光ファイバテープ心線の製造方法、製造装置、及びその製造方法で製造された光ファイバテープ心線並びに光ファイバケーブル
【課題】各光ファイバ素線に単心分離した場合でもどの光ファイバテープ心線に属するものであるかを判別することのできる光ファイバテープ心線の製造方法を提供する。
【解決手段】印刷機8(8A〜8D)からテープ化装置11間を走行する各光ファイバ素線2(2A〜2D)の走行長を調整するファイバ走行長調整装置13で、全ての光ファイバ素線2の前記印刷機8から前記テープ化装置11間の走行長を同一長さに調整する。この調整によって、各光ファイバ素線2(2A〜2D)に形成するマーキング6を、全て同一位置に揃えることができる。
【解決手段】印刷機8(8A〜8D)からテープ化装置11間を走行する各光ファイバ素線2(2A〜2D)の走行長を調整するファイバ走行長調整装置13で、全ての光ファイバ素線2の前記印刷機8から前記テープ化装置11間の走行長を同一長さに調整する。この調整によって、各光ファイバ素線2(2A〜2D)に形成するマーキング6を、全て同一位置に揃えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバテープ心線の製造方法、製造装置、及びその製造方法で製造された光ファイバテープ心線並びに光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、4本の光ファイバ素線を横一列に配置してこれらをテープ化樹脂で一括被覆したサブユニットテープを、更に4枚横に並べてテープ化樹脂で一体化し、その一体化したテープ化樹脂表面にマーキングを印刷して各サブユニットテープを識別可能とした光ファイバテープ心線が開示されている。
【0003】
マーキングは、各サブユニットテープに分割した場合に、サブユニットテープ間の識別を可能にする識別模様(例えば、ドットマーク)とされている。例えば、1番サブユニットテープには1個のドットマーク、2番サブユニットテープには2個のドットマーク、3番サブユニットマークには3個のドットマーク、4番サブユニットテープには4個のドットマークが印字されている。
【0004】
このように印字された光ファイバテープ心線を各サブユニットテープに分割した場合、1個のドットマークを見れば1番サブユニットテープであることを目視により識別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−178883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の光ファイバテープ心線では、4本のサブユニットテープをテープ化樹脂で一体化したテープ化樹脂表面にマーキングを印刷しているので、各サブユニットテープに分割した後に更に各光ファイバ素線に単心分離すると、サブユニットの識別として使われていたドットマークは取り除かれてしまう。そのため、単心分離した光ファイバ素線は、どのサブユニットテープに属していたのかが判らなくなる。これを解決するために、光ファイバ素線自体にマークを印刷することも考えられるが、そうすると印刷工程が2工程必要となり、製造が面倒になる。
【0007】
そこで、本発明は、各光ファイバ素線に単心分離した場合でもどの光ファイバテープ心線に属するものであるかを一回の印刷で付けたマーキングにより判別することができ且つマーキングの印刷位置も揃えることのできる光ファイバテープ心線の製造方法、製造装置、及びその製造方法で製造された光ファイバテープ心線並びに光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、石英ガラスファイバを樹脂で被覆した樹脂被覆層を有した光ファイバ素線の複数本を走行させ、その走行途中に設けた印刷機で各光ファイバ素線に、光ファイバテープ心線同士を識別するためのマーキングを光ファイバ素線長手方向の一部に印刷する印刷工程と、前記印刷工程で印刷された光ファイバ素線に、前記印刷機のファイバ走行方向前方に設けた着色機で各光ファイバ素線毎に異なる色の半透明な着色層を形成する着色層形成工程と、前記着色機のファイバ走行方向前方に設けた着色層硬化装置で、前記着色層を硬化させる着色層硬化工程と、前記着色層硬化装置のファイバ走行方向前方に設けたテープ化装置で、前記光ファイバ素線の複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層を形成するテープ化層形成工程と、前記テープ化装置のファイバ走行方向前方に設けたテープ化層硬化装置で、前記テープ化層を硬化させるテープ化層硬化工程と、前記印刷機から前記テープ化装置間を走行する各光ファイバ素線の走行長を調整するファイバ走行長調整装置で、全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整工程とを有したことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の光ファイバテープ心線の製造方法であって、前記テープ化装置直前又は直後の各光ファイバ素線に印刷されたマーキングの位置を計測し、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量を求め、その相対的位置ずれ量に基づいて前記ファイバ走行長調整装置を動作させて全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長補正工程を有することを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、石英ガラスファイバを樹脂で被覆した樹脂被覆層を有した光ファイバ素線の複数本を走行させ、その走行途中で各光ファイバ素線に、光ファイバテープ心線同士を識別するためのマーキングを光ファイバ素線長手方向の一部に印刷する印刷機と、前記マーキングされた光ファイバ素線に、各光ファイバ素線毎に異なる色の半透明な着色層を形成する着色機と、前記着色層を硬化させる着色層硬化装置と、前記光ファイバ素線の複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層を形成するテープ化装置と、前記テープ化層を硬化させるテープ化層硬化装置と、前記印刷機から前記テープ化装置間を走行する各光ファイバ素線の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整装置とを有したことを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の光ファイバテープ心線の製造装置であって、前記テープ化装置直前又は直後の各光ファイバ素線に印刷されたマーキングの位置を計測するマーキング位置計測機と、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量を求めてその相対的位置ずれ量に基づいて全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するように前記ファイバ走行長調整装置を動作させる制御部とを有することを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の製造方法で製造されたことを特徴とする光ファイバテープ心線である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載の光ファイバテープ心線の複数枚をケーブル内に収納して構成したことを特徴とする光ファイバケーブルである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ファイバ走行長調整工程において印刷機からテープ化装置間を走行する各光ファイバ素線の走行長を調整するファイバ走行長調整装置で、全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整すれば、各光ファイバ素線に対して印刷したマーキングの位置を、テープ化装置の直前位置で、全ての光ファイバ素線に対して該光ファイバ素線長手方向において同一位置に揃えることができる。その後、テープ化層形成工程でテープ化すれば、各光ファイバ素線の各マーキング位置が全て一致した光ファイバテープ心線を製造することができる。従って、光ファイバテープ心線から各光ファイバ素線に単心分離しても、マーキングの種類を見るだけで、単心分離した光ファイバ素線がどの光ファイバテープ心線に属するものであるかを簡単に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本実施形態の光ファイバテープ心線の平面図である。
【図2】図2は図1の光ファイバテープ心線のA−A線における拡大断面図である。
【図3】図3は図2の光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線を示し、(A)はその平面図、(B)はそのB−B線における拡大断面図である。
【図4】図4は本実施形態の光ファイバテープ心線の平面図を示し、(A)は光ファイバ素線に1つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例、(B)は光ファイバ素線に2つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例、(C)は光ファイバ素線に3つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例、(D)は光ファイバ素線に4つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例を示す。
【図5】図5は本実施形態の光ファイバテープ心線の製造装置を示す概略平面図である。
【図6】図6は図5の製造装置のうちファイバ走行長調整装置の側面図であり、(A)は印刷機からテープ化装置間を走行する光ファイバ素線の走行長を長くする例、(B)は印刷機からテープ化装置間を走行する光ファイバ素線の走行長を短くする例である。
【図7】図7は印刷機直前における各光ファイバ素線の配列状態を示す図である。
【図8】図8は着色機直前における各光ファイバ素線の配列状態を示す図である。
【図9】図9はテープ化装置直前における各光ファイバ素線の配列状態を示す図である。
【図10】図10はファイバ走行長を調整しなかったことにより各光ファイバ素線に印刷されたマーキングが位置ずれを起こした例を示す光ファイバテープ心線の平面図である。
【図11】図11は本発明方法により製造された光ファイバテープ心線をケーブル内に収納した光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【図12】図12はマーキングの別形態を示す光ファイバ素線の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
「本発明方法により製造される光ファイバテープ心線の構造説明」
