光中継伝送システムおよび光中継伝送方法
【課題】伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられる光中継伝送システムにおいて、その伝送特性を向上させる。
【解決手段】波長多重光を伝送する伝送路上に複数のラマン増幅器30a〜30eが設けられている。各ラマン増幅器30a〜30eでは、複数の励起光λ1〜λ4 が使用されている。ラマン増幅器30cにおいて励起光λ3 を生成する励起光源が故障すると、ラマン増幅器30a、30b、30d、30eにおいて、λ3 の励起光のパワーをそれぞれ増加させる。
【解決手段】波長多重光を伝送する伝送路上に複数のラマン増幅器30a〜30eが設けられている。各ラマン増幅器30a〜30eでは、複数の励起光λ1〜λ4 が使用されている。ラマン増幅器30cにおいて励起光λ3 を生成する励起光源が故障すると、ラマン増幅器30a、30b、30d、30eにおいて、λ3 の励起光のパワーをそれぞれ増加させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光中継伝送システムに係わり、特に、ラマン増幅を利用して波長多重光を伝送する光中継伝送システムに係わる。
【背景技術】
【0002】
従来、長距離の光伝送システムでは、各中継装置において光信号をいったん電気信号に変換した状態で3R処理(タイミング補正、波形整形、信号再生)が実行 され、その後、光信号に変換されて次の中継装置に送出されていた。しかし、現在では、光信号を電気信号に変換することなく増幅する光増幅器の実用化が進ん できており、光増幅器を線形中継装置として用いる伝送システムが検討されている。そして、上述のような光/電気変換を伴う中継器を光増幅中継器に置き換え ることにより、各中継装置を構成する部品の数が大幅に削減され、信頼性が向上し、さらにコストダウンが見込まれている。
【0003】
一方、イン ターネット等の普及に伴いネットワークを介して伝送される情報の量が増加してきており、伝送システムを大容量化するための技術が盛んに研究されている。そ して、伝送システムの大容量化を実現するための方法のひとつとして、波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplex )光伝送方式が注目されている。波長多重光伝送とは、互いに波長の異なる複数の搬送波を用いて複数の信号を多重化して伝送する方式であり、1本の光ファイ バを介して伝送できる情報量が飛躍的に増加する。
【0004】
図26は、一般的な光中継伝送システムの構成図である。このシステムでは、光送信機100から光受 信機200へ波長多重光が伝送される。すなわち、光送信機100は、互いに波長の異なる信号光を合波することにより波長多重光を生成して伝送路に送出す る。一方、光受信機200は、受信した波長多重光を波長毎に分波することによって各信号を検出する。ここで、伝送路は光ファイバであり、所定間隔ごとに光 増幅器が設けられている。
【0005】
各光増幅器は、通常、それぞれエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)である。ここで、一般的な EDFAの利得波長帯域は、1.55μm帯であり、ゲインシフトEDFA(GS−EDFA)のそれは1.58μm帯である。そして、それらの帯域幅は、そ れぞれ約30nm程度である。したがって、波長多重光伝送システムの伝送路にEDFAを設ける場合には、信号光は、これらの利得波長帯域内の搬送波を利用 して伝送される。
【0006】
伝送システムの大容量化を図るためには、波長多重数を増やすことが有効であり、波長多重数を増やすためのひとつの有 効な方法は、利得波長帯域を広くすることである。そして、近年、EDFAと比較してより広い利得波長帯域を確保できる光増幅方法として、ラマン (Raman )散乱を利用するラマン増幅器が注目されている。
【0007】
ラマン増幅では、光ファイバに励起光を与えることにより、その励起光 の波長よりも長波長側に利得が得られる。例えば、1.55μm帯においては、図27(a)に示すように、励起光の波長よりも約100nm長波長側に利得が得られる。なお、この シフト量は、周波数に換算すると、13.2テラHzである。また、ラマン増幅器は、励起光さえ用意できれば任意の波長を増幅できる。
【0008】
ラマン増幅器は、上記性質を利用することにより実現される。そして、広い利得波長帯域を得るためには、図27(b) に示すように、中心周波数が互いに異なる複数の励起光が使用される。なお、この方法は、例えば、Y. Emori, et al.,"100nm bandwidth flat gain Raman amplifiers pumped and gain-equalized by12-wavelength channel WDM high power laser diodes", OFC'99 PD19 1999.に記載されている。このように、複数の励起光を使用することにより、広い利得波長帯域が確保され得る。
【0009】
図28は、ラマン増幅を利用した波長多重光伝送システムの構成図である。ラマン増幅のための励起光 は、基本的に、信号光とは逆方向に伝送されるように伝送路光ファイバに与えられる。このとき、図27(b) に示すように複数の励起光を使用する場合には、互いに発振周波数の異なる複数の光源から出力される励起光が波長合成器等により伝送路光ファイバに与えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
伝送路上に複数のラマン増幅器を必要とする長距離光伝送システムでは、技術的に改良すべき課題が残されている。具体的には、波長多重光に含まれる各信号光 のパワーを等化すること、すなわち波長多重光のための利得波長特性を平坦化することが望まれている。また、この問題は、修理や経年劣化等によって伝送路の 特性が変化した場合も考慮されるべきである。
【0011】
本発明の課題は、伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられる光中継伝送システムにおい て、その伝送特性を向上させることである。特に、各ラマン増幅器において複数の励起光を使用する光中継伝送システムの伝送特性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面における光中継システムは、光伝送路上に直列に複数のラマン増幅器が設けられた光中継伝送システムであって、上記ラマン増幅器は、ラマン増幅用光ファイバを備え、該ラマン増幅用光ファイバの両端に、各ラマン増幅器を相互に接続する光伝送路が接続され、上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器およびその第1のラマン増幅器に隣接する第2のラマン増幅器の間の光伝送路の伝送損失が増加した際、上記ラマン増幅用光ファイバに供給すべき励起光のパワーを増加させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられる光中継伝送システムにおいて、ラマン利得を変化させる要因が発生したときに、その要因に応じ て利得が調整されるので、信号の伝送特性は低下しない。
【0014】
具体的には、励起光源が故障した際には、他の励起光源のパワーが自動的に調整 されて利得が維持され、光伝送路の伝送損失が変化した際には、所定の励起光源のパワーが調整されて利得が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の光中継伝送システムの構成図である。
【図2】ラマン増幅器の構成図である。
【図3】合波器の実施例である。
【図4】図3に示す合波器を構成する2入力/2出力3dBカプラの例である。
【図5】ラマン増幅器の実施例である。
【図6】ラマン増幅器の変形例(その1)である。
【図7】ラマン増幅器の変形例(その2)である。
【図8】ラマン増幅器の変形例(その3)である。
【図9】ラマン増幅器の変形例(その4)である。
【図10】ラマン増幅器の変形例(その5)である。
【図11】ラマン増幅器の変形例(その6)である。
【図12】ラマン増幅器の変形例(その7)である。
【図13】ラマン増幅器の変形例(その8)である。
【図14】ラマン増幅用の光ファイバが増幅器内に設けられる構成を示す図である。
【図15】ラマン増幅のために偏波面が直交する励起光を生成する装置の例である。
【図16】本実施形態の光中継伝送システムの構成図である。
【図17】本実施形態の伝送システムにおいて励起光源が故障した際の動作を説明する図である。
【図18】ラマン増幅器において励起光パワーを調整する機能を説明する図である。
【図19】図17に示した機能を実現するための端局の動作のフローチャートである。
【図20】本実施形態の伝送システムにおいて励起光源が故障した際の他の動作を説明する図である。
【図21】図20に示した機能を実現するための端局の動作のフローチャートである。
【図22】本実施形態の伝送システムにおいて励起光源が故障した際のさらに他の動作を説明する図であ る。
【図23】伝送路を修理した際に励起光を調整する方法の一例を示す図である。
【図24】合波器の特性を示す図である。
【図25】伝送システムの構築方法を説明する図である。
【図26】一般的な光中継伝送システムの構成図である。
【図27】ラマン増幅の原理を説明する図である。
【図28】ラマン増幅を利用した波長多重光伝送システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の光中継伝送システムの構成図である。この伝送システムは、端局10お よび端局20を備え、それらの間は多心光ファイバケーブルにより接続されている。そして、端局10と端局20との間で双方向に信号が伝送される。
【0017】
端局10は、複数の光送信機11および複数の光受信機12を備える。一方、端局20は、複数の光受信機21および複数の光送信機22を備える。そして、各光送信機11 から送出される信号は、光ファイバを介して伝送され、対応する光受信機21により受信される。一方、各光送信機22から送出される信号は、光ファイバを介 して伝送され、対応する光受信機12により受信される。なお、各送信機11、22は、それぞれ波長多重光を送出する。すなわち、この伝送システムでは、多 心光ファイバケーブルを構成する各光ファイバを介して、それぞれ波長多重光が伝送される。
【0018】
端局10と端局20との間の伝送路には、複 数のラマン増幅器30−1〜30−nが設けられている。各ラマン増幅器30−1〜30−nは、それぞれ多心光ファイバケーブルを構成する各光ファイバを介 して伝送される波長多重光を増幅する。なお、光ファイバに励起光を与えることによりその光ファイバ自体においてラマン増幅が生じる。したがって、「ラマン 増幅器」は、光ファイバおよびその光ファイバに励起光を供給する装置から構成されるが、光ファイバに励起光を供給する装置のことを「ラマン増幅器」を呼ぶ こともある。また、各ラマン増幅器は、それぞれ光中継装置の中に設けられてもよい。
【0019】
図2は、ラマン増幅器30の構成図である。なお、ラマン増幅器30−1〜30−nは、基本的に互い に同じ構成である。そして、「ラマン増幅器30」は、ラマン増幅器30−1〜30−nの中の任意の1つを表す。
【0020】
