説明

光ファイバコネクタ

【課題】光導波路を介して光ファイバを相互に接続するための光ファイバコネクタを、簡単な作業により廉価かつ精度良く製造できるようにすること。
【解決手段】1本の光ファイバ2を、光導波路3を介して、複数本の光ファイバ4に接続するために用いる光ファイバコネクタ1は、光導波路3が形成されている光導波路チップ5と、その入射側端面5aに接着接合されたガラス製のフェルール6と、その出射側端面5bに接着接合された光ファイバ保持具7とを備え、これらの各部品が紫外線硬化型の接着剤によって接合されている。フェルール6は円柱状の単一部品からなり、精度良く製造できる。よって、光ファイバコネクタ1を少ない部品点数により廉価かつ精度良く製造できる。各部品がガラス製であり線膨張係数が同一なので、接着部分に熱変形に起因する位置ずれ、応力集中が発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路を介して1本の光ファイバと複数本の光ファイバとを相互に接続するために用いる光ファイバコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
1本の入射側光ファイバを介して伝送される光信号を、光導波路を介して複数に分岐させ、複数本の出射側光ファイバに伝送するために用いる光ファイバコネクタとして、一般に図2に示す構造のものが採用されている。この図に示すように、光ファイバコネクタ10は、ガラス製の光導波路チップ11と、この入射側の端面11aに接着接合された入射側光ファイバ保持具12と、光導波路チップ11の出射側の端面11bに接着接合された出射側光ファイバ保持具13とから構成されている。
【0003】
光導波路チップ11は、CVD法などにより上下の基板の合わせ面に光導波路が作り込まれており、その入射側端面には1本の光導波路の端面が露出し、出射側端面には一定のピッチで配列された複数本の光導波分岐路の端面が露出している。入射側光ファイバ保持具12は、ガラス基板の表面に1本のV溝が形成され、ここに光ファイバ芯線14が装着され、この状態で押さえ板が積層接着された構造となっており、その先端面には光ファイバ芯線の端面が露出している。この光ファイバ芯線の端面が光導波路チップの入射側端面に露出している光導波路端面に一致するように、光ファイバ保持具12が光導波路チップ11の端面11aに接着接合されている。
【0004】
同様に、出射側光ファイバ保持具13は、ガラス基板の表面に一定のピッチで複数条のV溝が形成され、これらに光ファイバ芯線15が装着され、この状態で押さえ板が積層接着された構造となっており、その先端面には一定のピッチで各光ファイバ芯線の端面が露出している。そして、各光ファイバ芯線の端面が、対応する光導波路チップの出射側端面に露出している各光導波分岐路の端面に一致するように、光ファイバ保持具13が光導波路チップ11の端面11bに接着接合されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この構成の光ファイバコネクタは、部品点数が多く、製造コストが高いという問題点がある。また、光導波路チップの両端面に入射側光ファイバ保持具および出射側光ファイバ保持具を精度良く位置合わせして接着接合することが簡単ではないという問題点がある。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、1本の光ファイバを光導波路を介して複数本に分岐させて複数本の光ファイバに接続するために用いる光ファイバコネクタを、簡単な作業により廉価かつ精度良く製造できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明による、1本の光ファイバを、光導波路を介して、複数本の光ファイバに接続するために用いる光ファイバコネクタは、先端面の中心に1本の光ファイバ芯線の端面が露出しているガラス製の円柱状の光ファイバフェルールと、第1の端面に1本の光導波路の端面が露出し、他方の第2の端面に、前記1本の光導波路に繋がっている複数本の光導波分岐路の端面が露出している光導波路チップと、所定ピッチで保持されている複数本の光ファイバ芯線の端面が先端面に露出している光ファイバ保持具とを有している、また、前記光ファイバ保持具は、表面に複数条の光ファイバ保持溝が形成されている基板と、当該光ファイバ保持溝に各光ファイバ芯線を保持した状態で当該基板に積層された押さえ板とを備えている。そして、前記光ファイバフェルールは前記光導波路チップの前記第1の端面に接合され、前記1本の光ファイバ芯線の露出端面が前記光導波路の露出端面に同軸状態に接続されており、前記光ファイバ保持具は前記光導波路チップの前記第2の端面に接合され、前記複数本の光ファイバ芯線の露出端面が前記複数本の光導波分岐路の露出端面のそれぞれに同軸状態で接続されていることを特徴としている。
【0008】
本発明では、1本の光ファイバ芯線を保持している光ファイバ保持具として、光ファイバフェルールを用いている。フェルールは、二枚の基板を積層接着してそれらの間の光ファイバ芯線を保持する構造とは異なり、円柱状の単一部品から形成されており、しかも形状精度が高い。したがって、光導波路の両端にそれぞれ二枚の基板を貼り合わせた構造の光ファイバ保持具を接着接合する場合に比べて、光ファイバコネクタの部品点数を削減でき、また、フェルールと光導波路チップを精度良く接合することができる。
【0009】
ここで、前記光導波路および前記光ファイバフェルールは実質的に同一の線膨張率の素材から形成されていることが望ましい。このようにすれば、熱変形に起因する位置ずれや熱応力の発生を回避できる。例えば、光導波路チップは一般にガラス製であるので、フェルールもガラス製とすればよい。
【0010】
双方をガラス製とした場合には、紫外線を通し易いので、これらを接着接合するための接着剤として、紫外線硬化型の接着剤を用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明の光ファイバコネクタにおいては、V溝基板などからなる光ファイバ保持具の代わりに、円柱状の光ファイバフェルールを用いているので、部品点数の削減、位置合わせ精度の向上を図ることができる。
