説明

光信号発生装置

【課題】強度設定変更時の収束時間が短く、オーバーシュート等の強度の暴れが小さく出射光強度の安定性の高い光信号発生装置を提供する。
【解決手段】光源21の出射光を可変光減衰器22に入射し、可変光減衰器22の出射光を光分岐器23で2分岐し、分岐された一方の光を光電変換器24に入射し、光電変換器24の出力信号を増幅器25で増幅してその出力信号をラグリード型の第1のフィルタ26に入力して平滑して誤差増幅器28に与える。誤差増幅器28は、第1のフィルタ26の出力信号が設定器27から出力された設定信号に近づく方向に可変光減衰器22の減衰量を変化させるための信号を出力する。この信号はラグリード型の第2のフィルタ29により平滑されて可変光減衰器22に制御信号として与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変光減衰器を用いて出射光の強度を可変できる光信号発生装置において、強度変更時の収束時間を短縮し、設定確度を高く、安定性をより高くするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号を任意の強度で出射する構成として、光源から出射された強度一定の光を可変光減衰器に入射して、その減衰量を可変することで所望強度の光を出射させる方式があるが、光源から出射される光の強度および可変光減衰器の光減衰量が変動すると、出射光可変光減衰器から出射される光の強度も変動してしまい、安定性に欠けるという問題がある。
【0003】
これを解決する方式として、図5に示すフィードバック制御方式のものが知られている。即ち、光源1から出射された光P0を可変光減衰器2に入射し、可変光減衰2から出射された光P1を光分岐器3で所定の強度比(例えば9対1)で分岐し、その分岐光のうち強度が大きい方の光P2を装置の出射光とし、強度が小さい方の光P3を制御に用いるモニタ光として光電変換器4に入射する。
【0004】
そして、モニタ光P3の強度に比例した光電変換器4の出力信号Vを増幅器5で増幅し、その増幅された信号Vxを、出射光P2の強度を設定するための設定信号Vsとともに誤差増幅器6に入力する。
【0005】
誤差増幅器6からは、信号Vxと設定信号Vsとの差に比例し、且つ信号Vxを設定信号Vsに近づける方向に可変光減衰器2の減衰量を制御するための制御信号Vcが出力され、可変光減衰器2に入力される。
【0006】
このような構成のフィードバック制御方式の装置の場合、誤差増幅器6に入力される信号Vxが設定信号Vsに常に等しくなるように制御され、結果的に、モニタ光P3の強度が一定となるように制御され、出射光P2の強度も安定化される。
【0007】
なお、上記のように可変光減衰器を用いたフィードバック制御方式の光信号発生装置は例えば特許文献1に開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平2−208986号公報 図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のような可変光減衰器を用いたフィードバック制御方式の従来装置で、光源1の出射光P0の強度変動に対応させるためには可変光減衰器2の初期減衰量を最小でもその変動分を見込んで設定する必要がある。つまり、光源1からの光P1は定常的な減衰を受けて光分岐器3に入射される。そして、出射光P2の強度を大きくするためにはモニタ光P3の強度を下げる必要がある。
【0010】
このため、光電変換器4の出力信号Vのレベルが小さくなるので、必然的に増幅器5に要求される利得が大きくなり、その出力信号VxのS/Nが低下する。また誤差増幅器6に要求される利得も大きいため、フィードバックループが不安定になり、ときには発振して正しい制御が行えないという問題があった。
【0011】
また、可変光減衰器2は、例えば図6に示すように広い減衰量範囲で制御信号Vcに対してリニアな減衰量変化が得られず、出射光P2の強度を広い範囲にわたって可変させる必要がある光信号発生装置としては、この非線形な特性によってフィードバックループがさらに不安定になるという問題があった。
【0012】
このようなフィードバック制御方式の不安定を解消する技術として、フィードバックループにLPFを挿入する方法が知られている。このLPFとしては一般的に抵抗とコンデンサの直列回路からなるラグフィルタが用いられるが、上記したように利得が大きく、しかも非線形な特性をもつ素子が含まれている系を安定させ、且つ、強度の設定変更時の過渡応答に大きなオーバーシュートを発生させないためには、ダンピングファクタを1に近づける必要があり、ラグフィルタでこのような大きなダンピングファクタを実現しようとすると、収束時間が長くなって、出射光の強度が安定するまでの時間が長くなってしまう。
【0013】
