光モジュールおよび電子機器
【課題】外部から干渉フィルターへ伝達される振動を低減することができ、光学ギャップを精度良く保持することができる光モジュールを提供すること。
【解決手段】本発明の光モジュール(測色センサー)は、可動反射膜57を備える可動基板52、および可動反射膜57にギャップを介して対向する固定反射膜56を備える固定基板51を備え、可動基板52と固定基板51とが接合された状態にある干渉フィルター5と、干渉フィルター5を保持する筐体6と、を備える。可動基板52は、固定基板51の外周縁よりも外側に突出する、2つの突出部524を備える。この突出部524は、突出方向の先端側に設けられ、筐体6に固定される固定部525と、固定部525よりも突出方向の基端側に設けられ、固定部525よりも厚み寸法が小さい振動防止部526と、を備える。振動防止部526には緩衝材7が設けられている。
【解決手段】本発明の光モジュール(測色センサー)は、可動反射膜57を備える可動基板52、および可動反射膜57にギャップを介して対向する固定反射膜56を備える固定基板51を備え、可動基板52と固定基板51とが接合された状態にある干渉フィルター5と、干渉フィルター5を保持する筐体6と、を備える。可動基板52は、固定基板51の外周縁よりも外側に突出する、2つの突出部524を備える。この突出部524は、突出方向の先端側に設けられ、筐体6に固定される固定部525と、固定部525よりも突出方向の基端側に設けられ、固定部525よりも厚み寸法が小さい振動防止部526と、を備える。振動防止部526には緩衝材7が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光から所定波長の光を分光する干渉フィルターを備えた光モジュールおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数波長の光から、特定波長の光を取り出す波長可変干渉フィルター(光フィルター素子)が知られている(例えば、特許文献1)。
波長可変干渉フィルターでは、互いに平行に保持された一対の基板と、この一対の基板上に互いに対向すると共に一定間隔の光学ギャップを有するように形成された一対の反射膜とを備え、波長可変干渉フィルターに対して外部から加えられる外力により一対の反射膜間の光学ギャップの大きさを変化させるようにしている。光学ギャップの大きさを変化させると光学ギャップの大きさに応じた特定波長を選択して透過させることが可能となる。ここで、光学ギャップの大きさを変化させる構造としては、半導体のマイクロ加工技術によって作成され、静電アクチュエーターや圧電素子を用いた機構等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−142752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、波長可変干渉フィルターにおいて、選択した波長を透過させるためには、その波長に応じたギャップを精度良く保持する必要がある。しかしながら、特に光学ギャップの大きさを変化させる場合には、外部から干渉フィルターへ振動が伝達されると光学ギャップを精度良く保持することが難しくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述のような問題に鑑みて、分光精度の高い干渉フィルターを備えた光モジュール、および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光モジュールは、第一反射膜を備える第一基板、および前記第一反射膜にギャップを介して対向する第二反射膜を備える第二基板を備え、前記第一基板と前記第二基板とが接合された状態にある干渉フィルターと、前記干渉フィルターを保持する筐体と、を備え、前記第一基板は、前記第二基板の外周縁よりも外側に突出する突出部を備え、前記突出部は、突出方向の先端側に設けられ、前記筐体に固定される固定部と、前記固定部よりも突出方向の基端側に設けられ、前記固定部よりも厚み寸法が小さい振動防止部と、を備え、前記振動防止部には緩衝材が設けられることを特徴とする。
【0007】
この発明では、第一基板の突出部は、筐体に固定される固定部と、この固定部よりも厚み寸法が小さい振動防止部を備えている。この振動防止部は、固定部よりも厚み寸法が小さいために、固定部や第一基板の他の部分よりも変形しやすい。したがって、外部から筐体に振動が加わった場合、第一反射膜および第二反射膜が設けられた、第一基板および第二基板が対向する基板対向領域には、その場に留まろうとする力が働き、振動防止部が撓んで振動を吸収する。これにより、基板対向領域における振動を抑制することができる。この振動防止部は、外部から干渉フィルターへ伝達される振動のうち、第一基板の基板厚み方向に沿った縦振動に対して、特にその振動の伝達を低減できる。
また、この発明では、第一基板の振動防止部には緩衝材が設けられている。この緩衝材は、振動防止部の振動に対して反力を与えることで、その振動を減衰させる。この緩衝材は、外部から干渉フィルターへ伝達される振動のうち、第一基板の基板厚み方向に対して直交する方向に沿った横振動に対して、特にその振動の伝達を低減できる。
以上により、本発明によれば、外部から干渉フィルターへ伝達される振動を効果的に低減することができ、光学ギャップを精度良く保持することができる光モジュールを得られる。
【0008】
本発明の光モジュールでは、前記第一基板は、可動部と、前記可動部を前記第二基板に対して進退可能に保持し、前記可動部よりも厚み寸法が小さく形成された保持部と、前記保持部の外周部に設けられ、前記保持部よりも厚み寸法が大きく、前記第二基板に接合される接合部と、を備え、前記振動防止部の厚み寸法は、前記保持部の厚み寸法と同一であることが好ましい。
【0009】
この発明では、振動防止部の厚み寸法が保持部の厚み寸法と同一である。このような場合には、第一基板を製造する際に、例えば母材に対して同一深さ寸法だけエッチング処理することで、振動防止部および保持部を同時に形成することができる。そのため、光モジュールの製造効率を向上させることができる。
【0010】
本発明の光モジュールでは、前記第一基板は、第一電極を備え、前記第一電極は、前記第二基板に対向する基板対向領域から前記突出部の突出方向の先端側に延出して設けられていることが好ましい。
【0011】
ここで、本発明の第一電極としては、例えば、第一反射膜および第二反射膜間のギャップを変化させるためのアクチュエーターに電圧を印加するための駆動電極や、例えば反射膜間のギャップ寸法を検出するための静電容量測定用電極、反射膜の帯電を除去する電極除去電極などを例示できる。
この発明では、第一基板の第一電極が基板対向領域から突出部の突出方向の先端側に延出されている。これによれば、第一電極が光モジュールの外面側にある突出部に露出するため、端子実装がしやすくなる。
【0012】
本発明の光モジュールでは、前記第二基板は、第二電極を備え、前記第二電極は、前記第二基板の外周部に延出して設けられ、前記第一電極と前記第二電極とは、前記外周部において導電材により接続されていることが好ましい。
この発明では、第一電極と第二電極とは、これらの外周部において導電材により接続されている。これによれば、第二電極が、光モジュールの外面側にある突出部に露出する第一電極と接続されているため、端子実装がしやすくなる。
【0013】
本発明の光モジュールでは、前記第一基板と前記筐体により画成される空間には、前記緩衝材が満たされていることが好ましい。
この発明では、第一基板と筐体により画成される空間に満たされた緩衝材により、外部から干渉フィルターへ伝達される振動を低減できる。
【0014】
本発明の光モジュールでは、前記緩衝材が、樹脂系緩衝材、シリコン系緩衝材および金属系緩衝材からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明では、緩衝材として、樹脂系緩衝材、シリコン系緩衝材および金属系緩衝材からなる群から選択される少なくとも1種を用いることで、外部から干渉フィルターへ伝達される振動のうち、第一基板の基板厚み方向に対して直交する方向に沿った横振動に対して、特にその振動の伝達を低減できる。
【0015】
本発明の電子機器は、前記光モジュールを備えることを特徴とする。
ここで、電子機器としては、上記のような光モジュールから出力される電気信号に基づいて、光モジュールに入射した光の色度や明るさ等を分析する光測定器、ガスの吸収波長を検出してガスの種類を検査するガス検出装置、受光した光からその波長の光に含まれるデータを取得する光通信装置等を例示することができる。
この発明では、電子機器は、上述したような光モジュールを備えている。光モジュールは、上記のように、外部から干渉フィルターへの振動の伝達を低減することができ、光学ギャップを精度良く保持することができる。したがって、このような光モジュールを備えた電子機器では、高精度な検出結果に基づいて、正確な光分析処理を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る第一実施形態の測色装置(電子機器)の概略構成を示す図である。
【図2】第一実施形態における干渉フィルターおよび筐体の概略構成を示す平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿って切断した干渉フィルターおよび筐体の断面図である。
【図4】第一実施形態における干渉フィルターの固定基板の製造工程を示す説明図である。
【図5】第一実施形態における干渉フィルターの可動基板の製造工程を示す説明図である。
【図6】第二実施形態における干渉フィルターおよび筐体の概略構成を示す平面図である。
【図7】図6におけるVII−VII線に沿って切断した干渉フィルターおよび筐体の断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態の電子機器の一例であるガス検出装置の構成を示す概略図である。
【図9】図8のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の他の実施形態の電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
【図11】本発明の他の実施形態の電子機器の一例である分光カメラの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態について、図面に基づいて説明する。
〔1.光学装置の全体構成〕
図1は、本発明に係る実施形態の測色装置(電子機器)の概略構成を示す図である。
この測色装置1は、本発明の電子機器であり、図1に示すように、測定対象Aに光を射出する光源装置2と、本発明の光モジュールである測色センサー3と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備えている。そして、この測色装置1は、光源装置2から射出される光を測定対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち測定対象Aの色を分析して測定する装置である。
【0018】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、測定対象Aに対して白色光を射出する。複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれていてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから測定対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば測定対象Aが発光部材である場合、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
