光ファイバケーブル
【課題】セミの産卵管による光ファイバ心線の損傷を防ぎながら、容易に光ファイバ心線を取り出すことができる光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバ心線11を樹脂製のシース15で被覆してなる光ファイバケーブル1である。シース15には光ファイバ心線11に沿ってシース15よりも破断強度が小さい樹脂材料からなる破断材16が埋設されている。
【解決手段】光ファイバ心線11を樹脂製のシース15で被覆してなる光ファイバケーブル1である。シース15には光ファイバ心線11に沿ってシース15よりも破断強度が小さい樹脂材料からなる破断材16が埋設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバ心線と一対のテンションメンバと、さらに支持線とを所定位置に位置決めしながら、一括被覆を施してシースを形成した光ファイバケーブルが種々製造され、使用されている。このような光ファイバケーブルにおいては、シースを引き裂いて光ファイバ心線を取り出しやすいように、シースにV字状のノッチを設けることが行われている。
【0003】
これらの光ファイバケーブルが架空布設された場合、経時的に原因不明の特性劣化が発生することがあった。近年になって漸くこの原因が夏季に発生するセミ、特にクマゼミの光ファイバケーブルへの産卵行動に起因することがわかってきた。具体的には、クマゼミが架空に布設された光ファイバケーブルを木の幹や枝と誤って、シースに産卵管を突き刺し、内部に産卵する行動が原因である、というものである。特にノッチ部分は、シース表面から光ファイバ心線までの距離が近いため、このノッチ部分に産卵管が差し込まれると、産卵管で光ファイバが損傷してしまうことがある。
【0004】
このため、ノッチを剥離可能な保護材で埋めることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。あるいは、セミの産卵管よりも幅が狭いノッチを光ファイバケーブルに形成することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−90596号公報
【特許文献2】特開2006−330606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、セミの産卵管よりも幅が狭いノッチを設けた場合においても、ノッチに沿って産卵管が挿入されるおそれがある。一方、溝やノッチを設けない場合には、シースを引き裂くのが困難になる。また、保護材をシースに埋めた場合には、特別な工具がなければシースを引き裂くことができない。
【0007】
本発明の課題は、セミの産卵管による光ファイバ心線の損傷を防ぎながら、容易に光ファイバ心線を取り出すことができる光ファイバケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明は、光ファイバ心線を樹脂製のシースで被覆してなる光ファイバケーブルであって、前記シースには前記光ファイバ心線に沿って前記シースよりも破断強度が小さい樹脂材料からなる破断材が埋設されていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記破断材は断面三角形状である。
好ましくは、前記シースには前記光ファイバ心線に沿ってノッチが形成され、前記破断材は前記ノッチと前記光ファイバ心線との間に配置されている。
好ましくは、前記シースは破断強度が12MPa〜25MPaである高分子材料からなり、前記破断材は破断強度が2.3MPa〜10.2MPaである高分子材料からなる。
好ましくは、前記破断材の一面が前記シースの表面に露出しており、前記破断材の露出面の色は前記シースと異なる色である。
好ましくは、前記破断材の幅は0.05mm〜0.30mmである。
好ましくは、前記破断材から光ファイバ心線までの距離が0.2mm〜0.7mmである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セミの産卵管による光ファイバ心線の損傷を防ぎながら、容易に光ファイバ心線を取り出すことができる光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る光ファイバケーブル1の長さ方向と垂直な断面図である。
【図2】光ファイバケーブル1の押出成形に用いる押出成形機20の概略的な構成を示す断面図である。
【図3】押出成形機20のニップル21を出口側から見た正面図である。
【図4】押出成形機20の押出ダイス22を出口側から見た正面図である。
【図5】他の形態の光ファイバケーブル1を示す長さ方向と垂直な断面図である。
【図6】他の形態の光ファイバケーブル1を示す長さ方向と垂直な断面図である。
【図7】他の形態の光ファイバケーブル1を示す長さ方向と垂直な断面図である。
【図8】他の形態の光ファイバケーブル1を示す長さ方向と垂直な断面図である。
【図9】他の形態の光ファイバケーブル1を示す長さ方向と垂直な断面図である。
【図10】テンションメンバ12及び二分されたシース15の端部を引張試験機のチャック30、30で把持した状態を示す図である。
