説明

光半導体装置の製造方法

【課題】共振器端面及びその近傍領域となる領域以外の領域における活性層のバンドギャップの変化を抑制しながら、共振器端面及びその近傍領域となる領域の活性層のバンドギャップを大きくして端面窓構造を形成できるようにする。
【解決手段】光半導体装置の製造方法を、半導体基板1の上方に、活性層3を含む半導体積層構造5を形成する工程と、半導体積層構造の共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7上に空孔生成促進膜6を形成する工程と、空孔生成促進膜をマスクとして、半導体積層構造の第1領域以外の第2領域8上に半導体層9を選択成長させる工程と、熱処理を行なって第1領域に窓構造10を形成する工程とを含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体レーザでは、レーザ共振器端面及びその近傍領域が瞬時に溶融して劣化する破壊的光学損傷(Catastrophic Optical Damage:COD)と呼ばれる現象が生じ、これが半導体レーザの高出力化を阻害する要因となっている。ここで、CODとは、レーザ共振器端面等で、非発光再結合によって温度が上昇し、この温度上昇によってバンドギャップが縮小して光吸収がさらに増大するというサイクルが繰り返され、最終的にはレーザ共振器端面等が瞬時に溶融して劣化する現象である。
【0003】
このCODを抑制する方法として、レーザ共振器端面及びその近傍領域において活性層のバンドギャップを大きくしてレーザ光の吸収を小さくすること、即ち、レーザ共振器端面及びその近傍領域に端面窓構造を設けることが有効である。
このような端面窓構造を形成する手法の1つとして、空孔の拡散を利用してレーザ共振器端面及びその近傍領域となる領域の活性層を混晶化することでそのバンドギャップを大きくして端面窓構造を形成するIFVD(Impurity Free Vacancy Disordering)法がある。
【0004】
このIFVD法では、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる領域の活性層を混晶化すべく、活性層を含むウエハのレーザ共振器端面及びその近傍領域となる領域の上方に空孔生成促進膜を形成し、それ以外の領域の上方に空孔生成抑制膜を形成した後、所定の熱処理を行なう。
例えば、まず、図8(A)に示すように、半導体基板100上の全面に、下部クラッド層101、活性層102、上部クラッド層103、コンタクト層104を積層させた半導体積層構造105を形成する。これをウエハともいう。
【0005】
次に、図8(B)に示すように、コンタクト層104上に空孔生成促進膜としてSiO膜106を成膜し、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる領域上にSiO膜が残るようにパターニングする。
続いて、図8(C)に示すように、全面に空孔生成抑制膜としてSiN膜107を成膜する。
【0006】
このようにして、半導体積層構造105の表面上、即ち、コンタクト層104の表面上のレーザ共振器端面及びその近傍領域となる領域をSiO膜106で覆い、それ以外の領域をSiN膜107で覆う。
その後、図8(D)に示すように、窒素(N)ガス雰囲気中でRTA(Rapid Thermal Anneal)を行なって、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる領域の活性層102を混晶化して、端面窓構造108を形成する。つまり、RTAを行なうことで、空孔生成促進膜のSiO膜106の下方に位置するコンタクト層104の表面で空孔が生成され、この空孔が拡散して、活性層102が混晶化され、端面窓構造108が形成される。この端面窓構造108が形成されている領域、即ち、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる領域を、端面窓構造形成領域という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−319914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の端面窓構造の形成方法では、活性層102上の全面に上部クラッド層103及びコンタクト層104を積層し、コンタクト層104上に空孔生成促進膜としてのSiO膜106を設けた後、熱処理を行なって、活性層102を混晶化するようにしている。このため、空孔生成促進膜としてのSiO膜106と活性層102までの距離が大きく、コンタクト層104の表面で生成された空孔を活性層102まで拡散させるために高温でRTAを行なう必要がある。
【0009】
このように高温でRTAを行なう場合、上述のように空孔生成抑制膜としてSiN膜(誘電体膜)107が設けられていると、その下方の領域においても、少量の空孔が生成され、この空孔が拡散して、活性層102のバンドギャップが大きくなってしまう。
このように、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる領域の活性層102のバンドギャップを大きくして端面窓構造108を形成しようとすると、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる領域以外の領域の活性層102のバンドギャップが変化してしまう。
