説明

光伝送システム、親局装置、および子局装置

【課題】親局装置の簡素化を図るとともにCNR劣化を改善する。
【解決手段】子局装置50の上り送信部は、受信RF信号をダウンコンバートする周波数変換部52と、デジタル信号に変換するA/D変換部54と、パラレルデジタル信号をシリアルデジタル信号に変換する送信デジタル信号処理部55と、該シリアルデジタル電気信号を光信号に変換して光ファイバFb2に出力する光送信部56とを備え、親局装置1の上り受信部は、子局装置50から入力される光信号をデジタル信号に変換する子局装置50と同数の光受信部3と、光受信部3の数よりも少ない複数のデジタル信号を入力し、各デジタル信号をパラレルデジタル信号に変換するとともにデジタル加算を行う受信デジタル信号処理部4と、加算デジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換部5と、アナログ信号を合成する合成器6と、送信RF信号にアップコンバートする周波数変換部9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として携帯電話等の移動体通信システムの電波不感地対策用中継システムに用いられる光伝送システム、親局装置、および子局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の無線通信において、高層ビル内、地下街、トンネル等、基地局電波の届きにくいエリアにサービスを提供するための方法として、無線信号で光信号を強度変調して光ファイバで伝送する技術であるRoF技術(Radio on FiberあるいはRadio over Fiber)による光リピータがある(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0003】
図6は、光リピータ方式の従来例を示す光伝送システムの概略ブロック図である。図6において、基地局側から親局装置100に入力されたRF信号は、合分波器101と増幅器102を介した後、E/O変換器103によって電気信号が光信号に変換される。この光信号は、光分配器105によって複数の子局装置150の個数に対応した数にパワー分配され、それぞれ光ファイバ106によって複数の子局装置150に伝送される。
【0004】
子局装置150に入力された光信号は、O/E変換器152によって電気信号に変換される。変換された電気信号であるRF信号は、増幅器153によって増幅され、さらに増幅器154によって増幅された後、合分波器155およびアンテナ156を介して放射出力される。
【0005】
アンテナ156を介して子局装置150に入力されたRF信号は、合分波器155と増幅器157を介した後、E/O変換器158によって光信号に変換される。この光信号は、光ファイバ159によって親局装置100に伝送される。
【0006】
親局装置100に入力された各子局装置150からの光信号は、O/E変換器107によって電気信号であるRF信号に変換され、増幅器108、合成器110、合分波器101を介して、基地局に伝送される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】菅沼、他「1.5GHzデジタル移動通信用トンネルブースタ」,NTT DOCOMOテクニカルジャーナル、Vol.2,No.2,PP.20−23,1994
【非特許文献2】福家、他「光伝送ブースタ」,NTT DOCOMOテクニカルジャーナル、Vol.5,No.1,PP.29−32,1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1,2に示されるような従来の光伝送システムの場合、接続される子局装置数の増大に伴い、親局装置への上り回線部部分の部品点数が増加するとともに、消費電力も増大する。具体的に、図6に示した親局装置100内の受信部109の数が子局装置数分、必要であり、子局装置150の数の増大に伴って受信部109の数が増大する。
【0009】
また、親局装置内で、全子局装置からのRF信号を合成するため、子局装置数の増大に伴って雑音成分が増加する。一般に、RoF伝送方式の場合、E/O変換器からO/E変換器までの信号のCNR特性は次式で表されることが知られている。
【数1】