【図11】耐磨耗試験の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る光ファイバケーブル1の長さ方向と垂直な断面図である。図1に示すように、光ファイバケーブル1は、光ファイバ心線11と、2本のテンションメンバ12と、支持線14と、これらを一括被覆するシース15と、シース15に埋設された破断材16とから概略構成される。光ファイバ心線11及びテンションメンバ12を被覆する部分(本体部2)はインドアケーブルと同様の形状となるように形成されており、支持線14を被覆する部分(支持線部3)との間にくびれた接続部4が形成されている。光ファイバ心線11、テンションメンバ12、及び支持線14は長さ方向を同方向(図1の紙面に垂直方向)としている。
支持線14は光ファイバケーブル1の全体の重量を支持するものであり、例えば亜鉛メッキ鋼線等を用いることができる。
【0013】
本体部2は、断面形状が角のとれた略長方形状であり、中央に光ファイバ心線11が配置されている。また、光ファイバ心線11に対して本体部2の長尺方向の両側に離間してそれぞれテンションメンバ12が配置されている。
【0014】
テンションメンバ12は、本体部2に作用する張力を負担する。テンションメンバ12には、例えば鋼線や、繊維強化プラスチック(FRP)等を用いることができる。
シース15は、光ファイバ心線11、テンションメンバ12、及び支持線14を被覆するものであり、例えばノンハロゲンの難燃ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0015】
シース15を形成する高分子材料は、破断強度が12MPa以上であることが好ましい。破断強度を12MPa以上とすることで、光ファイバケーブルを敷設する際にシースが損傷してしまう等の問題が生じにくくなる。一方、シース15の引き裂きを容易とするために、破断強度が25MPa以下であることが好ましい。
シース15の破断強度は、熱可塑性樹脂の種類、押出成形時の熱可塑性樹脂の温度や押し出し圧力により適宜調整することができる。
高分子材料として熱可塑性樹脂を用いた場合、破断強度は、たとえば、ベースポリエチレンに配合するポリプロピレンの配合比や難燃材として添加する水酸化マグネシウムの添加量を変化させることによって調整することができる。
【0016】
破断材16は、シース15の表面の光ファイバ心線11に最も近い部分から光ファイバ心線11に向かって埋設されている。破断材16には、シース15に作用する応力が集中する。
【0017】
破断材16は、シース15と比較して強度が弱い低強度破断樹脂材料をテープ状に形成したものである。破断材16の幅w(テープの厚さ)は0.05〜0.30mmであることが好ましい。0.05mmよりも小さいと押出成形が困難だからである。一方、0.30mmよりも大きいとクマゼミの産卵管の径よりも大きくなるため、破断材16にクマゼミの産卵管が挿入されて光ファイバ心線を損傷する確率が高くなる。
【0018】
破断材16は、破断強度が2.3MPa〜10.2MPaであることが好ましい。破断強度が2.3MPaよりも小さいと押出成形が困難だからである。一方、10.2MPaよりも大きいとシース15を引き裂く応力が破断材16に集中せず、引き裂きが困難となるためである。
【0019】
このような破断材16に用いる低強度破断樹脂材料には、例えば、EEA樹脂(Ethylene-Ethylacrylate Copolymer)、EVA樹脂(Ethylene-Vinyl Acetate;エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、熱可塑性エラストマー、ポリウレタン、シリコン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリオレフィン等を用いることができる。
【0020】
この破断材16はシース15と比較して強度が適度に弱いため、シース15を引き裂くと破断材16に沿って破断面が伝搬する。
【0021】
シース15を容易に引き裂くことができるように、破断材16から光ファイバ心線11までのシース15の厚さdは0.7mm以下であることが好ましい。一方、衝撃試験などで機械的な劣化を加えた場合でも光ファイバ心線11が露出しないように、dは0.2mm以上であることが好ましい。
【0022】
また、ニッパ等で切り込みを入れる際に破断材16の部分を容易に識別できるように、破断材16の少なくとも一面がシース15から露出していることが好ましい。破断材16のシース15から露出した部分は、シース15と異なる色であることが好ましい。
【0023】
次に、光ファイバケーブル1の製造に用いる押出成形機20について説明する。図2は、光ファイバケーブル1の押出成形に用いる押出成形機20の概略的な構成を示す断面図である。押出成形機20は、ニップル21と、押出ダイス22とを備える。
【0024】
図3は押出成形機20のニップル21を出口側から見た正面図である。図3に示すように、ニップル21には、光ファイバ心線11を挿通させる挿通孔23a、テンションメンバ12を挿通させる挿通孔23b、支持線14を挿通させる挿通孔23c、及び破断材16を挿通させる挿通孔23dが設けられている。
【0025】
図4は押出成形機20の押出ダイス22を出口側から見た正面図である。図4に示すように、押出ダイス22には、光ファイバ心線11、テンションメンバ12、支持線14及び破断材16とともにシース15となる熱可塑性樹脂25が押し出される押出口24が設けられている。
【0026】