ラマン増幅器30は、 複数の励起光源31、合波器32および合波器33を備える。複数の励起光源31は、互いに異なる波長の励起光を生成する。この実施例では、4個の励起光源 により、波長λ1 〜λ4 の励起光が生成される。なお、各励起光源31は、たとえば、レーザダイオードである。レーザダイオードは、一般に、与えられた電流に対応するパワーの光を 出力する。また、多くのレーザダイオードは、発光パワーを検出するためのバックパワーモニタ機能を備えている。以下では、各励起光源31の発光パワーは、 バックパワーモニタ機能または他の方法により検出可能であるものとする。
【0021】
合波器32は、複数の励起光源31から出力される励起光を合波する。この実施例では、合波器32により波長λ1 〜λ4 の励起光が合波される。また、合波器32は、複数の出力ポートを備え、各出力ポートからそれぞれ合波された励起光を出力する。なお、合波器32の構成につ いては、後で詳しく説明する。
【0022】
合波器33は、多心光ファイバケーブルに収容される各光ファイバ毎に設けられ、合波器32から出力され る励起光を対応する光ファイバに供給する。このとき、励起光は、信号光とは逆方向に伝送されるように光ファイバに入射される。なお、図2において、「ファイバシステム」とは、多心光ファイバケーブルに収容される各光ファイバのことを指している。
【0023】
なお、図2に示す例では、ラマン増幅器30に4個の励起光源31が設けられているが、本発明はこれに限定されるものではない。励起光源31の数は、例えば、必要な利得波長帯域幅に基づいて決定されてもよい。また、この例では、励起光源31の数と光ファイバの 数とが互いに一致しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの数が互いに異なっていてもよい。
【0024】
図3は、合波器32の実施例である。この実施例では、2n 個の励起光源 (LD1 〜LD(2n))により生成される励起光を合波して2n 個の出力ポート(P1〜P(2n)) から出力する構成を示す。
【0025】
合波器32は、n段構成の光カプラ群により実現される。ここで、各光カプラは、それぞれ、図4に示す2入力/2出力3dBカプラである。この2入力/2出力3dBカプラは、2つの入力ポー トからそれぞれ入力される光を合波して各出力ポートから出力する。そして、各出力ポートから出力される合波光は、基本的に互いに同じである。したがって、図3に示す合波器32の各出力ポートからは、それぞれ、各励起光源が生成する励起光を合波すること によって得られる合波光が出力される。このとき、各出力ポートから出力される合波光は、基本的に互いに同じである。
【0026】
図5は、ラマン増幅器30の実施例である。ここでは、ラマン増幅器30は、複数の励起光源31とし て、8(=23 )個のレーザダイオードLD1〜LD8を備えている。また、多心光ファイバケーブルは、8本の光ファイバを収容し ている。
【0027】
レーザダイオードLD1〜LD8は、互いに波長の異なる励起光を出力する。合波器32は、3段構成の光カプラ群であり、8個 の出力ポートを備える。ここで、合波器32は、図3において「n=3」の場合に相当する。そして、合波器32は、レーザダイオードLD1〜LD8 により生成される励起光を合波し、その合波励起光を各出力ポートから出力する。
【0028】
多心光ファイバケーブルに収容される各光ファイバに は、それぞれ合波器33が設けられている。各合波器33は、合波器32の対応する出力ポートから出力される合波励起光を受信し、それを対応する光ファイバ に入射する。このとき、合波励起光は、信号光と逆方向に伝送されるように入力される。これにより、レーザダイオードLD1〜LD8により生成される励起光 が各光ファイバに供給される。そして、各光ファイバにおいて、図27(b) に示すような増幅作用が得られる。
【0029】
次に、上述したラマン増幅器 の変形例を示す。なお、以下に示すラマン増幅器は、図2〜図5を参照しながら説明した構成をベースにしている。ただし、以下の実施例では、4本の光ファイバ に対して励起光を供給する場合を想定する。
【0030】
図6に示す構成では、各光ファイバ毎にEDFAが設けられている。即ち、この構成では、複数の信号光を含む波長多重光は、ラマン増幅器により増幅された後、さらにEDFAにより増幅される。
【0031】
図7に示す構成では、各光ファイバ毎に利得等化器が設けられている。この利得等化器は、例えば、ラ マン増幅器の利得の波長特性を補償するように、或いはラマン増幅器により増幅された波長多重光に含まれる各信号光のパワーが等化されるように設計または調 整される。
【0032】
図8に示す構成では、1組の上り光ファイバと下り光ファイバとの間にそれぞれ OTDR(Optical Time Domain Reflectometry )パスが設けられている。なお、OTDRパスは、各合波器33の前後に設けられる。これにより、位置判定のためのファイバセンサが実現される。
【0033】
図9に示す構成では、各光ファイバ毎にSV信号受信モジュールが設けられ、各SV信号受信モジュー ルにより受信されたSV信号は、SV制御部により処理される。ここで、SV信号は、この光伝送システムを監視するための制御信号であり、例えば、端局10 または端局20から予め決められた波長の搬送波を用いて伝送される。この場合、SV信号受信モジュールは、波長多重光からSV信号を含む信号光を分波する 分波器、およびその分波器により分波された信号光を電気信号に変換する光電素子(例えば、フォトダイオードPD)から構成される。そして、SV制御部は、 各光ファイバを介して伝送されてくるSV信号に基づいて、伝送路の正常性、或いは他の光中継装置の正常性などを検出する。なお、図6〜図9においては、励起光源は省略されている。
【0034】
図10に示す構成では、この装置から出力される波長多重光のパワーが予め決められた一定値になるようにフィードバック制御する機能(ALC:AutomaticLevel Control )が設けられている。この機能は、波長多重光の一部を分岐するための分岐カプラ、分岐カプラにより分岐された波長多重光の一部を検出する光電素子(例え ば、フォトダイオードPD)、合波器32の出力レベルを調整する光可変アッテネータ、光電素子の出力に従って光可変アッテネータの減衰量を調整する制御部 により実現される。
【0035】
図11に示す構成では、合波器32と各合波器33との間に光アイソレータが挿入されている。各光ア イソレータは、それぞれ合波器33から合波器32へ向かう光を遮断する。
【0036】
図12に示す構成では、各励起光源LD1〜LD4と合波器32との間にそれぞれ光ファイバグレー ティングフィルタが設けられている。光ファイバグレーティングフィルタとしては、狭帯域(例えば、3dB帯域幅が1nm以下)、低反射率(例えば、 1〜15パーセント)のものを用いる。これにより、各励起光源により生成される励起光の発振波長が固定される。
【0037】
図13に示す構成では、合波器33の代わりに光サーキュレータが設けられている。この場合、合波器 32から出力される励起光は、それぞれ信号光と逆方向に伝送されるように光ファイバに入射される。
【0038】
なお、図5〜図13では、ラマン増幅器に接続する光ファイバを利用してラマン増幅が行われる構成が示されている が、本発明のラマン増幅器は、図14に示すように、ラマン増幅用の光ファイバがラマン増幅器の中に設けられる構成であってもよ い。
【0039】
図15は、ラマン増幅のために偏波面が直交する励起光を生成する装置の実施例である。この装置は、 互いに波長の異なる励起光を生成する複数の光源モジュール40を有する。各光源モジュール40は、それぞれ、同一波長の励起光を生成する1組の励起光源、およびその1組の励起光源により生成される励起光を偏波合成する偏波合成器41を有する。これにより、各光源モジュール40は、それぞれ、偏波面が直交す る励起光を出力する。なお、各光源モジュール40から出力される励起光は、合波器32により合波される。そして、その合波された励起光は、複数の光ファイ バに供給される。
【0040】
図15に示す実施例では、励起光を供給すべき光ファイバの数と励起光源の数との比率が1:2であ り、1組の励起光源により生成される励起光が偏波合成されているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。即ち、本発明は、励起光を供給すべき光 ファイバの数と励起光源の数との比率が1:2であり、1組の励起光源により生成される励起光の波長が互いに異なっていてもよい。この場合、1組の励起光源 により生成される励起光は、波長合波器により合波されることになる。
【0041】
上述のように、本実施形態のラマン増幅器では、互いに波長の異な る複数の励起光が合波され、その合波励起光が複数の光ファイバにそれぞれ供給される。ここで、複数の励起光は、図3〜図4を参照しながら説明したように、複数の光素子(実施例では、光カプラ)を用いて合波される。そ して、このとき、合波励起光に含まれる各波長毎の励起光のレベルは、基本的に、互いに同じであることが望ましい。
【0042】
しかし、上記構成に おいて、各光カプラの特性(特に、分岐比)は、僅かではあるがばらつきがある。このため、合波器32により得られる合波励起光に含まれる各波長毎の励起光 のレベルは、しばしば互いに一致していない。そして、このような合波励起光を用いてラマン増幅を行うと、信号光を増幅するための利得が波長依存性を持つことになる。さらに、図1に示したように、伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられる伝送システムでは、上述のような利 得の波長特性が累積される可能性がある。
【0043】
図16は、本実施形態の光中継伝送システムの構成図である。この伝送システムは、光送信機11と光 受信機21との間の伝送路上に複数のラマン増幅器30を有する。なお、ラマン増幅器30は、図2〜図15を参照しながら説明した通りである。また、図16では1組の光送信機11と光受信機21との間の伝送路を示しているが、この伝送路は図1に示すシステムの一部であってもよい。この場合、各ラマン増幅器30は、多心光ファイバケーブ ルに収容される複数の光ファイバを介して伝送される信号を一括して増幅する。
【0044】
本実施形態では、この伝送路上に1または複数個の利得等 化器50が設けられる。具体的には、例えば、数10個のラマン増幅器に対して1つの利得等化器50が設けられる。なお、利得等化器50は、各光ファイバ毎 に設けられる。すなわち、図1に示すシステムにおいては、各光ファイバ毎にそれぞれ利得等化器50が設けられる。
【0045】
利得等化器50としては、等化特性が予め固定的に設定された等化器を用いてもよいし、等化特性を動的に変えることができる可変等化器を用いてもよい。前者 の等化器を用いる場合には、例えば、伝送システムを構築した後に信号を伝送しながら適切な等化器を選択する。具体的には、例えば、実際に波長多重光を伝送し、その波長多重光に含まれる複数の信号光のパワーが等化されるような利得等化器を選択して設置する。
【0046】
一方、可変利得等化器を用いる場合には、フィードバック制御により各可変等化器の利得特性が動的に調整される。具体的には、例えば、光受信機21により受信される波長多重光の一部を分岐し、その分岐された波長多重光に含まれる複数の信号光が等価されるように各可変等化器の特性を調整する。この構成においては、伝送路の特性が変わった場 合であっても、利得偏差は小さいままである。尚、利得等化器50は、既存のものを用いることができる。利得等化器(特に、可変利得等化器)については、例 えば、特開平11−212044号公報あるいは特開平11−224967号公報に記載されている。
【0047】
