光ファイバ端面保護構造
【課題】複数の光ファイバの端面を一括して保護可能であり、端面保護部材が着脱可能な光ファイバ端面保護構造を提供する。
【解決手段】光ファイバ端面保護構造1は、入射された光を光出射端から出射させる複数の光ファイバ2と、光ファイバ2のコア材と略同一の屈折率を有し、複数の光ファイバ2の光出射端21から出射された光を光入射端31から入射させて出射させる透光性光学部材3と、複数の光ファイバ2の光出射端21と透光性光学部材3の光入射端31との間に介在し、光出射端21と光入射端31との接着を抑止する保護媒体10とを有する。透光性光学部材3の光入射端面31aは、複数の光ファイバ2の光出射端面21a以上の大きさを有し、複数の光ファイバ2と透光性光学部材3とが前記保護媒体10を介して着脱可能である。
【解決手段】光ファイバ端面保護構造1は、入射された光を光出射端から出射させる複数の光ファイバ2と、光ファイバ2のコア材と略同一の屈折率を有し、複数の光ファイバ2の光出射端21から出射された光を光入射端31から入射させて出射させる透光性光学部材3と、複数の光ファイバ2の光出射端21と透光性光学部材3の光入射端31との間に介在し、光出射端21と光入射端31との接着を抑止する保護媒体10とを有する。透光性光学部材3の光入射端面31aは、複数の光ファイバ2の光出射端面21a以上の大きさを有し、複数の光ファイバ2と透光性光学部材3とが前記保護媒体10を介して着脱可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの光出射端の保護構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光伝送媒体として広く利用されている光ファイバは、高出力光の伝送の際に光ファイバの出射端面へのごみや汚れの付着による伝送損失低下や付着物の焼き付きによる端面損傷を生じやすく、安定性やビーム品質を低下させるという問題を有している。特に450nm以下のエネルギー密度の高い短波長光等を伝送する場合には出射端面が汚染されやすい。
【0003】
また、光ファイバに光を導光させると、光出射端面において導波光の一部が反射されて光ファイバ内を逆行するいわゆる戻り光を生じる。この戻り光は、入射光のパワーに比例してそのパワーが高くなるため、高出力の入射光を用いる場合には、光出射端面に反射防止用の特殊処理を施しても光ファイバ自身及び接続されている光学デバイスにも悪影響を及ぼすことが知られている。
【0004】
特に、複数の光ファイバを用いて複数の光源からの光を一括して出射するファイババンドル等の場合は、複数の光源のパワーが光出射端面において集められて出射されるため、光出射端面における汚染物の付着速度及び戻り光パワーがより大きくなる。また、ファイババンドルにおいては、ファイバを束ねるのに用いられる接着剤等に対しても戻り光が影響を及ぼしてダメージを与える可能性があるため、できるだけ戻り光量を少なくすることが好ましい。
【0005】
特許文献1には、光ファイバの出射端面にコアレスファイバが融着接続され、コアレスファイバの周囲にコアレスファイバの屈折率より高い屈折率を有する被覆材が設けられた光ファイバ端面構造が開示されている。特許文献1には、コアレスファイバにより端面損傷を防止でき、かつ、コアレスファイバ長を制御することにより、コアレスファイバの周囲にコアレスファイバの屈折率より高い屈折率を有する被覆材部分から効果的に戻り光を出射させて、光ファイバ中での戻り光の逆行を防げることが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、コアークラッド構造の光ファイバの端面に、コアと略同一で均一な屈折率を有する材料からなるコアレスファイバの一端面が接合された光ファイバ端末において、光ファイバからコアレスファイバに入射された光がコアレスファイバの出射端の外径以内のビーム径で出射されるようにコアレスファイバの光路長を設定した光ファイバ端末が開示されている。かかる構成によって、効果的に光ファイバからの出射光を拡げて出射させることができ、反射損失を増やして戻り光量を低減させられる事が記載されている。
【特許文献1】特開2005−303166号公報
【特許文献2】国際公開第2004/053547号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の光ファイバ端面構造及び特許文献2の光ファイバ端末は、光ファイバの出射端に取り付けられる端面保護部材(コアレスファイバ)はいずれも融着等により接着されている。融着により光ファイバと端面保護部材とを接着する場合には、それぞれの口径差が制限される。融着する光ファイバと端面保護部材との口径差が大きいと、双方の熱容量の差が大きいため、軟化速度の差が大きくなり、その結果、端面保護部材の軟化中に細い径を有する光ファイバのコア中のドーパントがクラッド部へ拡散してしまう。ドーパントがクラッド部へ拡散すると、光ファイバは、光の閉じ込め効果が弱まって放射損失が増加し、光ファイバ自身の伝送特性の劣化を生じる。従って、融着により接着させる場合は、光ファイバと端面保護部材との口径差は制限され、2倍以上の口径を有する端面保護部材を融着することは難しい。
【0008】
複数の光ファイバの端面やファイババンドルの端面を一括して保護するためには、1本1本の光ファイバの口径の2倍以上の端面保護部材と融着させることになる。そのため、融着により端面保護部材を接着させた構成とすることは難しく、特許文献1及び特許文献2にも、複数の光ファイバの端面を対象とした記載は一切ない。
【0009】
更に、汚染物の付着については、光ファイバ出射端を保護したとしても、汚染速度は遅くなるものの端面保護部材の出射端においても同様に生じる現象である。従って、端面保護部材はメンテナンスが可能なように着脱可能な構造であることが好ましい。
【0010】
融着技術等の熱による軟化工程を要さずに、光ファイバの光出射端面と端面保護部材とを接続させ、かつ、端面保護部材を着脱可能とする接続方法としては、オプティカルコンタクトが挙げられるが、オプティカルコンタクトには、エネルギー密度の高い光、特に450nm以下の短波長光を導光させる場合や、光ファイバの出射端の汚染物質の除去に用いるUVクリーニング処理を行う場合等に、当接部において光ファイバと端面保護部材の構成材料(石英、SiO2等)が何らかの反応を起こして張り付き、着脱の際に互いの当接面を破損してしまうため、着脱可能構造とすることが難しいことが本出願人により確認されている。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の光ファイバの端面を一括して保護可能であり、端面保護部材が着脱可能な光ファイバ端面保護構造及びそれを有するファイババンドルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光ファイバ端面保護構造は、入射された光を光出射端から出射させる複数の光ファイバと、
該複数の光ファイバのコア材と略同一の屈折率を有し、前記複数の光ファイバの光出射端から出射された光を光入射端から入射させて出射させる透光性光学部材と、
前記複数の光ファイバの光出射端と前記透光性光学部材の光入射端との間に介在し、前記光出射端と前記光入射端との接着を抑止する保護媒体とを有する光ファイバ端面保護構造であって、
前記透光性光学部材の光入射端面は、前記複数の光ファイバの光出射端面以上の大きさを有し、
前記複数の光ファイバと前記透光性光学部材とが前記保護媒体を介して着脱可能とされていることを特徴とするものである。
【0013】
本明細書において、「透光性光学部材」とは、光学部材に入射される光の波長において透過率90%以上を有する光学部材と定義する。
【0014】
またここで、「前記光出射端と前記光入射端との接着を抑止する保護媒体」とは、常温で物理的に当接状態にある光出射端と光入射端とが、当接部においてそれぞれの構成材料が化学反応を起こし、融着等によって接着されることを防ぐ保護媒体を意味し、光出射端と光入射端とを500g重の荷重で当接させた後に離間させた、あるいは当接部から相対的に動かした場合に、当接部において両端面において発生した付着物あるいは付着物による表面凹凸がλ/2以下(λは入射された光の発振波長)となるように接着を抑止するものと定義する。
【0015】
また、「透光性光学部材の光入射端面が、前記複数の光ファイバの光出射端面以上の大きさである」とは、透光性光学部材の光入射端面が、複数の光ファイバの全ての光出射端面と少なくとも当接される大きさであることを意味する。
【0016】
本発明の光ファイバ端面保護構造は、前記入射光が波長190nm〜530nmの光である場合にも着脱可能とすることができる。
【0017】
前記保護媒体は、前記入射光の発振波長に対して透光性を有するものであることが好ましく、光導波方向の光路長がλ/2の整数倍であることが好ましい。
本明細書において、「前記保護媒体が前記入射光の発振波長に対して透光性を有する」とは、入射光の発振波長に対する透過率が90%以上であることと定義する。
【0018】
前記保護媒体としては、単層膜又は複数の膜が積層された多層膜からなる膜体であり、前記複数の光ファイバの光出射端及び/又は前記透光性光学部材の光入射端の表面に形成されているものが挙げられる。
【0019】
前記保護媒体が、フッ化物を含むものであることが好ましく、YF3,LiF,MgF2,NaF,LaF3,BaF2,CaF2及びAlF3からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ化物を含むものであることがより好ましい。
【0020】
また、本発明の光ファイバ端面保護構造は、前記複数の光ファイバが、該複数の光ファイバに入射された複数の光を集積させて出射させるように前記複数の光ファイバが該光ファイバの出射端側で配列されて束ねられたファイババンドルである場合に好ましく適用することができる。
【0021】
本発明のファイババンドルは、上記本発明の光ファイバ端面保護構造を有するものである。
【0022】
本発明のファイババンドルの好適な態様としては、複数の光ファイバに個別に入射させた複数の入射光を集積させて出射させるように前記複数の光ファイバが該光ファイバの出射端側で配列されて束ねられた集積機能ファイババンドル部と、
該集積機能ファイババンドル部からの出射光を均一化させて出射させる均一機能ファイバ部とを有する第1のファイババンドルと、
複数の該第1のファイババンドルを集積させて出射させるように前記第1のファイババンドルが該第1のファイババンドルの出射端側で配列されて束ねられた第2のファイババンドルからなるファイババンドルであって
該均一機能ファイバ部は、少なくとも該均一機能ファイバ部の光入射端面において、前記集積機能ファイババンドル部の光出射端面における光出射領域より大きいコア部を有する光ファイバからなり、
前記集積機能ファイババンドル部の光出射端と前記均一機能ファイバ部の光入射端とは当接されており、
前記集積機能ファイババンドル部と前記均一機能ファイバ部とが着脱可能なファイババンドルが挙げられる。
【0023】
また、本発明のファイババンドルのその他の好適な態様としては、前記集積機能ファイババンドル部を構成する複数の光ファイバのうち少なくとも一つの光ファイバの光入射端に、複数の光ファイバに個別に入射させた複数の入射光を集積させて出射させるように該複数の光ファイバが該光ファイバの出射端側で配列されて束ねられた第2の集積機能ファイババンドル部の光出射端が、該光出射端と該光入射端との接着を抑止する保護媒体を介して当接されており、
前記少なくとも一つの光ファイバは、該光ファイバの光入射端面において、前記第2の集積機能ファイババンドル部の光出射端面における光出射領域より大きいコア部を有するものであり、
前記少なくとも一つの光ファイバと前記第2の集積機能ファイババンドル部とが着脱可能なファイババンドルが挙げられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光ファイバ端面保護構造は、複数の光ファイバの光出射端と透光性光学部材の光入射端とが、接着を抑止する保護媒体を介して当接された構造を有しており、端面保護部材である透光性光学部材が着脱可能なものである。かかる構成では、複数の光ファイバ光出射端面を一括して保護可能であり、かつ、透光性光学部材と複数の光ファイバの光出射端面との接着を抑止する保護媒体を介して当接されているので、着脱の際に端面同士が張り付いて破損しやすい450nm以下の短波長の光やエネルギー密度の高い光を導波させる場合やUVクリーニング処理を端面に施した場合にも、端面を破損することなく透光性光学部材を着脱させることができる。従って、本発明によれば、複数の光ファイバの光出射端面を一括して保護可能であり、端面保護部材が着脱可能な光ファイバ端面保護構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
「光ファイバ端面保護構造、ファイババンドル」
図面を参照して、本発明の一実施形態の光ファイバ端面保護構造及びファイババンドルについて説明する。図1は、本実施形態の光ファイバ端面保護構造1の光導波方向断面図である。本明細書において、図面は、視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0026】
図1に示されるように、光ファイバ端面保護構造1は、ファイババンドル(複数の光ファイバ)2の端面保護構造であり、ファイババンドル2と、透光性光学部材3と、スリーブ(保持部材)4等によって構成されており、透光性光学部材3によってファイババンドル2の光出射端面が保護されている。
【0027】
ファイババンドル2の光出射端21側は、フェルール2aに挿入されており、光出射端面21aは研磨されて加工されている。光出射端面21aの端面形状は、接続損失が少なくなる形状であれば特に制限されず、半球面状や平面状等に加工されていてもよい。透光性光学部材3の光入射端面31aには、保護膜(保護媒体)10が成膜されており、スリーブ4内において、ファイババンドル2の光出射端21と透光性光学部材3の光入射端31とが保護膜10を介してオプティカルコンタクトにより当接されている。当接部における接圧は、4.9N〜11.8N程度が好ましい。ファイババンドル2と透光性光学部材3とがオプティカルコンタクトにより当接されているので、光ファイバ端面保護構造1は、ファイババンドル2と透光性光学部材3とが着脱可能である。
【0028】
