説明

光伝送装置

【課題】 光ファイバ伝送時に発生するSBSを効果的に抑圧することができる光伝送装置を提供する。
【解決手段】 信号レベル検知部40は、入力信号10のレベルを検知して、入力信号10のレベルを示す入力信号レベルを出力する。信号周波数検知部50は、入力信号10の周波数を検知して、入力信号10の周波数を示す入力信号周波数を出力する。制御部30は、入力信号レベル及び入力信号周波数に応じて、光源20から出力される光信号のFM変調指数が概一定となるように、光源20に供給するバイアス電流を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を伝送する光伝送装置に関し、より特定的には、長距離光ファイバ伝送時に発生するSBS(誘導ブリュアン散乱)を抑圧する光伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバを用いた長距離伝送が普及しつつある。今後はさらなる長距離伝送を目指して、より高出力な光源を用いた光伝送装置が必要となるものと考えられる。しかし、高出力な光信号を光ファイバに入力すると、光ファイバから反射される反射光によってSBS(誘導ブリュアン散乱)が生じて、光信号の伝送特性が急激に劣化することが知られている。また、SBSは、特に変調光の線幅が狭いほど発生しやすくなるため、光変調度(光源への入力信号レベル)が小さい場合に発生する可能性が高くなる。
【0003】
このようなSBSを抑圧するために、例えば、特許文献1には、光ファイバから反射される反射光のレベルに基づいて、光源の出力を調整する光伝送装置が開示されている。図11は、従来の光伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。図11において、従来の光伝送装置は、光源920、制御部930、分波部970、光検出部980、及び光ファイバ990を備える。光源920は、電気信号である入力信号910を光信号に変換して出力する。分波部970は、光源920が出力した光信号を光ファイバ990に入力し、かつ光ファイバ990から反射された反射光を光検出部980に入力する。
【0004】
光検出部980は、分波部970を経由して入力された光ファイバ990からの反射光のレベルを検出する。制御部930は、光検出部980で検出された反射光のレベルに基づいて、光源920のバイアス電流を制御する。具体的には、制御部930は、光検出部980で検出された反射光のレベルが増加した場合に、光源920のバイアス電流を低下させる。これによって、従来の光伝送装置は、光ファイバ990への入射光レベルを低下させてSBSの発生を抑圧する。
【特許文献1】特開平5−316045号公報
【特許文献2】特開平9−069814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の光伝送装置においては、光ファイバ990からの反射光レベルの変動が微量であっても発生するSBSが大きく変動するため、微量な反射光レベルの変動を精度良く検知して、光源920に供給するバイアス電流を制御することが難しいという問題点があった。図12は、従来の光伝送装置における問題点を説明する図である。図12において、実線は光源920に入力される信号(入力信号910)のレベルを、破線は光ファイバ990によって伝送される光信号の3次歪特性(実測値)を示している。図12を参照して、従来の光伝送装置では、入力信号910のレベルが−4dB未満のときにSBSが発生しはじめ、入力信号910のレベルの減少に伴って反射光レベルが増加し、歪特性が劣化している。
【0006】
また、SBSが発生し始める付近においては、入力信号910のレベルが−4dBmから−5dBmに変化する間に、反射光レベルが0.2dBm程度しか変動していないことがわかる。このため、従来の光伝送装置では、この0.2dB程度の反射光レベルの変動を精度よく検知して、光源920へのバイアス電流を制御する必要があった。しかし、反射光レベルが入射光レベルよりも約30dB以上小さいうえに、0.2dB程度の極微量な反射光レベルの変動を検知することは非常に困難であり、SBSの発生を効果的に抑圧することが困難であった。
【0007】
それ故に、本発明の目的は、SBSの発生を効果的に抑圧することができる光伝送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電気信号である入力信号を光の強度信号に変換して伝送する光伝送装置に向けられている。そして、上記目的を達成するために、本発明の光伝送装置は、光源と、バイアス電流制御部とを備える。光源は、所定のバイアス電流に基づいて、入力信号を光の強度信号に変換して光信号として出力する。バイアス電流制御部は、入力信号のレベルを示す入力信号レベルと、入力信号の周波数を示す入力信号周波数とに基づいて、光源に供給するバイアス電流を制御する。
