説明

光ファイバ接続器、光コネクタ及び光ファイバ接続器の組立方法

【課題】コストアップを招くことなく、光ファイバの接続部へクランプ力を集中させて光ファイバを確実かつ安定してクランプし、良好な接続状態を維持させることが可能な光ファイバ接続器、光コネクタ及び光ファイバ接続器の組立方法を提供する。
【解決手段】ベース部材22と、押圧部材23と、ベース部材22と押圧部材23とを近接方向へ付勢してベース部材22のクランプ面22aに配置させたガラスファイバ1及び光ファイバ心線3の被覆2を押圧固定させる板バネ部材24とを備え、押圧部材23は、ガラスファイバ1同士の突き合わせ箇所Tと光ファイバ心線3の被覆2の端部Eとの間にて断面積が小さな連結部31を有し、ガラスファイバ1の突き合わせ箇所Tを押圧するガラス部押圧固定領域Aの付勢力が光ファイバ心線3を押圧する被覆部押圧固定領域Bよりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ同士を機械的に固定して接続する光ファイバ接続器、光コネクタ及び光ファイバ接続器の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ同士を接続する接続器として、光ファイバの突き合わせ箇所及びその近傍を挟持して光ファイバを機械的に固定するメカニカルスプライス機構のものがある。
【0003】
メカニカルスプライス機構による接続器には、C型バネでベースおよび蓋体を相互に圧接させ、ベースと蓋体の当接面同士に働く圧接力により、光ファイバを突き合わせ接続可能に位置決め調心する調心手段とを備え、蓋体が長手方向に分割された3つのピースで構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、被覆部材を挟持するための被覆部材挟持部と被覆部材が除去され露出した心線を挟持するための心線挟持部を備えた第1、第2のメカニカルスプライス本体を有し、被覆部材挟持部と心線挟持部とが一体化して構成されているものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−96733号公報
【特許文献2】特開2004−38018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、メカニカルスプライス機構においてクランプ力が不足していると、光ファイバの接続部に間隙が生じ、光学特性不良を引き起こすことがある。これを防止するには、光ファイバの接続部を十分な力で把持することが必要であり、クランプ力をいかに光ファイバの接続部に集中させるかが重要になる。
【0007】
上記の特許文献1の技術のように蓋体を分割した場合、その蓋体の光ファイバの接続部を押圧する部分のクランプ力を独立して高め、クランプ力を特性上最も重要な光ファイバの接続部へ意図的に集中させ、大きな把持力を得ることができる。しかし、蓋体を分割構造とすることにより、部品点数や組立作業工程が増加し、コスト高となる。しかも、分割した部品同士の搭載精度を考慮する必要が生じてしまう。
【0008】
これに対して、特許文献2の技術のように、蓋体に相当するメカニカルスプライス本体を一体にした場合、コストや搭載精度の問題は回避することができるが、クランプ力を光ファイバの接続部に集中させることが困難となってしまう。
【0009】
本発明の目的は、コストアップを招くことなく、光ファイバの接続部へクランプ力を集中させて光ファイバを確実かつ安定してクランプし、良好な接続状態を維持させることが可能な光ファイバ接続器、光コネクタ及び光ファイバ接続器の組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明の光ファイバ接続器は、互いに突き合わされたガラスファイバ及び前記ガラスファイバの被覆部分が一方の面に配置されるベース部材と、
前記ベース部材の対向位置に配設された押圧部材と、
前記ベース部材と前記押圧部材とを近接方向へ付勢することにより、前記ベース部材の一方の面に配置させた前記ガラスファイバ及び前記被覆部分を押圧固定させる付勢部材とを備え、
