説明

光ファイバジャイロスコープ色雑音を減らすシステムおよび方法

位相ジャンプ振幅およびタイミングコントローラが、色雑音を抑制するために光ファイバジャイロスコープで使用される。位相ジャンプ振幅およびタイミングコントローラは、光ファイバジャイロスコープのループ閉エレクトロニクスのフィードバック信号に位相/電圧ジャンプを挿入する。この位相/電圧ジャンプが、駆動信号の反復パターンを壊す。IOC時間依存特性は、反復信号がIOCに印加されないので、ランダム化されたフィードバック信号によって完全に除去される。ランダム化された振幅は、光学誤差の平均が0になるように、±π位相全体の中にあることが好ましい。関心を持たれているスペクトル領域より高い固定周波数が、色雑音をより高い周波数にシフトすることができる。ランダム化された周波数が、色雑音を全スペクトルに拡散させ、RDSを完全に除去することができる。言い換えると、駆動回路およびIOCの非線形性によって引き起こされる色雑音が、広範囲のスペクトルに拡散され、明瞭な周波数ピークがスペクトル領域に現れなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、参照によってその全体が本願に組み込まれている2002年4月30日出願の米国特許出願第10/135245号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、全般的には、光ファイバジャイロスコープの制御に関し、具体的には、光ファイバジャイロスコープの色雑音を抑制する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
慣性座標系に関する方位および/またはターンの率を決定する慣性回転センサは、航空機などの航行可能なビークルによって使用される姿勢および機首方向基準形の重要な要素である。長期間にわたって、そのような方位およびターンの率の決定は、通常、回転質量型のジャイロスコープ(spinning mass gyroscope)を使用して行われてきた。この分野での進歩が、多くの洗練と、特定の応用例に適したさまざまなタイプのジャイロスコープの開発をもたらした。近年、光ファイバジャイロスコープが、通常の回転質量型のジャイロスコープを上回る大きい改善として登場した。
【0004】
光ファイバジャイロスコープは、通常、光ファイバループ内を進む反対に伝搬する光波を案内する光ファイバ材料のループを使用して構成される。ループを進む際に、逆伝搬波が組み合わされ、その結果、これらの波は、建設的にまたは破壊的に干渉し、光出力信号を形成する。この光出力信号の強度は、干渉の関数として変化し、この干渉は、逆伝搬波の相対位相に依存する。この情報から、慣性座標系に関する方位および/またはターンの率に関する決定を導出することができる。
【0005】
閉ループ回転センサは、逆伝搬波の位相を調整する装置にサニャク位相シフトを示す信号を供給して、この波の間の回転によって誘導された位相差をゼロにする。サニャク位相シフトをゼロするためにいずれかの位相において波を調整しなければならない量が、感知ループの回転速度を示す。
【0006】
慣性航法応用に適するためには、回転センサが、比較的広いダイナミックレンジを有しなければならない。通常の回転センサは、毎時0.001°もの低さから毎秒1000°もの高さまでの回転速度を検出することができる。通常の回転センサによって測定されるダイナミックレンジすなわち高い分解能と最も精密な分解能の比は、約9桁の大きさまたは10である。
【0007】
閉ループ光ファイバ回転センサは、スケールファクタ安定性および線形性の増加に起因して魅力的である。さらに、閉ループ動作は、集積光位相変調器などの高速コンポーネントの可用性に起因して実現可能である。そのような位相変調器は、必要なダイナミックレンジで回転速度を測定するために所望の量の位相変調を提供するのに有効である。しかし、フィードバック信号のある電圧依存誤差、位相サーボ、または電気交叉結合のどれもが、サーボループをある回転速度でより不安定にする可能性がある。
【0008】