ここで、m:光変調度、S:受光器の受光感度[A/W]、Pr:受光パワー[W]、Ith:等価熱雑音電流密度[A/√(Hz)]、q:電荷[C]、Id:受光器の暗電流[A]、RIN:レーザの相対雑音強度、B:信号帯域幅[Hz]である。この式の分子は信号強度を表し、分母は雑音強度を表しており、分母の雑音は次のように分類することができる。すなわち、熱雑音(Ith・B)、暗電流雑音(2qId・B)、受光器のショット雑音(2qSPr・B)、RIN雑音(RIN(SPr)・B)である。よって、親局装置内では、これら全ての雑音成分と、増幅器等で付加される熱雑音とが、子局装置分合成され、親局装置へ伝送される。さらには信号の有無に関わらず、上記雑音成分は常に子局装置の数分、合成され、親局装置へ伝送される。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、親局装置の部品点数を削減して装置の簡素化を図るとともに、CNR劣化を改善し得る光伝送システム、親局装置、および子局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる光伝送システムは、1つの親局装置に複数の子局装置が光ファイバで接続される光伝送システムにおいて、各子局装置の上り送信部は、前記子局装置に入力される受信RF信号を受信デジタル電気信号に変換するA/D変換部と、前記受信デジタル電気信号を光信号に変換して前記光ファイバに出力する光送信部と、を備え、前記親局装置の上り受信部は、前記光ファイバを介して前記子局装置から入力される光信号をデジタル電気信号に変換する前記子局装置数と同数の光受信部と、前記光受信部から出力された複数の前記デジタル電気信号を入力し、各デジタル電気信号のデジタル加算を行う前記光受信部の数よりも少ない単数あるいは複数の受信デジタル信号処理部と、前記各受信デジタル信号処理部から出力された加算デジタル電気信号を加算アナログ電気信号に変換する単数あるいは複数のD/A変換部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる光伝送システムは、上記発明において、複数の前記D/A変換部と、前記各D/A変換部から出力される加算アナログ電気信号を合成する合成器と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる光伝送システムは、上記発明において、前記A/D変換部は、前記子局装置に入力される前記受信RF信号の周波数をダウンコンバートして前記受信デジタル電気信号に変換する子局上り周波数変換部を含み、前記各D/A変換部から出力された加算アナログ電気信号あるいは前記合成器から出力された電気信号を送信RF信号にアップコンバートして出力する親局上り周波数変換部をさらに備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明にかかる光伝送システムは、上記発明において、前記各D/A変換部は、前記加算デジタル電気信号をRF加算アナログ電気信号に変換して出力し、前記合成器は前記各D/A変換部から出力されるRF加算アナログ電気信号を合成して送信RF信号を出力することを特徴とする。
【0015】
本発明にかかる光伝送システムは、上記発明において、前記親局装置の上り受信部は、前記各D/A変換部の出力側にスイッチを設け、前記受信デジタル信号処理部は、入力される前記デジタル電気信号の信号レベルをモニタし、すべてのデジタル電気信号の信号レベルが閾値以下の場合、対応する下段の前記スイッチを開にすることを特徴とする。
【0016】
本発明にかかる光伝送システムは、上記発明において、前記受信デジタル信号処理部は、入力される前記デジタル電気信号の信号レベルをモニタし、該信号レベルが閾値以下の場合、該デジタル電気信号が示すデータ値をゼロとして処理することを特徴とする。
【0017】
本発明にかかる光伝送システムは、上記発明において、各子局装置の上り送信部は、前記A/D変換部の後段に、前記受信デジタル電気信号の信号レベルが閾値以下であるか否かを示す付加情報を付加して送信する送信デジタル信号処理部を備え、前記親局装置の上り受信部は、前記各D/A変換部の出力側にスイッチを設け、前記受信デジタル信号処理部は、入力される全ての前記デジタル電気信号の付加情報が閾値以下を示す場合、対応する下段の前記スイッチを開にすることを特徴とする。
【0018】
本発明にかかる光伝送システムは、上記発明において、前記受信デジタル信号処理部は、入力される前記デジタル電気信号の付加情報が閾値以下を示す場合、該デジタル電気信号が示すデータ値をゼロとして処理することを特徴とする。
【0019】
本発明にかかる親局装置は、複数の子局装置が光ファイバで接続される光伝送システムの親局装置において、上り受信部は、前記光ファイバを介して前記子局装置から入力される光信号をデジタル電気信号に変換する前記子局装置数と同数の光受信部と、前記光受信部から出力された複数の前記デジタル電気信号を入力し、各デジタル電気信号のデジタル加算を行う前記光受信部の数よりも少ない単数あるいは複数の受信デジタル信号処理部と、前記各受信デジタル信号処理部から出力された加算デジタル電気信号を加算アナログ電気信号に変換する単数あるいは複数のD/A変換部と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明にかかる親局装置は、上記発明において、複数の前記D/A変換部と、前記各D/A変換部から出力される加算アナログ電気信号を合成する合成器と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明にかかる親局装置は、上記発明において、前記各D/A変換部から出力された加算アナログ電気信号あるいは前記合成器から出力された電気信号を送信RF信号にアップコンバートして出力する親局上り周波数変換部をさらに備えたことを特徴とする。
