説明

光ファイバ部品およびその製造方法

【課題】光ファイバ部品において、曲げ性および曲げた状態の形状保持性と、口出しの作業性を兼ね備えたものとする。
【解決手段】樹脂被覆11bが設けられた光ファイバ11の樹脂被覆11b上に、光ファイバ11のガラス部分11aの断面積の1倍以上の断面積を有する金属被覆12が設けられてなる光ファイバ部品10であって、光ファイバ部品10の長手方向の3箇所以上において、金属被覆12を有しないか又は金属被覆12の厚さが0.5μm以下である部分13を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂被覆の上に金属被覆を有する光ファイバ部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な電子機器内に光配線を導入する検討がなされている。狭い場所にも光ファイバを配線可能にするため、光ファイバには、より小さい曲げ径が求められている。しかしながら、例えば携帯電話の中の配線として使用される場合、従来の構造の光ファイバでは曲げ形状を保持することができないので光ファイバを鋭角に曲げて配線することができない。また、電子機器内のような狭い場所に光配線を実装する際に、光ファイバが傷つくおそれがある。
光ファイバの機械的強度や耐熱性を向上させるため、光ファイバに金属被覆を設けることが知られている(例えば特許文献1〜8参照)。
【特許文献1】特開2003−241034号公報
【特許文献2】特開平10−010377号公報
【特許文献3】特許第2942374号公報
【特許文献4】特開平07−010613号公報
【特許文献5】特開平05−249353号公報
【特許文献6】特開平08−179140号公報
【特許文献7】特開平06−118285号公報
【特許文献8】特開2005−208025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された金属被覆光ファイバは、光ファイバと筐体との間を気密封止するときのハンダ付け性を良くするのが目的であるため、金属被覆は光ファイバの樹脂被覆の除去により露出されたガラス部分の上に設けられ、かつ金属被覆の厚さは最大でも数μmである。このため、光ファイバの弾性に打ち勝って曲げ形状を保持することが可能な塑性変形を得るには不十分である。
特許文献2に記載されたプラスチック光ファイバは、外周に防湿のため金属蒸着層を設けたものである。ピンホールを防ぐ観点から金属蒸着層の厚さは20μm以上が例示されているが、コア、クラッド、およびジャケットがいずれも柔軟な樹脂からなるため、柔軟性は損なわれない。このため、光ファイバの弾性に打ち勝って曲げ形状を保持することが可能な塑性変形を得るものではない。
特許文献3〜5に記載された金属被覆光ファイバは、光ファイバのガラス部分の上にカーボンと金属層を被覆したものである。金属被覆の厚さは最大でも数μmであるため、光ファイバの弾性に打ち勝って曲げ形状を保持することが可能な塑性変形を得るには不十分である。
【0004】
特許文献6に記載された光ファイバ心線の製造方法は、光の出射角度を変更するため、樹脂被覆を除去した後にその先端部を曲げ加工するとともに、補強めっきを施すものである。補強めっきの厚さとして約100μmの例示があるが、光ファイバの曲げ加工は加熱軟化によりガラス部分に永久的な歪みを付与するものであり、光ファイバを鋭角に曲げて自由な形状に配線する目的に適するものではない。また、樹脂被覆を除去しているため、曲げによる漏れ光が再度ファイバ内に戻ってきてしまい、光信号やレーザーの品質が保てなくなるおそれがある。
特許文献7に記載された光ファイバ心線は、紫外線硬化型樹脂で被覆した上に難燃性のため屈曲性を低下させない程度の金属被覆を設けたものであり、光ファイバの弾性に打ち勝って曲げ形状を保持することが可能な塑性変形を得るには不十分である。
【0005】