【0009】
好ましくは、バイアス電流制御部は、入力信号のレベルを検知して、入力信号レベルを出力する信号レベル検知部と、入力信号の周波数を検知して、入力信号周波数を出力する信号周波数検知部と、入力信号レベルと入力信号周波数とに基づいて、光源に供給するバイアス電流を制御する制御部とを含む構成である。
【0010】
また、バイアス電流制御部は、入力信号レベルと入力信号周波数とが入力され、入力信号レベルと入力信号周波数とに基づいて、光源に供給するバイアス電流を制御する制御部を含む構成であってもよい。
【0011】
また、光伝送装置は、入力信号のレベルを調整する信号レベル調整部をさらに備えてもよい。この場合、制御部は、入力信号レベルと入力信号周波数とに基づいて、信号レベル調整部を制御する。
【0012】
好ましくは、信号周波数検知部は、入力信号のうち最高の周波数を検知する最高信号周波数検知部である。
【0013】
制御部は、光源に供給するバイアス電流と入力信号レベルとから、光源が出力する光信号の光変調度を算出し、算出した光変調度と入力信号周波数との商が概一定に維持されるように、光源に供給するバイアス電流を制御して光変調度を調節する。
【0014】
また、光源の出力光波長は、光源に接続される光ファイバの零分散波長と異なる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、従来の反射光を検知する方法に比べて、反射光よりも絶対レベル及び変動レベルが大きな光源への入力信号レベルを検知することで、SBSの発生を効果的に抑圧することが可能となる。
【0016】
また、SBSの大きさが光源から出力される光信号のFM変調指数に対応していることに着目して、FM変調指数が光源から出力される光信号の光変調度と光源に入力される信号周波数との商に比例することから、入力信号レベル(光変調度に相当)及び入力信号周波数の変化に応じてFM変調指数が一定となるように、光源に供給するバイアス電流を制御することによって光変調度を調節する。これにより、光伝送装置は、光信号のCNRを維持しながらSBSの発生を効果的に抑圧することが可能となる。
【0017】
さらに、長距離光伝送においては、光源の出力光波長と当該光源に接続される光ファイバの零分散波長とが異なる場合には、SBSの抑圧に際して、分散歪を維持することが可能となる。また、実運用に際しては、設定された各種伝送パラメータから、維持すべきFM変調指数の(初期)値が必ず決定されるため、初期運用以後の入力信号レベル、及び入力信号の周波数配置の変化に応じて自動的にSBSを抑圧することが可能となる。
【0018】
また、光源に供給するバイアス電流の制御に加えて、光源への入力信号レベル(光変調度)を調整することで、CNRの初期値を維持したまま、光源の歪特性、及び分散歪を改善することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施形態は、以下に示すものに限定されるものではない。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。図1において、本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置は、光源20、制御部30、信号レベル検知部40、及び信号周波数検知部50を備える。光伝送装置は、任意の電気信号を光の強度信号(以下、光信号と記す)に変換して伝送するための装置である。光伝送装置には、電気信号である入力信号10が入力される。光源20は、入力信号10を光信号に変換して出力する。信号レベル検知部40は、光源20への入力信号レベルを検知する。信号周波数検知部50は、光源20への入力信号周波数を検知する。制御部30は、信号レベル検知部40で検知された入力信号レベル、及び信号周波数検知部50で検知された入力信号周波数の変化に応じて、光源20に供給するバイアス電流を制御する。なお、制御部30、信号レベル検知部40、及び信号周波数検知部50は、バイアス電流制御部とすることができる。
【0021】
図2は、一般的な光源への印加バイアス電流と発光パワーとの関係を示す図である。図2において、光源は、バイアス電流と入力信号とが印加されることによって、平均発光パワーを中心に強度変調された光信号を出力する。すなわち、光源に供給するバイアス電流を変化させることによって、光源の発光パワーを調整することが可能である。
【0022】