前記押圧部材は、前記ガラスファイバ同士の突き合わせ箇所と前記被覆部分の端部との間で断面積が小さな連結部を有し、
前記付勢部材による前記ガラスファイバの突き合わせ箇所を押圧するガラス部押圧固定領域の付勢力が前記被覆部分を押圧する被覆部押圧固定領域よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
本発明の光ファイバ接続器において、前記連結部は、前記ガラスファイバの突き合わせ箇所へ向かって次第にベース部材へ近接する方向へ傾斜されていることが好ましい。
【0012】
本発明の光ファイバ接続器において、前記付勢部材は、前記ガラス部押圧固定領域を押圧するガラス部押圧片部と、前記被覆部押圧固定領域を押圧する被覆部押圧片部とに分割されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の光コネクタは、ガラスファイバを内蔵するフェルールと、前記フェルールに内蔵されたガラスファイバと光ファイバ心線の被覆から露出されたガラスファイバとを接続する上記の何れかの光ファイバ接続器と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の光ファイバ接続器の組立方法は、上記の何れかの光ファイバ接続器の組立方法であって、
互いに重ね合わせた前記ベース部材と前記押圧部材の間で、ガラスファイバ同士を突き合わせ、
前記付勢部材の付勢力により前記ガラスファイバの突き合わせ箇所を押圧固定させた以後(押圧固定させた時、またはその後。以下同じ)に、
前記連結部の少なくとも1箇所を破断させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光ファイバ接続器及び光コネクタによれば、付勢部材によってベース部材と押圧部材とが挟持されると、突き合わせ箇所を含むガラスファイバ及び被覆部分がベース部材と押圧部材とによって押圧固定される。
このとき、押圧部材は、ガラスファイバ同士の突き合わせ箇所と被覆部分の端部との間に、断面積が小さい連結部を有しているので、この連結部において弾性変形が生じる。
【0016】
これにより、光ファイバ心線を押圧固定する被覆部押圧固定領域よりも大きな付勢力が付与されるガラスファイバを押圧固定するガラス部押圧固定領域では、突き合わせ箇所を含むガラスファイバがベース部材と押圧部材とによって強固に把持される。
したがって、クランプ力が不足するような不具合なく、ガラスファイバ同士を確実に安定してクランプし、良好な接続状態を維持させることができる。
【0017】
また、押圧部材は一体物であるので、ガラスファイバ同士の突き合わせ箇所にクランプ力を集中させるために、分割された押圧部材を用いる場合と比較して部品点数や組立作業工程の増加によるコスト高をなくすことができる。また、分割した部品同士の搭載精度を考慮する必要もない。
【0018】
また、本発明の光ファイバ接続器の組立方法によれば、組立時には押圧部材が一体であるので、搭載精度を考慮することなく容易に組み立てることができる。また、組立以後には連結部で破断させて押圧部材を分割するので、ガラスファイバ同士の突き合わせ箇所にクランプ力を効果的に集中させることが可能な光ファイバ接続器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る光ファイバ接続器の一実施形態の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の光ファイバ接続器を示す側断面図である。
【図3】板バネ部材を示す図であって、(a)は板バネ部材の平面図、(b)は板バネ部材の正面図、(c)は板バネ部材の側面図である。
【図4】押圧部材の変形例を示す図であって、(a)及び(b)はそれぞれ押圧部材の平面図である。
【図5】光ファイバ接続器の変形例を示す光ファイバ接続器の側断面図である。
【図6】光ファイバ接続器の変形例を示す光ファイバ接続器の側断面図である。
