説明

光ファイバ内視生体検査装置及び光ファイバ内視生体検査システム

【課題】 インライン構造を保持しつつ従来に比べて物理的に細くできる手段を講じ、カテーテルの一部あるいは検査用カテーテルの全体として使用するのに適し、しかも、出射光の広がり角度を大きくすることができる光ファイバ内視生体検査装置を提供する。
【解決手段】外装パイプ2は、軸の軸方向に並行な中空孔3を有する。光ファイバ4は中空孔3内に設置されている。光反射部材9は、中空孔3内に光ファイバ4の先端と間隔を空けて設けられている。光反射部材9は、光ファイバ4の先端と対向する部位に光反射面となる先端面7が形成されている。外装パイプ2は透光性の材料で形成され、中空孔3内から先端面7で反射した光を出射させ、生体組織で反射した当該光の戻り光を入射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の血管、尿管、リンパ管、腸管等を検査する光ファイバ内視生体検査装置及び光ファイバ内視生体検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ内視生体検査装置(Optical Fiber Endobioscopic Device:OFED)は血管、尿道管、リンパ管、腸管内等を直接光学的に観察し、これら生体の光反射による生体検査をするための装置として近年広く利用されつつある。
【0003】
図14、図15は、いずれも従来の光ファイバ内視生体検査装置101の先端部分の構造を示している。当該光ファイバ内視生体検査装置101は、外見上カーテルと同様の軸鞘形状を有していて、血管や尿管等にこのまま挿入される。図14の例では、光ファイバ内視生体検査装置101は軸方向に並行な中空孔111を有する軸状部材である外装パイプ112を備えていて、この中空孔111内に光ファイバ102を挿通させている。中空孔111の終端は次のような封止構造となっている。即ち、外装パイプ112の先端部はその直径が光ファイバ102の挿通部分より大きく、封止部113で封止されているのである。窓114は光ファイバ102内を伝搬する光を透過するための窓であって光ファイバ内視生体検査装置101と外部とを隔絶している。図15の例では、光ファイバ内視生体検査装置101は、軸方向に並行な中空孔121を有する軸状部材である封じ切りパイプ122を備えていて、この中空孔121の末端には末端保持チップ123が設けられ、中空孔121内に光ファイバ102を挿通させている。中空孔121の直径が軸方向に一様であるため、中空孔121内には光ファイバ102の抜けを防止する保持リング124が設けられている。窓125は光ファイバ102内を伝搬する光を透過するための窓であって光ファイバ内視生体検査装置101と外部とを隔絶している。
【0004】
これらの光ファイバ内視生体検査装置101で利用されている光ファイバ102は、半球末端反射光ファイバ(Semispherical Endo-reflector optical fiber:SEROF)108と呼ばれ、光ファイバ102の先端に半球体107が形成され、この半球体107は半球分割平面103を有している(下記の特許文献参照)。この半球末端反射光ファイバ108は次のように製造される。すなわち、一本の光ファイバ102の先端を加熱溶融し、溶融ガラスの表面張力により球状体を形成する。そして、その冷却後、当該球状体を研削と研磨をすることにより半球体107を形成するものである。この半球体107は、光ファイバ102の光学延長線が研削・研磨中にその研削・研磨平面の中心に一致するように作製する。このような工程を経て半球末端反射光ファイバ108は製作される。その結果、光ファイバ102の基端側に繋がれた図示しない光源から発し、光ファイバ102を伝搬してきた光に対して、半球分割平面103はケラレのない反射面として働く。その場合の光の反射は、光ファイバ102の屈折率が高い場合には全反射となる。この半球分割平面103は最終的には光学研磨をして反射鏡として利用する。光ファイバ102の光学延長線は半球分割平面103に対してほぼ45度の角度を保っている。その結果、光ファイバ102を伝搬してきた光は半球分割平面103でほぼ直角方向に反射されて出射光104となって検査対象に向かう。光ファイバ内視生体検査装置101は、血管等生体内に挿入されるので、当該出射光104は血管壁等の生体組織105に照射されそこで反射され、半球分割平面103、光ファイバ102を介して逆方向に伝搬する戻り光106となる。この戻り光106は生体組織105の表面の光学的性質を捉えており、これにより生体検査を行うことができる。すなわち、当該戻り光106を分光器にかけることにより生体検査を行うことができる。この生体検査に用いる光の波長帯域は、検査対象となる生体組織105が示す光学特性が顕在化する範囲を選ぶ。
【0005】
外装パイプ112及び封じ切りパイプ122は、光ファイバ内視生体検査装置101の一部を構成する。従って、半球末端反射光ファイバ108は、当該光ファイバ内視生体検査装置101に対して方向構造が一致した構造、即ち、インライン構造化(In-Line Structured)することできる。このインライン構造により、例えば、アブレーションカテーテル用途のブレーダの回転に必要な回転駆動用のワイヤーを光ファイバ内視生体検査装置101に内装することにより、単体構造を有する多機能複合カテーテルを容易に実現することができる。
【特許文献1】特開平07‐270642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の光ファイバ内視生体検査装置101には、次のような不具合がある。
【0007】