【0010】
そこで、共振器端面及びその近傍領域となる領域以外の領域における活性層のバンドギャップの変化を抑制しながら、共振器端面及びその近傍領域となる領域の活性層のバンドギャップを大きくして端面窓構造を形成できるようにしたい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本光半導体装置の製造方法は、半導体基板の上方に、活性層を含む半導体積層構造を形成する工程と、半導体積層構造の共振器端面及びその近傍領域となる第1領域上に空孔生成促進膜を形成する工程と、空孔生成促進膜をマスクとして、半導体積層構造の第1領域以外の第2領域上に半導体層を選択成長させる工程と、熱処理を行なって第1領域に窓構造を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0012】
したがって、本光半導体装置の製造方法によれば、共振器端面及びその近傍領域となる領域以外の領域における活性層のバンドギャップの変化を抑制しながら、共振器端面及びその近傍領域となる領域の活性層のバンドギャップを大きくして端面窓構造を形成できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)〜(D)は、第1実施形態の光半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図2】(A)〜(D)は、第1実施形態の光半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図3】(A)、(B)は、第1実施形態の光半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図4】(A)〜(C)は、第1実施形態の光半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図5】(A)〜(E)は、第2実施形態の光半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図6】(A)〜(D)は、第3実施形態の光半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図7】(A)、(B)は、第3実施形態の光半導体装置の製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図8】(A)〜(D)は、従来の半導体レーザの端面窓構造の形成方法を説明するための模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる光半導体装置の製造方法について説明する。
[第1実施形態]
まず、本実施形態にかかる光半導体装置の製造方法について、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0015】
本光半導体装置の製造方法は、端面窓構造を有する半導体レーザの製造方法である。なお、光半導体装置を光半導体素子ともいう。
本光半導体装置の製造方法は、以下の各工程を含む。
つまり、まず、図1(A)に示すように、半導体基板1の上方に、活性層3を含む半導体積層構造5を形成する。例えば、半導体基板1上に、下部クラッド層2、活性層3、上部クラッド層4を順次積層させて多層構造の半導体積層構造5を形成する。つまり、半導体積層構造5として、下部クラッド層2、活性層3、上部クラッド層4(第1上部クラッド層)を含む半導体積層構造を形成する。なお、半導体積層構造5は、必要に応じて、バッファ層、光ガイド層、保護層などの他の半導体層を含むものであっても良い。
【0016】
次いで、図1(B)に示すように、半導体積層構造5の共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7上に空孔生成促進膜6を形成する。例えば、半導体積層構造5の最上層を構成する上部クラッド層4上に空孔生成促進膜6を成膜し、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7上に空孔生成促進膜6が残るようにパターニングする。このため、空孔生成促進膜6を、空孔生成促進膜パターンともいう。ここで、空孔生成促進膜6は、例えばSiO膜である。なお、空孔生成促進膜6は、これに限られるものではなく、例えばSiN膜などの誘電体膜であっても良い。
【0017】
次に、図1(C)に示すように、空孔生成促進膜6をマスク(選択成長マスク)として、半導体積層構造5の第1領域7以外の第2領域8上に半導体層9を選択成長させる。例えば、半導体積層構造5の最上層を構成する上部クラッド層4の第1領域7以外の第2領域8上に、半導体層9を形成する。ここで、半導体層9として、一層以上の半導体層を形成すれば良い。つまり、半導体層9として、一層の半導体層を形成しても良いし、多層構造の半導体層を形成しても良い。
【0018】
このようにして、半導体積層構造5の表面上のレーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7を空孔生成促進膜6としての誘電体膜で覆い、それ以外の第2領域8を半導体層9で覆う。つまり、従来の空孔生成抑制膜としての誘電体膜(例えばSiN膜)に代えて、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8上に半導体層9を形成する。