【0022】
本発明にかかる親局装置は、上記発明において、前記各D/A変換部は、前記加算デジタル電気信号をRF加算アナログ電気信号に変換して出力し、前記合成器は前記各D/A変換部から出力されるRF加算アナログ電気信号を合成して送信RF信号を出力することを特徴とする。
【0023】
本発明にかかる子局装置は、1つの親局装置に光ファイバで接続される光伝送システムの子局装置において、上り送信部は、入力される受信RF信号の周波数をダウンコンバートして受信デジタル電気信号に変換するA/D変換部と、前記受信デジタル電気信号を光信号に変換して前記光ファイバに出力する光送信部と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明にかかる子局装置は、上記発明において、前記A/D変換部は、当該子局装置に入力される受信RF信号の周波数をダウンコンバートして受信デジタル電気信号に変換する子局上り周波数変換部を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、親局装置の部品点数を削減して装置の簡素化を図れるとともに、CNR劣化を改善し得る光伝送システム、親局装置および子局装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本実施の形態の光伝送システムの構成例を示す概略ブロック図である。
【図2】図2は、図1に示した親局装置の受信デジタル信号処理部の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本実施の形態の変形例である光伝送システムにおける子局装置の送信デジタル信号処理部の詳細構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、本実施の形態の変形例である光伝送システムにおける親局装置の受信デジタル信号処理部の詳細構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、他の実施の形態の光伝送システムの構成例を示す概略ブロック図である。
【図6】図6は、光リピータ方式の従来例を示す光伝送システムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明にかかる光伝送システム、親局装置および子局装置の実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0028】
図1は、本実施の形態の光伝送システムの構成例を示す概略ブロック図である。本実施の形態の光伝送システムは、1つの親局装置1に複数の子局装置50(50−1〜50−I)が光ファイバFb1,Fb2を介してそれぞれ接続される。なお、図1では、親局装置1に接続される子局装置50の数Iは、一例として16としている。光ファイバFb1は、親局装置1から子局装置50への下り回線を構成し、16本である。また、光ファイバFb2は、子局装置50から親局装置1への上り回線を構成し、16本である。すなわち、親局装置1と子局装置50とは、16対の光ファイバFb1,Fb2で接続されている。
【0029】
ここで、子局装置50内で上り回線を構成する上り送信部は、増幅器51と、RF信号をダウンコンバートする周波数変換部52と、帯域制限フィルタ53と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部54と、パラレルデジタル信号をシリアルデジタル信号に変換する送信デジタル信号処理部55と、シリアルデジタル信号を光信号に変換する光送信部56とを備える。なお、A/D変換部54は、Nビットで量子化を行っている。また、送信デジタル信号処理部55は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)で実現される。
【0030】
一方、親局装置1内で上り回線を構成する上り受信部は、光信号をシリアルデジタル信号に変換する光受信部3(3−1〜3−16)と、変換されたシリアルデジタル信号をパラレルデジタル信号に変換するとともに複数J(=4)のパラレルデジタル信号を加算する複数の受信デジタル信号処理部4(4−1〜4−K)と、受信デジタル信号処理部4から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換部5(5−1〜5−K)と、変換されたアナログ信号を合成する合成器6と、帯域制限フィルタ8と、帯域制限フィルタ8から出力されたアナログ信号をアップコンバートする周波数変換器9と、D/A変換部5と合成器6との間を断続するスイッチSW(SW−1〜SW−K)とを備える。