まず、半球体107は、光ファイバ102の素材である石英の溶融と表面張力でその直径が決まる。その直径は600ミクロン程度となる。一方、半球体107から延びる光ファイバ102は長距離通信用途では125ミクロン程度、短距離用細線光ファイバでは80ミクロン程度である。従って、半球体107にあわせて外装パイプ112又は封じ切りパイプ122を製作すると、インライン構造化されてはいてもその特徴を生かせず、光ファイバ内視生体検査装置101が太くなってしまう。そのため、カテーテルの一部あるいは検査用カテーテルの全体となるべき光ファイバ内視生体検査装置101としては、細い血管、例えば脳内血管や冠動脈の先端部分の検査に使用できない。即ち、従来の光ファイバ内視生体検査装置101には太い血管や尿管のみにしか使用できないという適用範囲の制限の問題があった。
【0008】
また、従来の光ファイバ内視生体検査装置101においては、光の出射面は半球体107の球面の一部であるため、半球体107は集光作用を有する凸レンズの働きをする。そのため、生体の微弱な発行を集光することは出来るが、光ファイバ内視生体検査装置101から出射される光は常に半球体の表面曲率のみで決まる集光効果により生体組織105に集光照射されることになる。その結果、生体組織105が集光された光により損傷を受ける恐れがあるという問題がある。また、生体組織105の狭い領域部しか光の照射ができないため、生体組織105の当該狭い領域部の反射光のみを捉えて検査することとなり、生体組織105における病変検査の見落としが生じ易いという問題もある。これに対して、光ファイバ内視生体検査装置101から出射する光が血管内等の生体組織105上の広い範囲に照射する場合には、病変検査において病変部の見落としは少ない。即ち、光ファイバ内視生体検査装置101によっては照射角の広い出射光の得られるものの方が、病変探査が容易であって望ましい場合もある。一方、従来の光ファイバ内視生体検査装置101においては、照射角は半球体107の直径でほぼ決まってしまい、照射角の選択の余地はほとんどない。したがって、用途や検査対象によって照射角(あるいは集光角)を変更設定できる新たな光ファイバ内視生体検査装置が望まれる。
【0009】
逆に、集光の必要性は特に細胞からの蛍光検出において求められる。即ち、光ファイバ内視生体検査装置101に近い生体組織の細胞が発する蛍光を観測する場合は、蛍光の光強度は弱いため、蛍光を発光する細胞から蛍光の多くを集める必要がある。しかし、このような場合には、半球体107が有する球面の集光角では不十分である。当該集光角は半球体107から光を出射する場合の集光角に等しいからである。細胞から蛍光の多くを集めるためには、半球体107で集光する角度より大きい角度で集光する必要がある。当該蛍光の放射角度が大きいからである。その結果、従来の光ファイバ内視生体検査装置101により細胞の蛍光を観測する場合、例えば蛍光薬剤を用いたがん細胞の発見による病理診断には、その集光角は半球体107の表面の曲率でほぼ決まってしまい、癌細胞の発見は困難である。従来の光ファイバ内視生体検査装置101では、集光角の選択の余地はほとんどなく、これを細胞からの距離に合せて適正化することが出来ないからである。
【0010】
本発明の目的は、インライン構造を保持しつつ、従来に比べて物理的に細い形状を有するカテーテルの一部あるいは検査用カテーテルの全体として使用するのに適し、しかも、出射光の広がり角度あるいは集光角を自由に設定することができる光ファイバ内視生体検査装置及び光ファイバ内視生体検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題解決手段は具体的には以下に示すものである。即ち、
(1)軸状部材であって当該軸方向に平行な1以上の中空孔を有する軸状部材と、前記中空孔内に設置されている光ファイバと、当該中空孔内に当該光ファイバの先端と間隔をあけて設けられ、当該光ファイバの先端と対向する部位に光反射面が形成されている光反射部材と、を備えている光ファイバ内視生体検査装置である。
【0012】
(2) (1)の光ファイバ内視生体検査装置において、前記光反射部材は直径が前記光ファイバの外径と概略同じであるようにしてもよい。
【0013】
(3) (1)の光ファイバ内視生体検査装置において、前記中空孔の直径は前記光ファイバが設置されている部分と前記光反射部材が設置されている部分とがほぼ同じであるようにしてもよい。
【0014】
(4) (1)から(3)までの光ファイバ内視生体検査装置において、前記光反射面の面方向と前記軸方向とは非直角・非並行をなしているようにしてもよい。
【0015】
(5) (1)から(3)までの光ファイバ内視生体検査装置において、前記光反射面は円錐面であるようにしてもよい。
【0016】
(6) (1)から(3)までの光ファイバ内視生体検査装置において、前記光反射面には表面凹凸格子が設けられているようにしてもよい。
【0017】
(7) (4)から(5)までの光ファイバ内視生体検査装置において、前記光反射面は凸状の曲面であるようにしてもよい。
【0018】
(8) (1)から(4)の何れかに記載の光ファイバ内視生体検査装置において、前記光ファイバの先端部の端面は凸形状であるようにしてもよい。
【0019】
(9) (1)から(4)の何れかに記載の光ファイバ内視生体検査装置において、前記光ファイバの先端部に複数の面を有し、光ファイバの光軸を含む平面と当該光軸に垂直な平面において異なる焦点距離を有するようにしてもよい。
【0020】
(10) (1)から(9)までの光ファイバ内視生体検査装置において、前記軸状部材は少なくとも前記光ファイバを伝搬する光に対して前記光出射部が透光性の部材である、ようにしてもよい。
【0021】
(11) (1)から(10)までの光ファイバ内視生体検査装置において、前記軸状部材は熱収縮チューブである、ようにしてもよい。
【0022】
