説明

光ファイバーのための屈曲防止用チューブ

【課題】 線状部材(10)は第1の層(30)と第2の層(40)を備える。第2の層は第1の層周囲に配される。第2の層は一連の環状溝部(60)を備える。第1の層に用いられる材料に比して、第2の層に用いられる材料は、十分に高い強度を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル又はチューブなどの線状部材に関する。本発明は特に、外側表面に一連の環状溝部が形成されるように加工された線状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第765,214号は、スムーズ・ボア・チューブの外側壁面に一連の平行な溝を形成するために好適に使用可能な装置を開示している。この装置は3つのローラーを備え、チューブがこの装置を通過するとき、これらローラーはチューブの周囲に配される。これらローラーのうち1若しくはそれ以上のローラーには溝が設けられており、これら溝が設けられたローラーの回転により、チューブの外側表面に一連の溝が形成される。
【0003】
欧州特許第765,214号に開示される装置の1つの制約は、ローラーが三角形の配置を取ることから、チューブが通過できる隙間が生じることである。このような配置によると、小さなチューブ(例えば直径3mm若しくはそれ以下のチューブ)を加工することは困難である。
【0004】
本出願人の同時係属出願である英国特許出願0421439.1号(出願日2004年9月27日)は、スムーズ・ボア・チューブの外側壁面に同様の一連の平行な溝部を形成可能な装置を開示している。この装置は2つの対向するローラーを備える。これらローラーのうち1若しくはそれ以上に溝部を設けることが可能である。この溝部はチューブに溝部を形成することができる。これら2つのローラーの間をチューブに通過させることにより溝部の形成を行う。更に、2つの対向する位置決め手段が設けられ、これによりチューブと、対向するローラーとの相対的位置が維持される。このような配置によると、2つの対向するローラーを非常に近接させることが可能となり、小さなチューブ(例えば、直径3mm若しくはそれ以下のチューブ)に溝部を形成することができる。
容易に理解できるように、チューブの直径が小さくなるにつれて、チューブ壁面に用いられる材料の量が減少する。これにより、チューブが屈曲したときに、チューブが、チューブ内に収容された光ファイバーの光学的/機械的性能に影響を及ぼす曲げ半径まで折れ曲がる可能性が高まる。更に、環状チューブの厚さが小さくなるに連れて、チューブが十分な機械的剛性を備えて、光ファイバーに加わる衝撃と摩擦に対して適切な保護を行える可能性が低くなる。
【0005】
【特許文献1】欧州特許第765,214号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この問題に対する一つの解決法は、ヤング率の大きな材料からチューブを形成することである。しかしながら、この方法では、チューブの硬さが高まり、チューブを曲げたり操作したりすることが難しくなるという望ましくない結果を招く。内部通信ネットワークや自動車における使用などのいくつかの用途では、この作用は、不十分な衝撃保護作用と同じ程度に望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の実施形態によると、第1層と第2層を備える線状部材が提供される。第2層は第1層の周囲に設けられ、第2層は一連の環状溝部を備える。第1層は第1の材料を含み、第2層は第2の材料を含む。第1の材料と比べて、第2の材料は十分に高い強度を有する。
【0008】
本発明の第2の実施形態によると、線状部材を製造するための方法が提供される。この方法は、(a)第1層を形成する段階と、(b)第1層の周囲に第2層を形成する段階と、(c)第2層の外側表面上に一連の環状溝部を形成する段階を備える。この方法において、第1層は第1の材料を含み、第2層は第2の材料を含む。第1の材料と比べて第2の材料は十分に高い強度を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、例示のために、図面を参照しつつ本発明を説明する。
図1は、本発明に係る線状部材(10)を示す概略図である。線状部材(10)は内側層(30)と外側層(40)を備える。内側層(30)は環状の断面を有し、線状部材(10)の中心に円形チャネル(20)が形成される。外側層(40)は欧州特許第765,214号及び英国特許出願0421439.1号に係る発明にしたがって加工される。結果として外側層は複数の環状溝部(60)を備え、この環状溝部(60)が外側層のセクション(50)を分離するようになる。既に知られているように、複数の環状溝部を設けることにより、外側層のセクションが互いに対して蝶番のように動作して、所定の曲げ半径まで線状部材が容易に屈曲可能となる。しかしながら、相当に大きな力を加えなければ、この所定の曲げ半径より小さな曲げ半径まで線状部材を屈曲させることはできない。
