説明

光モジュール

【課題】光学部品を台座を介して筐体に固定した光モジュールにおいて、固定された台座を容易に取り外す。
【解決手段】光学部品と、光学部品を所定の光軸位置に保持して筐体に固定する台座10Aと、を備え、台座10Aの一部に、該台座10Aを筐体に固定した状態で該台座10Aを該筐体から引き離す方向に力を作用させる部位11A−1を有する切り欠き部11Aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台座を介して光学部品を筐体に固定した構成の光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザや光導波路素子、レンズ等を筐体の内部に固定して構成された光モジュールが実用化されている。このような光モジュールの一例として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された光モジュールは、レンズ等の光学素子を取り付けたホルダを横方向から2つの台座で挟み込み、ホルダと台座と筐体とをレーザ溶接あるいは接着剤などによって接合した構成である。この2つの台座は、互いの斜面間の距離及び位置が固定時に調整される。これにより、光学素子の光軸合わせをすることが可能となっている。
【特許文献1】特開2004−286966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような光軸合わせの後、台座とホルダを固定する製造工程では、台座を、その傾斜面がホルダの角一辺と隙間無く接触する位置に調整することが重要である。接触が不十分な場合は、接合時に強い応力が生じ、光学部品の位置や角度が変わることで光路が大きくずれ、そのままでは次の製造工程に進むことが出来ない。そのような場合、台座とホルダを筐体から一度取り外せば、再度位置調整をして接合をやり直すことが出来る。
【0004】
しかしながら、特許文献1の図2に示されるように、台座は光学素子の光軸合わせを可能とするためその側面が斜面で形成された楔形の形状をしており、そのため、接合後に光軸を再調整する必要が生じた場合、台座を工具で挟んで筐体から取り外す等の方法がとられており、非常に手間がかかるという問題がある。また、無理矢理取り外そうとすると、工具が滑ったりして近くの別の光学素子を破壊してしまうこともある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学部品を台座を介して筐体に固定した光モジュールにおいて、固定された台座を容易に取り外すことを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、光学部品を筐体内に固定してなる光モジュールにおいて、前記光学部品と、前記光学部品を所定の光軸位置に保持して前記筐体に固定する台座と、を備え、前記台座の一部に、該台座を前記筐体に固定した状態で該台座を該筐体から引き離す方向に力を作用させる部位を有する切り欠き部を設けたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記の光モジュールにおいて、前記切り欠き部は、前記筐体に固定される前記台座の固定面外縁部に沿って設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記の光モジュールにおいて、前記切り欠き部は、前記筐体に固定される前記台座の固定面外縁部から該固定面の内側に向かって溝状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の光モジュールにおいて、前記光学部品は、複数の前記台座によって挟み込まれた状態で保持され、前記切り欠き部は、前記複数の台座の互いに向かい合った前記外縁部に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の光モジュールにおいて、前記切り欠き部は、前記筐体に固定される固定面とは異なる面から該台座の内部へ向かって形成された穴又は溝であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の光モジュールにおいて、前記穴は、前記固定面まで貫通して形成され、その内面にねじ溝が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、台座に設けた切り欠き部に対して台座を筐体から引き離す方向に力を作用させることができるので、筐体に固定された台座を容易に取り外すことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による光モジュールの内部の概略構成を示す斜視図である。この光モジュールは、例えばレーザダイオード等の光源から出力された光をレンズ21によって集光し、光導波路素子30に形成された光導波路31へ入射させるものである。なお、本実施形態では、レンズ21(光学部品20)によって光源からの出力光を集光する場合の構成を説明するが、本発明は、レンズ21(光学部品20)によって光源からの出力光をコリメートする場合にも適用可能である。