なお、光受信部3は、16個設けられ、子局装置50と同数である。各受信デジタル信号処理部4は、それぞれM個(=4)の光受信部3からの信号を処理する。なお、M=4は一例であり、たとえば、M=8であってもよい。Mは、2≦M≦Iを満たす自然数である。また、受信デジタル信号処理部4、D/A変換部5、スイッチSWの各個数Kは、I=16であり、M=4であるため、K≧I/Mによって4になる(Kは自然数)。以下、M=4、K=4を一例として説明する。したがって、受信デジタル信号処理部4は、全部で4個設けられる。D/A変換部5およびスイッチSWも、受信デジタル信号処理部4にそれぞれ対応して設けられ、4個である。すなわち、受信デジタル信号処理部4、D/A変換部5、スイッチSWは、4つの光受信部3毎に設けられる。この結果、受信デジタル信号処理部4は、接続される子局装置50の個数16よりも少ない個数となる。また、受信デジタル信号処理部4は、FPGAで実現される。
【0031】
ここで、受信デジタル信号処理部4は、4つのシリアルデジタル信号をパラレルデジタル信号に変換してデジタル加算を行う。このため、D/A変換部5は、子局装置50側のA/D変換部54のNビット分解能に対して、1つの受信デジタル信号処理部4に割り付けられる光受信部3の数がMである場合、(N+logM/log2)ビット分解能を持たせるようにしている。図1では、Mが4であるので、D/A変換部5は、(N+2)ビット分解能をもっている。また、1つの受信デジタル信号処理部4に、8つの光受信部3(M=8)が割り付けられる場合、D/A変換部5は、(N+3)ビット分解能をもたせるようにしている。この場合、受信デジタル信号処理部4、D/A変換部5、スイッチSWの各個数は、さらに半減した4つのみで済む。
【0032】
これにより、アンテナ71(71−1〜71−16)を介して入力されたRF信号は、合分波器70、増幅器51を介して周波数変換部52に入力され、所定の周波数にダウンコンバートされる。このダウンコンバートされたアナログ信号は、帯域制限フィルタ53を介することにより所定の不要波が除去され、A/D変換部54に入力されてパラレルデジタル信号に変換される。変換されたパラレルデジタル信号は送信デジタル信号処理部55によってシリアルデジタル信号に変換される。変換されたシリアルデジタル信号は、光送信部56によって光信号に変換されて親局装置1側に伝送される。
【0033】
親局装置1に入力された光信号は、各光受信部3(3−1〜3−16)によってシリアルデジタル信号に変換される。変換された16個のシリアルデジタル信号は、4つのシリアルデジタル信号毎に、受信デジタル信号処理部4によってパラレルデジタル信号に変換されるとともにデジタル加算される。デジタル加算されたパラレルデジタル信号は、対応するD/A変換部5毎にアナログ信号に変換される。変換された全て(4つ)のアナログ信号は、合成器6によって合成される。合成されたアナログ信号は帯域制限フィルタ8を介して所定の不要波が除去された後、周波数変換部9でアンプコンバートされたRF信号の周波数に変換される。変換されたアナログ信号は合分波器12を介して基地局側に伝送される。
【0034】
すなわち、本実施の形態では、図6中の上り回線における子局装置150のE/O変換部158と親局装置100のO/E変換部107間をデジタル化したものである。なお、光送信部56と光受信部3との間は、デジタル信号が光信号として伝送されることになる。これにより、上り回線部分につき、親局装置1の部品点数を削減して装置の簡素化を図れるものである。
【0035】
なお、下り回線については、親局装置1に入力されたRF信号は、合分波器12を経た後、周波数変換部13により所定の周波数にダウンコンバートされる。そして、帯域制限フィルタ14を経て所定の不要波を除去した後、A/D変換部15によってデジタル信号に変換される。なお、A/D変換部15は、D/A変換部5、受信デジタル信号処理部4、周波数変換部13,9、送信デジタル信号処理部17とともに、基準クロック発生器16の基準クロックに同期して動作する。変換されたパラレルデジタル信号は、FPGAによって実現される送信デジタル信号処理部17によってシリアルデジタル信号に変換される。変換されたシリアルデジタル信号は、光送信部18に入力され、光信号に変換される。この際、基準クロック発生器16の基準クロックは光送信部19に入力されて光信号に変換される。WDMカプラ20は、光送信部18および光送信部19から入力される光信号を波長多重し、基準クロックを波長多重した波長多重光として光分配器21に出力する。波長多重光は、光分配器21によって16分配され、光ファイバFb1を介してそれぞれ16個の子局装置50−1〜50−16に伝送される。
【0036】
