説明

光信号モニタ装置

【課題】本発明は、サンプリングのゲート時間を連続的に可変にすることを目的とする。
【解決手段】本願発明の光信号モニタ装置は、サンプリング用光パルスを出射する光パルス発生器2と、該サンプリング用光パルスを受けて相互吸収飽和特性により被測定光信号のサンプリングを行う電界吸収型光変調器3と、該電界吸収型光変調器3にバイアス電圧を印加する可変バイアス電圧発生器4と、を備え、等価サンプリング方式で被測定光信号の波形評価を行う光信号モニタ装置において、電界吸収型光変調器3のゲート時間を可変するゲート時間制御部5を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号モニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高分解能の等価サンプリングを行うために、電界吸収型光変調器の相互吸収飽和特性を用いた光信号モニタ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図3は、従来の光信号モニタ装置の一例を示す概略構成図である。従来の光信号モニタ装置は、一定周期のサンプリング用光パルスPsを発生する光パルス発生器2と、被測定光信号Pxとサンプリング用光パルスPsとの相互吸収飽和特性を利用して被測定光信号Pxのサンプリングを行う電界吸収型光変調器3と、電界吸収型光変調器3に直流バイアス電圧を印加するバイアス電圧発生器4と、電界吸収型光変調器3から出射されたサンプリング後の被測定光信号Pyを光電変換する受光器11と、を有する。受光器11からの被測定電気信号Pzを観察することで、等価サンプリング方式で被測定光信号Pxの波形評価を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2008/087809
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電界吸収型光変調器3で行うサンプリングの時間分解能は、被測定光信号Pxのビットレートに応じて適切な値に設定することが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、サンプリングのゲート時間を連続的に可変にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明の光信号モニタ装置は、電界吸収型光変調器の相互吸収飽和特性を用いて高分解能の等価サンプリングを行う光信号モニタ装置において、電界吸収型光変調器のゲート時間を可変にすることを特徴とする。
【0008】
具体的には、本願発明の光信号モニタ装置は、サンプリング用光パルスを出射する光パルス発生器と、該サンプリング用光パルスと被測定光信号との相互吸収飽和特性を利用して前記被測定光信号のサンプリングを行う電界吸収型光変調器と、該電界吸収型光変調器にバイアス電圧を印加するバイアス電圧発生器と、を備え、等価サンプリング方式で被測定光信号の波形評価を行う光信号モニタ装置であって、前記電界吸収型光変調器のゲート時間を可変するゲート時間制御部を設けたことを特徴とする。
【0009】
本願発明の光信号モニタ装置では、前記ゲート時間制御部は、前記サンプリング用光パルスの強度を変化させる光パルス強度可変手段を含むことが好ましい。
本発明により、サンプリング用光パルスのパルス幅を変えることなく電界吸収型光変調器のゲート時間を可変とすることができる。
【0010】
本願発明の光信号モニタ装置では、前記光パルス発生器から出射されたサンプリング用光パルスの強度を減衰させる可変光減衰器をさらに備え、前記光パルス強度可変手段は、前記可変光減衰器の減衰量を変化させることが好ましい。
サンプリング用光パルスのパルス幅を変化させる必要がないので、容易かつ連続的にゲート時間を変化させることができる。
【0011】
本願発明の光信号モニタ装置では、前記光パルス発生器は、モードロックファイバレーザ及び当該モードロックファイバレーザの励起光源を備え、前記光パルス強度可変手段は、前記励起光源の出力強度を変化させることが好ましい。
光パルス発生器を用いて電界吸収型光変調器のゲート時間を変化させるので、部品を省略して、コストを下げることができる。
【0012】
本願発明の光信号モニタ装置では、前記ゲート時間制御部は、前記電界吸収型光変調器に印加するバイアス電圧を変化させるバイアス電圧可変手段を含むことが好ましい。
本発明により、サンプリング用光パルスのパルス幅を変えることなく電界吸収型光変調器のゲート時間を変化させることができる。
【0013】
本願発明の光信号モニタ装置では、前記バイアス電圧発生器は、前記バイアス電圧を出力するDA変換器であり、前記バイアス電圧可変手段は、前記DA変換器の入力データを変化させることが好ましい。
本発明により、デジタル制御によってゲート時間を変化させることができる。
