説明

光モジュールの製造方法

【課題】モニタ用の光を分岐させることが可能な光モジュールを簡単な工程で作成できるようにする。
【解決手段】光ファイバ保持孔111Hを備え、光ファイバ保持孔111Hの一方が開口している素子搭載面111Fを備えるフェルール本体部111を用意し、光ファイバ保持孔111Hの開口に発光素子102の発光部102aを対向させフェルール本体部111に発光素子102を実装し、光ファイバ保持孔111Hに光ファイバ104を挿入して先端を発光素子102の発光部102aに対向させ位置決めし、フェルール本体部111の側面から光ファイバ104の内部に至る切り欠き領域111Nを形成し、入射光の一部を光ファイバ104から分岐する光分岐部を設け、分岐されたモニタ光L103を受光する位置に受光素子103の受光部103aを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている光伝送装置は、光ファイバと、光学部材と、受光素子または発光素子とを備える。光ファイバは、クラッド層とコアとから成り、クラッド層が選択的に除去されている。光学部材は、光学的に透明な光学材料からなる。光学部材は、光ファイバのうちクラッド層が選択的に除去された部分に、近接または接触する。受光素子または発光素子は、光学部材に近接または接触する。
【0003】
特許文献2に記載されている光モジュールは、発光装置と、光ファイバと、光検出器とを含む。発光装置は面発光レーザを含む。光ファイバはコアおよびクラッドを含む。光ファイバは、面発光レーザから出射した光を端面のコア部分から入射する。光ファイバには、切り欠き部が設けられている。切り欠き部は、コア内を伝搬する光の一部を取り出すための光取出部となる。光検出器は、切り欠き部から出射した光を検出する。
【0004】
特許文献3に記載の光パワー監視器は、光検出器を備える。光検出器は、溝を覆うように実装される。溝は、光導波路プラットフォームの上部に、光導波路と直角方向に設けられる。光導波路は、光導波路プラットフォームに形成される。
【0005】
特許文献4に記載の光送受信モジュールは、発光素子及び受光素子が同一基板上に配置される。発光素子及び受光素子の上面に光ファイバが配置される。光ファイバに反射ミラーとハーフミラーが設けられる。反射ミラーは、発光素子の出射光を全反射させ光ファイバに入射させる。ハーフミラーは、光ファイバより入射された光を受光素子へ入射させる。
【0006】
特許文献5に記載の光モジュールは、発光素子アレイと、支持基板と、光導波路と、接着剤とを備える。支持基板には発光素子アレイが取り付けられる。光導波路は光結合面と反射面を有する。光結合面は発光素子アレイの発光面と光結合する。反射面は光結合面に対向する位置に設けられる。接着剤は発光面と光結合面とを接着する。接着剤は発光素子アレイの発光面と光導波路の光結合面との間に毛管力により供給される。
【0007】
特許文献6に記載の光電変換ヘッダーは、フェルールと電気配線と面型光素子とを具備してなる。フェルールは、光導波体を保持し位置決めする。光導波体の光入出力端は、素子搭載面から突出する。電気配線は、フェルールの素子搭載面に設けられる。面型光素子は、フェルールの素子搭載面に搭載され且つ電気配線に電気接続される。光導波体の光入出力端は、光導波体の光導波方向に対してほぼ垂直な端面を有する。フェルールの素子搭載面は光導波体の光導波方向に対して垂直な面から2度以上ずれた面である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−180659号公報
【特許文献2】特開2002−107583号公報
【特許文献3】特開2001−13339号公報
【特許文献4】特開2003−222761号公報
【特許文献5】特開2008−185601号公報
【特許文献6】特開2005−26211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
半導体レーザを用いて安定した光通信を行うためには、半導体レーザから発光される光の光パワーをモニタし、モニタ結果に従って半導体レーザの出力を調節することが必要である。端面発光型レーザにおいては、二つの共振器端面の一方の面を通信用の光の発光面とし、もう一方の面をモニタ用の光の発光面とすることができる。しかしながら、表面発光型レーザにおいては、レーザ本体からモニタ用の光を直接取り出すことができない。したがって、通信用の光からモニタ用の光を分岐させることが必要となる。モニタ用の光を分岐させるためには、多数の部材が必要である。多数の部材の位置決めを行う工程は複雑である。また、レーザからも受光素子までの光路長も長くなりがちである。
【0010】
例えば特許文献3に記載の光導波路における伝搬光を分岐する構成では、発光素子から光分岐部へ至る光路長を短くすることを低コストに実現することが難しく、例えば特許文献5の図に記載のように先端を斜めにカットした光導波路を吸着ツールを用いて把持し、正確に実装することが考えられる。しかしながら、このような工程は煩雑で、製造コストが高くなる。
