説明

光信号処理装置

【課題】従来の光信号処理装置においては、分光素子の分光特性温度依存性のため、温度によって光信号処理装置の性能が低下する問題があった。AWGの分光特性の温度依存性を解消するため、AWGのアレイ導波路上にコアを分断する複数の溝を形成する方法があったが、過剰損失の発生は避けられない。溝構造を形成するためには、AWGの製造に複雑な追加の工程が必要であり、製造コストが高かった。
【解決手段】AWGの分光特性の温度依存性を、空間光学系における簡単な温度補償手段を用いて補償することによって、AWG自体の温度補償を不要とする。光路変換手段の傾斜角度を制御したり、熱光学効果、電気光学効果を利用できる。空間光学系における温度補償作用に基づいて、従来技術より簡単な構成によって、光信号処理装置の光学特性を温度無依存化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号処理装置に関する。より詳細には、分光素子を含む光信号処理装置の温度補償に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信ネットワークの高速化、大容量化が進み、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)伝送信号の処理に代表されるような光信号処理装置へのニーズも高まっている。例えば、多重化された光信号をノード間で経路切り替えする機能が要請されている。光−電気変換を経ないで、光信号のまま経路変換を行なうことで、光信号処理装置のトランスペアレント化が進められている。
【0003】
一方、光信号処理装置の小型化・集積化の観点から、導波路型光回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)の開発研究が進められている。PLCでは、例えばシリコン基板上に石英ガラスを材料としたコアを形成して1つのチップに多様な機能を集積し、低損失で信頼性の高い光機能デバイスを実現している。さらには、複数のPLCチップと他の光機能部品とを組み合わせた複合的な光信号処理部品(装置)も登場している。
【0004】
例えば、特許文献1には、AWGなどを含む導波路型光回路(PLC)と液晶素子などの空間変調素子を組み合わせた、光信号処理装置が開示されている。より具体的には、液晶素子を中心として対称に配置されたPLC、コリメートレンズからなる波長ブロッカをはじめ、波長イコライザ、分散補償器などの検討が進められている。これらの光信号処理装置では、異なる波長を持つ複数の光信号に対して、波長毎に独立して光信号処理を行う。
【0005】
図16は、光信号処理装置の一例を概念図で示したものである。この光信号処理装置では、分光素子51を経由して光信号が入出力される。分光素子51は、波長多重されたWDM光信号を、その波長に応じた出射角度θで分波する。分波された光信号は、集光レンズ52へ向かって出射する。集光レンズ52によって集光された光信号は、出射角度θに対応して、強度変調または位相変調または偏向する機能を持つ信号処理素子53の所定の位置の各集光点に集光される。すなわち、入力光信号の波長に応じて、光信号は信号処理素子の異なる位置に集光されることに留意をされたい。信号処理素子53は、例えば複数の要素素子(ピクセル)からなる液晶素子などである。各要素素子の透過率などの制御によって、各波長の光信号は強度変調などを受け、所定の信号処理機能が実現される。信号処理を受けた光信号は、ミラー54で反射されて進行方向を反転させる。光信号はさらに集光レンズ52を通って、再び分光素子51において合波される。一般によく知られているように、分光素子51は、進行方向によって光信号を合波することもできる。合波された各波長の光信号は、再び出力光として、光信号処理装置外へ出力される。
【0006】
図16において、分光素子51は概念的に示したものであり、光信号の波長に応じて分波および合波をできるものであれば良い。例えば、分光素子には、グレーティング、プリズム、アレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)などがある。信号処理素子は、光信号の強度もしくは位相、または強度および位相を変調できるもの、または光信号の進行方向を偏向できるものであれば良い。例えば、信号処理素子には、液晶素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、光学結晶などがある。
【0007】
図16に示した光信号処理装置は、ミラーを使用して光信号を折り返すことで、1つの分光素子によって光信号の分波および合波の両方を行なう構成である。この構成は、一般に反射型と呼ばれている。波長ブロック等の光信号処理を行なう装置は、この構成だけに限られない。例えば、図16のミラーを使用せずに、信号処理素子を対称軸の位置とし、入射光路軸の延長線上であって入射系の反対側に、もう1つのレンズおよび分光素子からなる出射系を配置した構成も可能である。この構成は、独立した入射系および出射系を経由して、それぞれ光信号の分波および合波を行なう構成であり、透過型と呼ばれている。さらに、図16の装置構成において、ミラーの向きを変えることによって、任意の位置に配置された、もう一つのレンズおよび分光素子からなる出射系によって光信号の合波を行う構成も可能である。例えば、ミラーの反射面を光信号の入射光路に対して45度傾けて、入射光路に対して垂直方向に配置されたレンズおよび分光素子により出射系を構成することも可能である。また、信号処理素子が偏向機能を持つ場合は、出射系を複数備えることもできる。