子局装置50(50−1〜50−16)に入力されたクロック波長多重化信号は、WDMカプラ60によって所定の周波数の光信号と基準クロックの光信号とに分波される。各光信号は、光受信部61,62によってデジタル信号に変換される。光受信部61によって変換されたシリアルデジタル信号は、FPGAによって実現される受信デジタル信号処理部63によってパラレルデジタル信号に変換される。変換されたパラレルデジタル信号は、D/A変換部65によってシリアルアナログ信号に変換される。そして、帯域制限フィルタ66によって所定の不要波が除去された後、周波数変換部67によりRF信号の周波数までアップコンバートされる。さらに、バンドパスフィルタ68、増幅器69、合分波器70を介してアンテナ71からRF信号を放射する。なお、受信デジタル信号処理部63、D/A変換部65、周波数変換部67,52、A/D変換部54、送信デジタル信号処理部55は、光受信部62から出力されたデジタル信号である基準クロックに同期して動作する。
【0037】
ところで、親局装置1の受信デジタル信号処理部4(4−1〜4−4)は、子局装置50から入力されるデジタル信号(光受信部3の出力)のレベルをモニタし、入力される全て(4つの)の子局装置50からのデジタル信号レベルのモニタ値が閾値レベル以下の場合には、対応する後段のスイッチSW(SW−1〜SW−4)を開にする。この後段のスイッチSW(SW−1〜SW−4)を開にすることによって、D/A変換部4からの量子化雑音や熱雑音の出力がなくなる。この閾値レベルは、基地局装置における最低受信感度に相当する信号レベルであることが好ましい。これにより、親局装置1内の合成器6に入力される雑音の低減が図れ、CNRを改善することができる。
【0038】
さらに、受信デジタル信号処理部4(4−1〜4−4)は、入力されるデジタル信号(光受信部3の出力)のレベルをモニタし、該デジタル信号レベルのモニタ値が閾値レベル以下の場合、該デジタル信号のパラレルデジタルデータ値をゼロ(足切り)にして出力するようにしてもよい。これにより、D/A変換部5の雑音低減を図ることができる。
【0039】
たとえば、図2に示すように、受信デジタル信号処理部4−1は、光受信部3−1〜3−4から入力されるデジタル信号をそれぞれS/P変換部41−1〜41−4でパラレルデジタル信号に変換し、加算部42で加算したデジタル信号をD/A変換部5−1に出力する。ここで、レベル判定部43は、各S/P変換部41−1〜41−4が受信したデジタル信号のレベルをモニタし、全てのデジタル信号のレベルが閾値レベル以下である場合、スイッチSW−1を開にして受信デジタル信号処理部4−1からの出力であってD/A変換部5−1によって変換されたアナログ信号を合成器6側に出力しないようにする。
【0040】
また、レベル判定部43は、各S/P変換部41−1〜41−4が受信したデジタル信号のレベルをモニタし、デジタル信号のレベルが閾値レベル以下であるデジタル信号がある場合、加算器42においてこのデジタル信号のパラレルデジタルデータ値をゼロにして加算させる。これによって閾値レベル以下のデジタル信号による雑音を低減することができる。なお、全てのデジタル信号が閾値レベル以下である場合、スイッチSW−1を開にすることが好ましい。これは、全てのデジタル信号のパラレルデジタルデータ値をゼロにしても、D/A変換部5−1による雑音を低減できるからである。
【0041】
さらに変形例として、子局装置50側に着目し、送信デジタル信号処理部55が、A/D変換部54から入力されるデジタル信号のレベルをモニタし、デジタル信号レベルのモニタ値が閾値レベル以下の場合には、信号無しの情報(1ビット)を付加したデジタル信号として親局装置1側に送信する。一方、親局装置1の受信デジタル信号処理部4は、付加される情報(1ビット)の有無をモニタし、情報が付加されている場合にスイッチSWを開にし、あるいはパラレルデジタルデータ値をゼロにするようにしてもよい。
【0042】
たとえば、図3に示すように、子局装置50側の送信デジタル信号処理部55は、A/D変換部54からのデジタル信号をP/S変換部81でシリアルデジタル信号に変換し、付加部83で付加情報が付加されたデジタル信号を光送信部56に出力する。ここで、レベル判定部82が、デジタル信号レベルのモニタ値が閾値レベル以下の場合、デジタル信号レベルが閾値レベル以下であることを示す付加情報(1ビット)に設定して出力される。
【0043】
一方、図4に示すように親局装置1側の受信デジタル信号処理部4−1は、図2と同様な構成であるが、レベル判定部43に替えて付加判定部44を設けている。付加判定部44は、各S/P変換部41−1〜41−4が受信したデジタル信号の付加情報をモニタし、全ての付加情報が、閾値レベル以下を示すものであるか否かをモニタし、全てのデジタル信号が閾値レベル以下を示す場合、スイッチSW−1を開にする。また、付加判定部44は、各S/P変換部41−1〜41−4が受信したデジタル信号の付加情報をモニタし、閾値レベル以下を示すものがある場合、このデジタル信号のパラレルデジタルデータ値をゼロにして加算器42で加算させる。
【0044】