【0011】
特許文献1,2,4には、光路からモニタ光を分岐して、モニタ用受光素子に結合する、という従来より提案されている構成を示しているが、発光素子から受光素子へ至る光路長を短くした構成を、簡単に形成する方法については詳細に検討されていない。即ち、発光素子、光導波体及び受光素子を容易に位置決めし、精度良くモニタ光を光路から切り出すことを可能にする構成を開示していない。
【0012】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、半導体レーザから光ファイバに入射する光からモニタ用の光を分岐できる光モジュールを比較的に簡単な工程によって作製できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の光モジュールの製造方法は、光ファイバが挿入される光ファイバ保持孔と前記光ファイバ保持孔の一方が開口している素子搭載面とを備えるフェルール本体部を用意する第1工程と、前記素子搭載面における前記光ファイバ保持孔の開口位置に発光素子の発光部を対向させ、前記フェルール本体部に前記発光素子を実装する第2工程と、前記光ファイバ保持孔に光ファイバを挿入し、前記光ファイバの先端を前記発光素子の発光部に対向した状態で固着する第3工程と、前記フェルール本体部の側面から前記光ファイバの内部に至る切り欠き領域を形成し、前記発光部から前記光ファイバに入射した入射光の一部を前記光ファイバ内の光路から分岐する光分岐部を設ける第4工程と、備え、前記光分岐部からの分岐光を受光する位置に受光素子の受光部が配置される、ことを特徴とする。
【0014】
フェルール本体部の素子搭載面における光ファイバ保持孔の開口位置に発光部が対向するよう発光素子を実装すること、および、光ファイバ先端を発光素子の発光部に対向させて位置決めすることは容易である。さらに、フェルール本体部の側面から光ファイバの内部に至る切り欠き領域を含む光分岐部を形成し、光分岐部からの分岐光を受光する位置に受光素子の受光部を配置することも容易である。したがって、発光素子が表面発光型レーザであっても、モニタ用の光を取り出すことできる光モジュールを、低コストに作製することが可能となる。
【0015】
また、本発明の光モジュールの製造方法においては、前記第4工程は、前記切り欠き領域を形成した後に、前記切り欠き領域における前記入射光の前記光路上に光分岐材を設け、前記光分岐材は、プリズム、回折格子及びハーフミラーのいずれかであるのが好ましい。入射光の光路上に光分岐材が設けられるので、より確実にモニタ光を分岐させることが可能となる。また、特定波長の光のみを取り出すことも可能となる。
【0016】
さらに、本発明の光モジュールの製造方法においては、前記第4工程は、前記受光素子が実装された前記光分岐材を前記切り欠き領域における前記光路上に設けるのが好ましい。受光素子を光分岐材により分岐される光の光路に予め実装しておけば、光分岐材を設けた後に受光素子を実装する必要がなくなり、歩留まりを向上することができる。
【0017】
一方、本発明の光モジュールの製造方法において、前記光ファイバはコア部と、コア部を包囲するクラッド部とを備え、前記切り欠き領域は、前記フェルール本体部の側面から前記クラッド部の内部に至るまで形成されており、前記光分岐部は、前記クラッド部のうち前記切り欠き領域に含まれている部分である、とすることができる。従って、光分岐部が光分岐材を含まずに切り欠き領域のみからなるので、より低コスト化が可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光路からモニタ用の光を分岐できる光モジュールを比較的に簡単な工程によって作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る光モジュールの断面構造を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る光モジュールの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】第1実施形態に係る光モジュールの製造方法を、光モジュールの断面構造を用いて説明するための図である。
【図4】第1実施形態に係る光モジュールの製造方法を、光モジュールの断面構造を用いて説明するための図である。
【図5】第2実施形態に係る光モジュールの製造方法を、光モジュールの断面構造を用いて説明するための図である。
【図6】第2実施形態に係る光モジュールの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】第3実施形態に係る光モジュールの製造方法を、光モジュールの断面構造を用いて説明するための図である。