【0019】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、本発明の光モジュールを構成する。この測色センサー3は、図1に示すように、干渉フィルター5と、干渉フィルター5を透過した光を受光して検出する受光素子31と、干渉フィルター5に駆動電圧を印可する電圧制御部32と、を備えている。また、測色センサー3は、干渉フィルター5に対向する位置に、測定対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、干渉フィルター5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光のみを分光し、分光した光を受光素子31にて受光する。
受光素子31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光素子31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
なお、この測色センサー3は、後述するように、干渉フィルター5を保持する筐体6を備えている。
【0020】
(3−1.干渉フィルターの構成)
図2は、干渉フィルター5および筐体6を基板厚み方向から見た平面視における平面図であり、図3は、図2におけるIII−III線に沿って切断した干渉フィルター5および筐体6の断面図である。
干渉フィルター5は、図2に示すように、本発明における第二基板である固定基板51、および本発明における第一基板である可動基板52を備えている。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等の各種ガラスや、水晶等、可視光域の光を透過可能な素材により形成されている。そして、これらの2つの基板51,52は、図3に示すように、外周縁に沿って形成される接合面513,523同士が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
【0021】
また、固定基板51と、可動基板52との間には、固定反射膜56および可動反射膜57が設けられる。ここで、固定反射膜56は、固定基板51の可動基板52に対向する面に固定され、可動反射膜57は、可動基板52の固定基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定反射膜56および可動反射膜57は、ギャップを介して対向配置されている。ここで、固定反射膜56および可動反射膜57により挟まれる空間を光透過領域Gと称す。そして、干渉フィルター5は、この光透過領域Gで入射光を多重干渉させ、互いに強め合った光を透過させる。
【0022】
さらに、固定基板51と可動基板52との間には、ギャップの寸法を調整するための、本発明のギャップ可変部である静電アクチュエーター54が設けられている。この静電アクチュエーター54は、固定基板51に設けられる固定電極541と、可動基板52に設けられる可動電極542とにより構成されている。
【0023】
(3−1−1.固定基板の構成)
固定基板51は、本発明における第二基板を構成する。この固定基板51は、可動基板52に対向する対向面に、電極溝511およびミラー固定部512が、エッチングにより形成されている。
電極溝511は、図示は省略するが、基板厚み方向から固定基板51を見たフィルター平面視において、平面中心点を中心とするリング形状に形成されている。
ミラー固定部512は、電極溝511と同軸上で、可動基板52に向かって突出する円筒状に形成されている。
【0024】
電極溝511の溝底面には、静電アクチュエーター54を構成するリング状の固定電極541が形成されている。また、この固定電極541は、配線溝に沿って延出される固定電極線541Aが、固定基板51の外周部に向かって形成されている。そして、この固定電極線541Aの先端である固定電極端子541Bが電圧制御部32に接続されている。なお、図3に示すように、この固定電極端子541Bは銀ペースト等の導電材58により可動電極端子542Bに接続され、この可動電極端子542Bを介して電圧制御部32に接続されている。
【0025】
また、ミラー固定部512の可動基板52に対向する面には、固定反射膜56が固定されている。この固定反射膜56は、例えばSiO2、TiO2を積層することで構成された誘電体多層膜であってもよく、Ag合金等の金属膜により構成されるものであってもよい。また、誘電体多層膜と金属膜との双方が積層された構成であってもよい。
【0026】
そして、固定基板51の電極溝511の外方には、接合面513が形成されている。この接合面513には、上述したように、固定基板51および可動基板52を接合するプラズマ重合膜53が形成されている。
【0027】
(3−1−2.可動基板の構成)
可動基板52は、本発明における第一基板を構成する。この可動基板52は、固定基板51に対向しない面がエッチングにより加工されることで、形成される。
この可動基板52は、図2および図3に示すように、固定基板51の外周縁よりも外側に突出する、2つの突出部524を備えている。2つの突出部524は、可動基板52の基板中心に対して点対称に設けられている。そして、この突出部524は、筐体6に固定される固定部525と、固定部525よりも厚み寸法が小さい振動防止部526とを備えている。固定部525は突出方向の先端側に設けられる。また、振動防止部526は固定部525よりも突出方向の基端側に設けられる。2つの振動防止部526は、可動基板52の基板中心に対して点対称に設けられている。この振動防止部526により、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動を低減することができる。なお、図2に示すように、固定部525の幅寸法と振動防止部526の幅寸法とは同一であるが、これに限定されない。固定部525の幅寸法を、振動防止部526の幅寸法より大きくしてもよく、小さくしてもよい。
この振動防止部526には緩衝材7が設けられる。この緩衝材7としては、適宜公知の緩衝材を用いることができ、例えば、樹脂系緩衝材、シリコン系緩衝材、金属系緩衝材が挙げられる。この緩衝材7が振動防止部526の振動を減衰させることで、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動を低減することができる。
【0028】
また、この可動基板52は、基板中心点を中心とした円形筒状の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、を備えている。ここで、この保持部522の外周径寸法は、固定基板51の電極溝511の外周径寸法よりも僅かに小さい寸法に形成されている。また、この保持部522の内周径寸法は、固定基板51のリング状の固定電極541の外周径寸法よりも僅かに大きい寸法に形成されている。
【0029】
可動部521は、撓みを防止するために、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成されている。
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成されている。なお、本実施形態では、ダイアフラム状の保持部522を例示するが、例えば、可動部の中心に対して点対象となる位置に設けられる複数対の梁構造を有する保持部が設けられる構成としてもよい。
【0030】
可動部521の固定基板51に対向する面には、固定電極541に所定の間隔をあけて対向する、リング状の可動電極542が形成されている。ここで、上述したように、この可動電極542および前述した固定電極541により、静電アクチュエーター54が構成される。
また、可動電極542の外周縁の一部からは、可動基板52の外周部に向かって、可動電極線542Aが形成され、この可動電極線542Aの先端である可動電極端子542Bが、電圧制御部32に接続される。
【0031】
可動部521の固定基板51に対向する面には、ギャップを介して固定反射膜56に対向する可動反射膜57が形成されている。なお、可動反射膜57の構成は、固定反射膜56と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0032】
(3−1−3.筐体の構成)
筐体6は、図3に示すように、干渉フィルター5を保持している。そして、可動基板52の突出部524における固定部525は、この筐体6に固定されている。
ここで、筐体6と固定部525との接合方法としては、特に限定されず、例えば接着剤を用いる方法等の公知の接合方法を採用することができる。
【0033】
(3−2.電圧制御部の構成)
電圧制御部32は、制御装置4の制御により、静電アクチュエーター54の固定電極541および可動電極542に印加する電圧を制御する。
【0034】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。
この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューター等を用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および測色処理部43を備えて構成されている。
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター54への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、受光素子31により検出された受光量から、測定対象Aの色度を分析する。
【0035】
〔5.干渉フィルターの製造方法〕
次に、干渉フィルター5の製造方法について、図面に基づいて説明する。
(5−1.固定基板製造工程)
図4は、干渉フィルター5の固定基板51の製造工程(固定基板製造工程)を示す説明図である。
まず、固定基板51の製造素材である母材510(厚み寸法が500μmの石英ガラス基板)を用意し、母材510の表面粗さRaが1nm以下となるまで両面を精密研磨する。そして、固定基板51の可動基板52に対向する面に電極溝511形成用のレジスト8を塗布して、塗布されたレジスト8をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図4(A)に示すように、電極溝511が形成される箇所をパターニングする。
次に、図4(B)に示すように、電極溝511を所望の深さにエッチングし、電極溝511を形成する。なお、ここでのエッチングとしては、ウェットエッチングが用いられる。
そして、固定基板51の可動基板52に対向する面にミラー固定部512を形成するためのレジスト8を塗布して、塗布されたレジスト8をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図4(B)に示すように、ミラー固定部512が形成される箇所をパターニングする。
次に、図4(C)に示すように、ミラー固定部512を所望の位置までエッチングした後、レジスト8を除去することで、電極溝511およびミラー固定部512が形成される。
【0036】
この後、図4(D)に示すように、ミラー固定部512に、固定反射膜56を形成し、電極溝511に固定電極541(固定電極線541Aおよび固定電極端子541Bを含む)を形成する。具体的には、固定反射膜56は、リフトオフプロセスにより成膜される。すなわち、フォトリソグラフィ法等により、固定基板51上の反射膜形成部分以外にレジスト(リフトオフパターン)を成膜する。そして、固定反射膜56を成膜した後、リフトオフにより、ミラー固定部512以外の反射膜を除去する。また、固定電極541、固定電極線541Aおよび固定電極端子541Bは、固定基板51上に形成した電極を構成する材料からなる膜に対してフォトリソグラフィ法およびエッチングを行うことにより、所望の位置に形成される。
