説明

光ファイバケーブル

【課題】光ファイバケーブルを細径化し、合成樹脂可とう管(CD管)等への通線が可能になると共に、中間後分岐作業においては光ファイバの曲げによる伝送損失の増加を抑制しつつ、容易に作業することができる光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】矩形の断面形状を有し、長径方向に垂直な対向する側面にケーブル長手方向に延伸するように設けられた一対のスロット溝2a,2bを有するスロットコア2と、一対のスロット溝2a,2bにそれぞれ収納された複数本の光ファイバ心線1a,1bと、スロットコア2の中心に、ケーブル長手方向に延伸するように配置されたテンションメンバ3と、スロットコア1の外周を被覆し、スロットコア1の長径方向及び短径方向のそれぞれと長径方向及び短径方向が一致する矩形の外周形状を有する外被5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル等の縦系配線に使用されるスロット型光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の縦系敷設用の光ファイバケーブルとして、光ファイバテープ心線又は単体の光ファイバ心線を複数本実装したスロット型ケーブル、ドロップケーブル及びインドアケーブルが一般的に用いられている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開1995−013055号公報
【特許文献2】特開2007−065595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既設集合住宅においては既に配線ダクト等に各種ケーブルの配線が行われており、縦系敷設のスペースが無いため、ドロップケーブルの集合住宅等での宅内配線は、電話線が配線された合成樹脂可とう管(CD管)等への追敷設が行われている。しかしながら、既存のスロット型ケーブルでは外径的に大きすぎるため、合成樹脂可とう管(CD管)等への新たなケーブルの追敷設は困難である。この追敷設ができないと、別途敷設ルートを確保しなければならず、別配線ダクト等を設けるのには多大な費用や時間がかかる場合が多い。
【0005】
また、ある階で活線を含むケーブルを中間後分岐し、内部の光ファイバ心線を1本取り出してその階に引き込む作業についても求められており、この中間後分岐の際に他の光ファイバ心線に伝送損失を与えない(他の部屋で通信障害が起こらない)ように、任意の光ファイバ心線を取り出す必要があるが、これを可能とするためには、取り扱い性の観点からある程度の太さや剛性が必要な場合が多く、光ファイバケーブルの細径化は困難である。
【0006】
また、従来のドロップケーブル及びインドアケーブルにおいては、中間後分岐作業においてデタッチャ等を用いて外被を引き裂く際に、光ファイバ心線が曲げられて大きな損失変動を生じる場合があった。更に活線状態での作業であるため、作業は十分な注意が必要となり、短時間での配線接続作業は困難であった。
【0007】
上記問題点を鑑み、本発明の目的は、配管への布設が可能であるように、光ファイバケーブルを細径化し、中間後分岐作業においては光ファイバの曲げによる伝送損失の増加を抑制しつつ、容易に作業することができる光ファイバケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、矩形の断面形状を有し、矩形の断面形状において対向する短辺をなす側面にケーブル長手方向に延伸するように設けられた一対のスロット溝を有するスロットコアと、一対のスロット溝にそれぞれ収納された複数本の光ファイバ心線と、スロットコアの中心に、ケーブル長手方向に延伸するように配置されたテンションメンバと、スロットコアの外周を被覆し、スロットコアの矩形の断面形状の長辺方向及び短辺方向のそれぞれと長辺方向及び短辺方向のそれぞれが一致する矩形の外周形状を有する外被とを備えることを特徴とする光ファイバケーブルが提供される。
【0009】
本発明の一態様において、外被の矩形の外周形状において対向する長辺をなす側面に、ケーブル長手方向に延伸するように一対のノッチが設けられていても良い。
【0010】
本発明の一態様において、スロットコアと外被との間にスロットコアの全周を覆うように配置された押さえ巻きテープを更に備えていても良い。
【0011】
本発明の一態様において、一対のスロット溝のそれぞれと外被との間にそれぞれ配置された2枚の押さえ巻きテープを更に備えていても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光ファイバケーブルを細径化し、合成樹脂可とう管(CD管)等への通線が可能になると共に、中間後分岐作業においては光ファイバの曲げによる伝送損失の増加を抑制しつつ、容易に作業することができる光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの長径方向の曲げを説明するための断面図である。図2(b)は、本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの短径方向の曲げを説明するための断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの外被を引き裂く冶具を説明するための断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの外被の引き裂き方法を説明するための断面図である。