【図8】第3実施形態に係る光モジュールの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、可能な場合には、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る光モジュールの製造方法を説明するのに先立ち、この製造方法によって製造される光モジュール101の構成を、図1を用いて説明する。第1実施形態に係る光モジュール101の断面構造を図1に示す。光モジュール101は、フェルール本体部111、発光素子102、受光素子103、光ファイバ104及びプリズム105(光分岐材)を備える。
【0022】
フェルール本体部111は、光ファイバ保持孔111Hを備える。図中、光ファイバ保持孔111Hは奥行き方向(紙面に垂直方向)に複数設けられている。光ファイバ保持孔111Hの一方は、素子搭載面111Fに開口している。素子搭載面111Fには金やアルミ等の金属で構成されたリードフレーム112が設けられており、リードフレーム112は、素子搭載面111Fと異なる側面Fa11に延出形成されている延出部112aを含んでいることが好ましい。光モジュール101を図示せぬ電気基板に実装した際に、側面Fa11におけるリードフレーム112の延出部112aは、この電気基板上の電気配線と、ワイヤボンディングなどを介して電気的に接続することが可能となる。さらに、フェルール本体部111には、フェルール本体部111の側面Fa12から光ファイバ104の内部に至る切り欠き領域111Nが設けられている。切り欠き領域111Nにはプリズム105が挿入されている。切り欠き領域111Nの形状は、プリズム105の形状にあわせてある。
【0023】
発光素子102は、発光部102aと、図示せぬ電極部とを備える。発光素子102は、フェルール本体部111の素子搭載面111Fに搭載され、発光素子102は、光ファイバ保持孔111Hと対向するよう位置決めされている。また、発光素子102は、素子搭載面111Fに露出するリードフレーム112と、バンプ1021を介して電気的に接続されている。このように構成することで、発光素子102は、リードフレーム112を介して外部の駆動IC等とワイヤボンディング等により電気的に接続可能である。
【0024】
プリズム105は、金やアルミ等の金属で構成されたバンプパッド1051がフェルール本体部111の側面Fa12に露出するよう形成されている。受光素子103は、受光部103aと、図示せぬ電極部とを備えており、プリズム105の反射面105aによって分岐されたモニタ光L103が受光素子103の受光部103aに入射するような位置に設けられる。受光素子103における電極部はバンプ1031を介してバンプパッド1051と電気的に接続されている。このように構成することで、受光素子103は、バンプパッド1051を介して外部の駆動IC等と電気的に接続され得る。
【0025】
光ファイバ104は、コア部と、コア部の外周に設けられておりコア部を包囲するクラッド部とを備えるものであり、石英系光ファイバ、プラスチック光ファイバなど、材料は問わない。また、シングルモード伝送ファイバ、マルチモード伝送ファイバなど、いずれの光ファイバであっても適用され得る。この光ファイバ104は、フェルール本体部111の光ファイバ保持孔111Hの中に設けられている。光ファイバ104は切り欠き領域111Nにより一端側と他端側が分断されており、一端はフェルール本体部111の素子搭載面111Fに位置する。プリズム105は、光分岐材として機能し得る。
【0026】
切り欠き領域111Nとプリズム105とは、発光素子102からの入射光の一部を分岐する光分岐部を構成する。切り欠き領域111Nに装填されたプリズム105は、入射光L101を通信光L102とモニタ光L103とに分岐する。入射光L101は、発光素子102の発光部102aから光ファイバ104に入射する光である。通信光L102は、プリズム105を透過し、光ファイバ104へ伝搬する光である。モニタ光L103は、プリズム105において光路変換され、受光素子103の受光部103aへ入射する光である。即ち、モニタ光L103は、入射光L101の一部を光ファイバ104内の光路から分岐して得られる。
【0027】
次に、第1実施形態に係る光モジュールの製造方法を、図2〜4を参照して説明する。図2は、第1実施形態に係る光モジュールの製造方法を説明するためのフローチャートである。また、図3及び図4は、第1実施形態に係る光モジュールの製造方法を光モジュールの断面構造を用いて説明するための図である。図3は、図2のステップS103までが終了した段階における、光モジュール101の仕掛品101aの断面構造を示し、図4は、図2のステップS104の処理が行われている段階における、光モジュール101の仕掛品101bの断面構造を示す。以下、図2のフローチャートに沿って、第1実施形態に係る光モジュールの製造方法を説明するが、ステップS101〜S103は、図2及び図3を参照して説明し、ステップS104a以降は、図2〜図4を参照して説明する。
【0028】