図3は、光源を直接強度変調した場合に出力される光信号のスペクトルを示す模式図である。図3において、光信号のスペクトルのピークパワーがSBS閾値を超える場合にSBSが発生する。光伝送装置は、運用開始時にはSBSが発生しないように、光変調度及び発光パワーに関する条件が定められる。この条件での光信号のスペクトルを図3(a)に示す。
【0023】
しかし、光伝送を行う対象が、例えば放送信号などの場合は、夜中などの時間帯に一部のチャネルが停波しチャネル数が減少することがある。このような場合、光源への入力信号レベルが低下し、図3(b)のように側波帯のエネルギーがキャリアに遷移し、光信号のスペクトルのピークパワーがSBS閾値を超える場合がある。このような状況下では、SBSが発生して、光伝送装置の伝送特性は、大幅に劣化することになる。
【0024】
SBSの発生を抑圧する方法として、入力信号を増幅して光源への入力信号レベルを増加させる方法がある。しかし、この方法では、各チャネルの光変調度も増加されるために、伝送後の光信号の歪特性が劣化することになる。また、別の方法として、光源に供給するバイアス電流を低下させて光信号のスペクトルのピークパワーを低下させる方法がある。この方法では、伝送後の光信号のCNR及び歪特性を維持したまま(詳細は後述する)、図3(c)に示すスペクトルのように、光信号のピークパワーをSBS閾値よりも下げることができる。従って、本実施形態の光伝送装置は、信号レベル検知部40が光源20への入力信号レベルの低下を検知した場合、制御部30が光源20に供給するバイアス電流を低下させる。
【0025】
また、SBSの発生は光信号のFM変調指数と密接に関係している。すなわち、光信号のFM変調指数が小さいほど、SBSが発生しやすくなることが知られている(例えば、特許文献2参照)。FM変調指数は、光変調度と光源20の変調周波数(入力信号周波数)との商に比例する(すなわち、“FM変調指数∝光変調度/変調周波数”)。図4は、光変調度と反射光パワーとの関係(測定結果)を示す図である。図4(a)は、変調周波数が50MHz以上の時の測定結果を、図4(b)は、変調周波数が50MHz以下の時の測定結果を示している。図4において、横軸は、光変調度、縦軸は反射光パワーを示す。反射光パワーの大きさは、SBSの発生量を表し、反射光パワーが小さいほどSBSが抑圧されていることを示す。
【0026】
ここで、光変調度は、光源20への入力信号レベルに比例するため、信号レベル検知部40が検知した入力信号レベルに基づいて算出することができる。また、光源20の変調周波数(入力信号周波数)は、信号周波数検知部50で検知することができる。このため、光伝送装置は、信号レベル検知部40と信号周波数検知部50とを用いて、光信号のFM変調指数を算出することができる。
【0027】
光伝送装置は、初期状態においてSBSが発生せず、所要伝送性能を満足する光変調度とバイアス電流とが設定されるため、この初期状態における光源20への入力信号レベルと入力信号周波数とから、FM変調指数の初期値を決定することができる。FM変調指数の初期値は、例えば、制御部30に搭載されるメモリなどに記憶される。
【0028】
続いて、光伝送装置の運用開始以後、例えば、光源20への入力信号レベル(光変調度)あるいは入力信号周波数の変化により、FM変調指数が減少した場合には、制御部30は、光源20に供給するバイアス電流を低下させることにより、光変調度を増加させFM変調指数が初期値と概一致するように制御する。逆にFM変調指数が増加した場合には、制御部30は、光源20に供給するバイアス電流を増加させることにより、光変調度を低下させFM変調指数が初期値と概一致するように制御する。このようにして、光伝送装置は、FM変調指数を概一定に維持するようにバイアス電流を変化させて光変調度を制御することにより、常にSBSの発生を回避することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態の光伝送装置は、光源20への入力信号10が、例えば、SCM(Sub−Carrier Multiplexing)信号のように、複数の異なる周波数信号が多重されている場合には、実効的な変調周波数を導出した上で、FM変調指数が概一定となるように、光源20に供給するバイアス電流を制御することで、効果的にSBSの発生を抑圧することが可能となる。しかし、この実効的な周波数の決定は、SBSの発生条件との整合を考えた場合、困難となる可能性がある。
【0030】