特許文献8には、金属被覆を有する光ファイバについて様々な構成が記載されている。その実施例8は、石英またはガラスのコアおよびクラッドからなる光ファイバ素線の外周面に樹脂被覆が形成され、その樹脂被覆の外周面に厚い金属被覆が設けられ、耐熱性と丈夫さを有するものとされている。
【0006】
しかしながら、いずれの文献においても、実際に配線する際に行う、端部の金属被覆および樹脂被覆を除去する口出しの作業性が考慮されておらず、機器内の光配線に適用するのは非常に困難である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、曲げ性および曲げた状態の形状保持性と、口出しの作業性を兼ね備えた光ファイバ部品およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、樹脂被覆が設けられた光ファイバの前記樹脂被覆上に、前記光ファイバのガラス部分の断面積の1倍以上の断面積を有する金属被覆が設けられてなる光ファイバ部品であって、前記光ファイバ部品は、その長手方向の3箇所以上において、前記金属被覆を有しないか又は前記金属被覆の厚さが0.5μm以下である部分を有することを特徴とする光ファイバ部品を提供する。
また本発明は、樹脂被覆が設けられた光ファイバの前記樹脂被覆上に厚さ0.5μm以下の下地金属層を形成する下地金属層形成工程と、前記光ファイバの長手方向の3箇所以上において、前記光ファイバの周方向に連続した導電性を有するマスキングを下地金属層の上に形成するマスキング形成工程と、前記マスキングを施した状態で電解めっきを行い、前記光ファイバのガラス部分の断面積の1倍以上の断面積を有する電解めっき層を前記下地金属層の上に形成する電解めっき工程と、前記マスキングを除去して、前記下地金属層を露出させる除去工程とを有することを特徴とする光ファイバ部品の製造方法を提供する。
また本発明は、樹脂被覆が設けられた光ファイバの長手方向の3箇所以上において、前記光ファイバの周方向に連続した導電性を有するマスキングを前記樹脂被覆の上に形成するマスキング形成工程と、前記光ファイバの前記樹脂被覆上に下地金属層を形成する下地金属層形成工程と、前記マスキングを施した状態で電解めっきを行い、前記光ファイバのガラス部分の断面積の1倍以上の断面積を有する電解めっき層を前記下地金属層の上に形成する電解めっき工程と、前記マスキングを除去して、前記樹脂被覆を露出させる除去工程とを有することを特徴とする光ファイバ部品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光ファイバ部品によれば、樹脂被覆により曲げたときの光信号やレーザーの品質を保つことができる。また、厚い金属被覆により曲げた状態の形状保持性をもたせることができる。また、金属被覆を有しないか又は金属被覆の厚さが薄い部分が長手方向の3箇所以上に設けられているので、その部分で切断および口出しする作業性を備え、複数の光ファイバ部品を容易に製造することができる。
【0010】
本発明の光ファイバ部品の製造方法によれば、光ファイバの樹脂被覆上に、長手方向に離間して複数個所に電解めっき層を形成するときに、その離間部となる位置に導電性を有するマスキングを設けることで、光ファイバの長手方向全体にわたって導電性を確保することができ、より均一な厚さの電解めっき層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明の光ファイバ部品の第1形態例を示す長手方向に沿う部分切欠断面図であり、右端部は光ファイバ部品の表面を表している。
この光ファイバ部品10は、樹脂被覆11bが設けられた光ファイバ11の樹脂被覆11b上に、光ファイバ11のガラス部分11aの断面積の1倍以上の断面積を有する金属被覆12が設けられた構成である。光ファイバ部品10の長手方向の3箇所以上に、金属被覆12の厚さが0.5μm以下の下地金属層露出部13が設けられている。
【0012】