【0019】
その後、図1(D)に示すように、熱処理を行なって、半導体積層構造5の共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7に窓構造10を形成する。例えば、熱処理を行なうことで、空孔生成促進膜6の下方に位置する上部クラッド層4の表面で空孔が生成され、この空孔が拡散して、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7の活性層3が混晶化され、端面窓構造10が形成される。この端面窓構造10が形成されている領域、即ち、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる領域を、端面窓構造形成領域という。
【0020】
この場合、上述のように、従来の空孔生成抑制膜としての誘電体膜(例えばSiN膜)に代えて半導体層9を形成しているため、半導体層9の下方の領域、即ち、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8において、空孔の生成・拡散が少なく、活性層3のバンドギャップの変化を抑制することができる。
このように、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8における活性層3のバンドギャップの変化を抑制しながら、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7の活性層3のバンドギャップを大きくして端面窓構造10を形成することができる。つまり、端面窓構造10を形成する領域だけ選択的にバンドギャップを変化させることが可能となる。
【0021】
また、上述の半導体層9として、後述の具体例(図2参照)のように、上部クラッド層4B(第2上部クラッド層)及びコンタクト層13を形成するのが好ましい。
この場合、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7の活性層3の上方に、活性層3と空孔生成促進膜6との間の距離を小さくしうる厚さを有する第1上部クラッド層4Aを形成すれば良い。また、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8の活性層3の上方に、半導体レーザとして機能させるために必要な膜厚を確保しうる厚さを有する第2上部クラッド層4B及びコンタクト層13を形成すれば良い。
【0022】
つまり、上部クラッド層4を、下側に設けられる膜厚の薄い第1上部クラッド層4Aと、上側に設けられる膜厚の厚い第2上部クラッド層4Bとの2つに分ける。そして、第1上部クラッド層4Aの上方に空孔生成促進膜6を形成し、第1上部クラッド層4Aの空孔生成促進膜6が形成されていない領域の上方に第2上部クラッド層4Bを形成すれば良い。
【0023】
この場合、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7、即ち、空孔生成促進膜6が形成されている領域の空孔生成促進膜6と活性層3との間の半導体層4A、12の厚さが、第1領域7以外の第2領域8の活性層3の上方の半導体層4A、12、4B、13の厚さよりも薄くなる。つまり、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7で空孔生成促進膜6と活性層3までの距離が小さくなる。このため、第1上部クラッド層4Aの表面で生成された空孔を効率的に活性層3まで拡散させ、活性層3のIII族原子の拡散を引き起こすことが可能である。これにより、比較的低温のRTA(低温アニール)によって窓構造10を形成しながら、必要な膜厚が確保された上部クラッド層4を有する半導体レーザを実現することが可能である。
【0024】
なお、半導体層9として、クラッド層やコンタクト層として機能しない半導体層を形成しても良いし、クラッド層やコンタクト層として機能しうる半導体層を形成しても良い。この場合、窓構造10を形成する工程の後に、半導体層9を除去する工程と、空孔生成促進膜6をマスクとして、半導体積層構造5の共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8上に第2上部クラッド層4B及びコンタクト層13を選択成長させる工程とを含むものとすれば良い。
【0025】
以下、具体的に説明する。
まず、図2(A)に示すように、例えば有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって、n型GaAs基板1上に、n型GaAsバッファ層11、n型AlGaAs下部クラッド層2、GaAs/InGaAs−MQW活性層3、p型AlGaAs第1上部クラッド層4A、p型GaAs表面保護層12を順次成長させて、半導体積層構造5を形成する。なお、図2(A)〜図2(D)は、共振器軸に垂直な方向から見た断面図、即ち、共振器軸に沿う方向の断面図である。
【0026】