(第1工程)
まず、ステップS101において、リードフレーム112および光ファイバ保持孔111Hを備えるフェルール本体部111aを用意する。フェルール本体部111aはPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂やPEI(ポリエーテルイミド)樹脂などの成形過程における寸法精度が良好で線膨張係数が小さい樹脂により構成することが好ましい。フェルール本体部111aは射出形成により形成することが好ましく、所定の形状に折曲加工・打抜き加工したリードフレーム112とともにインサート成形することが好ましい。
【0029】
(第2工程)
ステップS101の後、ステップS102において、フェルール本体部111aの素子搭載面111Fにおける光ファイバ保持孔111Hの開口位置(図中符号H1に示す箇所)に、発光素子102の発光部102aを対向させ、発光素子102をフェルール本体部111aに実装する。発光素子102の具体的な実装方法は以下の通りである。まず、発光素子102の図示せぬ電極部にバンプ1021を形成する。バンプ1021は金やアルミなどの金属で構成され、めっき法やスタッドバンプ法など、公知の手法により形成され得る。次に、発光素子102のバンプ1021をリードフレーム112に接合する。バンプ1021とリードフレーム112との接合は公知のフリップチップ実装方法を適用することができ、発光素子102を、超音波を印加可能なボンディングツールに吸着し、発光部102aが光ファイバ保持孔111Hの開口位置に配置されるようにした状態で、ボンディングツールから発光素子102に超音波を印加させながら押圧することで、バンプ1021とリードフレーム112との接合が可能となる。なお、超音波の印加は任意であり、超音波の印加に替えて、加熱しながらバンプ1021をリードフレーム112に押し付ける熱圧着を適用しても良い。
【0030】
(第3工程)
ステップS102に続いて、ステップS103においては、光ファイバ保持孔111Hに光ファイバ104aを挿入し、光ファイバ104aの先端を発光素子102の発光部102aに対向するように位置決めする。そして、この位置決めされた状態を維持しつつ、フェルール本体部111aの図示せぬ接着剤投入穴から熱硬化性樹脂である接着剤を投入し、光ファイバ保持孔111Hに充填する。その後、フェルール本体部111aを所定温度に加熱して接着剤を硬化し、光ファイバ104aを光ファイバ保持孔111Hに固着する。
【0031】
(第4工程)
ステップS103の後、ステップS104において光分岐部を設ける処理を行う。ステップS104は、ステップS104a及びS104bを順に含む。まず、ステップS104aにおいて、フェルール本体部111aに切り欠き領域111Nを形成する。切り欠き領域111Nの形成方法としては、具体的にはドリルなどを用いた機械加工がある。所望の形状のブレードを、フェルール本体部111aに対し、紙面に垂直方向に移動させることによって、切り欠き領域111Nを形成することが好ましい。切り欠き領域111Nは、フェルール本体部111aの側面から光ファイバ104の内部に至る。切り欠き領域111Nは、図4に示すように光ファイバ104を素子搭載面111F側とその後方側とに分断するように形成されても良いし、光ファイバ104の内部における一部まで至るように(分断しないように)形成されても良い。切り欠き領域111Nは、光分岐部の機能を実現するために、光ファイバ104内の光路(入射光L101の光路)の少なくとも一部に至るように形成され、この光路からモニタ光L103を切り出すことができれば良い。このようにして形成された切り欠き領域111Nは、入射光L101の一部を光ファイバ104内の光路から分岐し、モニタ光L103とすることができる。ステップS104aによって、切り欠き領域111Nを有するフェルール本体部111が形成される。
【0032】
ステップS104aの後、ステップS104bにおいては、ステップS104aにおいて切り欠き領域111Nを形成した後に、切り欠き領域111Nにおける入射光L101の光路上に、受光素子103が実装されたプリズム105を設ける。すなわち、プリズム105を切り欠き領域111Nに搭載する前に、受光素子103をプリズム105に実装する。この場合、受光素子103の受光部103aは、光分岐部からの分岐光(モニタ光L103)を受光する位置に配置される。好ましい実施形態においては、まず光分岐部からの分岐光の光路(モニタ光L103の光路)を特定し、プリズム105におけるその光路に対応する位置に、受光部103aが配置されるよう受光素子103を実装する。具体的には、まずプリズム105にバンプパッド1051をフェルール本体部111の側面Fa12に露出する面に形成しておく。バンプパッド1051は金やアルミなどの金属であり、めっきにより形成することができる。一方、受光素子103の図示せぬ電極部にバンプ1031を形成しておき、バンプ1031とバンプパッド1051とを公知のフリップチップ実装方法により接合すれば良い。