さらに、図4(D)に示すように、接合膜513Aを接合面513に形成する。接合膜513Aは、ポリオルガノシロキサンを用いたプラズマCVD法により成膜されるプラズマ重合膜であり、厚み寸法は30nmとする。
以上により、固定基板51が製造される。
【0037】
(5−2.可動基板製造工程)
次に、可動基板52を製造する工程について説明する。
図5は、干渉フィルター5の可動基板52の製造工程(可動基板製造工程)を示す説明図である。
可動基板52の形成では、まず、可動基板52の製造素材である母材520(ガラス基板)を用意し、切削等により、例えば厚み寸法を200μmの均一厚みに形成する。そして、母材の表面を鏡面研磨加工することで、平均表面粗さRaが1nm以下の平滑面にする。
【0038】
次に、図5(A)に示すように、可動基板52の一方の面(固定基板51に対向する面とは反対側の面)側にレジスト8を塗布する。
そして、フォトリソグラフィ法を用いて、保持部522および振動防止部526を形成するためのレジストパターンを形成し、ウェットエッチングにより加工して、図5(B)に示すような可動部521、保持部522、固定部525および振動防止部526を形成する。
なお、本実施形態では、振動防止部526の厚み寸法が保持部522の厚み寸法と同一であるために、このように、振動防止部526および保持部522を同一の工程で形成することができる。
【0039】
その後、図5(C)に示すように、可動基板52の他方の面(固定基板51に対向する面)側の可動部521に対応する位置に可動反射膜57を形成し、保持部522に対応する位置に可動電極542(可動電極線542A、可動電極端子542Bを含む)を形成する。この可動反射膜57は、固定反射膜56と同様に、リフトオフプロセスにより成膜する。可動電極542、可動電極線542A、可動電極端子542Bは、固定電極541と同様にフォトリソグラフィ法及びエッチングにより形成する。
また、図5(C)に示すように、振動防止部526に緩衝材7の材料を付着させ固化させて、振動防止部526に緩衝材7を形成する。
さらに、図5(C)に示すように、接合膜523Aを接合面523に形成する。接合膜523Aは、ポリオルガノシロキサンを用いたプラズマCVD法により成膜されるプラズマ重合膜であり、厚み寸法は30nmとする。
以上により、可動基板52が製造される。
【0040】
(5−3.接合工程)
次に、上述のように製造された固定基板51および可動基板52を接合する工程(接合工程)について説明する。
この接合工程では、例えば主材料としてポリオルガノシロキサンが用いられたプラズマ重合膜によるシロキサン接合を用いる。すなわち、接合工程では、各接合膜513A,523Aを構成するプラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与するために、O2プラズマ処理またはUV処理を行う。O2プラズマ処理は、O2流量30cc/分、圧力27Pa、RFパワー200Wの条件で30秒間実施する。また、UV処理は、UV光源としてエキシマUV(波長172nm)を用いて3分間処理を行う。また、UV処理は、UV光源としてエキシマUV(波長172nm)を用いて3分間処理を行う。プラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与した後、2つの基板51,52のアライメントを行い、各接合膜531,532を介して各接合面513,524を重ね合わせて、接合部分に荷重をかけることにより、基板51,52同士を接合させる。
なお、加重をかける場合には、加圧荷重による電極溝511およびミラー固定部512の撓みを防止するために、電極溝511およびミラー固定部512以外の部分に荷重がかかるように、可動基板52上にスペーサー材(例えば、テフロン(登録商標)シート)を挟み込んだ状態で行うことが好ましい。
【0041】
〔6.本実施形態の作用効果〕
上述したように、本実施形態の測色センサー3では、可動基板52の突出部524は、筐体6に固定される固定部525と、この固定部525よりも厚み寸法が小さい振動防止部526を備えている。この振動防止部526は、固定部525よりも厚み寸法が小さいために、固定部525や可動基板52の他の部分よりも変形しやすい。したがって、外部から筐体6に振動が加わった場合、可動反射膜57および固定反射膜56が設けられた、可動基板52および固定基板51が対向する基板対向領域には、その場に留まろうとする力が働き、振動防止部526が撓んで振動を吸収する。これにより、基板対向領域における振動を抑制することができる。この振動防止部526は、外部から干渉フィルターへ伝達される振動のうち、可動基板52の基板厚み方向に沿った縦振動に対して、特にその振動の伝達を低減できる。
また、本実施形態では、可動基板52の振動防止部526には緩衝材7が設けられている。この緩衝材7、振動防止部526の振動に対して反力を与えることで、その振動を減衰させる。この緩衝材7は、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動のうち、可動基板52の基板厚み方向に対して直交する方向に沿った横振動に対して、特にその振動の伝達を低減できる。
以上により、本実施形態によれば、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動を効果的に低減することができ、光学ギャップを精度良く保持することができる光モジュールを得られる。
【0042】
本実施形態では、振動防止部526の厚み寸法が保持部522の厚み寸法と同一である。このような場合には、可動基板52を製造する際に、例えば母材520に対して同一深さ寸法だけエッチング処理することで、振動防止部526および保持部522を同時に形成することができる。そのため、測色センサー3の製造効率を向上させることができる。
【0043】
[第二実施形態]
次に本発明の第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
図6は、第二実施形態における干渉フィルターおよび筐体の概略構成を示す平面図であり、図7は、図6におけるVII−VII線に沿って切断した干渉フィルターおよび筐体の断面図である。なお、以降の説明において、前記第一実施形態と同様の構成については、同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
【0044】
本実施形態では、第一基板を固定基板51とし、第二基板を可動基板52としている点で、前記第一実施形態と相違する。すなわち、本実施形態では、図6および図7に示すように、固定基板51は、外周縁よりも外側に突出する突出部514が設けられており、この突出部514が筐体6に保持される構成となっている。
そして、この突出部514は、筐体6に固定される固定部515と、固定部515よりも厚み寸法が小さい振動防止部516とを備えている。固定部515は突出方向の先端側に設けられる。また、振動防止部516は固定部515よりも突出方向の基端側に設けられる。この振動防止部516により、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動を低減することができる。
この振動防止部516には、緩衝材7が設けられる。この緩衝材7は、振動防止部516が振動した際、振動に対する反力を振動防止部に与えて、振動防止部516の振動を減衰させる。これにより、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動を低減することができる。
【0045】
また、本実施形態では、図7に示すように、固定基板51の固定電極端子541Bが突出部514上に突出方向の先端側に向かって延出されている。これによれば、固定電極端子541Bが測色センサー3(光モジュール)の外面側にある突出部514まで延出されているために、端子実装がしやすくなる。特に、本実施形態のように、固定電極端子541Bの先端が、固定部515上まで延出する構成では、固定部515上で固定電極端子541Bに対する配線を実施することができる。この場合、配線作業時に、固定反射膜56や可動反射膜57が設けられた基板51,52の対向領域に応力が付与されないため、基板51,52の撓みを防止できる。
【0046】
また、本実施形態では、図6および図7に示すように、また、可動電極542は、配線溝に沿って延出される可動電極線542Aが、可動基板52の外周部に向かって形成されている。そして、この可動電極線542Aの先端である可動電極端子542Bが電圧制御部32に接続されている。なお、図7に示すように、この可動電極端子542Bは銀ペースト等の導電材58により固定電極端子541Bに接続され、この固定電極端子541Bを介して電圧制御部32に接続されている。
【0047】
(第二実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、前記第一実施形態と同様に、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動を低減することができ、光学ギャップを精度良く保持することができる測色センサー3を得られる。
また、本実施形態によれば、固定基板51の固定電極541が基板対向領域から突出部514の突出方向の先端側に延出されている。これによれば、固定電極端子541Bが測色センサー3(光モジュール)の外面側にある突出部514に露出するため、端子実装がしやすくなる。
また、本実施形態によれば、可動電極542と固定電極541とは、これらの外周部において導電材58により接続されている。これによれば、可動電極542が、測色センサー3(光モジュール)の外面側にある突出部514に露出する固定電極端子541Bと接続されているため、端子実装がしやすくなる。
【0048】
[他の実施の形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0049】
例えば、前記実施形態では、固定電極541および可動電極542を静電アクチュエーター54の電極として使用したが、これに限らない。例えば、固定電極541および可動電極542を、反射膜間のギャップ寸法を測定するための静電容量測定電極や、帯電除去電極に接続される帯電除去引出電極として使用してもよい。
【0050】
前記第一実施形態では、可動基板52は2つの突出部524を備えているが、突出部524の数は特に限定されない。突出部524の数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。ここで、突出部524が3つ以上である場合には、特に限定されないが、それぞれを基板中心に対し点対称に設けることが好ましい。
前記第一実施形態では、可動基板52に2つの振動防止部526を、可動基板52の基板中心に対して点対称に設けているが、これに限らない。振動防止部526は、突出部524の固定部525よりも突出方向の基端側に適宜設けることができる。
また、前記第一実施形態では、振動防止部526の厚み寸法を保持部522の厚み寸法と同一としたが、これに限らない。
さらに、前記第一実施形態では、可動基板52の固定部525の厚み寸法を可動基板52の厚み寸法と同一としたが、これに限らない。例えば、固定部525の厚み寸法を可動基板52の厚み寸法よりも厚くしてもよく、薄くしてもよい。
【0051】
