説明

光ヘッド装置

【課題】3波長に対応し、各波長において対物レンズのRIM強度が適切に得られる小型の光ヘッド装置を低コストで得る。
【解決手段】複数の波長の光源を有し、各々の波長に対応した光ディスク用の光ヘッド装置において、光ディスクに向かう光と光ディスクより反射された光とを分岐するビームスプリッタと対物レンズとの光路中に、波長選択レンズが設置されており、波長選択レンズは、光を透過する光学部材と、光学部材の表面に形成された第1の材料層と、第1の材料層の上に形成された第2の材料層とを有しており、第1の材料層と第2の材料層との界面には、フレネルレンズまたは回折格子が形成されており、第1の材料層の屈折率と第2の材料層の屈折率は、光源から出射される複数の波長のうちの1の波長を除く他の1又は2の波長においては略等しく、前記1の波長においては異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ヘッド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスクとして、Blue−ray(商品名、以下、BD)、DVD、CDが幅広く普及している。これらBD、DVD、CDは、記録及び再生に用いる光の波長等が異なっている。具体的には、BDは、カバー層の厚さが0.1mmの情報記録媒体に、波長405nmの光源から出射された光をNA(開口数)が0.85の対物レンズにより集光させることにより情報の記録及び再生を行う。DVDは、カバー層の厚さが0.6mmの情報記録媒体に、波長660nmの光源から出射された光をNAが0.65の対物レンズにより集光させることにより情報の記録及び再生を行う。CDは、カバー層の厚さが1.2mmの情報記録媒体に、波長785nmの光源から出射された光をNAが、0.45の対物レンズにより集光し、情報の記録及び再生を行う。
【0003】
BD、DVD、CDにおける光ディスクにおいては、現在、低コスト化と省スペース化の要求より、1つの光ヘッド装置により各々の光ディスクに使用する波長の光を用いて情報の記録及び再生がなされており、更には、光検出器、コリメータレンズ等の部品の共有化が進んでいる。しかしながら、BD、DVD、CDでは、必要となるRIM強度や、光源から出射されるレーザ光の利用効率等が異なるため、光源とコリメータレンズの位置関係が異なり、同じ光検出器に集光させることができないという問題があった。また、BD、DVD、CDに対応した各々の波長の光を出射することのできる3波長レーザを光源として用いることができるが、BDではRIM強度を大きくしたいことから、焦点距離を長くすることが求められており、DVD、CDでは、レーザ光の利用効率を高めるため、焦点距離を短くすることが求められており、相互の要求が相反するといった問題ある。
【0004】
このような問題に対応するため、特許文献1に示されるように、3つの異なる規格の光ディスクにおける情報の記録及び再生を行うため、波長選択性素子を設けた構成の光ピックアップ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−277633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、BDとそれ以外の波長を出射する1つの光源を用いた場合、波長の異なる3つの光ディスクでは、波長により光路長、倍率等が異なるため、各々の波長の光に対応した複数のフォトディテクタを設ける必要があるが、特許文献1では、BDとそれ以外の波長を出射する光源とコリメータレンズまでの光路長が異なることを利用しているため、が前提となっているため、上記問題点を解決することはできない。
【0007】
本発明は、上記点を鑑みてなされたものであり、複数の波長の光を出射する1つの光源と、複数の波長の光を受光することのできる1つの受光素子とを有し、波長選択性素子を可動させることなく、複数の波長に対応した小型の光ヘッド装置を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の波長の光を出射する光源と、前記光源から出射された各々の波長帯の光を各々の波長帯の光に対応した光ディスクの情報記録面に集光させる対物レンズと、前記光ディスクの情報記録面において反射された信号光を検出するための光検出器と、前記光ディスクに向かう光と前記光ディスクより反射された光とを分岐するビームスプリッタと、を有する光ヘッド装置において、前記ビームスプリッタと前記対物レンズとの間には、波長選択レンズが設置されており、前記波長選択レンズは、光を透過する光学部材と、前記光学部材の表面に形成された第1の材料層と、前記第1の材料層の上に形成された第2の材料層とを有しており、前記第1の材料層と前記第2の材料層との界面には、フレネルレンズまたは回折格子が形成されており、前記第1の材料層の屈折率と前記第2の材料層の屈折率は、前記光源から出射される複数の波長のうちの1の波長を除く他の1又は2の波長においては略等しく、前記1の波長においては異なっていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記光源は、3つの異なる波長の光を出射するものであって、前記光検出器は、前記3つの異なる波長の光を検出するものである。
【0010】
また、本発明は、前記3つの異なる波長の光は、波長λの光、波長λの光、波長λの光(λ<λ<λ)であって、前記1の波長は波長λである。
【0011】
また、本発明は、前記波長λの光、前記波長λの光、前記波長λの光は、λ−λ<λ−λである。
【0012】
また、本発明は、前記波長選択レンズは、前記1の波長におけるRIM強度が90%以上である。
【0013】
また、本発明は、前記光源から出射される光は、405nm波長帯の光、660nm波長帯の光および785nm波長帯の光であって、前記1の波長は、405nmであって、前記他の2の波長は、660nm及び785nmである。
【0014】
また、本発明は、前記第1の材料層または前記第2の材料層のいずれか一方、または双方は、Ti、Zr、Ta、Nb、Y、Laのうちから選ばれる1または2以上の元素を含む材料により形成されているものである。
【0015】
また、本発明は、前記波長選択レンズの両面には、各々反射防止膜が形成されている。
【0016】
また、本発明は、前記ガラス基板と前記第1の材料層との間には反射防止膜が形成されている。
【0017】
また、本発明は、前記光学部材は光学的に等方的な透明な基板である。
【0018】
また、本発明は、前記光学部材はレンズである。
【0019】
また、本発明は、前記第2の材料層上には他のガラス基板が設けられており、前記第2の材料層と前記他のガラス基板との間には反射防止膜が形成されている。
【0020】
また、本発明は、前記対物レンズを2つ有しており、一方は前記1の波長に対応する対物レンズであり、他方は前記他の1又は2の波長に対応する対物レンズである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の波長の光を出射する1つの光源と、複数の波長の光を受光することのできる1つの受光素子とを有し、波長選択性素子を可動させることなく、複数の波長に対応した小型の光ヘッド装置を低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態における光ヘッド装置の構造図
【図2】第1の実施の形態における他の光ヘッド装置の構造図
【図3】第1の実施の形態における波長選択レンズの構造図
【図4】波長選択レンズの説明図
【図5】波長選択レンズにおけるRIM強度の説明図(1)
【図6】波長選択レンズにおけるRIM強度の説明図(2)
【図7】波長選択レンズにおけるRIM強度の説明図(3)
【図8】第2の実施の形態における波長選択レンズの構造図(1)
【図9】第2の実施の形態における波長選択レンズの構造図(2)
【図10】第2の実施の形態における波長選択レンズの構造図(3)
【図11】第3の実施の形態における波長選択コリメータレンズの構造図
【図12】第3の実施の形態における波長選択コリメータレンズの要部拡大図
【図13】第3の実施の形態における光ヘッド装置の構造図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0024】
〔第1の実施の形態〕
(光ヘッド装置)
第1の実施の形態として、光ヘッド装置について、図1に基づき説明する。本実施の形態における光ヘッド装置は、3種類の異なる光ディスク、例えば、BD、DVD、CDの光ディスクに対応したものであり、1つの光ヘッド装置により3種類の異なる光ディスクの記録及び再生ができるものである。このため、この光ヘッド装置は、405nm波長帯、660nm波長帯、785nm波長帯の光に対応している。
【0025】
本実施の形態における光ヘッド装置では、光源11、回折素子12、偏光ビームスプリッタ13、波長選択レンズ14、コリメータレンズ15、第1の立ち上げミラー16、1/4波長板17、対物レンズ18、第2の立ち上げミラー19、1/4波長板20、第2の対物レンズ21、回折素子22、シリンドリカルレンズ23、光検出器24を有している。