上記構成の伝送システムにおいて は、ラマン増幅器30による利得が波長依存性を持っていたとしても、等化器50を設けることによって利得偏差は小さくなる。即ち、ラマン増幅のために供給 される複数の励起光のパワーが均一でなかったとしても、この伝送路を介して伝送される波長多重光は適切に等化される。また、上記構成のシステムにおいて は、伝送路ファイバの伝送損失、非線形実行面積、およびラマン利得係数に関してばらつきがある場合でも、システム全体としての利得偏差は小さくなる。
【0048】
次に、光中継伝送システムにおいて障害が発生した時に、その影響を最小限に抑えるための方法を説明する。図17は、本実施形態の伝送システムにおいて励起光源が故障した際の動作を説明する図である。ここ では、各ラマン増幅器30において、互いに波長の異なる4つの励起光(λ1 〜λ4 )が供給されるものとする。
【0049】
図17に示す方法においては、あるラマン増幅器の中の任意の励起光源が故障すると、そのラマン増幅 器の近傍の他のラマン増幅器において対応する励起光源のパワーを調整することにより、上記故障による影響が補償される。図17に示す例では、ラマン増幅器30cにおいて励起光λ3 を生成する励起光源が故障している。この場合、ラマン増幅器30a、30b、30d、30eにおいて、それぞれ励起光λ3 を生成する励起光源のパワーが増加させられる。これにより、上記励起光源の故障により生じる利得偏差は、小さく抑えられる。なお、この方法は、励起光 (λ1 〜λ4 )の波長間隔が比較的広い場合に有効である。また、この方法は、過剰な冗長構成は必要ない。
【0050】
励起光パワーを増加させ るべきラマン増幅器(図17では、4個のラマン増幅器30a、30b、30d、30e)の数が少ないと、特定の励起光源 の負担が大きくなってしまい、その励起光源が早く劣化してしまう。一方、励起光パワーを増加させるべきラマン増幅器の数が多いと、伝送システム全体の光信号対雑音比が大きく劣化してしまう。従って、励起光パワーを増加させるラマン増幅器の数は、適切に決める必要がある。一例としては、3個程度である。
【0051】
上記方法は、端局10または20において各励起光源の状態をモニタし、異常を検出した際に対応するラマン増幅器に指示を与えることにより実現される。図18は、各ラマン増幅器30において励起光パワーを調整する機能を説明する図である。ここでは、 ラマン増幅器30は、複数の励起光源61を備える。励起光源61は、それぞれ対応する駆動回路62により駆動される。ここで、励起光源61は、レーザダイ オードである。また、駆動回路62は、制御部64により指示される電流を対応する励起光源61に供給する。検出回路63は、対応する励起光源61の発光パ ワーを検出する。発光パワーは、例えば、レーザダイオードのバックパワーに基づいて検出される。
【0052】
制御部64は、端局10または20か らの問合せに従って、各励起光源61の状態を調べる。具体的には、検出回路63の出力に基づいて励起光源61の発光パワーを検出する。このとき、励起光源 61に供給されている電流値を調べてもよい。そして、その検出結果を端局10または20に通知する。また、制御部64は、端局10または20からの指示に 従って駆動回路62を制御する。これにより、端局10または20からの指示に従って、特定の励起光源61の発光パワーが調整される。
【0053】
図19は、図17に示した機能を実現するための端局10または20の動作のフローチャートである。このフロー チャートの処理は、例えば、所定間隔ごとに実行される。
ステップS1では、各ラマン増幅器30に対して、それぞれ励起光源の状態を問 い合わせる。このとき、各ラマン増幅器30は、この問合せに応じて各励起光源の状態を調べてその結果を返送する。なお、励起光源の故障は、例えば、発光パ ワーが所定値以下であるときに検出される。ステップS2では、各ラマン増幅器30からの応答を受信し、故障している励起光源が存在するか否かを調べる。そして、故障している励起光源が存在する場合には、ステップS3以降の処理を実行し、そうでない場合には処理を終了する。
【0054】
ステップS3 では、故障している励起光源が設けられているラマン増幅器を特定する。ステップS4では、故障している励起光源の波長を特定する。ステップS5では、ス テップS3の結果に基づいて、励起光パワーを調整すべきラマン増幅器を決定する。ステップS6では、制御信号を作成する。この制御信号は、ステップS5に おいて決定されたラマン増幅器に対して、ステップS4で特定された波長の励起光パワーを高めるための指示を含む。このとき、例えば、励起光源の故障によっ て「L(dB)」の損失が発生したものとし、また、a個のラマン増幅器に対して励起光のパワーの増加を指示するものとすると、それらa個のラマン増幅器に 対して、励起光パワーの増加量として、利得に換算して「L/a(dB)」に相当する値が指示される。そして、ステップS7において、上記制御信号を送出す る。このとき、ラマン増幅器30は、制御信号に従って対応する励起光のパワーを調整する。
【0055】
図20は、本実施形態の伝送システムにおいて励起光源が故障した際の他の動作を説明する図である。 ここでは、各ラマン増幅器30において、互いに波長の異なる8つの励起光(λ1 〜λ8 )が供給されるものとする。
【0056】
図20に示す方法においては、あるラマン増幅器の中の任意の励起光源が故障したとすると、そのラマ ン増幅器において故障した励起光源の波長に隣接する波長の励起光のパワーを調整することにより、上記故障による影響が補償される。図20に示す例では、ラマン増幅器30cにおいて励起光λ5 を生成する励起光源が故障している。この場合、ラマン増幅器30cにおいて、励起光λ4 および励起光λ6 の発光パワーが増加させられる。そして、これにより、上記励起光源の故障によって生じる利得偏差が小さく抑えられる。なお、この方法は、励起光(λ1 〜λ8 )の波長間隔が狭い場合に有効である。また、図20に示す実施例では、ラマン増幅器30cの中のある励起光源が故障したときにそのラマン増幅器 30cの中の他の励起光源の光パワーを調整し ているが、他のラマン増幅器の励起光パワーを調整するようにしてもよい。例えば、ラマン増幅器30bおよび30dにおいて、それぞれ励起光λ4 および励起光λ6 の発光パワーを増加させるようにしてもよい。
【0057】
上記方法は、端局10または20において各励起光源の状態をモニタ し、異常を検出した際にその故障が発生したラマン増幅器に指示を与えることにより実現される。
【0058】
図21は、図20に示した機能を実現するための端局10または20の動作のフローチャートである。なお、ス テップS1〜S4は、図19に示したフローチャートの場合と同じである。すなわち、端局10または20は、故障が発生し たラマン増幅器および励起光源を認識する。
【0059】
ステップS11では、ステップS3およびS4の検出結果に基づいて、励起光パワーを調整すべき励起光源を決定する。具体的には、故障が発生している励起光源が生成する励起光の波長に隣接する波長の励起光を生成する励起光源を特定する。ここで、 出力パワーを調整すべき励起光源の数は、予め決められているものとする。なお、出力パワーを増加すべき励起光源の数を少なくするとその励起光源の負担が重 くなり、出力パワーを増加すべき励起光源の数を多くすると利得の平坦化が難しくなる。したがって、出力パワーを増加すべき励起光源の数は、これらの要因を 勘案して決定される。
【0060】
続いて、ステップS6では、制御信号を作成する。この制御信号は、故障が発生したラマン増幅器に対して、ステッ プS11で特定された励起光源の励起光パワーを高めるための指示を含む。このとき、励起光パワーの増加量も通知されるようにしてもよい。そして、ステップ S7において、上記制御信号を送出する。このとき、制御信号を受信したラマン増幅器30は、その制御信号に従って対応する励起光のパワーを調整する。
【0061】
図22は、本実施形態の伝送システムにおいて励起光源が故障した際のさらに他の動作を説明する図で ある。ここでは、各ラマン増幅器30において、互いに波長の異なる4つの励起光(λ1 〜λ4 )が供給されるものとする。
【0062】
図22に示す方法においては、任意の伝送路の伝送損失が増加した場合に、複数のラマン増幅器の励起 光のパワーを調整することによりその伝送損失が補償される。図22に示す例では、ラマン増幅器30bと30cとの間の伝送路の伝送損失が増加している。伝送損失が増加する原因としては、例えば、伝送路の修理や、経年劣化などが考えられる。
【0063】
このとき、もし、伝送損失が増加した伝送路に直接的 に接続されるラマン増幅器のみにおいて励起光パワーを増加させると、その励起光源の負担が重くなり、また、光ファイバの特性や合波器の分岐比のばらつきにより利得偏差が 生じてしまう。そこで、本実施形態では、伝送損失が増加した伝送路の前後の数個のラマン増幅器において励起光パワーを少しずつ増加させることにより、上述 の問題を回避している。図22に示す例では、ラマン増幅器30bと30cとの間の伝送路の伝送損失が増加した場合に、ラマ ン増幅器30a〜30dの励起光パワーをそれぞれ少しずつ増加させている。なお、励起光パワーを増加させるべきラマン増幅器の数は、例えば、3個程度である。また、各ラマン増幅器においてラマン増幅のために複数の励起光が使用されている場合には、すべての励起光のパワーをそれぞれ増加させる。
【0064】
上記方法により、特定の励起光源に負担が集中することを回避しながら、伝送システム全体として利得偏差が低減される。なお、この方法は、伝送路の伝送損失 の増加を認識した際に、端局10または20から対応する複数のラマン増幅器に指示を与えることにより実現される。
【0065】
伝送路を修理する際 には、通常、その伝送路の光ファイバは他の光ファイバに置き換えられる。ここで、各光ファイバは、それぞれ固有の波長特性を有している。すなわち、ある光 ファイバが他の光ファイバに置き換えられると、その光ファイバを利用するラマン増幅の利得も変化してしまう。以下、このことに起因する問題点を図23を参照しながら説明する。
【0066】
図23に示す例では、1対の伝送路(上り伝送路、下り伝送路)上にラマン増幅器30a〜30dが設 けられている。なお、図23では、ラマン増幅器30cについては励起光源および合波器を描いているが、他のラマン増幅器 についてはそれらは省略されている。また、励起光は、それぞれ信号光とは逆方向に伝送されるように各光ファイバに入力されるものとする。
【0067】
上記構成において、ラマン増幅器30bと30cとの間の伝送路が修理されたものとする。このとき、ラマン増幅器30cの励起光パワーを調整すると、上り伝 送路と下り伝送路との間でラマン利得が互いに異なってしまう。すなわち、上り伝送路においては、新たに設けられた光ファイバに供給される励起光パワーが調整されるのに対し、下り伝送路では、以前から使用されている光ファイバに供給される励起光パワーが調整される。この結果、上り伝送路の利得と下り伝送路の 利得とが互いに異なってしまう可能性がある。
【0068】
そこで、本実施形態では、伝送路の修理に際して増加した伝送損失を補償する際には、その 修理を行った伝送路以外の伝送路においてラマン増幅のための励起光パワーを調整するようにしてもよい。例えば、図22において、ラマン増幅器30bと30cとの間の伝送路の伝送損失が増加した場合に、ラマン増 幅器30d〜30fの励起光パワーをそれぞれ少しずつ増加させるようにしてもよい。
【0069】
なお、伝送路の修理等によって伝送損失が「L(dB)」だけ増加し、また、この 損失を補償するためにa個のラマン増幅器において励起光のパワーの増加する場合には、それらa個のラマン増幅器における励起光パワーの増加量は、利得に換 算して「L/a(dB)」に相当する。すなわち、複数のラマン増幅器に対して負担が均等に振り分けられる。
