説明

光伝送装置

【課題】周波数多重されたキャリア変調信号を伝送するシステムを精度よく監視できる光伝送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る光送信装置12−1は、光分岐器24で分岐された光信号の一部を光電変換し、周波数多重キャリア信号を出力する光電気変換部25、光電気変換部25が出力する周波数多重キャリア信号を受信し、キャリア変調信号が含まれる可能性のある各々の周波数を中心とした所定の帯域幅の信号強度をキャリアレベルとしてそれぞれ検出するキャリアレベル検出部56、キャリアレベル検出部56が検出するキャリアレベルを保存するメモリ部57、及びキャリアレベル検出部56が検出するキャリアレベルとメモリ部57が保存する過去のキャリアレベルとを比較してキャリアの状態を判定する判定部58を有する故障判定器51を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数多重された複数のキャリア変調信号を光伝送するシステムに使用される光伝送装置の監視機能に関する。
【背景技術】
【0002】
多チャンネルの映像信号を各家庭に配信する場合、CATVのように個々の映像信号をキャリア変調し、それらを周波数多重した信号を配信する方式が一般に用いられている。映像センターから各家庭までを結ぶ伝送路としては、同軸ケーブル、途中まで光ファイバで伝送した後同軸ケーブル、光ファイバによるFTTH(Fiber−To−The−Home)の場合がある。図1は、FTTHの構成例である。
【0003】
ヘッドエンド11は、地上アナログ放送、地上デジタル放送、衛星(BS、CS)放送等を受信し、そのレベル調整や必要に応じて周波数変換等を行う。それらの信号は周波数多重されたのち光送信装置12に渡される。光送信装置12は信号を電気から光へ変換し、光伝送路13に送出する。送出された映像信号は、光増幅器14による長距離伝送、あるいは光多分配された後、映像視聴者宅に設置された映像系ONU15(ONU:Optical Network Unit)に向けて配信される。図2は、このような多チャンネル映像伝送システムの状態を監視する方式について説明する図である。
【0004】
図2は、光送信装置12で監視する場合であるが、光伝送路13上にある他の装置の場合でも同様である。パイロット信号発生部21は、伝送する映像信号にパイロット信号を周波数多重し、パイロット信号検出部27は出力前の光信号の一部を取り出してパイロット信号のレベルを検出する。そして、判定部28はパイロット信号のレベルの値によってシステムの異常を監視する(例えば、非特許文献1を参照。)。また、図3に示すように、光送信装置12内にパイロット信号発生部21をもち、光送信装置12内にて入力信号に周波数多重される場合もある。なお、レベルの他に、パイロット信号の近傍の周波数における雑音レベルもあわせて測定し、CNR(Carrier−To−Noise Ratio)の値によって監視する場合もある。
【0005】
このような方式により、パイロット信号を挿入した位置から、パイロット信号検出部27までの区間における装置またはシステム全体の異常を監視している。すなわち、本方式は、パイロット信号検出部27が光送信装置12にある場合は光送信装置12の装置故障を監視し、伝送路上の光増幅器にある場合はパイロット信号挿入個所から当該光増幅器までの間にある装置類あるいはファイバ伝送路の故障を監視する。
【0006】
その他の方式としては、図4のように、入力された入力信号そのものを監視する方式がある。すなわち、入力信号のレベルまたはCNRを伝送路上の各装置で検出し、そのレベルによってシステムの監視を行う(非特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ニューメディア技術シリーズ CATV、電子通信学会編、pp.129−130
【非特許文献2】第1級有線テレビジョン放送技術 テキスト、社団法人 日本CATV技術協会、pp.121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
伝送装置の故障状況によっては、信号を伝送している帯域全体にわたって劣化するとは限らず、伝送帯域の一部が劣化するような故障も実際には発生する。パイロット信号レベル監視方式では、この劣化した帯域がパイロット信号周波数から離れている場合、故障検出が困難となる。また、パイロット信号のレベル低下を検出した場合、装置異常で伝送される信号が劣化しているのか、あるいはパイロット信号検出部が故障しているのかの区別も困難となる。このように非特許文献1のパイロット信号レベル監視方式には監視精度に課題があった。