【0010】
内側層(30)と外側層(40)は異なる特性を有する材料から形成される。外側層を形成するために用いられる材料のヤング率が、内側層を形成するために用いられる材料のヤング率よりも十分に大きくなるようにする。これら材料を慎重に選択することにより、線状部材(10)において、既知の径の小さな線状部材及びチューブに見られる欠点が解消される。
【0011】
線状部材(10)は、内側層(30)を押出し成形によりチューブ状にした後、このチューブに対して第2の押出し工程を行い、内側層(30)上に外側層(40)を形成してもよい。しかしながら、好ましくは、1回の工程で同時に内側層(30)と外側層(40)を押出し成形する方法を用いる。線状部材(10)が形成されると、環状溝部が線状部材(10)の外側層に設けられる。この環状溝部の形成は、欧州特許第765,214号及び英国特許出願0421439.1号に記載の方法を用いて行われる。外側層の厚さと、環状溝部を形成するために用いられるローラーの切り込み深さは、環状溝部が外側層の略全ての厚さにわたって延出するように選択する。結果として、外側層の隣接するセクション(50)の間に接続部分が存在しない又は非常に僅かしか存在しないこととなる。このことの利点は外側層が線状部材(10)の屈曲特性に対して及ぼす影響が制限されることである。或いは、環状溝部は、部分的に内側層(30)内に延出していてもよい。
【0012】
図2は、本発明の第2実施形態に係る線状部材(10’)を示す概略図である。線状部材(10’)と、図1を参照しつつ上記で説明した線状部材(10)の間の主要な相違点は、線状部材(10’)が、円形チャネル(20)の代わりに光ファイバー(20’)を備えることである。線状部材(10’)が形成されるとき、内側層(30)と外側層(40)が光ファイバー上に同時に押出し成形される。これにより、線状部材(10)に比して、線状部材(10’)の断面積は小さいものとなる。線状部材(10)においては、環状チャネル(20)内に光ファイバーが挿入されている。その他の構造と、この構造を形成する方法は、図1を参照しつつ上記で説明した実施形態と同様である。
【0013】
図1及び図2の概略図における寸法は実際の寸法とは異なり、本発明の説明に好適な大きさで示されている。典型的には、線状部材(10)の外径は、2mmから3mmであるが、これより小さくともよい。特定の用途では、例えば、直径数百ミクロン程度に小さくても、或いはこの範囲より大きくてもよい。好ましくは内側層(30)の半径方向の厚さは、外側層(40)の半径方向の厚さより大きいものとする。内側層(30)の半径方向の厚さは、外側層(40)の半径方向の厚さの4倍以下、好ましくは2倍とする。
【0014】
線状部材(10)は任意の光ファイバーとともに使用可能である。光ファイバーは、プラスチック(例えば、POF MOST、POF IDB、PCS、ETC)又はシリカ(多モード若しくは単一モード)のいずれから形成されるものであってもよい。容易に理解できることであるが、線状部材(10)の直径は、線状部材(10)内に収容される光ファイバーの直径により決定される。
【0015】
外側層(40)の形成に、より硬く剛性の高い材料を用いると、破砕や衝撃による損傷に対する必要な抵抗性が得られる。加えて、より硬い外側層(40)を用いると、所定の曲げ半径を超えてチューブが屈曲することに対する抵抗性が増加する。内側層(30)の形成に、より柔軟で可撓性の高い材料を用いると、衝撃が緩和されるから、線状部材(10)内に収容される光ファイバーへ衝撃が伝わることが防止される。更に、外側層(40)内に環状溝部を形成することに加えて、より柔軟な内側層(30)を用いることにより、例えばパッチ・パネルや自動車などの中に配線されるのに十分な可撓性を、線状部材が備えるようになる。内側層(30)はまた十分な引張り強度を備えなければならない。これにより、線状部材(10)に引張りひずみが加えられたとき、光ファイバーに加わるひずみが制限される。
【0016】
内側層(30)に好適な材料は、熱可塑性エラストマー(例えばナイロン)又は熱可塑性ゴムであることが分かっている。好ましくは外側層(40)は、ガラス繊維及び/又はガラス・ボールにより補強された高強度工学ポリマーまたは熱可塑性エラストマーから形成される。すぐに理解できることであるが、同様の特性を有する他の材料を用いて内側層(30)及び/又は外側層(40)を形成してもよい。
【0017】