【0070】
次に、複数の励起光を合波 する合波器32の特性のばらつきを考慮して伝送システムを構築する方法について説明する。複数の光ファイバに対してそれぞれ複数の励起光を供給する場合 は、例えば、図3に示したような複数の2入力/2出力3dBカプラから構成される合波器が用いられる。このと き、この合波器の分岐比は、均一であることが望ましい。たとえば、互いの同じパワーの複数の励起光(λ1 〜λ4 )が入力されたときには、図24(a) に示すように、それら複数の励起光のパワーが均等に合波された合波励起光が各出力ポートから出力されることが望ましい。
【0071】
しかし、実際 には、分岐比が完全に1:1の2入力/2出力3dBカプラを製造することは容易ではない。このため、多数の2入力/2出力3dBカプラを組み合わせること によって合波器32を構成すると、例えば図24(b) に示すように、複数の励起光が不均一に合波されてしまうことがある。ここで、ラマン増幅の利得は、与えられた励起光のパワーに依存する。したがって、もし 励起光(λ1 〜λ4 )が図24(b) に示す合波器32により合波されて各光ファイバに供給されると、各伝送路における利得はそれぞれ平坦ではなくなってしまう。例えば、図24(b) に示すケースの場合、光ファイバ1においては、波長λ3 に対応する波長帯の利得が大きくなると共に、波長λ1 および波長λ4 に対応する波長帯の利得が小さくなってしまう。
【0072】
本実施形態で は、上記問題を解決するために、各ラマン増幅器30に設けられる合波器32の組合せを最適化する。具体的には、まず、多数の合波器32の特性(特に、分岐 比)を予め測定しておく。つづいて、特性の平均値が図24(a)に示した理想的な状態になるように数個〜数10個の合波器32を適切に選別する。そし て、選別された数個〜数10個の合波器32を1つのグループとし、それらを伝送路上に連続的に設けられるラマン増幅器のために使用する。図25に示す例では、特性の平均値が理想的な状態になるような5個の合波器32が選別されてラマン 増幅器30a〜30eのために使用されている。この場合、ノードAからノードBへ至る伝送路では、ラマン増幅器30a〜30eにより得られる利得の波長特 性が平均化される。すなわち、この間の伝送路では、合波器32のばらつきが補償された利得が得られる。
【0073】
なお、上述のシステム構築において、合波器32は、多心光ファイバケーブルに収容される光ファイバの数と同じ数ごとに、或いはその光ファイバの数の整数倍ごとに選別されて設置されるよう にしてもよい。
【0074】
また、上述の例では、数個〜数10個の合波器32の特性の平均値が理想的になるようにしているが、本発明はこれに限定 されるものではない。すなわち、端局10と端局20との間の伝送路に設けられる全てのラマン増幅器30のための合波器の特性の平均値が理想的になるように 合波器が適切に選択されるようにしてもよい。ただし、伝送路を構築する際の作業効率を考えると、数個〜数10個ごとのグループ毎に合波器32を選別する方 が好適である。
【0075】
さらに、図17または図22に示す方法では、複数のラマン増幅器において励起光パワーが調整されるが、この場合、合波器 32の特性の平均値が理想的な状態となっている数個のラマン増幅器の励起光を調整するようにしてもよい。例えば、図22において、ラマン増幅器30a〜30eが備える各合波器32の特性の平均値が理想的な状態に なるように選別されて配置されている場合は、ラマン増幅器30a〜30eの励起光パワーがそれぞれ少しずつ増加させられる。この構成によれば、合波器32 が適切に選別された配置された1群のラマン増幅器グループの中で励起光が調整されるので、そのような励起光の調整を行ってもラマン利得の偏差は大きくなら ない。
【0076】
(付記1)
光伝送路上に1または複数のラマン増幅器が設けられた光中継伝送システムであって、各ラマン増幅器は、ラマン増幅のための励起光を生成する複数の励起光 源、およびそれら複数の励起光源により生成される励起光を合波して上記光伝送路に供給する合波器を有し、上記光伝送路上に利得等化器が設けられる光中継伝 送システム。
(付記2)
付記1に記載の光中継伝送システムであって、上記利得等化器の利得波長特性は固定的に設定されている。
(付記 3)
付記1に記載の光中継伝送システムであって、上記利得等化器の利得波長特性は、当該光中継伝送システムの利得が予め決められた値になるように動的に調整さ れる。
(付記4)
光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられ、各ラマン増幅器においてそれぞれ複数の励起光が使用される光中継伝送システムであって、上記複数のラマン増幅 器の中の第1のラマン増幅器において上記複数の励起光の中の第1の波長の励起光のパワーが所定レベル以下に低下した際に、上記第1のラマン増幅器以外の1 または複数のラマン増幅器において、上記第1の波長またはその第1の波長と実質的に同じ波長の励起光のパワーを増加させる光中継伝送システム。
(付記5)
光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられ、各ラマン増幅器においてそれぞれ複数の励起光が使用される光中継伝送システムであって、上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器において上記複 数の励起光の中の第1の波長の励起光のパワーが所定レベル以下に低下した際に、上記第1のラマン増幅器または他のラマン増幅器において、上記第1の波長に 隣接する波長の励起光のパワーを増加させる光中継伝送システム。
(付記6)
光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられた光中継伝送システムであって、上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器およびその第1のラマン増幅器 に隣接する第2のラマン増幅器の間の光伝送路の伝送損失が増加した際、少なくとも第1および第2のラマン増幅器において励起光のパワーを増加させる光中継 伝送システム。
(付記7)
光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられた光中継伝送システムであって、上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器およびその第1のラマン増幅器 に隣接する第2のラマン増幅器の間の光伝送路の伝送損失が増加した際、それら第1および第2のラマン増幅器間の伝送路以外の伝送路に供給すべき励起光のパ ワーを増加させる光中継伝送システム。
(付記8)
光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられ、各ラマン増幅器においてそれぞれ複数の励起光が使用される光中継伝送システムであって、各ラマン増幅器は、上 記複数の励起光を合波して上記光伝送路に供給する合波器を備え、上記複数のラマン増幅器に設けられる複数の合波器の特性の平均値が予め決められた所定の特 性になるようにそれらの複数の合波器が選択されて配置される光中継伝送システム。
(付記9)
付記8に記載の光中継伝送システムであって、所定個数ごとに上記合波器の特性の平均値が予め決められた所定の特性になるように上記合波器が選択されて配置 される。
(付記10)
付記9に記載の光中継伝送システムであって、上記光伝送路がm本の光ファイバを収容する場合には、上記所定個数はmまたはmの整数倍である。
(付記11)
付記4または5に記載の光中継伝送システムであって、上記光伝送路がm本の光ファイバを収容し、上記各ラマン増幅器において、互いに波長の異なるm波の励 起光が合波されて上記m本の光ファイバにそれぞれ供給される。
(付記12)
付記4または5に記載の光中継伝送システムであって、上記光伝送路がm本の光ファイバを収容し、上記各ラマン増幅器は、m個の入力ポートおよびm個の出力 ポートを備える合波器を有し、上記m個の入力ポートには、それぞれ2波の励起光を偏波合成することにより得られる偏波合波光が入力され、上記合波器は、上 記m個の入力ポートから入力される偏波合波光をさらに合波して上記m本の光ファイバにそれぞれ供給する。
(付記13)
付記4〜付記7のいずれか1つに記載の光中継伝送システムであって、各ラマン増幅器は、複数の励起光を合波して上記光伝送路に供給する合波器を備え、所定数のラマン増 幅器ごとにそれら所定数のラマン増幅器が備える合波器の特性の平均値が予め決められた所定の特性になるようにそれらの複数の合波器が選択されて配置され、 上記所定数のラマン増幅器において励起光のパワーを増加させる。
(付記14)
付記7に記載の光中継伝送システムであって、上記光伝送路の伝送損失の増加量がLであり、励起光を増加させるべきラマン増幅器の数がa個であるとき、それ らa個のラマン増幅器による利得増加量がそれぞれL/aになるように励起光が調整される。
(付記15)
第1の光端局と第2の光端局との間の光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられ、各ラマン増幅器においてそれぞれ複数の励起光が使用される光中継伝送方法 であって、上記第1の光端局により、上記複数のラマン増幅器の各励起光のパワーが検出され、上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器において上記 複数の励起光の中の第1の波長の励起光のパワーが所定レベル以下に低下した際に、上記第1の光端局から上記第1のラマン増幅器以外の1または複数のラマン 増幅器に対して、上記第1の波長またはその第1の波長と実質的に同じ波長の励起光のパワーを増加させるための制御信号が転送され、上記1または複数のラマ ン増幅器において上記制御信号に従って励起光が調整される光中継伝送方法。
(付記16)
第1の光端局と第2の光端局との間の光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられ、各ラマン増幅器においてそれぞれ複数の励起光が使用される光中継伝送方法 であって、上記第1の光端局により、上記複数のラマン増幅器の各励起光のパワーが検出され、上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器において上記 複数の励起光の中の第1の波長の励起光のパワーが所定レベル以下に低下した際に、上記第1の光端局から上記第1のラマン増幅器対して、上記第1の波長に隣 接する波長の励起光のパワーを増加させるための制御信号が転送され、上記第1のラマン増幅器において上記制御信号に従って励起光が調整される光中継伝送方 法。
【符号の説明】
【0077】
10、20 端局
11、22 光送信機
12、21 光受信機
30 ラマン増幅器
31 励起光源
32、33 合波器
40 光源モジュール
41 偏波合成器
【技術分野】
【0001】
本発明は、光中継伝送システムに係わり、特に、ラマン増幅を利用して波長多重光を伝送する光中継伝送システムに係わる。
【背景技術】
【0002】
従来、長距離の光伝送システムでは、各中継装置において光信号をいったん電気信号に変換した状態で3R処理(タイミング補正、波形整形、信号再生)が実行 され、その後、光信号に変換されて次の中継装置に送出されていた。しかし、現在では、光信号を電気信号に変換することなく増幅する光増幅器の実用化が進ん できており、光増幅器を線形中継装置として用いる伝送システムが検討されている。そして、上述のような光/電気変換を伴う中継器を光増幅中継器に置き換え ることにより、各中継装置を構成する部品の数が大幅に削減され、信頼性が向上し、さらにコストダウンが見込まれている。