【図5】本発明のその他の実施の形態に係る光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0015】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
(光ファイバケーブルの構造)
本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルは、図1に示すように、矩形の断面形状を有し、矩形の断面形状において対向する短辺をなす側面のそれぞれにケーブル長手方向に延伸するように設けられた一対のスロット溝2a,2bを有するスロットコア2と、一対のスロット溝2a,2bにそれぞれ収納された複数本の光ファイバ1a,1bと、スロットコア2の中心にケーブル長手方向に延伸するように配置されたテンションメンバ(抗張力体)3と、スロットコア2の外周を被覆し、スロットコア2の矩形の断面形状の長辺方向(長径方向)及び短辺方向(短径方向)のそれぞれと長辺方向及び短辺方向のそれぞれが略一致する矩形の外周形状を有する外被(シース)5とを備える。
【0017】
光ファイバ1a,1bとしては、光ファイバ素線、光ファイバ心線又は光ファイバテープ心線等が採用可能である。光ファイバ1a,1bの種類及び本数は特に限定されない。
【0018】
テンションメンバ3としては、鋼線等の金属線又は繊維強化プラスチック(FRP)等が使用可能である。
【0019】
スロットコア2の長径は2.6mm程度であり、短径は1.6mm程度であり、アスペクト比(長径/短径)は1.6程度である。スロットコア2の材料としては、高密度ポリエチレン(HDPE)等の樹脂が使用可能である。
【0020】
外被5の長径は3.8mm程度であり、短径は2.5mm程度であり、アスペクト比(長径/短径)は1.4程度である。外被5の材料としては、高密度ポリエチレン(HDPE)等の樹脂が使用可能である。外被5の矩形の外周形状において対向する長辺をなす側面には、テンションメンバ3を挟んで一対のノッチ5a,5bが設けられている。
【0021】
スロットコア2と外被5との間には、スロットコア2の全周を覆うように縦添えされた押さえ巻きテープ4を更に備える。押さえ巻きテープ4の材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)若しくはナイロン等の熱可塑性樹脂、又はエポキシ等の熱硬化性樹脂が使用可能である。
【0022】
本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの製造方法の一例としては、まず、テンションメンバ3を押し出し機に導入し、押し出し成形によりテンションメンバ3が中心に配置されたスロットコア2を作製する。そして、光ファイバ1a,1bをスロット溝2a,2bに収納した状態で押さえ巻きテープ4を押し出し機に導入し、押し出し成形により外被5で一括被覆することで図1に示した光ファイバケーブルを製造可能である。
【0023】
本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルによれば、スロットコア2中心にテンションメンバ3が1条であるため、曲げの方向性が無く、細径化可能である。よって、一般的に使用されている内径φ16mm〜φ22mm等の合成樹脂可とう管(CD管)等の電線管への通線が可能である。
【0024】
また、合成樹脂可とう管(CD管)等への通線において、図2(a)及び図2(b)のそれぞれに示すように、長径方向及び短径方向への曲げ(曲げ方向を矢印で図示)がそれぞれ付与された場合、ケーブル曲げ中立線L1,L2から光ファイバ1a,1bまでの距離D1,D2が変わり、光ファイバ1a,1bに引張歪み及び圧縮歪みが生じる。光ファイバ1a,1bの引張歪み及び圧縮歪みの大きさは、ケーブル曲げ中立線L1,L2から光ファイバ1a,1bまでの距離D1,D2に依存する。特に、図2(a)に示すように長径方向に曲げた場合に、ケーブル曲げ中立線L1から光ファイバ1a,1bまでの距離D1が比較的大きいため、光ファイバ1a,1bに大きな引張歪み及び圧縮歪みを与える結果となる。
【0025】
ここで、スロットコア2及び外被5が矩形の断面形状を有することにより、光ファイバケーブルは図2(b)に示すような短径方向の曲げと比べて、図2(a)に示すような長径方向には曲がりにくい。よって、長径方向の曲げを抑制することができ、光ファイバ1a,1bの曲げによる引張歪み及び圧縮歪みの発生を抑制・緩和することができる。
【0026】