ファイババンドル2中を導波してきた光L1は、ファイババンドル2の光出射端21より出射され、保護膜10を介して光入射端31より透光性光学部材3内に入射され、光出射端32より出射される(L2)。
【0029】
ファイババンドル2の材質は特に制限されず、導光させる光の波長に応じて好適な材料を選択すればよい。例えば、紫外光を導光させる場合は、ファイババンドル2を構成する光ファイバは、SiO2や石英等を主成分とするガラス系光ファイバが好ましい。
【0030】
透光性光学部材3の材質は、ファイババンドル2のコア材と略同一の屈折率を有するものであればよく、ファイババンドル2と同様に導光させる光の波長に応じて好適な材料を選択することができる。
【0031】
保護膜10は、光入射端面31a上に成膜された膜体であり、ファイババンドル2の光出射端21と透光性光学部材3の光入射端31との接着を抑止するものである。保護膜10は、光入射端面31a上に直接成膜されてもよいし、アシスト膜を介して成膜されてもよい。SiO2や石英等のガラス系光学部材同士をオプティカルコンタクトにより当接させる際、導光させる光がエネルギー密度の高い光や紫外光、例えば、発振波長190nm〜530nmの光の場合や、当接面にUVクリーニング処理を施した場合等に、当接部において、両方の当接面の酸化物がなんらかの反応を起こして反応部分が一体化して張り付き、その後離間させた場合に張り付いていた部分が破損して光損失が増加し、更には再使用不可能な状態になることが以下のようにして本出願人により確認されている。
【0032】
図2に、光ファイバとガラスをUVクリーニングした後、該光ファイバの断面とガラスを約500[g]の加重で当接し、約100時間放置したときの光ファイバ100の当接面を示す。101はクラッド、102はコアである。103は洗浄後に光ファイバ100とガラス(図示略)とを当接、圧着したことによって、光ファイバ100とガラスに含まれる石英や酸化物が反応を起こした箇所であり、光ファイバ100とガラスとが一体化した部分である。このように反応箇所が一体化すると、光ファイバ100とガラスとを離間させたときに反応箇所が大きく損傷してしまい、或いは反応箇所が光ファイバ100の断面又はガラスに付着してしまっていた。尚、当接前のファイバの表面粗さはRa=2[nm]である。このような現象が光ファイバをオプティカルコンタクトによって当接させた場合においても発生していた。また上記現象は、表面粗さがRa<5[nm]以下で生じやすく、また更にエネルギー密度の高い短波長の光を導光した場合に生じやすい。
【0033】
保護膜10は以上のような現象を防ぐためのものであるので、入射光L1の発振波長λに対して透光性を有し、且つファイババンドル2及び透光性光学部材3がSiO2や石英等を主成分とするガラス材料からなる場合に、これらを常温において物理的に当接させた時に光出射端21と光入射端31との接着を抑止するものであることが好ましい。従って、保護膜10としては、ファイババンドル2及び透光性光学部材3に含まれるSiO2や石英と容易に反応せず、波長190nm〜530nmの光に不活性なものが好ましく、フッ化物を含むものが挙げられる。フッ化物としては、酸素(O)を含まないものが好ましく、YF3、LiF、MgF2、NaF、LaF3、BaF2、CaF2及びAlF3からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ化物がより好ましい。これらのフッ化物は波長190nm〜410nmの光に対して不活性であり、410nm〜530nmの波長に対してもその活性度は少ない。また、波長が長くなるに従ってそのエネルギー密度も小さくなることから、410nm以上の波長の光に対しても好適な保護膜10を形成することができる。
【0034】
保護膜10は、単層膜であってもよいし多層膜であってもよい。多層膜である場合は、保護膜10の最上層が上記材料を含むものであることが望ましく、最上層膜以外の下層膜は、Siを含まない酸化物を含むことが好ましい。
【0035】
更に、保護膜10の存在による光損失は、より少ない方が好ましいため、導光させる光の波長に対して光吸収の少ない材料である方が好ましい。図3は、波長248nmのパルスレーザを用いた場合の種々のフッ化物膜及び酸化物膜の吸収係数とその損傷閾値との関係を示したものである("High damage threshold fluoride UV mirrors made by Ion Beam Sputtering",J.Dijion,et.,al.,SPIE Vol.3244,pp406-418,1998”より引用)。このグラフより、紫外光に対してはフッ化物膜は損傷閾値が高く、従って光吸収の点でも保護膜10の材料としてフッ化物は好ましいことがわかる。更に、導波される光が紫外光の場合は、グラフに示されるようにフッ化物膜の中でもYF3やLiF等が損傷閾値が高く、より好ましい。
【0036】
上記のような構成の保護膜10とすることにより、ファイババンドル2と透光性光学部材3との当接部における化学反応を防いで当接部の損傷を抑制することができる。例えば、当接部に対して50g重以上1kg重以下(より好ましくは500g重以下)の荷重で圧着した後に離間させてもファイババンドル2と透光性光学部材3とが再使用可能とする、つまり着脱可能とすることができる。
【0037】
当接部において、ファイババンドル2の光出射端21から出射された光がすべて透光性光学部材3の光入射端31に入射されるように、光入射端面31aは、光出射端面21a以上の大きさを有している。図4は、透光性光学部材3の形状がロッド状であり、ファイババンドル2が出射端において複数の光ファイバがライン状(1次元状)に配列されて束ねられた場合(図4(a))及び同心円状(2次元状)に束ねられた場合(図4(b))を例に、光出射端面21aと光入射端面31aの断面を示したものである。図4において、光出射端面21aにおける光出射領域及び光入射端面31aの光入射領域を斜線で示してある。光出射端面21aは、光入射端面31aの斜線部分よりも大きい領域を有していればよいが、透光性光学部材3がロッド状である場合は光入射端面31aの形状は円形となることから、図示されるように光出射領域すべてを含む光出射端21aの外接円以上の大きさを有している。
【0038】
透光性光学部材3は、入射された光L1をすべて光出射端32から出射できることが好ましい。導波方向の厚みが大きくなるほど光の拡がりが大きくなるので、光出射端面32aの大きさは、ファイババンドル2の開口数及び厚みを考慮して決定することが好ましい。
【0039】
ファイババンドル2の光出射端面21が透光性光学部材3によって保護された場合、出射端面21aへのごみや汚れの付着はほとんど起こらなくなるが、そのかわりに光出射端面32aがごみや汚れの付着面となる。ごみや汚れの付着は、光のパワー密度が低いほど起こりにくくなるので、透光性光学部材3の導波方向の厚みが大きく、光出射端面32aの大きさは大きい方が、光のパワーが分散されて汚染速度を遅くすることができる。従って、光出射端面32aが大きい方が好ましい。
【0040】
上記のような光出射端面32aを有していれば、透光性光学部材3の形状は特に制限されないが、汎用性の高く安価な光学部材の形状としては、光入射端面31aと光出射端面32aが略同一であるロッド状の光学部材が挙げられる。ロッド状である場合、光出射端面32aを大きくしようとした場合は、光入射端面31aも大きなものとなる。
【0041】
背景技術において述べたように、融着されている場合は端面保護部材の光入射端面の大きさは制限されるが、本実施形態の光ファイバ端面保護構造1は、端面保護部材である透光性光学部材3とファイババンドル2とが融着されておらず、当接されて着脱可能な構成としている。従って、端面保護部材である透光性光学部材3の光入射端面31aの大きさに制限がなく、例えば、図4において、ファイババンドル2の光出射端面21aにおける光出射領域の外接円の径の2倍以上の径を有する透光性光学部材3を当接させることも可能である。従って、ファイババンドル2のような複数のファイバを一括して保護する光ファイバ端面保護構造とすることができたわけであるが、更に光入射端面31aを大きくして、光出射端面32aの汚染速度を充分に低下させうるように、透光性光学部材3を設計することができる。
【0042】
また、背景技術において、高出力光を伝送する場合、光ファイバは、光出射端面において導波光の一部が反射されて光ファイバ内を逆行するいわゆる戻り光を生じて、光ファイバ自身及び接続されている光学デバイスにも悪影響を及ぼすことがあることも述べた。従って、光出射端面32aは、反射防止の特殊処理が施されていることが好ましい。しかしながら、光のパワーが大きくなると、反射防止の特殊処理を施しても戻り光量は光ファイバ等への影響を無視できる範囲を超えてしまうため、光出射端面における反射光をできるだけ光ファイバ内に再入射させずに、端面保護部材から外部へ出射させることができることが好ましい。上記のように、端面保護部材である透光性光学部材3の口径を大きくすることが可能であれば、より多くの反射光を効果的に光ファイバに再入射させずに端面保護部材から外部へ出射させることが可能であるので、本実施形態によれば、戻り光による影響も少なくすることができる。
【0043】
本実施形態において保護膜10は透光性光学部材3の光入射端面31a上に成膜されているが、ファイババンドル2の光出射端面21a上に成膜されてもよいし、光入射端面31a及び光出射端面21aの両方に成膜されてもよい。
【0044】
保護膜10は、透光性光学部材3とファイババンドル2とを着脱させる際に成膜された端面から剥離しないことが好ましい。従って、保護膜10が、光出射端面21a又は光入射端面31aのどちらか一方に成膜されている場合は、保護膜10が成膜されている端面と保護膜10との密着性が、保護膜10が成膜されていない方の端面と保護膜10との密着性より高い方が好ましい。また、両端面に成膜されている場合は、保護膜10が成膜されている端面と保護膜10との密着性が、両端面に成膜された膜同士の密着性より高い方が好ましい。更に、保護膜10が多層膜である場合は、多層膜を構成する膜同士についても同様に密着性が高い方が好ましい。
【0045】
保護膜10の存在による光損失は、上記した保護膜10の材料以外に、膜厚によって影響される。従って、保護膜10の膜厚は、光損失に影響のない膜厚とすることが好ましい。保護膜10における光損失の要因としては、反射による損失と、吸収による損失とが挙げられる。従って、保護膜10の膜厚は、反射及び吸収による光損失への影響を考慮して決定することが好ましい。
【0046】
反射による損失を最小にするためには、保護膜10の膜厚は、光損失に影響のない膜厚とすることが好ましい。光入射端面31a又はファイババンドル2の光出射端面21aのどちらか一方に保護膜10が成膜されている場合は、保護膜10の光導波方向の光路長(d×N,ここでdは光導波方向の膜厚、Nは保護膜10の屈折率)と導光させる光の波長λとが下記式(1)を充足することが好ましい。
d×N=(λ/2)×n ・・・(1)
(但し、nは1以上の整数)
【0047】
光入射端面31a又はファイババンドル2の光出射端面21aの両方に保護膜10が成膜されている場合は、両方に成膜される保護膜10が同一の屈折率を有する場合は、(1)式においてdを保護膜10の総膜厚とすればよい。しかしながら、両方に成膜する場合、両端面に成膜された保護膜同士が当接により反応や一体化等を生じないように、各端面に成膜される保護膜10は、少なくとも最表面にある最上層が異種材料により構成されることが好ましい。その場合、ファイババンドル2の光出射端21a上に成膜された保護膜10の膜厚をdf、同じく屈折率をNfとし、透光性光学部材3の光入射端31a上に成膜された保護膜10の膜厚をdg、同じく屈折率をNgとすると、これらが下記式(2)を充足することが好ましい。
(df×Nf)+(dg×Ng)=(λ/2)×n ・・・(2)
(但し、nは1以上の整数)
【0048】
吸収による損失を小さくするためには、保護膜10は、膜厚が薄い方が好ましい。膜厚が大きいほど膜の光エネルギー吸収が大きいため、吸収されたエネルギーによって保護膜10が熱劣化し、それに伴う変色やひび割れ等を生じやすくなる。従って上記式(1)及び(2)においてnは1であることが好ましい。しかしながら、吸収による損失への影響の度合いによっては、反射による影響に比して吸収による影響の方が大きくなる。その場合は、上記式(1)及び(2)において、n=1とした時の膜厚よりも薄い膜厚においてより光損失を小さくすることができる。
【0049】
保護膜10の好適な膜厚を調べるために、図5に示される光デバイス110を作製し、異なる膜厚の保護膜10を使用した場合の出射光の光出力の経時変化を測定した。図示されるように光デバイス110は、光ファイバ111a,111bと、フェルール112a,112bと、スリーブ113等によって構成されており、スリーブ113内で各フェルールに挿入された光ファイバ111a,111bとが膜厚dの保護膜10を介して当接されている。当接面においてフェルールの端部は半球面状に研磨されており、保護膜10は光ファイバ111a側の端面に成膜されている。
【0050】
保護膜10の膜厚dをλ/2、λ/4、λ/6とした光デバイス110を用い、波長405nm、出力160mWのレーザ光を光ファイバ91aに入射したときの光ファイバ91bからの出射光の光出力の経時変化を測定した。保護膜10の成膜方法としては蒸着法を用いた。図6は、その測定結果を示した図であり、縦軸は、入射光の出力値に対する出射光の出力値の割合を示している。このとき、各膜における直径約60μmの領域をレーザ光が通過する。
【0051】
図6に示されるように、膜厚dが小さいほど、出射光の光出力の低下は少ない(即ち、光損失が少ない)。また、実験後のそれぞれの保護膜10を顕微鏡観察したところ、d=λ/6の膜の外観変化はほとんど見られなかったが、d=λ/4及びλ/2の膜はレーザ光の通過部分と思われる領域の変色が確認された。更に、d=λ/2の膜は、変色した部分の周辺に膜のひび割れが確認された。d=λ/2及びd=λ/4の膜に見られた変色は、レーザ光の熱によって膜が融解したため(熱劣化)と考えられる。この結果より、膜厚dが大きいほど、膜によるレーザ光のエネルギー吸収が大きく、この吸収によって膜質が変化し、光損失が大きくなると考えられる。
【0052】
また図7は、保護膜10の膜厚を、d=λ/6及びλ/12のMgF2膜とし、上記測定と同様にして光損失値の経時変化を測定した結果を示したものである。保護膜10の成膜はイオンアシスト法により行った。図7に示されるように、d=λ/6とd=λ/12の膜とでは、光出力の変化の仕方がほぼ同じであり、いずれも1000時間後の出射光の光出力の低下率は10%未満である。