【0008】
図16において、分光素子51と集光レンズ52とは、前焦点距離FFLだけ離して配置され、信号処理素子53と集光レンズ52とは後焦点距離BFLだけ離して配置される。集光レンズ52によって集光される光の焦点は、使用するすべての波長においてミラー54の面上になくてはならない。ミラー面上からずれると、入出力光間の結合損失を生じる問題が起こる。同時に、集光された光信号のビームスポット径が大きくなることから、波長分解能が低下する問題が生じる。
【0009】
また、信号処理素子53は、光信号の波長ごとに選択的に変調を行なうために、空間的に周期的な構造を備えている必要がある。例えば、信号処理素子53が液晶素子の場合、液晶素子の要素素子の構造は、分光素子および集光レンズの光学特性に合わせて設計されなければならない。
【0010】
より具体的には、信号処理素子上における集光位置の波長依存性は、分光素子の角度分散値に集光レンズの焦点距離を乗じたものに従うことが知られている。集光位置の波長依存性は、分光光学系の線分散値とも呼ばれる。分光素子および集光レンズによって決定される光学系の線分散値は、信号処理素子の構造の設計に用いた線分散値と、十分に一致している必要がある。これらの線分散値にずれがあれば、実際の光信号の集光点の位置は信号処理素子の個々の要素素子(例えば、液晶シャッター素子のピクセル)の位置と一致しなくなる。この不一致のため、処理される光信号の波長誤差が生じる。
【0011】
【特許文献1】特開2002−250828号公報(第16頁、19頁、第20図、第27図、第29D図など)
【特許文献2】特開2004−239991号公報
【特許文献3】特開2001−255242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の光信号処理装置においては、分光素子の分光特性に温度依存性があるため、温度によって光信号処理装置の性能が低下する問題があった。図16に示した構成の光信号処理装置において、分光素子がAWGの場合を考える。同じ波長の光信号であっても、温度によってその出射角度が変化すると、信号処理素子上での集光点の位置が変動する。このため、光結合損失に温度依存性が生じる。
【0013】
従来、AWGの分光特性の温度依存性を解消するためには、AWG自体の温度依存性を小さくすることが検討されていた。例えば、特許文献3には、AWGのアレイ導波路上に、コアを分断する特徴的な複数の溝を形成する構成によって温度補償する技術が開示されている。この技術によれば、溝を形成すること自体により、1dB程度の過剰損失の発生は避けられない。また、溝の形状を最適化した場合でも、AWG基板の垂直方向への光信号放射による放射過剰損失を十分に抑えることはできなかった。また、溝構造を形成するためには、AWGの製造のために複雑な追加の工程が必要であり、製造コストが高いという問題がある。
【0014】
AWGの分光特性の温度依存性に起因する問題は、集光レンズを含まないような光信号処理装置においても、同様に問題となり得る。上述のように、AWGの持つ分光特性の温度依存性に起因する光信号処理装置の性能の温度変動の問題を、より簡単に低コストな方法で解決することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、光信号を分光して異なる波長の複数の光信号に分離して、各波長の光信号に対して信号処理をする光信号処理装置において、光信号の波長に応じた出射角度で、異なる波長を有する複数の光信号に分光する分光手段と、前記分光手段から出射した前記光信号を変調する信号処理手段と、前記分光手段と前記信号処理手段との間の光路中に配置され、前記光信号の光路を屈折させる光路変換手段であって、前記分光手段からの前記出射角度の温度依存性を相殺するように、前記光信号の光路を屈折させる手段とを備えたことを特徴とする光信号処理装置である。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載の信号処理装置において、前記光路変換手段の屈折率温度依存特性によって、前記分光手段の前記出射角度の温度依存性を相殺するように、前記光信号の前記光路変換手段からの出射角度を変化させることを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項2に記載の信号処理装置において、前記屈折率温度依存特性として光路変換手段の熱光学効果または電気光学効果を利用して、前記光信号の前記光路変換手段からの出射角度を変化させることを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明は、光信号を分光して異なる波長の複数の光信号に分離して、各波長の光信号に対して信号処理をする光信号処理装置において、光信号の波長に応じた出射角度で、異なる波長を有する複数の光信号に分光する分光手段と、前記分光手段から出射した前記光信号を集光させる集光手段と、前記集光手段により集光された前記光信号を変調する信号処理手段と、前記分光手段と前記集光手段との間または前記集光手段と前記信号処理手段との間のいずれか一方の光路中に配置され、前記光信号の光路を屈折させる光路変換手段であって、前記分光手段からの前記出射角度の温度依存性を相殺するように、前記光信号の光路を屈折させる手段とを備えたことを特徴とする光信号処理装置である。
【0019】
請求項5の発明は、請求項4に記載の信号処理装置において、前記集光手段と前記信号処理手段との間の光路中に配置された前記光路変換手段の、前記集光手段の主光路軸に対する傾斜角度を変化させる駆動手段と、前記分光手段の温度を検出する温度検出手段とをさらに備え、前記温度検出手段により検出された温度に基づいて、前記駆動手段により前記傾斜角度を変化させることによって、前記信号処理手段における前記光信号の集光点位置を変化させることを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明は、請求項4に記載の信号処理装置において、前記集光手段と前記信号処理手段との間の光路中に配置された前記光路変換手段の、熱光学効果を利用して、前記信号処理手段における前記光信号の集光点位置を変化させることを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明は、請求項5または6に記載の信号処理装置において、前記集光手段と前記信号処理手段との間の光路中に配置された前記光路変換手段は、ガラス平行平板であることを特徴とする。
【0022】
請求項8の発明は、請求項4に記載の信号処理装置において、前記分光手段と前記集光手段との間の光路中に配置された前記光路変換手段の、熱光学効果または電気光学効果を利用して、前記光路変換手段からの前記光信号の出射角度を変化させることを特徴とする。
【0023】
請求項9の発明は、光信号を分光して異なる波長の複数の光信号に分離して、各波長の光信号に対して信号処理をする光信号処理装置において、光信号の波長に応じた出射角度で、異なる波長を有する複数の光信号に分光する分光手段と、前記分光手段から出射した前記光信号を変調する信号処理手段と、前記分光手段または前記信号処理手段のいずれか一方に連結され、前記分光手段の分波面と前記信号処理手段との交線軸方向に対して、前記分光手段と前記信号処理手段との相対的位置を変化させる可動手段であって、前記分光手段からの前記出射角度の温度依存性を相殺するように、前記いずれか一方の位置を変化させることを特徴とする光信号処理装置である。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によればAWGの持つ分光特性の温度依存性に起因する光信号処理装置の性能の温度変動を、空間光学系において温度補償することで、より簡単で低コストな方法によって温度無依存化することができる。光信号処理装置の空間光学系における光結合損失を、大幅に低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の光信号処理装置は、AWGの分光特性の温度依存性を、空間光学系における簡単な温度補償手段を用いて補償することによって、AWG自体の温度補償を不要とするものである。空間光学系における温度補償作用によって、従来技術より簡単な構成で光学特性の十分な温度無依存化を実現できる。AWG素子自体における温度補償が不要となり、AWGの製作工程を簡略化して、低コスト化を実現する。
【0026】
「第1の実施例」:
図1は、本発明の第1の実施例に係る光信号処理装置の構成を示す図である。本光信号処理装置は、ミラーを含み1つの分光素子により光信号の入出力を行なう反射型の構成である。異なる波長を持つ複数の光信号は、AWGなどの分光素子1によって分波され、波長に応じた出射角度でAWG1の端面から出射する。出射した光信号は、シリンドリカルレンズ2を通過して平行光とされる。光信号は、さらに集光レンズ3によって集光され、信号処理素子5によって変調を受ける。変調を受けた光信号は、ミラー6によって反射され、上述の経路を反対方向に進み、AWG1によって合波される。上述の動作は、従来の光信号処理装置と同じであり、本発明においては、集光レンズ3と信号処理素子5との間の空間光学系に、光路変換手段4を備えている点において、従来技術と異なる。さらに本発明は、光路変換手段4が、温度補償手段として、または温度補償手段の一部として作用する点に特徴がある。
【0027】
光路変換手段4は、具体的には例えばガラス平行平板とすることができる。ガラス平行平板が熱光学作用を持たない場合には、AWG1上に配置された温度センサ7と伴に動作することで、AWG1の分光特性の温度依存性を補償することができる。この場合、ガラス平行平板の光軸に対する傾斜角度を制御することで温度補償ができる。また、ガラス平行平板の熱光学作用を利用する場合には、所定の傾斜角度に設定したガラス平行平板だけで温度補償が可能である。以下詳細に、本発明の温度補償動作を説明する。
【0028】
図2は、光路変換手段が熱光学作用を持たない場合の、光信号処理装置の温度補償システムの構成を示す図である。図1に示した光信号処理装置は光機能モジュール18として構成されており、光機能モジュール18の外部には、温度センサ7からの信号を受信するAD変換器8、CPU9およびモータドライバ10が接続されている。光機能モジュール18は、光路(z軸)に対するガラス平行平板4の向きを調整するためのモータを含む角度可変機構11がさらに含まれている。
【0029】
温度センサ7からの温度検出信号は、AD変換器8によってデジタル信号化される。CPU9は、温度検出デジタル信号に基づいて、ガラス平行平板4の向きを所定の角度に設定するため、モータドライバ10に対してドライバ制御信号を与える。ドライバ制御信号によって、回転機構11の動作量が決定され、ガラス平行平板4が所定の傾斜角度に設定される。
【0030】
AD変換器8およびCPU9は、デジタル信号で温度補償制御を行なうための例示的な構成を示すものであり、これに限定されるものではない。AWG1温度の検出手段からの検出信号、検出情報に基づいて、ガラス平行平板4の角度を制御することができる制御機構であれば、CPUを含む必要はない。アナログ信号を介在させた制御でも良いのは言うまでもない。
