説明

光ファイバ接続器及び光ファイバ接続方法

【課題】光ファイバの線径にかかわらず、同じ機種を使用して光ファイバ同士の機械的接続を簡単に行うことができる光ファイバ接続器を提供する。
【解決手段】 光ファイバ接続器1は、光ファイバ同士を機械的に接続するメカニカルスプライス部2を備えている。メカニカルスプライス部2は、光ファイバを収容する溝を有するベースプレート5と、光ファイバをベースプレート5に対して押さえる押さえプレート6と、プレート5,6を挟み込むクランプバネ7とからなっている。ベースプレート5の前端部には、内蔵光ファイバ16を保持したフェルール部17が一体固定されている。メカニカルスプライス部2には、細径光ファイバを挿通させるチューブ体23が着脱自在に装着されている。チューブ体23は、メカニカルスプライス部2の後端からメカニカルスプライス部2の内部に挿入されて、メカニカルスプライス部2の内壁面に圧入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本の光ファイバを機械的に接続する光ファイバ接続器及び光ファイバ接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバ接続器としては、例えば特許文献1に記載されているように、メカニカルスプライス部によって2本の光ファイバの先端同士を突き合わせて機械的に接続するようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−121863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、線径が異なる複数種類の光ファイバが存在する。従って、上記従来技術のような光ファイバ接続器を用いて光ファイバ同士を機械的に接続する際には、光ファイバの線径に応じたメカニカルスプライス部を有する光ファイバ接続器をいちいち用意する必要があった。
【0005】
本発明の目的は、光ファイバの線径にかかわらず、同じ機種を使用して光ファイバ同士の機械的接続を簡単に行うことができる光ファイバ接続器及び光ファイバ接続方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光ファイバ接続器は、2本の光ファイバを突き合わせて機械的に接続するメカニカルスプライス部と、メカニカルスプライス部の端からメカニカルスプライス部内に挿入されると共にメカニカルスプライス部に着脱可能に装着され、メカニカルスプライス部内に導入される光ファイバを挿通させるチューブ体とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
このような本発明の光ファイバ接続器において、チューブ体の内径よりも径の小さい細径光ファイバをメカニカルスプライス部内に導入して相手側の光ファイバと接続する場合は、メカニカルスプライス部に装着されたチューブ体に細径光ファイバを挿通させて、その細径光ファイバと相手側の光ファイバとを突き合わせる。一方、チューブ体の外径と同等の径を有する太径光ファイバをメカニカルスプライス部内に導入して相手側の光ファイバと接続する場合は、まずメカニカルスプライス部からチューブ体を取り外す。そして、メカニカルスプライス部の端からメカニカルスプライス部内に太径光ファイバを挿入し、その太径光ファイバと相手側の光ファイバとを突き合わせる。このように光ファイバを挿通させるチューブ体をメカニカルスプライス部に着脱可能に装着しておくことにより、太径光ファイバ用のメカニカルスプライス部を備えた光ファイバ接続器を使用しても、細径光ファイバと相手側の光ファイバとの機械的接続を簡単に行うことができる。
【0008】
好ましくは、チューブ体における光ファイバが挿入される側の端部が拡径した形状をなしている。この場合には、チューブ体における光ファイバが挿入される側の端面の開口が広くなるため、その端面の開口からチューブ体内に光ファイバを容易に挿入することができる。
【0009】
また、チューブ体における光ファイバが挿入される側の端面がチューブ体の軸線に垂直な面に対して傾斜していても良い。この場合にも、チューブ体における光ファイバが挿入される側の端面の開口が広くなるため、その端面の開口からチューブ体内に光ファイバを容易に挿入することができる。
【0010】
また、好ましくは、メカニカルスプライス部には、2本の光ファイバの一方を構成する内蔵光ファイバを保持するフェルール部が固定されている。この場合には、2本の光ファイバの一方が内蔵光ファイバとしてフェルール部に保持されているため、もう一方の光ファイバのみをメカニカルスプライス部内に導入して、内蔵光ファイバと突き合わせれば良い。
【0011】
