説明

光ファイバ加速度変換器

ハウジング(24)内の空洞(31)に宙吊りした質量体(22)は線形加速度に応答して検出軸に沿い移動する。質量体(22)とハウジング(24)の間に接続した弾性支持部材(32〜35)が検出軸に沿う質量体(22)の変位に応答する反作用を質量体(22)に及ぼす。光ファイバ(16)が質量体(22)とハウジング(24)の間に接続され、検出軸に沿う質量体(22)の変位が光ファイバ(16)の一方の区分(13)を伸長させかつ他方の区分(15)を縮小させる。光ファイバ(16)内に形成した一対の光ファイバブラッグ格子(12,14)は光ファイバ(16)がガイドする光信号を反射するように配置されている。質量体(22)の加速度は反射された光信号の波長を調整して加速度が決定される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般に加速度測定のための技術に、特に、線形加速度測定用の光ファイバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の線形加速度に敏感な光ファイバ装置を提供しようとする試みは、個々の部品を製造するための微小光学技術を伴ってきた。このような技術は労力の集中を要し、したがって高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はホログラフ技術を用いて製造するのに安価で、高度に正確な光ファイバ振動加速度計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による光ファイバ加速度変換器は、内部に空洞を有し、その空洞内に質量体を宙吊りにしたハウジングを含む。質量体は検出軸に沿う線形加速度に応答して検出軸に沿い可動に配置される。複数の弾性支持部材が質量体とハウジングの間を接続する。弾性支持部材は検出軸に沿う質量体の変位に応答して質量体に反作用を及ぼすように配置される。光ファイバが質量体の第1の側面とハウジングの第1の側壁部分との間に接続した第1の区分と、質量体の第2の側面とハウジングの第2の側壁部分との間に接続した第2の区分とを有し、検出軸に沿う質量体の変位が光ファイバの第1と第2の区分の一方を伸長させ、他方を縮小させる。光信号源が広帯域の光信号入力を光ファイバに与えるように配置される。光ファイバブラッグ格子が光ファイバ内に形成され、光信号の一区分を反射させる。反射した区分は検出軸に沿う質量体の加速度によって調整された波長を有する。反射した信号は質量体の加速度を決定するために処理される。
【0005】
本発明による光ファイバ加速度変換器は更に、光ファイバの第1区分内に形成された第1光ファイバブラッグ格子と、光ファイバの第2区分内に形成された第2光ファイバブラッグ格子とを含んでもよく、これら第1と第2光ファイバブラッグ格子は夫々異なる波長ΛおよびΛを反射させ、質量体の加速度を決定するために処理される波長差Λ−Λを生成する。
【0006】
本発明による複数の光ファイバ加速度変換器が多種の列構造に組み合わされ、そのような列で定義される区域による複数の場所での加速度測定の可能性を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に示すように、光ファイバ加速度変換器10は質量体22と、プッシュプル形式で作動する2個の光ファイババッグ格子(FBG)12および14を含む。これらFBG12および14は光ファイバ16内の区分13および15に形成される。FBG12および14と質量体22はハウジング24の空洞31内に取り付けられる。
【0008】
FBG12は質量体22の第1の側面20とハウジング24との間に接続される。FBG14はハウジング24と、質量体22の第1の側面20とは反対側の第2の側面26との間に接続される。FBG12は通路28内において接着性結合剤のような適宜の手段によりハウジング24に固着される。FBG14は通路30内において接着性結合剤のような適宜の手段によりハウジング24に固着される。光ファイバ16の一部18は質量体22の貫通路19の内面もしくは溝(図示しない)内に接着剤で固着するなどの適宜手段で質量体22に固着される。質量体22は複数の弾性部材32〜35によりハウジング24内の空洞31の内部に支持される。弾性部材は図示のようにスプリングで、あるいは適宜の長手弾性体材料で形成すればよい。