【0012】
また、ガラスフェルールを用いることにより、ガラス製の光導波路との接着接合部に熱変形に起因する位置ずれ、熱応力の集中が起きることもない。さらに、これらを接合するための接着剤として紫外線硬化接着剤を使用することが可能になり、接着接合作業が簡単になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した光ファイバコネクタの実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明を適用した光ファイバコネクタを示す斜視図、その中心線を含む横断面図および縦断面図である。光ファイバコネクタ1は、1本の入射側光ファイバ2を介して伝送される光信号を、光導波路3を介して複数に分岐させ、複数本の出射側光ファイバ4に伝送するために用いるものであり、ガラス製の光導波路チップ5と、この入射側の端面5aに接着接合された入射側の光ファイバフェルール6と、光導波路チップ5の出射側の端面5bに接着接合された出射側光ファイバ保持具7とを有している。
【0015】
光導波路チップ5は、CVD法などにより上下の矩形のガラス基板51、52の合わせ面に光導波路3が作り込まれている。その入射側端面5aには1本の入射側光導波路31の端面31aが露出し、出射側端面5bには一定のピッチで配列された複数本の出射側光導波分岐路32の端面32aが露出している。
【0016】
入射側の光ファイバフェルール6は円柱形状をしたガラス製品であり、その中心を貫通する状態に1本の入射側光ファイバ2の芯線2aが延びており、当該芯線2aの先端2bが、フェルール6の端面6aの中心に露出している。この構造のフェルール6の端面6aは、光ファイバ芯線2bが入射側光導波路31の端面31aに一致するように、光導波路チップ5の入射側端面5aに接着接合されている。
【0017】
出射側光ファイバ保持具7は、ガラス基板71の表面に一定のピッチで複数条のV溝71aが形成され、これらに出射側光ファイバ4の芯線4aが装着され、この状態でガラス製の押さえ板72が積層接着された構造となっている。その先端面7aには一定のピッチで各光ファイバ芯線4aの端面4bが露出している。そして、各光ファイバ芯線4aの端面4bが、対応する光導波路チップ5の出射側端面5bに露出している各光導波分岐路32の端面32aに一致するように、光ファイバ保持具7が光導波路チップ5の端面5bに接着接合されている。
【0018】
本例では、光ファイバフェルール6、光導波路チップ5および光ファイバ保持具7がガラス製品であり、紫外線を通し易い。そこで、これらの部品の接合には紫外線硬化型接着剤を用いることにより、接着作業の効率化を図っている。
【0019】
この構成の光ファイバコネクタ1ではガラス製のフェルール6を用いている。フェルール6は円柱状の単一部品からなり、V溝基板からなる光ファイバ保持具に比べて、部品点数が少なく、しかも、形状精度が高い。したがって、当該フェルール6と光導波路31との位置合わせを精度良く行うことができる。また、各部品はガラス製であり、それらの線膨張係数が実質的に同一である。よって、これらの部品の接着接合部が熱変形により位置ずれ、応力集中などを起こすおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した光ファイバコネクタの斜視図、その中心線を含む横断面図および縦断面図である。
【図2】従来の光ファイバコネクタを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 光ファイバコネクタ
2 入射側光ファイバ
2a 光ファイバ芯線
2b 露出端面
3 光導波路
31 入射側光導波路
31a 端面
32 出射側光導波分岐路
32a 端面
4 出射側光ファイバ
4a 光ファイバ芯線
5b 露出端面
6 フェルール
6a、6b 端面
7 光ファイバ保持具
71 ガラス基板
72 押さえ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の光ファイバを、光導波路を介して、複数本の光ファイバに接続するために用いる光ファイバコネクタであって、
先端面の中心に1本の光ファイバ芯線の端面が露出しているガラス製の円柱状の光ファイバフェルールと、
第1の端面に1本の光導波路の端面が露出し、他方の第2の端面に、前記1本の光導波路に繋がっている複数本の光導波分岐路の端面が露出している光導波路チップと、
所定ピッチで保持されている複数本の光ファイバ芯線の端面が先端面に露出している光ファイバ保持具とを有し、
前記光ファイバ保持具は、表面に複数条の光ファイバ保持溝が形成されている基板と、当該光ファイバ保持溝に各光ファイバ芯線を保持した状態で当該基板に積層された押さえ板とを備えており、
前記光ファイバフェルールは前記光導波路チップの前記第1の端面に接合され、前記1本の光ファイバ芯線の露出端面が前記光導波路の露出端面に同軸状態に接続されており、
前記光ファイバ保持具は前記光導波路チップの前記第2の端面に接合され、前記複数本の光ファイバ芯線の露出端面が前記複数本の光導波分岐路の露出端面のそれぞれに同軸状態で接続されていることを特徴とする光ファイバコネクタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記光導波路および前記光ファイバフェルールは実質的に同一の線膨張率の素材から形成されていることを特徴とする光ファイバコネクタ。
【請求項3】
請求項1において、
前記光導波路および前記光ファイバフェルールは共にガラス製であることを特徴とする光ファイバコネクタ。
【請求項4】
請求項3において、
前記光ファイバフェルール、前記光導波路および前記光ファイバ保持具は紫外線硬化型の接着剤により相互に接合されていることを特徴とする光ファイバコネクタ。

【図1】
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【図2】
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