このとき、メカニカルスプライス部を収容するハウジングと、ハウジングにおける光ファイバが導入される側の端部を補強するブーツとを更に備え、チューブ体における光ファイバが挿入される側の端部は、ブーツの内部に収容されていることが好ましい。このような構成では、チューブ体の色が不透明であっても、チューブ体がブーツの外部に出ないことから、例えば色の異なる複数の光ファイバが配線されている場合に、所望の光ファイバを特定しやすくなる。
【0012】
また、メカニカルスプライス部を収容するハウジングと、ハウジングにおける光ファイバが導入される側の端部を補強するブーツとを更に備え、チューブ体における光ファイバが挿入される側の端部は、ブーツの外部に突出していても良い。このような構成では、ブーツの外部において光ファイバがチューブ体に保護されることになるため、安心感をもって光ファイバをハンドリングすることができる。
【0013】
さらに、好ましくは、チューブ体は、メカニカルスプライス部の内壁面に圧入固定されている。この場合には、チューブ体をメカニカルスプライス部に簡単かつ確実に固定することができる。
【0014】
また、メカニカルスプライス部の内壁面には、チューブ体の挿入方向に向かって空間を拡げるようなテーパ部が設けられており、チューブ体における光ファイバが挿入される側とは反対側の端部には、テーパ部に係合する拡径部が設けられていても良い。このような構成では、メカニカルスプライス部の内壁面に設けられたテーパ部に拡径部を係合させることで、メカニカルスプライス部に応力が常時加わらないようにチューブ体をメカニカルスプライス部に固定することができる。この場合には、チューブ体にクリープが生じにくくなるため、チューブ体とメカニカルスプライス部との固定力がクリープにより低下することが防止される。
【0015】
本発明の光ファイバ接続方法は、上述した光ファイバ接続器を用意する工程と、光ファイバをチューブ体に挿通させてメカニカルスプライス部内に導入し、2本の光ファイバの先端同士を突き合わせる工程と、各光ファイバをチューブ体と共にメカニカルスプライス部に固定する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0016】
このような本発明の光ファイバ接続方法において、チューブ体の内径よりも径の小さい細径光ファイバをメカニカルスプライス部内に導入して相手側の光ファイバと接続する場合は、細径光ファイバをチューブ体に挿通させてメカニカルスプライス部内に導入し、相手側の光ファイバと突き合わせる。従って、チューブ体の外径と同等の径を有する太径光ファイバ用のメカニカルスプライス部を備えた光ファイバ接続器を使用しても、細径光ファイバと相手側の光ファイバとの機械的接続を簡単に行うことができる。
【0017】
また、本発明の光ファイバ接続方法は、上述した光ファイバ接続器を用意する工程と、メカニカルスプライス部からチューブ体を取り外す工程と、光ファイバをメカニカルスプライス部内に導入し、2本の光ファイバの先端同士を突き合わせる工程と、各光ファイバをメカニカルスプライス部に固定する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0018】
このような本発明の光ファイバ接続方法において、チューブ体の外径と同等の径を有する太径光ファイバをメカニカルスプライス部内に導入して相手側の光ファイバと接続する場合は、まずメカニカルスプライス部からチューブ体を取り外し、その状態で太径光ファイバをメカニカルスプライス部の端からメカニカルスプライス部内に導入し、相手側の光ファイバと突き合わせる。従って、太径光ファイバ用のメカニカルスプライス部を備えた光ファイバ接続器をそのまま使用して、太径光ファイバと相手側の光ファイバとの機械的接続を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光ファイバの線径にかかわらず、同じ機種を使用して光ファイバ同士の機械的接続を簡単に行うことができる。これにより、光ファイバの線径に応じたメカニカルスプライス部を有する光ファイバ接続器をいちいち用意しなくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係わる光ファイバ接続器の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示したメカニカルスプライス部の断面図である。
【図3】図2に示したメカニカルスプライス部の開閉状態を示す断面図である。
【図4】図2に示したチューブ体の斜視図である。
【図5】図1に示した光ファイバ接続器に楔部材が取り付けられた状態を示す平面図及び側面図である。
【図6】図2に示したメカニカルスプライス部に設けられた内蔵光ファイバに細径光ファイバ心線を突き合わせる状態を示す断面図である。
【図7】図1に示したハウジングにブーツが装着された状態を示す斜視図である。
【図8】図1に示したメカニカルスプライス部に設けられた内蔵光ファイバに太径光ファイバ心線を突き合わせる状態を示す断面図である。