そこで、光伝送装置は、上述したようにFM変調指数が小さい場合(すなわち、同一の光変調度においては入力信号周波数が高い場合)にSBSが発生しやすい傾向に着目して、光源20に供給するバイアス電流を制御ればよい。図5は、SCM伝送時に最高周波数でSBS発生条件を既定する様子を示す模式図である。入力信号10がSCM信号である場合、例えば、SCM信号(総合実行変調度:m√N)に含まれる各周波数信号の光変調度をm、チャネル数をNとする(図5(a)参照)。このような場合、光伝送装置は、図5(b)に示すように全ての信号周波数がSCM信号の最高周波数(fN)に集約されているものと仮定して、この最高周波数に基づいて光源20に供給するバイアス電流を制御する。
【0031】
これにより光伝送装置は、入力信号10であるSCM信号のレベル及び周波数配置に影響されずに、SBSの発生を効果的に回避することが可能となる。すなわち、入力信号10に複数の異なる周波数信号が多重されている場合において、光伝送装置は、信号周波数検知部50が光源20に入力される信号のうち最高の周波数を検知し、制御部30が最高の周波数と入力信号レベルとを用いてFM変調指数の導出を行えば、SBSの発生を効果的に回避することが可能となる。このような場合、信号周波数検知部50は、入力信号10のうち最高の周波数を検知するので、最高周波数検知部とすることができる。
【0032】
図6に一例として、光源20の発光パワーを1dB低下させた場合における光変調度の変化量を示す。図6は、光源20の発光パワーを1dB低下させるために、バイアス閾値上電流をΔIbからΔIbaに低下させることを想定した図である。一般に、バイアス閾値上電流と発光パワーとは比例関係にあることが知られており、バイアス閾値上電流と発光パワーとの間には、ΔIb/ΔIba=1.259(電力1dB分に相当)の関係が成立する。ここで、変調電流の0toPeak値をImとすると、光変調度の変化量は、バイアス電流のみを低下させた場合には、Imが変化しないため光変調度の変化量は、(Im/ΔIba)/(Im/ΔIb)=ΔIb/ΔIba=1.259倍となる。すなわち、制御部30は、バイアス電流を変化させることにより、光変調度を制御することが可能となる。また、光変調度が1.259倍になった場合、光信号のCNRは、2dB(=20log10(1.259))増加することになる。
【0033】
図7は、光信号の受光パワーとCNRとの関係を示す図である。また、式(1)に、CNRの計算式を示す。図7より、受光パワーが1dB低下した場合には、CNRが最大で約2dB劣化することがわかる。このことから、光伝送装置は、光源20の発光パワーを、例えば1dB低下させた場合、受光パワーの低下によるCNRの劣化(最大約2dB)と、光変調度が増加することによるCNRの改善(2dB)とが相殺され、発光パワーを低下する前のCNRを維持あるいは改善することが可能であることが分かる。
【数1】

m:光変調度(5%)
0:PDの受光電力(変換効率0.87A/Wとして計算)
0:インピーダンス(50Ω)
RIN:RIN(−150dB/Hz)
e:電気素量(1.602×10-19C)
n:入力換算雑音電流密度(6pA/√Hz)
B:信号帯域幅(4.2MHz)
【0034】
また、本実施形態の光伝送装置において、光源20の発光波長と光ファイバの零分散波長とが異なる場合、光ファイバ中で波長分散歪が生じる。式(2)に各伝送パラメータと波長分散歪量との関係を示す。本実施形態の光伝送装置は、光源20に供給するバイアス電流のみを制御するので変調電流が一定となり、光源20の発光波長と光ファイバの零分散波長とが異なる場合も、波長分散歪量を一定にすることができる。このため、本実施形態の光伝送装置は、長距離伝送を実現するためにすでに敷設が進んでいる1.3μm帯零分散ファイバに、1.55μm帯波長光源を用いて光伝送するシステムで問題となる分散歪を、全く増加させることなく効果的にSBSを抑圧することが可能となる。
【数2】

D:分散量
L:伝送距離
dv/dl:チャープ量(Hz/A)
λ:光源波長
c:光速
b:バイアス電流
th:バイアス閾値電流
m:光変調度
【0035】
なお、本実施形態の光伝送装置には、信号レベル検知部40で検知される光源20への入力信号レベル、及び信号周波数検知部50で検知される入力信号周波数の瞬時的変動に対して、FM変調指数を一定に保つ制御が過剰に反応することを防ぐため、検知された入力信号レベル及び入力信号周波数をある程度平均化する平均化部をさらに備えてもよい(図8参照)。
【0036】