【0031】
図3は、モータを含む角度可変機構の構成および動作を例示的に示す図である。図3aは、簡略化した構成を示しており、上側の図は図1と同じくAWGの分波面を垂直に見た上面図、下側の図はAWG基板の厚み方向から見た側面図である。モータ12の回転運動は、ねじ13に伝えられ、ねじ13と機械的に連動するスプリットナット14の直線運動に変換される。スプリットナット14は、ガラス平行平板4と可動軸19によって接続されている。ガラス平行平板4を、回転軸15を中心として回転させることができ、光軸(図1のz軸)に対して所定の傾斜角度にその向きを設定できる。図3bは、高温時にスプリットナット14を右方向へ変位させて、ガラス平行平板4を反時計回りに回転させる動作を示している。図3cは、逆に、低温時にスプリットナット14を左方向へ変位させて、ガラス平行平板4を時計回りに回転させる動作を示している。本構成は、ガラス平行平板4を回転させるための例示的な構成を示したものである。したがって、様々な形態の回転機構が可能であり、本構成に限定されるものではない。必ずしもモータ12を必要とはせず、他のアクチュエータを利用できることに留意されたい。
【0032】
図4は、別の角度可変機構の構成および動作を例示的に示す図である。図4aは、簡略化した構成を示しており、上側の図は図1と同じくAWGの分波面を垂直に見た上面図、下側の図はAWG基板の厚み方向から見た側面図である。ベース17に固定されたバイメタル16は、可動軸19においてガラス平行平板4と機械的に接続されている。ガラス平行平板4を、回転軸15を中心として回転させることができ、光軸(図1のz軸)に対して所定の傾斜角度にその向きを設定できる。図4bは、高温時にバイメタル16が右方向へ変位し、ガラス平行平板4を反時計回りに回転させる動作を示している。図4cは、逆に、低温時にバイメタル16が左方向へ変位し、ガラス平行平板4を時計回りに回転させる動作を示している。
【0033】
図4のバイメタルを利用した角度可変機構では、バイメタル自体の動作により温度検出機能およびフィードバック制御機能が実現される。したがって、図1に示した温度センサ7は不要である。さらに図2に示した、AD変換器8、CPU9およびモータドライバ10は不要な点に留意されたい。次に、本発明の光信号処理装置において最も重要な、光路変換手段(ガラス平行平板)4によってAWGの分光特性の温度依存性を温度補償する仕組みについてさらに詳細に説明する。
【0034】
図5は、ガラス平行平板の光軸移動作用ならびに温度と所要傾斜角度との関係を示す図である。図5aは、ガラス平行平板の各パラメータ定義を説明する図である。図5aにおけるz軸方向は、図1におけるz軸方向と対応している。集光レンズを経た光信号は、信号処理素子へ向かって、光路20a、20b、20cをz軸に沿って右方向へ進む。ガラス平行平板4によって、光路をx軸方向に移動させることができる。x軸方向には、信号処理素子の要素素子が配列されている。ガラス平行平板4によって、温度とともに光軸をz軸に平行に保ったまま、x軸方向に移動させることにより、AWGなどの分光素子の分光特性の温度依存性に起因する集光点位置ずれを補償することができる。
【0035】
図5aに示したように、ガラス平行平板の入射面と光信号の進行方向z軸の法線との成す傾斜角度をθとすると、ガラス平行平板による光軸の移動量Δxpは次式で表される。
【0036】
【数1】

【0037】
ここで、n1をガラス平行平板の外部の屈折率、n2をガラス平行平板の屈折率、tをガラス平行平板の厚みとする。通常、空間結合系の光信号処理装置の場合は、n1=1である。式1よりわかるように、ガラス平行平板の材料(屈折率)と厚みtを決定し、傾斜角度θを変化させることによって、任意の光軸移動量Δxpを得ることができる。AWGの分光特性の温度依存性に合わせて、温度とともに傾斜角度θを制御することによって、信号処理素子上の集光点位置のずれを補償することができる。
【0038】
例えば、次のような構成パラメータのAWGの場合を考える。中心波長を1587.043nm、アレイ導波路光路長Lを30.54μm、アレイ導波路間隔dを12μm、集光レンズ焦点距離fを50mm、群屈折率ngを1.48、導波路等価屈折率ncを1.45、石英ガラスの熱光学定数(dn/dT)を1.1×10-5とする。このとき、AWGの温度変動に伴なう信号処理素子上の集光位置のシフト量は、次式で表される。
【0039】
【数2】

【0040】
上述のパラメータ値の場合、ΔxA=1.43(μm/℃)となる。式2から求められる集光位置のシフト量ΔxAと式1から求められる光軸の移動量Δxpとを一致させることで、実際の集光位置と信号処理素子の要素素子の位置とのずれを相殺することができる。
【0041】
図5bは、温度と所要傾斜角度との関係を示す図である。ガラス平行平板の厚みtを3.2mm、n2=2.4(二酸化チタンTiO2)、n1=1として、温度T=45℃を基準温度とした場合の、温度と所要傾斜角度θとの関係を示している。図2および図3で示したガラス平行平板の角度制御機構によりガラス平行平板を回転させることによって、この傾斜角度θを設定することができる。
【0042】
また、解析によれば、平行平板の挿入損失は0.1dB以下であり、アレイ導波路に溝を形成する従来の温度依存性補償の方法における損失1dBと比較して、損失の大幅な改善効果が得られた。
【0043】
「第2の実施例」:
これまで述べた光信号処理装置では、空間光学系に配置された光路変換手段、例えばガラス平行平板が、熱光学作用を持たない場合について説明してきた。すなわち、光路変換手段自体の光軸に対する傾斜角度を機械的手段を用いて変化させることによって、AWGの分光特性の温度依存性を補償するよう動作する構成であった。しかし、光路変換手段自体が熱光学特性を持つ場合には、光路変換手段自体の屈折率温度依存特性を利用して温度補償をすることもできる。
【0044】
図6は、平行平板の熱光学効果による補償の効果を説明する図である。式1からも理解できるように、平行平板の材料の屈折率n2が、熱光学効果により温度に伴って変化する場合には、この屈折率n2の温度変化を温度補償に利用できる。AWGなどの分光素子の分光特性の温度依存性に起因する集光点位置のずれを、補償することができる。
【0045】
AWGの構成は、第1の実施例と同様に、中心波長を1587.043nm、アレイ導波路光路長Lを30.54μm、アレイ導波路間隔dを12μm、集光レンズ焦点距離fを50mm、群屈折率ngを1.48、導波路等価屈折率ncを1.45、石英ガラスの熱光学定数(dn/dT)を1.1×10-5とする。
【0046】
例えば、平行平板の傾斜角度θを30°、平行平板の厚みtを36.5mmとする。ここで、平行平板の材料を光学ポリマとし、熱光学定数をdn2/dT=−1.6×10-4とする。図6は、温度T=45℃を基準温度とした場合の、平行平板が有る場合および無い場合について残留波長シフト量の温度特性を示している。本実施例の場合、100GHzチャンネル間隔のWDM通信において許容される中心波長シフトの許容量は5GHzである。平行平板がない場合には、温度変化に伴う最大の波長シフト量は60GHzに達しているが、平行平板を挿入することにより、波長シフト量を3GHzにまで大幅に下げることができる。
【0047】
第1の実施例と同じく、解析によれば、平行平板の挿入損失は0.1dB以下であり、アレイ導波路に溝を形成する従来の温度依存性補償の方法における損失1dBと比較して、損失の大幅な改善効果が得られた。
【0048】
本実施例の場合には、図2に示した温度センサ7および回転機構11は必要ないことに留意されたい。さらに、AD変換器8、CPU9およびモータドライバ10も不要である。
【0049】
「第3の実施例」:
以上に説明した各実施例では、集光レンズと信号処理素子との間に光路変換素子を配置する構成であった。他方、光路変換素子をAWGと集光レンズとの間に配置することもできる。この場合は、光路変換素子は、AWGの分光角度自体を直接に温度補償するように動作する。
【0050】
図7は、本発明の第3の実施例に係る光信号処理装置の構成を示す図である。本実施例の光信号処理装置も、ミラーを含み1つの分光素子により光信号の入出力を行なう反射型の構成である。本実施例の構成は、AWG1と集光レンズ3との間の空間光学系に、光路変換手段21を備えている点において、従来技術および第1の実施例の構成と異なる。さらに、光路変換手段21が、温度補償手段として作用するところに特徴がある。光信号処理装置としての基本的な構成および動作は、図1で説明した光信号処理装置と同様なので、説明は省略する。
【0051】
本実施例では、AWG上の温度センサは不要であり、光路変換手段21の熱光学効果を利用して温度補償を行なう。次に、光路変換手段として、ウエッジ板を利用した場合についてさらに詳細に述べる。
【0052】
図8は、本発明の光信号処理装置におけるウエッジ板の構造および配置方法を説明する図である。ウエッジ板21は、所定の頂角θを持ち、頂点の向きをAWGのアレイ導波路の短い導波路側と一致させて配置している。ここで、ウエッジ板の熱光学定数およびAWGを構成する材料の熱光学定数は、互いに逆の符号の場合であるとする。図8aにおけるz軸方向は、図7のz軸方向と対応している。AWGから出射した光信号は、集光レンズへ向かって、光路20a、20b、20cをz軸に沿って右方向へ進む。ウエッジ板21によって、z軸方向に対する光路の向きを変化させることができる。これはAWGからの出射角度自体を変化させることと同じである。ウエッジ板4によって、温度とともにz軸方向に対する光路の向きを変化させることにより、AWGなどの分光素子の分光特性の温度依存性に起因する集光点位置のずれを補償することができる。
【0053】
図8aにおいて、ウエッジ板21は、x軸を対称軸として光信号の入射面と出射面とが左右対称となるように配置されているものとして示されている。しかし、ウエッジ板21の向きは、この向きに限定されない。図8bのように頂角がAWGのアレイ導波路の短い導波路側と一致して、光信号がウエッジ板を透過する限り、ウエッジ板21全体が傾いていても構わない。図8cのような向きに配置してはならない。ただし、ウエッジ板の熱光学定数およびAWGを構成する材料の熱光学定数の符号が同じ場合は、逆に図8cのように配置しなければならないことに注意されたい。
【0054】
ここで、AWGの温度変動に伴う分散角度の温度変動量は、次式で表される。
【0055】
【数3】

【0056】
具体的には、第1の実施例と同じAWGの構成パラメータを考えると、ΔθA=2.86×10-5(rad/℃)である。
【0057】
一方、光信号のz軸に対する入射角度をθi、光信号のz軸に対する出射角度をθo、ウエッジ板の頂角をθ、ウエッジ板の屈折率をn2とする。このとき、θiおよびθoの間には次式の関係が成り立つ。
【0058】
【数4】

【0059】
熱光学効果により、ウエッジ板の材料の屈折率n2が温度に伴なって変化する場合には、この屈折率n2の温度変化を温度補償に利用できる。AWGの分光特性の温度依存性に起因する出射角度の変動を、屈折率n2の熱光学変化によって補償することができる。例えば、ウエッジ板の頂角θを10.26°、ウエッジ板の熱光学定数をdn2/dT=−1.6×10-4とすることで、式3により表される分散角度の温度依存性を補償することができる。