光ファイバ11は、ガラス部分11aの外周上に樹脂被覆11bが設けられた光ファイバ素線である。ガラス部分11aは、コアおよびクラッドがガラスからなる光ファイバ裸線で構成されている。コアおよびクラッドがガラスからなる光ファイバとしては、石英系ガラスからなる石英系光ファイバや、多成分ガラスからなる多成分系光ファイバなどが挙げられる。
【0013】
樹脂被覆11bは、耐熱性および化学的安定性に優れ、かつ金属被覆12の被覆処理に対する耐久性の面から、例えば、ポリイミド樹脂から構成されたものが好ましい。また、樹脂被覆11bには、エポキシ系UV樹脂、ウレタン系UV樹脂、ポリエチレン樹脂などを用いることもできる。
樹脂被覆11bは、1層の樹脂層から構成されても良く、あるいは2層以上の樹脂層から構成されてもよい。樹脂被覆11bの厚みは、例えば5〜40μm程度に形成されていれば良い。
【0014】
本形態例の場合、金属被覆12は、光ファイバ11の長手方向にわたって樹脂被覆11b上に形成された下地金属層12aと、下地金属層露出部13以外の部分において下地金属層12a上に形成された電解めっき層12bとから構成されている。
【0015】
下地金属層12aは、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)等の金属や合金から構成することができる。下地金属層12aは、例えば無電解めっき、スパッタ、真空蒸着、CVD等の手法により形成することができる。下地金属層12aの厚みは、下地金属層露出部13における切断や口出しの作業性の観点から、0.5μm以下とすることが好ましい。電解めっき層12bを形成する電解めっきの際の導電性を確保する観点からは、0.1μm以上が好ましい。
【0016】
電解めっき層12bは、銅(Cu)、錫(Sn)などの金属や、Sn合金などの合金から構成することができる。電解Cuめっきで電解めっき層12bの厚みを確保した後、半田付け性を向上するために、電解めっき層12bの表面をSnやSn合金のめっきで被覆することも好ましい。電解めっき層12bが半田付け性に優れるものであれば、光ファイバを受光素子や発光素子に接続する場合、光ファイバと筐体との間を気密封止するために、電解めっき層12b上で半田封止することができる。
【0017】
電解めっき層12bの厚みは、その断面積が、光ファイバ11のガラス部分11aの断面積の1倍以上の断面積を有する程度とする。これにより、光ファイバ部品10を曲げた後の形状保持性に優れたものとなる。
なお、本発明において、ガラス部分や金属被覆の断面積とは、光ファイバの中心軸に垂直な面における断面積である。
【0018】
金属被覆12の厚さは、光ファイバ11の弾性力に打ち勝ち、形状を保持するための塑性変形が得られる程度であれば良い。金属被覆12の厚さに特に上限はないが、必要以上に厚いと製造コストや重量が増大するので、金属被覆の断面積が、光ファイバのガラス部分の断面積の5倍以下が好ましい。金属被覆の断面積が、光ファイバのガラス部分の断面積の3倍以下となる程度でも十分である。
【0019】
下地金属層露出部13は、光ファイバ部品10の長手方向の3箇所以上に設けられている。下地金属層露出部13においては、金属被覆12が下地金属層12aのみからなり、その厚さが0.5μm以下である。
このようにして、金属被覆12の厚さが0.5μm以下の部分を設けることにより、その箇所で光ファイバ部品10を切断、口出しするときの作業性が向上する。
また、それぞれの下地金属層露出部13において光ファイバ11を切断し、複数本に分割することで、厚い金属被覆を有する光ファイバ部品を容易に製造することができる。複数本に分割したときに同じ長さの光ファイバ部品が得られるようにするため、下地金属層露出部13は、一定の間隔で設けることが好ましい。
【0020】
本形態例においては、下地金属層露出部13のうち2箇所が光ファイバ部品10の両端部に、他のものが光ファイバ部品10の中間部に配されている。このため、中間部に配された下地金属層露出部13で光ファイバ11を切断すれば、光ファイバ部品10を複数本に分割することができる。
【0021】