(12)本発明の別の課題解決手段は、(1)に記載の光ファイバ内視生体検査装置と、前記光ファイバが対向する光反射部材と反対側の光ファイバの基端側から光を入射させる光源と、前記光ファイバの基端側と前記光源との間に配置されたビームスプリッタと、前記ビームスプリッタで反射された光を分光する分光器と、を備えている光ファイバ内視生体検査システムである。
【0023】
(13) (1)の光ファイバ内視生体検査装置であって、前記軸状部材は2つの前記中空孔を有し、当該中空孔内にはそれぞれ1本の光ファイバが設置されていて、前記光ファイバの先端とは間隔を空けて設けられ、当該光ファイバの先端と対向する部位に前記光反射面が形成されている前記光反射部材がそれぞれ当該中空孔内に設けられているようにしてもよい。
【0024】
(14)本発明の更に別の課題解決手段は、(13)に記載の光ファイバ内視生体検査装置と、前記光ファイバの一方の光ファイバの基端側から光を入射させる光源と、前記光ファイバの他方の基端側から出射する光を分光する分光器と、を備えている光ファイバ内視生体検査システムである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、光ファイバの先端と所定の間隔をおいて対向する部位に光反射部材を中空孔内に配置している。当該光反射部材は光ファイバの外径と概略同じ程度のものとすると、従来のように光ファイバの先端部に半球体を形成する必要はなく、光反射部材の直径は半球体より小さなものとすることができるため、インライン構造の特徴を保持しつつも、光ファイバ内視生体検査装置を従来に比べて細くできる。この物理的に細い構造により、この光ファイバ内視生体検査装置はカテーテルの一部あるいは検査用カテーテルの全体として使用するのに適している。また、当該光反射部材は光ファイバのクラッドの外径ではなく、中空孔の内径と同程度の直径のもので良い。この場合は、中空孔の直径は前記光ファイバの挿通されている部分と光反射部材が挿置されている部分とはほぼ同じであることを規範として、光ファイバの最大外径(外部がジャケットに覆われている場合はその最大径)と光反射部材を選ぶことができる。いずれにせよ、半球体を有する光ファイバを用いる前述の光ファイバ内視生体検査装置101よりも構造が簡単でかつ物理的に細い光ファイバ内視生体検査装置を実現できる。
【0026】
さらに、光ファイバとは別部品となる光反射部材を用いることにより、構造と光学特性の自由度を増大させ、様々な変形を加えたバリエーションの構成を用いることで、様々な効果を得られる。
【0027】
本発明によれば、前述のような半球体107の光反射部材を使用する必要がなく、インライン構造化の特徴を十分に生かすことができて光ファイバ内視生体検査装置を従来に比べて物理的に細くできる。そのため、この光ファイバ内視生体検査装置には第1の光ファイバに加えて、更に別の第2の中空孔内に第2の光ファイバをも具備させることができる(請求項13、14)。第1と第2の光ファイバにはそれぞれの先端と所定の間隔において対向する第1と第2の光反射部材をそれぞれ第1と第2の中空孔内に配置している。このような構造により、出射光と反射光あるいは検知光が伝搬する光ファイバを別々にすることができ、その結果、光源と分光器を直接に異なる光ファイバに結合させることができ、システムの構成を簡単にすることができる。また、このような2系統の光ファイバを用いることにより、2系統の分光分析を行うことができる。本発明による2系統の光ファイバを用いた生体検査装置であっても、なおその直径は従来の生体検査装置より細く、カテーテルの一部あるいはカテーテルの全体として使用するのに適したものとすることができる。
【0028】
さらに、第1、第2の光ファイバとは別部品となる第1、第2の光反射部材を用いることにより、2系統の光ファイバを用いて得られる2系統の分光分析を行うことができることに加えて、構造と光学特性の自由度を増大させ、様々な変形を加えたバリエーションの構成を用いることで、様々な効果を得られる。
【0029】
また、光ファイバの先端に半球体を形成して光反射部材とする必要がなくなったため、光ファイバからの出射光が光反射部材で半球体の表面曲率のみで決まる集光効果により集光されてしまうことがなく、出射光の広がり角度を大きくすることができる。
【0030】
一方、第1の光ファイバからの集光角を、検査対象となる細胞において光ファイバからの出射光が集光するようにすると、逆にその細胞からの発光の大部分を光ファイバに収束することができる。光ファイバにそのような集光作用を持たせるには、光反射部材に対面している光ファイバの端面が集光レンズの効果を有するように研削し研磨する方法により実現することもできる。このような光ファイバの端面の研削・研磨により所望の集光作用を持たせうる効果は、その先端に前述のような半球体107がないことにより実現できたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1は、本実施の形態の光ファイバ内視生体検査装置の要部の状態を示す破断図面であり、要部の斜視的に示す図である(ハッチング部はその破断した部位を示す)。図2は、同光ファイバ内視生体検査装置の部分拡大断面図である。
【0033】
この光ファイバ内視生体検査装置1は、軸状部材である外装パイプ2を備えている。外装パイプ2は透光性の材料で形成されている。これは光ファイバ4からの出射光、生体組織での反射光を透過させるためである。外装パイプ2の軸芯部分には、その軸方向に並行な中空孔3が形成されている。中空孔3内には、光ファイバ4がその先端部5が外装パイプ2の先端部6の近傍に位置するように設置され、内部で固定されている。この光ファイバ4は、コア10とクラッド11とから構成されている。更にまた光ファイバ4は外部ジャケット(図示せず)を有した状態で中空孔3に挿入される構造であっても良い。光ファイバ4の先端部5の端面13は光の伝搬軸にほぼ直角をなす切断研磨面である。外装パイプ2の先端部6の中空孔3には、光ファイバ4の先端部5と一定間隔を空けて軸状の光反射部材9が設けられている。光反射部材9は中空孔3内に固定されている。光ファイバ4の先端部5と対向する部位にある光反射部材9の先端面7には、光反射面となる反射膜が形成されている。光反射部材9は、先端面7が平面をなし、その面と光ファイバ4の軸とは非直角・非並行の角度を成している。具体的には、当該角度は約45度で、光ファイバ4を伝搬してきた光を光ファイバ内視生体検査装置1からほぼ直角の方向に出射して図示しない血管壁等を照射することとなる。