内側層(30)及び/又は外側層(40)のいずれかを加工又は変更して、更に望ましい特性を得ることができる。このような特性は、内側層(30)を変更して、光ファイバーをチューブ内に挿入するときに生じる摩擦力を低減したり、又は内側層(30)の導電性を調節したりすることができる。導電性の調節は、例えば、チューブ内での静電気の蓄積を低減したり、チューブ内で任意の形態の端部から端部までの電気的モニタリングを行うためになされる。その他の変更として、耐火性又は毒性に関する要件を満たすために両方の層を変更することができる。外側層(40)を処理又は変更して、耐化学性を生み出してもよい。すぐに理解できることであるが、このような変更の種類や程度は、線状部材(10)を用いる用途にしたがって決定される。
【0018】
本発明の更に別の実施形態において、線状部材(10)は同一の材料から同時に押出し成形された第1層及び第2層を備える。これらの第1層及び第2層には異なる添加物が用いられており、これらの層は異なる特性を有する。例えば、第1層はPBT(ポリブチレンテレフタレート)、可塑剤、及び摩擦低減剤を含むことができる。このとき第2層はPBTと、ガラス製ビーズ及び/又はガラス繊維を含むことができる。これにより外側層が補強される。内側層(30)と外側層(40)に同一の材料を用いることにより、同時押出し成形の工程を単純化できる。また、材料の特性の差異から生じる問題を略排除することができる。
【0019】
第1層と第2層の間で突然の変化が存在するように、同時押出し成形の工程を制御することができる。或いは、同時押出し成形される材料を変化させて、第2層を形成する比較的硬い材料から内側層を形成する比較的柔軟な材料まで、緩やかな変化が見られるようにすることができる。この場合、環状溝部が所定深さまで形成される。この溝部の形成後は、第2層の特性が第1層の特性に影響することはなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る線状部材を示す概略図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る線状部材を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの連続的な層を備える線状部材であって、
第1の連続的な層が前記線状部材の内側を定義し、
第2の連続的な層が前記線状部材の外側を定義し、
前記第2の層が第1の層周囲に配されるとともに一連の環状溝部を備え、
前記第1の層が第1の材料を含み、
前記第2の層が第2の材料を含み、
前記第1の材料と比して前記第2の材料が十分に高い強度を有することを特徴とする線状部材。
【請求項2】
前記第1の層が光ファイバーの周囲に配されることを特徴とする請求項1記載の線状部材。
【請求項3】
前記光ファイバーが樹脂製光ファイバーであることを特徴とする請求項2記載の線状部材。
【請求項4】
前記第1の層が環状の断面を有することにより、前記線状部材が円筒形状の空洞部を備えることを特徴とする請求項1記載の線状部材。
【請求項5】
前記第1の層の半径方向の厚さが、前記第2の層の半径方向の厚さの略2倍であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の線状部材。
【請求項6】
2つの連続的な層を備える線状部材を製造するための方法であって、前記方法が、
(a)第1の連続的な層を形成する段階と、
(b)前記第1の層の周囲に第2の連続的な層を形成する段階であって、
(i)前記第1の層が前記線状部材の内側を定義し、
(ii)前記第2の層が前記線状部材の外側を定義する段階と、
(c)前記第2の層の外側表面に一連の環状溝部を形成する段階であって、前記第1の層が第1の材料を含み、前記第2の層が第2の材料を含み、該第1の材料と比して該第2の材料が十分に高い強度を有する段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記第1の層が光ファイバーの周囲に形成されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記第1の層が環状の断面を有することにより、前記線状部材が円筒形状の空洞部を有することを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記段階(a)及び段階(b)が単一の同時押出し成形工程において行われることを特徴とする請求項6乃至8いずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−514450(P2008−514450A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532967(P2007−532967)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003683
【国際公開番号】WO2006/035206
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(504281802)ミニフレックス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】