特に、システムは、0または0付近の入力速度でより不安定になり、この場合に、光ファイバ回転センサ出力が、入力速度に関して非線形になる。通常、ループ閉エレクトロニクスフィードバック回路は、フィードバック依存電圧誤差がサニャク位相シフトによって誘導される速度を打ち消すポイントで安定し、センサ出力信号は、有限の入力速度について0になる。光ファイバジャイロスコープ出力速度が有限の速度範囲について0になる速度のこの範囲を、「不感帯」、「デッドゾーン」、および「不安定の領域」と称する。可能な出力誤差が発生し得る他の速度は、光ファイバ回転センサの出力の処理に使用される変調/復調技法に依存する。
【0009】
「不感帯」性能問題に加えて、本発明人は、速度によって誘導されたサニャク位相シフトをヌルにするために位相変調器に送られるフィードバック信号が、固定された入力速度に対応する反復パターンを有することを発見した。この反復パターンは、フィードバック信号自体を駆動回路の最大範囲内に維持するためのフィードバック信号のリセット周波数と同期している。駆動回路の非線形性とIOC非線形で時間依存の容量性および抵抗性の特性の不完全性とに起因して、フィードバック信号は、リセット周波数に直接に関係する周波数内容を有する速度出力を作る。この速度依存正弦波(RDS、しかし、本明細書では「色雑音」または「フライバック雑音」とも称する)は、その振幅が角度ランダム雑音またはバイアス不安定性より大きい場合に、性能を制限する要因になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述に鑑みて、色雑音現象に関連する性能制限をより受けにくい光ファイバジャイロスコープを提供することが望ましいことを理解されたい。また、光ファイバジャイロスコープを組み込んだ慣性誘導システムの性能安定性を改善する方法および装置を提供することが望ましいことを理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の好ましい例示的実施形態によれば、位相変調器への反復駆動信号に起因する色雑音を抑制する位相ジャンプ振幅およびタイミングコントローラが提供される。位相ジャンプ振幅およびタイミングコントローラは、光ファイバジャイロスコープのループ閉エレクトロニクスのフィードバック信号に位相/電圧ジャンプを挿入する。この位相/電圧ジャンプが、駆動信号の反復パターンを壊す。IOS時間依存特性は、反復信号がIOCに印加されないので、ランダム化されたフィードバック信号によって完全に除去される。ランダム化された振幅は、光誤差が平均して0になるように、±π位相全体の中にあることが好ましい。関心を持たれるスペクトル領域より高い固定周波数が、色雑音をより高い周波数にシフトすることができる。ランダム化された周波数が、色雑音をスペクトル全体に拡散させ、RDSを完全に除去することができる。言い換えると、駆動回路およびIOCの非線形性によって引き起こされる色雑音が、広範囲のスペクトルにまたがって拡散し、明瞭な周波数ピークがスペクトル領域に現れなくなる。
【0012】
本発明を、添付図面と共に下で説明するが、図面では、類似する符号が類似する要素を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
好ましい実施形態の次の詳細な説明は、性質において単に例示的であり、本発明または本発明の応用および使用を制限することを意図されたものではない。
【0014】
図1を参照すると、色雑音抑制ループ閉エレクトロニクスの好ましい例示的実施形態を有する光ファイバジャイロスコープ100に、光源102と、サーキュレータ/カプラ104と、集積光チップ(IOC)142と、ファイバコイル144と、光検出器106と、増幅器108と、アナログ−ディジタルコンバータ110と、色雑音抑制モジュール130と、DAC 170と、増幅器173と、データ出力ポイント174とが含まれる。
【0015】
光源102は、光ファイバジャイロスコープを製造するのに当業者が使用する通常のファイバ光源である。光源102の最も好ましい実施形態は、8nmの近似帯域幅を有する約1532nmに出力波長を整形できるエルビウムファイバおよびファイバブラッグ格子を含む980nm半導体ポンプレーザである。光源102の出力の正確な波長および帯域幅の選択は、特定の応用例と、光損失および雑音レベルに対する要求された制限とに依存する。さらに、光源102に、通常は、光源102に再導入される光の量を減らすためのアイソレータが含まれる。
【0016】