【0053】
これらの結果より、保護膜10がMgF2膜であり、入射される光が波長405nm、出力160mWのレーザ光の場合は、光損失に対する影響が、反射による影響に比して吸収による影響の方が大きく、保護膜10の膜厚dがλ/6以下であれば、1000時間後の出射光の光出力の低下率は10%未満に抑えることができ、好ましいと考えられる。
【0054】
光損失に対する反射による影響と吸収による影響との比率は、レーザ光の出力や波長、また保護膜10の材質によって異なり、式(1)又は式(2)を充足する膜厚である場合が好適な場合もあるし、膜厚dがλ/6以下であることが好適な場合もある。しかしながら、波長190nm〜530nmの光はエネルギー密度が高いため、出力にもよるが、保護膜10の膜厚dはλ/6以下であることが好適であると考えられる。なお、当接部において光入射端面及び光出端面の両方に保護膜10が成膜されている場合は、膜厚は両方に成膜されている保護膜10の膜厚の合計とする(d=df+dg)。
【0055】
保護膜10の成膜方法は制限されないが、保護膜10と成膜される端面との界面での光損失を少なくするためには、成膜前に被成膜面のクリーニングが可能な成膜方法が好ましい。また、膜の緻密性が高いほど、光エネルギー密度の高い光を導波させた際に保護膜10自身の光のエネルギー吸収による膜質変化が少なくなることから、より緻密な膜を成膜可能な成膜方法が好ましい。成膜前に被成膜面のクリーニング成膜前に被成膜面のクリーニングが可能であり、かつ、緻密性の高い膜を成膜可能な成膜方法としては、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0056】
成膜前に被成膜面のクリーニング成膜前に被成膜面のクリーニングが可能であり、かつ、緻密性の高い膜を成膜可能な成膜方法としては、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0057】
図8は、蒸着法とイオンアシスト法のそれぞれの方法で成膜された膜厚λ/6の保護膜10(MgF2膜)を使用し、上記測定と同様にして光損失値の経時変化を測定した結果を示したものである。図8に示されるように、蒸着法よりイオンアシスト法で成膜した保護膜10を用いた方が、光出力の低下が少なく好ましいことがわかる。
【0058】
ファイババンドル2において、バンドルされる光ファイバ20の数や、バンドル部における配列パターンは特に制限されない。バンドル部の配列としては、1次元状(ライン状)、2次元状(同心円状を含む)等があげられ、要求される出射パターンに応じて配列されたものでよい。図9(a)〜(d)に配列パターンの例を示す。
【0059】
ファイババンドル2の好適な態様としては、図10に示されるファイババンドル4が挙げられる。図10を参照してファイババンドル4について説明する。図10はファイババンドル4の光導波方向の概略断面図である。
【0060】
ファイババンドル4は、複数の光ファイバ50に個別に入射させた複数の入射光L1を集積させて出射させるように複数の光ファイバ50が光出射端52側で配列されて束ねられた集積機能ファイババンドル部5と、集積機能ファイババンドル部5からの出射光を均一化させて出射させる光ファイバ60を備えた均一機能ファイバ部6とを有する第1のファイババンドル部7と、複数の第1のファイババンドル部7からの出射光を集積させて出射させるように複数の第1のファイババンドル部の均一機能ファイバ部7が光出射端82側で配列されて束ねられた第2のファイババンドル部8を備えたものである。
【0061】
図10において、集積機能ファイババンドル部5の光出射端52と均一機能ファイバ部6の光入射端61とは、それぞれフェルール60a、70a(図10では図示略)に挿入されて、スリーブ80(保持部材)内において保護膜10を介してオプティカルコンタクトにより当接されている。従って、集積機能ファイババンドル部5と均一機能ファイバ部6とは着脱可能である。
【0062】
フェルール50a及び60aに挿入された両端面は研磨加工されており、その端面形状は、接続損失が少なくなる形状であれば特に制限されず、半球面状や平面状等が挙げられる。フェルール50a及び60aとしてSCフェルールを使用する場合は、スリーブ80としてSCコネクタを使用することができる。
【0063】
図11は、図10の集積機能ファイババンドル部5の光出射端52と均一機能ファイバ部6の光入射端61の当接部における拡大断面図、図12は図10の集積機能ファイババンドル部5の光出射端面52aと均一機能ファイバ部6の光入射端61aの概略図である。図12に示されるように、均一機能ファイバ部6の光ファイバ60は、少なくとも光入射端面61aにおいて、集積機能ファイババンドル部5の光出端面52aにおける光出射領域52rと同等以上の大きさのコア部61rを有するものである。かかる構成とすることにより、均一機能ファイバ部6は、集積機能ファイババンドル部5からの出射光すべてを受光して、均一化させて出射させることができる。
【0064】
複数の光ファイバ50の材料系は特に制限なく、SiO2や石英を主成分とするガラス系光ファイバ等が挙げられ、入射光L1の波長によって好適な材料を選択することができる。光ファイバの種類は特に制限されないが、光源等への利用を考えた場合は、マルチモード光ファイバが好ましい。
【0065】
複数の光ファイバ50は、集積機能ファイババンドル部5を構成するものであるので、より高密度に集積可能となるように、そのファイバ径はより細径であることが好ましい。しかしながら、光ファイバは細径化すればするほど、取り扱い性が困難となり、ファイバ長もその取り扱いの困難性、生産上の歩留まりの点からも短くせざるを得なくなる等、設計自由度が制限されてしまう。また、背景技術において述べたように、非常に細径な光ファイバを高密度に集積させたファイババンドルはケーブル化処理が非常に難しい。従って、できるだけ径の太い光ファイバにより集積構造を形成できることが好ましい。ファイババンドル5は、集積機能ファイババンドル部5からの出射光を均一化して出射させる均一機能ファイバ部6を更に束ねて集積させる2段集積構造としている。従って、要求される光量が決まっている場合、このような2段集積構造は、通常の単一集積構造のものに比して一度に集積させる光ファイバの数が少なくてよいことになる。つまり、単一集積構造のものに比して大口径の光ファイバにより集積機能ファイババンドル部5を形成することが可能である。例えば、単一集積構造の場合において、外径が50μm程度の光ファイバを集積させる場合、図10に示される構成では外径80μm程度にすることが可能である。この程度のファイバ径を有していれば、ファイバ長も取り扱い性の容易な50cm〜1m程度とすることができる。
【0066】
また、集積させる光ファイバの本数が多い場合、例えば20本を超えるような場合は、取り扱い性が容易でないため、ファイバを束ねる際に用いる接着剤の量にむらが生じやすく、この接着むらによりファイババンドルの光出射端面を研磨する際に影響を及ぼして研磨状態を不安定にする可能性がある。上記したように、ファイババンドル4は、集積機能ファイババンドル部5で集積させる光ファイバの数を少なくすることができるので、接着むらを生じにくくすることもできる。更に、集積度の高密度化の要求に対しても、後記するような集積機能ファイババンドル部を多段構造とすることにより、一つの集積本数を取り扱い性の容易な本数に維持したまま集積度を高くすることが可能である。
【0067】
集積機能ファイババンドル部5において、複数の光ファイバ50の配列パターンは特に制限ないが、図13(a)及び(b)に示されるような同心円状(2次元状)に密接させて束ねた配列とすると細経の光ファイバを束ねやすく好ましい。最終的な出射パターンは、第2のファイババンドル部8の光出射端82における均一機能ファイバ部6の配列パターンによって決まるので、ファイババンドル4においては、集積させやすい同心円状の配列で束ねることが可能である。
【0068】
均一機能ファイバ部6は、1本のマルチモード光ファイバ60からなり、その材料系は特に制限されないが、複数の光ファイバ50が束ねられた集積機能ファイババンドル部5からの出射光を均一化させて出射させるものであるので、複数の光ファイバ50と同一の材料系の光ファイバであることが好ましい。
【0069】
上記したように、集積機能ファイババンドル部5は細経ファイバを集積させたものであるので、高密度に集積させた場合は取り扱い性の困難性からファイバ長をあまり長くすることができない。均一機能ファイバ部6は、複数の光からなる集積機能ファイババンドル部5からの出射光を、マルチモードファイバからなる光ファイバ60を導光中に生じる光の干渉やモード間の相互作用等により均一化させて出射させるものであるので、光ファイバ60の長さは長い方が好ましい。したがって、均一機能ファイバ部6によりファイババンドル全体の長さを調整することができる。導光中の光損失を考慮すると、光ファイバ60の長さは10cm以上5m以下であることが好ましく、1m以上5m以下であることがより好ましい。
【0070】
均一機能ファイバ部6からの出射光は、ニアフィールドパターンによりその強度分布を測定しても均一性の高いものとなる。図14は、集積機能ファイババンドル部5を構成する複数の光ファイバ50としてコア径60μm、外径80μmの石英系マルチモード光ファイバ4本を用い、均一機能ファイバ部6の光ファイバ60としてコア径230μm、外径250μmの石英系マルチモード光ファイバを用いて作製した第1のファイババンドル部7に光を入射させた時の出射光のニアフィールドパターンである。図14において、縦軸は、出射光の最大値を1.0とし、各位置での出力光の最大値に対する強度比を示している。図14に示されるように、第1のファイババンドル部7からの出射光パターンはコア部において略均一な強度分布を有している。従って、第1のファイババンドル部7のみの構成としても、出射光の均一性の高いファイババンドルを提供することができる。
【0071】
ファイババンドル4の光出射端は、第2のファイババンドル部8の光出射端82である。従って、ファイババンドル4からの出射光L2の出射パターンは、光出射端82における均一機能ファイバ部6の光ファイバ60の配列により変化させることができる(図9(a)〜(d)を参照。)。
【0072】
例えば、長四角のミラー全体を照射する光源として使用するような場合は、図9(a)又は(b)のように1次元状に密接させた配列パターンで光ファイバ60を配列すればよい。図9(a)又は(b)に示されるパターンを細径ファイバのみで集積させようとした場合は、その取り扱い性の難しさから、無効エリアの多い出射パターンとなりやすく、その結果均一性の悪い光源となりやすい。上記したように、本実施形態のファイババンドル4は、集積機能ファイババンドル部5においては、集積させやすい同心円状の配列とし、取り扱い性の容易な口径の大きい均一機能ファイバ部6の光ファイバ60を所望の配列にして束ねることにより出射パターンを形成することができるので、製造が簡易であり、かつ、均一性の良好な光を出射させることができる。
また、図9(d)に示されるように、離間された出射位置から複数の光を出射させる場合などは、各出射点において、均一性の高い光を出射させることができる。
【0073】
ファイババンドル4は、集積機能ファイババンドル部5と均一機能ファイバ部6とがオプティカルコンタクトにより当接された構成としている。従って、集積機能ファイババンドル部5と均一機能ファイバ部6とを容易に着脱することができる。従来の単一集積構造の場合等は、ファイババンドルを構成する複数の光ファイバのうち1本に故障や機能低下を生じた場合や、光源としての仕様が変更された場合等はファイババンドル毎交換しなければならず、ファイババンドルからの出射光を入射させる光学素子等との位置合わせ等をその都度やり直す必要がある。本実施形態のファイババンドル4は、集積機能ファイババンドル部5のみを着脱して取り替えることが可能であるため、光学素子等との位置合わせがされている均一機能ファイバ部6側を動かすことなくメンテナンスすることができる。
【0074】
例えば、図9(d)に示されるように2点を同時に光らせてそれぞれを別の光学系に入射させるような場合のように、各点毎に出射光強度や波長等を設定したい場合も、各点に接続される第1のファイババンドル部7の集積機能ファイババンドル部5のみを仕様にあったものに変更するだけでよいため、各点の光学系への位置調整等をその都度行わずに、自由に各点から出射させる光の特性を変更することが可能である。
【0075】
ファイババンドル4は、図15に示されるように、ファイババンドル4の集積機能ファイババンドル部5を構成する複数の光ファイバ50のうち少なくとも一つの光ファイバ50の光入射端51に、複数の光ファイバ90に個別に入射させた複数の入射光L1を集積させて出射させるように複数の光ファイバ90が光ファイバ90の出射端92側で配列されて束ねられた第2の集積機能ファイババンドル部9の光出射端92が当接された構成とし(図16)、集積機能ファイババンドル部を多段化した構成とすることができる。図15は、集積機能ファイババンドル部を2段構造にした場合を例に示してある。このとき、少なくとも一つの光ファイバ50は、光ファイバ50の光入射端面51aにおいて、第2の集積機能ファイババンドル部9の光出射端面92aにおける光出射領域92rより大きいコア部51rを有するものである(図12を参照)。
【0076】
第2の集積ファイババンドル部9は、ファイババンドル4の集積機能ファイババンドル部5と同様の構成としており、また、多段化する際の当接部の構成もファイババンドル4と同様である。従って、ファイババンドル4と同様着脱可能であり、更に、集積機能ファイババンドル部が多段化されていることから、より高密度に光を集積させることができる。図15では集積機能ファイババンドル部を2段構造とした場合を示しているが、同様の構成により集積機能ファイババンドル部を増やして更に多段化することが可能である。
【0077】
ファイババンドル4においても、導光させる光が、光エネルギー密度の高い短波長の光等の場合は、上記した、当接部において着脱の際に端面を損傷する現象を同様に生じる。従って、その場合は、当接箇所には、保護膜10を介在させることが好ましい。
【0078】
ファイババンドル4のように、集積構造が多段化されているような場合は、戻り光の影響が各集積部に対して生じることから、影響を受ける箇所が多く存在することになる。従って、光ファイバ端面保護構造1はファイババンドル4に好適に利用することができる。