また、前記第一実施形態において、ミラー固定部512の可動基板52に対向するミラー固定面が、電極固定面よりも可動基板52に近接して形成される例を示したが、これに限らない。電極固定面およびミラー固定面の高さ位置は、ミラー固定面に固定される固定反射膜56、および可動基板52に形成される可動反射膜57の間のギャップの寸法、固定電極541および可動電極542の間の寸法、固定反射膜56や可動反射膜57の厚み寸法等により適宜設定される。したがって、例えば、電極固定面とミラー固定面とが同一面に形成される構成や、電極固定面の中心部に、円筒凹溝上のミラー固定溝が形成され、このミラー固定溝の底面にミラー固定面が形成される構成としてもよい。
【0052】
また、電極541,542間のギャップ(電極間ギャップ)が、反射膜56,57間のギャップ(ミラー間ギャップ)よりも大きい場合、ミラー間ギャップを変化させるために大きな駆動電圧が必要となる。これに対して、上記のように、ミラー間ギャップが、電極間ギャップよりも大きくなる場合、ミラー間ギャップを変化させるための駆動電圧を小さくでき、省電力化を図ることができる。また、このような構成の干渉フィルターは、ミラー間ギャップが大きいため、特に長波長域の分光特性測定に対して有効であり、例えば、上述したようなガス分析等に用いる赤外光分析や、光通信を実施するためのモジュールに組み込むことができる。
【0053】
さらに、干渉フィルター5の可動基板52にダイアフラム状の保持部522を設ける構成としたが、例えば可動部521の中心に対して点対称となる位置に設けられた複数の梁状の保持部を設ける構成としてもよい。
【0054】
また、前記第二実施形態では、固定基板51と筐体6により空間が画成されるが、この空間には、緩衝材7が満たされていてもよい。
このようにすれば、固定基板51と筐体6により画成される空間に満たされた緩衝材により、外部から干渉フィルターへ伝達される振動を低減できる。
【0055】
本発明の電子機器として、測色装置1を例示したが、その他、様々な分野により本発明の光モジュール、電子機器を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、本発明に係る干渉フィルターを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
このようなガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0056】
図8は、干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図9は、図8のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図8に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、干渉フィルター5、および受光素子137(受光部)等を含む検出部(光モジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッタ―135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
また、図9に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部138が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、図9に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、干渉フィルター5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0057】
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0058】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光を射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0059】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光が干渉フィルター5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、干渉フィルター5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光を干渉フィルター5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0060】
なお、上記図8,9において、ラマン散乱光を干渉フィルター5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器とする。このような構成でも、本発明に係る干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0061】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
以下に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0062】
図10は、干渉フィルター5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
この食物分析装置200は、図10に示すように、検出器210(光モジュール)と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光する干渉フィルター5と、分光された光を検出する撮像部213(受光部)と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、干渉フィルター5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0063】
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通って干渉フィルター5に入射する。干渉フィルター5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御して干渉フィルター5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0064】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにした得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0065】
また、図10において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる、また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0066】
さらには、本発明の光モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光モジュールに設けられた干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0067】
また、電子機器としては、本発明に係る干渉フィルターにより光を分光することで、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、干渉フィルターを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図11は、分光カメラの概略構成を示す模式図である。分光カメラ300は、図11に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部320とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部320に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、図11に示すように、対物レンズ321、結像レンズ322、およびこれらのレンズ間に設けられた干渉フィルター5を備えて構成されている。
撮像部320は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、干渉フィルター5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0068】
さらには、本発明に係る干渉フィルターをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを干渉フィルターで分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明に係る干渉フィルターを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0069】
さらには、光モジュールおよび電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、干渉フィルターにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0070】
上記に示すように、本発明の光モジュール、および電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明に係る干渉フィルターは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
【0071】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更できる。
【符号の説明】
【0072】
1…測色装置、3…測色センサー、5…干渉フィルター、6…筐体、7…緩衝材、51…固定基板、52…可動基板、56…固定反射膜、57…可動反射膜、524…突出部、525…固定部、526…振動防止部、541…固定電極。
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光から所定波長の光を分光する干渉フィルターを備えた光モジュールおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数波長の光から、特定波長の光を取り出す波長可変干渉フィルター(光フィルター素子)が知られている(例えば、特許文献1)。
波長可変干渉フィルターでは、互いに平行に保持された一対の基板と、この一対の基板上に互いに対向すると共に一定間隔の光学ギャップを有するように形成された一対の反射膜とを備え、波長可変干渉フィルターに対して外部から加えられる外力により一対の反射膜間の光学ギャップの大きさを変化させるようにしている。光学ギャップの大きさを変化させると光学ギャップの大きさに応じた特定波長を選択して透過させることが可能となる。ここで、光学ギャップの大きさを変化させる構造としては、半導体のマイクロ加工技術によって作成され、静電アクチュエーターや圧電素子を用いた機構等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−142752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、波長可変干渉フィルターにおいて、選択した波長を透過させるためには、その波長に応じたギャップを精度良く保持する必要がある。しかしながら、特に光学ギャップの大きさを変化させる場合には、外部から干渉フィルターへ振動が伝達されると光学ギャップを精度良く保持することが難しくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述のような問題に鑑みて、分光精度の高い干渉フィルターを備えた光モジュール、および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光モジュールは、第一反射膜を備える第一基板、および前記第一反射膜にギャップを介して対向する第二反射膜を備える第二基板を備え、前記第一基板と前記第二基板とが接合された状態にある干渉フィルターと、前記干渉フィルターを保持する筐体と、を備え、前記第一基板は、前記第二基板の外周縁よりも外側に突出する突出部を備え、前記突出部は、突出方向の先端側に設けられ、前記筐体に固定される固定部と、前記固定部よりも突出方向の基端側に設けられ、前記固定部よりも厚み寸法が小さい振動防止部と、を備え、前記振動防止部には緩衝材が設けられることを特徴とする。
