説明

光ファイバ母材製造方法

【課題】伝送損失が小さい光ファイバを製造する上で好適な光ファイバ母材を製造することができる方法を提供する。
【解決手段】本発明の光ファイバ母材製造方法は、 (1) 平均濃度5atm・ppm以上のアルカリ金属元素が添加された石英ガラスからなるガラスロッドを作製するロッド作製工程と、(2) ロッド作製工程において作製されたガラスロッドを熱処理する熱処理工程と、(3) 熱処理工程において熱処理されたガラスロッドの外周に、濃度6000atm・ppm以上の塩素を含みアルカリ金属元素を含まない石英ガラス層を設けて、ガラスロッドおよび石英ガラス層をコア部とするコア部作製工程と、(4) コア部作製工程において作製されたコア部の外周に、そのコア部の屈折率より低い屈折率を有する石英ガラスのクラッド部を設けるクラッド部作製工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ母材製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルカリ金属がコア領域に添加された石英系ガラスからなる光ファイバが知られている(特許文献1参照)。アルカリ金属をコア部に添加することで、光ファイバ母材を線引する際におけるそのコア部の粘性を下げることができ、石英ガラスのネットワーク構造の緩和が進行するので、その線引により製造される光ファイバの伝送損失を低減することができるとされている。
【0003】
アルカリ金属を石英系ガラス中に添加する方法としては拡散法が知られている。拡散法は、原料となるアルカリ金属またはアルカリ金属塩などの原料蒸気を石英系ガラスからなるガラスパイプ内に導入しながら、ガラスパイプを外部熱源により加熱したりガラスパイプ内にプラズマを発生させたりすることで、アルカリ金属元素をガラスパイプの内表面に拡散添加するものである。
【0004】
このようにしてアルカリ金属をガラスパイプ中に添加した後、このガラスパイプを縮径する。縮径後、アルカリ金属元素の添加の際に同時に添加されてしまうNiやFeなどの遷移金属を除去する目的で、ガラスパイプの内面をエッチングする。エッチング後、ガラスパイプを中実化することで、アルカリ金属添加コアロッドを製造する。このアルカリ金属添加コアロッドの外側にクラッド部を合成することで光ファイバ母材を製造する。そして、この光ファイバ母材を線引することで光ファイバを製造することができる。カリウムを始めとするアルカリ金属元素を気相蒸着法で添加したガラス体において、ガラス中のカリウムの一部は、ガラスの形成元素である酸素または塩素と反応して酸化物または塩化物の状態で存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−504080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1には、低散乱を達成するために、光ファイバ母材に対して温度1600℃で30時間に亘って熱処理を加えることが最も望ましいと記載されている。しかし、この条件では、アルカリ金属元素に起因する気泡または結晶が生じ易くなる。このような光ファイバ母材を線引することで製造される光ファイバは、伝送損失が大きいものとなる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、伝送損失が小さい光ファイバを製造する上で好適な光ファイバ母材を製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光ファイバ母材製造方法は、 (1) 平均濃度5atm・ppm以上のアルカリ金属元素が添加された石英系ガラスからなるガラスロッドを作製するロッド作製工程と、(2) ロッド作製工程において作製されたガラスロッドを熱処理する熱処理工程と、(3) 熱処理工程において熱処理されたガラスロッドの外周に、濃度6000atm・ppm以上の塩素を含みアルカリ金属元素を含まない石英ガラス層を設けて、ガラスロッドおよび石英ガラス層をコア部とするコア部作製工程と、(4) コア部作製工程において作製されたコア部の外周に、そのコア部の屈折率より低い屈折率を有する石英系ガラスからなるクラッド部を設けるクラッド部作製工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
熱処理工程において、800℃より高く1400℃以下の温度でガラスロッドを熱処理するのが好ましく、また、8時間以上20時間以下に亘ってガラスロッドを熱処理するのが好ましい。
【0010】
ロッド作製工程において、塩素添加濃度が400atm・ppm以下であるガラスロッドを作製するのが好ましく、また、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウムのいずれかがアルカリ金属元素として添加されたガラスロッドを作製するのが好ましい。