本形態例の光ファイバ部品10を製造する方法としては、下記の(1)〜(4)の工程を行う方法が挙げられる。
(1)樹脂被覆11bが設けられた光ファイバ11の樹脂被覆上に厚さ0.5μm以下の下地金属層12aを形成する下地金属層形成工程。
(2)光ファイバ11の長手方向の3箇所以上において、光ファイバ11の周方向に連続した導電性を有するマスキングを下地金属層12aの上に形成するマスキング形成工程。
(3)マスキングを施した状態で電解めっきを行い、光ファイバ11のガラス部分11aの断面積の1倍以上の断面積を有する電解めっき層12bを下地金属層12aの上に形成する電解めっき工程。
(4)マスキングを除去して、下地金属層12aを露出させる除去工程。
【0022】
図2は、本発明の光ファイバ部品の第2形態例を示す長手方向に沿う部分切欠断面図であり、右端部は光ファイバ部品の表面を表している。
この光ファイバ部品20は、樹脂被覆21bが設けられた光ファイバ21の樹脂被覆21b上に、光ファイバ21のガラス部分21aの断面積の1倍以上の断面積を有する金属被覆22が設けられた構成で、かつ、その長手方向の3箇所以上において、金属被覆23の厚さが0.5μm以下とされている。すなわち、金属被覆22,23のうち厚膜部22では、金属被覆22の断面積がガラス部分21aの断面積の1倍以上であり、薄膜部23では金属被覆23の厚さが0.5μm以下とされ、薄膜部23が光ファイバ部品20の長手方向の3箇所以上に形成されている。
【0023】
本形態例において、光ファイバ21のガラス部分21aおよび樹脂被覆21bの構成は、上述の光ファイバ11と同様である。金属被覆22,23は、光ファイバ21の長手方向に沿って厚膜部22と薄膜部23とが交互に存在している。
厚膜部22および薄膜部23の形成方法は、薄膜部23の厚みで金属被覆を光ファイバ21の全長にわたって形成した後、薄膜部23と一体となる金属を用いて部分的に厚膜部22を形成する方法や、厚膜部22の厚みで金属被覆を光ファイバ21の全長にわたって形成した後、加工により薄膜部23を形成する方法等が挙げられる。
【0024】
このようにして、金属被覆の厚さが0.5μm以下の薄膜部23を設けることにより、その箇所で光ファイバ部品20を切断、口出しするときの作業性が向上する。
また、それぞれの薄膜部23において光ファイバ21を切断し、複数本に分割することで、厚い金属被覆を有する光ファイバ部品を容易に製造することができる。複数本に分割したときに同じ長さの光ファイバ部品が得られるようにするため、薄膜部23は、一定の間隔で設けることが好ましい。
【0025】
また、本発明においては、金属被覆の厚さが0.5μm以下である部分を設ける代わりに、金属被覆を有しない部分を設けることができる。
図3は、本発明の光ファイバ部品の第3形態例を示す長手方向に沿う部分切欠断面図であり、右端部は光ファイバ部品の表面を表している。
【0026】
図3に示す光ファイバ部品30は、樹脂被覆31bが設けられた光ファイバ31の樹脂被覆31b上に、光ファイバ31のガラス部分31aの断面積の1倍以上の断面積を有する金属被覆32が設けられ、光ファイバ部品30の長手方向の3箇所以上に、金属被覆32を有しない樹脂被覆露出部33を有する。
【0027】
本形態例において、光ファイバ31のガラス部分31aおよび樹脂被覆31bの構成は、上述の光ファイバ11と同様である。
金属被覆32は、樹脂被覆31b上に形成された下地金属層32aと、下地金属層32a上に形成された電解めっき層32bとから構成されている。
【0028】
このようにして、金属被覆32を有しない樹脂被覆露出部33を設けることにより、その箇所で光ファイバ部品30を切断、口出しするときの作業性が向上する。
また、それぞれの樹脂被覆露出部33において光ファイバ31を切断し、複数本に分割することで、厚い金属被覆を有する光ファイバ部品を容易に製造することができる。複数本に分割したときに同じ長さの光ファイバ部品が得られるようにするため、樹脂被覆露出部33は、一定の間隔で設けることが好ましい。