【図7】本発明に係る光コネクタの一実施形態の外観を示す側面図である。
【図8】図7の光コネクタを示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る光ファイバ接続器、光コネクタ及び光ファイバ接続器の組立方法の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、光ファイバ接続器11は、メカニカルスプライス型の接続器であり、ガラスファイバ1を被覆2から露出させて両端側から挿し込んだ光ファイバ心線3同士を固定して接続する。
【0021】
光ファイバ接続器11は、ベース部材22と、このベース部材22の対向位置に配設された押圧部材23と、これらのベース部材22と押圧部材23とを近接方向へ付勢する板バネ部材(付勢部材)24とを備えている。
ベース部材22と押圧部材23との間へ挿入された光ファイバ心線3の端部が、板バネ部材24の付勢力によってベース部材22と押圧部材23との間に押圧されて、固定されるようになっている。
【0022】
光ファイバ接続器11の一側部には、ベース部材22と押圧部材23との間に、複数の挿入口16が形成されており(図1参照)、これらの挿入口16には、楔部材13に形成された複数の楔部13aが挿抜可能である。これらの挿入口16へ楔部13aを挿し込むことにより、光ファイバ接続器11を構成するベース部材22と押圧部材23とが板バネ部材24の付勢力に抗して離間される。これにより、ベース部材22と押圧部材23とが離間された非クランプ状態で、光ファイバ心線3の端部の挿抜が可能である。
【0023】
ベース部材22は、例えば、樹脂によって一体成型されたものであり、このベース部材22の上面に設けられたクランプ面22aには、幅方向(ファイバ軸方向に直交する方向)の中央位置に、長手方向へ沿って収容溝26が形成されている。この収容溝26は、断面視V字状に形成されたものであり、中央側のガラスファイバ収容溝26aと両端側の心線収容溝26bとから構成されている。
【0024】
中央側のガラスファイバ収容溝26aには、互いに接続される光ファイバ心線3の被覆2を除去して露出されたガラスファイバ1が収容される。
心線収容溝26bは、ガラスファイバ収容溝26aよりも大きなV字状の溝からなり、この心線収容溝26bには、それぞれの光ファイバ心線3の被覆2の部分(被覆部分)が収容される。
【0025】
収容溝26は、心線収容溝26bとガラスファイバ収容溝26aとの間に、案内溝26cを有している。この案内溝26cは、その溝の大きさが、心線収容溝26bの端部からガラスファイバ収容溝26aに向かって次第に小さく形成されている。この案内溝26cによって、光ファイバ接続器11の両端側から挿し込まれたそれぞれの光ファイバ心線3のガラスファイバ1がガラスファイバ収容溝26aへ円滑に案内される。このように、ガラスファイバ収容溝26aに案内されて収容されるガラスファイバ1は、その端面1a同士が、ガラスファイバ収容溝26aで突き合わされる。なお、ガラスファイバ1の光伝送の損失を防ぐべく、それぞれのガラスファイバ1の端面1aの突き合わせ箇所Tには、屈折率整合剤を塗布しておくことが好ましい。
【0026】
押圧部材23は、ベース部材22と同様に、例えば、樹脂によって一体成型されたものであり、板バネ部材24の付勢力によってベース部材22へ押し付けられることにより、収容溝26に収容されたガラスファイバ1及び光ファイバ心線3を挟持して押圧固定する。
【0027】
押圧部材23は、ガラスファイバ1同士の突き合わせ箇所Tとそれぞれの光ファイバ心線3の被覆2の端部Eとの間に、連結部31を有している。連結部31は、押圧部材23の他の部分よりも薄くすることにより断面積が小さくなるように形成されている。これらの連結部31を形成することにより、押圧部材23は、ガラスファイバ1の部分を押圧するガラス部押圧部材部23Aと光ファイバ心線3の被覆2の部分を押圧する被覆部押圧部材部23Bとに分けられている。これにより、光ファイバ接続器11では、ガラスファイバ1同士の突き合わせ箇所Tを含むガラスファイバ1を押圧固定する領域がガラス部押圧固定領域Aとされ、それぞれの光ファイバ心線3をクランプする領域が被覆部押圧固定領域Bとされている。