光ファイバ端面保護構造1は以上のように構成されている。
【0079】
光ファイバ端面保護構造は1、ファイババンドル(複数の光ファイバ)2の光出射端21と透光性光学部材3の光入射端31とが、接着を抑止する保護媒体10を介して当接された構造を有しており、端面保護部材である透光性光学部材3が着脱可能なものである。かかる構成では、ファイババンドル2の光出射端面21aを一括して保護可能であり、かつ、透光性光学部材3と光出射端面21aとの接着を抑止する保護媒体10を介して当接されているので、着脱の際に端面同士が張り付いて破損しやすい450nm以下の短波長の光やエネルギー密度の高い光を導波させる場合やUVクリーニング処理を端面に施した場合にも、端面を破損することなく透光性光学部材3を着脱させることができる。従って、本発明によれば、ファイババンドル2の光出射端面21aを一括して保護可能であり、端面保護部材が着脱可能な光ファイバ端面保護構造1を提供することができる。
【0080】
(設計変更)
本実施形態において、複数の光ファイバ2としてファイババンドルを例に説明したが、ファイババンドル以外のもの、例えば、ファイバアレイ等にも適用可能である。
また、保護媒体10が膜体である場合について説明したが、膜体には限定されない。
【実施例】
【0081】
本発明に係る実施例について説明する。
(実施例1)
図1に示される光ファイバ端面保護構造を以下のようにして作製した。
まず、図10に示される2段集積構造を有するファイババンドルを作製した。集積機能ファイババンドル部の光ファイバとして、ファイバ長1m、コア径60μm、外径80μmの石英系マルチモードガラス光ファイバ12本を用意し、光ファイバを4本ずつ一方の端部で束ねてバンドル化して3本の集積機能ファイババンドル部を作製した。バンドル化は、図9(a)に示されるように4本の光ファイバが2次元状に密接して配列されるように束ねた後接着剤により固定することにより行った。
【0082】
次に、均一機能ファイバ部の光ファイバとして、コア径205μm、外径250μmの石英系マルチモード光ファイバを3本用意し、同様に3本の光ファイバの一端を束ねてバンドル化した。バンドル化における配列は、集積機能ファイババンドル部と異なり、図13に示されるライン状(1次元状)に密接させた配列とし、出射端にFCフェルールを装着した。各均一機能ファイバ部の光入射端面にはMgF2からなる保護膜を成膜した。
【0083】
集積機能ファイババンドル部の光入射端及び光出射端、均一機能ファイバ部の光入射端にSCフェルールに挿入した後、集積機能ファイババンドル部の光出射端と均一機能ファイバ部の光入射端とをSCコネクタにより当接させて、総チャンネル数12のファイババンドルを得た。
【0084】
次に、6.5mm径、長さ10mmの石英ガラスロッドを用意し、一端面に反射防止膜を配し、もう一方の端面にMgF2膜からなる保護膜を成膜して端面保護部材とし、ファイババンドルの光出射端面と端面保護部材の保護膜が成膜されている面とを、スリーブ内において当接させて光ファイバ端面保護構造を作製した。図17は、得られた光ファイバ端面保護構造において、当接面におけるファイババンドルの出射端面を、光ファイバ端面保護構造の出射端側から観察したものである。
【0085】
得られた光ファイバ端面保護構造のファイババンドルの12本の光入射端に、波長405nm、出力100mWのレーザ光を入射させて出射光パワーの経時変化を測定した(総入力パワー1.2W)。
【0086】
(実施例2)
均一機能ファイバ部の光ファイバとして、実施例1よりもコア径の大きな光ファイバ(コア径230μm、外径250μm)を用いて同様にファイババンドルを作製し、同様の端面保護部材により光ファイバ端面保護構造を作製した。実施例1と同様にして出射光パワーの経時変化を測定した。
【0087】
(実施例3)
実施例1と同様の光ファイバ端面保護構造を用い、入射光の総入力パワーを4.13Wとして同様に、出射光パワーの経時変化を測定した。
【0088】
(比較例1)
実施例1と同様のファイババンドルにおいて、光ファイバ端面保護構造を有さないものについて実施例1と同様に出射光パワーの経時変化を測定した。
【0089】
(評価)
図18は、実施例1及び比較例1における出射光パワーの経時変化を示したものである。図18において、縦軸は、出射光の最大値を1.0とし、各位置での出力光の最大値に対する強度比を示している。実施例2は、ファイババンドルとして、均一機能ファイバ部を実施例1より大口径化したもの用いたものであり、実施例1とほぼ同様の結果が得られたため、図示を省略した。図に示されるように、実施例1の光ファイバ端面保護構造を備えたものは、300時間後も出力光パワーにほとんど変化がみられないが、光ファイバ端面保護構造を備えていない比較例1では、直後より出力が不安定である上、出射光パワーが時間と共に低下している。これらの結果より、光ファイバ端面保護構造によりファイババンドルの出射端面が保護されて、端面汚染による出射光パワー低下を効果的に遅らせることが確認された。また、実施例1ではほとんど出力低下がみられないことから、光ファイバ端面保護構造により戻り光によるファイババンドルの劣化も効果的に抑制できていると考えられる。
【0090】
また図19は、実施例3における出射光パワーの経時変化を示したものである。図19は図18と異なり、縦軸は出射光の出力値を示している。図19においても出射光パワーの低下は600時間後においてもほとんどみられない。総入力パワーが4.0Wを超える場合においても、光ファイバ端面保護構造により端面汚染による出射光パワー低下を効果的に遅らせることが確認された。
以上の結果より、本発明の光ファイバ端面保護構造の有用性が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の光ファイバ端面保護構造は、特に紫外光用の光ファイバ及びファイババンドルの端面保護構造として好ましく利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る実施形態の光ファイバ端面保護構造の構成を示す断面図
【図2】当接部が接合した光ファイバの当接部の断面図
【図3】酸化物膜及びフッ化物膜の波長248nmのパルスレーザ光の吸収係数と損傷閾値の関係を示す図
【図4】ファイババンドルの光出射端面と透光性光学部材の光入射端面
【図5】保護膜の違いによる出射光の光出力特性の評価に用いた光デバイスの要部概略断面図
【図6】保護膜の膜厚をλ/2,λ/4,λ/6とした時の出射光の光出力の経時変化を示す図
【図7】保護膜の膜厚をλ/6及びλ/12とした時の出射光の光出力の経時変化を示す図
【図8】保護膜の成膜方法を蒸着法及びイオンアシスト法とした時の出射光の光出力の経時変化を示す図
【図9】(a)〜(d)はファイババンドルの光出射端面における均一機能ファイバ部の配列を示す図
【図10】本発明に係る実施形態の光ファイバ端面保護構造における好適な態様のファイババンドルの構成を示す断面図
【図11】図10に示されるファイババンドルの集積機能ファイババンドル部の光出射端と均一機能ファイバ部の光入射端の当接部における拡大断面図
【図12】図10に示されるファイババンドルの集積機能ファイババンドル部の光出射端面と均一機能ファイバ部の光入射端面の概略図
【図13】(a)及び(b)は集積機能ファイババンドル部の光出射端面における配列を示す図
【図14】均一機能ファイバ部からの出射光のニアフィールドパターンの強度分布
【図15】図10のファイババンドルの集積機能ファイババンドル部を多段構造にした場合の構成を示す断面図
【図16】図15に示されるファイババンドルの第2の集積機能ファイババンドル部の光出射端と集積機能ファイババンドル部の光入射端の当接部における拡大断面図、
【図17】実施例1の光ファイバ端面保護構造の光出射端側から観察した、当接面におけるファイババンドルの出射端面
【図18】実施例1及び比較例1における出射光パワーの経時変化を示す図
【図19】実施例3における出射光パワーの経時変化を示す図
【符号の説明】
【0093】
1 光ファイバ端面保護構造
10 保護膜(保護部材)
2 ファイババンドル(複数の光ファイバ)
21 ファイババンドル(複数の光ファイバ)の光出射端
21a ファイババンドル(複数の光ファイバ)の光出射端面
3 透光性光学部材
31 透光性光学部材の光入射端
31a 透光性光学部材の光入射端面
4 ファイババンドル
5 集積機能ファイババンドル部
50、60、90 光ファイバ
51、91 光入射端
51r、61r コア部
52 光出射端(集積機能ファイババンドル部の光出射端)
52a 集積機能ファイババンドル部の光出射端面
52r 集積機能ファイババンドル部の光出射領域
6 均一機能ファイバ部
61 均一機能ファイバ部の光入射端
62 均一機能ファイバ部の光出射端
61a 均一機能ファイバ部の光入射端面
7 第1のファイババンドル部
8 第2のファイババンドル部
82 第2のファイババンドル部の光出射端
82a 第2のファイババンドル部の光出射端面
9 第2の集積機能ファイババンドル部
92 第2の集積機能ファイババンドル部の光出射端
92r 第2の集積機能ファイババンドル部の光出射領域
L1 入射光
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの光出射端の保護構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光伝送媒体として広く利用されている光ファイバは、高出力光の伝送の際に光ファイバの出射端面へのごみや汚れの付着による伝送損失低下や付着物の焼き付きによる端面損傷を生じやすく、安定性やビーム品質を低下させるという問題を有している。特に450nm以下のエネルギー密度の高い短波長光等を伝送する場合には出射端面が汚染されやすい。
【0003】
また、光ファイバに光を導光させると、光出射端面において導波光の一部が反射されて光ファイバ内を逆行するいわゆる戻り光を生じる。この戻り光は、入射光のパワーに比例してそのパワーが高くなるため、高出力の入射光を用いる場合には、光出射端面に反射防止用の特殊処理を施しても光ファイバ自身及び接続されている光学デバイスにも悪影響を及ぼすことが知られている。
【0004】
特に、複数の光ファイバを用いて複数の光源からの光を一括して出射するファイババンドル等の場合は、複数の光源のパワーが光出射端面において集められて出射されるため、光出射端面における汚染物の付着速度及び戻り光パワーがより大きくなる。また、ファイババンドルにおいては、ファイバを束ねるのに用いられる接着剤等に対しても戻り光が影響を及ぼしてダメージを与える可能性があるため、できるだけ戻り光量を少なくすることが好ましい。
【0005】
特許文献1には、光ファイバの出射端面にコアレスファイバが融着接続され、コアレスファイバの周囲にコアレスファイバの屈折率より高い屈折率を有する被覆材が設けられた光ファイバ端面構造が開示されている。特許文献1には、コアレスファイバにより端面損傷を防止でき、かつ、コアレスファイバ長を制御することにより、コアレスファイバの周囲にコアレスファイバの屈折率より高い屈折率を有する被覆材部分から効果的に戻り光を出射させて、光ファイバ中での戻り光の逆行を防げることが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、コアークラッド構造の光ファイバの端面に、コアと略同一で均一な屈折率を有する材料からなるコアレスファイバの一端面が接合された光ファイバ端末において、光ファイバからコアレスファイバに入射された光がコアレスファイバの出射端の外径以内のビーム径で出射されるようにコアレスファイバの光路長を設定した光ファイバ端末が開示されている。かかる構成によって、効果的に光ファイバからの出射光を拡げて出射させることができ、反射損失を増やして戻り光量を低減させられる事が記載されている。
【特許文献1】特開2005−303166号公報
【特許文献2】国際公開第2004/053547号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の光ファイバ端面構造及び特許文献2の光ファイバ端末は、光ファイバの出射端に取り付けられる端面保護部材(コアレスファイバ)はいずれも融着等により接着されている。融着により光ファイバと端面保護部材とを接着する場合には、それぞれの口径差が制限される。融着する光ファイバと端面保護部材との口径差が大きいと、双方の熱容量の差が大きいため、軟化速度の差が大きくなり、その結果、端面保護部材の軟化中に細い径を有する光ファイバのコア中のドーパントがクラッド部へ拡散してしまう。ドーパントがクラッド部へ拡散すると、光ファイバは、光の閉じ込め効果が弱まって放射損失が増加し、光ファイバ自身の伝送特性の劣化を生じる。従って、融着により接着させる場合は、光ファイバと端面保護部材との口径差は制限され、2倍以上の口径を有する端面保護部材を融着することは難しい。
【0008】
複数の光ファイバの端面やファイババンドルの端面を一括して保護するためには、1本1本の光ファイバの口径の2倍以上の端面保護部材と融着させることになる。そのため、融着により端面保護部材を接着させた構成とすることは難しく、特許文献1及び特許文献2にも、複数の光ファイバの端面を対象とした記載は一切ない。
【0009】
更に、汚染物の付着については、光ファイバ出射端を保護したとしても、汚染速度は遅くなるものの端面保護部材の出射端においても同様に生じる現象である。従って、端面保護部材はメンテナンスが可能なように着脱可能な構造であることが好ましい。
【0010】
融着技術等の熱による軟化工程を要さずに、光ファイバの光出射端面と端面保護部材とを接続させ、かつ、端面保護部材を着脱可能とする接続方法としては、オプティカルコンタクトが挙げられるが、オプティカルコンタクトには、エネルギー密度の高い光、特に450nm以下の短波長光を導光させる場合や、光ファイバの出射端の汚染物質の除去に用いるUVクリーニング処理を行う場合等に、当接部において光ファイバと端面保護部材の構成材料(石英、SiO2等)が何らかの反応を起こして張り付き、着脱の際に互いの当接面を破損してしまうため、着脱可能構造とすることが難しいことが本出願人により確認されている。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の光ファイバの端面を一括して保護可能であり、端面保護部材が着脱可能な光ファイバ端面保護構造及びそれを有するファイババンドルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光ファイバ端面保護構造は、入射された光を光出射端から出射させる複数の光ファイバと、
該複数の光ファイバのコア材と略同一の屈折率を有し、前記複数の光ファイバの光出射端から出射された光を光入射端から入射させて出射させる透光性光学部材と、
前記複数の光ファイバの光出射端と前記透光性光学部材の光入射端との間に介在し、前記光出射端と前記光入射端との接着を抑止する保護媒体とを有する光ファイバ端面保護構造であって、
前記透光性光学部材の光入射端面は、前記複数の光ファイバの光出射端面以上の大きさを有し、
前記複数の光ファイバと前記透光性光学部材とが前記保護媒体を介して着脱可能とされていることを特徴とするものである。
【0013】
本明細書において、「透光性光学部材」とは、光学部材に入射される光の波長において透過率90%以上を有する光学部材と定義する。
【0014】
またここで、「前記光出射端と前記光入射端との接着を抑止する保護媒体」とは、常温で物理的に当接状態にある光出射端と光入射端とが、当接部においてそれぞれの構成材料が化学反応を起こし、融着等によって接着されることを防ぐ保護媒体を意味し、光出射端と光入射端とを500g重の荷重で当接させた後に離間させた、あるいは当接部から相対的に動かした場合に、当接部において両端面において発生した付着物あるいは付着物による表面凹凸がλ/2以下(λは入射された光の発振波長)となるように接着を抑止するものと定義する。
【0015】
また、「透光性光学部材の光入射端面が、前記複数の光ファイバの光出射端面以上の大きさである」とは、透光性光学部材の光入射端面が、複数の光ファイバの全ての光出射端面と少なくとも当接される大きさであることを意味する。
【0016】
本発明の光ファイバ端面保護構造は、前記入射光が波長190nm〜530nmの光である場合にも着脱可能とすることができる。
【0017】
前記保護媒体は、前記入射光の発振波長に対して透光性を有するものであることが好ましく、光導波方向の光路長がλ/2の整数倍であることが好ましい。
本明細書において、「前記保護媒体が前記入射光の発振波長に対して透光性を有する」とは、入射光の発振波長に対する透過率が90%以上であることと定義する。
【0018】
前記保護媒体としては、単層膜又は複数の膜が積層された多層膜からなる膜体であり、前記複数の光ファイバの光出射端及び/又は前記透光性光学部材の光入射端の表面に形成されているものが挙げられる。
【0019】
前記保護媒体が、フッ化物を含むものであることが好ましく、YF3,LiF,MgF2,NaF,LaF3,BaF2,CaF2及びAlF3からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ化物を含むものであることがより好ましい。
【0020】
また、本発明の光ファイバ端面保護構造は、前記複数の光ファイバが、該複数の光ファイバに入射された複数の光を集積させて出射させるように前記複数の光ファイバが該光ファイバの出射端側で配列されて束ねられたファイババンドルである場合に好ましく適用することができる。
【0021】
本発明のファイババンドルは、上記本発明の光ファイバ端面保護構造を有するものである。
【0022】
本発明のファイババンドルの好適な態様としては、複数の光ファイバに個別に入射させた複数の入射光を集積させて出射させるように前記複数の光ファイバが該光ファイバの出射端側で配列されて束ねられた集積機能ファイババンドル部と、
該集積機能ファイババンドル部からの出射光を均一化させて出射させる均一機能ファイバ部とを有する第1のファイババンドルと、
複数の該第1のファイババンドルを集積させて出射させるように前記第1のファイババンドルが該第1のファイババンドルの出射端側で配列されて束ねられた第2のファイババンドルからなるファイババンドルであって
該均一機能ファイバ部は、少なくとも該均一機能ファイバ部の光入射端面において、前記集積機能ファイババンドル部の光出射端面における光出射領域より大きいコア部を有する光ファイバからなり、
前記集積機能ファイババンドル部の光出射端と前記均一機能ファイバ部の光入射端とは当接されており、
前記集積機能ファイババンドル部と前記均一機能ファイバ部とが着脱可能なファイババンドルが挙げられる。
【0023】
また、本発明のファイババンドルのその他の好適な態様としては、前記集積機能ファイババンドル部を構成する複数の光ファイバのうち少なくとも一つの光ファイバの光入射端に、複数の光ファイバに個別に入射させた複数の入射光を集積させて出射させるように該複数の光ファイバが該光ファイバの出射端側で配列されて束ねられた第2の集積機能ファイババンドル部の光出射端が、該光出射端と該光入射端との接着を抑止する保護媒体を介して当接されており、
前記少なくとも一つの光ファイバは、該光ファイバの光入射端面において、前記第2の集積機能ファイババンドル部の光出射端面における光出射領域より大きいコア部を有するものであり、
前記少なくとも一つの光ファイバと前記第2の集積機能ファイババンドル部とが着脱可能なファイババンドルが挙げられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光ファイバ端面保護構造は、複数の光ファイバの光出射端と透光性光学部材の光入射端とが、接着を抑止する保護媒体を介して当接された構造を有しており、端面保護部材である透光性光学部材が着脱可能なものである。かかる構成では、複数の光ファイバ光出射端面を一括して保護可能であり、かつ、透光性光学部材と複数の光ファイバの光出射端面との接着を抑止する保護媒体を介して当接されているので、着脱の際に端面同士が張り付いて破損しやすい450nm以下の短波長の光やエネルギー密度の高い光を導波させる場合やUVクリーニング処理を端面に施した場合にも、端面を破損することなく透光性光学部材を着脱させることができる。従って、本発明によれば、複数の光ファイバの光出射端面を一括して保護可能であり、端面保護部材が着脱可能な光ファイバ端面保護構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
「光ファイバ端面保護構造、ファイババンドル」
図面を参照して、本発明の一実施形態の光ファイバ端面保護構造及びファイババンドルについて説明する。図1は、本実施形態の光ファイバ端面保護構造1の光導波方向断面図である。本明細書において、図面は、視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0026】
図1に示されるように、光ファイバ端面保護構造1は、ファイババンドル(複数の光ファイバ)2の端面保護構造であり、ファイババンドル2と、透光性光学部材3と、スリーブ(保持部材)4等によって構成されており、透光性光学部材3によってファイババンドル2の光出射端面が保護されている。
【0027】
ファイババンドル2の光出射端21側は、フェルール2aに挿入されており、光出射端面21aは研磨されて加工されている。光出射端面21aの端面形状は、接続損失が少なくなる形状であれば特に制限されず、半球面状や平面状等に加工されていてもよい。透光性光学部材3の光入射端面31aには、保護膜(保護媒体)10が成膜されており、スリーブ4内において、ファイババンドル2の光出射端21と透光性光学部材3の光入射端31とが保護膜10を介してオプティカルコンタクトにより当接されている。当接部における接圧は、4.9N〜11.8N程度が好ましい。ファイババンドル2と透光性光学部材3とがオプティカルコンタクトにより当接されているので、光ファイバ端面保護構造1は、ファイババンドル2と透光性光学部材3とが着脱可能である。
【0028】
ファイババンドル2中を導波してきた光L1は、ファイババンドル2の光出射端21より出射され、保護膜10を介して光入射端31より透光性光学部材3内に入射され、光出射端32より出射される(L2)。
【0029】
ファイババンドル2の材質は特に制限されず、導光させる光の波長に応じて好適な材料を選択すればよい。例えば、紫外光を導光させる場合は、ファイババンドル2を構成する光ファイバは、SiO2や石英等を主成分とするガラス系光ファイバが好ましい。
【0030】
透光性光学部材3の材質は、ファイババンドル2のコア材と略同一の屈折率を有するものであればよく、ファイババンドル2と同様に導光させる光の波長に応じて好適な材料を選択することができる。
【0031】
保護膜10は、光入射端面31a上に成膜された膜体であり、ファイババンドル2の光出射端21と透光性光学部材3の光入射端31との接着を抑止するものである。保護膜10は、光入射端面31a上に直接成膜されてもよいし、アシスト膜を介して成膜されてもよい。SiO2や石英等のガラス系光学部材同士をオプティカルコンタクトにより当接させる際、導光させる光がエネルギー密度の高い光や紫外光、例えば、発振波長190nm〜530nmの光の場合や、当接面にUVクリーニング処理を施した場合等に、当接部において、両方の当接面の酸化物がなんらかの反応を起こして反応部分が一体化して張り付き、その後離間させた場合に張り付いていた部分が破損して光損失が増加し、更には再使用不可能な状態になることが以下のようにして本出願人により確認されている。
【0032】
図2に、光ファイバとガラスをUVクリーニングした後、該光ファイバの断面とガラスを約500[g]の加重で当接し、約100時間放置したときの光ファイバ100の当接面を示す。101はクラッド、102はコアである。103は洗浄後に光ファイバ100とガラス(図示略)とを当接、圧着したことによって、光ファイバ100とガラスに含まれる石英や酸化物が反応を起こした箇所であり、光ファイバ100とガラスとが一体化した部分である。このように反応箇所が一体化すると、光ファイバ100とガラスとを離間させたときに反応箇所が大きく損傷してしまい、或いは反応箇所が光ファイバ100の断面又はガラスに付着してしまっていた。尚、当接前のファイバの表面粗さはRa=2[nm]である。このような現象が光ファイバをオプティカルコンタクトによって当接させた場合においても発生していた。また上記現象は、表面粗さがRa<5[nm]以下で生じやすく、また更にエネルギー密度の高い短波長の光を導光した場合に生じやすい。
【0033】
保護膜10は以上のような現象を防ぐためのものであるので、入射光L1の発振波長λに対して透光性を有し、且つファイババンドル2及び透光性光学部材3がSiO2や石英等を主成分とするガラス材料からなる場合に、これらを常温において物理的に当接させた時に光出射端21と光入射端31との接着を抑止するものであることが好ましい。従って、保護膜10としては、ファイババンドル2及び透光性光学部材3に含まれるSiO2や石英と容易に反応せず、波長190nm〜530nmの光に不活性なものが好ましく、フッ化物を含むものが挙げられる。フッ化物としては、酸素(O)を含まないものが好ましく、YF3、LiF、MgF2、NaF、LaF3、BaF2、CaF2及びAlF3からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ化物がより好ましい。これらのフッ化物は波長190nm〜410nmの光に対して不活性であり、410nm〜530nmの波長に対してもその活性度は少ない。また、波長が長くなるに従ってそのエネルギー密度も小さくなることから、410nm以上の波長の光に対しても好適な保護膜10を形成することができる。
【0034】
保護膜10は、単層膜であってもよいし多層膜であってもよい。多層膜である場合は、保護膜10の最上層が上記材料を含むものであることが望ましく、最上層膜以外の下層膜は、Siを含まない酸化物を含むことが好ましい。
【0035】
更に、保護膜10の存在による光損失は、より少ない方が好ましいため、導光させる光の波長に対して光吸収の少ない材料である方が好ましい。図3は、波長248nmのパルスレーザを用いた場合の種々のフッ化物膜及び酸化物膜の吸収係数とその損傷閾値との関係を示したものである("High damage threshold fluoride UV mirrors made by Ion Beam Sputtering",J.Dijion,et.,al.,SPIE Vol.3244,pp406-418,1998”より引用)。このグラフより、紫外光に対してはフッ化物膜は損傷閾値が高く、従って光吸収の点でも保護膜10の材料としてフッ化物は好ましいことがわかる。更に、導波される光が紫外光の場合は、グラフに示されるようにフッ化物膜の中でもYF3やLiF等が損傷閾値が高く、より好ましい。
【0036】
上記のような構成の保護膜10とすることにより、ファイババンドル2と透光性光学部材3との当接部における化学反応を防いで当接部の損傷を抑制することができる。例えば、当接部に対して50g重以上1kg重以下(より好ましくは500g重以下)の荷重で圧着した後に離間させてもファイババンドル2と透光性光学部材3とが再使用可能とする、つまり着脱可能とすることができる。
【0037】
当接部において、ファイババンドル2の光出射端21から出射された光がすべて透光性光学部材3の光入射端31に入射されるように、光入射端面31aは、光出射端面21a以上の大きさを有している。図4は、透光性光学部材3の形状がロッド状であり、ファイババンドル2が出射端において複数の光ファイバがライン状(1次元状)に配列されて束ねられた場合(図4(a))及び同心円状(2次元状)に束ねられた場合(図4(b))を例に、光出射端面21aと光入射端面31aの断面を示したものである。図4において、光出射端面21aにおける光出射領域及び光入射端面31aの光入射領域を斜線で示してある。光出射端面21aは、光入射端面31aの斜線部分よりも大きい領域を有していればよいが、透光性光学部材3がロッド状である場合は光入射端面31aの形状は円形となることから、図示されるように光出射領域すべてを含む光出射端21aの外接円以上の大きさを有している。
【0038】
透光性光学部材3は、入射された光L1をすべて光出射端32から出射できることが好ましい。導波方向の厚みが大きくなるほど光の拡がりが大きくなるので、光出射端面32aの大きさは、ファイババンドル2の開口数及び厚みを考慮して決定することが好ましい。
【0039】
ファイババンドル2の光出射端面21が透光性光学部材3によって保護された場合、出射端面21aへのごみや汚れの付着はほとんど起こらなくなるが、そのかわりに光出射端面32aがごみや汚れの付着面となる。ごみや汚れの付着は、光のパワー密度が低いほど起こりにくくなるので、透光性光学部材3の導波方向の厚みが大きく、光出射端面32aの大きさは大きい方が、光のパワーが分散されて汚染速度を遅くすることができる。従って、光出射端面32aが大きい方が好ましい。