【0007】
この発明では、第一基板の突出部は、筐体に固定される固定部と、この固定部よりも厚み寸法が小さい振動防止部を備えている。この振動防止部は、固定部よりも厚み寸法が小さいために、固定部や第一基板の他の部分よりも変形しやすい。したがって、外部から筐体に振動が加わった場合、第一反射膜および第二反射膜が設けられた、第一基板および第二基板が対向する基板対向領域には、その場に留まろうとする力が働き、振動防止部が撓んで振動を吸収する。これにより、基板対向領域における振動を抑制することができる。この振動防止部は、外部から干渉フィルターへ伝達される振動のうち、第一基板の基板厚み方向に沿った縦振動に対して、特にその振動の伝達を低減できる。
また、この発明では、第一基板の振動防止部には緩衝材が設けられている。この緩衝材は、振動防止部の振動に対して反力を与えることで、その振動を減衰させる。この緩衝材は、外部から干渉フィルターへ伝達される振動のうち、第一基板の基板厚み方向に対して直交する方向に沿った横振動に対して、特にその振動の伝達を低減できる。
以上により、本発明によれば、外部から干渉フィルターへ伝達される振動を効果的に低減することができ、光学ギャップを精度良く保持することができる光モジュールを得られる。
【0008】
本発明の光モジュールでは、前記第一基板は、可動部と、前記可動部を前記第二基板に対して進退可能に保持し、前記可動部よりも厚み寸法が小さく形成された保持部と、前記保持部の外周部に設けられ、前記保持部よりも厚み寸法が大きく、前記第二基板に接合される接合部と、を備え、前記振動防止部の厚み寸法は、前記保持部の厚み寸法と同一であることが好ましい。
【0009】
この発明では、振動防止部の厚み寸法が保持部の厚み寸法と同一である。このような場合には、第一基板を製造する際に、例えば母材に対して同一深さ寸法だけエッチング処理することで、振動防止部および保持部を同時に形成することができる。そのため、光モジュールの製造効率を向上させることができる。
【0010】
本発明の光モジュールでは、前記第一基板は、第一電極を備え、前記第一電極は、前記第二基板に対向する基板対向領域から前記突出部の突出方向の先端側に延出して設けられていることが好ましい。
【0011】
ここで、本発明の第一電極としては、例えば、第一反射膜および第二反射膜間のギャップを変化させるためのアクチュエーターに電圧を印加するための駆動電極や、例えば反射膜間のギャップ寸法を検出するための静電容量測定用電極、反射膜の帯電を除去する電極除去電極などを例示できる。
この発明では、第一基板の第一電極が基板対向領域から突出部の突出方向の先端側に延出されている。これによれば、第一電極が光モジュールの外面側にある突出部に露出するため、端子実装がしやすくなる。
【0012】
本発明の光モジュールでは、前記第二基板は、第二電極を備え、前記第二電極は、前記第二基板の外周部に延出して設けられ、前記第一電極と前記第二電極とは、前記外周部において導電材により接続されていることが好ましい。
この発明では、第一電極と第二電極とは、これらの外周部において導電材により接続されている。これによれば、第二電極が、光モジュールの外面側にある突出部に露出する第一電極と接続されているため、端子実装がしやすくなる。
【0013】
本発明の光モジュールでは、前記第一基板と前記筐体により画成される空間には、前記緩衝材が満たされていることが好ましい。
この発明では、第一基板と筐体により画成される空間に満たされた緩衝材により、外部から干渉フィルターへ伝達される振動を低減できる。
【0014】
本発明の光モジュールでは、前記緩衝材が、樹脂系緩衝材、シリコン系緩衝材および金属系緩衝材からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明では、緩衝材として、樹脂系緩衝材、シリコン系緩衝材および金属系緩衝材からなる群から選択される少なくとも1種を用いることで、外部から干渉フィルターへ伝達される振動のうち、第一基板の基板厚み方向に対して直交する方向に沿った横振動に対して、特にその振動の伝達を低減できる。
【0015】
本発明の電子機器は、前記光モジュールを備えることを特徴とする。
ここで、電子機器としては、上記のような光モジュールから出力される電気信号に基づいて、光モジュールに入射した光の色度や明るさ等を分析する光測定器、ガスの吸収波長を検出してガスの種類を検査するガス検出装置、受光した光からその波長の光に含まれるデータを取得する光通信装置等を例示することができる。
この発明では、電子機器は、上述したような光モジュールを備えている。光モジュールは、上記のように、外部から干渉フィルターへの振動の伝達を低減することができ、光学ギャップを精度良く保持することができる。したがって、このような光モジュールを備えた電子機器では、高精度な検出結果に基づいて、正確な光分析処理を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る第一実施形態の測色装置(電子機器)の概略構成を示す図である。
【図2】第一実施形態における干渉フィルターおよび筐体の概略構成を示す平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿って切断した干渉フィルターおよび筐体の断面図である。
【図4】第一実施形態における干渉フィルターの固定基板の製造工程を示す説明図である。
【図5】第一実施形態における干渉フィルターの可動基板の製造工程を示す説明図である。
【図6】第二実施形態における干渉フィルターおよび筐体の概略構成を示す平面図である。
【図7】図6におけるVII−VII線に沿って切断した干渉フィルターおよび筐体の断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態の電子機器の一例であるガス検出装置の構成を示す概略図である。
【図9】図8のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の他の実施形態の電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
【図11】本発明の他の実施形態の電子機器の一例である分光カメラの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態について、図面に基づいて説明する。
〔1.光学装置の全体構成〕
図1は、本発明に係る実施形態の測色装置(電子機器)の概略構成を示す図である。
この測色装置1は、本発明の電子機器であり、図1に示すように、測定対象Aに光を射出する光源装置2と、本発明の光モジュールである測色センサー3と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備えている。そして、この測色装置1は、光源装置2から射出される光を測定対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち測定対象Aの色を分析して測定する装置である。
【0018】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、測定対象Aに対して白色光を射出する。複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれていてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから測定対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば測定対象Aが発光部材である場合、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
【0019】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、本発明の光モジュールを構成する。この測色センサー3は、図1に示すように、干渉フィルター5と、干渉フィルター5を透過した光を受光して検出する受光素子31と、干渉フィルター5に駆動電圧を印可する電圧制御部32と、を備えている。また、測色センサー3は、干渉フィルター5に対向する位置に、測定対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、干渉フィルター5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光のみを分光し、分光した光を受光素子31にて受光する。
受光素子31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光素子31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
なお、この測色センサー3は、後述するように、干渉フィルター5を保持する筐体6を備えている。
【0020】
(3−1.干渉フィルターの構成)
図2は、干渉フィルター5および筐体6を基板厚み方向から見た平面視における平面図であり、図3は、図2におけるIII−III線に沿って切断した干渉フィルター5および筐体6の断面図である。
干渉フィルター5は、図2に示すように、本発明における第二基板である固定基板51、および本発明における第一基板である可動基板52を備えている。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等の各種ガラスや、水晶等、可視光域の光を透過可能な素材により形成されている。そして、これらの2つの基板51,52は、図3に示すように、外周縁に沿って形成される接合面513,523同士が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
【0021】
また、固定基板51と、可動基板52との間には、固定反射膜56および可動反射膜57が設けられる。ここで、固定反射膜56は、固定基板51の可動基板52に対向する面に固定され、可動反射膜57は、可動基板52の固定基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定反射膜56および可動反射膜57は、ギャップを介して対向配置されている。ここで、固定反射膜56および可動反射膜57により挟まれる空間を光透過領域Gと称す。そして、干渉フィルター5は、この光透過領域Gで入射光を多重干渉させ、互いに強め合った光を透過させる。
【0022】
さらに、固定基板51と可動基板52との間には、ギャップの寸法を調整するための、本発明のギャップ可変部である静電アクチュエーター54が設けられている。この静電アクチュエーター54は、固定基板51に設けられる固定電極541と、可動基板52に設けられる可動電極542とにより構成されている。
【0023】
(3−1−1.固定基板の構成)
固定基板51は、本発明における第二基板を構成する。この固定基板51は、可動基板52に対向する対向面に、電極溝511およびミラー固定部512が、エッチングにより形成されている。
電極溝511は、図示は省略するが、基板厚み方向から固定基板51を見たフィルター平面視において、平面中心点を中心とするリング形状に形成されている。