【0060】
また、解析によれば、ウエッジ板の挿入損失は0.1dB以下であり、アレイ導波路に溝を形成する従来の温度依存性補償の方法における損失1dBと比較して、損失の大幅な改善効果が得られた。
【0061】
「第4の実施例」:
空間光学系に配置された光路変換手段を用いて温度補償を行なう他の方法として、電気光学結晶を利用することができる。電気光学結晶に適切な電圧を印加することによって、その光学特性を変化させることができるので、温度に伴い屈折率を制御することによって、温度補償をすることができる。
【0062】
図9は、本発明の第4の実施例に係る光信号処理装置の構成を示す図である。本実施例の光信号処理装置も、ミラーを含み1つの分光素子により光信号の入出力を行なう反射型の構成である。本実施例の構成は、AWG1と集光レンズ3との間の空間光学系に、光路変換手段30を備えている点において、従来技術および第1の実施例の構成と異なる。光路変換手段30が、温度補償手段として作用するところに特徴がある。光信号処理装置としての基本的な構成および動作は、図1に示したものと同様なので、説明は省略する。
【0063】
本実施例においては、光路変換手段30として、電気光学結晶30を利用する。AWG1による分波面に平行となるように、電気光学結晶30の上下面に対向ずる2つの楔形の電極30、31を形成している。楔形電極30、31に電圧を印加することによって、電極間の電気光学結晶内領域の屈折率を変化させることができる。
【0064】
図10は、本発明の第4の実施例に係る光信号処理装置を含む温度補償システムを示す構成図である。電気光学結晶を利用する場合には、第1の実施例の場合と同様に、温度検出手段として、AWG上の温度センサ7が必要となる。図9に示した光信号処理装置は光機能モジュール38として構成されており、光機能モジュール38の外部には、温度センサ7からの信号を受信するAD変換器8、CPU9および高電圧発生装置35が接続されている。
【0065】
温度センサ7からの温度検出信号は、AD変換器8によってデジタル信号化される。CPU9は、温度検出デジタル信号に基づいて、所定の電圧を電気光学結晶30に印加するため、高電圧発生装置35に対して制御信号を与える。制御信号によって、高電圧発生装置35からの印加電圧が決定される。電気光学結晶の電極30、31間に対する、この印加電圧により、AWGの分光角度の温度依存性を補償するような電気光学結晶の屈折率変化が生じる。
【0066】
電気光学結晶としては、例えばK1-yLiyTa1-xNbx3(0<x<1、<y<1)、LiNbO3、LiTaO3、LiIO3、KNbO3、KTiOPO4、BaTiO3、SrTiO3、Ba1-xSrxTiO3(0<x<1)、Ba1-xSrxNb26(0<x<1)、Sr0.75Ba0.25Nb26、Pb1-yLayTi1-xZrx3(0<x<1、<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3、KH2PO4、KD2PO4、(NH4)H2PO4、BaB24、LiB35、CsLiB610、GaAs、CdTe、GaP、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、ZnOなどがある。
【0067】
図11は、温度と電気光学結晶への所要印加電圧との関係を示す図である。電気光学結晶としてLiNbO3を用い、電気光学結晶の厚み(y方向)を0.5mm、楔形電極の頂角を30°とした場合の、各温度における所要印加電圧を示したものである。補償するAWGの分光角度の温度依存性は、第3の実施例と同じである。
【0068】
また、解析によれば、LiNbO3の挿入損失は0.2dB以下であり、アレイ導波路に溝を形成する従来の温度依存性補償の方法における損失1dBと比較して、損失の大幅な改善効果が得られた。
【0069】
「第5の実施例」:
図12は、本発明の第5の実施例に係る光信号処理装置の構成を示す図である。本実施例は、電気光学結晶を利用した別の実施形態である。電気光学結晶として、タンタル酸ニオブ酸カリウムKTa1-xNbxO(以下KTNとする)を利用する。第4の実施例と比較すると、電気光学結晶の種類および電極の配置構成が異なるだけで、光信号処理装置としての基本構成および動作は同一である。KTNは、結晶に配置された2つの電極間に電圧を印加することにより、電極方向に変化する屈折率分布を誘起させることで、光ビームを自在にスキャンできることが知られている。この屈折率分布に依存して、KTNへ入射する光信号をx軸方向に偏向させることができる。
【0070】
KTNによる電気光学結晶30は、z軸方向に長さL、x軸方向に幅Wを持つ直方体である。電極33、34は、z−y面内に対向して配置される。x軸方向にKTNへ電圧が印加される。
【0071】
図13は、温度とKTN結晶への所要印加電圧との関係を示す図である。電気光学結晶の幅W(x軸方向)を1cm、長さLを6mmとした場合の、電極33、34間への所要印加電圧を示した。補償するAWGの分光角度の温度依存性は、第3の実施例のものと同じである。
【0072】
また、解析によれば、KTN結晶の挿入損失は0.2dB以下であり、アレイ導波路に溝を形成する従来の温度依存性補償の方法における損失1dBと比較して、損失の大幅な改善効果が得られた。
【0073】
「第6の実施例」:
これまで説明した光信号処理装置は、集光レンズを含む構成であった。しかしながら、集光レンズを含まない構成の光信号処理装置の場合でも、AWGなどの分光素子の分光特性の温度依存性に起因する集光点位置のずれを補償することができる。ここで、信号処理素子として、位相変調素子を用いた光信号処理装置の例について説明する。
【0074】
図14は、本発明の第6の実施例に係る液晶等の位相変調素子を用いた波長選択フィルタの構成および動作を説明する図である。図14aを参照すると、異なる波長を有する複数の光信号は、その波長に応じた出射角度でAWG1からz軸方向へ出射する。位相変調素子5は、ミラー6と組み合わせられて波長選択フィルタとして動作する。位相変調素子5は、特定の入射角で入射した光信号のみを、同一の方向に反射させることができる可変プリズムとして動作する。位相変調素子5は、例えば液晶素子の各ピクセルに段階的に異なる電圧を与えて、等価的にプリズムと同様な滑らかな位相変化を与えることができる。 図14bは、位相変調素子により与えられる位相変化量を概念的に示している。AWG1と液晶素子5を組み合わせることによって波長選択フィルタを構成することができる。このような波長選択フィルタの場合でも、AWG1の分光特性の温度依存性、さらに、位相変調素子5の位相変調特性の温度依存性のために、波長選択特性に温度変動が生じる。
【0075】
図14cは、波長選択フィルタに本発明を適用した光信号処理装置の構成図である。AWG1と位相変調素子5との間の光路中に、光路変換素子21を挿入した構成となっている。光路変換素子としては、説明した第3の実施例のように熱光学効果を利用したり、第4または第5の実施例のように電気光学結晶を利用することができる。
【0076】
たとえば、熱光学効果を利用したウエッジ板の構成の場合は、解析によればウエッジ板の挿入損失は0.1dB以下であり、アレイ導波路に溝を形成する従来の温度依存性補償の方法における損失1dBと比較して、損失の大幅な改善効果が得られた。
【0077】
「第7の実施例」:
図15は、本発明の第7の実施例に係る光信号処理装置の構成および動作を説明する図である。以上述べてきた光信号処理装置においては、空間光学系に配置した光路変換手段により、温度補償する構成であった。ここで、信号処理素子の集光位置に着目すると、信号処理素子の位置を他の光学系構成要素と相対的に移動させることによっても、温度補償ができる。
【0078】
図15bには、上述の式(3)により表される分散角度の温度変動量に基づいた、集光点の温度による移動量を示した図である。この移動量に連動させて信号処理素子の位置を移動させれば、集光点を常に信号処理素子の所定の要素素子上に集光させることができる。
【0079】
図15aは、本発明の第7の実施例に係る光信号処理装置の構成を示す図である。基本的な構成は、第1の実施例などと同じであり、信号処理素子5が可動ステージ40に固定されており、可動ステージ40は、可動機構41を介して、例えばモータ12によってその位置を移動させることができる。AWG1の分波面と信号処理素子5との交線軸方向に、可動ステージ40に固定されている信号処理素子5を、AWG1およびレンズ3などを含む他の光学系要素に対して相対的に移動させることができる。これにより、分光特性に温度変動があっても、光信号は信号処理素子内の所定の一定位置に集光する。可動ステージの構成形態は、本実施例の構成に限られることはない。例えば、AWGの位置を移動させる構成でも良い。信号処理素子とAWGとの相対位置を可変させられる限り、どのようなものであっても良い。温度検出手段を含む全体温度補償システムは、図2の構成の場合と全く同様であり、詳細の説明は省略する。
【0080】
またこの場合は、前出の実施例のように、光路中にウエッジ板や平行平板、電気光学結晶などの部品を挿入する必要はない。したがって、本実施例においては、温度補償によって過剰な損失が発生することはない。
【0081】
以上の各実施例においては、反射型の構成の光信号処理装置を例として説明してきたが、本発明が反射型の構成に限定されないことはいうまでもない。すなわち、透過型の構成または出射系もしくは入射系を複数備えた構成の光信号処理装置にも適用できる。
【0082】
以上説明したように、本発明によれば、AWGの持つ分光特性の温度依存性に起因する光信号処理装置の温度変動を、空間光学系において温度補償することで、より簡単で低コストな方法によって温度無依存化することができる。光信号処理装置の空間光学系における光結合損失を、広い温度範囲で大幅に低減させることができる。空間光学系における温度補償作用によって、従来技術よりも簡単な構成で光学特性の十分な温度無依存化を実現できる。AWG素子自体における温度補償が不要となり、AWGの製作工程を簡略化して、光信号処理装置全体の低コスト化を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0083】
光通信に使用される光信号処理装置に利用できる。波長ブロッカをはじめ、波長イコライザ、波長可変フィルタ、分散補償器などへの応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施例に係る光信号処理装置の構成図である。
【図2】本発明の光信号処理装置を含む温度補償システムを示す図である。
【図3】傾斜角度制御機構の構成および動作を説明する図である。
【図4】別の傾斜角度制御機構の構成および動作を説明する図である。
【図5】ガラス平行平板の光軸移動作用ならびに温度と所要傾斜角度との関係を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施例に係る光信号処理装置における熱光学効果による温度補償の効果を説明する図である。