次に、光ファイバケーブル1の製造方法について説明する。まず、ニップル21の挿通孔23a、23b、23c、23d及び押出ダイス22の押出口24に光ファイバ心線11、テンションメンバ12、支持線14及び破断材16を挿通させた状態で、シース15となる溶融した熱可塑性樹脂25をニップル21と押出ダイス22との間に供給する。そして、光ファイバ心線11、テンションメンバ12、支持線14及び破断材16をニップル21の挿通孔23a、23b、23c、23d側から押出ダイス22の押出口24側へ繰り出しながら熱可塑性樹脂を押し出すことで、光ファイバ心線11、テンションメンバ12、支持線14及び破断材16を一括して被覆するシース15が形成される。
【0027】
次に、本実施形態の光ファイバケーブル1の本体部2から光ファイバ心線11を露出させる方法について説明する。まず、ニッパを用いてケーブル端末部の破断材16に沿って、シース15に切り込みを入れる。次に、切り込みからシース15を左右に引き裂く。すると、破断面が破断材16に沿って伝搬しシース15が裂けるため、内部より光ファイバ心線11を露出させることができる。
【0028】
なお、図5に示すように、破断材16の断面形状を楔形としてもよい。
あるいは、図6に示すようにシースにノッチ18を形成し、破断材16をノッチ18の底部から光ファイバ心線11に向かって配置してもよい。このように、ノッチ18が形成されていると、破断材16が形成されている場所が特定し易く、光ファイバ心線の取り出しがより容易となる。
【0029】
あるいは、図7に示すように、2本の破断材16をシース15の表面の光ファイバ心線11に最も近い部分からテンションメンバ12寄りの位置にずらしてもよい。このとき、2本の破断材16の中間に光ファイバ心線11を配置する。
【0030】
あるいは、図8に示すように、本体部2のみからなる光ファイバケーブル1としてもよい。あるいは、図9に示すように、複数の光ファイバ心線11を有する光ファイバケーブル1としてもよい。
【0031】
また、以上の実施形態においては、シース15に埋設された破断材16の一面が露出していたが、破断材16全体がシース15に埋設され露出していなくてもよい。
【0032】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0033】
破断材16の破断強度、幅Wを変えて、図1と同様の光ファイバケーブル1を製造した。これらを用いて、本体部2を引き裂くのに必要な引き裂き力、光ファイバ心線11の取り出し性、製造性、光ファイバ心線11の損傷確率を評価した。
【0034】
光ファイバ心線11は直径0.25mmのものを用いた。テンションメンバ12には、直径0.5mmのアラミド繊維強化プラスチック(AFRP)を用いた。また、本体部2の長辺寸法を3.1mm、短辺寸法を2.0mmとした。
支持線14には、直径1.2mmの亜鉛メッキ鋼線を用いた。支持線部3の外径は直径2.0mmとした。
光ファイバ心線11、テンションメンバ12、支持線14及び破断材16の繰り出し速度は80m/minとした。
【0035】
シース15を形成する熱可塑性樹脂として、難燃ポリオレフィンを用いた。熱可塑性樹脂の温度は219℃、押し出し圧力は26.4〜26.5MPaとした。シース15の破断強度は12MPa、デュロメータ硬度Dは50とした。破断強度はJIS K7113準拠、デュロメータ硬度DはJIS K7215準拠の方法で測定した。
【0036】
破断材16には、EEA樹脂製のテープを用いた。破断材16の深さD(小文字dとは異なる)は0.18mm(d = 0.695mm≒0.7mmに相当)に調整した。破断材16の破断強度(MPa)、幅W(mm)は表1に示すとおりである。破断強度はJIS K7113準拠の方法で測定した。
【0037】
〔ケーブル引き裂き力〕
光ファイバケーブル1の端部において破断材16及びシース15にニッパで切り込みを入れ、破断材16に沿って30mm程度、手で引き裂く。次に、図10に示すように、二分されたシース15の端部を引張試験機のチャック30、30で把持し、チャック30、30を500mm/minで遠ざける。150mm引き裂いたときの引き裂き力の最大値を測定した。
【0038】
〔光ファイバ心線取り出し性〕
光ファイバケーブルの引き裂き力の最大値が5N未満の場合を◎(極めて容易)、5N以上13N未満の場合を○(容易)、13N以上20N未満の場合を△(重い)、うまく応力が集中せず20N以上だった場合を×(困難)とした。
〔製造性〕
問題なく製造できた場合を○、製造中に破断した場合を×とした。
【0039】
〔光ファイバ心線損傷確率〕
13cm長に切断した光ファイバケーブル1を2本を1組にして、総数40本20組を用意した。1回の実験では1組2本の光ファイバケーブルをクマゼミと共に幅200mm、奥行き200mm、高さ300mmの容器内に放置し、24時間経過後に取り出した。光ファイバ心線11の損傷確率(=光ファイバ心線11の損傷数÷光ファイバケーブルに残された産卵傷の数)を調べた。
結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
〔破断強度の評価〕
破断材16の破断強度が10.2MPa以下の場合(製造例1〜7、11、12)、本体部2を引き裂く応力が破断材16に集中するため、容易に本体部2を引き裂き光ファイバ心線11を取り出すことができる。一方、破断材16の破断強度が12.6MPa以上である場合(製造例8〜10)には、シース15の破断強度よりも破断材16の破断強度が大きくなり、本体部2を引き裂く応力が破断材16に集中しない。このため、ケーブル引き裂き力が20Nを超え、人の手による引き裂きが困難となり、光ファイバ心線11の取り出しが困難であった。