【0011】
コア部作製工程において、石英ガラス層の塩素濃度が6000atm・ppm以上14000atm・ppm以下であるのが好ましく、また、石英ガラス層の塩素濃度が8000atm・ppm以上17000atm・ppm以下であるであるのも好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、伝送損失が小さい光ファイバを製造する上で好適な光ファイバ母材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の光ファイバ母材製造方法のフローチャートである。
【図2】本実施形態の光ファイバ母材製造方法の各工程を説明する図である。
【図3】本実施形態の光ファイバ母材製造方法のロッド作製工程(ステップS1)のフローチャートである。
【図4】本実施形態の光ファイバ母材製造方法におけるアルカリ金属添加工程を説明する図である。
【図5】実施例および比較例それぞれの製造条件および評価結果を纏めた図表である。
【図6】実施例および比較例それぞれの製造条件および評価結果を纏めた図表である。
【図7】熱処理工程(ステップS2)の温度・時間と気泡・結晶の発生との関係を示す図である。
【図8】実施例7の光ファイバの屈折率プロファイルを示す図である。
【図9】実施例15の光ファイバの屈折率プロファイルを示す図である。
【図10】屈折率プロファイルの諸例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
カリウムは非常に塩素と結合し易い性質を有している。そのため、K添加ガラス体中の遊離したカリウムは、製造プロセスにおいて温度1500℃以上に加熱されて拡散し、塩素を多く含むガラスに到達するとそこで塩化カリウムを生成すると推定される。そして、このようにして生成した塩化カリウムが、気泡や結晶の原因になっていると推定される。本発明は、このような考察に基づいている。
【0016】
図1は、本実施形態の光ファイバ母材製造方法のフローチャートである。本実施形態の光ファイバ母材製造方法は、ロッド作製工程(ステップS1)、熱処理工程(ステップS2)、コア部作製工程(ステップS3)およびクラッド部作製工程(ステップS4)の各処理を順に行うことで、光ファイバ母材を製造することができる。図2は、本実施形態の光ファイバ母材製造方法の各工程を説明する図である。
【0017】
ロッド作製工程(ステップS1)では、平均濃度5atm・ppm以上のアルカリ金属元素が添加された石英系ガラスからなるガラスロッド11を作製する。このガラスロッド11は、塩素添加濃度が400atm・ppm以下であるのが好ましい。また、添加するアルカリ金属元素は、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウムのいずれかであるのが好ましい。
【0018】
熱処理工程(ステップS2)では、ロッド作製工程において作製されたガラスロッド11を加熱源20により熱処理する。ガラスロッド11の熱処理は、800℃より高く1400℃以下の温度で行うのが好ましく、また、8時間以上20時間以下に亘って行うのが好ましい。加熱源20として、誘導炉、抵抗炉、酸水素バーナーおよびプラズマバーナの何れを用いてもよい。
【0019】
コア部作製工程(ステップS3)では、熱処理工程において熱処理されたガラスロッド11の外周に、濃度6000atm・ppm以上の塩素を含みアルカリ金属元素を含まない石英ガラス層12を設けて、ガラスロッド11および石英ガラス層12をコア部とする。石英ガラス層12の塩素濃度は、6000atm・ppm以上14000atm・ppm以下であるのが好ましく、或いは、8000atm・ppm以上17000atm・ppm以下であるのが好ましい。
【0020】
クラッド部作製工程(ステップS4)では、コア部作製工程において作製されたコア部(ガラスロッド11、石英ガラス層12)の外周に、そのコア部の屈折率より低い屈折率を有する石英系ガラスからなるクラッド部13を設ける。これにより光ファイバ母材10を製造することができる。そして、この光ファイバ母材10を線引することで光ファイバを製造することができる。
【0021】
上記のロッド作製工程(ステップS1)はステップS11〜S15の各処理を含む。以下ではステップS11〜S15の各処理について説明する。図3は、本実施形態の光ファイバ母材製造方法のロッド作製工程(ステップS1)のフローチャートである。ロッド作製工程(ステップS1)では、ステップS11〜S15の各処理を順に行うことで、アルカリ金属元素が添加されたガラスロッド11を作製することができる。図4は、本実施形態の光ファイバ母材製造方法におけるアルカリ金属添加工程を説明する図である。