【図9】本発明に係わる光ファイバ接続器の他の実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明に係わる光ファイバ接続器の更に他の実施形態の主要部を示す断面図である。
【図11】本発明に係わる光ファイバ接続器の更に他の実施形態の主要部を示す断面図である。
【図12】図11に示したメカニカルスプライス部において2本の細径光ファイバ心線同士を突き合わせる状態を示す断面図である。
【図13】図4に示したチューブ体の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係わる光ファイバ接続器及び光ファイバ接続方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明に係わる光ファイバ接続器の一実施形態を示す斜視図である。同図において、本実施形態の光ファイバ接続器1は、線径(外径)が0.9mmの光ファイバ心線(ここでは太径光ファイバ心線とする)が組み付けられる太径光ファイバ用のメカニカルスプライス型コネクタである。
【0023】
光ファイバ接続器1は、光ファイバ心線同士を機械的に接続するメカニカルスプライス部2と、このメカニカルスプライス部2を収容するハウジング3と、このハウジング3の前端から中央部分を覆うツマミ4とを備えている。ハウジング3の内部には、メカニカルスプライス部2を前方に付勢するバネ(図示せず)が配置されている。
【0024】
メカニカルスプライス部2は、図2及び図3に示すように、ベースプレート5と、押さえプレート6と、これらのベースプレート5及び押さえプレート6を挟み込むU字状のクランプバネ7とからなっている。
【0025】
ベースプレート5の内壁面には、光ファイバ心線を位置決め収容する断面V字状のファイバ収容溝8が形成されている。ファイバ収容溝8は、光ファイバ心線の裸ファイバが位置決め収容される小溝部9と、この小溝部9の後方に配置された大溝部10とを有している(図8参照)。大溝部10の幅及び深さは、小溝部9の幅及び深さよりも大きくなっている。また、ファイバ収容溝8における小溝部9と大溝部10との間には、大溝部10から小溝部9側(前側)に向かって溝幅及び溝深さを連続的に大きくするテーパ部11と、このテーパ部11から前側に向かって溝幅及び溝深さを連続的に小さくするテーパ部12とが形成されている(図8参照)。
【0026】
押さえプレート6は、ベースプレート5のファイバ収容溝8に収容された光ファイバ心線をベースプレート5に対して押さえるプレートである。押さえプレート6の内壁面における大溝部10に対応する部位には、断面略矩形状の溝部13が形成されている(図8参照)。また、押さえプレート6の内壁面において、上記テーパ部11に対応する部位には、溝部13から前側に向かって溝深さを連続的に大きくするテーパ部14が形成され、上記テーパ部12に対応する部位には、テーパ部14から前側に向かって溝深さを連続的に小さくするテーパ部15が形成されている(図8参照)。
【0027】
つまり、テーパ部11,14によってメカニカルスプライス部2内の空間がメカニカルスプライス部2の前側に向かって拡がり、テーパ部12,15によってメカニカルスプライス部2内の空間がメカニカルスプライス部2の前側に向かって狭くなっている。
【0028】
ベースプレート5の前端部には、短尺状の内蔵光ファイバ16を保持したフェルール部17が一体固定されている。フェルール部17の前端面は研磨されている。内蔵光ファイバ16は、フェルール部17の前端面からメカニカルスプライス部2のファイバ収容溝8まで延びている。
【0029】
メカニカルスプライス部2におけるベースプレート5と押さえプレート6との境界部分には、楔部材19(図5参照)の楔部19aが挿入される複数(ここでは2つ)の楔挿入凹部20が形成されている。ベースプレート5及び押さえプレート6は、楔挿入凹部20の反対側からクランプバネ7に挟み込まれている。
【0030】
ハウジング3には、図1に示すように、楔部材19の楔部19aを貫通させてメカニカルスプライス部2の楔挿入凹部20に挿入させるための複数(ここでは2つ)の貫通長穴21が形成されている。また、ツマミ4における各貫通長穴21に対応する位置には、貫通長穴22a及び切り欠き22bが形成されている。
【0031】
メカニカルスプライス部2には、線径が0.25mmの光ファイバ心線(ここでは細径光ファイバ心線とする)を挿通させるチューブ体23が着脱自在に装着されている。チューブ体23は、例えば不透明な樹脂等で形成されている。チューブ体23の外径は、上記の太径光ファイバの線径と同じ0.9mmとなっている。チューブ体23の一端部分には、図4にも示すように、当該一端に向かって連続的に拡径したラッパ状の拡径部24が設けられている。
【0032】