【0034】
図3は、光ファイバ内視生体検査装置1を備えた光ファイバ内視生体検査システム21の実施例を示す概略構成の説明図である。光ファイバ内視生体検査システム21は、光ファイバ内視生体検査装置1を含んでいる。本実施例では、光ファイバ内視生体検査装置1がカテーテル全体を構成しているが、カテーテルの一部であっても良い。また、光ファイバ内視生体検査システム21には、光ファイバ内視生体検査装置1の光ファイバ4の基端部12(光ファイバ4の先端部5とは反対側の端部)から光を導入する。光ファイバ内視生体検査装置1はいわゆるカテーテルの外観形状を有している。光ファイバ内視生体検査装置1の外部での検査光は光ファイバ241ないし243を介して伝搬する方法を採用している。この検査光を発光する光源22から出射された光は光ファイバ241を介してビームスプリッタ25を経て光ファイバ242により光ファイバ4の基端部12に導かれ、当該光ファイバ4内を伝搬する。そして、光ファイバ4の先端部5の端面13から出射した光は光反射部材9の先端面7で反射し(図2参照)、外装パイプ2を透過して血管壁、尿管壁、リンパ管壁、腸管壁等の図示しない生体組織に照射される。この場合、先端面7で反射した光が外装パイプ2を透過するときの外装パイプ2の光の透過部位が光出射部となる。そして、生体組織で反射した戻り光は外装パイプ2を透過して光反射部材9の先端面7に至りそこで反射し、先端面7から光ファイバ4に入射する(図2参照)。この場合、生体組織からの戻り光が透過する外装パイプ2の光の透過部位が光入射部となる。そして、光ファイバ4を伝搬した戻り光は光ファイバ4の基端部12から出射し、光ファイバ242を介してビームスプリッタ25に至りそこで反射され、そののち分光器27に入射する。よって、生体組織からの戻り光を分析して生体組織の検査を行うことができる。
【0035】
ビームスプリッタ25には反射と透過の能力を有するハーフミラーを用いることができる。更に、光源22に直線偏波光を用いる場合には、ビームスプリッタ25に偏光ビームスプリッタ(PBS:Polarizing Beam Splitter)を用いても良い。この場合、光ファイバ242と当該ビームスプリッタ25の間に45度ファラデー回転子を挿入し、かつ光ファイバ241,242,243に対して偏波保持ファイバを使用することにより、戻り光は光源22に戻ることなく効率良く分光器27に導くことができる。
【0036】
光ファイバ4の基端部12から入射し、光ファイバ4を伝搬し先端部13から出射した光は、光ファイバ4の先端部5の端面13で回折広がりを持って空間に出射される。この出射光は光ファイバ4の伝搬軸に対して先端面7で反射されて、例えば光ファイバ4の伝搬軸に対して先端面7の面方向が45度であれば直角に曲げられ、かつその出射光の広がり角は先端面7の曲がりでも決まる。光ファイバ4からの広がり角は、先端面7が平面なら光ファイバ4の先端部5の端面13での回折広がりで決まり、光ファイバ径にも依存するが約5〜10度程度である。光ファイバ4の先端部5の端面13と光反射部材9との距離が大きいと、回折による出射光の広がり角はさらに大きくなる。
【0037】
以上のような光ファイバ内視生体検査装置1、光ファイバ内視生体検査システム21によれば、光ファイバ4の先端部5と所定の間隔をおいて先端面7が対向するように光反射部材9を中空孔3内に配置している。よって、従来のように光ファイバ4から出射した光源22の光を反射する光反射部材として光ファイバ4の先端部5に半球体107を形成する必要はない。よって光反射部材9の直径は小さなものとすることができるため(例えば、光ファイバ4とほぼ同一の直径とすることができる)、インライン構造を保持しつつも、光ファイバ内視生体検査装置1を従来に比べて物理的に細くできるため適用範囲が広く、この光ファイバ内視生体検査装置1はカテーテルの一部あるいは検査用カテーテルの全体として使用するのに適している。
【0038】
また、光ファイバ4の先端部5に半球体107を形成して光反射部材とする必要がなくなったため、光ファイバ4からの出射光が光反射部材9で半球体の表面曲率のみで決まる集光効果により集光されてしまうことがなく、出射光の広がり角度を大きくすることができる。
【0039】
さらに、光ファイバ4とは別部品となる光反射部材9を用いることによる構造の自由度の増大により、光反射部材9を以下に説明するように様々な変形例で用いることで、様々な効果を得られる。
【0040】
なお、光ファイバ内視生体検査装置1において、出射光を広げることはその応用において重要である。中空孔3の中の空気と外装パイプ2と血液やリンパ液等の生体液の層が集光作用を有し全体として凸レンズとして働き、「視野」が狭くなるからであり、光ファイバ内視生体検査装置1により見落としなく病変部を発見したい場合には出射光を広げることが重要となるからである。そこで、出射光の出射角度を広げる手段としては以下のようにすることが考えられる。まず、図4の拡大縦断面図に示すように、光反射部材9の先端面7を平面ではなく凸状の曲面とすれば、これよりさらに出射光の広がり角度を拡大することができる。
【0041】
さらに、図5の拡大縦断面図に示すように、光ファイバ2の先端部5をレンズ状に加工して、光反射部材9の先端面7上にその光学焦点を結ばせるようにしてもよい。この場合は、光ファイバ2から出た光は光反射部材9の先端面7でほぼ収束し、先端面7で反射後は逆に光が広がるようになるからである。