【0026】
光源11は、3つの波長の光を出射することのできる3波長レーザであり、具体的には、405nm波長帯である波長λの光、660nm波長帯である波長λの光、785nm波長帯である波長λの光の3つの波長の光を対応する光ディスクに応じて出射することができる。
【0027】
回折素子12は、光源11より出射された波長λ及び波長λの光をトラッキング信号用とデータ読み取り用の信号に分離するものである。
【0028】
偏光ビームスプリッタ13は、所定の偏光の光を透過し、所定の偏光に対し垂直方向の偏光の光を反射するものである。尚、本実施の形態では、偏光ビームスプリッタを用いた場合について説明するが、光の利用効率を落として、通常の偏光ビームスプリッタよりも偏光依存性の弱いビームスプリッタを用いることも可能である。しかしながら、偏光ビームスプリッタを用いることは、光の利用効率を上げることができるため好ましい。
【0029】
波長選択レンズ14は、波長λ及び波長λの光に対しては、レンズとして作用することなく、そのまま光を透過し、波長λの光に対しては、レンズとして作用するものである。詳細については後述する。
【0030】
コリメータレンズ15は、光源11から出射された各々の波長の光を略平行光となるようにコリメートするものである。
【0031】
第1の立ち上げミラー16は、ダイクロイックミラーであり、波長λの光は偏向されて分岐され、波長λ及び波長λの光は偏向されることなくそのまま透過するように形成されている。具体的には、第1の立ち上げミラー16は、所定の膜厚の高屈折率と低屈折率の誘電体材料を交互に積層形成することにより形成されている。
【0032】
1/4波長板17及び20は、入射した直線偏光の光を円偏光に、円偏光の光を直線偏光に変換する機能を有している。
【0033】
第1の対物レンズ18は、光ディスク31の情報記録面に光を集光するためのものである。尚、本実施の形態では、光ディスク31はBDである。
【0034】
第2の立ち上げミラー19は、波長λ及び波長λの光を偏向するものであり、ダイクロイックミラー等により形成されている。具体的には、第2の立ち上げミラー19は、所定の膜厚の高屈折率と低屈折率の誘電体材料を交互に積層形成することにより形成されている。
【0035】
第2の対物レンズ21は、光ディスク32の情報記録面に光を集光するためのものである。尚、本実施の形態では、光ディスク32はDVDまたはCDである。
【0036】
回折素子22は、波長λの光をトラッキング信号用とデータ読み取り用の信号に分離するものである。
【0037】
シリンドリカルレンズ23は、波長λ、波長λ及び波長λの光を光検出器24に入射させるためのものである。
【0038】
光検出器24は、入射した波長λ、波長λ及び波長λの光を入射した光量に応じた電気信号に変換し出力するものである。
【0039】
次に、本実施の形態における光ヘッド装置において、光ディスク31における情報を再生等する場合について説明する。本実施の形態では、光ディスク31はBDであり、光源11よりBDに対応した波長λの光が出射される。光源11より出射された波長λの光は、回折光学素子12及び偏光ビームスプリッタ13を透過し、波長選択レンズ14に入射する。波長選択レンズ14は、波長λの光においては、レンズとしての機能を有しており、レンズとして作用するため、入射した波長λの光は屈折する。この後、波長選択レンズ14を出射した光は、コリメータレンズ15により略平行光にコリメートされ、第1の立ち上げミラー16により反射され偏向される。第1の立ち上げミラー16により偏向された光は、1/4波長板17に入射し左回りの円偏光の光となって出射され、第1の対物レンズ18により集光され、光ディスク31、即ち、BDの情報記録面に照射される。光ディスク31に照射された光は、光ディスク31の情報記録面において反射され、第1の対物レンズ18を介し、1/4波長板17に入射する。1/4波長板17では入射の際の偏光方向と直交する偏光方向の光に変換され、第1の立ち上げミラー16において偏向され、コリメータレンズ15を介し、波長選択レンズ14に入射する。波長選択レンズ14に入射した光は、波長選択レンズ14により屈折し、偏光ビームスプリッタ13において偏向し、回折光学素子22によりトラッキング信号用とデータ読み取り用の信号とに分離されて、シリンドリカルレンズ23により集光され、光検出器24に入射する。光検出器24は入射した光の光量に応じた電気信号が出力されるため、この電気信号に基づき光ディスク31であるBDに記録されていた情報が再生される。
