。
光ファイバテープ心線11と外被15又はテンションメンバ(高強度ポリエチレン繊維層)13との固着は何れもなく、巻き付け材22により光ファイバテープ心線11は効果的に拘束されているといえる。
また、何れも心線引抜力は良好であり、巻き付け材22とテンションメンバ13の実装密度が適切に制御されているといえる。なお、実施例3〜5では、テンションメンバ13を構成する高強度ポリエチレン繊維の実装密度が心線引抜力を支配していると考えられる。
【0032】
このように、第2実施形態に係る光ファイバケーブル2において、巻き付け材22は、光ファイバテープ心線11を拘束することで光ファイバテープ心線11が外側にとび出して外被15と固着するのを防止することができる。
【0033】
第2実施形態に係る光ファイバケーブル2によれば、巻き付け材22を1又は2本の繊維紐で構成しているので、光ファイバケーブル2の構成が簡略化される。
なお、第2実施形態に係る光ファイバケーブル2においても、第1実施形態に係る光ファイバケーブル1と同様の効果が得られる。
【0034】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る光ファイバケーブル3の断面形状及び外観側面は、図1,2に示すとおりである。
第3実施形態に係る光ファイバケーブル3では、巻き付け材32の一部又は全部を、吸水性を有する繊維(吸水性繊維)で構成している点で、第1実施形態に係る光ファイバケーブル1と異なる。光ファイバテープ心線11、テンションメンバ13、引裂紐14及び外被15の構成については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0035】
すなわち、光ファイバケーブル3において、光ファイバテープ心線11の周囲には、巻き付け材32が螺旋状に巻回され、光ファイバテープ心線11全体を覆っている。巻き付け材32は、複数本(図1では8本)の吸水性繊維で構成され、この吸水性繊維が光ファイバテープ心線11に所定のピッチで重ね巻きされている。
なお、吸水性繊維と吸水性のない繊維(例えば、ポリプロピレン繊維などの非吸水性繊維)を交互に配置することで巻き付け材32を構成するようにしてもよい。
【0036】
吸水性繊維としては、吸収率8倍以上のものが好ましく、例えば、プラスチック繊維に吸水性パウダーを塗布したものや、繊維そのものに吸水性を保たせたものを用いることができ、具体的には帝人ファイバ社製のベルオアシス(登録商標)などがある。
巻き付け材32の構成(例えば、吸水性/非吸水性繊維の繊度や本数(割合)、巻き付けピッチなど)を適宜設定することで、光ファイバケーブル3の防水特性を向上することができる。また、所望の心線引抜力を実現できるとともに、光ファイバテープ心線11のとび出しを効果的に防止できる。
例えば、後述する良好な防水特性を得るためには、吸水性繊維の充填密度を500dtex/mm以上とすることが好ましい。ここで、吸水性繊維充填密度とは、光ファイバケーブル3の断面において、外被15の内部の面積から光ファイバテープ心線が占める面積を引いた面積中の吸水性繊維が占める面積を意味する。
【0037】
ここで、防水特性は、水平に配置したケーブルの切断面から水を注入したときに、一定時間内に浸水したケーブル距離(止水長:L)で表され、一般的には止水長が40m以下であれば良好とされる。
架空光ファイバケーブルの場合、最短40m間隔でクロージャが取り付けられる。そして、1つのクロージャが浸水すると、光ファイバケーブル内を伝わって隣のクロージャにも浸水する恐れがある。止水長が40m以下であれば浸水被害を最小限に食い止めることができることとなるので、これが防水特性の評価基準とされている。
【0038】
第3実施形態に係る光ファイバケーブル3の好ましい実施例及び評価結果を図8に示す。光ファイバケーブルの評価項目については実施例1〜5とほぼ同様で、防水特性が追加されている。
なお、防水特性の評価は、止水長L(m)>40のとき“×”、20<L≦40のとき“○”、f≦20のとき“◎”としている。
【0039】
(実施例6)
図8に示すように、実施例6の光ファイバケーブル3において、光ファイバテープ心線11の構造は実施例1〜5と同様である。
巻き付け材32は、4本の吸水性繊維(繊度:3330dtex)で構成され、この吸水性繊維が光ファイバテープ心線11の周囲に一方向撚り(ピッチ:500mm)で重ね巻きされている。
【0040】
テンションメンバ13は、5本の高強度ポリエチレン繊維(繊度:5333dtex)で構成され、この高強度ポリエチレン繊維が巻き付け材22の周囲に縦添えに配設されている。
外被15はポリエチレンからなり、引裂紐14の埋設位置を示す外周凸部を除く寸法は、厚さ:2mm、外径:8mmである。
【0041】
(実施例7)
図8に示すように、実施例7の光ファイバケーブル3は、実施例6に比較して、巻き付け材32が2本のポリプロピレン繊維(繊度:4444dtex)と、2本の吸水性繊維(繊度:3330dtex)が交互に配置されて構成されている点、巻き付け材32の巻き付けピッチが200mmとされている点、テンションメンバ13が8本の高強度ポリエチレン繊維(繊度:1760dtex)で構成されている点が異なる。
【0042】
実施例6,7の光ファイバケーブル2において、0.3%伸び時の引張力は、それぞれ529N、294Nとなっている。これより、実施例6,7の光ファイバケーブル3は、引張に対する耐性が良好であるといえる。