また、破断材16の破断強度が1.5MPaの場合(製造例1)には、押出し製造途中で破断材16が破断し、安定して製造することができなかった。
【0042】
〔幅の評価〕
破断材16の幅がクマゼミの産卵管の太さよりも狭い0.30mm以下の場合(製造例3〜10)は、クマゼミによる光ファイバ心線11の損傷がなかった。一方、破断材16の幅が0.31mm以上の場合(製造例1、2、11、12)は、光ファイバ心線11の損傷が生じた。
また、破断材16の幅が0.04以下の場合(製造例8、10)には、押出し製造途中で破断材16が破断し、安定して製造することができなかった。
【実施例2】
【0043】
破断材16から光ファイバ心線11までのシース15の厚さdを変えた以外は、実施例1と同様の構造の光ファイバケーブル1を製造した。なお、シース15を形成する熱可塑性樹脂として、難燃ポリオレフィンを用いた。熱可塑性樹脂の温度は229℃、押し出し圧力は27.5〜27.7MPaとした。シース15の破断強度は25MPa、デュロメータ硬度Dは59とした。
これらを用いて、本体部2を引き裂くのに必要な引き裂き力、光ファイバ心線11の取り出し性、製造性を評価した。
破断材16には、EEA樹脂製のテープを用いた。破断材16の幅Wは0.18mm、破断強度は10.2MPaとした。破断材16から光ファイバ心線11までの距離d(mm)は表2に示すとおりである。
結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
破断材16から光ファイバ心線11までのシース15の厚さdを0.7mm以下にした場合(製造例14〜18)には、本体部2の引裂き性が容易になる。一方、dを0.15とした場合(製造例18)には、押出し前に破断材16と光ファイバ心線11が接触し損傷する可能性が高くなり、製造性が悪くなる。
【実施例3】
【0046】
シース15の破断強度を変えて、実施例1と同様の構造の光ファイバケーブル1を製造した。これらを用いて、本体部2を引き裂くのに必要な引き裂き力、光ファイバ心線11の取り出し性、シース15の損傷度合を評価した。
なお、シース15を形成する熱可塑性樹脂として、難燃ポリオレフィンを用いた。シース15の破断強度及びデュロメータ硬度Dは熱可塑性樹脂の温度や押し出し圧力により調整した。
破断材16には、EEA樹脂製のテープを用いた。破断材16の幅Wは0.18mm、破断強度は10.2MPaとした(実施例2と同様)。破断材16の深さDは0.18mmとした(実施例1と同様)。
【0047】
〔シース耐磨耗試験〕
JIS C3005に準拠した耐磨耗試験を行った。図11に示すように、本体部2の一端に1kgの荷重41を取り付けるとともに、端部から所定の距離(>30cm)を固定部材42により固定した。固定位置の下方30cmの位置に、粒度36、主材料が炭化珪素からなるグラインダー43の回転軸を配置した。グラインダー43の表面に本体部2を当接させた状態で、グラインダー43を60回/分の速度で2000回転させた。2000回転後に光ファイバ心線11の断線があったものを×、断線がなかったものを○とした。
結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
〔シース耐摩耗性〕
シース15の破断強度が12MPaよりも小さいと、シース耐磨耗試験において光ファイバ心線11の断線が生じた(製造例19)。一方、破断強度を12MPa以上とした場合には、シース耐磨耗試験において光ファイバ心線11の断線が生じなかった(製造例20〜22)。
【0050】
〔引き裂きの容易性〕
シース15の破断強度が25MPa以下であると、引き裂き力が20N未満であるため、引き裂きが容易である(製造例19〜21)。一方、シース15の破断強度が25MPaよりも大きいと、引き裂き力が20N以上となり、引き裂きが困難である。
【符号の説明】
【0051】
1 光ファイバケーブル
2 本体部
3 支持線部
4 接続部
11 光ファイバ心線
12 テンションメンバ
14 支持線
15 シース
16 破断材
18 ノッチ
30 チャック
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバ心線と一対のテンションメンバと、さらに支持線とを所定位置に位置決めしながら、一括被覆を施してシースを形成した光ファイバケーブルが種々製造され、使用されている。このような光ファイバケーブルにおいては、シースを引き裂いて光ファイバ心線を取り出しやすいように、シースにV字状のノッチを設けることが行われている。
【0003】
これらの光ファイバケーブルが架空布設された場合、経時的に原因不明の特性劣化が発生することがあった。近年になって漸くこの原因が夏季に発生するセミ、特にクマゼミの光ファイバケーブルへの産卵行動に起因することがわかってきた。具体的には、クマゼミが架空に布設された光ファイバケーブルを木の幹や枝と誤って、シースに産卵管を突き刺し、内部に産卵する行動が原因である、というものである。特にノッチ部分は、シース表面から光ファイバ心線までの距離が近いため、このノッチ部分に産卵管が差し込まれると、産卵管で光ファイバが損傷してしまうことがある。
【0004】
このため、ノッチを剥離可能な保護材で埋めることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。あるいは、セミの産卵管よりも幅が狭いノッチを光ファイバケーブルに形成することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−90596号公報