【0040】
上記のような光出射端面32aを有していれば、透光性光学部材3の形状は特に制限されないが、汎用性の高く安価な光学部材の形状としては、光入射端面31aと光出射端面32aが略同一であるロッド状の光学部材が挙げられる。ロッド状である場合、光出射端面32aを大きくしようとした場合は、光入射端面31aも大きなものとなる。
【0041】
背景技術において述べたように、融着されている場合は端面保護部材の光入射端面の大きさは制限されるが、本実施形態の光ファイバ端面保護構造1は、端面保護部材である透光性光学部材3とファイババンドル2とが融着されておらず、当接されて着脱可能な構成としている。従って、端面保護部材である透光性光学部材3の光入射端面31aの大きさに制限がなく、例えば、図4において、ファイババンドル2の光出射端面21aにおける光出射領域の外接円の径の2倍以上の径を有する透光性光学部材3を当接させることも可能である。従って、ファイババンドル2のような複数のファイバを一括して保護する光ファイバ端面保護構造とすることができたわけであるが、更に光入射端面31aを大きくして、光出射端面32aの汚染速度を充分に低下させうるように、透光性光学部材3を設計することができる。
【0042】
また、背景技術において、高出力光を伝送する場合、光ファイバは、光出射端面において導波光の一部が反射されて光ファイバ内を逆行するいわゆる戻り光を生じて、光ファイバ自身及び接続されている光学デバイスにも悪影響を及ぼすことがあることも述べた。従って、光出射端面32aは、反射防止の特殊処理が施されていることが好ましい。しかしながら、光のパワーが大きくなると、反射防止の特殊処理を施しても戻り光量は光ファイバ等への影響を無視できる範囲を超えてしまうため、光出射端面における反射光をできるだけ光ファイバ内に再入射させずに、端面保護部材から外部へ出射させることができることが好ましい。上記のように、端面保護部材である透光性光学部材3の口径を大きくすることが可能であれば、より多くの反射光を効果的に光ファイバに再入射させずに端面保護部材から外部へ出射させることが可能であるので、本実施形態によれば、戻り光による影響も少なくすることができる。
【0043】
本実施形態において保護膜10は透光性光学部材3の光入射端面31a上に成膜されているが、ファイババンドル2の光出射端面21a上に成膜されてもよいし、光入射端面31a及び光出射端面21aの両方に成膜されてもよい。
【0044】
保護膜10は、透光性光学部材3とファイババンドル2とを着脱させる際に成膜された端面から剥離しないことが好ましい。従って、保護膜10が、光出射端面21a又は光入射端面31aのどちらか一方に成膜されている場合は、保護膜10が成膜されている端面と保護膜10との密着性が、保護膜10が成膜されていない方の端面と保護膜10との密着性より高い方が好ましい。また、両端面に成膜されている場合は、保護膜10が成膜されている端面と保護膜10との密着性が、両端面に成膜された膜同士の密着性より高い方が好ましい。更に、保護膜10が多層膜である場合は、多層膜を構成する膜同士についても同様に密着性が高い方が好ましい。
【0045】
保護膜10の存在による光損失は、上記した保護膜10の材料以外に、膜厚によって影響される。従って、保護膜10の膜厚は、光損失に影響のない膜厚とすることが好ましい。保護膜10における光損失の要因としては、反射による損失と、吸収による損失とが挙げられる。従って、保護膜10の膜厚は、反射及び吸収による光損失への影響を考慮して決定することが好ましい。
【0046】
反射による損失を最小にするためには、保護膜10の膜厚は、光損失に影響のない膜厚とすることが好ましい。光入射端面31a又はファイババンドル2の光出射端面21aのどちらか一方に保護膜10が成膜されている場合は、保護膜10の光導波方向の光路長(d×N,ここでdは光導波方向の膜厚、Nは保護膜10の屈折率)と導光させる光の波長λとが下記式(1)を充足することが好ましい。
d×N=(λ/2)×n ・・・(1)
(但し、nは1以上の整数)
【0047】
光入射端面31a又はファイババンドル2の光出射端面21aの両方に保護膜10が成膜されている場合は、両方に成膜される保護膜10が同一の屈折率を有する場合は、(1)式においてdを保護膜10の総膜厚とすればよい。しかしながら、両方に成膜する場合、両端面に成膜された保護膜同士が当接により反応や一体化等を生じないように、各端面に成膜される保護膜10は、少なくとも最表面にある最上層が異種材料により構成されることが好ましい。その場合、ファイババンドル2の光出射端21a上に成膜された保護膜10の膜厚をdf、同じく屈折率をNfとし、透光性光学部材3の光入射端31a上に成膜された保護膜10の膜厚をdg、同じく屈折率をNgとすると、これらが下記式(2)を充足することが好ましい。
(df×Nf)+(dg×Ng)=(λ/2)×n ・・・(2)
(但し、nは1以上の整数)
【0048】
吸収による損失を小さくするためには、保護膜10は、膜厚が薄い方が好ましい。膜厚が大きいほど膜の光エネルギー吸収が大きいため、吸収されたエネルギーによって保護膜10が熱劣化し、それに伴う変色やひび割れ等を生じやすくなる。従って上記式(1)及び(2)においてnは1であることが好ましい。しかしながら、吸収による損失への影響の度合いによっては、反射による影響に比して吸収による影響の方が大きくなる。その場合は、上記式(1)及び(2)において、n=1とした時の膜厚よりも薄い膜厚においてより光損失を小さくすることができる。
【0049】
保護膜10の好適な膜厚を調べるために、図5に示される光デバイス110を作製し、異なる膜厚の保護膜10を使用した場合の出射光の光出力の経時変化を測定した。図示されるように光デバイス110は、光ファイバ111a,111bと、フェルール112a,112bと、スリーブ113等によって構成されており、スリーブ113内で各フェルールに挿入された光ファイバ111a,111bとが膜厚dの保護膜10を介して当接されている。当接面においてフェルールの端部は半球面状に研磨されており、保護膜10は光ファイバ111a側の端面に成膜されている。
【0050】
保護膜10の膜厚dをλ/2、λ/4、λ/6とした光デバイス110を用い、波長405nm、出力160mWのレーザ光を光ファイバ91aに入射したときの光ファイバ91bからの出射光の光出力の経時変化を測定した。保護膜10の成膜方法としては蒸着法を用いた。図6は、その測定結果を示した図であり、縦軸は、入射光の出力値に対する出射光の出力値の割合を示している。このとき、各膜における直径約60μmの領域をレーザ光が通過する。
【0051】
図6に示されるように、膜厚dが小さいほど、出射光の光出力の低下は少ない(即ち、光損失が少ない)。また、実験後のそれぞれの保護膜10を顕微鏡観察したところ、d=λ/6の膜の外観変化はほとんど見られなかったが、d=λ/4及びλ/2の膜はレーザ光の通過部分と思われる領域の変色が確認された。更に、d=λ/2の膜は、変色した部分の周辺に膜のひび割れが確認された。d=λ/2及びd=λ/4の膜に見られた変色は、レーザ光の熱によって膜が融解したため(熱劣化)と考えられる。この結果より、膜厚dが大きいほど、膜によるレーザ光のエネルギー吸収が大きく、この吸収によって膜質が変化し、光損失が大きくなると考えられる。
【0052】
また図7は、保護膜10の膜厚を、d=λ/6及びλ/12のMgF2膜とし、上記測定と同様にして光損失値の経時変化を測定した結果を示したものである。保護膜10の成膜はイオンアシスト法により行った。図7に示されるように、d=λ/6とd=λ/12の膜とでは、光出力の変化の仕方がほぼ同じであり、いずれも1000時間後の出射光の光出力の低下率は10%未満である。
【0053】
これらの結果より、保護膜10がMgF2膜であり、入射される光が波長405nm、出力160mWのレーザ光の場合は、光損失に対する影響が、反射による影響に比して吸収による影響の方が大きく、保護膜10の膜厚dがλ/6以下であれば、1000時間後の出射光の光出力の低下率は10%未満に抑えることができ、好ましいと考えられる。
【0054】
光損失に対する反射による影響と吸収による影響との比率は、レーザ光の出力や波長、また保護膜10の材質によって異なり、式(1)又は式(2)を充足する膜厚である場合が好適な場合もあるし、膜厚dがλ/6以下であることが好適な場合もある。しかしながら、波長190nm〜530nmの光はエネルギー密度が高いため、出力にもよるが、保護膜10の膜厚dはλ/6以下であることが好適であると考えられる。なお、当接部において光入射端面及び光出端面の両方に保護膜10が成膜されている場合は、膜厚は両方に成膜されている保護膜10の膜厚の合計とする(d=df+dg)。
【0055】
保護膜10の成膜方法は制限されないが、保護膜10と成膜される端面との界面での光損失を少なくするためには、成膜前に被成膜面のクリーニングが可能な成膜方法が好ましい。また、膜の緻密性が高いほど、光エネルギー密度の高い光を導波させた際に保護膜10自身の光のエネルギー吸収による膜質変化が少なくなることから、より緻密な膜を成膜可能な成膜方法が好ましい。成膜前に被成膜面のクリーニング成膜前に被成膜面のクリーニングが可能であり、かつ、緻密性の高い膜を成膜可能な成膜方法としては、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0056】
成膜前に被成膜面のクリーニング成膜前に被成膜面のクリーニングが可能であり、かつ、緻密性の高い膜を成膜可能な成膜方法としては、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0057】
図8は、蒸着法とイオンアシスト法のそれぞれの方法で成膜された膜厚λ/6の保護膜10(MgF2膜)を使用し、上記測定と同様にして光損失値の経時変化を測定した結果を示したものである。図8に示されるように、蒸着法よりイオンアシスト法で成膜した保護膜10を用いた方が、光出力の低下が少なく好ましいことがわかる。
【0058】
ファイババンドル2において、バンドルされる光ファイバ20の数や、バンドル部における配列パターンは特に制限されない。バンドル部の配列としては、1次元状(ライン状)、2次元状(同心円状を含む)等があげられ、要求される出射パターンに応じて配列されたものでよい。図9(a)〜(d)に配列パターンの例を示す。
【0059】
ファイババンドル2の好適な態様としては、図10に示されるファイババンドル4が挙げられる。図10を参照してファイババンドル4について説明する。図10はファイババンドル4の光導波方向の概略断面図である。
【0060】
ファイババンドル4は、複数の光ファイバ50に個別に入射させた複数の入射光L1を集積させて出射させるように複数の光ファイバ50が光出射端52側で配列されて束ねられた集積機能ファイババンドル部5と、集積機能ファイババンドル部5からの出射光を均一化させて出射させる光ファイバ60を備えた均一機能ファイバ部6とを有する第1のファイババンドル部7と、複数の第1のファイババンドル部7からの出射光を集積させて出射させるように複数の第1のファイババンドル部の均一機能ファイバ部7が光出射端82側で配列されて束ねられた第2のファイババンドル部8を備えたものである。
【0061】
図10において、集積機能ファイババンドル部5の光出射端52と均一機能ファイバ部6の光入射端61とは、それぞれフェルール60a、70a(図10では図示略)に挿入されて、スリーブ80(保持部材)内において保護膜10を介してオプティカルコンタクトにより当接されている。従って、集積機能ファイババンドル部5と均一機能ファイバ部6とは着脱可能である。
【0062】
フェルール50a及び60aに挿入された両端面は研磨加工されており、その端面形状は、接続損失が少なくなる形状であれば特に制限されず、半球面状や平面状等が挙げられる。フェルール50a及び60aとしてSCフェルールを使用する場合は、スリーブ80としてSCコネクタを使用することができる。
【0063】
図11は、図10の集積機能ファイババンドル部5の光出射端52と均一機能ファイバ部6の光入射端61の当接部における拡大断面図、図12は図10の集積機能ファイババンドル部5の光出射端面52aと均一機能ファイバ部6の光入射端61aの概略図である。図12に示されるように、均一機能ファイバ部6の光ファイバ60は、少なくとも光入射端面61aにおいて、集積機能ファイババンドル部5の光出端面52aにおける光出射領域52rと同等以上の大きさのコア部61rを有するものである。かかる構成とすることにより、均一機能ファイバ部6は、集積機能ファイババンドル部5からの出射光すべてを受光して、均一化させて出射させることができる。
【0064】
複数の光ファイバ50の材料系は特に制限なく、SiO2や石英を主成分とするガラス系光ファイバ等が挙げられ、入射光L1の波長によって好適な材料を選択することができる。光ファイバの種類は特に制限されないが、光源等への利用を考えた場合は、マルチモード光ファイバが好ましい。
【0065】
複数の光ファイバ50は、集積機能ファイババンドル部5を構成するものであるので、より高密度に集積可能となるように、そのファイバ径はより細径であることが好ましい。しかしながら、光ファイバは細径化すればするほど、取り扱い性が困難となり、ファイバ長もその取り扱いの困難性、生産上の歩留まりの点からも短くせざるを得なくなる等、設計自由度が制限されてしまう。また、背景技術において述べたように、非常に細径な光ファイバを高密度に集積させたファイババンドルはケーブル化処理が非常に難しい。従って、できるだけ径の太い光ファイバにより集積構造を形成できることが好ましい。ファイババンドル5は、集積機能ファイババンドル部5からの出射光を均一化して出射させる均一機能ファイバ部6を更に束ねて集積させる2段集積構造としている。従って、要求される光量が決まっている場合、このような2段集積構造は、通常の単一集積構造のものに比して一度に集積させる光ファイバの数が少なくてよいことになる。つまり、単一集積構造のものに比して大口径の光ファイバにより集積機能ファイババンドル部5を形成することが可能である。例えば、単一集積構造の場合において、外径が50μm程度の光ファイバを集積させる場合、図10に示される構成では外径80μm程度にすることが可能である。この程度のファイバ径を有していれば、ファイバ長も取り扱い性の容易な50cm〜1m程度とすることができる。
【0066】