簡単な数値例をあげると、可変光減衰器2として半導体基板に対するエッチング処理で形成した小型で高速動作可能なMEMS型のものを用い、光分岐器3の強度比を95:5、R=30kΩ、C=1μFのラグフィルタを増幅器5と誤差増幅器6の間に挿入し、出射光P2の強度を−20dBmから−4dBmに切り替えたとき、図7のような過渡応答が得られている。この過渡応答では、オーバーシュートが約0.18dB、収束時間約5秒となっており、高速な減衰量切換が可能なMEMS型の可変光減衰器2を用いているにもかかわらず高速な強度切換が行えず、例えば光のパワーを可変しながら機器のビットエラーレートを測定する際の測定時間が非常に長くなってしまう。
【0014】
また、図8は、出射光強度が低い(約−20dBm)場合の出射光の変動を測定した結果であり、可変光減衰器2の減衰量が大きい悪条件下で、平均−20.1279dBm、標準偏差σ=0.0049dBm程度の安定度しか得られていない。
【0015】
本発明は、この問題を解決して、強度設定変更時の収束時間が短く、オーバーシュート等の強度の暴れが小さく出射光強度の安定性の高い光信号発生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の光信号発生装置は、
光源(21)と、
前記光源の出射光を受け、制御信号に応じた減衰を与えて出射する可変光減衰器(22)と、
前記可変光減衰器の出射光を2分岐する光分岐器(23)と、
前記光分岐器で分岐された一方の光を受け、その光の強度に対応した大きさの電気の信号を出力する光電変換器(24)と、
前記光電変換器の出力信号を増幅する増幅器(25)と、
前記増幅器の出力信号を平滑する第1のフィルタ(26)と、
前記光分岐器で分岐された他方の光の強度を可変設定するための設定信号を出力する設定器(27)と、
前記第1のフィルタの出力信号と前記設定器から出力された設定信号とを受け、前記第1のフィルタの出力信号が前記設定信号に近づく方向に前記可変光減衰器の減衰量を変化させるための信号を出力する誤差増幅器(28)と、
前記誤差増幅器の出力信号を平滑して前記可変光減衰器に前記制御信号として与える第2のフィルタ(29)と備えている。
【0017】
また、本発明の請求項2の光信号発生装置は、請求項1記載の光信号発生装置において、
前記第1のフィルタおよび第2のフィルタがラグリード型であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項3の光信号発生装置は、請求項1または請求項2記載の光信号発生装置において、
前記可変光減衰器がMEMS型であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明の光信号発生装置では、光電変換器から出力されて増幅器で増幅された信号を第1のフィルタで平滑して誤差増幅器に与えるとともに、その誤差増幅器の出力信号を第2のフィルタで平滑しているため、系の経時安定性が高く、安定なフィードバック制御が行える。
【0020】
また、第1のフィルタおよび第2のフィルタとして、ラグリード型のものを用いることで、系の位相遅れを少なくすることができより安定な制御動作が行え、出射光の強度を変更したときのオーバーシュートやアンダーシュートなどの強度の暴れが少なく、収束時間を格段に短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した光信号発生装置20の構成を示している。
【0022】
この光信号発生装置20の光源21は、半導体レーザや変調器等を有し、ほぼ一定強度の光P0(変調光でも無変調光でもよい)を可変光減衰器22に出射する。
【0023】
可変光減衰器22は、前記したように、半導体基板に対するエッチング処理により小型に形成され、高速動作可能(例えば切換速度数100ms)な所謂MEMS型のものである。
【0024】
MEMS型の可変光減衰器22は、例えば電極間に与えた電圧によって生じる静電的な吸引力を用いてシャッタ板を光路に進退させるシャッタ方式や、前記吸引力を用いて入射光を受ける反射板の角度を変化させ出射光の方向を変えることで特定方向への光の強度を変化させるミラー方式等の様々な方式があり、そのいずれであってもよい。
【0025】
可変光減衰器22の出射光P1は、光分岐器23に所定の分岐比(例えば95対5)で2分岐され、その分岐光のうち、強度が大きい方が出射光P2として出射され、強度の小さい方がモニタ光P3として光電変換器24に入射される。
【0026】
モニタ光P3を受けた光電変換器24からは、そのモニタ光P3の強度に比例した電圧の信号Vが出力され、増幅器25で増幅される。
【0027】
この増幅器25は、例えば対数アンプにより構成されており、その出力信号Vxはラグリード型の第1のフィルタ26に入力される。
【0028】
この第1のフィルタ26は、増幅器25の出力信号を平滑するためのものであり、図2に示すように、2つの抵抗R1、R2とコンデンサCにより構成されている。このような回路構成のラグリード型のフィルタの場合、ダンピングファクタが大きい程、収束時間が短くなる特性があるので、ラグフィルタに比べて強度設定変更時の過渡応答を格段に改善することができる。第1のフィルタ26の出力信号Vx′は誤差増幅器28に入力される。