ここで、n型GaAs基板1は、例えばGaAs(001)基板であり、n型不純物としてSiがドーピングされている。このため、SiドープGaAs(001)基板ともいう。また、n型GaAsバッファ層11は、厚さが約0.3μmであり、n型不純物としてSiがドーピングされている。このため、SiドープGaAsバッファ層ともいう。また、n型AlGaAs下部クラッド層2は、厚さが約1.5μmであり、n型不純物としてSiがドーピングされている。このため、SiドープAlGaAs下部クラッド層ともいう。また、GaAs/InGaAs−MQW活性層3は、バリア層としてのGaAsと井戸層としてのInGaAsを交互に積層させたMQW構造を有する活性層である。また、p型AlGaAs第1上部クラッド層4Aは、厚さが約0.1μmであり、p型不純物としてZnがドーピングされている。このため、ZnドープAlGaAs第1上部クラッド層ともいう。また、p型GaAs表面保護層12は、厚さが約0.05μmであり、p型AlGaAs第1上部クラッド層4Aの酸化を防止する機能を有する。
【0027】
次いで、図2(B)に示すように、半導体積層構造5の共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7上に、空孔生成促進膜としてのSiO膜6をパターニングする。つまり、半導体積層構造5の最上層を構成するp型GaAs表面保護層12上にSiO膜を成膜し、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7上にSiO膜6が残るようにパターニングする。
【0028】
次に、図2(C)に示すように、例えばMOCVD法によって、空孔生成促進膜としてのSiO膜6をマスクとして、半導体積層構造5上、即ち、半導体積層構造5の最上層を構成するp型GaAs表面保護層12上に、p型InGaP第2上部クラッド層4B、p型GaAsコンタクト層13を順次成長させる。この場合、SiO膜6は選択成長マスクとして機能する。このため、p型InGaP第2上部クラッド層4B及びp型GaAsコンタクト層13は、半導体積層構造5の第1領域7以外の第2領域8上、即ち、SiO膜6が形成されている第1領域7以外の開口領域である第2領域8上のみに選択成長する。このように、半導体積層構造5の最上層を構成するp型GaAs表面保護層12の第1領域7以外の第2領域8上に、2層構造の半導体層9として、p型InGaP第2上部クラッド層4B及びp型GaAsコンタクト層13を形成する。
【0029】
ここで、p型InGaP第2上部クラッド層4Bは、厚さが約1.0μmであり、p型不純物としてZnがドーピングされている。このため、ZnドープInGaP第2上部クラッド層ともいう。また、p型GaAsコンタクト層13は、厚さが約0.3μmであり、p型不純物としてZnがドーピングされている。このため、ZnドープGaAsコンタクト層ともいう。
【0030】
このようにして、半導体積層構造5の表面上のレーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7を空孔生成促進膜としてのSiO膜6で覆い、それ以外の第2領域8を2層構造の半導体層9、即ち、p型InGaP第2上部クラッド層4B及びp型GaAsコンタクト層13で覆う。
その後、図2(D)に示すように、窒素(N)ガス雰囲気中で、ランプヒータによって、温度約900℃で、約30秒間加熱するRTAを行なって、半導体積層構造5の共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7に窓構造10を形成する。つまり、このような比較的低温のRTAを行なうことで、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7に形成されている空孔生成促進膜としてのSiO膜6の下方に位置するp型GaAs表面保護層12からIII族原子(ここではGa原子)がSiO膜6中に吸収されることでその表面に空孔が生成される。そして、この空孔が拡散して、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7の活性層3のIII族原子(ここではIn原子)の拡散が引き起こされ、活性層3が混晶化される。これにより、活性層3を構成するInGaAs井戸層のIn原子が少なくなって、活性層3のバンドギャップが大きくなって、端面窓構造10が形成される。
【0031】
この場合、p型InGaP第2上部クラッド層4B及びp型GaAsコンタクト層13の下方の領域、即ち、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8において、空孔の生成・拡散は少なく、活性層3のバンドギャップの変化を抑制することができる。
このように、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8における活性層3のバンドギャップの変化を抑制しながら、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7の活性層3のバンドギャップを大きくして端面窓構造10を形成することができる。
【0032】