【0003】
一方、イン ターネット等の普及に伴いネットワークを介して伝送される情報の量が増加してきており、伝送システムを大容量化するための技術が盛んに研究されている。そ して、伝送システムの大容量化を実現するための方法のひとつとして、波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplex )光伝送方式が注目されている。波長多重光伝送とは、互いに波長の異なる複数の搬送波を用いて複数の信号を多重化して伝送する方式であり、1本の光ファイ バを介して伝送できる情報量が飛躍的に増加する。
【0004】
図26は、一般的な光中継伝送システムの構成図である。このシステムでは、光送信機100から光受 信機200へ波長多重光が伝送される。すなわち、光送信機100は、互いに波長の異なる信号光を合波することにより波長多重光を生成して伝送路に送出す る。一方、光受信機200は、受信した波長多重光を波長毎に分波することによって各信号を検出する。ここで、伝送路は光ファイバであり、所定間隔ごとに光 増幅器が設けられている。
【0005】
各光増幅器は、通常、それぞれエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)である。ここで、一般的な EDFAの利得波長帯域は、1.55μm帯であり、ゲインシフトEDFA(GS−EDFA)のそれは1.58μm帯である。そして、それらの帯域幅は、そ れぞれ約30nm程度である。したがって、波長多重光伝送システムの伝送路にEDFAを設ける場合には、信号光は、これらの利得波長帯域内の搬送波を利用 して伝送される。
【0006】
伝送システムの大容量化を図るためには、波長多重数を増やすことが有効であり、波長多重数を増やすためのひとつの有 効な方法は、利得波長帯域を広くすることである。そして、近年、EDFAと比較してより広い利得波長帯域を確保できる光増幅方法として、ラマン (Raman )散乱を利用するラマン増幅器が注目されている。
【0007】
ラマン増幅では、光ファイバに励起光を与えることにより、その励起光 の波長よりも長波長側に利得が得られる。例えば、1.55μm帯においては、図27(a)に示すように、励起光の波長よりも約100nm長波長側に利得が得られる。なお、この シフト量は、周波数に換算すると、13.2テラHzである。また、ラマン増幅器は、励起光さえ用意できれば任意の波長を増幅できる。
【0008】
ラマン増幅器は、上記性質を利用することにより実現される。そして、広い利得波長帯域を得るためには、図27(b) に示すように、中心周波数が互いに異なる複数の励起光が使用される。なお、この方法は、例えば、Y. Emori, et al.,"100nm bandwidth flat gain Raman amplifiers pumped and gain-equalized by12-wavelength channel WDM high power laser diodes", OFC'99 PD19 1999.に記載されている。このように、複数の励起光を使用することにより、広い利得波長帯域が確保され得る。
【0009】
図28は、ラマン増幅を利用した波長多重光伝送システムの構成図である。ラマン増幅のための励起光 は、基本的に、信号光とは逆方向に伝送されるように伝送路光ファイバに与えられる。このとき、図27(b) に示すように複数の励起光を使用する場合には、互いに発振周波数の異なる複数の光源から出力される励起光が波長合成器等により伝送路光ファイバに与えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
伝送路上に複数のラマン増幅器を必要とする長距離光伝送システムでは、技術的に改良すべき課題が残されている。具体的には、波長多重光に含まれる各信号光 のパワーを等化すること、すなわち波長多重光のための利得波長特性を平坦化することが望まれている。また、この問題は、修理や経年劣化等によって伝送路の 特性が変化した場合も考慮されるべきである。
【0011】
本発明の課題は、伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられる光中継伝送システムにおい て、その伝送特性を向上させることである。特に、各ラマン増幅器において複数の励起光を使用する光中継伝送システムの伝送特性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面における光中継システムは、光伝送路上に直列に複数のラマン増幅器が設けられた光中継伝送システムであって、上記ラマン増幅器は、ラマン増幅用光ファイバを備え、該ラマン増幅用光ファイバの両端に、各ラマン増幅器を相互に接続する光伝送路が接続され、上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器およびその第1のラマン増幅器に隣接する第2のラマン増幅器の間の光伝送路の伝送損失が増加した際、上記ラマン増幅用光ファイバに供給すべき励起光のパワーを増加させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられる光中継伝送システムにおいて、ラマン利得を変化させる要因が発生したときに、その要因に応じ て利得が調整されるので、信号の伝送特性は低下しない。
【0014】
具体的には、励起光源が故障した際には、他の励起光源のパワーが自動的に調整 されて利得が維持され、光伝送路の伝送損失が変化した際には、所定の励起光源のパワーが調整されて利得が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の光中継伝送システムの構成図である。
【図2】ラマン増幅器の構成図である。
【図3】合波器の実施例である。
【図4】図3に示す合波器を構成する2入力/2出力3dBカプラの例である。
【図5】ラマン増幅器の実施例である。
【図6】ラマン増幅器の変形例(その1)である。
【図7】ラマン増幅器の変形例(その2)である。
【図8】ラマン増幅器の変形例(その3)である。
【図9】ラマン増幅器の変形例(その4)である。
【図10】ラマン増幅器の変形例(その5)である。
【図11】ラマン増幅器の変形例(その6)である。
【図12】ラマン増幅器の変形例(その7)である。
【図13】ラマン増幅器の変形例(その8)である。
【図14】ラマン増幅用の光ファイバが増幅器内に設けられる構成を示す図である。
【図15】ラマン増幅のために偏波面が直交する励起光を生成する装置の例である。
【図16】本実施形態の光中継伝送システムの構成図である。
【図17】本実施形態の伝送システムにおいて励起光源が故障した際の動作を説明する図である。
【図18】ラマン増幅器において励起光パワーを調整する機能を説明する図である。
【図19】図17に示した機能を実現するための端局の動作のフローチャートである。
【図20】本実施形態の伝送システムにおいて励起光源が故障した際の他の動作を説明する図である。
【図21】図20に示した機能を実現するための端局の動作のフローチャートである。
【図22】本実施形態の伝送システムにおいて励起光源が故障した際のさらに他の動作を説明する図であ る。
【図23】伝送路を修理した際に励起光を調整する方法の一例を示す図である。
【図24】合波器の特性を示す図である。
【図25】伝送システムの構築方法を説明する図である。
【図26】一般的な光中継伝送システムの構成図である。
【図27】ラマン増幅の原理を説明する図である。
【図28】ラマン増幅を利用した波長多重光伝送システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の光中継伝送システムの構成図である。この伝送システムは、端局10お よび端局20を備え、それらの間は多心光ファイバケーブルにより接続されている。そして、端局10と端局20との間で双方向に信号が伝送される。
【0017】
端局10は、複数の光送信機11および複数の光受信機12を備える。一方、端局20は、複数の光受信機21および複数の光送信機22を備える。そして、各光送信機11 から送出される信号は、光ファイバを介して伝送され、対応する光受信機21により受信される。一方、各光送信機22から送出される信号は、光ファイバを介 して伝送され、対応する光受信機12により受信される。なお、各送信機11、22は、それぞれ波長多重光を送出する。すなわち、この伝送システムでは、多 心光ファイバケーブルを構成する各光ファイバを介して、それぞれ波長多重光が伝送される。
【0018】
端局10と端局20との間の伝送路には、複 数のラマン増幅器30−1〜30−nが設けられている。各ラマン増幅器30−1〜30−nは、それぞれ多心光ファイバケーブルを構成する各光ファイバを介 して伝送される波長多重光を増幅する。なお、光ファイバに励起光を与えることによりその光ファイバ自体においてラマン増幅が生じる。したがって、「ラマン 増幅器」は、光ファイバおよびその光ファイバに励起光を供給する装置から構成されるが、光ファイバに励起光を供給する装置のことを「ラマン増幅器」を呼ぶ こともある。また、各ラマン増幅器は、それぞれ光中継装置の中に設けられてもよい。
【0019】
図2は、ラマン増幅器30の構成図である。なお、ラマン増幅器30−1〜30−nは、基本的に互い に同じ構成である。そして、「ラマン増幅器30」は、ラマン増幅器30−1〜30−nの中の任意の1つを表す。
【0020】
ラマン増幅器30は、 複数の励起光源31、合波器32および合波器33を備える。複数の励起光源31は、互いに異なる波長の励起光を生成する。この実施例では、4個の励起光源 により、波長λ1 〜λ4 の励起光が生成される。なお、各励起光源31は、たとえば、レーザダイオードである。レーザダイオードは、一般に、与えられた電流に対応するパワーの光を 出力する。また、多くのレーザダイオードは、発光パワーを検出するためのバックパワーモニタ機能を備えている。以下では、各励起光源31の発光パワーは、 バックパワーモニタ機能または他の方法により検出可能であるものとする。
【0021】
合波器32は、複数の励起光源31から出力される励起光を合波する。この実施例では、合波器32により波長λ1 〜λ4 の励起光が合波される。また、合波器32は、複数の出力ポートを備え、各出力ポートからそれぞれ合波された励起光を出力する。なお、合波器32の構成につ いては、後で詳しく説明する。
【0022】
合波器33は、多心光ファイバケーブルに収容される各光ファイバ毎に設けられ、合波器32から出力され る励起光を対応する光ファイバに供給する。このとき、励起光は、信号光とは逆方向に伝送されるように光ファイバに入射される。なお、図2において、「ファイバシステム」とは、多心光ファイバケーブルに収容される各光ファイバのことを指している。
【0023】
なお、図2に示す例では、ラマン増幅器30に4個の励起光源31が設けられているが、本発明はこれに限定されるものではない。励起光源31の数は、例えば、必要な利得波長帯域幅に基づいて決定されてもよい。また、この例では、励起光源31の数と光ファイバの 数とが互いに一致しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの数が互いに異なっていてもよい。
【0024】