先ず、本発明を適用した製造方法で製造される光ファイバテープ心線について説明する。図1は光ファイバテープ心線の平面図、図2は図1の光ファイバテープ心線のA−A線における拡大断面図、図3は図2の光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線を示し、(A)はその平面図、(B)はそのB−B線における拡大断面図、図4は本実施形態の光ファイバテープ心線の平面図を示し、(A)は光ファイバ素線に1つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例、(B)は光ファイバ素線に2つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例、(C)は光ファイバ素線に3つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例、(D)は光ファイバ素線に4つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例を示す。
【0018】
光ファイバテープ心線1は、図1及び図2に示すように、複数本の光ファイバ素線2(2A〜2D)を一列に接して並列配置し、これら光ファイバ素線2を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層3を形成することで構成されている。
【0019】
光ファイバ素線2は、図3に示すように、中心に設けられた石英ガラスファイバ4と、この石英ガラスファイバ4の周囲に紫外線硬化型樹脂を被覆して形成された樹脂被覆層5と、光ファイバテープ心線1同士を識別するためのマーキング6と、各光ファイバ心線2A〜2D同士を区別するための半透明な着色層7とからなる。
【0020】
マーキング6は、図3に示すように、光ファイバ素線2の長手方向に幅Wで樹脂被覆層5を周方向にほぼ一周するように帯状をなすマークとして印刷されている。この帯状をなす1つのマーキング6は、光ファイバ素線長手方向に所定ピッチPで等間隔に連続して設けられている。光ファイバ素線自体が透明であり、かつマーキング6を含めて樹脂被覆層5全体を被覆する着色層7は、半透明とされているため、この最外被層としての着色層7からその下に設けられたマーキング6を識別することができる。着色層7は、各光ファイバ素線2A〜2D毎に異なる色に着色されており、各光ファイバ素線2A〜2D同士を識別するための指標として機能する。
【0021】
図1の光ファイバテープ心線1では、各光ファイバ素線2A〜2Dに設けられたマーキング6は、光ファイバテープ心線長手方向において全て同一位置とされている。言い換えれば、各光ファイバ素線2A〜2Dに設けられたマーキング6は、光ファイバテープ心線1の幅方向において同一位置に全て設けられている。また、このマーキング6は、光ファイバテープ心線1の長手方向に所定ピッチPで連続して設けられている。
【0022】
図4は光ファイバ素線2に設けたマーキング6の種類により、各光ファイバテープ心線1(1A〜1D)を識別するようにした一例を示している。図4(A)の光ファイバテープ心線1Aでは、帯状をなす1つのマーキング6を光ファイバ素線長手方向に所定ピッチで等間隔に連続して設けている。図4(B)の光ファイバテープ心線1Bでは、2つのマーキング6を光ファイバ素線長手方向に所定ピッチで等間隔で連続して設けている。図4(C)の光ファイバテープ心線1Cでは、3つのマーキング6を光ファイバ素線長手方向に所定ピッチで等間隔で連続して設けている。図4(D)の光ファイバテープ心線1Dでは、4つのマーキング6を光ファイバ素線長手方向に所定ピッチで等間隔で連続して設けている。
【0023】
このように、各光ファイバテープ心線1A〜1Dは、異なるパターンとされたマーキング6が識別マークとなるため、目視によりそれぞれの光ファイバテープ心線1A〜1Dを判別することができる。前記マーキング6は、その上にテープ化層3で覆われているが、当該テープ化層3は無色透明な樹脂であるためこのテープ化層3を介して認識することができる。また、前記した各光ファイバテープ心線1A〜1Dをそれぞれ単心分離して特定の色の光ファイバ素線2を取り出した場合、その光ファイバ素線2に設けられたマーキング6の数を見ることで、どの光ファイバテープ心線1A〜1Dに属している光ファイバ素線2であるかを簡単に認識することができる。例えば、単心分離した1本の光ファイバ素線2に設けられたマーキング6の数が3本の場合は、光ファイバテープ心線1Cに属するものであると直ちに判る。
【0024】
「光ファイバテープ心線を製造する製造装置の構造説明」
次に、本発明の光ファイバテープ心線を製造する製造装置について説明する。図5は本実施形態の光ファイバテープ心線の製造装置を示す概略平面図である。本実施形態の製造装置は、図5に示すように、複数本の各光ファイバ素線2(2A〜2D)にマーキング6を印刷する印刷機8(8A〜8D)と、マーキング6された各光ファイバ素線2A〜2Dに異なる色の半透明な着色層7を形成する着色機9と、着色層7を硬化させる着色層硬化装置10と、光ファイバ素線2A〜2Dの複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化層3を形成するテープ化装置11と、テープ化層3を硬化させるテープ化層硬化装置12と、印刷機8からテープ化装置11間を走行する各光ファイバ素線2A〜2Dの走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整装置13とを有している。
【0025】
また、この製造装置では、テープ化装置直前又は直後の各光ファイバ素線2A〜2Dに印刷されたマーキング6の位置を計測するマーキング位置計測機14と、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量を求めてその相対的位置ずれ量に基づいて全ての光ファイバ素線2の前記印刷機8からテープ化装置11間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整装置13を動作させる制御部15とを有している。
【0026】
前記製造装置では、図5に向かって最も右側に配置される印刷機8を光ファイバ素線2のファイバ送出し側とし、最も左側に配置されるテープ化層硬化装置12をテープ巻取り側としたときに、光ファイバ素線2がファイバ送出し側からテープ巻取り側へ向かって矢印Yで示す向きに走行する。この矢印Yの向きをファイバ走行方向とし、ファイバ送出し側に配置される印刷機8に対してテープ巻取り側に配置される着色機9を前方にある装置構成部品と定義する。前記光ファイバ心線2の走行経路には、ファイバ送出し側からテープ巻取り側へ向かって順次、印刷機8、ファイバ走行長調整装置13、着色機9、着色層硬化装置10、マーキング位置計測機14、テープ化装置11、テープ化層硬化装置12が配置されている。
【0027】
なお、本実施形態の製造装置では、光ファイバ素線2(2A〜2D)を印刷機8へ送り出す送出装置(図示省略)と、テープ化層硬化装置12で硬化されてテープ化された光ファイバテープ心線1を最終的に巻き取る巻取装置(図示省略)とが設けられている。
【0028】
光ファイバテープ心線1を製造するに際しては、テープ化装置11でテープ化層3を形成するテープ化層形成工程では、製造する光ファイバテープ心線1を高密度にケーブル化する必要があること及びテープ化された状態で一括被覆できるようにすること等により、各光ファイバ素線2A〜2Bを接触又は接近させる必要がある。例えば、一般的に使用される紫外線硬化型樹脂でコーティングされた直径250μmの光ファイバ素線では、隣接する光ファイバ素線間隔は0〜125μm程度とされる。
【0029】
この一方、テープ化装置11で行うテープ化層形成工程の前工程である着色機9で各光ファイバ素線2A〜2Dに着色層7を形成する着色層形成工程及び着色層硬化装置10で着色層7を硬化させる着色層硬化工程では、以下の理由によりテープ化層形成工程における、接触又は接近した光ファイバ素線2A〜2Dの配列とすることはできない。この着色層形成工程でテープ化層形成工程と同じ配列とした場合、着色層硬化装置10で着色層7に紫外線を照射した場合、紫外線が照射されない部位が生じたり、ファイバ断面の円周上における特定部位の紫外線照射量が少なくなる等して硬化不良が発生し、色抜け等の識別不良、付着樹脂の不均一性による光ファイバの伝送損失への影響が発生する。そのため、着色層硬化装置10内では、各光ファイバ素線2A〜2D間の距離を、テープ化装置直前状態における各光ファイバ素線2A〜2D間距離よりも広くする必要がある。
【0030】
また、着色層形成工程でテープ化層形成工程と同じ配列とした場合、未硬化の着色層形成用の樹脂が付着した光ファイバ素線2A〜2D同士が一体化してしまう。このため、光ファイバテープ心線1の有効な機能の一つである、テープ化層3を除去した際に光ファイバ素線2A〜2Dを単心で取り扱うことができる機能を損ねてしまう。また、各光ファイバ素線2A〜2Dの間隔が0〜125μmと非常に狭い場合、製造時の機械振動等による線ぶれや帯電の影響等により長手方向の一部若しくは全長で隣接する光ファイバ心線2A〜2D同士が接触してしまう。
【0031】
また、印刷機8でマーキング6を形成する印刷工程では、全ての光ファイバ素線2A〜2Dに同一位置で同一タイミングにて印刷したとしても、印字ヘッドのあおり(傾き)や各印刷機8の印字ヘッド位置等の誤差により、各光ファイバ素線2A〜2Dに印刷されるマーキング6位置にずれが生じる。
【0032】
以上のように、各工程ではそれぞれの工程に適した光ファイバ素線2A〜2Dの配列間隔が必要であるため、前記したように各光ファイバ素線2A〜2Dに各印刷機8A〜8Dで同時にマーキング6をしても、各印刷機8A〜8Dからテープ化装置11間の走行長が各光ファイバ素線2A〜2D毎に異なることにより、テープ化装置11直前では各光ファイバ素線2A〜2Bのマーキング位置が光ファイバテープ心線長手方向でずれる。このずれを無くすためには、テープ化装置11の直前で各光ファイバ素線2A〜2Dのマーキング位置を全て一致させる必要があり、その解決手段としてファイバ走行長調整装置13を設けている。このファイバ走行長調整装置13の構成については、図6を参照して後述する。
【0033】
送出装置は、各光ファイバ素線2A〜2Dを周面に巻き付ける送出ドラムを有している。この送出ドラムは、光ファイバ素線の数に応じて配置されている。本実施形態では、4本の光ファイバ素線2A〜2Dを一列に配列した光ファイバテープ心線1を製造することから、4つの送出ドラムを配置している。送出ドラムの周面に巻き付けられる光ファイバ素線2A〜2Dは、石英ガラスファイバ4を樹脂で被覆した樹脂被覆層5を有した構造である。
【0034】
印刷機8A〜8Bは、各光ファイバ素線2A〜2D毎にそれぞれ独立して配置されている。この印刷機8A〜8Dでは、送出装置から送り出されて巻取装置へと走行する光ファイバ素線2A〜2Dに対して、光ファイバ素線長手方向の一部に前記した帯状のマーキング6を印刷する。印刷機8の種類としては、例えばインクジェット型の印刷機が使用されるが、これに限定されない。また、図5では、各光ファイバ素線2A〜2D毎に独立した印刷機8A〜8Dを使用しているが、一つの機器本体とした印刷機で各光ファイバ素線2A〜2Dにマーキング6を印刷するようにしてもよい。
【0035】