【特許文献2】特開2006−330606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、セミの産卵管よりも幅が狭いノッチを設けた場合においても、ノッチに沿って産卵管が挿入されるおそれがある。一方、溝やノッチを設けない場合には、シースを引き裂くのが困難になる。また、保護材をシースに埋めた場合には、特別な工具がなければシースを引き裂くことができない。
【0007】
本発明の課題は、セミの産卵管による光ファイバ心線の損傷を防ぎながら、容易に光ファイバ心線を取り出すことができる光ファイバケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明は、光ファイバ心線を樹脂製のシースで被覆してなる光ファイバケーブルであって、前記シースには前記光ファイバ心線に沿って前記シースよりも破断強度が小さい樹脂材料からなる破断材が埋設されていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記破断材は断面三角形状である。
好ましくは、前記シースには前記光ファイバ心線に沿ってノッチが形成され、前記破断材は前記ノッチと前記光ファイバ心線との間に配置されている。
好ましくは、前記シースは破断強度が12MPa〜25MPaである高分子材料からなり、前記破断材は破断強度が2.3MPa〜10.2MPaである高分子材料からなる。
好ましくは、前記破断材の一面が前記シースの表面に露出しており、前記破断材の露出面の色は前記シースと異なる色である。
好ましくは、前記破断材の幅は0.05mm〜0.30mmである。
好ましくは、前記破断材から光ファイバ心線までの距離が0.2mm〜0.7mmである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セミの産卵管による光ファイバ心線の損傷を防ぎながら、容易に光ファイバ心線を取り出すことができる光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る光ファイバケーブル1の長さ方向と垂直な断面図である。
【図2】光ファイバケーブル1の押出成形に用いる押出成形機20の概略的な構成を示す断面図である。
【図3】押出成形機20のニップル21を出口側から見た正面図である。
【図4】押出成形機20の押出ダイス22を出口側から見た正面図である。
【図5】他の形態の光ファイバケーブル1を示す長さ方向と垂直な断面図である。
【図6】他の形態の光ファイバケーブル1を示す長さ方向と垂直な断面図である。
【図7】他の形態の光ファイバケーブル1を示す長さ方向と垂直な断面図である。
【図8】他の形態の光ファイバケーブル1を示す長さ方向と垂直な断面図である。
【図9】他の形態の光ファイバケーブル1を示す長さ方向と垂直な断面図である。
【図10】テンションメンバ12及び二分されたシース15の端部を引張試験機のチャック30、30で把持した状態を示す図である。
【図11】耐磨耗試験の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る光ファイバケーブル1の長さ方向と垂直な断面図である。図1に示すように、光ファイバケーブル1は、光ファイバ心線11と、2本のテンションメンバ12と、支持線14と、これらを一括被覆するシース15と、シース15に埋設された破断材16とから概略構成される。光ファイバ心線11及びテンションメンバ12を被覆する部分(本体部2)はインドアケーブルと同様の形状となるように形成されており、支持線14を被覆する部分(支持線部3)との間にくびれた接続部4が形成されている。光ファイバ心線11、テンションメンバ12、及び支持線14は長さ方向を同方向(図1の紙面に垂直方向)としている。
支持線14は光ファイバケーブル1の全体の重量を支持するものであり、例えば亜鉛メッキ鋼線等を用いることができる。
【0013】
本体部2は、断面形状が角のとれた略長方形状であり、中央に光ファイバ心線11が配置されている。また、光ファイバ心線11に対して本体部2の長尺方向の両側に離間してそれぞれテンションメンバ12が配置されている。
【0014】
テンションメンバ12は、本体部2に作用する張力を負担する。テンションメンバ12には、例えば鋼線や、繊維強化プラスチック(FRP)等を用いることができる。
シース15は、光ファイバ心線11、テンションメンバ12、及び支持線14を被覆するものであり、例えばノンハロゲンの難燃ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0015】
シース15を形成する高分子材料は、破断強度が12MPa以上であることが好ましい。破断強度を12MPa以上とすることで、光ファイバケーブルを敷設する際にシースが損傷してしまう等の問題が生じにくくなる。一方、シース15の引き裂きを容易とするために、破断強度が25MPa以下であることが好ましい。
シース15の破断強度は、熱可塑性樹脂の種類、押出成形時の熱可塑性樹脂の温度や押し出し圧力により適宜調整することができる。
高分子材料として熱可塑性樹脂を用いた場合、破断強度は、たとえば、ベースポリエチレンに配合するポリプロピレンの配合比や難燃材として添加する水酸化マグネシウムの添加量を変化させることによって調整することができる。
【0016】
破断材16は、シース15の表面の光ファイバ心線11に最も近い部分から光ファイバ心線11に向かって埋設されている。破断材16には、シース15に作用する応力が集中する。