また、集積させる光ファイバの本数が多い場合、例えば20本を超えるような場合は、取り扱い性が容易でないため、ファイバを束ねる際に用いる接着剤の量にむらが生じやすく、この接着むらによりファイババンドルの光出射端面を研磨する際に影響を及ぼして研磨状態を不安定にする可能性がある。上記したように、ファイババンドル4は、集積機能ファイババンドル部5で集積させる光ファイバの数を少なくすることができるので、接着むらを生じにくくすることもできる。更に、集積度の高密度化の要求に対しても、後記するような集積機能ファイババンドル部を多段構造とすることにより、一つの集積本数を取り扱い性の容易な本数に維持したまま集積度を高くすることが可能である。
【0067】
集積機能ファイババンドル部5において、複数の光ファイバ50の配列パターンは特に制限ないが、図13(a)及び(b)に示されるような同心円状(2次元状)に密接させて束ねた配列とすると細経の光ファイバを束ねやすく好ましい。最終的な出射パターンは、第2のファイババンドル部8の光出射端82における均一機能ファイバ部6の配列パターンによって決まるので、ファイババンドル4においては、集積させやすい同心円状の配列で束ねることが可能である。
【0068】
均一機能ファイバ部6は、1本のマルチモード光ファイバ60からなり、その材料系は特に制限されないが、複数の光ファイバ50が束ねられた集積機能ファイババンドル部5からの出射光を均一化させて出射させるものであるので、複数の光ファイバ50と同一の材料系の光ファイバであることが好ましい。
【0069】
上記したように、集積機能ファイババンドル部5は細経ファイバを集積させたものであるので、高密度に集積させた場合は取り扱い性の困難性からファイバ長をあまり長くすることができない。均一機能ファイバ部6は、複数の光からなる集積機能ファイババンドル部5からの出射光を、マルチモードファイバからなる光ファイバ60を導光中に生じる光の干渉やモード間の相互作用等により均一化させて出射させるものであるので、光ファイバ60の長さは長い方が好ましい。したがって、均一機能ファイバ部6によりファイババンドル全体の長さを調整することができる。導光中の光損失を考慮すると、光ファイバ60の長さは10cm以上5m以下であることが好ましく、1m以上5m以下であることがより好ましい。
【0070】
均一機能ファイバ部6からの出射光は、ニアフィールドパターンによりその強度分布を測定しても均一性の高いものとなる。図14は、集積機能ファイババンドル部5を構成する複数の光ファイバ50としてコア径60μm、外径80μmの石英系マルチモード光ファイバ4本を用い、均一機能ファイバ部6の光ファイバ60としてコア径230μm、外径250μmの石英系マルチモード光ファイバを用いて作製した第1のファイババンドル部7に光を入射させた時の出射光のニアフィールドパターンである。図14において、縦軸は、出射光の最大値を1.0とし、各位置での出力光の最大値に対する強度比を示している。図14に示されるように、第1のファイババンドル部7からの出射光パターンはコア部において略均一な強度分布を有している。従って、第1のファイババンドル部7のみの構成としても、出射光の均一性の高いファイババンドルを提供することができる。
【0071】
ファイババンドル4の光出射端は、第2のファイババンドル部8の光出射端82である。従って、ファイババンドル4からの出射光L2の出射パターンは、光出射端82における均一機能ファイバ部6の光ファイバ60の配列により変化させることができる(図9(a)〜(d)を参照。)。
【0072】
例えば、長四角のミラー全体を照射する光源として使用するような場合は、図9(a)又は(b)のように1次元状に密接させた配列パターンで光ファイバ60を配列すればよい。図9(a)又は(b)に示されるパターンを細径ファイバのみで集積させようとした場合は、その取り扱い性の難しさから、無効エリアの多い出射パターンとなりやすく、その結果均一性の悪い光源となりやすい。上記したように、本実施形態のファイババンドル4は、集積機能ファイババンドル部5においては、集積させやすい同心円状の配列とし、取り扱い性の容易な口径の大きい均一機能ファイバ部6の光ファイバ60を所望の配列にして束ねることにより出射パターンを形成することができるので、製造が簡易であり、かつ、均一性の良好な光を出射させることができる。
また、図9(d)に示されるように、離間された出射位置から複数の光を出射させる場合などは、各出射点において、均一性の高い光を出射させることができる。
【0073】
ファイババンドル4は、集積機能ファイババンドル部5と均一機能ファイバ部6とがオプティカルコンタクトにより当接された構成としている。従って、集積機能ファイババンドル部5と均一機能ファイバ部6とを容易に着脱することができる。従来の単一集積構造の場合等は、ファイババンドルを構成する複数の光ファイバのうち1本に故障や機能低下を生じた場合や、光源としての仕様が変更された場合等はファイババンドル毎交換しなければならず、ファイババンドルからの出射光を入射させる光学素子等との位置合わせ等をその都度やり直す必要がある。本実施形態のファイババンドル4は、集積機能ファイババンドル部5のみを着脱して取り替えることが可能であるため、光学素子等との位置合わせがされている均一機能ファイバ部6側を動かすことなくメンテナンスすることができる。
【0074】
例えば、図9(d)に示されるように2点を同時に光らせてそれぞれを別の光学系に入射させるような場合のように、各点毎に出射光強度や波長等を設定したい場合も、各点に接続される第1のファイババンドル部7の集積機能ファイババンドル部5のみを仕様にあったものに変更するだけでよいため、各点の光学系への位置調整等をその都度行わずに、自由に各点から出射させる光の特性を変更することが可能である。
【0075】
ファイババンドル4は、図15に示されるように、ファイババンドル4の集積機能ファイババンドル部5を構成する複数の光ファイバ50のうち少なくとも一つの光ファイバ50の光入射端51に、複数の光ファイバ90に個別に入射させた複数の入射光L1を集積させて出射させるように複数の光ファイバ90が光ファイバ90の出射端92側で配列されて束ねられた第2の集積機能ファイババンドル部9の光出射端92が当接された構成とし(図16)、集積機能ファイババンドル部を多段化した構成とすることができる。図15は、集積機能ファイババンドル部を2段構造にした場合を例に示してある。このとき、少なくとも一つの光ファイバ50は、光ファイバ50の光入射端面51aにおいて、第2の集積機能ファイババンドル部9の光出射端面92aにおける光出射領域92rより大きいコア部51rを有するものである(図12を参照)。
【0076】
第2の集積ファイババンドル部9は、ファイババンドル4の集積機能ファイババンドル部5と同様の構成としており、また、多段化する際の当接部の構成もファイババンドル4と同様である。従って、ファイババンドル4と同様着脱可能であり、更に、集積機能ファイババンドル部が多段化されていることから、より高密度に光を集積させることができる。図15では集積機能ファイババンドル部を2段構造とした場合を示しているが、同様の構成により集積機能ファイババンドル部を増やして更に多段化することが可能である。
【0077】
ファイババンドル4においても、導光させる光が、光エネルギー密度の高い短波長の光等の場合は、上記した、当接部において着脱の際に端面を損傷する現象を同様に生じる。従って、その場合は、当接箇所には、保護膜10を介在させることが好ましい。
【0078】
ファイババンドル4のように、集積構造が多段化されているような場合は、戻り光の影響が各集積部に対して生じることから、影響を受ける箇所が多く存在することになる。従って、光ファイバ端面保護構造1はファイババンドル4に好適に利用することができる。
光ファイバ端面保護構造1は以上のように構成されている。
【0079】
光ファイバ端面保護構造は1、ファイババンドル(複数の光ファイバ)2の光出射端21と透光性光学部材3の光入射端31とが、接着を抑止する保護媒体10を介して当接された構造を有しており、端面保護部材である透光性光学部材3が着脱可能なものである。かかる構成では、ファイババンドル2の光出射端面21aを一括して保護可能であり、かつ、透光性光学部材3と光出射端面21aとの接着を抑止する保護媒体10を介して当接されているので、着脱の際に端面同士が張り付いて破損しやすい450nm以下の短波長の光やエネルギー密度の高い光を導波させる場合やUVクリーニング処理を端面に施した場合にも、端面を破損することなく透光性光学部材3を着脱させることができる。従って、本発明によれば、ファイババンドル2の光出射端面21aを一括して保護可能であり、端面保護部材が着脱可能な光ファイバ端面保護構造1を提供することができる。
【0080】
(設計変更)
本実施形態において、複数の光ファイバ2としてファイババンドルを例に説明したが、ファイババンドル以外のもの、例えば、ファイバアレイ等にも適用可能である。
また、保護媒体10が膜体である場合について説明したが、膜体には限定されない。
【実施例】
【0081】
本発明に係る実施例について説明する。
(実施例1)
図1に示される光ファイバ端面保護構造を以下のようにして作製した。
まず、図10に示される2段集積構造を有するファイババンドルを作製した。集積機能ファイババンドル部の光ファイバとして、ファイバ長1m、コア径60μm、外径80μmの石英系マルチモードガラス光ファイバ12本を用意し、光ファイバを4本ずつ一方の端部で束ねてバンドル化して3本の集積機能ファイババンドル部を作製した。バンドル化は、図9(a)に示されるように4本の光ファイバが2次元状に密接して配列されるように束ねた後接着剤により固定することにより行った。
【0082】
次に、均一機能ファイバ部の光ファイバとして、コア径205μm、外径250μmの石英系マルチモード光ファイバを3本用意し、同様に3本の光ファイバの一端を束ねてバンドル化した。バンドル化における配列は、集積機能ファイババンドル部と異なり、図13に示されるライン状(1次元状)に密接させた配列とし、出射端にFCフェルールを装着した。各均一機能ファイバ部の光入射端面にはMgF2からなる保護膜を成膜した。
【0083】
集積機能ファイババンドル部の光入射端及び光出射端、均一機能ファイバ部の光入射端にSCフェルールに挿入した後、集積機能ファイババンドル部の光出射端と均一機能ファイバ部の光入射端とをSCコネクタにより当接させて、総チャンネル数12のファイババンドルを得た。
【0084】
次に、6.5mm径、長さ10mmの石英ガラスロッドを用意し、一端面に反射防止膜を配し、もう一方の端面にMgF2膜からなる保護膜を成膜して端面保護部材とし、ファイババンドルの光出射端面と端面保護部材の保護膜が成膜されている面とを、スリーブ内において当接させて光ファイバ端面保護構造を作製した。図17は、得られた光ファイバ端面保護構造において、当接面におけるファイババンドルの出射端面を、光ファイバ端面保護構造の出射端側から観察したものである。
【0085】
得られた光ファイバ端面保護構造のファイババンドルの12本の光入射端に、波長405nm、出力100mWのレーザ光を入射させて出射光パワーの経時変化を測定した(総入力パワー1.2W)。
【0086】
(実施例2)
均一機能ファイバ部の光ファイバとして、実施例1よりもコア径の大きな光ファイバ(コア径230μm、外径250μm)を用いて同様にファイババンドルを作製し、同様の端面保護部材により光ファイバ端面保護構造を作製した。実施例1と同様にして出射光パワーの経時変化を測定した。
【0087】
(実施例3)
実施例1と同様の光ファイバ端面保護構造を用い、入射光の総入力パワーを4.13Wとして同様に、出射光パワーの経時変化を測定した。
【0088】
(比較例1)
実施例1と同様のファイババンドルにおいて、光ファイバ端面保護構造を有さないものについて実施例1と同様に出射光パワーの経時変化を測定した。
【0089】
(評価)
図18は、実施例1及び比較例1における出射光パワーの経時変化を示したものである。図18において、縦軸は、出射光の最大値を1.0とし、各位置での出力光の最大値に対する強度比を示している。実施例2は、ファイババンドルとして、均一機能ファイバ部を実施例1より大口径化したもの用いたものであり、実施例1とほぼ同様の結果が得られたため、図示を省略した。図に示されるように、実施例1の光ファイバ端面保護構造を備えたものは、300時間後も出力光パワーにほとんど変化がみられないが、光ファイバ端面保護構造を備えていない比較例1では、直後より出力が不安定である上、出射光パワーが時間と共に低下している。これらの結果より、光ファイバ端面保護構造によりファイババンドルの出射端面が保護されて、端面汚染による出射光パワー低下を効果的に遅らせることが確認された。また、実施例1ではほとんど出力低下がみられないことから、光ファイバ端面保護構造により戻り光によるファイババンドルの劣化も効果的に抑制できていると考えられる。
【0090】
また図19は、実施例3における出射光パワーの経時変化を示したものである。図19は図18と異なり、縦軸は出射光の出力値を示している。図19においても出射光パワーの低下は600時間後においてもほとんどみられない。総入力パワーが4.0Wを超える場合においても、光ファイバ端面保護構造により端面汚染による出射光パワー低下を効果的に遅らせることが確認された。
以上の結果より、本発明の光ファイバ端面保護構造の有用性が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の光ファイバ端面保護構造は、特に紫外光用の光ファイバ及びファイババンドルの端面保護構造として好ましく利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る実施形態の光ファイバ端面保護構造の構成を示す断面図
【図2】当接部が接合した光ファイバの当接部の断面図
【図3】酸化物膜及びフッ化物膜の波長248nmのパルスレーザ光の吸収係数と損傷閾値の関係を示す図
【図4】ファイババンドルの光出射端面と透光性光学部材の光入射端面
【図5】保護膜の違いによる出射光の光出力特性の評価に用いた光デバイスの要部概略断面図
【図6】保護膜の膜厚をλ/2,λ/4,λ/6とした時の出射光の光出力の経時変化を示す図
【図7】保護膜の膜厚をλ/6及びλ/12とした時の出射光の光出力の経時変化を示す図
【図8】保護膜の成膜方法を蒸着法及びイオンアシスト法とした時の出射光の光出力の経時変化を示す図
【図9】(a)〜(d)はファイババンドルの光出射端面における均一機能ファイバ部の配列を示す図