【0040】
次に、本実施の形態における光ヘッド装置において、光ディスク32における情報を再生等する場合について説明する。本実施の形態では、光ディスク32はDVDまたはCDであり、光源11よりDVDに対応した波長λの光、または、CDに対応した波長λの光が出射される。光源11より出射された波長λまたは波長λの光は、回折光学素子12によりトラッキング信号用とデータ読み取り用の信号とに分離され、この後、偏光ビームスプリッタ13を透過し、波長選択レンズ14に入射する。波長選択レンズ14は、波長λ及び波長λの光については、レンズとして作用することなく、そのまま透過する。この後、波長選択レンズ14を出射した光は、コリメータレンズ15により略平行光にコリメートされ、第1の立ち上げミラー16を透過し、第2の立ち上げミラー19により反射され偏向する。第2の立ち上げミラー19により偏向された光は、1/4波長板20に入射し左回りの円偏光の光となって出射され、第2の対物レンズ21により集光され、光ディスク32、即ち、DVDまたはCDの情報記録面に照射される。光ディスク32に照射された光は、光ディスク32の情報記録面において反射され、第2の対物レンズ21を介し、1/4波長板20に入射する。1/4波長板20では入射の際の偏光方向と直交する偏光方向の光に変換され、第2の立ち上げミラー19において偏向され、第1の立ち上げミラー16を透過し、コリメータレンズ15を介し、波長選択レンズ14に入射する。波長選択レンズ14に入射した光は、そのまま透過し、偏光ビームスプリッタ13において偏向され、回折光学素子22を透過し、シリンドリカルレンズ23により集光され、光検出器24に入射する。光検出器24は入射した光の光量に応じた電気信号が出力されるため、この電気信号に基づき光ディスク32であるDVDまたはCDに記録されていた情報が再生される。
【0041】
本実施の形態における光ヘッド装置では、波長選択レンズ14は波長λの光においては、レンズとしての機能を有しており、偏光ビームスプリッタ13とコリメータレンズ15との間に設置することにより、光ディスク31を照射する光と光ディスク31により反射された光との双方においてレンズとして作用する。よって、波長選択レンズ14を移動等することなく、複数、即ち、3つの波長に対応した光ヘッド装置を得ることができる。これにより、少なくとも3つの異なる波長を出射することのできる1つの光源11と、1つの受光素子と、可動しない波長選択レンズ14により光ヘッド装置を構成することができ、光ヘッド装置を小型化及び低コスト化することができる。
【0042】
(他の光ヘッド装置)
次に、本実施の形態における他の光ヘッド装置について説明する。この光ヘッド装置は、図2に示されるように、波長選択レンズ14をコリメータレンズ15と第1の立ち上げミラー16との間に設置したものである。このように、コリメータレンズ15と第1の立ち上げミラー16との間に波長選択レンズ14を設置した場合においても同様の効果を得ることができる。
【0043】
(波長選択レンズ)
次に、波長選択レンズ14について説明する。波長選択レンズ14は、図3に示されるように、透明基板であるガラス基板110の表面に形成された表面がフレネルレンズ形状の第1の材料層121と第1の材料層121を覆う第2の材料層122により形成されている。尚、ガラス基板110の第1の材料層121が形成されていない面には、誘電体多層膜からなる反射防止膜131が形成されており、第2の材料層122の表面には、誘電体多層膜からなる反射防止膜132が形成されている。このような反射防止膜131及び反射防止膜132を形成することにより、この波長選択レンズでは、波長λ、波長λ及び波長λの光の透過率は95%以上となるように形成されている。
【0044】
第1の材料層121及び第2の材料層122は、ともに波長λ、波長λ、波長λまでの光を透過する材料であって、図4に示すように、波長λの光においては屈折率の値が異なるが、波長λ及び波長λの光おいては、屈折率が略等しい材料により形成されている。図4では、第1の材料層121の屈折率をn(λ)で示し、第2の材料層122の屈折率をn(λ)で示す。図4に示されるように、波長λでは、第1の材料層121の屈折率n(λ)の値と第2の材料層122の屈折率n(λ)の値は異なるが、波長λでは、第1の材料層121の屈折率n(λ)の値と第2の材料層122の屈折率n(λ)の値は略等しく、また、波長λでは、第1の材料層121の屈折率n(λ)の値と第2の材料層122の屈折率n(λ)の値は略等しい。このことから、下記の(1)及び(2)の式は満たされる。尚、本実施の形態において、屈折率が略等しいとは、第1の材料層121及び第2の材料層122が、ともに有機材料により形成されている場合には、屈折率差Δn(n−n)は、0.005以下を意味するものである。また、第1の材料層121及び第2の材料層122の少なくとも1つが無機材料により形成されている場合には、屈折率差Δnは、0.05以下を意味するものである。