チューブ体23は、ハウジング3の後端からハウジング3の内部に挿入され、更にメカニカルスプライス部2の後端からメカニカルスプライス部2の内部に挿入されている。このとき、チューブ体23の先端部(拡径部24とは反対側の端部)は、メカニカルスプライス部2の内壁面に形成されたテーパ部12,15に圧入されている。これにより、チューブ体23は、メカニカルスプライス部2に対して容易に着脱可能に固定され、メカニカルスプライス部2から抜け出ることは無い。なお、チューブ体23の拡径部24は、ハウジング3の後方に突出している(図1参照)。
【0033】
以上のような太径光ファイバ用のメカニカルスプライス型コネクタ(光ファイバ接続器)1に設けられた内蔵光ファイバ17に細径光ファイバ心線を接続する場合には、まず図5に示すような楔部材19(前述)を用意する。
【0034】
そして、図3(b)及び図5に示すように、楔部材19の各楔部19aがツマミ4の貫通長穴22a及び切り欠き22bとハウジング3の各貫通長穴21とを通してメカニカルスプライス部2の各楔挿入凹部20に挿入されるように、楔部材19を光ファイバ接続器1の上にセットする。すると、メカニカルスプライス部2のベースプレート5及び押さえプレート6がクランプバネ7の付勢力に抗して開いた状態となる。
【0035】
そして、図6に示すように、細径光ファイバ心線25の先端部分の被覆を除去して裸ファイバ25aを露出させた状態で、チューブ体23の拡径部24から細径光ファイバ心線25をチューブ体23に挿通させてメカニカルスプライス部2の内部に導入する。このとき、拡径部24によってチューブ体23のファイバ挿入口の開口面積が広くなっているため、チューブ体23への細径光ファイバ心線25の挿入を容易に行うことができる。そして、細径光ファイバ心線25をベースプレート5のファイバ収容溝8に沿って移動させ、裸ファイバ25aの先端面を内蔵光ファイバ16の先端面に突き合わせる。
【0036】
その状態で、図3(c)に示すように、楔部材19の楔部19aをメカニカルスプライス部2の楔挿入凹部20から抜去する。すると、メカニカルスプライス部2のベースプレート5及び押さえプレート6がクランプバネ7の付勢力により閉じられ、チューブ体23に外力が加えられる。これにより、細径光ファイバ心線25と内蔵光ファイバ16とが接続された状態で、両者がチューブ体23と共にメカニカルスプライス部2に固定されることとなる。
【0037】
その後、図7に示すように、補強用のブーツ26をハウジング3の後端部に装着する。これにより、チューブ体23の拡径部24がブーツ26の内部に収容されることとなる。このように不透明なチューブ体23がブーツ26に覆われるため、細径光ファイバ心線25が確実に露出されるようになる。このため、周囲に色の異なる複数本の細径光ファイバ心線が配線されている場合でも、必要な細径光ファイバ心線を容易に探し出すことができる。
【0038】
一方、光ファイバ接続器1に設けられた内蔵光ファイバ16に太径光ファイバ心線を接続する場合には、まず図5に示すような楔部材19を用いて、上記と同様にメカニカルスプライス部2のベースプレート5及び押さえプレート6を開いた状態にする。
【0039】
その状態で、図8(a)に示すように、チューブ体23をメカニカルスプライス部2から取り外す。このとき、チューブ体23は単にメカニカルスプライス部2の内壁面に圧入固定されているので、チューブ体23を引き抜くだけで容易にメカニカルスプライス部2から取り外すことができる。
【0040】
そして、図8(b)に示すように、メカニカルスプライス部2の後端から太径光ファイバ心線27をメカニカルスプライス部2の内部に導入し、太径光ファイバ心線27の裸ファイバ27aの先端面を内蔵光ファイバ16の先端面に突き合わせる。続いて、上記と同様に楔部材19の楔部19aをメカニカルスプライス部2の楔挿入凹部20から抜去することで、太径光ファイバ心線27と内蔵光ファイバ16とが接続された状態で両者がメカニカルスプライス部2に固定されることとなる。
【0041】
以上のように本実施形態にあっては、細径光ファイバ心線25をメカニカルスプライス部2内の内蔵光ファイバ16に接続するときは、細径光ファイバ心線25をチューブ体23に挿通させてメカニカルスプライス部2の内部に導入し、細径光ファイバ心線25と内蔵光ファイバ16とを突き合わせるので、太径光ファイバ用のメカニカルスプライス部2であっても細径光ファイバ心線25と内蔵光ファイバ16との機械的接続を簡単に行うことができる。一方、太径光ファイバ心線27を内蔵光ファイバ16に接続するときは、メカニカルスプライス部2からチューブ体23を取り外し、その状態で太径光ファイバ心線27をメカニカルスプライス部2の内部に導入して内蔵光ファイバ16に突き合わせる。
【0042】
このように太径光ファイバ心線27及び細径光ファイバ心線25に対して、太径光ファイバ用のメカニカルスプライス部2を有する光ファイバ接続器1を共用することが可能となる。これにより、細径光ファイバ心線25の接続時に、細径光ファイバ用のメカニカルスプライス部を有する光ファイバ接続器をいちいち用意しなくて済む。また、太径光ファイバ心線27にも細径光ファイバ心線25にも対応可能となるようにメカニカルスプライス部2の内部構造を複雑な形状に設計して製作する必要も無くなるため、コスト的に非常に有利となる。