【0033】
次に、第1実施形態に係る光モジュール101の製造方法の効果を説明する。まず、フェルール本体部111の素子搭載面111Fにおける光ファイバ保持孔111Hの開口位置(図中符号H1に示す箇所)に発光部102aが対向するよう発光素子102を実装すること、および、光ファイバ104の先端を発光素子102の発光部102aに対向させて位置決めすることは容易である。さらに、フェルール本体部111の側面から光ファイバ104の内部に至る切り欠き領域111Nを含む光分岐部を形成し、光分岐部からの分岐光(モニタ光L103)を受光する位置に受光素子103の受光部103aを配置することも容易である。したがって、発光素子102が表面発光型レーザであっても、モニタ用の光を取り出すことできる光モジュール101を、低コストに作製することが可能となる。そして、光モジュール101は、発光素子102からの入射光L101を分岐させてモニタ光L103とするため、発光素子102が一方向にしか発光しない表面発光型レーザであっても、モニタ光を得ることができる。
【0034】
さらに、入射光L101の光路上にプリズム105(光分岐材)が設けられるので、より確実にモニタ光L103を分岐させることが可能となる。また、特定波長の光のみを取り出すことも可能となる。そして、受光素子103をプリズム105により分岐される光の光路(モニタ光L103の光路)に予め実装しておけば、プリズム105を設けた後に受光素子103を実装する必要がなくなり、歩留まりを向上することができる。
【0035】
さらに、発光素子102はフェルール本体部111の素子搭載面111Fの上に実装されており、受光素子103はプリズム105に実装されているため、発光素子102から受光素子103までの光路長も比較的に短くなる。
【0036】
さらに、第1実施形態においては、発光素子102、光ファイバ104、受光素子103の位置決め工程を、順に1素子ずつについて行うため、一度に複数の素子の位置決めを行う場合に比較して、製造工程が簡単である。即ち、特許文献3のような光導波路を使用する形態では、発光素子として表面発光型レーザを用いると、光路を短く結合するためには、特許文献5に示したような実装工程を経る必要があり、製造コストが増大する。この点、光ファイバ保持孔を備えるフェルールに対して発光素子を搭載し、当該光ファイバ保持孔に光ファイバを挿入して光ファイバと発光素子とを光学的に結合するので、低コストを実現でき、かつ、光路を短く設定し得る。一方、特許文献1,4,5に示した形態では、光入射部およびモニタ光出射部を設定し、その後、複数の素子の位置決めを行う必要があり、その詳細な工程について教示されていないため、製造コストの低減が困難である。さらに、第1実施形態においては、受光素子103の位置決めはフェルール本体部111ではなくプリズム105に対して行えばよいため、位置決め工程が一層簡単なものとなる。
【0037】
なお、変形例として、受光素子103をプリズム105に実装する前に、まず、プリズム105を、切り欠き領域111Nにおける入射光L101の光路上に先に挿入(搭載)した後に、受光素子103の受光部103aが分岐光L103を受光できるように受光素子103を配置しても良い。この変形例と上記第1実施形態との相違点は、プリズム105を切り欠き領域111Nに搭載する前後のいずれのタイミングにおいて受光素子103をプリズムに実装するか、という点である。この点、受光素子103の実装はフリップチップ実装によるものであるから、フェルール本体部111に実装されている発光素子102に超音波等による負荷を与えないために、上記第1実施形態のように、プリズム105を切り欠き領域111Nに挿入(搭載)する前に、受光素子103をプリズム105に実装することが好ましい。
【0038】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る光モジュールの製造方法を、図5及び図6を参照して説明する。図5は、第2実施形態に係る光モジュールの製造方法を、光モジュールの断面構造を用いて説明するための図である。図6は、第2実施形態に係る光モジュールの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0039】
まず、図5を参照し、光モジュール201の構成を説明する。光モジュール201は、フェルール本体部211、発光素子102、受光素子203、光ファイバ104及びハーフミラー206(光分岐材)を備える。
【0040】