【0042】
このように、光ファイバ内視生体検査装置1から出射した光が半球体の表面曲率のみで決まる集光効果により集光して生体の狭い範囲のみしか照らさず、生体の狭い範囲だけしか検査できないことは問題であるが、逆に生体の狭い範囲のみを検査できればよいような使用目的のときは、むしろ外装パイプ2の集光特性を積極的に利用して検査を行うようにしてもよい。
【0043】
外装パイプ2は、前述のとおり光ファイバ内視生体検査装置1から出射する出射光、生体で反射して戻ってきた戻り光を検査に支障ない程度に透過することができる透明度を有していればよい。
【0044】
外装パイプ2を不透明材料で形成するときは、図6に示すように外装パイプ2の光ファイバ内視生体検査装置1から出射する出射光、生体で反射して戻ってきた戻り光が透過する部位に、光出射部、光入射部となる透光性部材の窓14を設けるようにしてもよい。当該窓14は外装パイプの表面と同一表面となるように円筒面の一部となる形状にしても良い。
【0045】
図7の拡大縦断面図に示すように、光反射部材9として斜めカットした光ファイバなどを用い、その光ファイバなどのカット面に、その表面形状に合わせた表面凹凸格子12を設けて先端面7としてもよい。ここで言う「表面凹凸格子」とは、サーフェス・レリーフ・ホログラム・パターン(Surface Relief Holographic Pattern)を透明板の一方の側の面に形成し、他方面が反射面であるか、または反射面を有する板と接合している光拡散機能を有する光学部材をいう。「表面凹凸格子」の詳細は、“Laser-induced holographic surface relief gratings on nonlinear optical polymer films/ D. Y. Kim, etc./ 1166-1168, Appl. Phys. Lett. 66 (10), 6 March 1995/ Center for Advanced Materials, Department of Chemistry, University of Massachusetts Lowell”、及び、“Polarized Laser Induced Holographic Surface Relief Gratings on Polymer Films/ D. Y. Kim, etc./ Macromolecules 1995,28, 8835-8839 8835/ Center for Advanced Materials, Department of Chemistry, University of Massachusetts Lowell”に開示されており、Luminit, LLC(www.luminitco.com)が販売しているLSD(Light Shape Diffusers;登録商標)レンズ拡散板は、その一例である。また、反射面は金属蒸着がされたミラー面であっても良い。当該製品は、エドモント・オプティクス・ジャパン株式会社(www.kagaku.com/edmund)より販売されている。
【0046】
このような表面凹凸格子12を用いることにより、表面凹凸格子12で反射される光の広がり角を、表面凹凸格子の拡散広がりの違いにより変えることができる。この場合出射光がレーザ光であってもスペックルパタンが生じにくく、光の空間的強度の一様性が確保できるという特徴を有する。また、外装パイプ2の円筒面で収束される出射光を予め広げておき、外装パイプ2を通った光を空間的に一様な広がりを持つようにすることができる。
【0047】
また、光反射部材9の先端面7での反射方向(または、当該先端面7となる表面凹凸格子での光の拡散方向)の角度を調整する必要が生じる場合もある。このような調整が必要となる理由は以下のとおりである。出射光が外装パイプ2を通るが、外装パイプ2にはほぼ透明である部材を選んで使用する。すると、外装パイプ2はシリンドリカルレンズ(Cylindrical Lens、または円筒レンズ)として働く。この場合、外装パイプ2の軸方向に垂直な平面(円筒座標におけるθ−面)において、外装パイプ2を介した出射光は生体組織に外装パイプの円筒表面の曲率のみで決まる集光効果により集光されることとなる。一方、外装パイプ2の軸を含む平面(z−面)については、出射光は集光されない。その結果、出射光は外装パイプ2の軸方向に垂直な平面(従ってθ−面)において集光性が強くなり、生体組織の病変部を見落としやすい。このような見落としを避けるためには、外装パイプ2による集光効果を矯正する必要がある。
【0048】
そこで、上記の角度を反射方向によって調整する必要が生じることとなる。具体的には、光反射部材9の先端面7で予め反射光を広げておき(または、当該先端面7となる表面凹凸格子12として横方向の拡散角度の広いものを利用する)、上記の集光性を矯正し、生体組織への出射光を一様の広がりを持たせ、病変部の見落としを防ぐことができる。
【0049】
さらに、光反射部材9の先端面7を平面とせず、図8の拡大縦断面図に示すように、円錐面としてもよい。この場合、光ファイバ4からの出射光は光ファイバ内視生体検査装置1の全周に広がる。
【0050】
このように、光反射部材9の先端面7を円錐面とした場合は、θ‐面とz‐面における集光の違いによるシリンドリカルレンズの効果を原因とする前述の問題は生じない。すなわち、カテーテルの全周にわたる生体の病変を発見することができる。これは、検査がカテーテルの回転角(Azimuth Angle)に依存しないためであり、特に血管内の回転角の一部にできるアテロームの発見を容易にする。さらに必要なら、コーン面を直線による回転面ではなく曲線による回転面としてもよい。これにより、外装パイプ2の軸方向面(z−面)に、出射光を広げることも(図9)、集光させること(図10)も可能である。