【0009】
FBG12及び14の形成に適した構造と製造技術は当業において周知である。FBG12及び14は光ファイバ16の選択的な長さ15及び17における屈折率の周期的または非周期的摂動を形成することによって生成される。屈折率摂動は主として光ファイバ16のコア(またはガイド領域)に影響を及ぼす。適切な摂動を発生する幾つかの方法がある。最も有り触れた方法は特定のドーパントを含む光ファイバの感光性を利用するものである。ゲルマニアをドープした石英光ファイバがアルゴンイオンレーザ照射の露光に敏感であり、488nmで2光子吸収の結果の原因となったことが発見されている。早期の研究が、グレン他の米国特許第4725110号、ミード他の米国特許第6836592号、バイロンの米国特許第6310996号、ヒル他の米国特許第4474427号が記載するFBG装置の製造に現在用いられるホログラフライテイング方法に至っており、これら特許の記載は本発明の説明に参照されている。
【0010】
UV光線が位相マスク、プリズム干渉計或いは他の方法のいずれかを用いて干渉を受ける。干渉された光線は絞られ、光ファイバのコア領域にフォーカスされる。コア上に形成された干渉パターンは明暗帯の連続であり、それらの間隔は等間隔或いはチャープの何れかである。前者の場合は高度な周期パターンを形成するが、後者は非周期的(或いはチャープされた)パターンを発生させる。明帯はドープされたコア材と相互に作用して露光された隣接領域に屈折率変化を生じさせるが、暗帯の下の領域は影響を受けずに残る。これが周期的な屈折率摂動の原因となるものである。干渉周期を変化させることによって、格子期間Λが次いで変化し、FBGフィルタで反射またはFBGフィルタを透過する波長を変化させる。屈折率摂動の強度がFBGの透過ならびに反射特性を支配する。
【0011】
図1に戻って、形成されたFBG12および14は特別な光波長に対する反射あるいは拒否フィルタとして使用される。FBGが反応した特定の波長λBraggは屈折率摂動の周期により支配され、下記の第1式で表現される。
λBragg=2Ληeff (1)
ここにηeffは光ファイバの有効屈折率であり、Λは屈折率摂動の周期である。
【0012】
FBG12および14は反射性あるいは透過性のいずれかの装置として製造される。ここで説明する装置は格子のいずれかの型で作動する。
【0013】
光ファイバ加速度(または振動)変換器10を形成するために、FBG12および14は縦列に並べて使用され、プッシュプル方式に配列される。この配列においてFBG12および14は静的環境にあるときは波長を整合させることを必要としないが、それは、検出に重要な要素が動的環境における二つのFBG12および14間の波長差であってそれらの絶対波長変位ではないためである。
【0014】
質量体22はスプリング32〜35が呈する制動と共に加速度あるいは振動により励起されたときに検出ハウジング24内で可動とされる。FBG12および14は質量体22とハウジング24に強固に固着される。質量体22が励起され、動かされると、FBG12及び14は交互に引張りと圧縮の状態にされる。FBGを引張り状態にすると格子周期Λが大きくなるが、圧縮状態にすると格子周期は小さくなる。従って格子周期の変位は等式(1)を適用すれば判るように、ろ過された波長を駆動する。
【0015】
処理のために戻された信号は波長が調整される。戻された両信号からの相対的な時間依存波長差を取ることによって最初の振動(加速)記号が見つかる。この形態の利点は単独のFBGを用いるより装置の感度が2倍に増えることである。これは、一つのFBGの場合の百分率の汚点は波長において対応する百分率変化を生じるために起きる。二つのFBG12及び14を異なる形態で用いることによって、与えられた同じ歪に対し2倍の感度を生じる。そこで波長差信号は
Δλ=2ηeff(Λg.1−Λg.2) (2)
【0016】
この形態の他の利点は温度に不感性であることである。これもやはり、二つのFBG12及び14の間の相対的な波長変化の差のみが用いられ、絶対的な値ではないという事実から来るものである。温度による1個のFBGの波長変位は下式で表わされる。