図3は、合波器32の実施例である。この実施例では、2n 個の励起光源 (LD1 〜LD(2n))により生成される励起光を合波して2n 個の出力ポート(P1〜P(2n)) から出力する構成を示す。
【0025】
合波器32は、n段構成の光カプラ群により実現される。ここで、各光カプラは、それぞれ、図4に示す2入力/2出力3dBカプラである。この2入力/2出力3dBカプラは、2つの入力ポー トからそれぞれ入力される光を合波して各出力ポートから出力する。そして、各出力ポートから出力される合波光は、基本的に互いに同じである。したがって、図3に示す合波器32の各出力ポートからは、それぞれ、各励起光源が生成する励起光を合波すること によって得られる合波光が出力される。このとき、各出力ポートから出力される合波光は、基本的に互いに同じである。
【0026】
図5は、ラマン増幅器30の実施例である。ここでは、ラマン増幅器30は、複数の励起光源31とし て、8(=23 )個のレーザダイオードLD1〜LD8を備えている。また、多心光ファイバケーブルは、8本の光ファイバを収容し ている。
【0027】
レーザダイオードLD1〜LD8は、互いに波長の異なる励起光を出力する。合波器32は、3段構成の光カプラ群であり、8個 の出力ポートを備える。ここで、合波器32は、図3において「n=3」の場合に相当する。そして、合波器32は、レーザダイオードLD1〜LD8 により生成される励起光を合波し、その合波励起光を各出力ポートから出力する。
【0028】
多心光ファイバケーブルに収容される各光ファイバに は、それぞれ合波器33が設けられている。各合波器33は、合波器32の対応する出力ポートから出力される合波励起光を受信し、それを対応する光ファイバ に入射する。このとき、合波励起光は、信号光と逆方向に伝送されるように入力される。これにより、レーザダイオードLD1〜LD8により生成される励起光 が各光ファイバに供給される。そして、各光ファイバにおいて、図27(b) に示すような増幅作用が得られる。
【0029】
次に、上述したラマン増幅器 の変形例を示す。なお、以下に示すラマン増幅器は、図2〜図5を参照しながら説明した構成をベースにしている。ただし、以下の実施例では、4本の光ファイバ に対して励起光を供給する場合を想定する。
【0030】
図6に示す構成では、各光ファイバ毎にEDFAが設けられている。即ち、この構成では、複数の信号光を含む波長多重光は、ラマン増幅器により増幅された後、さらにEDFAにより増幅される。
【0031】
図7に示す構成では、各光ファイバ毎に利得等化器が設けられている。この利得等化器は、例えば、ラ マン増幅器の利得の波長特性を補償するように、或いはラマン増幅器により増幅された波長多重光に含まれる各信号光のパワーが等化されるように設計または調 整される。
【0032】
図8に示す構成では、1組の上り光ファイバと下り光ファイバとの間にそれぞれ OTDR(Optical Time Domain Reflectometry )パスが設けられている。なお、OTDRパスは、各合波器33の前後に設けられる。これにより、位置判定のためのファイバセンサが実現される。
【0033】
図9に示す構成では、各光ファイバ毎にSV信号受信モジュールが設けられ、各SV信号受信モジュー ルにより受信されたSV信号は、SV制御部により処理される。ここで、SV信号は、この光伝送システムを監視するための制御信号であり、例えば、端局10 または端局20から予め決められた波長の搬送波を用いて伝送される。この場合、SV信号受信モジュールは、波長多重光からSV信号を含む信号光を分波する 分波器、およびその分波器により分波された信号光を電気信号に変換する光電素子(例えば、フォトダイオードPD)から構成される。そして、SV制御部は、 各光ファイバを介して伝送されてくるSV信号に基づいて、伝送路の正常性、或いは他の光中継装置の正常性などを検出する。なお、図6〜図9においては、励起光源は省略されている。
【0034】
図10に示す構成では、この装置から出力される波長多重光のパワーが予め決められた一定値になるようにフィードバック制御する機能(ALC:AutomaticLevel Control )が設けられている。この機能は、波長多重光の一部を分岐するための分岐カプラ、分岐カプラにより分岐された波長多重光の一部を検出する光電素子(例え ば、フォトダイオードPD)、合波器32の出力レベルを調整する光可変アッテネータ、光電素子の出力に従って光可変アッテネータの減衰量を調整する制御部 により実現される。
【0035】
図11に示す構成では、合波器32と各合波器33との間に光アイソレータが挿入されている。各光ア イソレータは、それぞれ合波器33から合波器32へ向かう光を遮断する。
【0036】
図12に示す構成では、各励起光源LD1〜LD4と合波器32との間にそれぞれ光ファイバグレー ティングフィルタが設けられている。光ファイバグレーティングフィルタとしては、狭帯域(例えば、3dB帯域幅が1nm以下)、低反射率(例えば、 1〜15パーセント)のものを用いる。これにより、各励起光源により生成される励起光の発振波長が固定される。
【0037】
図13に示す構成では、合波器33の代わりに光サーキュレータが設けられている。この場合、合波器 32から出力される励起光は、それぞれ信号光と逆方向に伝送されるように光ファイバに入射される。
【0038】
なお、図5〜図13では、ラマン増幅器に接続する光ファイバを利用してラマン増幅が行われる構成が示されている が、本発明のラマン増幅器は、図14に示すように、ラマン増幅用の光ファイバがラマン増幅器の中に設けられる構成であってもよ い。
【0039】
図15は、ラマン増幅のために偏波面が直交する励起光を生成する装置の実施例である。この装置は、 互いに波長の異なる励起光を生成する複数の光源モジュール40を有する。各光源モジュール40は、それぞれ、同一波長の励起光を生成する1組の励起光源、およびその1組の励起光源により生成される励起光を偏波合成する偏波合成器41を有する。これにより、各光源モジュール40は、それぞれ、偏波面が直交す る励起光を出力する。なお、各光源モジュール40から出力される励起光は、合波器32により合波される。そして、その合波された励起光は、複数の光ファイ バに供給される。
【0040】
図15に示す実施例では、励起光を供給すべき光ファイバの数と励起光源の数との比率が1:2であ り、1組の励起光源により生成される励起光が偏波合成されているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。即ち、本発明は、励起光を供給すべき光 ファイバの数と励起光源の数との比率が1:2であり、1組の励起光源により生成される励起光の波長が互いに異なっていてもよい。この場合、1組の励起光源 により生成される励起光は、波長合波器により合波されることになる。
【0041】
上述のように、本実施形態のラマン増幅器では、互いに波長の異な る複数の励起光が合波され、その合波励起光が複数の光ファイバにそれぞれ供給される。ここで、複数の励起光は、図3〜図4を参照しながら説明したように、複数の光素子(実施例では、光カプラ)を用いて合波される。そ して、このとき、合波励起光に含まれる各波長毎の励起光のレベルは、基本的に、互いに同じであることが望ましい。
【0042】
しかし、上記構成に おいて、各光カプラの特性(特に、分岐比)は、僅かではあるがばらつきがある。このため、合波器32により得られる合波励起光に含まれる各波長毎の励起光 のレベルは、しばしば互いに一致していない。そして、このような合波励起光を用いてラマン増幅を行うと、信号光を増幅するための利得が波長依存性を持つことになる。さらに、図1に示したように、伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられる伝送システムでは、上述のような利 得の波長特性が累積される可能性がある。
【0043】
図16は、本実施形態の光中継伝送システムの構成図である。この伝送システムは、光送信機11と光 受信機21との間の伝送路上に複数のラマン増幅器30を有する。なお、ラマン増幅器30は、図2〜図15を参照しながら説明した通りである。また、図16では1組の光送信機11と光受信機21との間の伝送路を示しているが、この伝送路は図1に示すシステムの一部であってもよい。この場合、各ラマン増幅器30は、多心光ファイバケーブ ルに収容される複数の光ファイバを介して伝送される信号を一括して増幅する。
【0044】
本実施形態では、この伝送路上に1または複数個の利得等 化器50が設けられる。具体的には、例えば、数10個のラマン増幅器に対して1つの利得等化器50が設けられる。なお、利得等化器50は、各光ファイバ毎 に設けられる。すなわち、図1に示すシステムにおいては、各光ファイバ毎にそれぞれ利得等化器50が設けられる。
【0045】
利得等化器50としては、等化特性が予め固定的に設定された等化器を用いてもよいし、等化特性を動的に変えることができる可変等化器を用いてもよい。前者 の等化器を用いる場合には、例えば、伝送システムを構築した後に信号を伝送しながら適切な等化器を選択する。具体的には、例えば、実際に波長多重光を伝送し、その波長多重光に含まれる複数の信号光のパワーが等化されるような利得等化器を選択して設置する。
【0046】
一方、可変利得等化器を用いる場合には、フィードバック制御により各可変等化器の利得特性が動的に調整される。具体的には、例えば、光受信機21により受信される波長多重光の一部を分岐し、その分岐された波長多重光に含まれる複数の信号光が等価されるように各可変等化器の特性を調整する。この構成においては、伝送路の特性が変わった場 合であっても、利得偏差は小さいままである。尚、利得等化器50は、既存のものを用いることができる。利得等化器(特に、可変利得等化器)については、例 えば、特開平11−212044号公報あるいは特開平11−224967号公報に記載されている。
【0047】
上記構成の伝送システムにおいて は、ラマン増幅器30による利得が波長依存性を持っていたとしても、等化器50を設けることによって利得偏差は小さくなる。即ち、ラマン増幅のために供給 される複数の励起光のパワーが均一でなかったとしても、この伝送路を介して伝送される波長多重光は適切に等化される。また、上記構成のシステムにおいて は、伝送路ファイバの伝送損失、非線形実行面積、およびラマン利得係数に関してばらつきがある場合でも、システム全体としての利得偏差は小さくなる。
【0048】
次に、光中継伝送システムにおいて障害が発生した時に、その影響を最小限に抑えるための方法を説明する。図17は、本実施形態の伝送システムにおいて励起光源が故障した際の動作を説明する図である。ここ では、各ラマン増幅器30において、互いに波長の異なる4つの励起光(λ1 〜λ4 )が供給されるものとする。
【0049】
図17に示す方法においては、あるラマン増幅器の中の任意の励起光源が故障すると、そのラマン増幅 器の近傍の他のラマン増幅器において対応する励起光源のパワーを調整することにより、上記故障による影響が補償される。図17に示す例では、ラマン増幅器30cにおいて励起光λ3 を生成する励起光源が故障している。この場合、ラマン増幅器30a、30b、30d、30eにおいて、それぞれ励起光λ3 を生成する励起光源のパワーが増加させられる。これにより、上記励起光源の故障により生じる利得偏差は、小さく抑えられる。なお、この方法は、励起光 (λ1 〜λ4 )の波長間隔が比較的広い場合に有効である。また、この方法は、過剰な冗長構成は必要ない。
【0050】