【0051】
一方、光ファイバ内視生体検査装置1に近い生体組織の細胞が発する蛍光を観測する場合の用途を考える。この場合の特徴は、蛍光を発する細胞は点在し、その蛍光は微弱であるため、蛍光を発光する細胞に近い場所から蛍光の多くを集める必要がある。当該蛍光の放射角度が大きいからである。このような蛍光でも当該光ファイバ内視生体検査装置1で捉えるためには、出射角度を集光角度とする必要がある。出射角度を集光角度とする方法としては、光ファイバ4の先端部5の端面13を出射方向に凸となるような形状とする方法がある。図11はこのような例を示す。このような光ファイバ4の形状は、光ファイバ4の先端部5の研削・研磨をすることにより得られる。光ファイバ4の端面13の凸レンズ状の形状は、光ファイバ4の先端部5の周辺部に角を生じない曲面の一部であっても良い。一方、外装パイプ2は円筒形状をしておりその効果として、上述したようにθ−面内で集光し易いがz−面では集光しにくい。したがって、外装パイプ2と中空孔3及び光ファイバ4が並行であることを利用して、z−面とθ−面では焦点距離が変わるように光ファイバ2の先端部5の形状を変えて4面カット形状あるいは更にカット面を増やした形状としても良い。図12では、前者の例を示している。必要ならカット面の境に丸みを持たせた双円錐レンズ(Bi-Conical Lens)としても良い。
【0052】
光ファイバのこのような先端加工は、コアとクラッドの構造を有しない導光ファイバでも実施が可能であり、高い効果も得られる。
【0053】
光ファイバ4や光反射部材9を外装パイプ2内に装着するには、外装パイプ2の熱収縮効果を利用するか、これらと中空孔3の隙間に接着材を充填して固定するか、更に弾性リングを中空孔3内に装着することにより行うことができる。熱収縮効果を使う場合は、光反射部材9等を外装パイプ2の中空孔3内に挿通した後、外装パイプ2を加熱し、収縮させる。
【0054】
外装パイプ2の材料として好適なものとしては、適度な柔らかさ、血管等での滑り、曲げによるパイプ形状の潰れの生じにくさの点より、ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド(2フッ化)、ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体などがあげられる。
【0055】
光ファイバ4や光反射部材9を挿入した中空孔3の先端部には、外装パイプ2とは別の上記材料等で構成された長く細いロッドを挿入し、接着または溶着しても良い。これにより光ファイバ内視生体検査装置1を封止機構とすることが出来る。このようなロッドは、光ファイバ内視生体検査装置1よりなるカテーテル又は光ファイバ内視生体検査装置1を含むカテーテルのガイドストリング(Guide String)として利用することができる。
【0056】
以上説明した光ファイバ内視生体検査装置1、光ファイバ内視生体検査システム21は、光ファイバ内視生体検査装置1から出射する出射光と生体組織から反射して戻ってくる戻り光がそれぞれ伝搬する光学経路に同一の光学素子を使用した構成を有する実施例である。
【0057】
これに対して、図13に示す光ファイバ内視生体検査装置31、光ファイバ内視生体検査システム51は、第1の光ファイバと第2の光ファイバとを個別の光ファイバで構成し、第1の光反射部材と第2の光反射部材も個別の光学素子で構成した実施例である。
【0058】
すなわち、この光ファイバ内視生体検査装置31は、軸状部材である外装パイプ32を備えている。外装パイプ32は透光性の材料で形成されている。外装パイプ32の軸方向に並行な中空孔33が形成されている。中空孔33内には、第1の光ファイバとなる光ファイバ34がその先端部35が外装パイプ32の先端部36近傍に位置するように設置され、内部で固定されている。光ファイバ34の先端部35の端面40は光の伝搬軸にほぼ直角をなす切断研磨面である。中空孔33の先端部36には、光ファイバ34の先端部35と一定間隔を空けて第1の光反射部材となる軸状の光反射部材39が設けられている。光反射部材39は中空孔33内に固定されている。光反射部材39の光ファイバ34の先端部35と対向する部位にある先端面37には、第1の光反射面となる反射面が形成されている。光反射部材39は、先端面37が平面をなし、その面と光ファイバ4の軸とは非直角・非並行の角度を成している。具体的には、当該角度は約45度で、光ファイバ34を伝搬してきた光を光ファイバ内視生体検査装置31からほぼ直角の方向に出射して図示しない血管壁等を照射することとなる。
【0059】
また、外装パイプ32の中空孔43内には、第2の光ファイバとなる光ファイバ44がその先端部45が外装パイプ32に形成した中空孔43の先端部46近傍に位置するように設置され、内部で固定されている。光ファイバ44の先端部45の端面50は光の伝搬軸にほぼ直角をなす切断研磨面である。中空孔43の先端部46には、光ファイバ44の先端部45と一定間隔を空けて第2の光反射部材となる軸状の光反射部材49が設けられている。光反射部材49は中空孔43内に固定されている。光反射部材49の光ファイバ44の先端部45と対向する部位ある先端面47には、第2の光反射面となる反射面が形成されている。光反射部材49は、先端面47が平面をなし、その面と光ファイバ4の軸とは上記のような非直角・非並行の角度を成している。
【0060】