(3)
二つのFBG間の波長差は下式のように表現される。

(4)
ここに、αはFBGの温度膨張係数である。等式(4)は下式に簡略化される。

ここで温度条件は波長差とは静的なオフセットとしてのみ振舞うので、検出器の動的な動作には影響を与えない。
【0017】
図2は図1とその説明に沿って形成した複数の光ファイバ加速度変換器A,A…Aを含む第1センサ列40を示す。センサ列40は広帯域光信号源44から光信号42を受け取る線形列である。入力された光信号42は光ファイバ46を介して、逆方向への伝搬を阻止する光アイソレータ48に伝搬する。
【0018】
入力光信号42は次いで、ポートP1〜P4を有するようにした光カプラ50に伝播する。入力光信号42は光カプラ50のポートP1に入力される。光カプラ50に入力された光信号42の一部はクロス結合されてポートP4に出力され、そこでクロス結合信号はアブソーバ52により吸収される。光ファイバ46内に残る入力光信号42の一部はポートP3において光カプラ50から出力され、光ファイバ加速度変換器A,A…Aに入力される。光ファイバ加速度変換器A,A…Aの各々は波長ダブレット信号を光カプラ50に戻す。戻されたダブレット信号の各々は対応する光ファイバ加速度変換器の加速度を示す。
【0019】
戻ってくるダブレット信号は光カプラ50へガイドされ、そこでポートP3からの戻されたダブレット信号はポートP2において光ファイバ54に出力されるために結合される。光ファイバ54は戻されたダブレット信号を光波長質問器56にガイドして波長処理を行ない、所望の加速度情報を抽出する。
【0020】
図3は、図1の第1センサ40と同様の直線列62ならびにこれも第1センサ列40と同様の直線列64とを含む第2センサ列60を示す。広帯域光信号源66が、入力信号を光アイソレータ72にガイドするように配置した光ファイバ70に光信号68を供給する。入力された光信号は光アイソレータ72を介して、ポートP1〜P4を有する光カプラ74に伝播する。入力された光信号の第1区分75は光ファイバ70内に残り、ポートP3において光カプラから出力され、複数の光ファイバ加速度変換器A,A…Aを含む直線列62に入力される。入力された光信号の第2区分76はポートP1からP3を光ファイバ77にクロス結合して、複数の光ファイバ加速度変換器A,A…A2Nを含む直線列64に入力する。
【0021】
直線列62は戻されたダブレット信号の第1組を生成して光カプラ74に逆に伝搬させ、そこでポートP2とクロス結合させて光ファイバ77内に送る。直線列64は戻されたダブレット信号の第2組を生成して光カプラ74に戻させ、そこでポートP4からP2まで伝搬させる。戻されたダブレット信号の両組は光ファイバ77内を伝搬して光波長質問器78に至り、そこで戻されたダブレット信号は処理されて、両直線列62および64内での各光ファイバ加速度変換器における加速度についての数的データを得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による光ファイバ加速度変換器を示す横断面図。
【図2】本発明による複数の光ファイバ加速度変換器を包含する第1センサ列を示す図。
【図3】本発明による複数の光ファイバ加速度変換器を包含する第2センサ列を示す図。
【符号の説明】
【0023】
10 光ファイバ加速度変換器
12 第1光ファイバブラッグ格子(FBG)
14 第2光ファイバブラッグ格子(FBG)
16 光ファイバ
22 質量体
24 ハウジング
31 空洞
32〜35 弾性支持部材
40 第1センサ列
,A,A…A 光ファイバ加速度変換器
42 光信号
44 広帯域光信号源
46 光ファイバ
48 光アイソレータ
50 光カプラ
P1〜P4 ポート
52 アブソーバ
54 光ファイバ
56 光波長質問器
60 第2センサ列
62 直線列
,A,A…A 光ファイバ加速度変換器
64 直線列
,A,A…A2N 光ファイバ加速度変換器
66 広帯域光信号源
68 光信号
70 光ファイバ
72 光アイソレータ
74 光カプラ
77 光ファイバ
78 光波長質問器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞(31)を有するハウジング(24)と、空洞(31)内に宙吊りにして検出軸に沿う線形加速度に応答して検出軸に沿い可動に配置した質量体(22)とを含む光ファイバ加速度変換器(10)において、
質量体(22)とハウジング(24)の間を接続して検出軸に沿う質量体(22)の変位に応答して反作用を質量体(22)に及ぼすようにした複数の弾性支持部材(32〜35)、
質量体(22)の第1の側面(20)とハウジング(24)の間を接続する第1区分(13)および質量体(22)の第2の側面(26)とハウジング(24)の間を接続する第2区分(15)を有して検出軸に沿う質量体(22)の変位が第1および第2区分(13,15)の一方を伸長させると共に他方を縮小させる光ファイバ(16)、
光ファイバ(16)の第1区分(13)内に形成されて光ファイバ(16)内を伝播する光信号の第1区分を反射させる第1の光ファイバブラッグ格子(12)であって、反射した光信号の第1区分は検出軸に沿う質量体(22)の加速度によって調整された波長Λを有するもの、および
光ファイバ(16)の第2区分(15)内に形成されて光ファイバ(16)内を伝搬する光信号の第2区分を反射させる第2の光ファイバブラッグ格子(14)であって、反射した第2区分は検出軸に沿う質量体(22)の加速度によって調整された波長Λを有すると共に、反射した第1ならびに第2区分は質量体(22)の加速度決定のために処理される波長差Λ−Λを有するもの、
をもって特徴とする光ファイバ加速度変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−538607(P2008−538607A)
【公表日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507619(P2008−507619)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/023948
【国際公開番号】WO2006/115511
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(306027242)ノースロップ・グラマン・コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】