【0028】
また、押圧部材23は、連結部31の断面積が他の部分よりも小さくされていることにより、連結部31が容易に弾性変形するようになっている。また、連結部31は、ガラスファイバ1同士の突き合わせ箇所Tへ向かって次第にベース部材22へ近接する方向へ傾斜されている。これにより、これらの連結部31では、被覆部押圧部材部23Bに対して、ガラス部押圧部材部23Aがベース部材22側へより容易に変位可能とされている。
【0029】
図3に示すように、上記のベース部材22及び押圧部材23を挟持する板バネ部材24は、連結片部51と、この連結片部51の上下端から同一方向へ延在する一対の押圧片部52とを有する断面コ字状またはC字状に形成されたものである。そして、この板バネ部材24の押圧片部52が、ベース部材22及び押圧部材23に接触されている。また、押圧片部52は、ガラス部押圧固定領域Aに対応したガラス部押圧片部52aと、被覆部押圧固定領域Bに対応した被覆部押圧片部52bとに分割されている。
【0030】
押圧片部52が分割された板バネ部材24を有する光ファイバ接続器1では、突き合わせ箇所Tを含むガラスファイバ1を押圧するガラス部押圧片部52aによるガラス部押圧固定領域Aの付勢力が、光ファイバ心線3の被覆2の部分を押圧する被覆部押圧片部52bによる被覆部押圧固定領域Bよりも大きくされている。
【0031】
また、この板バネ部材24の押圧片部52の幅方向中央位置には、それぞれベース部材22及び押圧部材23側へ突出する複数の凸部54が長手方向へ間隔をあけて形成されており、これらの凸部54がベース部材22及び押圧部材23に当接されている。これらの凸部54を形成することにより、板バネ部材24の付勢力が、押圧片部52を介してベース部材22及び押圧部材23の幅方向中央に集中的に付与される。
【0032】
ガラス部押圧固定領域Aの付勢力を被覆部押圧固定領域Bよりも大きくするには、ガラス部押圧片部52aの凸部54の突出量を、被覆部押圧片部52bの凸部54よりも大きくすれば良い。
また、ガラス部押圧片部52a同士の対向間隔を、被覆部押圧片部52b同士の対向間隔より狭くすることによっても、ガラス部押圧固定領域Aの付勢力を被覆部押圧固定領域Bよりも大きくすることができる。
【0033】
上記構成の光ファイバ接続器11では、板バネ部材24による付勢力が解除された状態、つまり、挿入口16へ楔部材13の楔部13aが挿し込まれてベース部材22と押圧部材23とが離間された非クランプ状態で、長手方向の両側から光ファイバ心線3を収容溝26に挿入してガラスファイバ1同士を突き合わせる。この状態で、挿入口16から楔部13aを抜き取ることにより、板バネ部材24の付勢力が作用してベース部材22と押圧部材23とが挟持されたクランプ状態となる。
【0034】
板バネ部材24によってベース部材22と押圧部材23とが挟持されたクランプ状態となると、ガラス部押圧固定領域Aでは、突き合わせ箇所Tを含むガラスファイバ1がベース部材22と押圧部材23のファイバ押圧部材部23Aとによって押圧されて固定される。また、被覆部押圧固定領域Bでは、光ファイバ心線3の被覆2の部分がベース部材22と押圧部材23の被覆部押圧部材部23Bとによって押圧固定される。
【0035】
また、押圧部材23は、ガラスファイバ1同士の突き合わせ箇所Tと光ファイバ心線3の被覆2の端部Eとの間に、断面積が小さい連結部31を有しているので、この連結部31において弾性変形が生じる。したがって、被覆部押圧固定領域Bよりも大きな付勢力が付与されるガラス部押圧固定領域Aでは、ガラス部押圧片部52aの付勢力が被覆部押圧部材部23Bに作用しにくく、ガラス部押圧部材部23Aに集中して作用し、ガラス部押圧部材部23Aによって突き合わせ箇所Tを含むガラスファイバ1がベース部材22と押圧部材23とによって強固に把持される。
【0036】