サーキュレータ104は、光源102が発する光を透過させ、IOC 142に送り、また、IOC 142から返された光を光検出器106に透過させる。サーキュレータ104を使用する代わりに、本発明の代替の好ましい実施形態は、2入力2出力(2×2)および50/50分割比を有する標準カプラを使用することができる。カプラは、通常、サーキュレータより物理的にコンパクトであるが、カプラは、システム内の光損失の量を増加する。さらに、色雑音抑制変調回路で使用されるカプラ/サーキュレータデバイスの選択は、所望の動作特性および設計制限に依存する。
【0017】
IOC 142は、ファイバコイル144内を進む光波を変調するのに使用される光電子結晶位相変調器である。IOC 142には、サーキュレータ/カプラ104から受け取られた光信号を変調するのに使用される一連の電極146が含まれる。本発明は、さまざまなタイプの位相変調器を用いて実践することができるが、本発明の最も好ましい実施形態では、IOC 142が、「方形波」変調器を使用し、一般的な材料LiNbO3を使用して製造される。さらに、最も好ましい実施形態では、IOC 142に、サーキュレータ/カプラ104からファイバコイル144に向かって進む光波を分割する「Y」スプリッタと、光がファイバコイル144を通って進み、光検出器106に向かって戻る時に光波を再結合するリコンバイナとが含まれる。IOC 142に比較的早い応答時間を実現させることが望ましい。
【0018】
IOC 142は、ソリッドステートデバイスであり、IOC 142の構成要素は、これらを望ましくない環境変化から保護する基板の中に収容される。IOC 142の内部で、サーキュレータ/カプラ104からの光波が、2つの別々の信号に分割される。一方の信号は、ファイバコイル144を通る時計回りの経路を進み、他方の信号は、ファイバコイル144を通る反時計回りの経路を進む。ファイバコイル144を通って進んだ後に、これらの信号が再組合せされ、これらの信号の位相差が、光ファイバジャイロスコープ100の回転速度を確かめるのに必要な情報を提供する。
【0019】
変調のほかに、位相ステップ信号を、回転によって引き起こされる位相差を打ち消すために適用することもできる。これは、閉ループ動作と呼ばれる。というのは、フォトダイオード出力の交流成分が、通常は0または0付近になるからである。その代わりに、IOC 142が位相ステップなしの変調を提供する場合に、これは、開ループ動作と呼ばれ、交流信号が、光検出器106のフォトダイオードで検出される。閉ループ動作は、一般に開ループ動作よりよい動作モードと考えられる。というのは、回転速度出力が、光源102の出力に依存しないからである。
【0020】
ファイバコイル144は、光ファイバジャイロスコープ100の回転を検出するのに使用される感知コイルである。ファイバコイル144は、通常、特定の応用例に応じて、1Kmから6Kmの範囲の長さを有する。より長いコイルは、光波がファイバコイル144を通って進むのにより長い時間を必要とし、一般に、より大きくより簡単に検出される位相シフトをもたらし、これは、よりよい精度を意味する。しかし、より長いコイル長は、ファイバコイル内の追加の光劣化およびより大きい温度変動を受けやすくなる可能性もある。特に、温度変動は、ファイバコイル144に沿った複屈折変動を生成し、これによって光学誤差を導入する可能性がある。したがって、提案される応用例の動作環境の制限内で必要な精度をもたらすのに十分に長いが、光学誤差の導入を避けるために必要以上に長くはない、ファイバコイル144の長さを選択することが望ましい。
【0021】
光波がファイバコイル144を進むのに必要な時間の大きさを、「ループ走行時間」と呼び、「τ」によって表す。本発明の最も好ましい例示的実施形態について、ファイバコイル144は、ほぼ4Kmの長さを有し、ほぼ20μ秒のループ走行時間をもたらす。
【0022】
光検出器106は、変調された光信号を検出するのに使用される。さらに、光検出器106は、変調された光信号を増幅器108に送る。
【0023】
増幅器108は、信号バッファであり、光検出器106から受け取られた出力信号の全体的な利得を増減するのに使用される。さらに、増幅器108は、この信号をアナログ−ディジタルコンバータ(ADC)110に送る。
【0024】