ミラー固定部512は、電極溝511と同軸上で、可動基板52に向かって突出する円筒状に形成されている。
【0024】
電極溝511の溝底面には、静電アクチュエーター54を構成するリング状の固定電極541が形成されている。また、この固定電極541は、配線溝に沿って延出される固定電極線541Aが、固定基板51の外周部に向かって形成されている。そして、この固定電極線541Aの先端である固定電極端子541Bが電圧制御部32に接続されている。なお、図3に示すように、この固定電極端子541Bは銀ペースト等の導電材58により可動電極端子542Bに接続され、この可動電極端子542Bを介して電圧制御部32に接続されている。
【0025】
また、ミラー固定部512の可動基板52に対向する面には、固定反射膜56が固定されている。この固定反射膜56は、例えばSiO2、TiO2を積層することで構成された誘電体多層膜であってもよく、Ag合金等の金属膜により構成されるものであってもよい。また、誘電体多層膜と金属膜との双方が積層された構成であってもよい。
【0026】
そして、固定基板51の電極溝511の外方には、接合面513が形成されている。この接合面513には、上述したように、固定基板51および可動基板52を接合するプラズマ重合膜53が形成されている。
【0027】
(3−1−2.可動基板の構成)
可動基板52は、本発明における第一基板を構成する。この可動基板52は、固定基板51に対向しない面がエッチングにより加工されることで、形成される。
この可動基板52は、図2および図3に示すように、固定基板51の外周縁よりも外側に突出する、2つの突出部524を備えている。2つの突出部524は、可動基板52の基板中心に対して点対称に設けられている。そして、この突出部524は、筐体6に固定される固定部525と、固定部525よりも厚み寸法が小さい振動防止部526とを備えている。固定部525は突出方向の先端側に設けられる。また、振動防止部526は固定部525よりも突出方向の基端側に設けられる。2つの振動防止部526は、可動基板52の基板中心に対して点対称に設けられている。この振動防止部526により、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動を低減することができる。なお、図2に示すように、固定部525の幅寸法と振動防止部526の幅寸法とは同一であるが、これに限定されない。固定部525の幅寸法を、振動防止部526の幅寸法より大きくしてもよく、小さくしてもよい。
この振動防止部526には緩衝材7が設けられる。この緩衝材7としては、適宜公知の緩衝材を用いることができ、例えば、樹脂系緩衝材、シリコン系緩衝材、金属系緩衝材が挙げられる。この緩衝材7が振動防止部526の振動を減衰させることで、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動を低減することができる。
【0028】
また、この可動基板52は、基板中心点を中心とした円形筒状の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、を備えている。ここで、この保持部522の外周径寸法は、固定基板51の電極溝511の外周径寸法よりも僅かに小さい寸法に形成されている。また、この保持部522の内周径寸法は、固定基板51のリング状の固定電極541の外周径寸法よりも僅かに大きい寸法に形成されている。
【0029】
可動部521は、撓みを防止するために、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成されている。
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成されている。なお、本実施形態では、ダイアフラム状の保持部522を例示するが、例えば、可動部の中心に対して点対象となる位置に設けられる複数対の梁構造を有する保持部が設けられる構成としてもよい。
【0030】
可動部521の固定基板51に対向する面には、固定電極541に所定の間隔をあけて対向する、リング状の可動電極542が形成されている。ここで、上述したように、この可動電極542および前述した固定電極541により、静電アクチュエーター54が構成される。
また、可動電極542の外周縁の一部からは、可動基板52の外周部に向かって、可動電極線542Aが形成され、この可動電極線542Aの先端である可動電極端子542Bが、電圧制御部32に接続される。
【0031】
可動部521の固定基板51に対向する面には、ギャップを介して固定反射膜56に対向する可動反射膜57が形成されている。なお、可動反射膜57の構成は、固定反射膜56と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0032】
(3−1−3.筐体の構成)
筐体6は、図3に示すように、干渉フィルター5を保持している。そして、可動基板52の突出部524における固定部525は、この筐体6に固定されている。
ここで、筐体6と固定部525との接合方法としては、特に限定されず、例えば接着剤を用いる方法等の公知の接合方法を採用することができる。
【0033】
(3−2.電圧制御部の構成)
電圧制御部32は、制御装置4の制御により、静電アクチュエーター54の固定電極541および可動電極542に印加する電圧を制御する。
【0034】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。
この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューター等を用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および測色処理部43を備えて構成されている。
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター54への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、受光素子31により検出された受光量から、測定対象Aの色度を分析する。
【0035】
〔5.干渉フィルターの製造方法〕
次に、干渉フィルター5の製造方法について、図面に基づいて説明する。
(5−1.固定基板製造工程)
図4は、干渉フィルター5の固定基板51の製造工程(固定基板製造工程)を示す説明図である。
まず、固定基板51の製造素材である母材510(厚み寸法が500μmの石英ガラス基板)を用意し、母材510の表面粗さRaが1nm以下となるまで両面を精密研磨する。そして、固定基板51の可動基板52に対向する面に電極溝511形成用のレジスト8を塗布して、塗布されたレジスト8をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図4(A)に示すように、電極溝511が形成される箇所をパターニングする。
次に、図4(B)に示すように、電極溝511を所望の深さにエッチングし、電極溝511を形成する。なお、ここでのエッチングとしては、ウェットエッチングが用いられる。
そして、固定基板51の可動基板52に対向する面にミラー固定部512を形成するためのレジスト8を塗布して、塗布されたレジスト8をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図4(B)に示すように、ミラー固定部512が形成される箇所をパターニングする。
次に、図4(C)に示すように、ミラー固定部512を所望の位置までエッチングした後、レジスト8を除去することで、電極溝511およびミラー固定部512が形成される。
【0036】
この後、図4(D)に示すように、ミラー固定部512に、固定反射膜56を形成し、電極溝511に固定電極541(固定電極線541Aおよび固定電極端子541Bを含む)を形成する。具体的には、固定反射膜56は、リフトオフプロセスにより成膜される。すなわち、フォトリソグラフィ法等により、固定基板51上の反射膜形成部分以外にレジスト(リフトオフパターン)を成膜する。そして、固定反射膜56を成膜した後、リフトオフにより、ミラー固定部512以外の反射膜を除去する。また、固定電極541、固定電極線541Aおよび固定電極端子541Bは、固定基板51上に形成した電極を構成する材料からなる膜に対してフォトリソグラフィ法およびエッチングを行うことにより、所望の位置に形成される。
さらに、図4(D)に示すように、接合膜513Aを接合面513に形成する。接合膜513Aは、ポリオルガノシロキサンを用いたプラズマCVD法により成膜されるプラズマ重合膜であり、厚み寸法は30nmとする。
以上により、固定基板51が製造される。
【0037】
(5−2.可動基板製造工程)
次に、可動基板52を製造する工程について説明する。
図5は、干渉フィルター5の可動基板52の製造工程(可動基板製造工程)を示す説明図である。
可動基板52の形成では、まず、可動基板52の製造素材である母材520(ガラス基板)を用意し、切削等により、例えば厚み寸法を200μmの均一厚みに形成する。そして、母材の表面を鏡面研磨加工することで、平均表面粗さRaが1nm以下の平滑面にする。
【0038】
次に、図5(A)に示すように、可動基板52の一方の面(固定基板51に対向する面とは反対側の面)側にレジスト8を塗布する。
そして、フォトリソグラフィ法を用いて、保持部522および振動防止部526を形成するためのレジストパターンを形成し、ウェットエッチングにより加工して、図5(B)に示すような可動部521、保持部522、固定部525および振動防止部526を形成する。
なお、本実施形態では、振動防止部526の厚み寸法が保持部522の厚み寸法と同一であるために、このように、振動防止部526および保持部522を同一の工程で形成することができる。
【0039】
その後、図5(C)に示すように、可動基板52の他方の面(固定基板51に対向する面)側の可動部521に対応する位置に可動反射膜57を形成し、保持部522に対応する位置に可動電極542(可動電極線542A、可動電極端子542Bを含む)を形成する。この可動反射膜57は、固定反射膜56と同様に、リフトオフプロセスにより成膜する。可動電極542、可動電極線542A、可動電極端子542Bは、固定電極541と同様にフォトリソグラフィ法及びエッチングにより形成する。
また、図5(C)に示すように、振動防止部526に緩衝材7の材料を付着させ固化させて、振動防止部526に緩衝材7を形成する。
さらに、図5(C)に示すように、接合膜523Aを接合面523に形成する。接合膜523Aは、ポリオルガノシロキサンを用いたプラズマCVD法により成膜されるプラズマ重合膜であり、厚み寸法は30nmとする。
以上により、可動基板52が製造される。
【0040】
(5−3.接合工程)
次に、上述のように製造された固定基板51および可動基板52を接合する工程(接合工程)について説明する。
この接合工程では、例えば主材料としてポリオルガノシロキサンが用いられたプラズマ重合膜によるシロキサン接合を用いる。すなわち、接合工程では、各接合膜513A,523Aを構成するプラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与するために、O2プラズマ処理またはUV処理を行う。O2プラズマ処理は、O2流量30cc/分、圧力27Pa、RFパワー200Wの条件で30秒間実施する。また、UV処理は、UV光源としてエキシマUV(波長172nm)を用いて3分間処理を行う。また、UV処理は、UV光源としてエキシマUV(波長172nm)を用いて3分間処理を行う。プラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与した後、2つの基板51,52のアライメントを行い、各接合膜531,532を介して各接合面513,524を重ね合わせて、接合部分に荷重をかけることにより、基板51,52同士を接合させる。