【0009】
入力された信号そのものを監視する場合、実際の運用では、放送が終了してヘッドエンドにおいて無変調キャリアの電波を受信するケース、放送局そのものがメンテナンスをするため電波自体が来なくなるケース、あるいはヘッドエンド側設備のメンテナンスなど、運用状況によって個々のキャリアの状態やそのレベルが変動する。このため、非特許文献2の方式には、運用上発生しているレベル変動と装置の故障に起因するレベル変動の区別が難しく、監視精度に課題があった。
【0010】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、周波数多重されたキャリア変調信号を伝送するシステムを精度よく監視できる光伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る光伝送装置は、伝送帯域内でキャリアが立つ可能性のある周波数すべてに対して、各周波数を中心とした一定帯域幅内にあるレベルを順次測定してその値をメモリに保存する機能を具備し、その測定されたキャリアレベルの過去値と現在値とから、各周波数におけるキャリアの有無、放送停波やメンテナンスによるキャリア断状態、放送終了時のキャリアの無変調状態、伝送キャリア種別変更状態、降雨減衰状態を、装置故障とは別事象として識別する機能を有し、装置故障以外のキャリアパワー変動要因による故障判定の回避を可能とする。
【0012】
本明細書では、「キャリア」とは、周波数多重される地上アナログ放送、地上デジタル放送、衛星(BS、CS)放送等、映像信号によって変調される個々の搬送波を意味し、映像信号による変調有無の状態には依存しない。「キャリアが立つ可能性のある周波数」とは、キャリアのキャリア変調信号に割り当てられる可能性がある周波数帯の中心周波数を意味する。
【0013】
具体的には、本発明に係る光伝送装置は、複数のキャリアのキャリア変調信号が周波数多重された周波数多重キャリア信号を伝送する光信号から、前記光信号の一部を分岐する光分岐器と、前記光分岐器で分岐された前記光信号の一部を光電変換し、前記周波数多重キャリア信号を出力する光電気変換部、前記光電気変換部が出力する前記周波数多重キャリア信号を受信し、前記キャリア変調信号が含まれる可能性のある各々の周波数を中心とした所定の帯域幅の信号強度をキャリアレベルとしてそれぞれ検出するキャリアレベル検出部、前記キャリアレベル検出部が検出するキャリアレベルを保存するメモリ部、及び前記キャリアレベル検出部が検出するキャリアレベルと前記メモリ部が保存する過去のキャリアレベルとを比較して前記キャリアの状態を判定する判定部を有する故障判定器と、を備える。
【0014】
本発明に係る光伝送装置は、主信号である全てのキャリア変調信号のキャリアレベルを直接監視し、キャリアの状態を判断している。従って、本発明は、周波数多重されたキャリア変調信号を伝送するシステムを精度よく監視できる光伝送装置を提供することができる。
【0015】
本発明に係る光伝送装置が備える前記故障判定器の判定部は、第1設定値が予め設定されており、前記キャリアレベル検出部が検出するキャリアレベルが、前記メモリ部が保存する過去のキャリアレベルを基準として前記第1設定値より上昇又は低下した場合にキャリアレベルが変動した前記キャリア変調信号の前記キャリアの状態が異常状態であると判断することを特徴とする。本光伝送装置は、キャリア変調信号のキャリアレベル変動量が大きくなった場合を異常状態と判断する。
【0016】
本発明に係る光伝送装置が備える前記故障判定器の判定部は、前記第1設定値より大きい値である第2設定値が予め設定されており、前記キャリアレベル検出部が検出するキャリアレベルが、前記メモリ部が保存する過去のキャリアレベルを基準として前記第2設定値より低下した場合にキャリアレベルが変動した前記キャリア変調信号の前記キャリアの状態が異常状態以外の状態であると判断することを特徴とする。例えば、メンテナンス時にはキャリア変調信号は出力が停止される。本光伝送装置は、このような状態を異常と判断することを回避できる。
【0017】
本発明に係る光伝送装置が備える前記故障判定器は、前記判定部が前記キャリアの状態が異常状態であると判断した場合、異常状態である前記キャリアの近傍周波数にある前記キャリアの状態を前記判定部に判定させ、近傍周波数にある前記キャリアの状態も異常状態であるときに前記光伝送装置自身または通信システムの故障と判定することを特徴とする。