光ファイバテープ心線11と外被15又はテンションメンバ(高強度ポリエチレン繊維層)13との固着は何れもなく、巻き付け材32により光ファイバテープ心線11は効果的に拘束されているといえる。
また、何れも心線引抜力は良好であり、巻き付け材32とテンションメンバ13の実装密度が適切に制御されているといえる。
【0043】
このように、第3実施形態に係る光ファイバケーブル3において、巻き付け材32は防水性能を発揮するとともに、第1実施形態と同様に緩衝層として機能する。
【0044】
第3実施形態に係る光ファイバケーブル3によれば、巻き付け材32の一部又は全部を吸水性繊維で構成しているので、光ファイバケーブル3の防水特性を向上できる。
なお、第3実施形態に係る光ファイバケーブル3においても、第1実施形態に係る光ファイバケーブル1と同様の効果が得られる。
【0045】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る光ファイバケーブル4の断面形状及び外観側面は、図4〜6に示すとおりである。
第4実施形態に係る光ファイバケーブル4では、巻き付け材42を繊維の紐で構成している点で、第3実施形態に係る光ファイバケーブル3と異なる。光ファイバテープ心線11、テンションメンバ13、引裂紐14及び外被15の構成については、第3実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0046】
すなわち、光ファイバケーブル4において、光ファイバテープ心線11の周囲には、1本又は2本の紐状の巻き付け材(吸水性繊維)42が所定のピッチで粗巻きされている。1本巻きの場合は図5に示す外観となり、2本交差巻きの場合は図6に示す外観となる。
なお、図6に示すように、2本の巻き付け材42とする場合は、一方を吸水性繊維とし、他方を吸水性のない繊維(例えば、ポリプロピレン繊維などの非吸水性繊維)で構成するようにしてもよい。
巻き付け材42の構成(例えば、吸水性繊維の繊度や本数(1又は2本)、巻き付けピッチなど)を適宜設定することで、光ファイバケーブル4の防水特性を向上することができる。また、所望の心線引抜力を実現できるとともに、光ファイバテープ心線11のとび出しを効果的に防止できる。
【0047】
第4実施形態に係る光ファイバケーブル4の好ましい実施例及び評価結果を図9に示す。光ファイバケーブルの評価項目については実施例6,7と同様である。
【0048】
(実施例8)
図9に示すように、実施例8の光ファイバケーブル4において、光ファイバテープ心線11の構造は実施例1〜7と同様である。
巻き付け材42は、1本の吸水性繊維(繊度:5550dtex)で構成され、この吸水性繊維が光ファイバテープ心線11の周囲に一方向撚り(ピッチ:200mm)で粗巻きされている。
【0049】
テンションメンバ13は、8本の高強度ポリエチレン繊維(繊度:5333dtex)で構成され、この高強度ポリエチレン繊維が巻き付け材42の周囲に縦添えに配設されている。
外被15はポリエチレンからなり、引裂紐14の埋設位置を示す外周凸部を除く寸法は、厚さ:2mm、外径:8mmである。
【0050】
(実施例9)
図9に示すように、実施例9の光ファイバケーブル4は、実施例8に比較して、巻き付け材42が吸水性繊維(繊度:3330dtex)で構成されている点、2本の巻き付け材42が巻き付けピッチ50mmで一方向撚り・交差巻き付けとされている点が異なる。
【0051】
実施例8,9の光ファイバケーブル4において、0.3%伸び時の引張力は、それぞれ882N、519Nとなっている。これより、実施例8,9の光ファイバケーブル4は、引張に対する耐性が良好であるといえる。
光ファイバテープ心線11と外被15又はテンションメンバ(高強度ポリエチレン繊維層)13との固着は何れもなく、巻き付け材42により光ファイバテープ心線11は効果的に拘束されているといえる。
また、何れも心線引抜力は良好であり、巻き付け材42とテンションメンバ13の実装密度が適切に制御されているといえる。なお、実施例3〜5と同様に、実施例8,9では、テンションメンバ13を構成する高強度ポリエチレン繊維の実装密度が心線引抜力を支配していると考えられる。
【0052】
このように、第4実施形態に係る光ファイバケーブル4において、巻き付け材42は防水性能を発揮するとともに、光ファイバテープ心線11を拘束することで光ファイバテープ心線11が外側にとび出して外被15と固着するのを防止する。
【0053】
第4実施形態に係る光ファイバケーブル4によれば、巻き付け材42の一部又は全部を吸水性繊維で構成しているので、光ファイバケーブル4の防水特性を向上できる。
なお、第4実施形態に係る光ファイバケーブル4においても、第2実施形態に係る光ファイバケーブル2と同様の効果が得られる。
【0054】
実施例1〜9で示したように、テンションメンバ13の構成(例えば、高強度ポリエチレン繊維の繊度や本数など)を適宜設定することで、所望の引張耐性(引張力30kgf以上)を実現できる。
光ファイバテープ心線の固着の有無は、巻き付け材12,22,32,42の巻き付けピッチや繊維量(繊度×本数)が関連すると考えられる。光ファイバテープ心線の固着を防止するためには、巻き付けピッチや繊維量は、巻き付け材12,22,32,42が積層した光ファイバテープ心線を隙間無く覆うことができるように選定することがより好ましい。