また、本実施形態の光伝送装置は、信号レベル検知部40及び信号周波数検知部50を備えずに、入力信号10のレベルを示す入力信号レベル、及び入力信号10の周波数を示す入力信号周波数が制御部30に直接入力される構成であってもよい(図9参照)。この場合も、光伝送装置は、入力信号レベル及び入力信号周波数に基づいて、FM変調指数が概一定となるように、光源20に供給するバイアス電流を制御することが可能である。また、光伝送装置は、入力信号周波数が、光源20に入力される信号周波数のうち、最高周波数に関する情報であれば、上述したように最高周波数以外の周波数配置にかかわらず、SBSを効果的に抑圧することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態の光伝送装置において、光源20は、一般的に温度特性を有しており、上述したように光源20の駆動条件を時間的に変動させる場合は、温度が安定せず、特性が不安定になる場合がある。このような場合、光伝送装置は、光源20の温度制御を行うことが望ましい。
【0038】
またさらに、本実施形態の光伝送装置において、伝送路中にEDFAなどの光増幅器を用いる場合、光増幅器によって増幅された光パワーが大きすぎるとSBSが発生する可能性がある。そのため、光伝送装置は、光増幅器から出力される光パワーが、光源20の発光パワー以下になるように、光増幅器の増幅率を調整した上で運用することが望ましい。
【0039】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置によれば、従来の光ファイバからの反射光を検知する方法に比べて、反射光よりも絶対レベル及び変動レベルが大きな光源20への入力信号レベルを検知することで、SBSの発生を効果的に抑圧することが可能となる。
【0040】
また、SBSの大きさが光源20から出力される光信号のFM変調指数に対応していることに着目して、FM変調指数が光源20から出力される光信号の光変調度と光源20に入力される信号周波数との商に比例することから、入力信号レベル(光変調度に相当)及び入力信号周波数の変化に応じてFM変調指数が一定となるように、光源20に供給するバイアス電流を制御することによって光変調度を調節する。これにより、光伝送装置は、光信号のCNRを維持しながらSBSの発生を効果的に抑圧することが可能となる。
【0041】
さらに、長距離光伝送においては、光源20の出力光波長と当該光源20に接続される光ファイバの零分散波長とが異なる場合には、SBSの抑圧に際して、分散歪を維持することが可能となる。また、実運用に際しては、設定された各種伝送パラメータから、維持すべきFM変調指数の(初期)値が必ず決定されるため、初期運用以後の入力信号レベル、及び入力信号の周波数配置の変化に応じて自動的にSBSを抑圧することが可能となる。
【0042】
(第2の実施形態)
図7に示した受光パワーとCNRとの関係(一例)のように、受光パワーが約−10dB以上の領域では、受光パワー1dB低下に対して、CNR劣化量は2dB未満となる。このような場合、光伝送装置において、光源20への入力信号レベルを保持したまま、光源20の発光パワーを低下させた場合、光変調度の増加によるCNR改善量が、受光パワー低下によるCNR劣化量を上回り、トータルとして受信側でのCNRが改善する。しかし、このCNRの改善は、光伝送システムにとって余剰性能に相当する。そのため、第2の実施形態に係る光伝送装置は、このCNRの改善に相当する分量だけ、光変調度を低下させることにより、改善前のCNRを維持したまま、CNR特性とトレードオフの関係にある歪特性を改善することが可能となる。
【0043】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る光伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。図10において、第2の実施形態に係る光伝送装置は、第1の実施形態に係る光伝送装置と比較して、信号レベル調整部60をさらに備える。制御部31は、光源20から出力される光信号のFM変調指数が一定となるように、光源20に供給するバイアス電流を制御するのと同時に、信号レベル調整部60を制御して、光源20への入力信号レベルを調整する。
【0044】
具体的には、制御部31は、例えば、式(1)に各伝送パラメータを代入することによって、光源20のバイアス電流を制御する前における伝送後CNR(初期値)を算出する。その後、制御部31は、光源20に供給するバイアス電流を制御して、各伝送パラメータが変化した後の伝送後CNRを算出し、これがCNR初期値となるように、信号レベル調整部60を制御し、光変調度を変化させる。
【0045】