第1実施形態における光モジュール101と第2実施形態における光モジュール201との違いは、光モジュール101が切り欠き領域111Nにプリズム105を設けているのに対し、光モジュール201は、光分岐材として、プリズム105に代えて、ハーフミラー206を切り欠き領域211Nに設けている点である。第2実施形態における光分岐部は、切り欠き領域211Nと、ハーフミラー206等の光分岐材とからなる。そして、第1実施形態の場合、受光素子103はプリズム105に実装されるのに対し、第2実施形態に係る光モジュール201の場合には、プリズム105が用いられていないので、受光素子203はフェルール本体部211に実装される。即ち、フェルール本体部211の側面Fa21にはバンプパッド213が露出するよう形成されており、受光素子203は、受光部203aと、図示せぬ電極部とを備えており、受光素子203は、バンプ2031を介してバンプパッド213と電気的に接続されてフェルール本体部211に実装されている。このように構成することで、受光素子203は、バンプパッド213を介して外部の駆動IC等と電気的に接続され得る。
【0041】
バンプパッド213は、切り欠き領域211Nの開口を挟む両側に設けられている。バンプパッド213は、側面Fa21において切り欠き領域211Nから離れる方向に延びている延出部213aを含んでいることが好ましい。光モジュール201を図示せぬ電気基板に実装した際に、バンプパッド213の延出部112aは、この電気基板上の電気配線と、ワイヤボンディングなどを介して電気的に接続することが可能となる。
【0042】
ハーフミラー206は、例えば公知の誘電体多層膜で構成され、発光素子102から入射した入射光L201の一部(例えば5%程度)を反射する一方、残りの光を通信光L202として透過する。即ち、光分岐材であるハーフミラー206は、反射光をモニタ光L203として切り出す一方、通信光L202を透過して光ファイバ104へ導く。
【0043】
次に、第2実施形態に係る光モジュールの製造方法を、図6を参照しながら以下で説明する。図6は、第2実施形態に係る光モジュールの製造方法を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS201において、リードフレーム112、バンプパッド213及び光ファイバ保持孔(後の工程において、図5に示す光ファイバ保持孔211Hとなるものであって、第1実施形態に係る光ファイバ保持孔111Hに対応している)が設けられた図示しないフェルール本体部(後の工程において、図5に示すフェルール本体部211となるものであって、第1実施形態に係るフェルール本体部111aに対応している)を用意する。
【0044】
ステップS201の後、ステップS202において、第1実施形態に係るステップS102と同様の処理を行う。特に、素子搭載面211Fにおいて、光ファイバ保持孔の開口位置(図3の図中符号H1に示す箇所を参照)に、バンプ1021が設けられた発光素子102の発光部102aを対向させ、ステップS201において用意したフェルール本体部に発光素子102を実装する。
【0045】
ステップS202に続いて、ステップS203においては、第1実施形態に係るステップS103と同様の処理を行う。特に、ステップS201において用意したフェルール本体部の光ファイバ保持孔に光ファイバを挿入し、この光ファイバの先端を発光素子102の発光部102aに対向するように位置決めする。
【0046】
ステップS203の後、ステップS204において光分岐部を設ける処理を行う。ステップS204は、ステップS104a〜S104cを順に含む。まず、ステップS204aにおいては、ステップS201において用意したフェルール本体部の側面から光ファイバの内部に至る切り欠き領域211Nを形成する。切り欠き領域211Nの形成方法は、第1実施形態に係るステップS104aにおける切り欠き領域111Nの形成方法と同様であり、切り欠き領域211Nの寸法及び形状は、第1実施形態に係る切り欠き領域111Nと同様である。ステップS204aによって、切り欠き領域211Nを有するフェルール本体部211が形成される。
【0047】
ステップS204aの後、ステップS204bにおいては、切り欠き領域211Nにおける入射光L201の光路上に、光分岐材としてハーフミラー206を設ける(例えば透明樹脂による接着)。そして、ステップS206において、ハーフミラー206により分岐されたモニタ光L203を受光する位置に受光素子203の受光部203aが配置されるように、受光素子203をフェルール本体部211にフリップチップ実装する。具体的には、フェルール本体部211には、切り欠き領域211Nを挟む両側にバンプパッド213を設けておき、一方、受光素子203の図示せぬ電極部にバンプ2031を形成する。そして、バンプパッド213をバンプ2031に第1実施形態と同様にフリップチップ実装する。以上の工程を経て、光モジュール201が完成する。
【0048】
なお、光分岐材としてハーフミラー206を使用したが、ハーフミラー206に代えて回折格子を使用してもよい。回折格子を使用する場合には、特定の波長の光のみをモニタ光L203として分岐させて、当該波長の光だけの光パワーをモニタすることも可能となる。
【0049】
以上説明した第2実施形態に係る光モジュールの製造方法は、上記の第1実施形態に係る光モジュールの製造方法と同様の効果を奏する。