励起光パワーを増加させ るべきラマン増幅器(図17では、4個のラマン増幅器30a、30b、30d、30e)の数が少ないと、特定の励起光源 の負担が大きくなってしまい、その励起光源が早く劣化してしまう。一方、励起光パワーを増加させるべきラマン増幅器の数が多いと、伝送システム全体の光信号対雑音比が大きく劣化してしまう。従って、励起光パワーを増加させるラマン増幅器の数は、適切に決める必要がある。一例としては、3個程度である。
【0051】
上記方法は、端局10または20において各励起光源の状態をモニタし、異常を検出した際に対応するラマン増幅器に指示を与えることにより実現される。図18は、各ラマン増幅器30において励起光パワーを調整する機能を説明する図である。ここでは、 ラマン増幅器30は、複数の励起光源61を備える。励起光源61は、それぞれ対応する駆動回路62により駆動される。ここで、励起光源61は、レーザダイ オードである。また、駆動回路62は、制御部64により指示される電流を対応する励起光源61に供給する。検出回路63は、対応する励起光源61の発光パ ワーを検出する。発光パワーは、例えば、レーザダイオードのバックパワーに基づいて検出される。
【0052】
制御部64は、端局10または20か らの問合せに従って、各励起光源61の状態を調べる。具体的には、検出回路63の出力に基づいて励起光源61の発光パワーを検出する。このとき、励起光源 61に供給されている電流値を調べてもよい。そして、その検出結果を端局10または20に通知する。また、制御部64は、端局10または20からの指示に 従って駆動回路62を制御する。これにより、端局10または20からの指示に従って、特定の励起光源61の発光パワーが調整される。
【0053】
図19は、図17に示した機能を実現するための端局10または20の動作のフローチャートである。このフロー チャートの処理は、例えば、所定間隔ごとに実行される。
ステップS1では、各ラマン増幅器30に対して、それぞれ励起光源の状態を問 い合わせる。このとき、各ラマン増幅器30は、この問合せに応じて各励起光源の状態を調べてその結果を返送する。なお、励起光源の故障は、例えば、発光パ ワーが所定値以下であるときに検出される。ステップS2では、各ラマン増幅器30からの応答を受信し、故障している励起光源が存在するか否かを調べる。そして、故障している励起光源が存在する場合には、ステップS3以降の処理を実行し、そうでない場合には処理を終了する。
【0054】
ステップS3 では、故障している励起光源が設けられているラマン増幅器を特定する。ステップS4では、故障している励起光源の波長を特定する。ステップS5では、ス テップS3の結果に基づいて、励起光パワーを調整すべきラマン増幅器を決定する。ステップS6では、制御信号を作成する。この制御信号は、ステップS5に おいて決定されたラマン増幅器に対して、ステップS4で特定された波長の励起光パワーを高めるための指示を含む。このとき、例えば、励起光源の故障によっ て「L(dB)」の損失が発生したものとし、また、a個のラマン増幅器に対して励起光のパワーの増加を指示するものとすると、それらa個のラマン増幅器に 対して、励起光パワーの増加量として、利得に換算して「L/a(dB)」に相当する値が指示される。そして、ステップS7において、上記制御信号を送出す る。このとき、ラマン増幅器30は、制御信号に従って対応する励起光のパワーを調整する。
【0055】
図20は、本実施形態の伝送システムにおいて励起光源が故障した際の他の動作を説明する図である。 ここでは、各ラマン増幅器30において、互いに波長の異なる8つの励起光(λ1 〜λ8 )が供給されるものとする。
【0056】
図20に示す方法においては、あるラマン増幅器の中の任意の励起光源が故障したとすると、そのラマ ン増幅器において故障した励起光源の波長に隣接する波長の励起光のパワーを調整することにより、上記故障による影響が補償される。図20に示す例では、ラマン増幅器30cにおいて励起光λ5 を生成する励起光源が故障している。この場合、ラマン増幅器30cにおいて、励起光λ4 および励起光λ6 の発光パワーが増加させられる。そして、これにより、上記励起光源の故障によって生じる利得偏差が小さく抑えられる。なお、この方法は、励起光(λ1 〜λ8 )の波長間隔が狭い場合に有効である。また、図20に示す実施例では、ラマン増幅器30cの中のある励起光源が故障したときにそのラマン増幅器 30cの中の他の励起光源の光パワーを調整し ているが、他のラマン増幅器の励起光パワーを調整するようにしてもよい。例えば、ラマン増幅器30bおよび30dにおいて、それぞれ励起光λ4 および励起光λ6 の発光パワーを増加させるようにしてもよい。
【0057】
上記方法は、端局10または20において各励起光源の状態をモニタ し、異常を検出した際にその故障が発生したラマン増幅器に指示を与えることにより実現される。
【0058】
図21は、図20に示した機能を実現するための端局10または20の動作のフローチャートである。なお、ス テップS1〜S4は、図19に示したフローチャートの場合と同じである。すなわち、端局10または20は、故障が発生し たラマン増幅器および励起光源を認識する。
【0059】
ステップS11では、ステップS3およびS4の検出結果に基づいて、励起光パワーを調整すべき励起光源を決定する。具体的には、故障が発生している励起光源が生成する励起光の波長に隣接する波長の励起光を生成する励起光源を特定する。ここで、 出力パワーを調整すべき励起光源の数は、予め決められているものとする。なお、出力パワーを増加すべき励起光源の数を少なくするとその励起光源の負担が重 くなり、出力パワーを増加すべき励起光源の数を多くすると利得の平坦化が難しくなる。したがって、出力パワーを増加すべき励起光源の数は、これらの要因を 勘案して決定される。
【0060】
続いて、ステップS6では、制御信号を作成する。この制御信号は、故障が発生したラマン増幅器に対して、ステッ プS11で特定された励起光源の励起光パワーを高めるための指示を含む。このとき、励起光パワーの増加量も通知されるようにしてもよい。そして、ステップ S7において、上記制御信号を送出する。このとき、制御信号を受信したラマン増幅器30は、その制御信号に従って対応する励起光のパワーを調整する。
【0061】
図22は、本実施形態の伝送システムにおいて励起光源が故障した際のさらに他の動作を説明する図で ある。ここでは、各ラマン増幅器30において、互いに波長の異なる4つの励起光(λ1 〜λ4 )が供給されるものとする。
【0062】
図22に示す方法においては、任意の伝送路の伝送損失が増加した場合に、複数のラマン増幅器の励起 光のパワーを調整することによりその伝送損失が補償される。図22に示す例では、ラマン増幅器30bと30cとの間の伝送路の伝送損失が増加している。伝送損失が増加する原因としては、例えば、伝送路の修理や、経年劣化などが考えられる。
【0063】
このとき、もし、伝送損失が増加した伝送路に直接的 に接続されるラマン増幅器のみにおいて励起光パワーを増加させると、その励起光源の負担が重くなり、また、光ファイバの特性や合波器の分岐比のばらつきにより利得偏差が 生じてしまう。そこで、本実施形態では、伝送損失が増加した伝送路の前後の数個のラマン増幅器において励起光パワーを少しずつ増加させることにより、上述 の問題を回避している。図22に示す例では、ラマン増幅器30bと30cとの間の伝送路の伝送損失が増加した場合に、ラマ ン増幅器30a〜30dの励起光パワーをそれぞれ少しずつ増加させている。なお、励起光パワーを増加させるべきラマン増幅器の数は、例えば、3個程度である。また、各ラマン増幅器においてラマン増幅のために複数の励起光が使用されている場合には、すべての励起光のパワーをそれぞれ増加させる。
【0064】
上記方法により、特定の励起光源に負担が集中することを回避しながら、伝送システム全体として利得偏差が低減される。なお、この方法は、伝送路の伝送損失 の増加を認識した際に、端局10または20から対応する複数のラマン増幅器に指示を与えることにより実現される。
【0065】
伝送路を修理する際 には、通常、その伝送路の光ファイバは他の光ファイバに置き換えられる。ここで、各光ファイバは、それぞれ固有の波長特性を有している。すなわち、ある光 ファイバが他の光ファイバに置き換えられると、その光ファイバを利用するラマン増幅の利得も変化してしまう。以下、このことに起因する問題点を図23を参照しながら説明する。
【0066】
図23に示す例では、1対の伝送路(上り伝送路、下り伝送路)上にラマン増幅器30a〜30dが設 けられている。なお、図23では、ラマン増幅器30cについては励起光源および合波器を描いているが、他のラマン増幅器 についてはそれらは省略されている。また、励起光は、それぞれ信号光とは逆方向に伝送されるように各光ファイバに入力されるものとする。
【0067】
上記構成において、ラマン増幅器30bと30cとの間の伝送路が修理されたものとする。このとき、ラマン増幅器30cの励起光パワーを調整すると、上り伝 送路と下り伝送路との間でラマン利得が互いに異なってしまう。すなわち、上り伝送路においては、新たに設けられた光ファイバに供給される励起光パワーが調整されるのに対し、下り伝送路では、以前から使用されている光ファイバに供給される励起光パワーが調整される。この結果、上り伝送路の利得と下り伝送路の 利得とが互いに異なってしまう可能性がある。
【0068】
そこで、本実施形態では、伝送路の修理に際して増加した伝送損失を補償する際には、その 修理を行った伝送路以外の伝送路においてラマン増幅のための励起光パワーを調整するようにしてもよい。例えば、図22において、ラマン増幅器30bと30cとの間の伝送路の伝送損失が増加した場合に、ラマン増 幅器30d〜30fの励起光パワーをそれぞれ少しずつ増加させるようにしてもよい。
【0069】
なお、伝送路の修理等によって伝送損失が「L(dB)」だけ増加し、また、この 損失を補償するためにa個のラマン増幅器において励起光のパワーの増加する場合には、それらa個のラマン増幅器における励起光パワーの増加量は、利得に換 算して「L/a(dB)」に相当する。すなわち、複数のラマン増幅器に対して負担が均等に振り分けられる。
【0070】
次に、複数の励起光を合波 する合波器32の特性のばらつきを考慮して伝送システムを構築する方法について説明する。複数の光ファイバに対してそれぞれ複数の励起光を供給する場合 は、例えば、図3に示したような複数の2入力/2出力3dBカプラから構成される合波器が用いられる。このと き、この合波器の分岐比は、均一であることが望ましい。たとえば、互いの同じパワーの複数の励起光(λ1 〜λ4 )が入力されたときには、図24(a) に示すように、それら複数の励起光のパワーが均等に合波された合波励起光が各出力ポートから出力されることが望ましい。
【0071】
しかし、実際 には、分岐比が完全に1:1の2入力/2出力3dBカプラを製造することは容易ではない。このため、多数の2入力/2出力3dBカプラを組み合わせること によって合波器32を構成すると、例えば図24(b) に示すように、複数の励起光が不均一に合波されてしまうことがある。ここで、ラマン増幅の利得は、与えられた励起光のパワーに依存する。したがって、もし 励起光(λ1 〜λ4 )が図24(b) に示す合波器32により合波されて各光ファイバに供給されると、各伝送路における利得はそれぞれ平坦ではなくなってしまう。例えば、図24(b) に示すケースの場合、光ファイバ1においては、波長λ3 に対応する波長帯の利得が大きくなると共に、波長λ1 および波長λ4 に対応する波長帯の利得が小さくなってしまう。
【0072】