|n(λ)−n(λ)|>|n(λ)−n(λ)|・・・・・(1)

|n(λ)−n(λ)|>|n(λ)−n(λ)|・・・・・(2)

波長選択レンズ14では、第1の材料層121と第2の材料層122とは波長λにおいてのみ屈折率の値が異なるため、波長選択レンズ14が波長λにおいてのみレンズとして機能する場合を考慮して設計すればよい。このため、光ヘッド装置の製造が容易となり、光ヘッド装置の製造を低コストで行うことができる。また、波長λと波長λとの差に比べて波長λと波長λとの差は小さい。即ち、405nm波長帯である波長λの光と660nm波長帯である波長λの光との差は255nmであるのに対し、660nm波長帯である波長λの光と785nm波長帯である波長λの光との差は125nmであり差が半分以下である。よって、波長λにおいてのみ屈折率の異なる第1材料層121と第2の材料層122とを構成する材料の組み合わせを考えればよいため、材料選択の幅が広くなる。このことは、光ヘッド装置の低コスト化及び高性能化に結びつくものである。似たような機能を得る方法として、複数段数の段差を有し、各段差による光路長差がレーザ光のうち1つの波長の自然数倍と等しくする手法が存在するが、その場合は、回折効率が高くなる波長と透過率が高くなる波長は、各々1波長のみとなり、3波長に対応することが出来ないため、上記の手法を取ることが好ましい。
【0045】
次に、波長選択レンズ14の作製方法について説明する。最初に、ガラス基板110に表面がフレネルレンズ形状等の形状となる第1の材料層121を形成し、この第1の材料層121の上に、第2の材料層122を形成する。第1の材料層121の形成方法としては、樹脂材料等により形成する場合には、成形型等を用いて所定の形状の第1の材料層121をガラス基板110上に形成する方法、無機材料等により形成する場合には、ガラス基板110上に第1の材料層121となる膜を形成し、所望の形状のフレネルレンズ形状等となるように、エッチング、インプリント等を行う方法により形成することができる。
【0046】
また、第2の材料層122の形成方法としては、樹脂材料等により形成する場合には、第1の材料層121上に第2の材料層122を構成する材料を塗布等する方法、無機材料等により形成する場合には、第1の材料層121上に、第2の材料層122を構成する材料を成膜等により厚く形成し、その後研磨等により平坦化する方法等により形成することができる。
【0047】
(材料の組み合わせ)
次に、図4に示す関係を満たす波長選択レンズ14における第1の材料層121と第2の材料層122との組み合わせについて説明する。
【0048】
第1の組み合わせとして、第1の材料層121に、フェニル、フェニレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、またはパーフルオロ骨格、または、それらを組み合わせた構造をポリマー質量の20%以上となる材料等を用い、第2の材料層122に、アルカン、環状アルカン、アダマンタン、ジアマンタン、トリシクロデカン、またはそれらを組み合わせた構造がポリマー質量の20%以上となる材料等を用いた組み合わせがある。
【0049】
次に、第2の組み合わせとして、第1の材料層121に、フェニル、フェニレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、またはパーフルオロ骨格、または、それらを組み合わせた構造をポリマー質量の20%以上となる材料等を用い、第2の材料層122に、アルカン、環状アルカン、アダマンタン、ジアマンタン、トリシクロデカン、またはそれらを組み合わせた構造がポリマー質量の20%以上となるものにジルコニアを無機の主成分とする微粒子を用いてコンポジット化した材料等を用いた組み合わせがある。
【0050】