着色機9は、前記印刷機8のファイバ走行方向前方に設けられている。この着色機9は、共通する筐体を有し、各光ファイバ素線2A〜2Dに、各光ファイバ素線2A〜2D毎に異なる色の半透明な着色層7を塗布する。着色材には、紫外線硬化型樹脂が使用される。例えば、4本の光ファイバ素線2A〜2Dは、それぞれ青、白、黄、グレーなどに着色される。この着色機9では、各印刷機8A〜8Dでマーキング6を印刷したときの光ファイバ素線2A〜2Dの配列ピッチよりも狭められた配列ピッチで形成された各貫通孔内に、各光ファイバ素線2A〜2Dを走行させて紫外線硬化型樹脂を塗布する。
【0036】
着色層硬化装置10は、前記着色機9のファイバ走行方向前方に設けられている。この着色層硬化装置10では、着色機9で塗布された紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射し硬化させて着色層7を形成する。
【0037】
テープ化装置11は、前記着色層硬化装置10のファイバ走行方向前方に設けられている。このテープ化装置11では、光ファイバ素線2A〜2Dの複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層3を形成する。テープ化装置11の直前では、着色層硬化装置10から出る各光ファイバ素線2A〜2Dを集線してそれらの間隔を狭めて接触又は接近させるようにする。無色透明な樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が使用される。このテープ化装置11では、接触又は接近して一列に配列した光ファイバ素線4A〜4Dを貫通孔に走行させ、その貫通孔内に供給される樹脂を塗布することでテープ化層3を形成する。
【0038】
テープ化層硬化装置12は、テープ化装置11のファイバ走行方向前方に設けられている。このテープ化層硬化装置12では、テープ化装置11で塗布された樹脂に紫外線を照射し硬化させてテープ化層3を形成する。この工程を終了することで、図1及び図2に示した本実施形態の光ファイバテープ心線1が得られる。
【0039】
ファイバ走行長調整装置13は、印刷機8と着色機9との間に設けられている。このファイバ走行長調整装置13は、図6に示すように、光ファイバ素線2A〜2Dの走行方向に配列された3つのローラ16A、16B、16Cからなる。そして、このファイバ走行長調整装置13では、中央のローラ16Bを残り2つのローラ16A、16Cに対して接近又は離れる方向に移動してそれらの高さHが可変できる構造とされている。例えば、基台に固定された2つのローラ16A、16Cに対して中央のローラ16Bを、図6(A)に示すように離れる方向に移動させて高さHを高くすると、光ファイバ素線2A〜2Dの走行長を長くすることができる。一方、2つのローラ16A、16Cに対して中央のローラ16Bを、図6(B)に示すように接近する方向に移動させて高さHを低くすると、光ファイバ素線2A〜2Dの走行長を短くすることができる。なお、ファイバ走行長調整装置13は、各光ファイバ素線2A〜2Dに対してそれぞれ設けられている。
【0040】
マーキング位置計測機14は、着色層硬化装置10とテープ化装置11の間であってテープ化装置11の直前位置に設けられている。このマーキング位置計測機14は、各光ファイバ素線2A〜2Dに印刷されたマーキング6の位置を画像センサーで検出して数値化する。なお、このマーキング位置計測機14は、テープ化装置11の直後に配置してもよい。
【0041】
制御部15は、マーキング位置計測機14で計測された各光ファイバ素線2A〜2Dのマーキング位置の相対的位置ずれ量に基づいて全ての光ファイバ素線2A〜2Dの前記印刷機8からテープ化装置11間の走行長を同一長さに調整するようにファイバ走行長調整装置13を動作させる。具体的には、4本の光ファイバ素線2A〜2Dに設けられたマーキング6の位置が揃っていない場合、マーキング6の位置がずれている光ファイバ素線2A〜2Dに対応するファイバ走行長調整装置13の中央のローラ16A〜16Cの高さHを調整して、前記印刷機8からテープ化装置11間の光ファイバ素線2A〜2Dの走行長を同一にする。制御部15では、中央のローラ16Bをステッピングモータで駆動自在とすることで、精度良くローラ16Bの高さ位置を調整することが可能となる。
【0042】
[光ファイバテープ心線の製造方法説明]
次に、本実施形態の光ファイバテープ心線の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、光ファイバ素線2(2A〜2D)の走行途中に設けた印刷機8((A〜8D)で各光ファイバ素線2に、光ファイバテープ心線同士を識別するためのマーキング6を印刷する印刷工程と、着色機9で各光ファイバ素線毎に異なる色の半透明な着色層7を形成する着色層形成工程と、着色層硬化装置10で着色層7を硬化させる着色層硬化工程と、テープ化装置11で光ファイバ素線2の複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層3を形成するテープ化層形成工程と、テープ化層硬化装置12でテープ化層3を硬化させるテープ化層硬化工程と、印刷機8からテープ化装置11間を走行する各光ファイバ素線2の走行長を調整するファイバ走行長調整装置13で、全ての光ファイバ素線2の前記印刷機8から前記テープ化装置11間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整工程と、テープ化装置直前又は直後の各光ファイバ素線に印刷されたマーキングの位置を計測し、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量を求め、その相対的位置ずれ量に基づいて前記ファイバ走行長調整装置を動作させて全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長補正工程とを備えている。
【0043】
以下に、光ファイバテープ心線1を製造する工程順に、各工程を具体的に説明する。先ず、送出ドラムから各光ファイバ心線2(2A〜2D)を送り出す。送り出された各光ファイバ心線2は、それぞれに対応する各印刷機8(8A〜8D)へと送られる。印刷機8では、図7に示すように、各光ファイバ素線2A〜2Dの配置間隔は広くされている。例えば、4本の光ファイバ素線2A〜2Dは、横一列に配置され、図7に向かって最も左側の光ファイバ素線2Aから最も右側の光ファイバ心線2Dにおける隣り合う各距離L1、L2、L3、L4をそれぞれ50mm、25mm、25mm、50mmとした。
【0044】
印刷工程では、同一位置に配列された各印刷機8(8A〜8D)によって各光ファイバ素線2A〜2D毎に、異なる色の半透明なマーキング6を印刷して形成する。マーキング6は、図3で示したように、光ファイバ素線長手方向の一部に帯状をなすマークとして印刷される。この帯状をなすマーキング6は、光ファイバ素線長手方向に所定ピッチPで等間隔に連続して設けられる。
【0045】
各光ファイバ素線2A〜2Dにマーキング6が形成されると、光ファイバ素線2A〜2Dは、着色機9へと送られ、ここで着色工程が行われる。着色工程の直前では、各光ファイバ素線2A〜2Dは、図8に示すように、正方形の各四辺の四隅にそれぞれ配置される。例えば、正方形の中心を通る2本の直交する線をX軸、Y軸とした時に、各光ファイバ素線2A〜2DのX軸、Y軸における対向距離を、それぞれ10mmとした。
【0046】
着色工程では、図8の配置状態とされた各光ファイバ素線2A〜2Dに対して、それぞれ異なる色の半透明な着色層7をその長手方向に連続して形成する。着色材には、紫外線硬化型樹脂が使用される。例えば、4本の光ファイバ素線2A〜2Dは、それぞれ青、白、黄、グレーに着色される。
【0047】
各光ファイバ素線2A〜2Dに着色層7が形成されると、光ファイバ素線2A〜2Dは、着色層硬化装置10へと送られ、ここで着色層硬化工程が行われる。着色層硬化工程では、各光ファイバ素線2A〜2Dに紫外線を照射することで塗布されて未硬化状態の紫外線硬化樹脂が硬化される。これにより、光ファイバ素線2A〜2Dには、図3に示すように硬化した着色層7が形成される。
【0048】
各光ファイバ素線2A〜2Dに塗布された紫外線硬化樹脂が硬化して着色層7が形成されると、各光ファイバ素線2A〜2Dは、互いに接近するように集線される。例えば、テープ化装置11の直前では、各光ファイバ素線2A〜2Dは、図9に示すように、2本の直交する線をX軸、Y軸とした時に、X軸上にそれぞれ接触して配置される。各光ファイバ素線2A〜2Dが集線されて横一列に配列されると、テープ化装置11へ送られ、ここでテープ化層形成工程が行われる。
【0049】
テープ化層形成工程では、図8の配置状態とされた各光ファイバ素線2A〜2Dに対して、テープ化装置11により無色透明な樹脂が一括被覆されてテープ化される。無色透明な樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が使用される。このテープ化装置11では、接触して一列に配列した光ファイバ素線4A〜4Dに紫外線硬化型樹脂をその長手方向に沿って連続して形成する。
【0050】
テープ化層3が形成されると、テープ化された光ファイバ素線2A〜2Dは、テープ化層硬化装置12へと送られ、ここでテープ化層硬化工程が行われる。テープ化層硬化工程では、テープ化装置11で塗布された樹脂に紫外線を照射し硬化させてテープ化層3を形成する。これにより、図1及び図2に示した光ファイバテープ心線1が製造される。
【0051】
例えば、図10に示すように、各マーキング6の位置が図1に示すように同一位置に揃っていない場合は、ファイバ走行長調整装置13で全ての光ファイバ素線2A〜2Dの印刷機8A〜8Dからテープ化装置11間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整工程を行う。ファイバ走行長調整工程では、各光ファイバ素線2A〜2Dに対応するファイバ走行長調整装置13を構成する2つのローラ16A、16Cに対して中央のローラ16Bを、図6に示すように接近する方向又は離れる方向に移動させてそれらの相対的高さHを変える。これにより、印刷機8からテープ化装置11間を走行する各光ファイバ素線2A〜2Dの走行長を長くしたり短くしたりすることができる。
【0052】
ファイバ走行長調整工程では、テープ化装置11直前又は直後の各光ファイバ素線2A〜2Dに印刷されたマーキング6の位置をマーキング位置計測機14で計測し、計測して求められた各マーキング6位置の相対的位置ずれ量を制御部15で求める。そして、制御部15では、その相対的位置ずれ量に基づいて前記ファイバ走行長調整装置13を動作させて全ての光ファイバ素線2A〜2Dの前記印刷機8から前記テープ化装置11間の走行長を同一長さに調整するように前記中央のローラ16Bの高さ位置を調整する。例えば、4本のうち中央2本の光ファイバ素線2B、2Cと両脇2本の光ファイバ素線2A、2Dのそれぞれに設けられたマーキング6位置にずれがある場合、ずれが生じている光ファイバ素線2B、Cに対応して設けられたファイバ走行長調整装置13の中央のローラ16Bの高さを高くして全ての光ファイバ素線2A〜2Dの前記印刷機8からテープ化装置11間の走行長を同一長さにする。
【0053】