【0017】
破断材16は、シース15と比較して強度が弱い低強度破断樹脂材料をテープ状に形成したものである。破断材16の幅w(テープの厚さ)は0.05〜0.30mmであることが好ましい。0.05mmよりも小さいと押出成形が困難だからである。一方、0.30mmよりも大きいとクマゼミの産卵管の径よりも大きくなるため、破断材16にクマゼミの産卵管が挿入されて光ファイバ心線を損傷する確率が高くなる。
【0018】
破断材16は、破断強度が2.3MPa〜10.2MPaであることが好ましい。破断強度が2.3MPaよりも小さいと押出成形が困難だからである。一方、10.2MPaよりも大きいとシース15を引き裂く応力が破断材16に集中せず、引き裂きが困難となるためである。
【0019】
このような破断材16に用いる低強度破断樹脂材料には、例えば、EEA樹脂(Ethylene-Ethylacrylate Copolymer)、EVA樹脂(Ethylene-Vinyl Acetate;エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、熱可塑性エラストマー、ポリウレタン、シリコン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリオレフィン等を用いることができる。
【0020】
この破断材16はシース15と比較して強度が適度に弱いため、シース15を引き裂くと破断材16に沿って破断面が伝搬する。
【0021】
シース15を容易に引き裂くことができるように、破断材16から光ファイバ心線11までのシース15の厚さdは0.7mm以下であることが好ましい。一方、衝撃試験などで機械的な劣化を加えた場合でも光ファイバ心線11が露出しないように、dは0.2mm以上であることが好ましい。
【0022】
また、ニッパ等で切り込みを入れる際に破断材16の部分を容易に識別できるように、破断材16の少なくとも一面がシース15から露出していることが好ましい。破断材16のシース15から露出した部分は、シース15と異なる色であることが好ましい。
【0023】
次に、光ファイバケーブル1の製造に用いる押出成形機20について説明する。図2は、光ファイバケーブル1の押出成形に用いる押出成形機20の概略的な構成を示す断面図である。押出成形機20は、ニップル21と、押出ダイス22とを備える。
【0024】
図3は押出成形機20のニップル21を出口側から見た正面図である。図3に示すように、ニップル21には、光ファイバ心線11を挿通させる挿通孔23a、テンションメンバ12を挿通させる挿通孔23b、支持線14を挿通させる挿通孔23c、及び破断材16を挿通させる挿通孔23dが設けられている。
【0025】
図4は押出成形機20の押出ダイス22を出口側から見た正面図である。図4に示すように、押出ダイス22には、光ファイバ心線11、テンションメンバ12、支持線14及び破断材16とともにシース15となる熱可塑性樹脂25が押し出される押出口24が設けられている。
【0026】
次に、光ファイバケーブル1の製造方法について説明する。まず、ニップル21の挿通孔23a、23b、23c、23d及び押出ダイス22の押出口24に光ファイバ心線11、テンションメンバ12、支持線14及び破断材16を挿通させた状態で、シース15となる溶融した熱可塑性樹脂25をニップル21と押出ダイス22との間に供給する。そして、光ファイバ心線11、テンションメンバ12、支持線14及び破断材16をニップル21の挿通孔23a、23b、23c、23d側から押出ダイス22の押出口24側へ繰り出しながら熱可塑性樹脂を押し出すことで、光ファイバ心線11、テンションメンバ12、支持線14及び破断材16を一括して被覆するシース15が形成される。
【0027】
次に、本実施形態の光ファイバケーブル1の本体部2から光ファイバ心線11を露出させる方法について説明する。まず、ニッパを用いてケーブル端末部の破断材16に沿って、シース15に切り込みを入れる。次に、切り込みからシース15を左右に引き裂く。すると、破断面が破断材16に沿って伝搬しシース15が裂けるため、内部より光ファイバ心線11を露出させることができる。
【0028】
なお、図5に示すように、破断材16の断面形状を楔形としてもよい。
あるいは、図6に示すようにシースにノッチ18を形成し、破断材16をノッチ18の底部から光ファイバ心線11に向かって配置してもよい。このように、ノッチ18が形成されていると、破断材16が形成されている場所が特定し易く、光ファイバ心線の取り出しがより容易となる。
【0029】
あるいは、図7に示すように、2本の破断材16をシース15の表面の光ファイバ心線11に最も近い部分からテンションメンバ12寄りの位置にずらしてもよい。このとき、2本の破断材16の中間に光ファイバ心線11を配置する。
【0030】
あるいは、図8に示すように、本体部2のみからなる光ファイバケーブル1としてもよい。あるいは、図9に示すように、複数の光ファイバ心線11を有する光ファイバケーブル1としてもよい。
【0031】
また、以上の実施形態においては、シース15に埋設された破断材16の一面が露出していたが、破断材16全体がシース15に埋設され露出していなくてもよい。
【0032】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0033】
破断材16の破断強度、幅Wを変えて、図1と同様の光ファイバケーブル1を製造した。これらを用いて、本体部2を引き裂くのに必要な引き裂き力、光ファイバ心線11の取り出し性、製造性、光ファイバ心線11の損傷確率を評価した。