【0050】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る光モジュールの製造方法を、図7及び図8を参照して説明する。図7は、第3実施形態に係る光モジュールの製造方法を、光モジュールの断面構造を用いて説明するための図である。図8は、第3実施形態に係る光モジュールの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0051】
まず、図7を参照し、光モジュール301の構成を説明する。光モジュール301は、フェルール本体部311、発光素子102、受光素子303及び光ファイバ304を備える。
【0052】
第1実施形態の光モジュール101及び第2実施形態の光モジュール201と第3実施形態の光モジュール301との違いは、光モジュール101及び光モジュール201がそれぞれプリズム105やハーフミラー206などの光分岐材を用いていたのに対し、光モジュール301では、このような光分岐材を用いていない。すなわち、光モジュール301の光分岐部は、切り欠き領域311Nのみからなる。光モジュール301は、フェルール本体部311に光分岐部としての切り欠き領域311Nを備える。
【0053】
光ファイバ304は、コア部と、コア部の外周に設けられておりコア部を包囲するクラッド部とを備え、少なくともクラッド部の一部に至る切り欠き領域311Nが形成されている。このように形成された切り欠き領域311Nは、発光素子102からクラッド部に入射した入射光L301であるクラッドモード光や、コア部からクラッド部に染み出るエバネッセント光をモニタ光L303として分岐することができる。分岐されたモニタ光L303を受光素子303に受光させることにより、発光素子102から光ファイバ304への入射光L301の光パワーをモニタすることができる。また、入射光L301のうち光分岐部によって分岐されなかった通信光L304は、光ファイバ304を伝搬する。
【0054】
光モジュール301の製造方法を、図8を参照しながら以下で説明する。まず、ステップS301において、リードフレーム112及び光ファイバ保持孔(後の工程において、図7に示す光ファイバ保持孔311Hとなるもの)が設けられた図示しないフェルール本体部(後の工程において、図7に示すフェルール本体部311となるもの)を用意する。
【0055】
ステップS301の後、ステップS302において、第1実施形態に係るステップS102と同様の処理を行う。特に、素子搭載面311Fにおいて、光ファイバ保持孔の開口位置(図3の図中符号H1に示す箇所を参照)に、バンプ1021が設けられた発光素子102の発光部102aを対向させ、ステップS301において用意したフェルール本体部に発光素子102を実装する。
【0056】
ステップS302に続いて、ステップS303においては、第1実施形態に係るステップS103と同様の処理を行う。特に、ステップS301において用意したフェルール本体部の光ファイバ保持孔に光ファイバを挿入し、この光ファイバの先端を発光素子102の発光部102aに対向するように位置決めする。
【0057】
ステップS303の後、ステップS304において光分岐部を設ける処理を行う。ステップS304は、ステップS304a及びS304bを順に含む。まず、ステップS304aにおいては、ステップS301において用意したフェルール本体部の側面から光ファイバのクラッド部の内部に至るまで切り欠き領域311Nを形成する。切り欠き領域311Nの形成方法は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、ドリルなどを用いた機械加工が適用できる。切り欠き領域311Nは、所望の形状のブレードを、フェルール本体部に対し、紙面に垂直方向に移動させることによって形成することが好ましい。光ファイバ304のクラッド部のうち切り欠き領域311Nに含まれている部分は、光ファイバ304に入射する入射光L301の一部を光ファイバ304の光路から分岐してモニタ光L303とする光分岐部の機能を有する。ステップS304aによって、切り欠き領域311Nを有するフェルール本体部311が形成される。
【0058】
ステップS304aの後、ステップS304bにおいて、受光素子303を、光分岐部の機能を有する切り欠き領域311Nに対向させ、切り欠き領域311Nからのモニタ光L303を受光する位置に受光素子303の受光部303aを配置する。受光素子303の具体的な実装方法は以下の通りである。まず受光素子303の図示せぬ電極部にバンプ3031を形成する。受光素子303は、表面に受光部303aを備えており、裏面に設けられたバンプ3031と、図示せぬ電極部を介して電気的に接続されている。次に、電気配線3071が形成された基板307を用意する。そして、受光素子303のバンプ3031を基板307上の電気配線3071にフリップチップ実装する。受光素子303を基板307に実装した後、受光素子303にフェルール本体部311の切り欠き領域311Nを収容するように配置し、フェルール本体部311を基板307に接着する。フェルール本体部311を基板307に接着するとき、受光素子303の受光部303aを、モニタ光L303を受光することが可能な位置になるように調整する。以上の工程を経て、光モジュール301が完成する。