実際に、図5に示した製造装置を使用して図1及び図2に示す光ファイバテープ心線1を製造した。4本の光ファイバ素線2A〜2Dを横一列に配列した時に、最も端の光ファイバ素線2Aを1番、その隣の光ファイバ素線2Bを2番、更にその隣の光ファイバ素線2Cを3番、最も離れた光ファイバ素線2Dを4番とする。そして、図5に示すように、印刷機8の直前位置からテープ化装置11の入口直前位置までの距離をLとした時に、各光ファイバ素線2A〜2Dの経路長を計算して求めた。その経路長の計算値は、1番及び4番の光ファイバ素線2A、2Dが5108.2mm、2番及び3番の光ファイバ素線2B、2Cが5100.8mmであった。
【0054】
実際に作成された光ファイバテープ心線1に施されるマーキング6は、1番の光ファイバ素線2Aを基準に2番及び3番の光ファイバ素線2B、2Cが+7mm、4番の光ファイバ素線2Dが+0.1mmであり、また、各マーキング6のずれ量は前記した経路長の計算値とほぼ一致した。この各マーキング6のずれ量を基にして、ファイバ走行長調整装置13の中央のローラ16Bの高さを調整した。ここでは、2番及び3番の光ファイバ素線2B、2Cに対応するファイバ走行長調整装置13の中央のローラ16Bの高さを、1番及び4番の光ファイバ素線2A、2Dに対応するファイバ走行長調整装置13の中央のローラ16Bの高さに対して3.5mm低くした。その結果、各光ファイバ素線2A〜2Dに形成されるマーキング6は、1番の光ファイバ素線2Aを基準として2番の光ファイバ素線2Bが+0.2mm、3番の光ファイバ素線2Cが+0.1mm、4番の光ファイバ素線2Dが+0.1mmであった。したがって、各光ファイバ素線2A〜2Dに形成される全てのマーキング6の位置を同一位置とすることができる。
【0055】
「光ファイバケーブルの構造説明」
本発明製造方法により製造された光ファイバテープ心線1は、例えば図11に示すように、複数本の光ファイバテープ心線1の集合体の外周に熱硬化性樹脂をチューブ状に押し出して成形し、成形されたチューブ16の外周をポリエチレンなどの外被17により被覆したシース18で覆ったケーブル構造とされる。図11の光ファイバケーブル19は、ケーブル内、すなわちシース18の中心に複数本の光ファイバテープ心線1を収納配置させた、いわゆるセンターチューブ型光ファイバケーブル構造である。この例では、センターチューブ型光ファイバケーブルとしたが、本発明製造方法により製造される光ファイバテープ心線1を収納するケーブル構造に関しては、種類を問わない。
【0056】
例えば、図11に示す光ファイバケーブル19において、例えばシース18を引き裂いて内部に収納された複数本ある光ファイバテープ心線1から特定の光ファイバテープ心線1を取り出す場合、無色透明なテープ化層3を通してマーキング6の種類を識別することができることから、特定の光ファイバテープ心線1を簡単に見つけることができる。そして、特定の光ファイバテープ心線1をシース18外へと取り出した後、他の光ファイバ素線2と分離し、その分離した光ファイバ素線2のマーキング6を見ることで、どの光ファイバテープ心線1に属する光ファイバ心線2であるかを認識することができる。
【0057】
「本実施形態の効果」
本実施形態によれば、ファイバ走行長調整工程において印刷機からテープ化装置間を走行する各光ファイバ素線の走行長を調整するファイバ走行長調整装置で、全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整すれば、各光ファイバ素線に対して印刷したマーキングの位置を、テープ化装置の直前位置で、全ての光ファイバ素線に対して該光ファイバ素線長手方向において同一位置に揃えることができる。その後、テープ化層形成工程でテープ化すれば、各光ファイバ素線の各マーキング位置が全て一致した光ファイバテープ心線を製造することができる。従って、光ファイバテープ心線から各光ファイバ素線に単心分離しても、マーキングの種類を見るだけで、単心分離した光ファイバ素線がどの光ファイバテープ心線に属するものであるかを簡単に認識することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、ファイバ走行長補正工程を行うことで、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量に基づいた各光ファイバ素線の印刷機からテープ化装置間の走行長を、全ての光ファイバ素線で同一長さとすることができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、ファイバ走行長調整装置を設けたことで、例え各光ファイバ素線に形成したマーキング位置にずれが生じても、そのずれ量に応じて全てのマーキング位置を同一位置にすることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、製造装置にマーキング位置計測機と制御部を設けたので、このマーキング位置計測機で求めた各光ファイバ素線のマーキング位置における相対的位置ずれ量に基づいて制御部がファイバ走行長調整装置を動作させるので、全ての光ファイバ素線の印刷機からテープ化装置間の走行長を同一長さにすることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、本発明製造方法で製造された光ファイバテープ心線では、テープ化層を剥がしても各光ファイバ素線に印刷されたマーキングを見ることで、どの光ファイバテープ心線に属したものであるかを目視により簡単に識別することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、本発明製造方法で製造された光ファイバテープ心線の複数枚をケーブル内に収納した光ファイバケーブルとした場合、ケーブル内から特定の光ファイバテープ心線を取り出す際にマーキングの種類を見ることで取り出すべき光ファイバテープ心線を容易に見分けることができ、また、取り出した光ファイバテープ心線を単心分離してもその単心分離した光ファイバ素線のマーキングを見ることでどの光ファイバテープ心線に属するものであるかを目視にて直ちに識別することができる。
【0063】
「その他の実施形態」
前記した図3では、マーキング6を、樹脂被覆層5の周方向にほぼ一周するように帯状をなすマークとして印刷したが、一周ではなく、図12に示すように樹脂被覆層5の周方向の一部だけにマーキング6を設けるようにしても前述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。マーキング6の長さは、石英ガラスファイバ4の直径と同一長さである、樹脂被覆層5の周長の約1/6以上であることが好ましい。1/6以上とすることで、マーキング6を目視で認識し易くなる。なお、図12では、一部に設けたマーキング6を明瞭に表すため、石英ガラスファイバ4の直径と同一尺度で表示していない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、各光ファイバ素線に単心分離した場合でもどの光ファイバテープ心線に属するものであるかを判別することのできる光ファイバテープ心線の製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…光ファイバテープ心線
2(2A〜2D)…光ファイバ素線
3…テープ化層
4…石英ガラスファイバ
5…樹脂被覆層
6…マーキング
7…着色層
8(8A〜8D)…印刷機
9…着色機
10…着色層硬化装置
11…テープ化装置
12…テープ化層硬化装置
13…ファイバ走行長調整装置
14…マーキング位置計測機
15…制御部
18…シース
19…光ファイバケーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバテープ心線の製造方法、製造装置、及びその製造方法で製造された光ファイバテープ心線並びに光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、4本の光ファイバ素線を横一列に配置してこれらをテープ化樹脂で一括被覆したサブユニットテープを、更に4枚横に並べてテープ化樹脂で一体化し、その一体化したテープ化樹脂表面にマーキングを印刷して各サブユニットテープを識別可能とした光ファイバテープ心線が開示されている。
【0003】
マーキングは、各サブユニットテープに分割した場合に、サブユニットテープ間の識別を可能にする識別模様(例えば、ドットマーク)とされている。例えば、1番サブユニットテープには1個のドットマーク、2番サブユニットテープには2個のドットマーク、3番サブユニットマークには3個のドットマーク、4番サブユニットテープには4個のドットマークが印字されている。
【0004】
このように印字された光ファイバテープ心線を各サブユニットテープに分割した場合、1個のドットマークを見れば1番サブユニットテープであることを目視により識別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−178883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の光ファイバテープ心線では、4本のサブユニットテープをテープ化樹脂で一体化したテープ化樹脂表面にマーキングを印刷しているので、各サブユニットテープに分割した後に更に各光ファイバ素線に単心分離すると、サブユニットの識別として使われていたドットマークは取り除かれてしまう。そのため、単心分離した光ファイバ素線は、どのサブユニットテープに属していたのかが判らなくなる。これを解決するために、光ファイバ素線自体にマークを印刷することも考えられるが、そうすると印刷工程が2工程必要となり、製造が面倒になる。
【0007】