ADC 110は、色雑音抑制モジュール130の入力側のアナログ信号部分とディジタル信号部分との間のインターフェースとして働き、増幅器108からのアナログ信号出力を、色雑音抑制モジュール130内での処理用のディジタル信号に変換する。ADC 110が、特定の応用環境によって指示される精度および正確さのレベルを維持するために、よい信号対雑音比および十分なデータビット数を提供することが望ましい。
【0025】
色雑音抑制モジュール130に、位相ジャンプ振幅およびタイミングコントローラ132と、位相ジャンプ振幅出力信号134と、レート復調器140と、レートアキュムレータ138と、イネーブル/ディスエーブル制御142と、π復調器146と、πアキュムレータ148と、位相ステップアキュムレータ136と、バイアス変調モジュール152と、角度アキュムレータ154と、分割器150と、累算ポイント156と、累算ポイント158とが含まれる。
【0026】
色雑音抑制モジュール130に、通常は2つの別々のループが組み込まれる。第1ループは、「レート」ループであり、レート復調器140およびレートアキュムレータ138が組み込まれる。レートループは、光ファイバジャイロスコープ100の回転の変化率を感知するのに使用される。レートアキュムレータからの出力を、「生レート」と称する。
【0027】
第2ループは、「πループであり」、π復調器146およびπアキュムレータ148が含まれる。πループは、バイアス変調情報を供給し、再組合せされた光波の干渉パターンに対応する変調の絶対振幅を維持するのに使用される。いくつかの応用例で、変調度は、π/2になるが、所期の応用例の特定の要件および光ファイバジャイロスコープ100の展開環境に応じて、3π/4などの他の変調度を使用することもできる。
【0028】
バイアス変調モジュール152は、位相ステップアキュムレータ136からの出力の変調と、位相ジャンプ振幅信号134からの位相ジャンプ振幅を供給する。さらに、本発明の最も好ましい実施形態は、「デュアルランプ」変調技法を使用するが、当業者は、たとえば「方形波」変調または「セロダイン」変調を含む他の変調技法を使用できることを理解するであろう。
【0029】
レートアキュムレータ138からの出力は、ポイント150でπアキュムレータ148からの出力によって除算されて、光ファイバジャイロスコープ100の回転の正規化された速度が与えられる。この計算の精度を高めるために、正規化された速度は、通常、データ出力ポイント174に送られる前に、角度アキュムレータ154で積分される。
【0030】
ディジタル−アナログコンバータ(DAC)170は、色雑音抑制モジュール130からのディジタル信号出力を、IOC 142に供給されるフィードバックループで使用されるアナログ信号に変換する。増幅器172は、信号バッファとして働き、DAC 170からの出力信号の全体的な利得を増減するのに使用される。
【0031】
データ出力ポイント174は、コンピュータまたは他のデバイスへに光ファイバジャイロスコープ100を接続するインターフェースポイントとして設けられ、これによって、光ファイバジャイロスコープ100が、より大きい慣性測定システムにインターフェースされる。
【0032】
位相ステップアキュムレータ136は、速度を累算し、位相ステップを作成する。位相ステップは、回転速度が安定している場合に線形になることに留意されたい。速度は、実際に累算ポイント158でバイアス変調モジュール152の出力によって変調され、IOC 142のフィードバックループを駆動するためにDAC 170に送られる。
【0033】
位相ジャンプ振幅およびタイミングコントローラ132は、規定された周波数の追加の位相ジャンプ振幅信号134を導入する。位相ジャンプ振幅信号134は、位相ジャンプ振幅およびタイミングコントローラ132からの出力信号であり、累算ポイント156で適用される。位相ジャンプ振幅の大きさおよび位相ジャンプの周波数は、広範囲のパラメータの中で選択することができる。位相ジャンプ振幅信号134の大きさは、光ファイバジャイロスコープ100内の光学誤差が平均して0になるように、±π以内であることが好ましい。位相ジャンプ振幅信号134生成の周波数は、光ファイバジャイロスコープ100内の関心を持たれているスペクトル領域より高いことだけが必要である。正確な周波数は、所与の光ファイバジャイロスコープ100の特定の設計パラメータおよび動作パラメータに依存し、応用ごとに異なる。さらに、位相ジャンプ振幅信号134の振幅および周波数は、所定のレベルで固定することができ、あるいは、適当な動作を保証するためにパラメータのグループ内でランダムにすることができる。