【0059】
以上のように、第3実施形態に係る製造方法によれば、切り欠き領域311Nのみによって光分岐部としての機能を発揮し、発光素子102から光ファイバ304への入射光L301を分岐させて受光素子303へ入射するモニタ光L303を得ることのできる光モジュール301を製造することが可能となる。このような構成であれば、光分岐部が光分岐材を含まずに切り欠き領域のみからなるので、より低コスト化が可能である。さらに、受光素子303は基板307の電気配線部3071に直接実装することができるから、フェルール本体部やプリズムに設けたバンプパッドからワイヤボンディング等により基板の電気配線部と電気的に接続する形態に比較して、配線の短距離化による高周波伝送特性の向上、デバイスの小型化が可能となる。なお、第3実施形態に係る光モジュールの製造方法は、上記の第1実施形態に係る光モジュールの製造方法と同様の効果を奏する。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明に係る光モジュールの製造方法には種々の変更を行うことができる。例えば、第1実施形態において、受光素子103をプリズム105に実装するものとして説明を行った。しかし、受光素子103をプリズム105に実装するのではなく、第2実施形態と同様に受光素子103をフェルール本体部111に実装してもよいし、第3実施形態のように、受光素子103を別の基板に実装した上で、当該基板にフェルール本体部111を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
101,201,301…光モジュール、102…発光素子、1021…発光素子のバンプ、102a…発光部、103,203,303…受光素子、103a,203a,303a…受光部、1031,2031,3031…受光素子のバンプ、104,104a,304…光ファイバ、105…プリズム、1051…プリズムのバンプパッド、111,211,311…フェルール本体部、112,213…リードフレーム、112a…延出部分、111H,211H,311H…光ファイバ保持孔、111N,211N,311N…切り欠き部、206…ハーフミラー、307…基板、3071…基板のバンプパッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバが挿入される光ファイバ保持孔と前記光ファイバ保持孔の一方が開口している素子搭載面とを備えるフェルール本体部を用意する第1工程と、
前記素子搭載面における前記光ファイバ保持孔の開口位置に発光素子の発光部を対向させ、前記フェルール本体部に前記発光素子を実装する第2工程と、
前記光ファイバ保持孔に光ファイバを挿入し、前記光ファイバの先端を前記発光素子の発光部に対向した状態で固着する第3工程と、
前記フェルール本体部の側面から前記光ファイバの内部に至る切り欠き領域を形成し、前記発光部から前記光ファイバに入射した入射光の一部を前記光ファイバ内の光路から分岐する光分岐部を設ける第4工程と、を備え、
前記光分岐部からの分岐光を受光する位置に受光素子の受光部が配置される、ことを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第4工程は、前記切り欠き領域を形成した後に、前記切り欠き領域における前記入射光の前記光路上に光分岐材を設け、
前記光分岐材は、プリズム、回折格子及びハーフミラーのいずれかである、ことを特徴とする請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記第4工程は、前記受光素子が実装された前記光分岐材を前記切り欠き領域における前記光路上に設ける、ことを特徴とする請求項2に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記光ファイバはコア部と、コア部を包囲するクラッド部とを備え、
前記切り欠き領域は、前記フェルール本体部の側面から前記クラッド部の内部に至るまで形成されており、
前記光分岐部は、前記クラッド部のうち前記切り欠き領域に含まれている部分である、ことを特徴とする請求項1に記載の光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−45025(P2013−45025A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184170(P2011−184170)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】