【0018】
通常、故障時には複数のキャリア変調信号のキャリアレベルが変動する。このため、キャリアレベルが変動したキャリア変調信号の近傍のキャリア変調信号のキャリアレベルも考慮することで故障判定の精度が向上する。
【0019】
本発明に係る光伝送装置が備える前記故障判定器の判定部は、第3設定値及び前記キャリアの状態を削除状態と判定する第4設定値が予め設定されており、前記故障判定器は、前記キャリアレベル検出部が検出するキャリアレベルが、前記メモリ部が保存する過去のキャリアレベルを基準として前記第3設定値より上昇した場合、且つキャリアレベルが変動した前記キャリア変調信号に隣接する前記キャリア変調信号のキャリアレベルが、前記メモリ部が保存する過去のキャリアレベルを基準として前記第4設定値より低い場合、キャリアレベルが変動した前記キャリア変調信号の前記キャリアの状態が異常状態以外の状態であると判断することを特徴とする。
【0020】
本光伝送装置は、キャリア変調信号にBSデジタル放送ダウンコンバート信号、BSデジタル放送信号、又はCS110度信号が含まれる場合でも故障判定をすることができる。
【0021】
本発明に係る光伝送装置が備える前記故障判定器の判定部は、前記キャリアの状態を降雨状態と判定する第5設定値が予め設定されており、前記キャリアレベル検出部が検出する少なくとも1の前記キャリア変調信号のキャリアレベルが前記メモリ部が保存する過去のキャリアレベルを基準として前記第5設定値以内である場合に、降雨状態であると判断することを特徴とする。
【0022】
本光伝送装置は、キャリア変調信号のキャリアレベルの低下の原因が降雨であることを判断できる。
【0023】
本発明に係る光伝送装置が備える前記故障判定器は、前記光電気変換部が出力する前記周波数多重キャリア信号を受信し、前記キャリア変調信号が含まれる可能性のある周波数を複数含むブロック帯域の電力をブロック帯域レベルとして検出するブロック帯域レベル検出部をさらに有し、前記メモリ部は、前記ブロック帯域レベル検出部が検出するブロック帯域レベルも保存し、前記判定部は、前記キャリアの状態を判定する際に、前記ブロック帯域レベル検出部が検出するブロック帯域レベルと前記メモリ部が保存する過去のブロック帯域レベルとを比較した結果も利用することを特徴とする。
【0024】
本光伝送装置は、伝送帯域全体をあらかじめ決められたブロックに分割して各ブロック帯域内レベルを測定することにより、故障検出時間の短縮、および故障検出部異常の検出も可能としている。
【0025】
本発明に係る光伝送装置が備える前記故障判定器は、前記ブロック帯域レベル検出部が検出するブロック帯域レベルと前記キャリアレベル検出部が検出する前記ブロック帯域に含まれる前記キャリア変調信号のキャリアレベルの和との差を算出し、前記差が所定値以上の場合に自身の故障と判定することを特徴とする。本光伝送装置は、故障判定器自身の故障を判断できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、周波数多重されたキャリア変調信号を伝送するシステムを精度よく監視できる光伝送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】FTTHの構成例を説明する図である。
【図2】従来の光伝送システムを監視する手段を説明する図である。
【図3】従来の光伝送システムを監視する手段を説明する図である。
【図4】従来の光伝送システムを監視する手段を説明する図である。
【図5】本発明に係る光伝送装置を説明する図である。
【図6】キャリアの状態を説明する図である。
【図7】キャリアの状態を判定する方法を説明する図である。
【図8】本発明に係る光伝送装置を説明する図である。
【図9】ブロック帯域の状態を説明する図である。
【図10】90MHz〜770MHzのキャリア周波数を説明する図である
【図11】BS、CS帯のキャリア周波数を説明する図である。
【図12】信号種別とキャリアレベルを説明する図である。キャリアレベルは所要CNR(Carrier vs. Noise Ratio)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0029】
(実施形態1)