本実施形態で は、上記問題を解決するために、各ラマン増幅器30に設けられる合波器32の組合せを最適化する。具体的には、まず、多数の合波器32の特性(特に、分岐 比)を予め測定しておく。つづいて、特性の平均値が図24(a)に示した理想的な状態になるように数個〜数10個の合波器32を適切に選別する。そし て、選別された数個〜数10個の合波器32を1つのグループとし、それらを伝送路上に連続的に設けられるラマン増幅器のために使用する。図25に示す例では、特性の平均値が理想的な状態になるような5個の合波器32が選別されてラマン 増幅器30a〜30eのために使用されている。この場合、ノードAからノードBへ至る伝送路では、ラマン増幅器30a〜30eにより得られる利得の波長特 性が平均化される。すなわち、この間の伝送路では、合波器32のばらつきが補償された利得が得られる。
【0073】
なお、上述のシステム構築において、合波器32は、多心光ファイバケーブルに収容される光ファイバの数と同じ数ごとに、或いはその光ファイバの数の整数倍ごとに選別されて設置されるよう にしてもよい。
【0074】
また、上述の例では、数個〜数10個の合波器32の特性の平均値が理想的になるようにしているが、本発明はこれに限定 されるものではない。すなわち、端局10と端局20との間の伝送路に設けられる全てのラマン増幅器30のための合波器の特性の平均値が理想的になるように 合波器が適切に選択されるようにしてもよい。ただし、伝送路を構築する際の作業効率を考えると、数個〜数10個ごとのグループ毎に合波器32を選別する方 が好適である。
【0075】
さらに、図17または図22に示す方法では、複数のラマン増幅器において励起光パワーが調整されるが、この場合、合波器 32の特性の平均値が理想的な状態となっている数個のラマン増幅器の励起光を調整するようにしてもよい。例えば、図22において、ラマン増幅器30a〜30eが備える各合波器32の特性の平均値が理想的な状態に なるように選別されて配置されている場合は、ラマン増幅器30a〜30eの励起光パワーがそれぞれ少しずつ増加させられる。この構成によれば、合波器32 が適切に選別された配置された1群のラマン増幅器グループの中で励起光が調整されるので、そのような励起光の調整を行ってもラマン利得の偏差は大きくなら ない。
【0076】
(付記1)
光伝送路上に1または複数のラマン増幅器が設けられた光中継伝送システムであって、各ラマン増幅器は、ラマン増幅のための励起光を生成する複数の励起光 源、およびそれら複数の励起光源により生成される励起光を合波して上記光伝送路に供給する合波器を有し、上記光伝送路上に利得等化器が設けられる光中継伝 送システム。
(付記2)
付記1に記載の光中継伝送システムであって、上記利得等化器の利得波長特性は固定的に設定されている。
(付記 3)
付記1に記載の光中継伝送システムであって、上記利得等化器の利得波長特性は、当該光中継伝送システムの利得が予め決められた値になるように動的に調整さ れる。
(付記4)
光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられ、各ラマン増幅器においてそれぞれ複数の励起光が使用される光中継伝送システムであって、上記複数のラマン増幅 器の中の第1のラマン増幅器において上記複数の励起光の中の第1の波長の励起光のパワーが所定レベル以下に低下した際に、上記第1のラマン増幅器以外の1 または複数のラマン増幅器において、上記第1の波長またはその第1の波長と実質的に同じ波長の励起光のパワーを増加させる光中継伝送システム。
(付記5)
光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられ、各ラマン増幅器においてそれぞれ複数の励起光が使用される光中継伝送システムであって、上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器において上記複 数の励起光の中の第1の波長の励起光のパワーが所定レベル以下に低下した際に、上記第1のラマン増幅器または他のラマン増幅器において、上記第1の波長に 隣接する波長の励起光のパワーを増加させる光中継伝送システム。
(付記6)
光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられた光中継伝送システムであって、上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器およびその第1のラマン増幅器 に隣接する第2のラマン増幅器の間の光伝送路の伝送損失が増加した際、少なくとも第1および第2のラマン増幅器において励起光のパワーを増加させる光中継 伝送システム。
(付記7)
光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられた光中継伝送システムであって、上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器およびその第1のラマン増幅器 に隣接する第2のラマン増幅器の間の光伝送路の伝送損失が増加した際、それら第1および第2のラマン増幅器間の伝送路以外の伝送路に供給すべき励起光のパ ワーを増加させる光中継伝送システム。
(付記8)
光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられ、各ラマン増幅器においてそれぞれ複数の励起光が使用される光中継伝送システムであって、各ラマン増幅器は、上 記複数の励起光を合波して上記光伝送路に供給する合波器を備え、上記複数のラマン増幅器に設けられる複数の合波器の特性の平均値が予め決められた所定の特 性になるようにそれらの複数の合波器が選択されて配置される光中継伝送システム。
(付記9)
付記8に記載の光中継伝送システムであって、所定個数ごとに上記合波器の特性の平均値が予め決められた所定の特性になるように上記合波器が選択されて配置 される。
(付記10)
付記9に記載の光中継伝送システムであって、上記光伝送路がm本の光ファイバを収容する場合には、上記所定個数はmまたはmの整数倍である。
(付記11)
付記4または5に記載の光中継伝送システムであって、上記光伝送路がm本の光ファイバを収容し、上記各ラマン増幅器において、互いに波長の異なるm波の励 起光が合波されて上記m本の光ファイバにそれぞれ供給される。
(付記12)
付記4または5に記載の光中継伝送システムであって、上記光伝送路がm本の光ファイバを収容し、上記各ラマン増幅器は、m個の入力ポートおよびm個の出力 ポートを備える合波器を有し、上記m個の入力ポートには、それぞれ2波の励起光を偏波合成することにより得られる偏波合波光が入力され、上記合波器は、上 記m個の入力ポートから入力される偏波合波光をさらに合波して上記m本の光ファイバにそれぞれ供給する。
(付記13)
付記4〜付記7のいずれか1つに記載の光中継伝送システムであって、各ラマン増幅器は、複数の励起光を合波して上記光伝送路に供給する合波器を備え、所定数のラマン増 幅器ごとにそれら所定数のラマン増幅器が備える合波器の特性の平均値が予め決められた所定の特性になるようにそれらの複数の合波器が選択されて配置され、 上記所定数のラマン増幅器において励起光のパワーを増加させる。
(付記14)
付記7に記載の光中継伝送システムであって、上記光伝送路の伝送損失の増加量がLであり、励起光を増加させるべきラマン増幅器の数がa個であるとき、それ らa個のラマン増幅器による利得増加量がそれぞれL/aになるように励起光が調整される。
(付記15)
第1の光端局と第2の光端局との間の光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられ、各ラマン増幅器においてそれぞれ複数の励起光が使用される光中継伝送方法 であって、上記第1の光端局により、上記複数のラマン増幅器の各励起光のパワーが検出され、上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器において上記 複数の励起光の中の第1の波長の励起光のパワーが所定レベル以下に低下した際に、上記第1の光端局から上記第1のラマン増幅器以外の1または複数のラマン 増幅器に対して、上記第1の波長またはその第1の波長と実質的に同じ波長の励起光のパワーを増加させるための制御信号が転送され、上記1または複数のラマ ン増幅器において上記制御信号に従って励起光が調整される光中継伝送方法。
(付記16)
第1の光端局と第2の光端局との間の光伝送路上に複数のラマン増幅器が設けられ、各ラマン増幅器においてそれぞれ複数の励起光が使用される光中継伝送方法 であって、上記第1の光端局により、上記複数のラマン増幅器の各励起光のパワーが検出され、上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器において上記 複数の励起光の中の第1の波長の励起光のパワーが所定レベル以下に低下した際に、上記第1の光端局から上記第1のラマン増幅器対して、上記第1の波長に隣 接する波長の励起光のパワーを増加させるための制御信号が転送され、上記第1のラマン増幅器において上記制御信号に従って励起光が調整される光中継伝送方 法。
【符号の説明】
【0077】
10、20 端局
11、22 光送信機
12、21 光受信機
30 ラマン増幅器
31 励起光源
32、33 合波器
40 光源モジュール
41 偏波合成器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路上に直列に複数のラマン増幅器が設けられた光中継伝送システムであって、
上記ラマン増幅器は、ラマン増幅用光ファイバを備え、該ラマン増幅用光ファイバの両端に、各ラマン増幅器を相互に接続する光伝送路が接続され、
上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器およびその第1のラマン増幅器に隣接する第2のラマン増幅器の間の光伝送路の伝送損失が増加した際、上記ラマン増幅用光ファイバに供給すべき励起光のパワーを増加させる光中継伝送システム。
【請求項1】
光伝送路上に直列に複数のラマン増幅器が設けられた光中継伝送システムであって、
上記ラマン増幅器は、ラマン増幅用光ファイバを備え、該ラマン増幅用光ファイバの両端に、各ラマン増幅器を相互に接続する光伝送路が接続され、
上記複数のラマン増幅器の中の第1のラマン増幅器およびその第1のラマン増幅器に隣接する第2のラマン増幅器の間の光伝送路の伝送損失が増加した際、上記ラマン増幅用光ファイバに供給すべき励起光のパワーを増加させる光中継伝送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2010−200361(P2010−200361A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100918(P2010−100918)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【分割の表示】特願2001−30836(P2001−30836)の分割
【原出願日】平成13年2月7日(2001.2.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【分割の表示】特願2001−30836(P2001−30836)の分割
【原出願日】平成13年2月7日(2001.2.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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