【0034】
光ファイバ心線11は直径0.25mmのものを用いた。テンションメンバ12には、直径0.5mmのアラミド繊維強化プラスチック(AFRP)を用いた。また、本体部2の長辺寸法を3.1mm、短辺寸法を2.0mmとした。
支持線14には、直径1.2mmの亜鉛メッキ鋼線を用いた。支持線部3の外径は直径2.0mmとした。
光ファイバ心線11、テンションメンバ12、支持線14及び破断材16の繰り出し速度は80m/minとした。
【0035】
シース15を形成する熱可塑性樹脂として、難燃ポリオレフィンを用いた。熱可塑性樹脂の温度は219℃、押し出し圧力は26.4〜26.5MPaとした。シース15の破断強度は12MPa、デュロメータ硬度Dは50とした。破断強度はJIS K7113準拠、デュロメータ硬度DはJIS K7215準拠の方法で測定した。
【0036】
破断材16には、EEA樹脂製のテープを用いた。破断材16の深さD(小文字dとは異なる)は0.18mm(d = 0.695mm≒0.7mmに相当)に調整した。破断材16の破断強度(MPa)、幅W(mm)は表1に示すとおりである。破断強度はJIS K7113準拠の方法で測定した。
【0037】
〔ケーブル引き裂き力〕
光ファイバケーブル1の端部において破断材16及びシース15にニッパで切り込みを入れ、破断材16に沿って30mm程度、手で引き裂く。次に、図10に示すように、二分されたシース15の端部を引張試験機のチャック30、30で把持し、チャック30、30を500mm/minで遠ざける。150mm引き裂いたときの引き裂き力の最大値を測定した。
【0038】
〔光ファイバ心線取り出し性〕
光ファイバケーブルの引き裂き力の最大値が5N未満の場合を◎(極めて容易)、5N以上13N未満の場合を○(容易)、13N以上20N未満の場合を△(重い)、うまく応力が集中せず20N以上だった場合を×(困難)とした。
〔製造性〕
問題なく製造できた場合を○、製造中に破断した場合を×とした。
【0039】
〔光ファイバ心線損傷確率〕
13cm長に切断した光ファイバケーブル1を2本を1組にして、総数40本20組を用意した。1回の実験では1組2本の光ファイバケーブルをクマゼミと共に幅200mm、奥行き200mm、高さ300mmの容器内に放置し、24時間経過後に取り出した。光ファイバ心線11の損傷確率(=光ファイバ心線11の損傷数÷光ファイバケーブルに残された産卵傷の数)を調べた。
結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
〔破断強度の評価〕
破断材16の破断強度が10.2MPa以下の場合(製造例1〜7、11、12)、本体部2を引き裂く応力が破断材16に集中するため、容易に本体部2を引き裂き光ファイバ心線11を取り出すことができる。一方、破断材16の破断強度が12.6MPa以上である場合(製造例8〜10)には、シース15の破断強度よりも破断材16の破断強度が大きくなり、本体部2を引き裂く応力が破断材16に集中しない。このため、ケーブル引き裂き力が20Nを超え、人の手による引き裂きが困難となり、光ファイバ心線11の取り出しが困難であった。
また、破断材16の破断強度が1.5MPaの場合(製造例1)には、押出し製造途中で破断材16が破断し、安定して製造することができなかった。
【0042】
〔幅の評価〕
破断材16の幅がクマゼミの産卵管の太さよりも狭い0.30mm以下の場合(製造例3〜10)は、クマゼミによる光ファイバ心線11の損傷がなかった。一方、破断材16の幅が0.31mm以上の場合(製造例1、2、11、12)は、光ファイバ心線11の損傷が生じた。
また、破断材16の幅が0.04以下の場合(製造例8、10)には、押出し製造途中で破断材16が破断し、安定して製造することができなかった。
【実施例2】
【0043】
破断材16から光ファイバ心線11までのシース15の厚さdを変えた以外は、実施例1と同様の構造の光ファイバケーブル1を製造した。なお、シース15を形成する熱可塑性樹脂として、難燃ポリオレフィンを用いた。熱可塑性樹脂の温度は229℃、押し出し圧力は27.5〜27.7MPaとした。シース15の破断強度は25MPa、デュロメータ硬度Dは59とした。
これらを用いて、本体部2を引き裂くのに必要な引き裂き力、光ファイバ心線11の取り出し性、製造性を評価した。
破断材16には、EEA樹脂製のテープを用いた。破断材16の幅Wは0.18mm、破断強度は10.2MPaとした。破断材16から光ファイバ心線11までの距離d(mm)は表2に示すとおりである。
結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
破断材16から光ファイバ心線11までのシース15の厚さdを0.7mm以下にした場合(製造例14〜18)には、本体部2の引裂き性が容易になる。一方、dを0.15とした場合(製造例18)には、押出し前に破断材16と光ファイバ心線11が接触し損傷する可能性が高くなり、製造性が悪くなる。
【実施例3】
【0046】
シース15の破断強度を変えて、実施例1と同様の構造の光ファイバケーブル1を製造した。これらを用いて、本体部2を引き裂くのに必要な引き裂き力、光ファイバ心線11の取り出し性、シース15の損傷度合を評価した。
なお、シース15を形成する熱可塑性樹脂として、難燃ポリオレフィンを用いた。シース15の破断強度及びデュロメータ硬度Dは熱可塑性樹脂の温度や押し出し圧力により調整した。