以上のように本発明の第2の実施形態に係る光伝送装置によれば、光源20に供給するバイアス電流の制御に加えて、光源20への入力信号レベル(光変調度)を調整することで、CNRの初期値を維持したまま、光源20の歪特性、及び分散歪を改善することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の光伝送装置は、SBSの発生を抑制すること等に適しており、光信号を長距離伝送する場合等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置の構成の一例を示すブロック図
【図2】一般的な光源への印加バイアス電流と発光パワーとの関係を示す図
【図3】光源を直接強度変調した場合に出力される光信号のスペクトルを示す模式図
【図4】光変調度と反射光パワーとの関係(測定結果)を示す図
【図5】SCM伝送時に最高周波数でSBS発生条件を既定する様子を示す模式図
【図6】光源20の発光パワーを1dB低下させた場合における光変調度の変化量を示す図
【図7】受光パワーとCNRとの関係を示す図
【図8】本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置の別の構成例を示すブロック図
【図9】本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置の別の構成例を示すブロック図
【図10】本発明の第2の実施形態に係る光伝送装置の構成の一例を示すブロック図
【図11】従来の光伝送装置の構成の一例を示すブロック図
【図12】従来の光伝送装置における問題点を説明する図
【符号の説明】
【0048】
10、910 入力信号
20、920 光源
30、930 制御部
40 信号レベル検知部
50 信号周波数検知部
60 信号レベル調整部
970 分波部
980 光検出部
990 光伝送路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号である入力信号を光の強度信号に変換して伝送する光伝送装置であって、
所定のバイアス電流に基づいて、前記入力信号を光の強度信号である光信号として出力する光源と、
前記入力信号のレベルを示す入力信号レベルと、前記入力信号の周波数を示す入力信号周波数とに基づいて、前記光源に供給するバイアス電流を制御するバイアス電流制御部とを備えることを特徴とする、光伝送装置。
【請求項2】
前記バイアス電流制御部は、
前記入力信号のレベルを検知して、前記入力信号レベルを出力する信号レベル検知部と、
前記入力信号の周波数を検知して、前記入力信号周波数を出力する信号周波数検知部と、
前記入力信号レベルと前記入力信号周波数とに基づいて、前記光源に供給するバイアス電流を制御する制御部とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項3】
前記バイアス電流制御部は、前記入力信号レベルと前記入力信号周波数とが入力され、当該入力された入力信号レベルと入力信号周波数とに基づいて、前記光源に供給するバイアス電流を制御する制御部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項4】
前記入力信号のレベルを調整する信号レベル調整部をさらに備え、
前記制御部は、前記入力信号レベルと前記入力信号周波数とに基づいて、前記信号レベル調整部を制御することを特徴とする、請求項2又は3のいずれかに記載の光伝送装置。
【請求項5】
前記信号周波数検知部は、前記入力信号のうち最高の周波数を検知する最高信号周波数検知部であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の光伝送装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記光源に供給するバイアス電流と前記入力信号レベルとから、前記光源が出力する光信号の光変調度を算出し、当該算出した光変調度と前記入力信号周波数との商が概一定に維持されるように、前記光源に供給するバイアス電流を制御して前記光変調度を調節することを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の光伝送装置。
【請求項7】
前記光源の出力光波長は、前記光源に接続される光ファイバの零分散波長と異なることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の光伝送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−53672(P2007−53672A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238669(P2005−238669)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】