【0029】
本形態例の光ファイバ部品30を製造する方法としては、下記の(1)〜(4)の工程を行う方法が挙げられる。
(1)樹脂被覆31bが設けられた光ファイバ31の長手方向の3箇所以上において、光ファイバ31の周方向に連続した導電性を有するマスキングを樹脂被覆31bの上に形成するマスキング形成工程。
(2)光ファイバ31の樹脂被覆31b上に下地金属層32aを形成する下地金属層形成工程。
(3)マスキングを施した状態で電解めっきを行い、光ファイバ31のガラス部分31aの断面積の1倍以上の断面積を有する電解めっき層32bを下地金属層32aの上に形成する電解めっき工程。
(4)マスキングを除去して、樹脂被覆31bを露出させる除去工程。
【0030】
また、図1に示すように、光ファイバ11の長手方向にわたって樹脂被覆11b上に下地金属層12aを形成し、電解めっき層12bを形成した後で、露出された下地金属層12aをエッチング等で除去する方法でも、本形態例の光ファイバ部品30を製造することができる。しかし、上記(1)〜(4)の工程を行う方法は、製造工程が簡略で、光ファイバおよび金属被覆へのダメージが少ないため、好ましい。
【0031】
図4は、本発明の光ファイバ部品の第4形態例を示す長手方向に沿う部分切欠断面図であり、右端部は光ファイバ部品の表面を表している。
図4に示す光ファイバ部品40は、樹脂被覆41bが設けられた光ファイバ41の樹脂被覆41b上に、光ファイバ41のガラス部分41aの断面積の1倍以上の断面積を有する金属被覆42が設けられ、光ファイバ部品40の長手方向の3箇所以上に、金属被覆42を有しない樹脂被覆露出部43を有する。
本形態例において、光ファイバ41のガラス部分41aおよび樹脂被覆41bの構成は、上述の光ファイバ11と同様である。
【0032】
このようにして、金属被覆42を有しない樹脂被覆露出部43を設けることにより、その箇所で光ファイバ部品40を切断、口出しするときの作業性が向上する。
また、それぞれの樹脂被覆露出部43において光ファイバ41を切断し、複数本に分割することで、厚い金属被覆を有する光ファイバ部品を容易に製造することができる。複数本に分割したときに同じ長さの光ファイバ部品が得られるようにするため、樹脂被覆露出部43は、一定の間隔で設けることが好ましい。
【0033】
本発明の光ファイバ部品の製造方法において、電解めっき工程は、バッチ式でも連続式でも実施可能である。図5は、バッチ式で電解めっきを施す方法の一例を示す説明図であり、図5(a)は電解めっき前、図5(b)は電解めっき後を示す説明図である。図6は、連続式で電解めっきを施す方法の一例を示す説明図である。
【0034】
図5に示す方法では、下地金属層を有する光ファイバ51に導電性を有するマスキング52を設け、図5(a)に示すように支持治具53に取り付け、光ファイバ51の両端に電極54を設置する。この状態で電解めっきを施した後、マスキング52、支持治具53および電極54を除去することにより、図5(b)に示すように電解めっき層55と電解めっき層を有しない部分56とが交互に形成された光ファイバ部品50が得られる。光ファイバ51は、あらかじめ光ファイバ部品50の長さに切断したものが用いられる。
【0035】
図6に示す方法では、下地金属層を有する光ファイバ61に導電性を有するマスキング62を設け、複数のローラー63間に巻き付ける。ローラー63は、図示しない電解めっき浴中に浸漬され、かつ各ローラー63に電極が設けられて光ファイバ61の表面に電流が流されるようになっている。この状態でReel to Reel方式により光ファイバ61を連続的に移動させると、ローラー63に巻き付けられている間、光ファイバ61に電解めっきが施される。
【0036】