光ファイバ内視生体検査システム51は、光ファイバ内視生体検査装置31の光ファイバ34の基端部61(光ファイバ34の先端部35とは反対側の端部)から光を入射させる光源52を備えている。この光源52から出射された光はレンズ53により集光され、光ファイバ34の基端部61に照射され、当該光ファイバ34内を伝搬する。そして、光ファイバ34の先端面37から出射した光は光反射部材39の先端面37で反射し、外装パイプ32を透過して血管壁、尿管壁、リンパ管壁、腸管壁等の生体組織に照射される。よって、先端面37で反射した光が外装パイプ32を透過するときの外装パイプ32の光の透過部位が光出射部となる。そして、その反射した戻り光は外装パイプ32を透過して光反射部材49の先端面47で反射し、先端面47から光ファイバ44に入射する。よって、生体組織からの戻り光が透過する外装パイプ32の光の透過部位が光入射部となる。そして、光ファイバ44を伝搬した戻り光は光ファイバ44の基端部62から出射し、レンズ56で集光されて分光器57に入射する。よって、生体組織からの戻り光を分析して生体組織の検査を行うことができる。
【0061】
以上のような光ファイバ内視生体検査装置31、光ファイバ内視生体検査システム51によれば、光ファイバ34の先端部35と対向し所定の間隔をおいて光反射部材39を中空孔33内に配置している。また、光ファイバ44の先端部45と所定の間隔をおいて先端面47が対向するように光反射部材49を中空孔43内に配置している。よって、従来のように光ファイバ34,44の先端部35,45に半球体を形成する必要はなく、光反射部材39,49の直径は小さなものとすることができるため(例えば、光ファイバ34,44とほぼ同一の直径とすることができる)、インライン構造の特徴を保持しつつも、光ファイバ内視生体検査装置31を従来に比べて細くでき、この光ファイバ内視生体検査装置31はカテーテルの一部あるいは検査用カテーテルの全体として使用するのに適している。
【0062】
また、光ファイバ34の先端部35に半球体を形成して光反射部材とする必要がなくなったため、光ファイバ34からの出射光が光反射部材39で半球体の表面曲率のみで決まる集光効果により集光されてしまうことがなく、出射光の広がり角度を大きくしたり、外装パイプ32の円筒面による集光効果を矯正することもできる。さらに、光ファイバ34の先端部35と光反射部材39の間隔を光ファイバ44の先端部45と光反射部材49の間隔より広くし、出射光の回折広がりを大きくし、光ファイバを伝搬してきた光の生体における照射範囲を広くしている。このような光学特性の自由度も本発明では得られる。
【0063】
実際の使用では、細胞からの蛍光の掲出には出射角度を集光角度とする必要のある場合がある。出射角度を集光角度とする方法としては、光ファイバ34と44の先端部35と45の端面をそれぞれ光反射部材39の方向に凸となるような形状とすることができる。これにより、前述のごとく細胞が発光する微弱な蛍光を当該光ファイバ内視生体検査装置31及び光ファイバ内視生体検査システム51で捉えることができる。この場合、光源52が生体組織を光励起する励起光を発し、その励起光は光ファイバ34を伝搬する。励起光は光ファイバ34の端面の凸レンズ形状により先端面37を介して生体組織に集光する。一方、生体組織で反射した光はその励起光で発光した細胞の微弱な蛍光は先端面47を介して光ファイバ44に至るが、その端面の凸レンズ形状により当該蛍光は光ファイバ44に対して伝搬光となって、最終的には分光器57に至ることとなる。光ファイバ34,44のこのような先端加工は、当該光ファイバがコアとクラッドの構造を有しない導光ファイバでも実施が可能であり、高い効果も得られる。
【0064】
さらに、半球末端反射光ファイバ108を使用する場合とは異なり、光伝搬用の光ファイバ34、44とは別個の部品となる光反射部材39、49を用いることによる構造自由度の増大により、光反射部材9を様々な変形例で用いることで、様々な効果を得られる。
【0065】
この光ファイバ内視生体検査装置31、光ファイバ内視生体検査システム51においても、光ファイバ内視生体検査装置31の出射光の光学経路となる光ファイバ34、光反射部材39について、図4から図12等を参照して説明した前述の光ファイバ内視生体検査装置1の変形例と同様の構成を採用しても良い。
【0066】
また、図13の例では、内視生体検査装置31の出射光の光学経路が1本で、生体組織からの反射光の光学経路も1本であるが、内視生体検査装置31の出射光の光学経路を2本(それぞれに対して、2経路の光ファイバの端面の凸レンズ形状を異ならせるか、又は反射部材の先端面の面曲率を異ならせて生体組織に照射する光の収束点を2つ設ける)、生体組織からの反射光の光学経路を1本とする合計3本の光学経路を有する光ファイバ内視生体検査装置(図示せず)及びこれに対応する光ファイバ内視生体検査システム(図示せず)としてもよい。2つの出射光経路上にあるファイバの生体内の収束点の深さを2種設けることにより、深部の生体組織の光特性を得ることができる。
【0067】
また、内視生体検査装置31の2本の光ファイバを独立した2経路の内視生体検査装置として、それぞれの経路に独立した分光器と同一又は独立した光源を取り付けても良い。これにより、2つの異なる波長範囲による生体の光学特性の検査を行うことができる。あるいは、広範囲の波長範囲と特定の狭い波長範囲の生体の光学特性の検査を行うことにより、特定の生体の状態をすばやく効率的に発見することが可能となる。
【0068】
また、上記の全ての実施例では、光反射部材の先端面には反射面が形成されていて、その面と光ファイバの軸とは非直角・非並行の角度として、具体的には当該角度が約45度で、光ファイバを伝搬してきた光を光ファイバ内視生体検査装置からほぼ直角の方向に出射する構造を有している。この非直角・非並行の角度は約45度である必要はない。当該角度を45度より大きい角度又は小さい角度として、血管等の生体に対して斜めの方向から出射光を照射しても良い。更に、血管等の生体からその表面とは斜めの方向の反射光や蛍光を戻り光としても良い。このような斜め方向の出射光と戻り光を利用すると血管等の生体の表面の荒れや糜爛状態に対する生体組織の光特性を得ることができ、本発明の適用範囲が広がる。
【0069】