【0014】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サンプリング用光パルスのパルス幅を変えることなく電界吸収型光変調器のゲート時間を可変とすることができる。これにより、ゲート時間を容易かつ連続的に可変にすることができ、被測定光信号に応じた時間分解能に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係る光信号モニタ装置の一例を示す構成概略図である。
【図2】実施形態2に係る光信号モニタ装置の一例を示す構成概略図である。
【図3】従来の光信号モニタ装置の一例を示す構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る光信号モニタ装置の一例を示す構成概略図である。本実施形態に係る光信号モニタ装置は、光パルス発生器2と、電界吸収型光変調器3と、バイアス電圧発生器としての可変バイアス電圧発生器4と、受光器11と、AD変換器12と、を備える。
【0019】
電界吸収型光変調器3に被測定光信号Pxが入射される。光パルス発生器2は、サンプリング用光パルスPsを出射する。可変バイアス電圧発生器4は、電界吸収型光変調器3にバイアス電圧を印加する。電界吸収型光変調器3は、サンプリング用光パルスPsと被測定光信号Pxとの相互吸収飽和特性を利用して被測定光信号Pxのサンプリングを行う。
【0020】
サンプリングされた被測定光信号Pyは、電界吸収型光変調器3から出射され、受光器11に入射される。受光器11は、サンプリングされた被測定光信号Pyを受光して光電変換し、被測定電気信号Pzを出力する。AD変換器12は、被測定電気信号Pzをデジタル信号に変換する。AD変換器12から出力された被測定電気信号Pzを観察することで、等価サンプリング方式で被測定光信号Pxの波形評価を行うことができる。
【0021】
ゲート時間制御部5は、光パルス強度可変手段又はバイアス電圧可変手段を含む。光パルス強度可変手段は、サンプリング用光パルスPsの強度を変化させる。バイアス電圧可変手段は、電界吸収型光変調器3に印加するバイアス電圧を変化させる。ゲート時間制御部5が光パルス強度可変手段又はバイアス電圧可変手段を含むことで、電界吸収型光変調器3のゲート時間を可変することができる。
【0022】
光パルス強度可変手段の場合、例えば、光パルス発生器2から出射されたサンプリング用光パルスPsの強度を減衰させる可変光減衰器7を設ける。この場合、ゲート時間制御部5は、可変光減衰器7の減衰量を変化させる。これにより、光パルス発生器2の動作条件を一定に保ちつつ、電界吸収型光変調器3のゲート時間を変化させることができる。
【0023】
バイアス電圧可変手段の場合、例えば、電界吸収型光変調器3へのバイアス電圧の印加が可変の可変バイアス電圧発生器4を用いる。この場合、ゲート時間制御部5は、可変バイアス電圧発生器4の印加電圧を変化させる。これにより、電界吸収型光変調器3のゲート時間を変化させることができる。
【0024】
以上説明したように、ゲート時間制御部5が光パルス強度可変手段又はバイアス電圧可変手段を含むことで、電界吸収型光変調器3のゲート時間を変化させ、被測定光信号Pxに応じた時間分解能に設定することができる。
【0025】
(実施形態2)
図2は、本実施形態に係る光信号モニタ装置の一例を示す構成概略図である。本実施形態では、光パルス発生器2は、モードロックファイバレーザ21及びモードロックファイバレーザ21を励起する可変励起光源22を備える。また、バイアス電圧発生器として、バイアス電圧を出力するDA変換器23を備える。
【0026】
本実施形態では、ゲート時間制御部5の光パルス強度可変手段は、可変励起光源22の出力強度を変化させる。これにより、可変光減衰器などの光学部品を用いることなく、電界吸収型光変調器3のゲート時間を可変することができる。
【0027】
本実施形態では、ゲート時間制御部5のバイアス電圧可変手段は、DA変換器23への入力データを変化させる。これにより、電界吸収型光変調器3のゲート時間をデジタル制御することができる。
【0028】
以上説明したように、ゲート時間制御部5が光パルス強度可変手段又はバイアス電圧可変手段を含むことで、電界吸収型光変調器3のゲート時間を変化させ、被測定光信号Pxに応じた時間分解能に設定することができる。
【0029】
光パルス強度可変手段によるゲート時間可変の原理について説明する。サンプリング用光パルスの強度がある一定値に達すると、電界吸収型光変調器の相互吸収飽和が飽和する。つまり、電界吸収型光変調器の透過率が一定値以上には上がらなくなる。そして、飽和する光強度以上にサンプリング用光パルスの強度を増加すると、透過率が上限値となる時間が後方に延び、ゲート時間が増加することになる。従って、飽和する光強度以上の領域でサンプリング用光パルスの強度を調整することにより、電界吸収型光変調器のゲート時間を変えることが可能となる。
【0030】