【0034】
位相ジャンプ振幅信号134を適用した後に、位相ジャンプ振幅信号134に関連する信号がIOC 142およびファイバコイル144を通過できるようにするために、信号をもう一度サンプリングする前にτだけ待ち、これによって位相ジャンプ振幅信号134に関連する出力信号を意図的にスキップできるようにすることが望ましい。これは、イネーブル/ディスエーブルモジュール142を選択的に使用して、レートアキュムレータ138およびπアキュムレータ148の累算をディスエーブルすることによって達成される。しかし、対応するサンプルが速度情報またはVπ情報を担持するように位相ジャンプ振幅が選択される場合に、サンプルを復調プロセスで使用することができる。
【0035】
イネーブル/ディスエーブルモジュール142は、位相ジャンプ振幅およびタイミングコントローラ132によって制御される。イネーブル/ディスエーブルモジュール142は、レートアキュムレータ138およびπアキュムレータ148の累算を制御する。これによって、イネーブル/ディスエーブルモジュール142は、位相ジャンプ振幅およびタイミングコントローラ132によって生成される位相ジャンプ振幅信号134が、IOC 142へのフィードバックループに位相ジャンプ振幅信号134を含めることによって結果を人工的にゆがめることを防止できるようになる。
【0036】
要するに、位相ジャンプ振幅およびタイミングコントローラ132は、位相ジャンプ振幅信号134によって表される位相/電圧ジャンプを、光ファイバジャイロスコープ100のループ閉エレクトロニクスのフィードバック信号に挿入する。関心を持たれる周波数範囲によって決定される、所与の時間期間内の十分な個数の位相−電圧ジャンプを生成することによって、ループ閉エレクトロニクスは、フィードバック電圧範囲全体にわたって光学誤差を平均化する。この誤差平均化プロセスは、光学誤差を効果的に除去し、ループ閉エレクトロニクスが光ファイバジャイロスコープの回転の実際の速度を感知することを可能にする。
【0037】
図3を参照すると、通常のデュアルランプループ閉動作を示す波形図300が示されている。前に述べたように、本発明は、デュアルランプ変調方式または以前に既知もしくは当業者によって今後開発される他のタイプの変調技法を使用して実践することができる。変調プロセスは、光波干渉パターンを、光学感度が最大のポイントに向かってバイアスし、これによって干渉パターンを正確に検出できるようにするのに使用される。さらに、変調プロセスは、一部の望ましくない電子雑音も打ち消す。
【0038】
方形波変調信号は、かなり単純で対称の出力信号を作る。しかし、図3に示されたものなどのデュアルランプ変調は、速度情報だけではなく、干渉パターンの絶対π値も提供する。ディジタル位相ステップを導入する目的は、回転速度によって誘導される位相差をヌルにすることである。アナログ表現では、ディジタル位相ステップ出力が、鋸歯形波形として表示される。回転速度が変化しないままである場合に、すべてのτでの位相ステップが一定のままになる。
【0039】
IOC 142を駆動するのに使用される出力デバイスの物理的制限に起因して、ディジタル位相ステップの振幅範囲も制限されなければならない。本発明の1つの好ましい実施形態では、2π範囲の平均での最適の誤差打消しのゆえに、2πの整数倍に基づく駆動範囲が選択される。さらに、2π範囲を選択することは、最小限の駆動電圧を必要とする。ディジタル位相ステップは、この範囲の上側境界または下側境界に達した時に、必ず、2π下方または上方にリセットされ、この範囲を継続的にサイクルする。
【0040】
図4を参照すると、デュアルランプクロージャ動作に関する色雑音抑制変調の使用を示す波形図400が示されている。この図では、同一のデュアルランプ変調方式が使用されるが、振幅ADBを有する色雑音抑制変調位相ジャンプが示されている。色抑制変調位相ジャンプの適用の周波数の周期が、TDBによって示されている。前に述べたように、色雑音抑制変調位相ジャンプの振幅および周波数は、所定の高さおよび速度とすることができ、あるいは、代替の好ましい実施形態では、経時的に変化するランダム化された色雑音抑制変調位相ジャンプを使用することもできる。