【0055】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
第1〜第4実施形態では、2本の引裂紐14,14がテンションメンバ13に沿って光ファイバケーブル1の長手方向に設けられ、外被15に埋設されているが、この引裂紐14,14をテンションメンバ13内に配設するようにしてもよい。
【0056】
図10は第1実施形態に係る24心スロットレス型光ファイバケーブルの変形例を示す断面図であり、図11は変形例に係る光ファイバケーブル5の具体的な構成を示す説明図である。
図10に示すように、変形例に係る光ファイバケーブル5では、引裂紐24,24が、テンションメンバ13とポリエチレン外被15の融着部分において、外被15の内周面に沿って長手方向に固定されている。
【0057】
第1〜第4実施形態では、引裂紐14,14が埋設されている部分が外力による外被割れの起点になることがあるため、ある程度の外被厚さを確保する必要があった。変形例の場合は外被15を薄くすることができるので、よりいっそうの光ファイバケーブルの細径化を図ることができる。
例えば、図11に示す例では、引裂紐以外について同等の構成を有する実施例2の光ファイバケーブル5(図3参照)に比較して、外被15の厚さが1.5mmと薄肉化され、外径7mmと細径化されている。
また、引裂紐24,24を外被15の内面に沿わせることで、外力による外被割れに対する強度の向上を図ることができる。
【0058】
変形例では、引裂紐24,24が埋設されている位置を示すストライプ模様16を外被15の外周面に形成することで、外被15に形成される凸部の代わりとしている。
図10は第1実施形態の変形例について示しているが、第2〜第4実施形態に係る光ファイバケーブル2〜4においても、同様に引裂紐の埋設位置を変更することができる。
なお、図11に示すように、変形例に係る構成としても、本発明による効果は損なわれない。
【0059】
上記実施形態において、光ファイバテープ心線11を、複数本の光ファイバ単心線を束ねたユニット(例えば、8心×3ユニット)とすることもできる。また、光ファイバテープ心線の種類(4心、8心など)や、光ファイバ心線のサイズ(φ0.25mmや0.5mmなど)について、特に限定されないことは言うまでもない。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1実施形態に係る光ファイバケーブルの一例について示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係る光ファイバケーブルの一例について示す外観側面図である。
【図3】第1実施形態に係る光ファイバケーブルの具体的な構成を示す説明図である。
【図4】第2実施形態に係る光ファイバケーブルの一例について示す断面図である。
【図5】第2実施形態に係る光ファイバケーブルの一例について示す外観側面図である。
【図6】第2実施形態に係る光ファイバケーブルの他の一例について示す外観側面図である。
【図7】第2実施形態に係る光ファイバケーブルの具体的な構成を示す説明図である。
【図8】第3実施形態に係る光ファイバケーブルの具体的な構成を示す説明図である。
【図9】第4実施形態に係る光ファイバケーブルの具体的な構成を示す説明図である。
【図10】第1実施形態に係る光ファイバケーブルの変形例を示す断面図である。
【図11】変形例に係る光ファイバケーブルの具体的な構成を示す説明図である。
【図12】従来の光ファイバケーブルの一例について示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 光ファイバケーブル
11 光ファイバテープ心線
12 巻き付け材
13 テンションメンバ(抗張力体)
14 引裂紐
15 外被(シース)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線と、
前記光ファイバ心線に螺旋状に巻回された巻き付け材と、
前記光ファイバ心線及び前記巻き付け材の全体を囲繞するように配せられたテンションメンバと、
前記テンションメンバの周囲に形成されたポリエチレン外被と、を備え、
前記テンションメンバは、高強度ポリエチレン繊維で構成され、その一部が前記ポリエチレン外被の押出成形時に溶融されることによって、前記ポリエチレン外被と融着していることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記巻き付け材の全体若しくは一部は、吸水性繊維で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記テンションメンバと前記ポリエチレン外被の融着部分において、前記ポリエチレン外被の内面に沿って長手方向に固定された引裂紐を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−139631(P2010−139631A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314403(P2008−314403)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】