破断材16には、EEA樹脂製のテープを用いた。破断材16の幅Wは0.18mm、破断強度は10.2MPaとした(実施例2と同様)。破断材16の深さDは0.18mmとした(実施例1と同様)。
【0047】
〔シース耐磨耗試験〕
JIS C3005に準拠した耐磨耗試験を行った。図11に示すように、本体部2の一端に1kgの荷重41を取り付けるとともに、端部から所定の距離(>30cm)を固定部材42により固定した。固定位置の下方30cmの位置に、粒度36、主材料が炭化珪素からなるグラインダー43の回転軸を配置した。グラインダー43の表面に本体部2を当接させた状態で、グラインダー43を60回/分の速度で2000回転させた。2000回転後に光ファイバ心線11の断線があったものを×、断線がなかったものを○とした。
結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
〔シース耐摩耗性〕
シース15の破断強度が12MPaよりも小さいと、シース耐磨耗試験において光ファイバ心線11の断線が生じた(製造例19)。一方、破断強度を12MPa以上とした場合には、シース耐磨耗試験において光ファイバ心線11の断線が生じなかった(製造例20〜22)。
【0050】
〔引き裂きの容易性〕
シース15の破断強度が25MPa以下であると、引き裂き力が20N未満であるため、引き裂きが容易である(製造例19〜21)。一方、シース15の破断強度が25MPaよりも大きいと、引き裂き力が20N以上となり、引き裂きが困難である。
【符号の説明】
【0051】
1 光ファイバケーブル
2 本体部
3 支持線部
4 接続部
11 光ファイバ心線
12 テンションメンバ
14 支持線
15 シース
16 破断材
18 ノッチ
30 チャック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線を樹脂製のシースで被覆してなる光ファイバケーブルであって、
前記シースには前記光ファイバ心線に沿って前記シースよりも破断強度が小さい樹脂材料からなる破断材が埋設されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記破断材は断面三角形状であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記シースには前記光ファイバ心線に沿ってノッチが形成され、前記破断材は前記ノッチと前記光ファイバ心線との間に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記シースは破断強度が12MPa〜25MPaである高分子材料からなり、
前記破断材は破断強度が2.3MPa〜10.2MPaである高分子材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記破断材の一面が前記シースの表面に露出しており、前記破断材の露出面の色は前記シースと異なる色であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記破断材の幅は0.05mm〜0.30mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
前記破断材から光ファイバ心線までの距離が0.2mm〜0.7mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項1】
光ファイバ心線を樹脂製のシースで被覆してなる光ファイバケーブルであって、
前記シースには前記光ファイバ心線に沿って前記シースよりも破断強度が小さい樹脂材料からなる破断材が埋設されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記破断材は断面三角形状であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記シースには前記光ファイバ心線に沿ってノッチが形成され、前記破断材は前記ノッチと前記光ファイバ心線との間に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記シースは破断強度が12MPa〜25MPaである高分子材料からなり、
前記破断材は破断強度が2.3MPa〜10.2MPaである高分子材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記破断材の一面が前記シースの表面に露出しており、前記破断材の露出面の色は前記シースと異なる色であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記破断材の幅は0.05mm〜0.30mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
前記破断材から光ファイバ心線までの距離が0.2mm〜0.7mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−227410(P2011−227410A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99389(P2010−99389)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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