次に、第3の組み合わせとして、第1の材料層121に、フェニル、フェニレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、またはパーフルオロ骨格、または、それらを組み合わせた構造をポリマー質量の20%以上となるものにチタニア、シリカを無機の主成分とする微粒子を用いてコンポジット化した材料等を用い、第2の材料層122に、アルカン、環状アルカン、アダマンタン、ジアマンタン、トリシクロデカン、またはそれらを組み合わせた構造がポリマー質量の20%以上となる材料等を用いた組み合わせがある。
【0051】
次に、第4の組み合わせとして、第1の材料層121に、フェニル、フェニレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、またはパーフルオロ骨格、または、それらを組み合わせた構造をポリマー質量の20%以上となるものにチタニア、シリカを無機の主成分とする微粒子を用いてコンポジット化した材料等を用い、第2の材料層122に、アルカン、環状アルカン、アダマンタン、ジアマンタン、トリシクロデカン、またはそれらを組み合わせた構造がポリマー質量の20%以上となるものにジルコニアを無機の主成分とする微粒子を用いてコンポジット化した材料等を用いた組み合わせがある。
【0052】
次に、第5の組み合わせとして、第1の材料層121に、チタニア(TiO)−シリカ(SiO)を質量の80%以上含む無機材料等、または、水ガラス−チタニア(微粒子)等を用い、第2の材料層122に、五酸化タンタル(Ta)、ジルコニア(ZrO)、イットリア(Y)、SiON系の材料を質量の80%以上含む無機材料等を用いた組み合わせがある。
【0053】
次に、第6の組み合わせとして、第1の材料層121に、チタニア(TiO)−シリカ(SiO)を質量の80%以上含む無機材料等、または、水ガラス−チタニア(微粒子)等を用い、第2の材料層122に、水ガラス−ジルコニア(微粒子)等を用いた組み合わせがある。
【0054】
以上は代表的なものであるが、本実施の形態における波長選択レンズでは、第1の材料層121、または第2の材料層122のいずれか一方、または双方は、Ti、Zr、Ta、Nb、Y、Laのうちから選ばれる1または2以上の元素を含む材料を用いて形成することにより所望の特性を得ることができる。
【0055】
尚、波長λの光は、405nm波長帯の光であり、紫外光に近い波長の光であるため、第1の材料層121及び第2の材料層122を形成する材料によっては、変質等する場合がある。特に、第1の材料層121に顔料や染料のような着色材料を用いる手法も考えられるが、BDにおける405nmのレーザ光に対する耐久性が低い。そのため、405nmのレーザ光への耐性を考慮すると、上記に示す材料を用いることが好ましい。また、長期間、もしくは、高強度のレーザ光の使用等において、故障や不良の発生を防止する観点より、第1の材料層121及び第2の材料層122は、ともに無機材料により形成されていることがより好ましい。
【0056】
(RIM強度)
ところで、波長選択レンズ14の第1の材料層121の表面を通常のフレネルレンズ形状で形成した場合には、図5に示すように、中心から周辺に向けて半径距離が増加するとともに回折効率が低下する。RIM強度を下記の(3)に示す式により表わされるものとすると、図5に示す場合では、RIM強度は89%である。尚、波長選択レンズ14には、最外周部まで均一な光量の光が照射されるものとする。即ち、最外周部は中央部と均一な光量の光が照射される。

RIM強度=(最外周部の光量)/(中央部の光量)・・・・・・(3)

ところで、光ディスクに照射される光スポット径は、NA、波長、RIM強度により定まるが、特に、波長が405nm、NAが0.85であるBDにおいては、RIM強度を高くすることが好ましく、具体的には、図5に示す場合より高いRIM強度となる90%以上のRIM強度となることが好ましい。
【0057】
このため、本実施の形態では、波長選択レンズ14の第1の材料層121の表面に形成されるフレネルレンズ形状のブレーズの形を変形等させることにより、図6及び図7に示すような回折効率を得ることができる。これにより波長λの光におけるRIM強度を高めることができる。
【0058】
図6には、中心より半径距離が約0.6mmまで、回折効率を0.89とし、それよりも長い半径距離では、徐々に回折効率が減少するように形成した波長選択レンズの場合を示す。このように形成することにより、RIM強度を約95%にすることができる。
【0059】
また、図7には、中心部のRIM強度を0.89とし外周部に向かって除々に回折効率が低下するように形成した波長選択レンズの場合を示す。このように形成することにより、RIM強度を約95%にすることができる。
【0060】