図5は、実施形態1の光伝送装置の一例を説明する図である。図5では、光伝送装置が光送信装置12−1の場合として示すが、他の装置の場合でも、監視機能ユニット50−1に対する考え方は同様である。
【0030】
光送信装置12−1は、信号処理器22、電気光変換器23、及び監視機能ユニット50−1を備える。監視機能ユニット50−1は、複数のキャリアのキャリア変調信号が周波数多重された周波数多重キャリア信号を伝送する光信号から、その一部を分岐する光分岐器24と、故障判定器51と、を備える。故障判定器51は、光分岐器24で分岐された光信号の一部を光電変換し、周波数多重キャリア信号を出力する光電気変換部25、光電気変換部25が出力する周波数多重キャリア信号を受信し、キャリア変調信号が含まれる可能性のある各々の周波数を中心とした所定の帯域幅の信号強度をキャリアレベルとしてそれぞれ検出するキャリアレベル検出部56、キャリアレベル検出部56が検出するキャリアレベルを保存するメモリ部57、及びキャリアレベル検出部56が検出するキャリアレベルとメモリ部57が保存する過去のキャリアレベルとを比較してキャリアの状態を判定する判定部58を有する。
【0031】
光送信装置12−1に入力された信号は、信号処理器22を経由して電気光変換器23で光信号に変換される。信号処理器22は、光送信装置12−1内のレベル調整や入力信号監視などの他に、FM一括変換方式の場合は、入力信号を一括してFM変調する処理を含む。
【0032】
光分岐器24はこの光信号の一部を取り出し、光電気変換部は光信号の一部をO/E変換して周波数多重キャリア信号を取得する。この後、周波数多重キャリア信号がFM一括変換方式の場合は必要に応じて信号逆処理部26で逆処理を行い、キャリアレベル検出部56に入力される。
【0033】
キャリアレベル検出部56は、予め定められた周波数を中心としてその近傍の帯域にある信号強度をキャリアレベルとして検出する。例えば、VHF/UHF放送帯である90MHz〜770MHzの帯域では、通常のキャリア信号帯域幅は6MHz以下であり、また個々のキャリアが立つ周波数帯域は決められている。具体的には、伝送される信号キャリアが立つ帯域は、90MHz〜770MHzの帯域では一部の例外を除いて6MHz間隔で区切られており、その中心周波数は図10のように決まっている。また、BS放送、CS放送も、衛星からのRF周波数をダウンコンバートしたあとの中間周波数は図11のように定められている。
【0034】
キャリアレベル検出部56は、この周波数帯域の中心周波数に対して6MHzよりも狭い帯域をもつバンドパスフィルタを通した後のキャリアレベルを測定する。キャリアレベル検出部56は、この測定をキャリアが立つ可能性のあるすべての周波数に対して実施する。すべての周波数に対してキャリアレベルを検出するには、キャリアレベル検出回路を対象周波数の数だけ並列に設けて測定する、あるいは測定周波数をスキャンすることにより1つのキャリアレベル検出回路ですべての周波数に対するレベルを順次測定することになる。実際は回路規模やコスト面から、後者の順次測定が妥当と考えられる。
【0035】
メモリ部57は、測定されたキャリアレベルを測定された時刻情報とあわせて記憶する。また判定部58にもキャリアレベルが転送される。BS放送やCS110度放送についても、信号帯域幅は異なるが、信号が立つ中心周波数が決められていることから、同様の方法でキャリアレベルを測定することができる。なお、UHF放送帯にはBSデジタル放送をダウンコンバートした信号が流れる場合がある。このダウンコンバート信号は約30MHzの帯域を持つため、ダウンコンバート信号1キャリアは、通常のVHF/UHF帯にあるキャリア信号4ないし5本分に対応し、ダウンコンバート信号の場合はこれらのキャリアが同時に動作することとなる。
【0036】
判定部58は、キャリア毎に現在のキャリアレベルとメモリ部57が記憶する過去のキャリアレベルとを比較し、その周波数における映像信号等のキャリア変調信号の有無や各キャリアの状態判定を行う。
【0037】
キャリアの状態は、登録状態、異常状態、メンテナンス状態、及び削除状態からなる。図6は各状態の関係について説明する図である。登録状態は当該周波数にキャリアが存在し、そのキャリアレベルに異常がない状態である。異常状態は装置故障等の要因でその周波数のキャリアレベルが劣化していると考えられる状態である。メンテナンス状態は異常状態とは異なる状態である。例えば、メンテナンス状態は登録状態にあったキャリアがヘッドエンドのメンテナンスなどの人為的な操作により一時的に断となっている状態である。削除状態は当該周波数が使われておらず、キャリアが存在しない状態である。