これにより、ガラスファイバ1同士の突き合わせ箇所Tをクランプする力が不足するような不具合なく、ガラスファイバ1同士を確実かつ安定してクランプし、良好な接続状態を維持させることができる。
【0037】
また、押圧部材23は、ガラス部押圧部材部23A及び被覆部押圧部材部23Bが連結部31によって連結された一体物であるので、ガラスファイバ1同士の突き合わせ箇所Tにクランプ力を集中させるために分割された押圧部材23を用いる場合と比較して、部品点数や組立作業工程の増加によるコスト高をなくすことができる。しかも、分割した部品同士の搭載精度を考慮する必要もなくすことができる。
【0038】
なお、上記実施形態では、断面積の小さな連結部31を形成するために、連結部31の厚さを薄くしたが、図4(a)に示すように、押圧部材23の幅方向の両側部に切欠き61を形成したり、あるいは図4(b)に示すように、押圧部材23の幅方向の中央部に窓部62を形成し、他の部分よりも断面積の小さな連結部31を形成しても良い。
【0039】
また、上記実施形態では、連結部31を、ガラスファイバ1の突き合わせ箇所Tへ向かって次第にベース部材22へ近接する方向へ傾斜させることが好ましいが、図5に示すように、傾斜させなくても良い。また、この連結部31の形成位置は、厚さ方向の中間に限らず、厚さ方向の上部または下部など何れの位置でも良い。
【0040】
図6に示す例は、中間部へ向かって次第に薄く形成された連結部31を示すものである。この例では、連結部31の中間部にくびれ部31aが形成されている。このような連結部31を形成した場合も、連結部31が他の部分よりも断面積が小さく、また、中間部にくびれ部31aが形成されているので、連結部31での弾性変形のさらなる容易化を図ることができ、これにより、被覆部押圧部材部23Bに対してガラス部押圧部材部23Aでの変位量をより大きくすることができる。
【0041】
なお、連結部31の中間部にくびれ部31aを形成した押圧部材23を備えた光ファイバ接続器11では、連結部31の少なくとも1箇所をくびれ部31aで破断させても良い。
この場合の光ファイバ接続器11の組立方法は、まず、板バネ部材24の内側に互いに重ね合わせたベース部材22と押圧部材23の挿入口16へ楔部材13を挿し込んだ状態で、ベース部材22と押圧部材23との間に、光ファイバ心線3を挿入してガラスファイバ1同士を突き合わせる。次いで、挿入口16から楔部材13を抜いて、板バネ部材24の付勢力によりガラスファイバ1の突き合わせ箇所Tを押圧固定させた時、またはその後に、連結部31の少なくとも1箇所をくびれ部31aで破断させる。連結部31が破断することで、ガラス部押圧固定領域Aと被覆部押圧固定領域Bに作用する付勢力がそれぞれ独立するので、破断しない状態よりも強い付勢力で突き合わせ箇所Tを押圧固定することができる。
【0042】
このような組立方法によれば、組立時には押圧部材23が一体であるので、位置ずれが生じないように搭載するなどの搭載精度を考慮することなく容易に組み立てることができる。また、組立以後には連結部31で破断して押圧部材23を分割するので、ガラスファイバ1同士の突き合わせ箇所Tに、ガラス部押圧片部52aによるクランプ力を効果的に集中させることが可能である。
【0043】
次に、メカニカルスプライス型の光コネクタについて、図2に示した形状の連結部31が押圧部材23に形成された光ファイバ接続器11の機構を備えたものを例示して説明する。
図7及び図8に示すように、光コネクタ71は、メカニカルスプライス型光コネクタであり、ガラスファイバ1を被覆2から露出させた光ファイバ心線3の端部に取り付けられる。
【0044】
光コネクタ71は、ハウジング73の内部にフェルール74を有している。フェルール74には、短尺のガラスファイバ75が内蔵されており、この内蔵のガラスファイバ75は、フェルール74の後端から延在されている。
光コネクタ71には、ハウジング73内におけるフェルール74の後方側に、光ファイバ接続器11と同様の機構であるスプライス機構81を備えており、このスプライス機構81は、光コネクタ71の後端側から挿し込んだ光ファイバ心線3を固定する。