なお、加重をかける場合には、加圧荷重による電極溝511およびミラー固定部512の撓みを防止するために、電極溝511およびミラー固定部512以外の部分に荷重がかかるように、可動基板52上にスペーサー材(例えば、テフロン(登録商標)シート)を挟み込んだ状態で行うことが好ましい。
【0041】
〔6.本実施形態の作用効果〕
上述したように、本実施形態の測色センサー3では、可動基板52の突出部524は、筐体6に固定される固定部525と、この固定部525よりも厚み寸法が小さい振動防止部526を備えている。この振動防止部526は、固定部525よりも厚み寸法が小さいために、固定部525や可動基板52の他の部分よりも変形しやすい。したがって、外部から筐体6に振動が加わった場合、可動反射膜57および固定反射膜56が設けられた、可動基板52および固定基板51が対向する基板対向領域には、その場に留まろうとする力が働き、振動防止部526が撓んで振動を吸収する。これにより、基板対向領域における振動を抑制することができる。この振動防止部526は、外部から干渉フィルターへ伝達される振動のうち、可動基板52の基板厚み方向に沿った縦振動に対して、特にその振動の伝達を低減できる。
また、本実施形態では、可動基板52の振動防止部526には緩衝材7が設けられている。この緩衝材7、振動防止部526の振動に対して反力を与えることで、その振動を減衰させる。この緩衝材7は、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動のうち、可動基板52の基板厚み方向に対して直交する方向に沿った横振動に対して、特にその振動の伝達を低減できる。
以上により、本実施形態によれば、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動を効果的に低減することができ、光学ギャップを精度良く保持することができる光モジュールを得られる。
【0042】
本実施形態では、振動防止部526の厚み寸法が保持部522の厚み寸法と同一である。このような場合には、可動基板52を製造する際に、例えば母材520に対して同一深さ寸法だけエッチング処理することで、振動防止部526および保持部522を同時に形成することができる。そのため、測色センサー3の製造効率を向上させることができる。
【0043】
[第二実施形態]
次に本発明の第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
図6は、第二実施形態における干渉フィルターおよび筐体の概略構成を示す平面図であり、図7は、図6におけるVII−VII線に沿って切断した干渉フィルターおよび筐体の断面図である。なお、以降の説明において、前記第一実施形態と同様の構成については、同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
【0044】
本実施形態では、第一基板を固定基板51とし、第二基板を可動基板52としている点で、前記第一実施形態と相違する。すなわち、本実施形態では、図6および図7に示すように、固定基板51は、外周縁よりも外側に突出する突出部514が設けられており、この突出部514が筐体6に保持される構成となっている。
そして、この突出部514は、筐体6に固定される固定部515と、固定部515よりも厚み寸法が小さい振動防止部516とを備えている。固定部515は突出方向の先端側に設けられる。また、振動防止部516は固定部515よりも突出方向の基端側に設けられる。この振動防止部516により、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動を低減することができる。
この振動防止部516には、緩衝材7が設けられる。この緩衝材7は、振動防止部516が振動した際、振動に対する反力を振動防止部に与えて、振動防止部516の振動を減衰させる。これにより、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動を低減することができる。
【0045】
また、本実施形態では、図7に示すように、固定基板51の固定電極端子541Bが突出部514上に突出方向の先端側に向かって延出されている。これによれば、固定電極端子541Bが測色センサー3(光モジュール)の外面側にある突出部514まで延出されているために、端子実装がしやすくなる。特に、本実施形態のように、固定電極端子541Bの先端が、固定部515上まで延出する構成では、固定部515上で固定電極端子541Bに対する配線を実施することができる。この場合、配線作業時に、固定反射膜56や可動反射膜57が設けられた基板51,52の対向領域に応力が付与されないため、基板51,52の撓みを防止できる。
【0046】
また、本実施形態では、図6および図7に示すように、また、可動電極542は、配線溝に沿って延出される可動電極線542Aが、可動基板52の外周部に向かって形成されている。そして、この可動電極線542Aの先端である可動電極端子542Bが電圧制御部32に接続されている。なお、図7に示すように、この可動電極端子542Bは銀ペースト等の導電材58により固定電極端子541Bに接続され、この固定電極端子541Bを介して電圧制御部32に接続されている。
【0047】
(第二実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、前記第一実施形態と同様に、外部から干渉フィルター5へ伝達される振動を低減することができ、光学ギャップを精度良く保持することができる測色センサー3を得られる。
また、本実施形態によれば、固定基板51の固定電極541が基板対向領域から突出部514の突出方向の先端側に延出されている。これによれば、固定電極端子541Bが測色センサー3(光モジュール)の外面側にある突出部514に露出するため、端子実装がしやすくなる。
また、本実施形態によれば、可動電極542と固定電極541とは、これらの外周部において導電材58により接続されている。これによれば、可動電極542が、測色センサー3(光モジュール)の外面側にある突出部514に露出する固定電極端子541Bと接続されているため、端子実装がしやすくなる。
【0048】
[他の実施の形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0049】
例えば、前記実施形態では、固定電極541および可動電極542を静電アクチュエーター54の電極として使用したが、これに限らない。例えば、固定電極541および可動電極542を、反射膜間のギャップ寸法を測定するための静電容量測定電極や、帯電除去電極に接続される帯電除去引出電極として使用してもよい。
【0050】
前記第一実施形態では、可動基板52は2つの突出部524を備えているが、突出部524の数は特に限定されない。突出部524の数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。ここで、突出部524が3つ以上である場合には、特に限定されないが、それぞれを基板中心に対し点対称に設けることが好ましい。
前記第一実施形態では、可動基板52に2つの振動防止部526を、可動基板52の基板中心に対して点対称に設けているが、これに限らない。振動防止部526は、突出部524の固定部525よりも突出方向の基端側に適宜設けることができる。
また、前記第一実施形態では、振動防止部526の厚み寸法を保持部522の厚み寸法と同一としたが、これに限らない。
さらに、前記第一実施形態では、可動基板52の固定部525の厚み寸法を可動基板52の厚み寸法と同一としたが、これに限らない。例えば、固定部525の厚み寸法を可動基板52の厚み寸法よりも厚くしてもよく、薄くしてもよい。
【0051】
また、前記第一実施形態において、ミラー固定部512の可動基板52に対向するミラー固定面が、電極固定面よりも可動基板52に近接して形成される例を示したが、これに限らない。電極固定面およびミラー固定面の高さ位置は、ミラー固定面に固定される固定反射膜56、および可動基板52に形成される可動反射膜57の間のギャップの寸法、固定電極541および可動電極542の間の寸法、固定反射膜56や可動反射膜57の厚み寸法等により適宜設定される。したがって、例えば、電極固定面とミラー固定面とが同一面に形成される構成や、電極固定面の中心部に、円筒凹溝上のミラー固定溝が形成され、このミラー固定溝の底面にミラー固定面が形成される構成としてもよい。
【0052】
また、電極541,542間のギャップ(電極間ギャップ)が、反射膜56,57間のギャップ(ミラー間ギャップ)よりも大きい場合、ミラー間ギャップを変化させるために大きな駆動電圧が必要となる。これに対して、上記のように、ミラー間ギャップが、電極間ギャップよりも大きくなる場合、ミラー間ギャップを変化させるための駆動電圧を小さくでき、省電力化を図ることができる。また、このような構成の干渉フィルターは、ミラー間ギャップが大きいため、特に長波長域の分光特性測定に対して有効であり、例えば、上述したようなガス分析等に用いる赤外光分析や、光通信を実施するためのモジュールに組み込むことができる。
【0053】
さらに、干渉フィルター5の可動基板52にダイアフラム状の保持部522を設ける構成としたが、例えば可動部521の中心に対して点対称となる位置に設けられた複数の梁状の保持部を設ける構成としてもよい。
【0054】
また、前記第二実施形態では、固定基板51と筐体6により空間が画成されるが、この空間には、緩衝材7が満たされていてもよい。
このようにすれば、固定基板51と筐体6により画成される空間に満たされた緩衝材により、外部から干渉フィルターへ伝達される振動を低減できる。
【0055】
本発明の電子機器として、測色装置1を例示したが、その他、様々な分野により本発明の光モジュール、電子機器を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、本発明に係る干渉フィルターを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
このようなガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0056】
図8は、干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図9は、図8のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図8に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、干渉フィルター5、および受光素子137(受光部)等を含む検出部(光モジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッタ―135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
また、図9に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部138が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、図9に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、干渉フィルター5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0057】