【0022】
ステップS11では、石英系ガラスからなるガラスパイプが準備される。このガラスパイプは、好ましくは純石英ガラスであるが、その製造過程で不可避的に添加されるハロゲンを含んでいてもよい。このガラスパイプは、光ファイバのコア領域(またはコア領域の一部)となるべきものである。
【0023】
ステップS12は、ガラスパイプにアルカリ金属を添加するアルカリ金属添加工程である。ステップS12では、図4に示されるように、ガラスパイプ1の内部に、熱源(電気炉やバーナなど)2により加熱されたアルカリ金属原料3のガスをキャリアガス(O2ガスなど)と共に供給する。これとともに、ガラスパイプ1を外部熱源(熱プラズマや酸水素火炎など)4により加熱する。これにより、ガラスパイプ1の内面からガラスパイプ1にアルカリ金属を拡散添加する。
【0024】
ステップS13では、ガラスパイプを加熱して縮径する。ステップS14では、ガラスパイプの内面をエッチングすることで、アルカリ金属元素の添加の際に同時に添加されてしまうNiやFeなどの遷移金属を除去する。ステップS15は、ガラスパイプを加熱し中実化する中実化工程である。これにより、アルカリ金属添加コアガラスロッドを製造することができる。
【0025】
次に、光ファイバ製造方法の具体例(実施例、比較例)の諸条件について説明するとともに、この方法により得られた光ファイバ母材および光ファイバの評価結果について説明する。図5および図6は、実施例および比較例それぞれの製造条件および評価結果を纏めた図表である。
【0026】
ステップS11で準備したガラスパイプは、50atm・ppm〜700atm・ppmのClおよび5,000atm・ppmのFをドーパントとして含み、その他の不純物の濃度は10atm・ppm以下であって、実質的に純石英ガラスであった。このガラスパイプの外径は直径35mmであり、内径は直径20mm程度であった。
【0027】
ステップS12では、アルカリ金属原料として臭化カリウム(KBr)を用い、これを外部熱源により温度700℃〜800℃に加熱してKBr蒸気を発生させた。そして、キャリアガスとして導入した流量1SLM(標準状態に換算して1リットル/min)の酸素と共にKBr蒸気をガラスパイプに導入しながら、外部熱源である熱プラズマ火炎によってガラスパイプの外表面が2050℃となるように加熱した。熱プラズマ火炎を30mm/minの速さでトラバースさせ、合計30ターン加熱し、カリウム金属元素をガラスパイプの内表面に拡散添加させた。
【0028】
ステップS13では、カリウム金属元素が添加されたガラスパイプ内に酸素(2SLM)を流しながら、外部熱源である熱プラズマ火炎によってガラスパイプの外表面が2100℃となるように加熱した。熱プラズマ火炎を40mm/minの速さでトラバースさせ、合計5ターン加熱し、カリウム金属元素が添加されたガラスパイプの内表面に酸素分子を拡散添加させた。また、同時に、カリウム金属元素が添加されたガラスパイプを内直径3mmまで縮径した。
【0029】
ステップS14では、カリウム金属元素及び酸素分子が添加されたガラスパイプにSF(0.05SLM)および酸素(1SLM)を導入しながら、外部熱源で加熱し気相エッチングすることで、ガラスパイプの内直径を3.4mmにした。
【0030】
ステップS15では、ガラスパイプ内に酸素(1SLM)を導入しながら、ガラスパイプ内の絶対圧を1kPaにまで減圧し、外部熱源によって表面温度を1400℃として中実化し、外径が28mmのアルカリ金属添加コアガラスロッドとした。このコアガラスロッドの酸素分子濃度は最大値で115ppbであり、カリウム濃度はピーク値で3,500ppmであった。
【0031】
以上のステップS11〜S15を含むロッド作製工程(ステップS1)により、アルカリ金属元素が添加された石英系ガラスからなるガラスロッドを作製した。熱処理工程(ステップS2)では、ガラスロッドを熱処理する際の温度を800〜1400℃とし、時間を1.5〜60時間とした。コア部作製工程(ステップS3)では、熱処理されたガラスロッドの外周に設ける石英ガラス層の塩素濃度を各値とした。クラッド部作製工程(ステップS4)では、コア部の外周に設けるクラッド部を、Fが添加された石英系ガラスとした。このような条件で光ファイバ母材を製造し、この光ファイバ母材を線引することで光ファイバを製造した。
【0032】
図5には、各条件で製造された光ファイバ母材の外観評価結果が示され、また、この光ファイバ母材を線引して製造された光ファイバの波長1550nmでの伝送損失が示されている。この図に示された実施例1〜14および比較例1,2から以下のことが判る。
【0033】