【0041】
特に、変調信号の傾きが、速度を決定する。図3および4から、固定された速度で、変調信号が、ランプアップし、出力駆動範囲内で2パイ位相下方にリセットされる(明らかに、無制限に継続的にランプアップするのに使用できるデバイスはない)ことを想像することができる。リセット信号の副産物が、速度スペクトル(フーリエ変換)の明瞭なピークである。この現象は、明瞭な周波数が明瞭な色(平坦なスペクトルに対応する色である白ではなく)に対応するので、「色雑音」または「フライバック雑音」と呼ばれるものである。この現象は、ランプのリセット速度が感知される速度に依存し、速度が高いほど正弦波周波数が高くなるので、速度依存正弦波(RDS)とも呼ばれる。本発明人は、変調信号でのランダム化された振幅ジャンプが、作られる固定速度の周波数パターンを壊すので、不感帯抑制に対処するための説明される方法が、色雑音(またはRDS)の除去にも適用可能であることを発見した。
【0042】
特定のループ閉エレクトロニクス回路構成を図1に示したが、他のタイプの回路実装を、当業者がたやすく適合させることができることに留意されたい。たとえば、本発明のディジタル信号処理を、マイクロプロセッサ構成、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはディジタル信号プロセッサ(DSP)チップを使用して実施することができる。さらに、アナログ回路設計が、本発明の教示を実践するために、必要な処理ステップを達成することもできる。
【0043】
図1および2を参照すると、本発明の色雑音抑制変調技法の好ましい例示的実施形態を実施する方法200が示されている。図2からわかるように、光検出器106からの出力信号を継続的に復調する(ステップ205)。次に、サンプルをスキップしなければならないか保持しなければならないかを決定する(ステップ210)。サンプルをスキップしない場合には、光検出器106からの信号をレートアキュムレータ138およびπアキュムレータ148で累算して、速度変化を検出する(ステップ215)。次に、適当な位相ステップを作成して、回転によって誘導された位相シフトがある場合に、これを打ち消す(ステップ220)。サンプルをスキップする場合(ステップ210)には、この手順は、直接にステップ220に進む。その後、位相ステップ出力を位相ステップアキュムレータ136で累算する(ステップ225)。次に、RDS(色雑音)抑制がイネーブルされていない(ステップ230)と仮定すると、レートアキュムレータ138からの信号をπアキュムレータ148からの信号によって除算し、次に、角度アキュムレータ154によって累算し、最後にデータ出力信号174で出力する(ステップ245)。次に、位相ステップアキュムレータからの累算された位相ステップを変調し、フィードバックループでIOC 142に返す(ステップ250)。
【0044】
RDS(色雑音)抑制がイネーブルされている(ステップ230=「イエス」)場合には、信号を送って、光検出器106から受け取ったサンプルをスキップしなければならないか保持しなければならないかを決定する。したがって、復調された信号を累算して速度変化を検出しなければならないか否かも決定される(ステップ215)。第2の位相ステップを、色雑音抑制変調のために作成する(ステップ235)。次に、この第2の位相ステップを累算された第1の位相と合計する(ステップ240)。次に、組み合わされた位相ステップを、バイアス変調モジュール152からの出力信号と合計し(ステップ245)、その後、全体的なフィードバックループの一部としてIOCを駆動するために送る(ステップ250)。
【0045】
図5は、図3で説明した変調を用いるIFOGからとられた速度データである。この図は、3.8HzのRDSまたは色雑音とその高調波とを示す。これらのRDSは、図6に示されているように消滅するが、図6では、図4に示された新しい変調方式が実施されている。適用されるランダム化された振幅は、±πの間であり、適用される周波数は、約1.5Hzである。
【0046】
好ましい例示的実施形態の前述の詳細な説明から、光ファイバジャイロスコープ(FOG)で色雑音を抑制する装置および方法が提供されることを理解されたい。
【0047】