【0043】
さらに、チューブ体23を予めメカニカルスプライス部2に着脱可能に装着しておくので、細径光ファイバ心線25の接続作業を行う際に、作業現場でメカニカルスプライス部2内にチューブ体23を挿入しなくて済み、作業性を向上させることができる。
【0044】
図9は、本発明に係わる光ファイバ接続器の他の実施形態を示す斜視図である。同図において、本実施形態の光ファイバ接続器1では、チューブ体23がブーツ26の外部に露出している。つまり、チューブ体23は、前端側部分がハウジング3を介してメカニカルスプライス部2の内部に挿入されていると共に、拡径部24を含む後端側部分がブーツ26の外部から突出して後方に延びている。
【0045】
本実施形態では、ブーツ26の外部において細径光ファイバ心線25がチューブ体23に保護されることになるため、余計な心配をせずに安心して細径光ファイバ心線25をハンドリングすることができる。
【0046】
図10は、本発明に係わる光ファイバ接続器の更に他の実施形態の主要部を示す断面図である。同図において、チューブ体23における拡径部24の反対側の端部には、当該端に向かって連続的に拡径したラッパ状の拡径部29が設けられている。拡径部29は、メカニカルスプライス部2の内壁面に形成されたテーパ部11,14(図8参照)に係合し、拡径部24よりも小さい寸法を有している。
【0047】
このようなチューブ体23は、拡径部29がテーパ部11,14に引っ掛かるような状態で、メカニカルスプライス部2の内部に挿入されている。従って、チューブ体23がメカニカルスプライス部2から抜け出ることは無い。また、拡径部29がテーパ部11,14に引っ掛かるようにチューブ体23がメカニカルスプライス部2に装着されることで、上記の圧入固定の場合と異なり、チューブ体23による応力がメカニカルスプライス部2に常時加わることが無い。従って、チューブ体23にクリープが生じにくくなるため、チューブ体23のクリープによるチューブ体23とメカニカルスプライス部2との固定力低下を抑制することができる。
【0048】
図11は、本発明に係わる光ファイバ接続器の更に他の実施形態の主要部を示す断面図である。同図において、本実施形態の光ファイバ接続器30は、メカニカルスプライス部31を備えている。メカニカルスプライス部31は、本来は太径光ファイバ心線27(図8参照)同士を両側から突き当てて接続するものである。
【0049】
メカニカルスプライス部31は、図2に示すメカニカルスプライス部2と同様に、ベースプレート5、押さえプレート6及びクランプバネ7から構成されている。ベースプレート5及び押さえプレート6の内壁面の構造は、メカニカルスプライス部31の両側で対称となっている。
【0050】
また、メカニカルスプライス部31には、2本のチューブ体23が着脱自在に装着されている。具体的には、各チューブ体23は、拡径部24がハウジング3(図1参照)の後方に突出するように、メカニカルスプライス部31の両端側からメカニカルスプライス部31の内部に挿入されている。
【0051】
このようなメカニカルスプライス部31を有する光ファイバ接続器30を用いて、2本の細径光ファイバ心線25同士を接続するときは、上述したように楔部材19(図5参照)によりメカニカルスプライス部31のベースプレート5及び押さえプレート6を開く。その状態で、図12に示すように、2本の細径光ファイバ心線25をそれぞれメカニカルスプライス部31の両側からチューブ体23に挿通させてメカニカルスプライス部31の内部に導入し、各細径光ファイバ心線25の裸ファイバ25a同士を突き合わせる。
【0052】
そして、上述したように楔部材19をメカニカルスプライス部31から取り外し、メカニカルスプライス部31のベースプレート5及び押さえプレート6を閉じる。これにより、各細径光ファイバ心線25同士が接続された状態でメカニカルスプライス部31に固定されることとなる。
【0053】
以上のような本実施形態においては、太径光ファイバ用のメカニカルスプライス部31を有する光ファイバ接続器30を用いて、細径光ファイバ心線25同士の接続が可能となるため、細径光ファイバ用のメカニカルスプライス部を有する光ファイバ接続器を用意する必要が無い。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、チューブ体23の一端部にラッパ状の拡径部24が設けられているが、細径光ファイバ心線25をチューブ体23に挿通しやすくするための構造としては、特に上記のものには限られない。
【0055】