【0014】
図1において、レンズ21は、光学素子ホルダ22と一体になって光学部品20をなしている。この光学部品20は、対向した2つの台座10Aによって挟持されて、それら台座10A上に固定されている。各台座10Aは、その1つの面10A−1が固定基台1に対して傾斜した傾斜面となっており、この傾斜面10A−1がそれぞれ上記光学素子ホルダ22の角をなす1つの辺と接触することにより、光学部品20を挟持している。また、台座10Aは、固定基台1上に固定されている。台座10Aの傾斜面10A−1は、入射光および光導波路31の光軸と平行であり、これによりレンズ21の光軸が入射光および光導波路31の光軸と平行(図中のZ軸方向)になるようになっている。
【0015】
光学部品20は、2つの台座10A間の距離を変えることで、上記傾斜面10A−1と光学素子ホルダ22の角部との接触位置が変わり、固定基台1に対する高さ(図中のY軸方向の位置)が変化する。これにより、レンズ21の光軸高さを調整することができる。
また、光学部品20と各台座10Aとを一体に動かすことで、レンズ21の光軸を平行移動(図中のX軸方向)させることもできる。このようにして、レンズ21の光軸と光導波路31の光軸とを合わせる。
【0016】
図2は、光モジュール内に固定された光学部品20及び台座10Aの部分のみを示している。図2(A)は光モジュール内を上から見た上面図、図2(B)は光モジュールを光軸方向から見た正面図である。光学部品20は、光学素子ホルダ22の角と台座10Aの傾斜面10A−1との接触部分を数箇所レーザ溶接することで、台座10Aに接合されている。また、各台座10Aは、上記傾斜面10A−1とは異なる1つの面10A−2(固定面)と固定基台1の表面とを密着させるように配置し、この固定面10A−2の外縁部(外周部)を数箇所レーザ溶接することで、固定基台1に接合されている。但し、2つの台座10Aの互いに向かい合った辺は、上部に配置された光学部品20に隠れる位置となるため、溶接は行われない。
なお、本実施形態では、台座10Aを固定基台1に溶接して固定する場合を説明するが、固定方法は溶接に限定されず、例えば接着剤を用いて固定する方法としてもよい。
【0017】
各台座10Aは、固定面10A−2の外縁部をなす辺の一部に切り欠き部11Aを有する。この切り欠き部11Aは、台座10Aを固定基台1に接合した状態で台座10Aに対して上向き(台座10Aを固定基台1から引き離す向き)に力を作用させることが可能な作用点11A−1を持つような形状に形成される。図2(B)では、台座10Aが三角形の断面形状を有しており、その一つの角をL字形に切り取るような形状で、切り欠き部11Aが形成されている。光学部品20を取り外した後、この切り欠き部11Aに棒状あるいは板状の工具40を差し込み、工具40に図中A方向の力を加えると、工具40の先端部が切り欠き部11AのL字形状の一辺である作用点11A−1に上向きの力を及ぼすことになる。これによって、台座10Aには、切り欠き部11Aが設けられている固定面10A−2外縁部の一辺と反対側の一辺を支点として、図中B方向に力が加わり、台座10Aを容易に固定基台1から取り外すことができる。
【0018】
また、図2(B)において、切り欠き部11Aは、固定面10A−2の外縁部をなす辺のうち、2つの台座10Aの互いに向かい合った辺に設けられている。切り欠き部11Aをこれとは違う辺に設けてしまうと、その分レーザ溶接をすることができる箇所が減り、完成した光モジュールにおいて台座10Aと固定基台1との固定強度が弱くなるという問題があるが、上記2つの台座10Aの互いに向かい合った辺は、上述のとおり元々レーザ溶接が不可能な場所であるため、ここに切り欠き部11Aを設けたことによる固定強度低下の問題は生じない。
【0019】
図3は、図2の台座10Aの上面図、正面図、及び側面図を示している。図3において、台座10Aの切り欠き部11Aは、固定面10A−2の外縁部をなす一辺の端から端までにわたって形成されている。但し、固定面10A−2の外縁部をなす一辺の一部にのみ同様の切り欠き部11Aを設けてもよい。
【0020】
図4〜図8は、台座に形成する切り欠き部の変形例を示す図である。
図4の台座10Bは、その三角形状の断面における一つの角を、上述の台座10AのようにL字形ではなく平面的に切り取ったような形状で、切り欠き部11Bを形成したものである。この台座10Bが固定基台1に固定されている状態で、切り欠き部11Bに図2(B)と同様の工具を差し込むと、切り欠き部11Bをなす面11B−1が、工具の力が加わる作用点となる。よって、上述の台座10Aと同様に、台座10Bを容易に固定基台1から取り外すことができる。