そこで、本発明は、各光ファイバ素線に単心分離した場合でもどの光ファイバテープ心線に属するものであるかを一回の印刷で付けたマーキングにより判別することができ且つマーキングの印刷位置も揃えることのできる光ファイバテープ心線の製造方法、製造装置、及びその製造方法で製造された光ファイバテープ心線並びに光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、石英ガラスファイバを樹脂で被覆した樹脂被覆層を有した光ファイバ素線の複数本を走行させ、その走行途中に設けた印刷機で各光ファイバ素線に、光ファイバテープ心線同士を識別するためのマーキングを光ファイバ素線長手方向の一部に印刷する印刷工程と、前記印刷工程で印刷された光ファイバ素線に、前記印刷機のファイバ走行方向前方に設けた着色機で各光ファイバ素線毎に異なる色の半透明な着色層を形成する着色層形成工程と、前記着色機のファイバ走行方向前方に設けた着色層硬化装置で、前記着色層を硬化させる着色層硬化工程と、前記着色層硬化装置のファイバ走行方向前方に設けたテープ化装置で、前記光ファイバ素線の複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層を形成するテープ化層形成工程と、前記テープ化装置のファイバ走行方向前方に設けたテープ化層硬化装置で、前記テープ化層を硬化させるテープ化層硬化工程と、前記印刷機から前記テープ化装置間を走行する各光ファイバ素線の走行長を調整するファイバ走行長調整装置で、全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整工程とを有したことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の光ファイバテープ心線の製造方法であって、前記テープ化装置直前又は直後の各光ファイバ素線に印刷されたマーキングの位置を計測し、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量を求め、その相対的位置ずれ量に基づいて前記ファイバ走行長調整装置を動作させて全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長補正工程を有することを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、石英ガラスファイバを樹脂で被覆した樹脂被覆層を有した光ファイバ素線の複数本を走行させ、その走行途中で各光ファイバ素線に、光ファイバテープ心線同士を識別するためのマーキングを光ファイバ素線長手方向の一部に印刷する印刷機と、前記マーキングされた光ファイバ素線に、各光ファイバ素線毎に異なる色の半透明な着色層を形成する着色機と、前記着色層を硬化させる着色層硬化装置と、前記光ファイバ素線の複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層を形成するテープ化装置と、前記テープ化層を硬化させるテープ化層硬化装置と、前記印刷機から前記テープ化装置間を走行する各光ファイバ素線の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整装置とを有したことを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の光ファイバテープ心線の製造装置であって、前記テープ化装置直前又は直後の各光ファイバ素線に印刷されたマーキングの位置を計測するマーキング位置計測機と、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量を求めてその相対的位置ずれ量に基づいて全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するように前記ファイバ走行長調整装置を動作させる制御部とを有することを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の製造方法で製造されたことを特徴とする光ファイバテープ心線である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載の光ファイバテープ心線の複数枚をケーブル内に収納して構成したことを特徴とする光ファイバケーブルである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ファイバ走行長調整工程において印刷機からテープ化装置間を走行する各光ファイバ素線の走行長を調整するファイバ走行長調整装置で、全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整すれば、各光ファイバ素線に対して印刷したマーキングの位置を、テープ化装置の直前位置で、全ての光ファイバ素線に対して該光ファイバ素線長手方向において同一位置に揃えることができる。その後、テープ化層形成工程でテープ化すれば、各光ファイバ素線の各マーキング位置が全て一致した光ファイバテープ心線を製造することができる。従って、光ファイバテープ心線から各光ファイバ素線に単心分離しても、マーキングの種類を見るだけで、単心分離した光ファイバ素線がどの光ファイバテープ心線に属するものであるかを簡単に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本実施形態の光ファイバテープ心線の平面図である。
【図2】図2は図1の光ファイバテープ心線のA−A線における拡大断面図である。
【図3】図3は図2の光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線を示し、(A)はその平面図、(B)はそのB−B線における拡大断面図である。
【図4】図4は本実施形態の光ファイバテープ心線の平面図を示し、(A)は光ファイバ素線に1つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例、(B)は光ファイバ素線に2つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例、(C)は光ファイバ素線に3つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例、(D)は光ファイバ素線に4つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例を示す。
【図5】図5は本実施形態の光ファイバテープ心線の製造装置を示す概略平面図である。
【図6】図6は図5の製造装置のうちファイバ走行長調整装置の側面図であり、(A)は印刷機からテープ化装置間を走行する光ファイバ素線の走行長を長くする例、(B)は印刷機からテープ化装置間を走行する光ファイバ素線の走行長を短くする例である。
【図7】図7は印刷機直前における各光ファイバ素線の配列状態を示す図である。
【図8】図8は着色機直前における各光ファイバ素線の配列状態を示す図である。
【図9】図9はテープ化装置直前における各光ファイバ素線の配列状態を示す図である。
【図10】図10はファイバ走行長を調整しなかったことにより各光ファイバ素線に印刷されたマーキングが位置ずれを起こした例を示す光ファイバテープ心線の平面図である。
【図11】図11は本発明方法により製造された光ファイバテープ心線をケーブル内に収納した光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【図12】図12はマーキングの別形態を示す光ファイバ素線の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
「本発明方法により製造される光ファイバテープ心線の構造説明」
先ず、本発明を適用した製造方法で製造される光ファイバテープ心線について説明する。図1は光ファイバテープ心線の平面図、図2は図1の光ファイバテープ心線のA−A線における拡大断面図、図3は図2の光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線を示し、(A)はその平面図、(B)はそのB−B線における拡大断面図、図4は本実施形態の光ファイバテープ心線の平面図を示し、(A)は光ファイバ素線に1つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例、(B)は光ファイバ素線に2つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例、(C)は光ファイバ素線に3つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例、(D)は光ファイバ素線に4つのマーキングを所定ピッチで繰り返し印刷した例を示す。
【0018】
光ファイバテープ心線1は、図1及び図2に示すように、複数本の光ファイバ素線2(2A〜2D)を一列に接して並列配置し、これら光ファイバ素線2を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層3を形成することで構成されている。
【0019】
光ファイバ素線2は、図3に示すように、中心に設けられた石英ガラスファイバ4と、この石英ガラスファイバ4の周囲に紫外線硬化型樹脂を被覆して形成された樹脂被覆層5と、光ファイバテープ心線1同士を識別するためのマーキング6と、各光ファイバ心線2A〜2D同士を区別するための半透明な着色層7とからなる。
【0020】
マーキング6は、図3に示すように、光ファイバ素線2の長手方向に幅Wで樹脂被覆層5を周方向にほぼ一周するように帯状をなすマークとして印刷されている。この帯状をなす1つのマーキング6は、光ファイバ素線長手方向に所定ピッチPで等間隔に連続して設けられている。光ファイバ素線自体が透明であり、かつマーキング6を含めて樹脂被覆層5全体を被覆する着色層7は、半透明とされているため、この最外被層としての着色層7からその下に設けられたマーキング6を識別することができる。着色層7は、各光ファイバ素線2A〜2D毎に異なる色に着色されており、各光ファイバ素線2A〜2D同士を識別するための指標として機能する。
【0021】
図1の光ファイバテープ心線1では、各光ファイバ素線2A〜2Dに設けられたマーキング6は、光ファイバテープ心線長手方向において全て同一位置とされている。言い換えれば、各光ファイバ素線2A〜2Dに設けられたマーキング6は、光ファイバテープ心線1の幅方向において同一位置に全て設けられている。また、このマーキング6は、光ファイバテープ心線1の長手方向に所定ピッチPで連続して設けられている。
【0022】
図4は光ファイバ素線2に設けたマーキング6の種類により、各光ファイバテープ心線1(1A〜1D)を識別するようにした一例を示している。図4(A)の光ファイバテープ心線1Aでは、帯状をなす1つのマーキング6を光ファイバ素線長手方向に所定ピッチで等間隔に連続して設けている。図4(B)の光ファイバテープ心線1Bでは、2つのマーキング6を光ファイバ素線長手方向に所定ピッチで等間隔で連続して設けている。図4(C)の光ファイバテープ心線1Cでは、3つのマーキング6を光ファイバ素線長手方向に所定ピッチで等間隔で連続して設けている。図4(D)の光ファイバテープ心線1Dでは、4つのマーキング6を光ファイバ素線長手方向に所定ピッチで等間隔で連続して設けている。
【0023】
このように、各光ファイバテープ心線1A〜1Dは、異なるパターンとされたマーキング6が識別マークとなるため、目視によりそれぞれの光ファイバテープ心線1A〜1Dを判別することができる。前記マーキング6は、その上にテープ化層3で覆われているが、当該テープ化層3は無色透明な樹脂であるためこのテープ化層3を介して認識することができる。また、前記した各光ファイバテープ心線1A〜1Dをそれぞれ単心分離して特定の色の光ファイバ素線2を取り出した場合、その光ファイバ素線2に設けられたマーキング6の数を見ることで、どの光ファイバテープ心線1A〜1Dに属している光ファイバ素線2であるかを簡単に認識することができる。例えば、単心分離した1本の光ファイバ素線2に設けられたマーキング6の数が3本の場合は、光ファイバテープ心線1Cに属するものであると直ちに判る。
【0024】
「光ファイバテープ心線を製造する製造装置の構造説明」