上記の実施例では光ファイバは、特に明記のない場合は、コア10とクラッド11とから構成されているものを使用しているが、コアが存在せずクラッド表面の全反射により光が伝搬する光ファイバ(いわゆる導光ファイバ)を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施の形態である光ファイバ内視生体検査装置の斜視破断図である。
【図2】同光ファイバ内視生体検査装置の部分拡大断面図である。
【図3】同光ファイバ内視生体検査装置を備えた光ファイバ内視生体検査システムの概略構成の説明図である。
【図4】同光ファイバ内視生体検査装置の変形例の拡大縦断面図である。
【図5】同光ファイバ内視生体検査装置の他の変形例の拡大縦断面図である。
【図6】同光ファイバ内視生体検査装置の他の変形例の拡大縦断面図である。
【図7】同光ファイバ内視生体検査装置の他の変形例の拡大縦断面図である。
【図8】同光ファイバ内視生体検査装置の他の変形例の拡大縦断面図である。
【図9】同光ファイバ内視生体検査装置の他の変形例の拡大縦断面図である。
【図10】同光ファイバ内視生体検査装置の他の変形例の拡大縦断面図である。
【図11】同光ファイバ内視生体検査装置の他の変形例の斜視破断図である。
【図12】同光ファイバ内視生体検査装置の他の変形例の斜視破断図である。
【図13】本発明の他の一実施の形態である光ファイバ内視生体検査装置、光ファイバ内視生体検査システムの他の構成例の斜視図である。
【図14】従来の光ファイバ内視生体検査装置について説明する説明図である。
【図15】従来の光ファイバ内視生体検査装置について説明する説明図である。
【符号の説明】
【0071】
1,31 光ファイバ内視生体検査装置
21,51 光ファイバ内視生体検査システム
2,32 外装パイプ
3,33,43 中空孔
4,34,44、102、241、242、243 光ファイバ
5,35,45 先端部
7,37,47 先端面
9,39,49 光反射部材
12、61、62 基端部
13 端面
14 窓
22,52 光源
25,55 ビームスプリッタ
27,57 分光器
53、56 レンズ
101 光ファイバ内視生体検査装置
103 半球分割平面
104 出射光
105 生体組織
106 戻り光
107 半球体
108 半球末端反射光ファイバ
112 外装パイプ
121 中空孔
122 封じ切りパイプ
113 封止部
123 末端保持チップ
124 保持リング
114、125 窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状部材であって当該軸方向に平行な1以上の中空孔を有する軸状部材と、
当該中空孔内に設置されている光ファイバと、
当該中空孔内に当該光ファイバの先端と間隔をあけて設けられ、当該光ファイバの先端と対向する部位に光反射面が形成されている光反射部材と、
を備えている光ファイバ内視生体検査装置。
【請求項2】
前記光反射部材は直径が前記光ファイバの外径と概略同じである請求項1に記載の光ファイバ内視生体検査装置。
【請求項3】
前記中空孔の直径は前記光ファイバが設置されている部分と前記光反射部材が設置されている部分とがほぼ同じである請求項1に記載の光ファイバ内視生体検査装置。
【請求項4】
前記光反射面の面方向と前記軸方向とは非直角・非並行をなしている請求項1から3までの光ファイバ内視生体検査装置。
【請求項5】
前記光反射面は円錐面である、請求項1から3までの光ファイバ内視生体検査装置。
【請求項6】
前記光反射面には表面凹凸格子が設けられている、請求項1から3までの光ファイバ内視生体検査装置。
【請求項7】
前記光反射面は凸状の曲面である、請求項4から5までの光ファイバ内視生体検査装置。
【請求項8】
前記光ファイバの先端部の端面が凸形状である請求項1から4までの光ファイバ内視生体検査装置。
【請求項9】
前記光ファイバの先端部が複数の面を有し光ファイバの光軸を含む平面と当該光軸に垂直な平面において異なる焦点距離を有する請求項1から4までの光ファイバ内視生体検査装置。
【請求項10】
前記軸状部材は前記光ファイバを伝搬する光に対して透光性を有する部材である、請求項1から9までの光ファイバ内視生体検査装置。
【請求項11】
前記軸状部材は熱収縮チューブである、請求項1から10までの光ファイバ内視生体検査装置。
【請求項12】
請求項1に記載の光ファイバ内視生体検査装置と、
前記光ファイバが対向する部位に置かれた前記光反射部材とは反対側の前記光ファイバの基端側から光を入射させる光源と、
前記光ファイバの基端側と前記光源との間に配置されたビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタで反射された光を分光する分光器と、
を備えている光ファイバ内視生体検査システム。
【請求項13】
前記軸状部材は2つの前記中空孔を有し、
当該中空孔内にはそれぞれ1本の光ファイバが設置されていて、
当該光ファイバの先端とは間隔を空けて設けられ、当該光ファイバの先端と対向する部位に前記光反射面が形成されている前記光反射部材がそれぞれ当該中空孔内に設けられている、
請求項1に記載の光ファイバ内視生体検査装置。
【請求項14】
請求項13に記載の光ファイバ内視生体検査装置と、
前記光ファイバの一方の光ファイバの基端側から光を入射させる光源と、
前記光ファイバの他方の基端側から出射する光を分光する分光器と、
を備えている光ファイバ内視生体検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−174985(P2009−174985A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13521(P2008−13521)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【Fターム(参考)】