尚、図5から図7に示されるものは、波長選択レンズ14の第1の材料層121の表面に形成されるフレネルレンズ形状が8段の擬似ブレーズ形状である場合のものである。
【0061】
上記疑似ブレーズ形状などを無機材料の多層膜で作成するなど光学的に非等方的な材料で製作しても良いが、一般的には光学部材や樹脂層、無機光学層は光学的に等方的な材料を使用するのが製作の容易性の点などで好ましい。
【0062】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は波長選択レンズであり、第1の実施の形態における光ヘッド装置において、波長選択レンズ14に代えて用いることができるものである。
【0063】
図8に示す波長選択レンズは、ガラス基板110上に、表面がフレネルレンズ形状となる第1の材料層121を形成し、第1の材料層121上に第2の材料層122を形成し、第2の材料層122上にガラス基板230を形成し、ガラス基板230において、第2の材料層122が形成されている面と反対側の面に反射防止膜132を形成した構成のものである。特に、第2の材料層122が軟らかい材料等である場合には、ガラス基板230により補強等することができるため好ましい。
【0064】
また、図9に示す波長選択レンズは、ガラス基板110と第1の材料層121との間に反射防止膜231を設けた構成のものである。第1の材料層121の屈折率がガラスの屈折率に比べて著しく高い場合に、このような反射防止膜231を設けることにより、波長選択レンズにおける透過率を高くすることができる。
【0065】
更に、図10に示す波長選択レンズは、第2の材料層122とガラス基板230との間に反射防止膜232を設けた構成のものである。第2の材料層122の屈折率がガラスの屈折率に比べて著しく高い場合に、このような反射防止膜232を設けることにより、より一層波長選択レンズにおける透過率を高くすることができる。
【0066】
上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0067】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における波長選択レンズ14とコリメータレンズ15とを一体化した構造の波長選択コリメータレンズである。
【0068】
具体的には、図11及び図12に示すように、本実施の形態における波長選択コリメータレンズ310は、第1の実施の形態におけるコリメータレンズ15と同様の構造のコリメータレンズ本体315の一方の面に、表面がフレネルレンズ形状の第1の材料層321を形成し、この第1の材料層321上に第2の材料層322を形成したものである。これにより本実施の形態における波長選択コリメータレンズ310は、波長によって焦点距離の異なるコリメータレンズとなる。尚、図12には、フレネルレンズの形状がインプリントで形成する際に形成しやすいように、三角形状の第1の材料層321の表面の最も光軸に平行となる角度が負(図12においては、時計回りを正とする)とならない形状により形成されているものを示す。
【0069】
第1の材料層321の表面に形成されるフレネルレンズ形状は、インプリント等の成形型等を用いた方法により形成することができる。尚、第1の材料層321は第1の実施の形態における材料層121と同様の材料等により形成されており、第2の材料層322は第1の実施の形態における材料層122と同様の材料等により形成されている。
【0070】
次に、図13に基づき本実施の形態における光ヘッド装置について説明する。本実施の形態における光ヘッド装置は、波長選択コリメータレンズ310を用いたものである。具体的には、第1の実施の形態における波長選択レンズ14及びコリメータレンズ15に代えて波長選択コリメータレンズ310を設けた構成のものである。本実施の形態における光ヘッド装置では、用いる波長、即ち、再生等を行なう光ディスクの種類により、波長選択コリメータレンズ310を不図示の移動機構により移動させることができ、移動させる位置は対物レンズ18及び21の形状等に対応して定められる。
【0071】
本実施の形態においては、光ヘッド装置における部品点数の削減をすることができ、光ヘッド装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。尚、本実施の形態における波長選択コリメータレンズにおいて、第1の実施の形態と同様に第2の材料層322の表面ならびにコリメータレンズ本体315に反射防止膜を設けることにより、光の利用効率を高めることができる。更に、第1の材料層321とコリメータレンズ本体315の間に反射防止膜を設けることにより、光の利用効率をより高めることができる。