例えば図13(a)に示すように、チューブ体23の一端面をチューブ体23の軸心に垂直な面に対して斜めになるように切断した傾斜面33を形成しても良い。また、図13(b)に示すように、チューブ体23の一端部分をラッパ状に加工して上記の拡径部24を形成し、その後で拡径部24をチューブ体23の軸心方向に切断してU字状の切断面24aを形成しても良い。いずれの場合にも、チューブ体23の一端面の開口面積が広くなるため、チューブ体23への細径光ファイバ心線25の挿入を容易に行うことができる。
【0056】
また、上記実施形態は、太径光ファイバ用のメカニカルスプライス部を用いて、線径が0.25mmの細径光ファイバ心線及び線径が0.9mmの太径光ファイバ心線の機械的接続を行うものであるが、使用する光ファイバ心線の線材サイズとしては、特にそれには限られない。また、図11に示す光ファイバ接続器30を用いて、線径の異なる2本の光ファイバ心線を突き合わせて接続することも可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…光ファイバ接続器、2…メカニカルスプライス部、3…ハウジング、11…テーパ部、14…テーパ部、16…内蔵光ファイバ、17…フェルール部、23…チューブ体、24…拡径部、25…細径光ファイバ心線、26…ブーツ、27…太径光ファイバ心線、29…拡径部、30…光ファイバ接続器、31…メカニカルスプライス部、33…傾斜面。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の光ファイバを突き合わせて機械的に接続するメカニカルスプライス部と、
前記メカニカルスプライス部の端から前記メカニカルスプライス部内に挿入されると共に前記メカニカルスプライス部に着脱可能に装着され、前記メカニカルスプライス部内に導入される前記光ファイバを挿通させるチューブ体とを備えることを特徴とする光ファイバ接続器。
【請求項2】
前記チューブ体における前記光ファイバが挿入される側の端部が拡径した形状をなしていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ接続器。
【請求項3】
前記チューブ体における前記光ファイバが挿入される側の端面が前記チューブ体の軸線に垂直な面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ接続器。
【請求項4】
前記メカニカルスプライス部には、前記2本の光ファイバの一方を構成する内蔵光ファイバを保持するフェルール部が固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光ファイバ接続器。
【請求項5】
前記メカニカルスプライス部を収容するハウジングと、
前記ハウジングにおける前記光ファイバが導入される側の端部を補強するブーツとを更に備え、
前記チューブ体における前記光ファイバが挿入される側の端部は、前記ブーツの内部に収容されていることを特徴とする請求項4記載の光ファイバ接続器。
【請求項6】
前記メカニカルスプライス部を収容するハウジングと、
前記ハウジングにおける前記光ファイバが導入される側の端部を補強するブーツとを更に備え、
前記チューブ体における前記光ファイバが挿入される側の端部は、前記ブーツの外部に突出していることを特徴とする請求項4記載の光ファイバ接続器。
【請求項7】
前記チューブ体は、前記メカニカルスプライス部の内壁面に圧入固定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の光ファイバ接続器。
【請求項8】
前記メカニカルスプライス部の内壁面には、前記チューブ体の挿入方向に向かって空間を拡げるようなテーパ部が設けられており、
前記チューブ体における前記光ファイバが挿入される側とは反対側の端部には、前記テーパ部に係合する拡径部が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の光ファイバ接続器。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項記載の光ファイバ接続器を用意する工程と、
光ファイバを前記チューブ体に挿通させて前記メカニカルスプライス部内に導入し、2本の光ファイバの先端同士を突き合わせる工程と、
前記各光ファイバを前記チューブ体と共に前記メカニカルスプライス部に固定する工程とを含むことを特徴とする光ファイバ接続方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項記載の光ファイバ接続器を用意する工程と、
前記メカニカルスプライス部から前記チューブ体を取り外す工程と、
光ファイバを前記メカニカルスプライス部内に導入し、2本の光ファイバの先端同士を突き合わせる工程と、
前記各光ファイバを前記メカニカルスプライス部に固定する工程とを含むことを特徴とする光ファイバ接続方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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