【0038】
次に、キャリアがこの4つのどの状態であるかについて判定部58が行う判定の判定条件について述べる。
現在のキャリアレベルと過去のキャリアレベルとを比較してレベルの変動が一定の第1設定値A[dB]以下であれば、後述する一部の例外を除いてキャリアの状態は変化しない。
キャリアレベルの検出対象となる周波数に対し、起動時にキャリアレベルを検出した場合、または過去のキャリアの状態が登録状態以外の状態にあり、現在のキャリアレベルがあるレベル以上のときに登録状態に遷移する。また、起動時にキャリアレベルがあるレベル以下の場合に、削除状態に遷移する。
【0039】
キャリアの他の状態遷移について述べる。
登録状態にあるキャリアの現在のキャリアレベルが過去のキャリアレベルからの変動量x[dB]によってどの状態に遷移するかについて図7を用いて説明する。登録状態にあるキャリアのキャリアレベルの変動量xが第1設定値A[dB]以上の増加またはA<x<第2設定値B[dB]の劣化の場合、判定部58は当該キャリアが異常状態となったと判定する。また、変動量xがx>Bの劣化の場合、判定部58は当該キャリアがメンテナンス状態になったと判定する。これは、実際の故障で、キャリアレベルが一気に大きく劣化するケースは少なく、一方、ヘッドエンドのメンテナンスのときにはキャリア出力をOFFにするために信号レベルが一気に低下するからである。
【0040】
また、メンテナンス状態にあったキャリアのキャリアレベルがある一定の値以上に回復した場合、キャリアレベルが過去の登録状態にあったときのキャリアレベルを基準として第1設定値A以上変動していたとしても、判定部58は当該キャリアの状態を異常状態とせず、新たに登録状態となったと判断する。そして、メモリ部57はそのキャリアレベルを新たな過去値として記憶する。この場合は当該周波数にあったキャリアの信号種別が変更になったと考えられるからである。信号種別によって所要伝送品質が異なることから、キャリアレベルも所要品質に対応してとりうる値が異なる。所要品質をあらわすパラメータであるCNR(Carrier−to−Noise Ratio)の信号種別によるキャリアレベルの差異についての一例を図12に示す。
【0041】
あるキャリアがメンテナンス状態で一定時間経過したときには、判定部58は当該キャリアがメンテナンス状態から削除状態になったと判定する。通常はメンテナンスが終了するとキャリアレベルは回復し、回復しない場合は当該キャリアが削除されたと考えられるためである。この場合の一定時間は、メンテナンスに要する標準的な時間をもとに決定することができる。
【0042】
また、BS放送やCS放送では、降雨によりヘッドエンドで受信するあるキャリアの電波が弱くなり、最終的には視聴不可となるぐらいに減衰するケースもある。このように受信する電波の減衰が著しい場合に、ヘッドエンド11にある衛星信号処理装置は、光送信装置12−1にむけた出力をOFFにする(スケルチ機能ON)動作、又は光送信装置12−1に雑音成分を出し続ける(スケルチ機能OFF)動作のいずれかを設定できるようになっている。
【0043】
一般には、ヘッドエンド11の衛星信号処理装置は、スケルチ機能をONにして降雨減衰時に不要な雑音成分を出さないようにしている。ここで、複数ある衛星放送のキャリアのうち、あらかじめ決めた一部のキャリアだけをスケルチOFFにすれば、降雨減衰時にも常に当該キャリアから所定のキャリアレベルが得られる。例えば、判定部58は、キャリアの状態を降雨状態と判定する第5設定値が設定されており、モニタしているスケルチOFFのキャリアのキャリアレベルが過去の登録状態にあったときのキャリアレベルを基準として第5設定値以内である場合、降雨が発生したことを判定できる。すなわち、判定部58は、他のキャリアのキャリアレベルが減衰したとしても、スケルチOFFのキャリアルのキャリアレベルが第5設定値であれば、そのときは降雨減衰状態であると判定することができる。
【0044】
故障判定器51は、このようなキャリアの状態をもとにして光伝送装置又はシステムの故障判定を行うことができる。具体的には、1キャリア分だけが劣化するような故障は通常ありえないことから、判定部58があるキャリアの異常状態を検出した際に、故障判定器51は、判定部58に当該キャリアの近傍のキャリアの状態を検索させ、いずれもが異常状態にあるときに光伝送装置又はシステム異常と判定する。このように近傍のキャリアの状態を判定することで、何らかの要因で1キャリアだけヘッドエンド11のレベルを変動させるような人為的な操作に対して故障と判定しないようにし、故障判定の精度を高めている。なお、ここで、近傍のキャリアとは異常状態となったキャリアを中心に2以上のキャリアとすることができる。