次に、本発明の光ファイバテープ心線を製造する製造装置について説明する。図5は本実施形態の光ファイバテープ心線の製造装置を示す概略平面図である。本実施形態の製造装置は、図5に示すように、複数本の各光ファイバ素線2(2A〜2D)にマーキング6を印刷する印刷機8(8A〜8D)と、マーキング6された各光ファイバ素線2A〜2Dに異なる色の半透明な着色層7を形成する着色機9と、着色層7を硬化させる着色層硬化装置10と、光ファイバ素線2A〜2Dの複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化層3を形成するテープ化装置11と、テープ化層3を硬化させるテープ化層硬化装置12と、印刷機8からテープ化装置11間を走行する各光ファイバ素線2A〜2Dの走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整装置13とを有している。
【0025】
また、この製造装置では、テープ化装置直前又は直後の各光ファイバ素線2A〜2Dに印刷されたマーキング6の位置を計測するマーキング位置計測機14と、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量を求めてその相対的位置ずれ量に基づいて全ての光ファイバ素線2の前記印刷機8からテープ化装置11間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整装置13を動作させる制御部15とを有している。
【0026】
前記製造装置では、図5に向かって最も右側に配置される印刷機8を光ファイバ素線2のファイバ送出し側とし、最も左側に配置されるテープ化層硬化装置12をテープ巻取り側としたときに、光ファイバ素線2がファイバ送出し側からテープ巻取り側へ向かって矢印Yで示す向きに走行する。この矢印Yの向きをファイバ走行方向とし、ファイバ送出し側に配置される印刷機8に対してテープ巻取り側に配置される着色機9を前方にある装置構成部品と定義する。前記光ファイバ心線2の走行経路には、ファイバ送出し側からテープ巻取り側へ向かって順次、印刷機8、ファイバ走行長調整装置13、着色機9、着色層硬化装置10、マーキング位置計測機14、テープ化装置11、テープ化層硬化装置12が配置されている。
【0027】
なお、本実施形態の製造装置では、光ファイバ素線2(2A〜2D)を印刷機8へ送り出す送出装置(図示省略)と、テープ化層硬化装置12で硬化されてテープ化された光ファイバテープ心線1を最終的に巻き取る巻取装置(図示省略)とが設けられている。
【0028】
光ファイバテープ心線1を製造するに際しては、テープ化装置11でテープ化層3を形成するテープ化層形成工程では、製造する光ファイバテープ心線1を高密度にケーブル化する必要があること及びテープ化された状態で一括被覆できるようにすること等により、各光ファイバ素線2A〜2Bを接触又は接近させる必要がある。例えば、一般的に使用される紫外線硬化型樹脂でコーティングされた直径250μmの光ファイバ素線では、隣接する光ファイバ素線間隔は0〜125μm程度とされる。
【0029】
この一方、テープ化装置11で行うテープ化層形成工程の前工程である着色機9で各光ファイバ素線2A〜2Dに着色層7を形成する着色層形成工程及び着色層硬化装置10で着色層7を硬化させる着色層硬化工程では、以下の理由によりテープ化層形成工程における、接触又は接近した光ファイバ素線2A〜2Dの配列とすることはできない。この着色層形成工程でテープ化層形成工程と同じ配列とした場合、着色層硬化装置10で着色層7に紫外線を照射した場合、紫外線が照射されない部位が生じたり、ファイバ断面の円周上における特定部位の紫外線照射量が少なくなる等して硬化不良が発生し、色抜け等の識別不良、付着樹脂の不均一性による光ファイバの伝送損失への影響が発生する。そのため、着色層硬化装置10内では、各光ファイバ素線2A〜2D間の距離を、テープ化装置直前状態における各光ファイバ素線2A〜2D間距離よりも広くする必要がある。
【0030】
また、着色層形成工程でテープ化層形成工程と同じ配列とした場合、未硬化の着色層形成用の樹脂が付着した光ファイバ素線2A〜2D同士が一体化してしまう。このため、光ファイバテープ心線1の有効な機能の一つである、テープ化層3を除去した際に光ファイバ素線2A〜2Dを単心で取り扱うことができる機能を損ねてしまう。また、各光ファイバ素線2A〜2Dの間隔が0〜125μmと非常に狭い場合、製造時の機械振動等による線ぶれや帯電の影響等により長手方向の一部若しくは全長で隣接する光ファイバ心線2A〜2D同士が接触してしまう。
【0031】
また、印刷機8でマーキング6を形成する印刷工程では、全ての光ファイバ素線2A〜2Dに同一位置で同一タイミングにて印刷したとしても、印字ヘッドのあおり(傾き)や各印刷機8の印字ヘッド位置等の誤差により、各光ファイバ素線2A〜2Dに印刷されるマーキング6位置にずれが生じる。
【0032】
以上のように、各工程ではそれぞれの工程に適した光ファイバ素線2A〜2Dの配列間隔が必要であるため、前記したように各光ファイバ素線2A〜2Dに各印刷機8A〜8Dで同時にマーキング6をしても、各印刷機8A〜8Dからテープ化装置11間の走行長が各光ファイバ素線2A〜2D毎に異なることにより、テープ化装置11直前では各光ファイバ素線2A〜2Bのマーキング位置が光ファイバテープ心線長手方向でずれる。このずれを無くすためには、テープ化装置11の直前で各光ファイバ素線2A〜2Dのマーキング位置を全て一致させる必要があり、その解決手段としてファイバ走行長調整装置13を設けている。このファイバ走行長調整装置13の構成については、図6を参照して後述する。
【0033】
送出装置は、各光ファイバ素線2A〜2Dを周面に巻き付ける送出ドラムを有している。この送出ドラムは、光ファイバ素線の数に応じて配置されている。本実施形態では、4本の光ファイバ素線2A〜2Dを一列に配列した光ファイバテープ心線1を製造することから、4つの送出ドラムを配置している。送出ドラムの周面に巻き付けられる光ファイバ素線2A〜2Dは、石英ガラスファイバ4を樹脂で被覆した樹脂被覆層5を有した構造である。
【0034】
印刷機8A〜8Bは、各光ファイバ素線2A〜2D毎にそれぞれ独立して配置されている。この印刷機8A〜8Dでは、送出装置から送り出されて巻取装置へと走行する光ファイバ素線2A〜2Dに対して、光ファイバ素線長手方向の一部に前記した帯状のマーキング6を印刷する。印刷機8の種類としては、例えばインクジェット型の印刷機が使用されるが、これに限定されない。また、図5では、各光ファイバ素線2A〜2D毎に独立した印刷機8A〜8Dを使用しているが、一つの機器本体とした印刷機で各光ファイバ素線2A〜2Dにマーキング6を印刷するようにしてもよい。
【0035】
着色機9は、前記印刷機8のファイバ走行方向前方に設けられている。この着色機9は、共通する筐体を有し、各光ファイバ素線2A〜2Dに、各光ファイバ素線2A〜2D毎に異なる色の半透明な着色層7を塗布する。着色材には、紫外線硬化型樹脂が使用される。例えば、4本の光ファイバ素線2A〜2Dは、それぞれ青、白、黄、グレーなどに着色される。この着色機9では、各印刷機8A〜8Dでマーキング6を印刷したときの光ファイバ素線2A〜2Dの配列ピッチよりも狭められた配列ピッチで形成された各貫通孔内に、各光ファイバ素線2A〜2Dを走行させて紫外線硬化型樹脂を塗布する。
【0036】
着色層硬化装置10は、前記着色機9のファイバ走行方向前方に設けられている。この着色層硬化装置10では、着色機9で塗布された紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射し硬化させて着色層7を形成する。
【0037】
テープ化装置11は、前記着色層硬化装置10のファイバ走行方向前方に設けられている。このテープ化装置11では、光ファイバ素線2A〜2Dの複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層3を形成する。テープ化装置11の直前では、着色層硬化装置10から出る各光ファイバ素線2A〜2Dを集線してそれらの間隔を狭めて接触又は接近させるようにする。無色透明な樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が使用される。このテープ化装置11では、接触又は接近して一列に配列した光ファイバ素線4A〜4Dを貫通孔に走行させ、その貫通孔内に供給される樹脂を塗布することでテープ化層3を形成する。
【0038】
テープ化層硬化装置12は、テープ化装置11のファイバ走行方向前方に設けられている。このテープ化層硬化装置12では、テープ化装置11で塗布された樹脂に紫外線を照射し硬化させてテープ化層3を形成する。この工程を終了することで、図1及び図2に示した本実施形態の光ファイバテープ心線1が得られる。
【0039】
ファイバ走行長調整装置13は、印刷機8と着色機9との間に設けられている。このファイバ走行長調整装置13は、図6に示すように、光ファイバ素線2A〜2Dの走行方向に配列された3つのローラ16A、16B、16Cからなる。そして、このファイバ走行長調整装置13では、中央のローラ16Bを残り2つのローラ16A、16Cに対して接近又は離れる方向に移動してそれらの高さHが可変できる構造とされている。例えば、基台に固定された2つのローラ16A、16Cに対して中央のローラ16Bを、図6(A)に示すように離れる方向に移動させて高さHを高くすると、光ファイバ素線2A〜2Dの走行長を長くすることができる。一方、2つのローラ16A、16Cに対して中央のローラ16Bを、図6(B)に示すように接近する方向に移動させて高さHを低くすると、光ファイバ素線2A〜2Dの走行長を短くすることができる。なお、ファイバ走行長調整装置13は、各光ファイバ素線2A〜2Dに対してそれぞれ設けられている。
【0040】
マーキング位置計測機14は、着色層硬化装置10とテープ化装置11の間であってテープ化装置11の直前位置に設けられている。このマーキング位置計測機14は、各光ファイバ素線2A〜2Dに印刷されたマーキング6の位置を画像センサーで検出して数値化する。なお、このマーキング位置計測機14は、テープ化装置11の直後に配置してもよい。
【0041】
制御部15は、マーキング位置計測機14で計測された各光ファイバ素線2A〜2Dのマーキング位置の相対的位置ずれ量に基づいて全ての光ファイバ素線2A〜2Dの前記印刷機8からテープ化装置11間の走行長を同一長さに調整するようにファイバ走行長調整装置13を動作させる。具体的には、4本の光ファイバ素線2A〜2Dに設けられたマーキング6の位置が揃っていない場合、マーキング6の位置がずれている光ファイバ素線2A〜2Dに対応するファイバ走行長調整装置13の中央のローラ16A〜16Cの高さHを調整して、前記印刷機8からテープ化装置11間の光ファイバ素線2A〜2Dの走行長を同一にする。制御部15では、中央のローラ16Bをステッピングモータで駆動自在とすることで、精度良くローラ16Bの高さ位置を調整することが可能となる。
【0042】
[光ファイバテープ心線の製造方法説明]