【図10】本発明に係る実施形態の光ファイバ端面保護構造における好適な態様のファイババンドルの構成を示す断面図
【図11】図10に示されるファイババンドルの集積機能ファイババンドル部の光出射端と均一機能ファイバ部の光入射端の当接部における拡大断面図
【図12】図10に示されるファイババンドルの集積機能ファイババンドル部の光出射端面と均一機能ファイバ部の光入射端面の概略図
【図13】(a)及び(b)は集積機能ファイババンドル部の光出射端面における配列を示す図
【図14】均一機能ファイバ部からの出射光のニアフィールドパターンの強度分布
【図15】図10のファイババンドルの集積機能ファイババンドル部を多段構造にした場合の構成を示す断面図
【図16】図15に示されるファイババンドルの第2の集積機能ファイババンドル部の光出射端と集積機能ファイババンドル部の光入射端の当接部における拡大断面図、
【図17】実施例1の光ファイバ端面保護構造の光出射端側から観察した、当接面におけるファイババンドルの出射端面
【図18】実施例1及び比較例1における出射光パワーの経時変化を示す図
【図19】実施例3における出射光パワーの経時変化を示す図
【符号の説明】
【0093】
1 光ファイバ端面保護構造
10 保護膜(保護部材)
2 ファイババンドル(複数の光ファイバ)
21 ファイババンドル(複数の光ファイバ)の光出射端
21a ファイババンドル(複数の光ファイバ)の光出射端面
3 透光性光学部材
31 透光性光学部材の光入射端
31a 透光性光学部材の光入射端面
4 ファイババンドル
5 集積機能ファイババンドル部
50、60、90 光ファイバ
51、91 光入射端
51r、61r コア部
52 光出射端(集積機能ファイババンドル部の光出射端)
52a 集積機能ファイババンドル部の光出射端面
52r 集積機能ファイババンドル部の光出射領域
6 均一機能ファイバ部
61 均一機能ファイバ部の光入射端
62 均一機能ファイバ部の光出射端
61a 均一機能ファイバ部の光入射端面
7 第1のファイババンドル部
8 第2のファイババンドル部
82 第2のファイババンドル部の光出射端
82a 第2のファイババンドル部の光出射端面
9 第2の集積機能ファイババンドル部
92 第2の集積機能ファイババンドル部の光出射端
92r 第2の集積機能ファイババンドル部の光出射領域
L1 入射光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射された光を光出射端から出射させる複数の光ファイバと、
該複数の光ファイバのコア材と略同一の屈折率を有し、前記複数の光ファイバの光出射端から出射された光を光入射端から入射させて出射させる透光性光学部材と、
前記複数の光ファイバの光出射端と前記透光性光学部材の光入射端との間に介在し、前記光出射端と前記光入射端との接着を抑止する保護媒体とを有する光ファイバ端面保護構造であって、
前記透光性光学部材の光入射端面は、前記複数の光ファイバの光出射端面以上の大きさを有し、
前記複数の光ファイバと前記透光性光学部材とが前記保護媒体を介して着脱可能とされていることを特徴とする光ファイバ端面保護構造。
【請求項2】
前記透光性光学部材は、前記複数の光ファイバの光出射端から出射された光をすべて入射可能な大きさを有する光入射端面と、該光入射端面に入射された光をすべて出射可能な大きさを有する光出射端面とを有するものであることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項3】
前記保護媒体は、前記複数の光ファイバの光出射端と前記透光性光学部材の光入射端とが500g重の荷重で当接させた後に離間させても、該光出射端と該光入射端とが再使用可能なように接着を抑止するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項4】
前記入射光が波長190nm〜530nmの光であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項5】
前記保護媒体が、前記入射光の発振波長に対して透光性を有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項6】
前記保護媒体が、単層膜又は複数の膜が積層された多層膜からなる膜体であり、前記複数の光ファイバの光出射端及び/又は前記透光性光学部材の光入射端の表面に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項7】
前記保護媒体の光導波方向の光路長が、λ/2の整数倍(但し、λは前記入射光の発振波長)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項8】
前記保護媒体の光導波方向の厚みがλ/2以下(但し、λは前記入射光の発振波長)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項9】
前記保護媒体が、フッ化物を含むものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項10】
前記保護媒体が、YF3,LiF,MgF2,NaF,LaF3,BaF2,CaF2及びAlF3からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ化物を含むものであることを特徴とする請求項9に記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項11】
前記複数の光ファイバが、該複数の光ファイバに入射された複数の光を集積させて出射させるように前記複数の光ファイバが該光ファイバの出射端側で配列されて束ねられたファイババンドルであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項12】
請求項11に記載の光ファイバ端面保護構造を有するファイババンドル。
【請求項13】
複数の光ファイバに個別に入射させた複数の入射光を集積させて出射させるように前記複数の光ファイバが該光ファイバの出射端側で配列されて束ねられた集積機能ファイババンドル部と、
該集積機能ファイババンドル部からの出射光を均一化させて出射させる均一機能ファイバ部とを有する第1のファイババンドルと、
複数の該第1のファイババンドルを集積させて出射させるように前記第1のファイババンドルが該第1のファイババンドルの出射端側で配列されて束ねられた第2のファイババンドルからなるファイババンドルであって
該均一機能ファイバ部は、少なくとも該均一機能ファイバ部の光入射端面において、前記集積機能ファイババンドル部の光出射端面における光出射領域より大きいコア部を有する光ファイバからなり、
前記集積機能ファイババンドル部の光出射端と前記均一機能ファイバ部の光入射端とは当接されており、
前記集積機能ファイババンドル部と前記均一機能ファイバ部とが着脱可能なファイババンドルであることを特徴とする請求項12に記載のファイババンドル。
【請求項14】
前記集積機能ファイババンドル部を構成する複数の光ファイバのうち少なくとも一つの光ファイバの光入射端に、複数の光ファイバに個別に入射させた複数の入射光を集積させて出射させるように該複数の光ファイバが該光ファイバの出射端側で配列されて束ねられた第2の集積機能ファイババンドル部の光出射端が、該光出射端と該光入射端との接着を抑止する保護媒体を介して当接されており、
前記少なくとも一つの光ファイバは、該光ファイバの光入射端面において、前記第2の集積機能ファイババンドル部の光出射端面における光出射領域より大きいコア部を有するものであり、
前記少なくとも一つの光ファイバと前記第2の集積機能ファイババンドル部とが着脱可能なファイババンドルであることを特徴とする請求項12に記載のファイババンドル。
【請求項15】
前記集積機能ファイババンドル部の光出射端と前記均一機能ファイバ部の光入射端とが該光出射端と該光入射端との接着を抑止する保護媒体を介して当接されており、
前記集積機能ファイババンドル部と前記均一機能ファイバ部とが前記保護媒体を介して着脱可能であることを特徴とする請求項13又は14に記載のファイババンドル。
【請求項1】
入射された光を光出射端から出射させる複数の光ファイバと、
該複数の光ファイバのコア材と略同一の屈折率を有し、前記複数の光ファイバの光出射端から出射された光を光入射端から入射させて出射させる透光性光学部材と、
前記複数の光ファイバの光出射端と前記透光性光学部材の光入射端との間に介在し、前記光出射端と前記光入射端との接着を抑止する保護媒体とを有する光ファイバ端面保護構造であって、
前記透光性光学部材の光入射端面は、前記複数の光ファイバの光出射端面以上の大きさを有し、
前記複数の光ファイバと前記透光性光学部材とが前記保護媒体を介して着脱可能とされていることを特徴とする光ファイバ端面保護構造。
【請求項2】
前記透光性光学部材は、前記複数の光ファイバの光出射端から出射された光をすべて入射可能な大きさを有する光入射端面と、該光入射端面に入射された光をすべて出射可能な大きさを有する光出射端面とを有するものであることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項3】
前記保護媒体は、前記複数の光ファイバの光出射端と前記透光性光学部材の光入射端とが500g重の荷重で当接させた後に離間させても、該光出射端と該光入射端とが再使用可能なように接着を抑止するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項4】
前記入射光が波長190nm〜530nmの光であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項5】
前記保護媒体が、前記入射光の発振波長に対して透光性を有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項6】
前記保護媒体が、単層膜又は複数の膜が積層された多層膜からなる膜体であり、前記複数の光ファイバの光出射端及び/又は前記透光性光学部材の光入射端の表面に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項7】
前記保護媒体の光導波方向の光路長が、λ/2の整数倍(但し、λは前記入射光の発振波長)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項8】
前記保護媒体の光導波方向の厚みがλ/2以下(但し、λは前記入射光の発振波長)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項9】
前記保護媒体が、フッ化物を含むものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項10】
前記保護媒体が、YF3,LiF,MgF2,NaF,LaF3,BaF2,CaF2及びAlF3からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ化物を含むものであることを特徴とする請求項9に記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項11】
前記複数の光ファイバが、該複数の光ファイバに入射された複数の光を集積させて出射させるように前記複数の光ファイバが該光ファイバの出射端側で配列されて束ねられたファイババンドルであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の光ファイバ端面保護構造。
【請求項12】
請求項11に記載の光ファイバ端面保護構造を有するファイババンドル。
【請求項13】
複数の光ファイバに個別に入射させた複数の入射光を集積させて出射させるように前記複数の光ファイバが該光ファイバの出射端側で配列されて束ねられた集積機能ファイババンドル部と、
該集積機能ファイババンドル部からの出射光を均一化させて出射させる均一機能ファイバ部とを有する第1のファイババンドルと、
複数の該第1のファイババンドルを集積させて出射させるように前記第1のファイババンドルが該第1のファイババンドルの出射端側で配列されて束ねられた第2のファイババンドルからなるファイババンドルであって
該均一機能ファイバ部は、少なくとも該均一機能ファイバ部の光入射端面において、前記集積機能ファイババンドル部の光出射端面における光出射領域より大きいコア部を有する光ファイバからなり、
前記集積機能ファイババンドル部の光出射端と前記均一機能ファイバ部の光入射端とは当接されており、
前記集積機能ファイババンドル部と前記均一機能ファイバ部とが着脱可能なファイババンドルであることを特徴とする請求項12に記載のファイババンドル。
【請求項14】
前記集積機能ファイババンドル部を構成する複数の光ファイバのうち少なくとも一つの光ファイバの光入射端に、複数の光ファイバに個別に入射させた複数の入射光を集積させて出射させるように該複数の光ファイバが該光ファイバの出射端側で配列されて束ねられた第2の集積機能ファイババンドル部の光出射端が、該光出射端と該光入射端との接着を抑止する保護媒体を介して当接されており、
前記少なくとも一つの光ファイバは、該光ファイバの光入射端面において、前記第2の集積機能ファイババンドル部の光出射端面における光出射領域より大きいコア部を有するものであり、
前記少なくとも一つの光ファイバと前記第2の集積機能ファイババンドル部とが着脱可能なファイババンドルであることを特徴とする請求項12に記載のファイババンドル。
【請求項15】
前記集積機能ファイババンドル部の光出射端と前記均一機能ファイバ部の光入射端とが該光出射端と該光入射端との接着を抑止する保護媒体を介して当接されており、
前記集積機能ファイババンドル部と前記均一機能ファイバ部とが前記保護媒体を介して着脱可能であることを特徴とする請求項13又は14に記載のファイババンドル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図17】
【公開番号】特開2008−256766(P2008−256766A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96071(P2007−96071)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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