【0021】
図5の台座10Cは、固定基台1との固定面10C−2の外縁部から内側に向かって溝状に切り欠き部11Cを形成したものである。この形状の場合、溝状の切り欠き部11Cの天井部分11C−1が上述と同様の作用点となる。よって、台座10Cを容易に固定基台1から取り外すことができる。また、図6の台座10Dのように、切り欠き部11Dを固定面10D−2外縁部の反対側の辺まで通じるように形成してもよい。
【0022】
図7の台座10Eは、固定基台1との固定面10E−2とは異なる斜面10E−1に適宜の径で固定面10E−2方向に穴を開けて切り欠き部11Eとしたものである。この穴にねじ50等の工具を差し込み、ねじ50に図中A方向の力を加えると、ねじ50の先端部が穴の内側の一部分である作用点11E−1に図中B方向の力を及ぼす。これにより、台座10Eを容易に固定基台1から取り外すことができる。
【0023】
図8の台座10Fは、上記の台座10Eにおける穴を固定面10F−2まで貫通させ、更にその内側にねじ溝を形成して切り欠き部11Fとしたものである。この穴にねじ50をねじ込み、ねじ50の先端部を固定面10F−2まで到達させて固定基台1に接触した状態で、更にねじ50をねじ込むことにより図中C方向に力を加えると、台座10Fには、切り欠き部11F内のねじ溝を介してねじ50からの反作用力が図中C方向と反対の方向にかかることになる。この時、ねじ溝が作用点11F−1となっている。これにより、台座10Fを容易に固定基台1から取り外すことができる。
【0024】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、光学部品20は、レンズに限らず、ミラー、光学フィルタ、波長板、光導波路素子、光ファイバの端部、等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による光モジュールの内部の概略構成を示す斜視図である。
【図2】光モジュール内に固定された光学部品及び台座の部分を示す上面図及び正面図である。
【図3】図2の台座の上面図、正面図、及び側面図である。
【図4】台座に形成する切り欠き部の第1の変形例を示す図である。
【図5】台座に形成する切り欠き部の第2の変形例を示す図である。
【図6】台座に形成する切り欠き部の第3の変形例を示す図である。
【図7】台座に形成する切り欠き部の第4の変形例を示す図である。
【図8】台座に形成する切り欠き部の第5の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
10A〜10F…台座 11A〜11F…切り欠き部 20…光学部品 21…レンズ 22…光学素子ホルダ 30…光導波路素子 31…光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部品を筐体内に固定してなる光モジュールにおいて、
前記光学部品と、
前記光学部品を所定の光軸位置に保持して前記筐体に固定する台座と、
を備え、
前記台座の一部に、該台座を前記筐体に固定した状態で該台座を該筐体から引き離す方向に力を作用させる部位を有する切り欠き部を設けた
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記切り欠き部は、前記筐体に固定される前記台座の固定面外縁部に沿って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記切り欠き部は、前記筐体に固定される前記台座の固定面外縁部から該固定面の内側に向かって溝状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記光学部品は、複数の前記台座によって挟み込まれた状態で保持され、
前記切り欠き部は、前記複数の台座の互いに向かい合った前記外縁部に設けられている
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記切り欠き部は、前記筐体に固定される固定面とは異なる面から該台座の内部へ向かって形成された穴又は溝であることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記穴は、前記固定面まで貫通して形成され、その内面にねじ溝が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−244376(P2009−244376A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88413(P2008−88413)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】