【0029】
設定器27は、光分岐器23から出射される出射光P2の強度を可変設定するための設定信号Vsを誤差増幅器28に入力する。
【0030】
誤差増幅器28は、第1のフィルタ26の出力信号Vx′と設定器27から出力された設定信号Vsとの差に比例した大きさで、且つ、第1のフィルタ23の出力信号Vx′が設定信号Vsに近づく方向に可変光減衰器22の減衰量を変化させるための信号Vcを出力する。
【0031】
この信号Vcは、第2のフィルタ29に入力される。第2のフィルタ29は、第1のフィルタ26と同様のラグリード型で、誤差増幅器28の出力信号Vcを平滑して可変光減衰器22に制御信号Vc′として与える。
【0032】
このように実施形態の光信号発生装置20は、光電変換器24から出力されて増幅器25で増幅された信号Vxを第1のフィルタ26で平滑して、誤差増幅器28に与えるとともに、その誤差増幅器28の出力信号Vcを第2のフィルタ29で平滑して可変光減衰器22に与えているため、系の経時安定性が高く、安定なフィードバック制御が行える。
【0033】
また、第1のフィルタ26および第2のフィルタ29として、ラグリード型のものを用いることで、系の位相遅れを少なくすることができ、より安定な制御動作が行え、出射光の強度を変更したときのオーバーシュートやアンダーシュートなどの強度の暴れが少なく、収束時間を格段に短くすることができる。
【0034】
図3は、実施形態において、第1のフィルタ26と第2のフィルタ29を、抵抗R1=3.3kΩ、R2=33kΩ、C=1μFで形成し、出射光強度を−20dBmから−4.2dBmに変更した場合の過渡応答特性を示すものであり、オーバーシュートは約0.8dBm、収束時間約1秒となっており、前記したラグフィルタを用いた場合の過渡応答と比べて格段に改善されていることがわかる。
【0035】
また、図4は、出射光強度が低い(約−20dBm)場合の出射光の変動を測定した図であり、可変光減衰器23の減衰量が大きい悪条件下で、平均20.0984dBm、標準偏差σ=0.0012dBmの高い安定度が得られている。
【0036】
したがって、この実施形態の光信号発生装置20は、MEMS型の可変光減衰器23の高速動作と大きな減衰量可変を有効に用いることができ、例えば光のパワーを可変しながら機器のビットエラーレートを測定する際の測定を極めて短時間に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態の構成図
【図2】実施形態の要部の回路図
【図3】実施形態の過渡応答特性の測定結果を示す図
【図4】実施形態の出射光強度の経時変化の測定結果を示す図
【図5】従来装置の構成図
【図6】可変光減衰器の特性例を示す図
【図7】ラグフィルタを挿入したときの過渡応答特性の測定結果を示す図
【図8】ラグフィルタを挿入したときの出射光強度の経時変化の測定結果を示す図
【符号の説明】
【0038】
20……光信号発生装置、21……光源、22……可変光減衰器、23……光分岐器、24……光電変換器、25……増幅器、26……第1のフィルタ、27……設定器、28……誤差増幅器、29……第2のフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源(21)と、
前記光源の出射光を受け、制御信号に応じた減衰を与えて出射する可変光減衰器(22)と、
前記可変光減衰器の出射光を2分岐する光分岐器(23)と、
前記光分岐器で分岐された一方の光を受け、その光の強度に対応した大きさの電気の信号を出力する光電変換器(24)と、
前記光電変換器の出力信号を増幅する増幅器(25)と、
前記増幅器の出力信号を平滑する第1のフィルタ(26)と、
前記光分岐器で分岐された他方の光の強度を可変設定するための設定信号を出力する設定器(27)と、
前記第1のフィルタの出力信号と前記設定器から出力された設定信号とを受け、前記第1のフィルタの出力信号が前記設定信号に近づく方向に前記可変光減衰器の減衰量を変化させるための信号を出力する誤差増幅器(28)と、
前記誤差増幅器の出力信号を平滑して前記可変光減衰器に前記制御信号として与える第2のフィルタ(29)と備えた光信号発生装置。
【請求項2】
前記第1のフィルタおよび第2のフィルタがラグリード型であることを特徴とする請求項1記載の光信号発生装置。
【請求項3】
前記可変光減衰器がMEMS型であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光信号発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−139491(P2009−139491A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313817(P2007−313817)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】