この変形例でも、量子化雑音の低減が図れ、あるいはD/A変換部5での雑音の低減が図れ、CNRを改善することができる。しかも、受信デジタル信号処理部4での閾値レベル判定にかかる負荷が軽減され、迅速な判定処理を行うことができる。
【0045】
なお、D/A変換部5は、(N+logM/log2)ビット分解能を持たせるようにしているが、D/A変換処理は、A/D変換処理に比して高速処理および高分解能処理が可能であり、伝送速度の低下が生じることがない。
【0046】
また、上述した実施の形態および変形例では、送信デジタル信号処理部55がパラレル信号をシリアル信号に変換し、受信デジタル信号処理部4(4−1〜4−4)がシリアル信号をパラレル信号に変換する処理を行うようにしている。しかし、A/D変換部54が1出力に対応するものであれば、パラレル信号をシリアル信号に変換する機能のみとしての送信デジタル信号処理部55は設ける必要がない。さらに、D/A変換部5が1入力に対応するものであれば、受信デジタル信号処理部4(4−1〜4−4)の機能のうち、シリアル信号をパラレル信号に変換する機能(S/P部41−1〜41−4)を有する必要はない。
【0047】
図5は、他の実施の形態の光伝送システムの構成例を示す概略ブロック図である。図5に示す光伝送システムは、図1に示す光伝送システムにおいて、親局装置1、子局装置50(50−1〜50−I)を、それぞれ、親局装置1A、子局装置50A(50A−1〜50A−I)に置き換えたものである。
【0048】
親局装置1Aは、親局装置1から、周波数変換器9および周波数変換部13を削除し、A/D変換部15をA/D変換部15Aに置き換え、D/A変換部5(5−1〜5−K)をD/A変換部5A(5A−1〜5A−K)に置き換えたものである。子局装置50A(50A−1〜50A−I)は、子局装置50(50−1〜50−I)から、周波数変換部52、67および帯域制限フィルタ53、66を削除し、A/D変換部54をA/D変換部54Aに置き換え、D/A変換部65をD/A変換部65Aに置き換えたものである。
【0049】
A/D変換部15A、54AおよびD/A変換部5A(5A−1〜5A−K)、65Aは、いずれもサンプリング周波数をRF信号の帯域幅の二倍以上とすることで、周波数変換部無しにアナログ信号を所定の周波数にダウンコンバートまたはデジタル信号を所定のRF周波数にアップコンバートすることが可能であるので、図1に示す光伝送システムよりも簡易な構成とすることが可能である。
【0050】
なお、上記実施の形態では、受信デジタル信号処理部4は複数の受信デジタル信号処理部4−1〜4−Kで構成されており、D/A変換部5も複数のD/A変換部5−1〜5−Kで構成されているが、受信デジタル信号処理部4を1つのFPGAで構成し、このFPGAの内部でパラレルデジタル信号の合成処理をした後に、1つのD/A変換部でデジタル信号をアナログ信号に変換するようにしてもよい。この場合、合成器6は設けなくてもよい。また、この場合、D/A変換部5の出力側に設けるスイッチSWも1つでよい。
【0051】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1、1A 親局装置
3(3−1〜3−I) 光受信部
4(4−1〜4−K) 受信デジタル信号処理部
5、5A D/A変換部
6 合成器
8、53 帯域制限フィルタ
9、52 周波数変換部
50(50−1〜50−I)、50A(50A−1〜50A−I) 子局装置
41−1〜41−4 S/P変換部
42 加算部
43、82 レベル判定部
44 付加判定部
54、54A A/D変換部
55 送信デジタル信号処理部
56 光送信部
81 P/S変換部
83 付加部
SW(SW−1〜SW−K) スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの親局装置に複数の子局装置が光ファイバで接続される光伝送システムにおいて、
各子局装置の上り送信部は、
前記子局装置に入力される受信RF信号を受信デジタル電気信号に変換するA/D変換部と、
前記受信デジタル電気信号を光信号に変換して前記光ファイバに出力する光送信部と、
を備え、
前記親局装置の上り受信部は、
前記光ファイバを介して前記子局装置から入力される光信号をデジタル電気信号に変換する前記子局装置数と同数の光受信部と、
前記光受信部から出力された複数の前記デジタル電気信号を入力し、各デジタル電気信号のデジタル加算を行う前記光受信部の数よりも少ない単数あるいは複数の受信デジタル信号処理部と、
前記各受信デジタル信号処理部から出力された加算デジタル電気信号を加算アナログ電気信号に変換する単数あるいは複数のD/A変換部と、
を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
複数の前記D/A変換部と、前記各D/A変換部から出力される加算アナログ電気信号を合成する合成器と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光伝送システム。