本発明の好ましい例示的実施形態の前述の開示は、例示および説明のために提示されたものである。これは、網羅的であることまたは開示された正確な形態に本発明を制限することを意図されたものではない。本明細書で説明した実施形態のさまざまな変形形態および変更形態が、上の開示に鑑みて当業者に明白であろう。本発明の範囲は、添付請求項およびその同等物によってのみ定義される。
【0048】
さらに、本発明の代表的実施形態の説明で、本明細書が、ステップの特定のシーケンスとして本発明の方法および/またはプロセスを提示した場合がある。しかし、その方法またはステップが本明細書に示されたステップの特定の順序に頼らない範囲まで、その方法またはステップは、説明したステップの特定のシーケンスに制限されてはならない。当業者が理解するように、ステップの他のシーケンスが可能である場合がある。したがって、本明細書で示されたステップの特定の順序を、請求項に対する制限と解釈してはならない。さらに、本発明の方法および/またはプロセスを対象とする請求項は、書かれた順序でのそのステップの実行に制限されてはならず、当業者は、シーケンスを変更しながら本発明の趣旨および範囲の中に留まることができることを容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の好ましい例示的実施形態による色雑音低減変調回路を組み込んだ光ファイバジャイロスコープを示すブロック図である。
【図2】本発明の好ましい例示的実施形態による色雑音抑制を実施する方法を示す流れ図である。
【図3】本発明を組み込まない通常の変調方式を示す、ループ閉エレクトロニクスを示す変調タイミング図である。
【図4】本発明の色雑音抑制変調の好ましい例示的実施形態を使用するループ閉エレクトロニクスを示す変調タイミング図である。
【図5】図3の従来技術の変調方式からの速度振幅スペクトルを示すプロットである。
【図6】±πの間のランダム化された振幅と1.5Hzの固定周波数とを有する図4による変調方式を用いて得られた速度振幅を示すプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転の速度を決定するための第1の位相ステップ信号を生成する、ループ閉電子回路と、
前記ループ閉電子回路に結合され、ランダム化された位相ジャンプ振幅信号を生成する、色雑音抑制モジュールと、
前記位相ジャンプ振幅信号と前記第1の位相ステップ信号とを合計し、これによって光ファイバジャイロスコープのフィードバック信号を作成する累算ポイントと、
を含む光ファイバジャイロスコープ。
【請求項2】
前記位相ジャンプ振幅信号は、第2の位相ステップを含む、請求項1に記載の光ファイバジャイロスコープ。
【請求項3】
前記光ファイバジャイロスコープから回転の速度信号を出力するデータ出力ポイントをさらに含む、請求項1に記載の光ファイバジャイロスコープ。
【請求項4】
前記データ出力ポイントは、慣性航法システムに結合される、請求項3に記載の光ファイバジャイロスコープ。
【請求項5】
前記色雑音抑制モジュールは、さらに、バイアス変調モジュールを含み、前記バイアス変調モジュールは、前記フィードバック信号を変調する、請求項1に記載の光ファイバジャイロスコープ。
【請求項6】
前記位相ステップ信号をアナログ信号からディジタル信号に変換する、アナログ−ディジタルコンバータと、
前記フィードバック信号をディジタル信号からアナログ信号に変換する、ディジタル−アナログコンバータと
をさらに含む、請求項1に記載の光ファイバジャイロスコープ。
【請求項7】
前記第1の位相ステップ信号または前記フィードバック信号のうちの少なくとも1つを増幅する少なくとも1つの増幅器をさらに含む、請求項1に記載の光ファイバジャイロスコープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−523356(P2007−523356A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500746(P2007−500746)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/037125
【国際公開番号】WO2005/083357
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】