実施例1〜3から以下のことが判る。コア部作製工程(ステップS3)においてコア部の一部として合成する石英ガラス層の塩素濃度が高濃度であるほど、光ファイバの低損失化を図ることができる。光ファイバの波長1550nmでの伝送損失を0.175dB/km以下とするためには、石英ガラス層の塩素濃度は6000atm・ppm以上であることが望ましい。
【0034】
実施例7、7´から以下のことが判る。ロッド作製工程(ステップS1)でカリウムを添加する石英ガラスのCl濃度が低いほど、ガラス中の気泡や結晶の発生の抑制を図ることができる。望ましくはCl濃度は400atm・ppm以下である。
【0035】
実施例4〜6,10,11から以下のことが判る。熱処理工程(ステップS2)においてガラスロッドを熱処理する際の温度を1200℃以下(望ましくは1000℃)とすることで熱処理工程(ステップS2)における気泡・結晶化の抑制を図ることができる。逆に温度800℃まで下げるとコア部作製工程(ステップS3)より後の工程での気泡・結晶化が発生するので、温度1000℃が望ましい。
【0036】
実施例8〜10から以下のことが判る。コア部の平均カリウム濃度が25atm・ppmと比較的高濃度である場合、ロッド作製工程(ステップS1)においてカリウムを添加したガラスロッドを作製する際、Cl濃度が少なくとも700atm・ppmまで高濃度化すると、コア部の一部が気泡化または結晶化する。この気泡及び結晶化は、線引工程でのガラス径の径変動または線引工程後後の局所的な損失増を招いてしまう。よって、コア中の平均カリウム濃度が25atm・ppm以上であるときは、カリウム添加ガラス中のCl濃度は100atm・ppm以下であるのが好ましい。
【0037】
実施例10〜17から以下のことが判る。熱処理工程(ステップS2)においてコア部の熱処理時間は、温度1000℃〜1,200℃時で8〜20hであることが望ましい。30hでは結晶化・気泡が発生することがある。
【0038】
実施例1〜17および比較例1、2から以下のことが判る。熱処理工程(ステップS2)を全く実施しないと、コア部製造後のクラッド部製造工程で、コア中に一部気泡化または結晶化が多発する。熱処理を実施することで、ロッド作製工程(ステップS1)の際にガラス中に添加されたカリウムの中でガラス中のSiOと反応していないカリウム(遊離カリウム)が、熱処理工程(ステップS2)でガラスから抜けるか或いははガラス中でSiやOと結合する。これに対して、熱処理工程(ステップS2)を実施しない場合には、ガラス中のSiOと反応していないカリウム(遊離カリウム)は、遊離した状態で留まり、次工程以降で熱をかけたときに塩化カリウムとなって気泡が発生したり本塩化カリウムを核としてガラスの結晶化が発生したりする。よってカリウムを添加したガラスに熱処理を実施することは必要不可欠である。
【0039】
図7は、熱処理工程(ステップS2)の温度・時間と気泡・結晶の発生との関係を示す図である。同図に示されるとおり、熱処理工程(ステップS2)は、ロッド作製工程(ステップS1)でアルカリ金属元素を添加したガラスロッドを製造した後、所定の温度、時間でガラスロッドを加熱処理する工程である。なお、実施例13からわかるように熱処理工程(ステップS2)の前に所定の温度以下、所定の時間以下で行うガラス加工工程(例えば延伸)を追加しても良い。また、熱処理工程(ステップS2)の後に延伸等のガラス加工工程を追加しても良い。
【0040】
以上のとおり、気泡・結晶の発生を抑制するためには、熱処理工程(ステップS2)を実施することが重要である。また、アルカリ金属元素を添加する石英ガラスのCl濃度をできる限り低く(100ppm以下)にすることが望ましい。熱処理の温度は約1000℃で時間は8〜20h程度にすることが望ましい。
【0041】
図8は、実施例7の光ファイバの屈折率プロファイルを示す図である。実施例7の光ファイバは、コアに平均15原子ppmのKを含み、以下のような諸特性を有していた。波長1300nmでの伝送損失は0.280dB/kmであり、波長1380nmでの伝送損失は0.320dB/kmであり、波長1550nmでの伝送損失は0.162dB/kmであり、何れの波長においても低伝送損失であった。波長1550nmにおいて、波長分散は+16.3ps/nm/kmであり、分散スロープは+0.057ps/nm/kmであり、実効断面積は84μmであり、モードフィールド径は10.5μmであった。光ファイバカットオフ波長(2m)は1310nmであり、ケーブルカットオフ波長(2m)は1210nmであった。偏波モード分散(C、Lバンド)は0.01ps/√kmであった。また、非線形係数(波長1550nm、ランダム偏波状態)は0.6(W・km)−1であった。
【0042】