光ファイバ51,61の樹脂被覆上に、長手方向に離間して複数個所に電解めっき層を形成するときに、その離間部となる位置に例えば絶縁体を被覆して電解めっき層が形成しないようにした場合、電極との間に離間部が介在した箇所では電流が流れにくく、めっき厚が不均一になるおそれがある。離間部に導電性を有するマスキングを設けることで、光ファイバの長手方向全体にわたって導電性を確保することができ、均一な厚さの電解めっき層を形成することができる。マスキング52,62の上に電解めっき層が形成されても、マスキング52,62上の電解めっき層は、マスキング52,62とともに容易に除去することができる。
【0037】
図1に示すように、長手方向に連続した下地金属層12aを有する光ファイバ11の上に電解めっき層12bを形成する場合は、下地金属層12aを形成した後に、下地金属層露出部13とする箇所にマスキングが設けられる。
図3に示すように、長手方向に分離した下地金属層32aを有する光ファイバ31の上に電解めっき層32bを形成する場合は、樹脂被覆31b上で樹脂被覆露出部33とする箇所にマスキングを設けた後で、下地金属層32aおよび電解めっき層32bを形成し、マスキング上に形成された下地金属層および電解めっき層をマスキングとともに除去すれば、樹脂被覆露出部33を形成することができる。
【0038】
マスキング52,62は、電解めっき浴中で剥がれにくく、かつ電解めっき後に除去できるものであればとくに限定されない。例えば銅箔などの金属箔の巻き付けや、導電性ペーストの塗布などにより形成することができる。
また、バッチ式で電解めっきを施す場合に、光ファイバ51の両端に設けた電極54がマスキングを兼ねる場合は、電極54の位置にマスキング52を省略することができる。マスキングは、一定の間隔で設けることが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
長さ130cmのポリイミド被覆光ファイバ(ガラス径125μm、素線ファイバ径160μm)に下地めっきとして無電解Cuめっきを施した。その後、図5(a)に示すように光ファイバを治具にセットし、銅箔を用いて20cm間隔でマスキングをしてから膜厚が20〜50μmとなるように電解Cuめっきを施した。
【0040】
電解めっき浴には硫酸銅めっき浴を用いた。また、電流密度は3A/dmとした。電解めっき後、マスキングを除去すると、マスキングされていた部分には電解Cuめっきが付かずに、無電解Cuめっきのみ(厚さ0.5μm以下)となった。この無電解Cuめっきが露出された部分にCOレーザーを照射することにより、金属被覆光ファイバを効率的にカットすることができ、かつ光ファイバを受光素子や発光素子に接続するのに適した形状とすることができた。
【0041】
また、金属被覆光ファイバの曲げ形状保持性を検証するため、図7に示すような曲げ試験を行った。図7(a)および(c)に示すように、金属被覆光ファイバ71の厚い金属被覆72が形成された部分を実用上の曲げ径の限界であるR5.0mmの丸棒74に巻き付け、丸棒74の周囲を1周させて曲げた後、図7(b)および(d)に示すように、金属被覆光ファイバ71を巻付けから解放した。丸棒74に巻き付けた際の光ファイバ71の中心線75における曲げ半径R1と、巻付けから解放して3日以上放置し、安定した時点での光ファイバ71の中心線76における曲げ半径R2とを測定した。
【0042】
これらの結果を表1に示す。表1において、「断面積比」とは、「めっき部断面積/ガラス部断面積」の比を表す。めっき部断面積は「(めっき後の径に対応する円の面積)−(素線ファイバ径に対応する円の面積)」により、ガラス部断面積は「ガラス径に対応する円の面積」により求めた。
【0043】
【表1】

【0044】
R2/R1が大きいほど、形状保持性が低く、曲げから戻る量が大きいことを意味しており、R2/R1が2より大きくなると実用性に乏しくなる。得られた結果から、めっき部断面積/ガラス部断面積の値が1以上、望ましくは2以上で高い形状保持性を持つことが明らかになった。
【0045】