【図7】本発明の第3の実施例に係る光信号処理装置の構成図である。
【図8】ウエッジ板の構造および配置方法を説明する図である。
【図9】本発明の第4の実施例に係る光信号処理装置の構成図である。
【図10】本発明の第4の実施例に係る光信号処理装置を含む温度補償システムを示す図である。
【図11】温度と電気光学結晶への所要印加電圧との関係を示す図である。
【図12】本発明の第5の実施例に係る光信号処理装置の構成図である。
【図13】温度およびKTN結晶への所要印加電圧の関係を示す図である。
【図14】本発明の第6の実施例に係る光信号処理装置の構成図である。
【図15】本発明の第7の実施例に係る光信号処理装置の構成図およびステージ制御量を説明する図である。
【図16】従来の光信号処理装置の概念的な構成図である。
【符号の説明】
【0085】
1、51 AWG(分光素子)
2 シリンドリカルレンズ
3、52 集光レンズ
4 平行平板(光路変換手段)
5、53 信号処理素子
6、54 ミラー
7 温度センサ
8 AD変換器
9 CPU
10 モータドライバ
11 角度可変機構
12 モータ
16 バイメタル
21 ウエッジ板(光路変換手段)
30 電気光学結晶
31、32、33、34 電極
35 高電圧発生装置
40 可動ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を分光して異なる波長の複数の光信号に分離して、各波長の光信号に対して信号処理をする光信号処理装置において、
光信号の波長に応じた出射角度で、異なる波長を有する複数の光信号に分光する分光手段と、
前記分光手段から出射した前記光信号を変調する信号処理手段と、
前記分光手段と前記信号処理手段との間の光路中に配置され、前記光信号の光路を屈折させる光路変換手段であって、前記分光手段からの前記出射角度の温度依存性を相殺するように、前記光信号の光路を屈折させることと
を備えたことを特徴とする光信号処理装置。
【請求項2】
前記光路変換手段の屈折率温度依存特性によって、前記分光手段の前記出射角度の温度依存性を相殺するように、前記光信号の前記光路変換手段からの出射角度を変化させることを特徴とする請求項1に記載の光信号処理装置。
【請求項3】
前記屈折率温度依存特性として光路変換手段の熱光学効果または電気光学効果を利用して、前記光信号の前記光路変換手段からの出射角度を変化させることを特徴とする請求項2に記載の光信号処理装置。
【請求項4】
光信号を分光して異なる波長の複数の光信号に分離して、各波長の光信号に対して信号処理をする光信号処理装置において、
光信号の波長に応じた出射角度で、異なる波長を有する複数の光信号に分光する分光手段と、
前記分光手段から出射した前記光信号を集光させる集光手段と、
前記集光手段により集光された前記光信号を変調する信号処理手段と、
前記分光手段と前記集光手段との間または前記集光手段と前記信号処理手段との間のいずれか一方の光路中に配置され、前記光信号の光路を屈折させる光路変換手段であって、前記分光手段からの前記出射角度の温度依存性を相殺するように、前記光信号の光路を屈折させることと
を備えたことを特徴とする光信号処理装置。
【請求項5】
前記集光手段と前記信号処理手段との間の光路中に配置された前記光路変換手段の、前記集光手段の主光路軸に対する傾斜角度を変化させる駆動手段と、
前記分光手段の温度を検出する温度検出手段とをさらに備え、
前記温度検出手段により検出された温度に基づいて、前記駆動手段により前記傾斜角度を変化させることによって、前記信号処理手段における前記光信号の集光点位置を変化させることを特徴とする請求項4に記載の光信号処理装置。
【請求項6】
前記集光手段と前記信号処理手段との間の光路中に配置された前記光路変換手段の、熱光学効果を利用して、前記信号処理手段における前記光信号の集光点位置を変化させることを特徴とする請求項4に記載の光信号処理装置。
【請求項7】
前記集光手段と前記信号処理手段との間の光路中に配置された前記光路変換手段は、ガラス平行平板であることを特徴とする請求項5または6に記載の光信号処理装置。
【請求項8】
前記分光手段と前記集光手段との間の光路中に配置された前記光路変換手段の、熱光学効果または電気光学効果を利用して、前記光路変換手段からの前記光信号の出射角度を変化させることを特徴とする請求項4に記載の光信号処理装置。
【請求項9】
光信号を分光して異なる波長の複数の光信号に分離して、各波長の光信号に対して信号処理をする光信号処理装置において、
光信号の波長に応じた出射角度で、異なる波長を有する複数の光信号に分光する分光手段と、
前記分光手段から出射した前記光信号を変調する信号処理手段と、
前記分光手段または前記信号処理手段のいずれか一方に連結され、前記分光手段の分波面と前記信号処理手段との交線軸方向に対して、前記分光手段と前記信号処理手段との相対的位置を変化させる可動手段であって、前記分光手段からの前記出射角度の温度依存性を相殺するように、前記いずれか一方の位置を変化させることと
を備えたことを特徴とする光信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−36901(P2009−36901A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199737(P2007−199737)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】