【0045】
また、BSデジタル放送ダウンコンバート信号、BSデジタル放送信号、CS110度信号がある帯域で、あるキャリアの周波数のキャリアレベルが第3設定値C[dB]以上上昇した場合、判定部58は、VHF/UHF帯における隣接キャリア位置に相当する当該周波数±6MHzの周波数でのキャリアレベルを確認する。そして、隣接キャリアのキャリアレベルが前記キャリアの上昇と同じタイミングで第4設定値D[dB]以上低下していた場合、BSデジタル放送の放送終了と考え、故障判定器51はいずれの周波数も装置故障と判定しない。
【0046】
光送信装置12−1は、監視機能ユニット50−1を備えることで次のような効果を得ることができる。
監視機能ユニット50−1は、主信号を監視することで装置故障を判定する方式であるが、ヘッドエンド設備のメンテナンス、信号種別変更、及び降雨減衰等の装置故障以外の主信号レベルの変動要因を検出することができ、装置故障以外の要因による装置故障警報の発出を回避でき、システム監視の精度を高めることができる。
また、監視機能ユニット50−1は、伝送帯域の一部が劣化するような故障も検知することができ、システム監視の精度を高めることができる。
【0047】
(実施形態2)
図8は、実施形態2の光伝送装置の一例を説明する図である。図8では、光伝送装置が光送信装置12−2の場合として示すが、他の装置の場合でも、監視機能ユニット50−2に対する考え方は同様である。光送信装置12−2は、図5の光送信装置12−1と比較して、ブロック帯域レベル検出部66が追加された構成である。なお、図8では光電気変換部25及び信号逆処理部26も追加しているが必須ではない。実際の回路設計のしやすさや、あるいは、後述する故障判定器52自体の故障判定で光電気変換部25や信号逆処理部26も対象に含めるか等を考慮して追加の可否を決めてよい。
【0048】
光送信装置12−2は、信号処理器22、電気光変換器23、及び監視機能ユニット50−2を備える。監視機能ユニット50−2は、複数のキャリアのキャリア変調信号が周波数多重された周波数多重キャリア信号を伝送する光信号から、その一部を分岐する光分岐器24と、故障判定器52と、を備える。故障判定器52は、図5の故障判定器51に光電気変換部25が出力する周波数多重キャリア信号を受信し、キャリア変調信号が含まれる可能性のある周波数を複数含むブロック帯域の電力をブロック帯域レベルとして検出するブロック帯域レベル検出部66をさらに有する。
【0049】
そして、メモリ部57は、ブロック帯域レベル検出部66が検出するブロック帯域レベルも保存し、判定部58は、キャリアの状態を判定する際に、ブロック帯域レベル検出部66が検出するブロック帯域レベルとメモリ部57が保存する過去のブロック帯域レベルとを比較した結果も利用する。
【0050】
ブロック帯域レベル検出部66は、伝送帯域を1もしくは2以上のブロックに分けてそれぞれのブロックの帯域内にあるトータルの電力(以下、「ブロックの帯域内にあるトータルの電力」を「ブロック帯域レベル」と記載する。)を検出する機能をもつ。メモリ部57は、検出されたブロック帯域レベルを検出された時刻情報とあわせて記憶する。またブロック帯域レベル検出部66はブロック帯域レベルを判定部58にも出力する。判定部58は現在のブロック帯域レベルとメモリ部57が記憶する過去のブロック帯域レベルとから、そのブロックの帯域内の周波数における映像信号の有無や各キャリアの状態判定を行う。
【0051】
このブロック帯域レベルの状態は、登録状態、異常状態、及び削除状態からなる。図9は各状態の関係について説明する図である。登録状態はそのブロック帯域内にキャリアが存在し、それぞれのブロック帯域レベルに異常がない状態である。異常状態はそのブロック帯域内のブロック帯域レベルが装置故障等の要因で劣化していると考えられる状態である。削除状態はそのブロック帯域内にキャリアがない、すなわち伝送される信号がない状態であり、その場合は、その値は後述する判定条件には使用しない。
【0052】
各ブロック帯域レベルの測定を順次繰り返し実施する。
【0053】