【0072】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0073】
11 光源
12 回折光学素子
13 偏光ビームスプリッタ
14 波長選択レンズ
15 コリメータレンズ
16 第1の立ち上げミラー
17 1/4波長板
18 第1の対物レンズ
19 第2の立ち上げミラー
20 1/4波長板
21 第2の対物レンズ
22 回折光学素子
23 シリンドリカルレンズ
24 光検出器
31 光ディスク
32 光ディスク
110 ガラス基板
121 第1の材料層
122 第2の材料層
131 反射防止膜
132 反射防止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長の光を出射する光源と、
前記光源から出射された各々の波長帯の光を各々の波長帯の光に対応した光ディスクの情報記録面に集光させる対物レンズと、
前記光ディスクの情報記録面において反射された信号光を検出するための光検出器と、
前記光ディスクに向かう光と前記光ディスクより反射された光とを分岐するビームスプリッタと、
を有する光ヘッド装置において、
前記ビームスプリッタと前記対物レンズとの間には、波長選択レンズが設置されており、
前記波長選択レンズは、光を透過する光学部材と、前記光学部材の表面に形成された第1の材料層と、前記第1の材料層の上に形成された第2の材料層とを有しており、
前記第1の材料層と前記第2の材料層との界面には、フレネルレンズまたは回折格子が形成されており、
前記第1の材料層の屈折率と前記第2の材料層の屈折率は、前記光源から出射される複数の波長のうちの1の波長を除く他の1又は2の波長においては略等しく、前記1の波長においては異なっていることを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項2】
前記光源は、3つの異なる波長の光を出射するものであって、
前記光検出器は、前記3つの異なる波長の光を検出するものである請求項1に記載の光ヘッド装置。
【請求項3】
前記3つの異なる波長の光は、波長λの光、波長λの光、波長λの光(λ<λ<λ)であって、前記1の波長は波長λである請求項2に記載の光ヘッド装置。
【請求項4】
前記波長λの光、前記波長λの光、前記波長λの光は、
λ−λ<λ−λ
である請求項3に記載の光ヘッド装置。
【請求項5】
前記波長選択レンズは、前記1の波長におけるRIM強度が90%以上である請求項1から4に記載の光ヘッド装置。
【請求項6】
前記光源から出射される光は、405nm波長帯の光、660nm波長帯の光および785nm波長帯の光であって、
前記1の波長は、405nmであって、前記他の2の波長は、660nm及び785nmである請求項1から5のいずれかに記載の光ヘッド装置。
【請求項7】
前記第1の材料層または前記第2の材料層のいずれか一方、または双方は、Ti、Zr、Ta、Nb、Y、Laのうちから選ばれる1または2以上の元素を含む材料により形成されているものである請求項1から6のいずれかに記載の光ヘッド装置。
【請求項8】
前記波長選択レンズの両面には、各々反射防止膜が形成されている請求項1から7のいずれかに記載の光ヘッド装置。
【請求項9】
前記光学部材と前記第1の材料層との間には反射防止膜が形成されている請求項1から8のいずれかに記載の光ヘッド装置。
【請求項10】
前記光学部材は透明な基板である請求項1から9のいずれかに記載の光ヘッド装置。
【請求項11】
前記光学部材はレンズである請求項1から10のいずれかに記載の光ヘッド装置。
【請求項12】
前記第2の材料層上には他のガラス基板が設けられており、
前記第2の材料層と前記他のガラス基板との間には反射防止膜が形成されている請求項11に記載の光ヘッド装置。
【請求項13】
前記対物レンズを2つ有しており、
一方は前記1の波長に対応する対物レンズであり、他方は前記他の1又は2の波長に対応する対物レンズである請求項1から12に記載の光ヘッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−243349(P2012−243349A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112134(P2011−112134)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】