また、飽和する光強度以下の領域でサンプリング用光パルスの強度を調整することにより、電界吸収型光変調器のゲート時間を変えることも可能である。これは、サンプリング用光パルスの強度と電界吸収型光変調器の相互吸収飽和による透過率の関係が非線形(下に凸)であり、サンプリング用光パルスの強度が小さいほど非線形によるパルス幅の圧縮効果が小さくなり、ゲート時間が増加することを利用するものである。
【0031】
但し、飽和する光強度以下の領域でサンプリング用光パルスの強度を変えると、サンプリングされた被測定光信号Pyの強度が大きく変わることと、通常前者(飽和する光強度以上で調整)の方がゲート幅の調整範囲が広いことから、前者の方が光パルス強度可変手段として有用である。
【0032】
次に、バイアス電圧可変手段によるゲート時間可変の原理について説明する。一般にPN接合の逆バイアス電圧を増加すると、接合容量とキャリアのドリフト走行時間が減少し、応答時間が速くなる。電界吸収型光変調器の相互吸収飽和においても、逆バイアス電圧を増加するとサンプリング用光パルスによって励起されたキャリアの消滅が早くなるため、応答速度が速くなる。従って、バイアス電圧を変えることにより電界吸収型光変調器のゲート時間を変えることが可能となる。
【0033】
なお、電界吸収型光変調器のバイアス電圧を下げると、サンプリング用光パルスがない場合の損失が低下し、相互吸収飽和を用いた光ゲート動作における消光比が低下する。一方、飽和する光強度以上の領域でサンプリング用光パルスの強度を上げると、電界吸収型光変調器の透過率は飽和して一定値以上には上がらなくなるが、ゲート時間が長くなるので、サンプリングされた被測定光信号Pyのエネルギーは増加する。これにより、低速の受光器11の出力振幅が増加するため、バイアス電圧低下による消光比低下を打ち消す方向に働く。従って、バイアス電圧可変手段と光パルス強度可変手段を併用することにより、消光比を保ちつつ広い範囲のゲート時間可変を実現することが可能となる。
【0034】
つまり、電界吸収型光変調器のゲート時間を長くしたい場合には電界吸収型光変調器へのバイアス電圧を下げ、電界吸収型光変調器のゲート時間を短くしたい場合には電界吸収型光変調器へのバイアス電圧を上げる。これにより、電界吸収型光変調器のゲート時間を制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、高分解能の光サンプリングを行うことができるので、情報通信産業及び光を用いる各種産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
2:光パルス発生器
3:電界吸収型光変調器
4:可変バイアス電圧発生器
5:ゲート時間制御部
7:可変光減衰器
11:受光器
12:AD変換器
13:光カプラ
21:モードロックファイバレーザ
22:可変励起光源
23:DA変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリング用光パルスを出射する光パルス発生器と、
該サンプリング用光パルスと被測定光信号との相互吸収飽和特性を利用して前記被測定光信号のサンプリングを行う電界吸収型光変調器と、
該電界吸収型光変調器にバイアス電圧を印加するバイアス電圧発生器と、を備え、
等価サンプリング方式で被測定光信号の波形評価を行う光信号モニタ装置であって、
前記電界吸収型光変調器のゲート時間を可変するゲート時間制御部を設けたことを特徴とする光信号モニタ装置。
【請求項2】
前記ゲート時間制御部は、前記サンプリング用光パルスの強度を変化させる光パルス強度可変手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の光信号モニタ装置。
【請求項3】
前記光パルス発生器から出射されたサンプリング用光パルスの強度を減衰させる可変光減衰器をさらに備え、
前記光パルス強度可変手段は、前記可変光減衰器の減衰量を変化させることを特徴とする請求項2に記載の光信号モニタ装置。
【請求項4】
前記光パルス発生器は、モードロックファイバレーザ及び当該モードロックファイバレーザの励起光源を備え、
前記光パルス強度可変手段は、前記励起光源の出力強度を変化させることを特徴とする請求項2又は3に記載の光信号モニタ装置。
【請求項5】
前記ゲート時間制御部は、前記電界吸収型光変調器に印加するバイアス電圧を変化させるバイアス電圧可変手段を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光信号モニタ装置。
【請求項6】
前記バイアス電圧発生器は、前記バイアス電圧を出力するDA変換器であり、
前記バイアス電圧可変手段は、前記DA変換器の入力データを変化させることを特徴とする請求項5に記載の光信号モニタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−190693(P2010−190693A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34794(P2009−34794)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】