【0045】
このスプライス機構81も、ベース部材22と、このベース部材22の対向位置に配設された押圧部材23と、これらのベース部材22と押圧部材23とを近接方向へ付勢する板バネ部材(付勢部材)24とを備えている。
ベース部材22と押圧部材23との間へ挿入された光ファイバ心線3の被覆2の端部が、板バネ部材24の付勢力によってベース部材22と押圧部材23との間に押圧されて、固定されるようになっている。
【0046】
光コネクタ71のハウジング73には、その側部に複数の挿入口76が形成されており(図7参照)、これらの挿入口76には、楔部材が挿抜可能である。これらの挿入口76へ楔部材を挿し込むことにより、スプライス機構81を構成するベース部材22と押圧部材23とが板バネ部材24の付勢力に抗して離間される。これにより、ベース部材22と押圧部材23とが離間された非クランプ状態で、光ファイバ心線3の端部の挿抜が可能である。
【0047】
スプライス機構81を構成するベース部材22には、その端部に、フェルール74の後端部が嵌合される嵌合凹部25が形成されている。また、このベース部材22の上面からなるクランプ面22aに形成された収容溝26は、ガラスファイバ収容溝26aと心線収容溝26bとから構成されている。
【0048】
フェルール74側のガラスファイバ収容溝26aには、フェルール74から延在された内蔵のファイバ75及び光ファイバ心線3の被覆2から露出されたガラスファイバ1が収容され、心線収容溝26bには、光ファイバ心線3が収容される。
押圧部材23は、光コネクタ71の後端側から挿し込んだ光ファイバ心線3のガラスファイバ1の端面1aと内蔵のガラスファイバ75の端面75aとの突き合わせ箇所Tと、光ファイバ心線3の被覆2の端部Eとの間に連結部31を有している。
【0049】
連結部31が設けられていることにより、押圧部材23は、ガラスファイバ1,75部分を押圧するガラス部押圧部材部23Aと光ファイバ心線3の被覆部分を押圧する被覆部押圧部材部23Bとに分けられている。これにより、スプライス機構81においても、ガラスファイバ1,75同士の突き合わせ箇所Tを含むガラスファイバ1,75を押圧固定する領域がガラス部押圧固定領域Aとされ、光ファイバ心線3をクランプする領域が被覆部押圧固定領域Bとされている。
【0050】
また、この連結部31も、ガラスファイバ1,75同士の突き合わせ箇所Tへ向かって次第にベース部材22へ近接する方向へ傾斜されている。これにより、連結部31では、被覆部押圧部材部23Bに対して、ガラス部押圧部材部23Aがベース部材22側へより容易に変位可能である。
【0051】
上記のベース部材22及び押圧部材23を挟持する板バネ部材24も、押圧片部52が、ガラス部押圧固定領域Aに対応したガラス部押圧片部52aと、被覆部押圧固定領域Bに対応した被覆部押圧片部52bとに分割されている。
そして、ガラスファイバ1,75の突き合わせ箇所Tを押圧するガラス部押圧片部52aによるガラス部押圧固定領域Aの付勢力が、光ファイバ心線3を押圧する被覆部押圧片部52bによる被覆部押圧固定領域Bよりも大きくなるように設定されている。
【0052】
上記構成の光コネクタ71では、板バネ部材24による付勢力が解除された状態、つまり、挿入口16へ楔部材が挿し込まれてベース部材22と押圧部材23とが離間された非クランプ状態で、後端側から光ファイバ心線3を収容溝26に挿入してガラスファイバ1を内蔵のガラスファイバ75に突き合わせる。この状態で、挿入口16から楔部材を抜き取ることにより、板バネ部材24の付勢力が作用してベース部材22と押圧部材23とが挟持されたクランプ状態となる。
【0053】
このように、板バネ部材24によってベース部材22と押圧部材23とが挟持されたクランプ状態となると、ガラス部押圧固定領域Aでは、突き合わせ箇所Tを含むガラスファイバ1,75がベース部材22と押圧部材23のガラス部押圧部材部23Aとによって押圧固定され、また、被覆部押圧固定領域Bでは、光ファイバ心線3がベース部材22と押圧部材23の被覆部押圧部材部23Bとによって押圧固定される。