また、金属被覆光ファイバ71の両端部73を口出しし、曲げた状態の光ファイバ71に対して、光ファイバ端面間で光の透過率を測定した結果、曲げた状態でも光信号やレーザーの品質を維持できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、様々な電子機器や筐体内に導入される光配線として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の光ファイバ部品の第1形態例を示す部分切欠断面図である。
【図2】本発明の光ファイバ部品の第2形態例を示す部分切欠断面図である。
【図3】本発明の光ファイバ部品の第3形態例を示す部分切欠断面図である。
【図4】本発明の光ファイバ部品の第4形態例を示す部分切欠断面図である。
【図5】本発明の光ファイバ部品の製造方法において、バッチ式で電解めっきを施す方法の一例を示す説明図であり、(a)は電解めっき前、(b)は電解めっき後を示す説明図である。
【図6】本発明の光ファイバ部品の製造方法において、連続式で電解めっきを施す方法の一例を示す説明図である。
【図7】光ファイバ部品の曲げ形状保持性を検証する方法を示す説明図であり、(a)は光ファイバ部品を丸棒に巻き付けた状態の斜視図、(b)は光ファイバ部品を巻付けから解放した状態の斜視図、(c)は光ファイバ部品を丸棒に巻き付けた状態の上面図、(d)は光ファイバ部品を巻付けから解放した状態の上面図である。
【符号の説明】
【0048】
10,20,30,40,50…光ファイバ部品、11,21,31,41…光ファイバ、11a,21a,31a,41a…ガラス部分、11b,21b,31b,41b…樹脂被覆、12,22,32,42…金属被覆、12a,32a…下地金属層、12b,32b…電解めっき層、13,23…金属被覆が薄い部分、33,43…金属被覆を有しない部分、51,61…下地金属層を有する光ファイバ、52,62…マスキング、54…電極、55…電解めっき層、56…電解めっき層を有しない部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂被覆が設けられた光ファイバの前記樹脂被覆上に、前記光ファイバのガラス部分の断面積の1倍以上の断面積を有する金属被覆が設けられてなる光ファイバ部品であって、
前記光ファイバ部品は、その長手方向の3箇所以上において、前記金属被覆を有しないか又は前記金属被覆の厚さが0.5μm以下である部分を有することを特徴とする光ファイバ部品。
【請求項2】
樹脂被覆が設けられた光ファイバの前記樹脂被覆上に厚さ0.5μm以下の下地金属層を形成する下地金属層形成工程と、
前記光ファイバの長手方向の3箇所以上において、前記光ファイバの周方向に連続した導電性を有するマスキングを下地金属層の上に形成するマスキング形成工程と、
前記マスキングを施した状態で電解めっきを行い、前記光ファイバのガラス部分の断面積の1倍以上の断面積を有する電解めっき層を前記下地金属層の上に形成する電解めっき工程と、
前記マスキングを除去して、前記下地金属層を露出させる除去工程と、
を有することを特徴とする光ファイバ部品の製造方法。
【請求項3】
樹脂被覆が設けられた光ファイバの長手方向の3箇所以上において、前記光ファイバの周方向に連続した導電性を有するマスキングを前記樹脂被覆の上に形成するマスキング形成工程と、
前記光ファイバの前記樹脂被覆上に下地金属層を形成する下地金属層形成工程と、
前記マスキングを施した状態で電解めっきを行い、前記光ファイバのガラス部分の断面積の1倍以上の断面積を有する電解めっき層を前記下地金属層の上に形成する電解めっき工程と、
前記マスキングを除去して、前記樹脂被覆を露出させる除去工程と、
を有することを特徴とする光ファイバ部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−265482(P2009−265482A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116967(P2008−116967)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】