また、中間後分岐作業においては、デタッチャや図3に示すような冶具10を使用することができる。冶具10は、光ファイバケーブルを挟んで把持する把持部11a,11bと、ノッチ5a,5bを引き裂くための突起12a,12bを有する。
【0027】
また、中間後分岐作業において、図4(a)に示すように、この突起12a,12bをノッチ5a,5bに当て、ケーブル長手方向に外被5を引き裂く。このとき、ノッチ5a,5b直下には光ファイバ1a,1bは存在しないので、光ファイバ1a,1bの損傷を防止することができる。また、外被5とスロットコア2とは押さえ巻きテープ4を介しており熱融着していないため、図4(b)に示すように外被5のみが分離可能である。また、外被5をスロットコア2の長径方向に分離するため、スロットコア2が短径方向に曲げられることはない。また、スロットコア2及び外被5が矩形の断面形状を有することにより、長径方向にも曲がり難い。よって、光ファイバ1a,1bの曲げによる引っ張り歪みや圧縮歪みの発生を抑制・緩和することができる。外被5を除去した後、押さえ巻きテープ4は縦添えされているために容易に分離可能であり、図4(c)に示すように、スロット溝2a,2bから光ファイバ1a,1bを容易に取り出すことができる。このように、光ファイバ1a,1bを容易に短時間で取り出すことができる。更に、ノッチ5a,5bの位置が光ファイバ1a,1bを実装しているスロット溝2a,2bとずれている為、ノッチ5a,5bに切り込みを入れても光ファイバ1a,1bに外傷を与える事が無く、安心して作業を行う事が出来る。
【0028】
(実施例)
本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルを試作した。テンションメンバ3として直径0.95mmの鋼線を使用し、外被5には難燃高密度ポリエチレン(HDPE)を用いた。光ファイバケーブルの外径は2.6mm×3.8mmとした。
【0029】
中間後分岐に関しては、デタッチャを用いて実施したところ、外被5とスロットコア2の分離はファイバ心線に短径方向の曲げを与えることなく容易であった。外被5を分離した後、押さえ巻きテープ4を除去することにより、光ファイバ1a,1bを容易に取り出すことができた。
【0030】
この作業中における光ファイバの損失変動を測定波長1.55μm、サンプリングタイム1msで測定したところ、0.1dB以下である事を確認した。
【0031】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0032】
例えば、図1では押さえ巻きテープ4がスロットコア2の全周を覆う場合を説明したが、スロット溝2a,2bの開口部が少なくとも覆われていれば良い。例えば図5に示すように、2枚の押さえ巻きテープ4a,4bがスロット溝2a,2bの開口部をそれぞれ覆うように配置されていても良い。
【0033】
また、本発明の実施の形態において、ケーブル長手方向に垂直な断面において、スロットコア2の矩形の長辺方向及び短辺方向のそれぞれと、外被5の矩形の長辺方向及び短辺方向のそれぞれは、厳密には完全に一致していなくても良く、略一致していれば良い。
【0034】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0035】
1a,1b…光ファイバ
2…スロットコア
2a,2b…スロット溝
3…テンションメンバ
4,4a,4b…押さえ巻きテープ
5…外被
5a,5b…ノッチ
10…冶具
11a,11b…把持部
12a,12b…突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の断面形状を有し、前記矩形の断面形状において対向する短辺をなす側面にケーブル長手方向に延伸するように設けられた一対のスロット溝を有するスロットコアと、
前記一対のスロット溝にそれぞれ収納された複数本の光ファイバ心線と、
前記スロットコアの中心に、ケーブル長手方向に延伸するように配置されたテンションメンバと、
前記スロットコアの外周を被覆し、前記スロットコアの矩形の断面形状の長辺方向及び短辺方向のそれぞれと長辺方向及び短辺方向のそれぞれが一致する矩形の外周形状を有する外被
とを備えることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記外被の前記矩形の外周形状において対向する長辺をなす側面に、ケーブル長手方向に延伸するように一対のノッチが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記スロットコアと前記外被との間に前記スロットコアの全周を覆うように配置された押さえ巻きテープを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記一対のスロット溝のそれぞれと前記外被との間にそれぞれ配置された2枚の押さえ巻きテープを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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