【0054】
また、このとき、押圧部材23は、ガラスファイバ1,75同士の突き合わせ箇所Tと光ファイバ心線3の被覆2の端部Eとの間に、断面積が小さい連結部31を有しているので、この連結部31で弾性変形が生じる。したがって、被覆部押圧固定領域Bよりも大きな付勢力が付与されるガラス部押圧固定領域Aでは、ガラス部押圧部材部23Aによって突き合わせ箇所Tを含むガラスファイバ1がベース部材22と押圧部材23とによって強固に把持される。
【0055】
これにより、ガラスファイバ1,75を把持するクランプ力が不足するような不具合なく、ガラスファイバ1,75同士を確実かつ安定してクランプし、良好な接続状態を維持させることができる。
【0056】
また、押圧部材23は、ガラス部押圧部材部23A及び被覆部押圧部材部23Bが連結部31によって連結された一体物であるので、ガラスファイバ1,75同士の突き合わせ箇所Tにクランプ力を集中させるために分割された押圧部材23を用いる場合と比較して、部品点数や組立作業工程の増加によるコスト高をなくすことができる。しかも、分割した部品同士の搭載精度を考慮する必要もなくすことができる。
【符号の説明】
【0057】
1,75:ガラスファイバ、2:被覆、3:光ファイバ心線、11:光ファイバ接続器、22:ベース部材、22a:クランプ面(一方の面)、23:押圧部材、24:板バネ部材(付勢部材)、31:連結部、52a:ガラス部押圧片部、52b:被覆部押圧片部、71:光コネクタ、74:フェルール、A:ガラス部押圧固定領域、B:被覆部押圧固定領域、E:被覆の端部、T:突き合わせ箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに突き合わされたガラスファイバ及び前記ガラスファイバの被覆部分が一方の面に配置されるベース部材と、
前記ベース部材の対向位置に配設された押圧部材と、
前記ベース部材と前記押圧部材とを近接方向へ付勢することにより、前記ベース部材の一方の面に配置させた前記ガラスファイバ及び前記被覆部分を押圧固定させる付勢部材とを備え、
前記押圧部材は、前記ガラスファイバ同士の突き合わせ箇所と前記被覆部分の端部との間で断面積が小さな連結部を有し、
前記付勢部材による前記ガラスファイバの突き合わせ箇所を押圧するガラス部押圧固定領域の付勢力が前記被覆部分を押圧する被覆部押圧固定領域よりも大きいことを特徴とする光ファイバ接続器。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ接続器であって、
前記連結部は、前記ガラスファイバの突き合わせ箇所へ向かって次第にベース部材へ近接する方向へ傾斜されていることを特徴とする光ファイバ接続器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ファイバ接続器であって、
前記付勢部材は、前記ガラス部押圧固定領域を押圧するガラス部押圧片部と、前記被覆部押圧固定領域を押圧する被覆部押圧片部とに分割されていることを特徴とする光ファイバ接続器。
【請求項4】
ガラスファイバを内蔵するフェルールと、
前記フェルールに内蔵されたガラスファイバと光ファイバ心線の被覆から露出されたガラスファイバとを接続する請求項1から3の何れか一項に記載の光ファイバ接続器と、を備えていることを特徴とする光コネクタ。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の光ファイバ接続器の組立方法であって、
互いに重ね合わせた前記ベース部材と前記押圧部材の間で、ガラスファイバ同士を突き合わせ、
前記付勢部材の付勢力により前記ガラスファイバの突き合わせ箇所を押圧固定させた以後に、
前記連結部の少なくとも1箇所を破断させることを特徴とする光ファイバ接続器の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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