次は、ブロック帯域の一例である。伝送される信号帯域を、VHF/UHF帯(70〜770MHz)、BS帯(約1〜1.5GHz)、CS帯(約1.6〜2.1GHz)の3つに分類し、それぞれをブロック帯域とする。VHF/UHF帯(70〜770MHz)にはキャリア数が多いので、この帯域についてはさらに分割してもよい。判定部58は、実施形態1で説明したキャリアレベルに基づくキャリアの状態の判定と同様に、現在のブロック帯域レベルと過去のブロック帯域レベルとをそれぞれ比較してブロック帯域の状態を判定する。
【0054】
判定部58は、起動時または過去のブロック帯域の状態が削除状態にあり、現在のブロック帯域レベルがあるレベル以上のときに、当該ブロック帯域の状態が登録状態になったと判定する。また、判定部58は、過去のブロック帯域の状態が異常状態であり現在のブロック帯域レベルが過去において登録状態であったときのブロック帯域レベルから一定の範囲内にあれば、当該ブロック帯域の状態が登録状態になったと判定する。さらに、判定部58は、起動時にブロック帯域レベルがあるレベル以下の場合に、当該ブロック帯域の状態が削除状態になったと判定する。一方、判定部58は、登録状態にあった過去のブロック帯域レベルから現在のブロック帯域レベルへの変動量x[dB]が一定値以上の増加または劣化の場合に、当該ブロック帯域の状態が異常状態になったと判定する。
【0055】
故障判定器52は、このようなブロック帯域レベルの状態をもとにして光伝送装置又はシステムの故障判定を行うことができる。具体的には、判定部58がブロック帯域レベルで異常状態を判定した場合、キャリアレベル検出部56は当該ブロック帯域内にある複数個の代表的なキャリアのキャリアレベルを測定する。そして、故障判定器52は、いずれの代表的なキャリアのキャリアレベルに同様の劣化傾向が観測された場合、光送信装置12−2又はシステムの異常と判定する。本判定は、図5の光送信装置12−1が行うキャリアレベルの検出だけでも判定することも可能であるが、全てのキャリアのキャリアレベル検出を順次行う必要があるため、キャリア数が数十〜百数十あると判定に時間がかかる。このため、故障の発生で帯域全体にわたって電力が低下し、異常状態となるキャリアが多くなるようなシステムでは、図5の故障判定器51より故障判定器52のブロック帯域レベル検出方式を用いることで迅速に故障判定することができる。
【0056】
また、ブロック帯域レベルと各キャリアレベルとから、故障判定器52自体の故障を判定することができる。ブロック帯域レベルの値と当該ブロック帯域内にある各キャリアレベルの和とを比較した場合、通常はその差は一定値以下(レベル検出誤差の範囲)になる。しかし、両者の値が一定値以上異なっている場合、故障判定器52は自身の故障、例えば、光電気変換部25や信号逆処理部26の故障と判定する。
【0057】
光送信装置12−2は、監視機能ユニット50−2を備えることで光伝送装置12−1の効果の他に次のような効果を得ることができる。
監視機能ユニット50−2は、ブロック帯域の状態判定とキャリアの状態判定とを組み合わせることで、帯域全体に渡るような影響度の高い障害を迅速に検出することができる。
また、監視機能ユニット50−2は、ブロック帯域の状態判定とキャリアの状態判定とを組み合わせることで、監視機能ユニット50−2自身の故障も検知することができる。
【符号の説明】
【0058】
11:ヘッドエンド
12、12’、12”、12−1、12−2:光送信装置
13:光伝送路
14:光増幅器
15:ONU
21:パイロット信号発生部
22:信号処理器
23:電気光変換器
24:光分岐器
25:光電気変換部
26:信号逆処理部
27:パイロット信号検出部
27’:主信号検出部
28:判定部
50−1、50−2:監視機能ユニット
51、52:故障判定器
56:キャリアレベル検出部
57:メモリ部
58:判定部
66:ブロック帯域レベル検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャリアのキャリア変調信号が周波数多重された周波数多重キャリア信号を伝送する光信号から、前記光信号の一部を分岐する光分岐器と、
前記光分岐器で分岐された前記光信号の一部を光電変換し、前記周波数多重キャリ
ア信号を出力する光電気変換部、
前記光電気変換部が出力する前記周波数多重キャリア信号を受信し、前記キャリア
変調信号が含まれる可能性のある各々の周波数を中心とした所定の帯域幅の信号強度
をキャリアレベルとしてそれぞれ検出するキャリアレベル検出部、
前記キャリアレベル検出部が検出するキャリアレベルを保存するメモリ部、