次に、本実施形態の光ファイバテープ心線の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、光ファイバ素線2(2A〜2D)の走行途中に設けた印刷機8((A〜8D)で各光ファイバ素線2に、光ファイバテープ心線同士を識別するためのマーキング6を印刷する印刷工程と、着色機9で各光ファイバ素線毎に異なる色の半透明な着色層7を形成する着色層形成工程と、着色層硬化装置10で着色層7を硬化させる着色層硬化工程と、テープ化装置11で光ファイバ素線2の複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層3を形成するテープ化層形成工程と、テープ化層硬化装置12でテープ化層3を硬化させるテープ化層硬化工程と、印刷機8からテープ化装置11間を走行する各光ファイバ素線2の走行長を調整するファイバ走行長調整装置13で、全ての光ファイバ素線2の前記印刷機8から前記テープ化装置11間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整工程と、テープ化装置直前又は直後の各光ファイバ素線に印刷されたマーキングの位置を計測し、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量を求め、その相対的位置ずれ量に基づいて前記ファイバ走行長調整装置を動作させて全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長補正工程とを備えている。
【0043】
以下に、光ファイバテープ心線1を製造する工程順に、各工程を具体的に説明する。先ず、送出ドラムから各光ファイバ心線2(2A〜2D)を送り出す。送り出された各光ファイバ心線2は、それぞれに対応する各印刷機8(8A〜8D)へと送られる。印刷機8では、図7に示すように、各光ファイバ素線2A〜2Dの配置間隔は広くされている。例えば、4本の光ファイバ素線2A〜2Dは、横一列に配置され、図7に向かって最も左側の光ファイバ素線2Aから最も右側の光ファイバ心線2Dにおける隣り合う各距離L1、L2、L3、L4をそれぞれ50mm、25mm、25mm、50mmとした。
【0044】
印刷工程では、同一位置に配列された各印刷機8(8A〜8D)によって各光ファイバ素線2A〜2D毎に、異なる色の半透明なマーキング6を印刷して形成する。マーキング6は、図3で示したように、光ファイバ素線長手方向の一部に帯状をなすマークとして印刷される。この帯状をなすマーキング6は、光ファイバ素線長手方向に所定ピッチPで等間隔に連続して設けられる。
【0045】
各光ファイバ素線2A〜2Dにマーキング6が形成されると、光ファイバ素線2A〜2Dは、着色機9へと送られ、ここで着色工程が行われる。着色工程の直前では、各光ファイバ素線2A〜2Dは、図8に示すように、正方形の各四辺の四隅にそれぞれ配置される。例えば、正方形の中心を通る2本の直交する線をX軸、Y軸とした時に、各光ファイバ素線2A〜2DのX軸、Y軸における対向距離を、それぞれ10mmとした。
【0046】
着色工程では、図8の配置状態とされた各光ファイバ素線2A〜2Dに対して、それぞれ異なる色の半透明な着色層7をその長手方向に連続して形成する。着色材には、紫外線硬化型樹脂が使用される。例えば、4本の光ファイバ素線2A〜2Dは、それぞれ青、白、黄、グレーに着色される。
【0047】
各光ファイバ素線2A〜2Dに着色層7が形成されると、光ファイバ素線2A〜2Dは、着色層硬化装置10へと送られ、ここで着色層硬化工程が行われる。着色層硬化工程では、各光ファイバ素線2A〜2Dに紫外線を照射することで塗布されて未硬化状態の紫外線硬化樹脂が硬化される。これにより、光ファイバ素線2A〜2Dには、図3に示すように硬化した着色層7が形成される。
【0048】
各光ファイバ素線2A〜2Dに塗布された紫外線硬化樹脂が硬化して着色層7が形成されると、各光ファイバ素線2A〜2Dは、互いに接近するように集線される。例えば、テープ化装置11の直前では、各光ファイバ素線2A〜2Dは、図9に示すように、2本の直交する線をX軸、Y軸とした時に、X軸上にそれぞれ接触して配置される。各光ファイバ素線2A〜2Dが集線されて横一列に配列されると、テープ化装置11へ送られ、ここでテープ化層形成工程が行われる。
【0049】
テープ化層形成工程では、図8の配置状態とされた各光ファイバ素線2A〜2Dに対して、テープ化装置11により無色透明な樹脂が一括被覆されてテープ化される。無色透明な樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が使用される。このテープ化装置11では、接触して一列に配列した光ファイバ素線4A〜4Dに紫外線硬化型樹脂をその長手方向に沿って連続して形成する。
【0050】
テープ化層3が形成されると、テープ化された光ファイバ素線2A〜2Dは、テープ化層硬化装置12へと送られ、ここでテープ化層硬化工程が行われる。テープ化層硬化工程では、テープ化装置11で塗布された樹脂に紫外線を照射し硬化させてテープ化層3を形成する。これにより、図1及び図2に示した光ファイバテープ心線1が製造される。
【0051】
例えば、図10に示すように、各マーキング6の位置が図1に示すように同一位置に揃っていない場合は、ファイバ走行長調整装置13で全ての光ファイバ素線2A〜2Dの印刷機8A〜8Dからテープ化装置11間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整工程を行う。ファイバ走行長調整工程では、各光ファイバ素線2A〜2Dに対応するファイバ走行長調整装置13を構成する2つのローラ16A、16Cに対して中央のローラ16Bを、図6に示すように接近する方向又は離れる方向に移動させてそれらの相対的高さHを変える。これにより、印刷機8からテープ化装置11間を走行する各光ファイバ素線2A〜2Dの走行長を長くしたり短くしたりすることができる。
【0052】
ファイバ走行長調整工程では、テープ化装置11直前又は直後の各光ファイバ素線2A〜2Dに印刷されたマーキング6の位置をマーキング位置計測機14で計測し、計測して求められた各マーキング6位置の相対的位置ずれ量を制御部15で求める。そして、制御部15では、その相対的位置ずれ量に基づいて前記ファイバ走行長調整装置13を動作させて全ての光ファイバ素線2A〜2Dの前記印刷機8から前記テープ化装置11間の走行長を同一長さに調整するように前記中央のローラ16Bの高さ位置を調整する。例えば、4本のうち中央2本の光ファイバ素線2B、2Cと両脇2本の光ファイバ素線2A、2Dのそれぞれに設けられたマーキング6位置にずれがある場合、ずれが生じている光ファイバ素線2B、Cに対応して設けられたファイバ走行長調整装置13の中央のローラ16Bの高さを高くして全ての光ファイバ素線2A〜2Dの前記印刷機8からテープ化装置11間の走行長を同一長さにする。
【0053】
実際に、図5に示した製造装置を使用して図1及び図2に示す光ファイバテープ心線1を製造した。4本の光ファイバ素線2A〜2Dを横一列に配列した時に、最も端の光ファイバ素線2Aを1番、その隣の光ファイバ素線2Bを2番、更にその隣の光ファイバ素線2Cを3番、最も離れた光ファイバ素線2Dを4番とする。そして、図5に示すように、印刷機8の直前位置からテープ化装置11の入口直前位置までの距離をLとした時に、各光ファイバ素線2A〜2Dの経路長を計算して求めた。その経路長の計算値は、1番及び4番の光ファイバ素線2A、2Dが5108.2mm、2番及び3番の光ファイバ素線2B、2Cが5100.8mmであった。
【0054】
実際に作成された光ファイバテープ心線1に施されるマーキング6は、1番の光ファイバ素線2Aを基準に2番及び3番の光ファイバ素線2B、2Cが+7mm、4番の光ファイバ素線2Dが+0.1mmであり、また、各マーキング6のずれ量は前記した経路長の計算値とほぼ一致した。この各マーキング6のずれ量を基にして、ファイバ走行長調整装置13の中央のローラ16Bの高さを調整した。ここでは、2番及び3番の光ファイバ素線2B、2Cに対応するファイバ走行長調整装置13の中央のローラ16Bの高さを、1番及び4番の光ファイバ素線2A、2Dに対応するファイバ走行長調整装置13の中央のローラ16Bの高さに対して3.5mm低くした。その結果、各光ファイバ素線2A〜2Dに形成されるマーキング6は、1番の光ファイバ素線2Aを基準として2番の光ファイバ素線2Bが+0.2mm、3番の光ファイバ素線2Cが+0.1mm、4番の光ファイバ素線2Dが+0.1mmであった。したがって、各光ファイバ素線2A〜2Dに形成される全てのマーキング6の位置を同一位置とすることができる。
【0055】
「光ファイバケーブルの構造説明」
本発明製造方法により製造された光ファイバテープ心線1は、例えば図11に示すように、複数本の光ファイバテープ心線1の集合体の外周に熱硬化性樹脂をチューブ状に押し出して成形し、成形されたチューブ16の外周をポリエチレンなどの外被17により被覆したシース18で覆ったケーブル構造とされる。図11の光ファイバケーブル19は、ケーブル内、すなわちシース18の中心に複数本の光ファイバテープ心線1を収納配置させた、いわゆるセンターチューブ型光ファイバケーブル構造である。この例では、センターチューブ型光ファイバケーブルとしたが、本発明製造方法により製造される光ファイバテープ心線1を収納するケーブル構造に関しては、種類を問わない。
【0056】
例えば、図11に示す光ファイバケーブル19において、例えばシース18を引き裂いて内部に収納された複数本ある光ファイバテープ心線1から特定の光ファイバテープ心線1を取り出す場合、無色透明なテープ化層3を通してマーキング6の種類を識別することができることから、特定の光ファイバテープ心線1を簡単に見つけることができる。そして、特定の光ファイバテープ心線1をシース18外へと取り出した後、他の光ファイバ素線2と分離し、その分離した光ファイバ素線2のマーキング6を見ることで、どの光ファイバテープ心線1に属する光ファイバ心線2であるかを認識することができる。
【0057】
「本実施形態の効果」
本実施形態によれば、ファイバ走行長調整工程において印刷機からテープ化装置間を走行する各光ファイバ素線の走行長を調整するファイバ走行長調整装置で、全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整すれば、各光ファイバ素線に対して印刷したマーキングの位置を、テープ化装置の直前位置で、全ての光ファイバ素線に対して該光ファイバ素線長手方向において同一位置に揃えることができる。その後、テープ化層形成工程でテープ化すれば、各光ファイバ素線の各マーキング位置が全て一致した光ファイバテープ心線を製造することができる。従って、光ファイバテープ心線から各光ファイバ素線に単心分離しても、マーキングの種類を見るだけで、単心分離した光ファイバ素線がどの光ファイバテープ心線に属するものであるかを簡単に認識することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、ファイバ走行長補正工程を行うことで、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量に基づいた各光ファイバ素線の印刷機からテープ化装置間の走行長を、全ての光ファイバ素線で同一長さとすることができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、ファイバ走行長調整装置を設けたことで、例え各光ファイバ素線に形成したマーキング位置にずれが生じても、そのずれ量に応じて全てのマーキング位置を同一位置にすることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、製造装置にマーキング位置計測機と制御部を設けたので、このマーキング位置計測機で求めた各光ファイバ素線のマーキング位置における相対的位置ずれ量に基づいて制御部がファイバ走行長調整装置を動作させるので、全ての光ファイバ素線の印刷機からテープ化装置間の走行長を同一長さにすることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、本発明製造方法で製造された光ファイバテープ心線では、テープ化層を剥がしても各光ファイバ素線に印刷されたマーキングを見ることで、どの光ファイバテープ心線に属したものであるかを目視により簡単に識別することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、本発明製造方法で製造された光ファイバテープ心線の複数枚をケーブル内に収納した光ファイバケーブルとした場合、ケーブル内から特定の光ファイバテープ心線を取り出す際にマーキングの種類を見ることで取り出すべき光ファイバテープ心線を容易に見分けることができ、また、取り出した光ファイバテープ心線を単心分離してもその単心分離した光ファイバ素線のマーキングを見ることでどの光ファイバテープ心線に属するものであるかを目視にて直ちに識別することができる。