図9は、実施例15の光ファイバの屈折率プロファイルを示す図である。実施例15の光ファイバは、外径145mmφの光ファイバ母材を線速2300m/minで線引張力50gの条件で線引することで製造された。実施例15の光ファイバは、コアに平均25原子ppmのKを含み、以下のような諸特性を有していた。波長1300nmでの伝送損失は0.280dB/kmであり、波長1380nmでの伝送損失は0.320dB/kmであり、波長1550nmでの伝送損失は0.156dB/kmであり、何れの波長においても低伝送損失であった。波長1550nmにおいて、波長分散は+21.1ps/nm/kmであり、分散スロープは+0.061ps/nm/kmであり、実効断面積は141μmであり、モードフィールド径(波長1550nm)は12.8μmであった。光ファイバカットオフ波長(2m)は1580nmであり、ケーブルカットオフ波長(2m)は1480nmであった。偏波モード分散(C、Lバンド)は0.01ps/√kmであった。また、非線形係数(波長1550nm、ランダム偏波状態)は0.6(W・km)−1であった。
【0043】
本実施形態において、コア部の直径は6〜20μmであってよい。コア部とクラッド部との比屈折率差は0.2〜0.5%であって良い。また、クラッド部にはフッ素を含み、コア部よりもクラッド部の平均の屈折率が低く、コア部にはClとFのハロゲン及びアルカリ金属元素が添加されており、各添加元素濃度はハロゲン濃度が最も高いような石英系ガラスであると、光ファイバの伝送損失が低減する。更に光ファイバ母材、光ファイバのコア部、クラッド部はそれぞれ屈折率構造を有しても良く、例えば図10に示されるようなプロファイルであってよいが、これらに制限されることはない。
【符号の説明】
【0044】
1…ガラスパイプ、2…熱源、3…アルカリ金属原料、4…外部熱源、10…光ファイバ母材、11…ガラスロッド、12…石英ガラス層、13…クラッド部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均濃度5atm・ppm以上のアルカリ金属元素が添加された石英ガラスからなるガラスロッドを作製するロッド作製工程と、
前記ロッド作製工程において作製されたガラスロッドを熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程において熱処理されたガラスロッドの外周に、濃度6000atm・ppm以上の塩素を含みアルカリ金属元素を含まない石英ガラス層を設けて、前記ガラスロッドおよび前記石英ガラス層をコア部とするコア部作製工程と、
前記コア部作製工程において作製されたコア部の外周に、そのコア部の屈折率より低い屈折率を有する石英ガラスのクラッド部を設けるクラッド部作製工程と
を備えることを特徴とする光ファイバ母材製造方法。
【請求項2】
前記熱処理工程において、800℃より高く1400℃以下の温度で前記ガラスロッドを熱処理する、ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材製造方法。
【請求項3】
前記熱処理工程において、8時間以上20時間以下に亘って前記ガラスロッドを熱処理する、ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材製造方法。
【請求項4】
前記ロッド作製工程において、塩素添加濃度が400atm・ppm以下である前記ガラスロッドを作製する、ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材製造方法。
【請求項5】
前記ロッド作製工程において、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウムのいずれかがアルカリ金属元素として添加されたガラスロッドを作製する、ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材製造方法。
【請求項6】
前記コア部作製工程において、前記石英ガラス層の塩素濃度が6000atm・ppm以上14000atm・ppm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材製造方法。
【請求項7】
前記コア部作製工程において、前記石英ガラス層の塩素濃度が8000atm・ppm以上17000atm・ppm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−167003(P2012−167003A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254067(P2011−254067)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】