【請求項3】
前記A/D変換部は、前記子局装置に入力される前記受信RF信号の周波数をダウンコンバートして前記受信デジタル電気信号に変換する子局上り周波数変換部を含み、
前記各D/A変換部から出力された加算アナログ電気信号あるいは前記合成器から出力された電気信号を送信RF信号にアップコンバートして出力する親局上り周波数変換部をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の光伝送システム。
【請求項4】
前記各D/A変換部は、前記加算デジタル電気信号をRF加算アナログ電気信号に変換して出力し、前記合成器は前記各D/A変換部から出力されるRF加算アナログ電気信号を合成して送信RF信号を出力することを特徴とする請求項2に記載の光伝送システム。
【請求項5】
前記親局装置の上り受信部は、
前記各D/A変換部の出力側にスイッチを設け、
前記受信デジタル信号処理部は、
入力される前記デジタル電気信号の信号レベルをモニタし、すべてのデジタル電気信号の信号レベルが閾値以下の場合、対応する下段の前記スイッチを開にすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光伝送システム。
【請求項6】
前記受信デジタル信号処理部は、
入力される前記デジタル電気信号の信号レベルをモニタし、該信号レベルが閾値以下の場合、該デジタル電気信号が示すデータ値をゼロとして処理することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の光伝送システム。
【請求項7】
各子局装置の上り送信部は、
前記A/D変換部の後段に、前記受信デジタル電気信号の信号レベルが閾値以下であるか否かを示す付加情報を付加して送信する送信デジタル信号処理部を備え、
前記親局装置の上り受信部は、
前記各D/A変換部の出力側にスイッチを設け、
前記受信デジタル信号処理部は、
入力される全ての前記デジタル電気信号の付加情報が閾値以下を示す場合、対応する下段の前記スイッチを開にすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光伝送システム。
【請求項8】
前記受信デジタル信号処理部は、
入力される前記デジタル電気信号の付加情報が閾値以下を示す場合、該デジタル電気信号が示すデータ値をゼロとして処理することを特徴とする請求項7に記載の光伝送システム。
【請求項9】
複数の子局装置が光ファイバで接続される光伝送システムの親局装置において、
上り受信部は、
前記光ファイバを介して前記子局装置から入力される光信号をデジタル電気信号に変換する前記子局装置数と同数の光受信部と、
前記光受信部から出力された複数の前記デジタル電気信号を入力し、各デジタル電気信号のデジタル加算を行う前記光受信部の数よりも少ない単数あるいは複数の受信デジタル信号処理部と、
前記各受信デジタル信号処理部から出力された加算デジタル電気信号を加算アナログ電気信号に変換する単数あるいは複数のD/A変換部と、
を備えたことを特徴とする親局装置。
【請求項10】
複数の前記D/A変換部と、前記各D/A変換部から出力された加算アナログ電気信号を合成する合成器と、を備えたことを特徴とする請求項9に記載の親局装置。
【請求項11】
前記各D/A変換部から出力された加算アナログ電気信号あるいは前記合成器から出力された電気信号を送信RF信号にアップコンバートして出力する親局上り周波数変換部をさらに備えたことを特徴とする請求項9または10に記載の親局装置。
【請求項12】
前記各D/A変換部は、前記加算デジタル電気信号をRF加算アナログ電気信号に変換して出力し、前記合成器は前記各D/A変換部から出力されるRF加算アナログ電気信号を合成して送信RF信号を出力することを特徴とする請求項10に記載の親局装置。
【請求項13】
1つの親局装置に光ファイバで接続される光伝送システムの子局装置において、
上り送信部は、
入力される受信RF信号の周波数をダウンコンバートして受信デジタル電気信号に変換するA/D変換部と、
前記受信デジタル電気信号を光信号に変換して前記光ファイバに出力する光送信部と、
を備えたことを特徴とする子局装置。
【請求項14】
前記A/D変換部は、当該子局装置に入力される受信RF信号の周波数をダウンコンバートして受信デジタル電気信号に変換する子局上り周波数変換部を含むことを特徴とする請求項13に記載の子局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−217174(P2012−217174A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−84279(P2012−84279)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】