【0063】
「その他の実施形態」
前記した図3では、マーキング6を、樹脂被覆層5の周方向にほぼ一周するように帯状をなすマークとして印刷したが、一周ではなく、図12に示すように樹脂被覆層5の周方向の一部だけにマーキング6を設けるようにしても前述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。マーキング6の長さは、石英ガラスファイバ4の直径と同一長さである、樹脂被覆層5の周長の約1/6以上であることが好ましい。1/6以上とすることで、マーキング6を目視で認識し易くなる。なお、図12では、一部に設けたマーキング6を明瞭に表すため、石英ガラスファイバ4の直径と同一尺度で表示していない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、各光ファイバ素線に単心分離した場合でもどの光ファイバテープ心線に属するものであるかを判別することのできる光ファイバテープ心線の製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…光ファイバテープ心線
2(2A〜2D)…光ファイバ素線
3…テープ化層
4…石英ガラスファイバ
5…樹脂被覆層
6…マーキング
7…着色層
8(8A〜8D)…印刷機
9…着色機
10…着色層硬化装置
11…テープ化装置
12…テープ化層硬化装置
13…ファイバ走行長調整装置
14…マーキング位置計測機
15…制御部
18…シース
19…光ファイバケーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスファイバを樹脂で被覆した樹脂被覆層を有した光ファイバ素線の複数本を走行させ、その走行途中に設けた印刷機で各光ファイバ素線に、光ファイバテープ心線同士を識別するためのマーキングを光ファイバ素線長手方向の一部に印刷する印刷工程と、
前記印刷工程で印刷された光ファイバ素線に、前記印刷機のファイバ走行方向前方に設けた着色機で各光ファイバ素線毎に異なる色の半透明な着色層を形成する着色層形成工程と、
前記着色機のファイバ走行方向前方に設けた着色層硬化装置で、前記着色層を硬化させる着色層硬化工程と、
前記着色層硬化装置のファイバ走行方向前方に設けたテープ化装置で、前記光ファイバ素線の複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層を形成するテープ化層形成工程と、
前記テープ化装置のファイバ走行方向前方に設けたテープ化層硬化装置で、前記テープ化層を硬化させるテープ化層硬化工程と、
前記印刷機から前記テープ化装置間を走行する各光ファイバ素線の走行長を調整するファイバ走行長調整装置で、全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整工程とを有した
ことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバテープ心線の製造方法であって、
前記テープ化装置直前又は直後の各光ファイバ素線に印刷されたマーキングの位置を計測し、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量を求め、その相対的位置ずれ量に基づいて前記ファイバ走行長調整装置を動作させて全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長補正工程を有する
ことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項3】
石英ガラスファイバを樹脂で被覆した樹脂被覆層を有した光ファイバ素線の複数本を走行させ、その走行途中で各光ファイバ素線に、光ファイバテープ心線同士を識別するためのマーキングを光ファイバ素線長手方向の一部に印刷する印刷機と、
前記マーキングされた光ファイバ素線に、各光ファイバ素線毎に異なる色の半透明な着色層を形成する着色機と、
前記着色層を硬化させる着色層硬化装置と、
前記光ファイバ素線の複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層を形成するテープ化装置と、
前記テープ化層を硬化させるテープ化層硬化装置と、
前記印刷機から前記テープ化装置間を走行する各光ファイバ素線の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整装置とを有した
ことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項4】
請求項3記載の光ファイバテープ心線の製造装置であって、
前記テープ化装置直前又は直後の各光ファイバ素線に印刷されたマーキングの位置を計測するマーキング位置計測機と、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量を求めてその相対的位置ずれ量に基づいて全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するように前記ファイバ走行長調整装置を動作させる制御部とを有する
ことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載の製造方法で製造されたことを特徴とする光ファイバテープ心線。
【請求項6】
請求項5記載の光ファイバテープ心線の複数枚をケーブル内に収納して構成したことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項1】
石英ガラスファイバを樹脂で被覆した樹脂被覆層を有した光ファイバ素線の複数本を走行させ、その走行途中に設けた印刷機で各光ファイバ素線に、光ファイバテープ心線同士を識別するためのマーキングを光ファイバ素線長手方向の一部に印刷する印刷工程と、
前記印刷工程で印刷された光ファイバ素線に、前記印刷機のファイバ走行方向前方に設けた着色機で各光ファイバ素線毎に異なる色の半透明な着色層を形成する着色層形成工程と、
前記着色機のファイバ走行方向前方に設けた着色層硬化装置で、前記着色層を硬化させる着色層硬化工程と、
前記着色層硬化装置のファイバ走行方向前方に設けたテープ化装置で、前記光ファイバ素線の複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層を形成するテープ化層形成工程と、
前記テープ化装置のファイバ走行方向前方に設けたテープ化層硬化装置で、前記テープ化層を硬化させるテープ化層硬化工程と、
前記印刷機から前記テープ化装置間を走行する各光ファイバ素線の走行長を調整するファイバ走行長調整装置で、全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整工程とを有した
ことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバテープ心線の製造方法であって、
前記テープ化装置直前又は直後の各光ファイバ素線に印刷されたマーキングの位置を計測し、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量を求め、その相対的位置ずれ量に基づいて前記ファイバ走行長調整装置を動作させて全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長補正工程を有する
ことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項3】
石英ガラスファイバを樹脂で被覆した樹脂被覆層を有した光ファイバ素線の複数本を走行させ、その走行途中で各光ファイバ素線に、光ファイバテープ心線同士を識別するためのマーキングを光ファイバ素線長手方向の一部に印刷する印刷機と、
前記マーキングされた光ファイバ素線に、各光ファイバ素線毎に異なる色の半透明な着色層を形成する着色機と、
前記着色層を硬化させる着色層硬化装置と、
前記光ファイバ素線の複数本を無色透明な樹脂で一括被覆しテープ化してテープ化層を形成するテープ化装置と、
前記テープ化層を硬化させるテープ化層硬化装置と、
前記印刷機から前記テープ化装置間を走行する各光ファイバ素線の走行長を同一長さに調整するファイバ走行長調整装置とを有した
ことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項4】
請求項3記載の光ファイバテープ心線の製造装置であって、
前記テープ化装置直前又は直後の各光ファイバ素線に印刷されたマーキングの位置を計測するマーキング位置計測機と、計測して求められた各マーキング位置の相対的位置ずれ量を求めてその相対的位置ずれ量に基づいて全ての光ファイバ素線の前記印刷機から前記テープ化装置間の走行長を同一長さに調整するように前記ファイバ走行長調整装置を動作させる制御部とを有する
ことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載の製造方法で製造されたことを特徴とする光ファイバテープ心線。
【請求項6】
請求項5記載の光ファイバテープ心線の複数枚をケーブル内に収納して構成したことを特徴とする光ファイバケーブル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−173603(P2012−173603A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36866(P2011−36866)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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