及び
前記キャリアレベル検出部が検出するキャリアレベルと前記メモリ部が保存する過
去のキャリアレベルとを比較して前記キャリアの状態を判定する判定部
を有する故障判定器と、
を備える光伝送装置。
【請求項2】
前記故障判定器の判定部は、
第1設定値が予め設定されており、
前記キャリアレベル検出部が検出するキャリアレベルが、前記メモリ部が保存する過去のキャリアレベルを基準として前記第1設定値より上昇又は低下した場合にキャリアレベルが変動した前記キャリア変調信号の前記キャリアの状態が異常状態であると判断することを特徴とする請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項3】
前記故障判定器の判定部は、
前記第1設定値より大きい値である第2設定値が予め設定されており、
前記キャリアレベル検出部が検出するキャリアレベルが、前記メモリ部が保存する過去のキャリアレベルを基準として前記第2設定値より低下した場合にキャリアレベルが変動した前記キャリア変調信号の前記キャリアの状態が異常状態以外の状態であると判断することを特徴とする請求項2に記載の光伝送装置。
【請求項4】
前記故障判定器は、
前記判定部が前記キャリアの状態が異常状態であると判断した場合、異常状態である前記キャリアの近傍周波数にある前記キャリアの状態を前記判定部に判定させ、近傍周波数にある前記キャリアの状態も異常状態であるときに前記光伝送装置自身または通信システムの故障と判定することを特徴とする請求項2又は3に記載の光伝送装置。
【請求項5】
前記故障判定器の判定部は、
第3設定値及び前記キャリアの状態を削除状態と判定する第4設定値が予め設定されており、
前記故障判定器は、
前記キャリアレベル検出部が検出するキャリアレベルが、前記メモリ部が保存する過去のキャリアレベルを基準として前記第3設定値より上昇した場合、且つキャリアレベルが変動した前記キャリア変調信号に隣接する前記キャリア変調信号のキャリアレベルが、前記メモリ部が保存する過去のキャリアレベルを基準として前記第4設定値より低い場合、キャリアレベルが変動した前記キャリア変調信号の前記キャリアの状態が異常状態以外の状態であると判断することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光伝送装置。
【請求項6】
前記故障判定器の判定部は、
前記キャリアの状態を降雨状態と判定する第5設定値が予め設定されており、
前記キャリアレベル検出部が検出する少なくとも1の前記キャリア変調信号のキャリアレベルが前記メモリ部が保存する過去のキャリアレベルを基準として前記第5設定値以内である場合に、降雨状態であると判断することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光伝送装置。
【請求項7】
前記故障判定器は、
前記光電気変換部が出力する前記周波数多重キャリア信号を受信し、前記キャリア変調信号が含まれる可能性のある周波数を複数含むブロック帯域の電力をブロック帯域レベルとして検出するブロック帯域レベル検出部をさらに有し、
前記メモリ部は、
前記ブロック帯域レベル検出部が検出するブロック帯域レベルも保存し、
前記判定部は、
前記キャリアの状態を判定する際に、前記ブロック帯域レベル検出部が検出するブロック帯域レベルと前記メモリ部が保存する過去のブロック帯域レベルとを比較した結果も利用することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光伝送装置。
【請求項8】
前記故障判定器は、
前記ブロック帯域レベル検出部が検出するブロック帯域レベルと前記キャリアレベル検出部が検出する前記ブロック帯域に含まれる前記キャリア変調信号のキャリアレベルの和との差を算出し、前記差が所定値以上の場合に自身の故障と判定することを特徴とする請求項7に記載の光伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−109760(P2012−109760A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256488(P2010−256488)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000187725)パナソニック モバイルコミュニケーションズ株式会社 (38)
【Fターム(参考)】