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0058】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光を射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0059】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光が干渉フィルター5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、干渉フィルター5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光を干渉フィルター5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0060】
なお、上記図8,9において、ラマン散乱光を干渉フィルター5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器とする。このような構成でも、本発明に係る干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0061】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
以下に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0062】
図10は、干渉フィルター5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
この食物分析装置200は、図10に示すように、検出器210(光モジュール)と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光する干渉フィルター5と、分光された光を検出する撮像部213(受光部)と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、干渉フィルター5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0063】
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通って干渉フィルター5に入射する。干渉フィルター5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御して干渉フィルター5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0064】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにした得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0065】
また、図10において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる、また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0066】
さらには、本発明の光モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光モジュールに設けられた干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0067】
また、電子機器としては、本発明に係る干渉フィルターにより光を分光することで、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、干渉フィルターを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図11は、分光カメラの概略構成を示す模式図である。分光カメラ300は、図11に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部320とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部320に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、図11に示すように、対物レンズ321、結像レンズ322、およびこれらのレンズ間に設けられた干渉フィルター5を備えて構成されている。
撮像部320は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、干渉フィルター5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0068】
さらには、本発明に係る干渉フィルターをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを干渉フィルターで分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明に係る干渉フィルターを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0069】
さらには、光モジュールおよび電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、干渉フィルターにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0070】
上記に示すように、本発明の光モジュール、および電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明に係る干渉フィルターは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
【0071】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更できる。
【符号の説明】
【0072】
1…測色装置、3…測色センサー、5…干渉フィルター、6…筐体、7…緩衝材、51…固定基板、52…可動基板、56…固定反射膜、57…可動反射膜、524…突出部、525…固定部、526…振動防止部、541…固定電極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一反射膜を備える第一基板、および
前記第一反射膜にギャップを介して対向する第二反射膜を備える第二基板を備え、
前記第一基板と前記第二基板とが接合された状態にある干渉フィルターと、
前記干渉フィルターを保持する筐体と、を備え、
前記第一基板は、前記第二基板の外周縁よりも外側に突出する突出部を備え、
前記突出部は、
突出方向の先端側に設けられ、前記筐体に固定される固定部と、
前記固定部よりも突出方向の基端側に設けられ、前記固定部よりも厚み寸法が小さい振動防止部と、を備え、
前記振動防止部には緩衝材が設けられる
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光モジュールにおいて、
前記第一基板は、可動部と、前記可動部を前記第二基板に対して進退可能に保持し、前記可動部よりも厚み寸法が小さく形成された保持部と、前記保持部の外周部に設けられ、前記保持部よりも厚み寸法が大きく、前記第二基板に接合される接合部と、を備え、
前記振動防止部の厚み寸法は、前記保持部の厚み寸法と同一である
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の光モジュールにおいて、
前記第一基板は、第一電極を備え、
前記第一電極は、前記第二基板に対向する基板対向領域から前記突出部の突出方向の先端側に延出して設けられている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の光モジュールにおいて、
前記第二基板は、第二電極を備え、
前記第二電極は、前記第二基板の外周部に延出して設けられ、
前記第一電極と前記第二電極とは、前記外周部において導電材により接続されている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の光モジュールにおいて、
前記第一基板と前記筐体により画成される空間には、前記緩衝材が満たされている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の光モジュールにおいて
前記緩衝材が、樹脂系緩衝材、シリコン系緩衝材および金属系緩衝材からなる群から選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の光モジュールを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
第一反射膜を備える第一基板、および
前記第一反射膜にギャップを介して対向する第二反射膜を備える第二基板を備え、
前記第一基板と前記第二基板とが接合された状態にある干渉フィルターと、
前記干渉フィルターを保持する筐体と、を備え、
前記第一基板は、前記第二基板の外周縁よりも外側に突出する突出部を備え、
前記突出部は、
突出方向の先端側に設けられ、前記筐体に固定される固定部と、
前記固定部よりも突出方向の基端側に設けられ、前記固定部よりも厚み寸法が小さい振動防止部と、を備え、
前記振動防止部には緩衝材が設けられる
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光モジュールにおいて、
前記第一基板は、可動部と、前記可動部を前記第二基板に対して進退可能に保持し、前記可動部よりも厚み寸法が小さく形成された保持部と、前記保持部の外周部に設けられ、前記保持部よりも厚み寸法が大きく、前記第二基板に接合される接合部と、を備え、
前記振動防止部の厚み寸法は、前記保持部の厚み寸法と同一である
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の光モジュールにおいて、
前記第一基板は、第一電極を備え、
前記第一電極は、前記第二基板に対向する基板対向領域から前記突出部の突出方向の先端側に延出して設けられている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の光モジュールにおいて、
前記第二基板は、第二電極を備え、
前記第二電極は、前記第二基板の外周部に延出して設けられ、
前記第一電極と前記第二電極とは、前記外周部において導電材により接続されている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の光モジュールにおいて、
前記第一基板と前記筐体により画成される空間には、前記緩衝材が満たされている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の光モジュールにおいて
前記緩衝材が、樹脂系緩衝材、シリコン系緩衝材および金属系緩衝材からなる群から選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の光モジュールを備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−173349(P2012−173349A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32434(P2011−32434)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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