また、上述のように、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7の活性層3の上方に、厚さ約0.1μmのp型AlGaAs第1上部クラッド層4A、及び、厚さ約0.05μmのp型GaAs表面保護層12を形成し、活性層3と空孔生成促進膜としてのSiO膜6との間の距離を小さくしている。また、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8の活性層3の上方に、厚さ約1.0μmのp型InGaP第2上部クラッド層4B、及び、厚さ約0.3μmのp型GaAsコンタクト層13を形成し、半導体レーザとして機能させるために、必要な膜厚が確保された上部クラッド層4(4A,4B)及びコンタクト層13を設けている。これにより、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7で空孔生成促進膜としてのSiO膜6と活性層3までの距離が小さくなるため、p型GaAs表面保護層12の表面で生成された空孔を効率的に活性層3まで拡散させ、活性層3のIII族原子の拡散を引き起こすことが可能である。このため、比較的低温のRTAによって窓構造10を形成しながら、必要な膜厚が確保された上部クラッド層4(4A,4B)を有する半導体レーザを実現することが可能である。
【0033】
次に、図3(A)に示すように、表面全面にSiO膜14を成膜する。次に、図3(B)に示すように、レジスト15を塗布した後、露光してレジストパターンを形成する。そして、レジストパターンの開口部のSiO膜14を、例えばHF系エッチャントによってエッチングし、リッジパターンを形成するためのSiOマスクパターンを形成する。なお、図3(A)、図3(B)は、共振器軸に垂直な方向から見た断面図、即ち、共振器軸に沿う方向の断面図である。
【0034】
次いで、レジスト15を剥離液によって除去した後、SiOマスクパターンを用いて、p型GaAsコンタクト層13及びp型InGaP第2上部クラッド層4Bを、例えばドライエッチングやウエットエッチングによって部分的に除去して、図4(A)に示すようなリッジ構造16を形成する。なお、図4(A)〜図4(C)は、共振器軸に平行な方向から見た共振器中央付近の断面図、即ち、共振器軸に沿う方向に対して直交する方向の断面図である。
【0035】
そして、SiOマスクパターンを除去した後、図4(B)に示すように、リッジ構造16の表面の少なくとも一部が露出されるように、表面側を覆うSiO絶縁膜17を形成する。
その後、図4(C)に示すように、SiO絶縁膜17上に、p−GaAsコンタクト層13に接するように上部電極18(ここではp側電極)を形成するとともに、基板1の裏面に下部電極19(ここではn側電極)を形成する。
【0036】
このようにして、本実施形態の光半導体装置、即ち、半導体レーザが完成する。
したがって、本実施形態にかかる光半導体装置の製造方法によれば、共振器端面及びその近傍領域となる領域7以外の領域8における活性層3のバンドギャップの変化を抑制しながら、共振器端面及びその近傍領域となる領域7の活性層3のバンドギャップを大きくして端面窓構造10を形成できるという利点がある。
【0037】
なお、上述の実施形態では、第1上部クラッド層4AにAlGaAsを用いた場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、例えばAlInGaPやInGaP等を用いても良く、この場合も同様の効果が得られる。ここで、第1上部クラッド層にInGaPを用いる場合、即ち、p型InGaP第1上部クラッド層を設ける場合には、上述の実施形態のp型GaAs表面保護層は設けなくても良い。
【0038】
また、上述の実施形態では、第2上部クラッド層4BにInGaPを用いた場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、上述の実施形態のように、第2上部クラッド層4B上にコンタクト層13を設けるのであれば、第2上部クラッド層に例えばAlInGaPやAlGaAs等を用いても良く、この場合も同様の効果が得られる。
また、上述の実施形態では、下部クラッド層2にAlGaAsを用いた場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、例えばAlInGaPやInGaP等を用いても良く、この場合も同様の効果が得られる。
【0039】
また、上述の実施形態では、活性層3をGaAs/InGaAs−MQW活性層とした場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、例えば、バリア層にAlGaAsを用い、井戸層にGaAsを用いたAlGaAs/GaAs−MQW活性層としても良く、この場合も同様の効果が得られる。この場合、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7に形成されている空孔生成促進膜としてのSiO膜6の下方の領域での空孔の生成・拡散によって、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7の活性層3のIII族原子(ここではAl原子)の拡散が引き起こされ、活性層3が混晶化される。これにより、活性層3を構成するAlGaAsバリア層のAl原子が少なくなって、活性層3のバンドギャップが大きくなって、端面窓構造10が形成される。
【0040】
また、上述の実施形態のように、共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8を、2層構造の半導体層9、即ち、第2上部クラッド層4B及びコンタクト層13で覆った状態で熱処理を行なって窓構造10を形成する場合、窓構造10を形成する工程の後に、コンタクト層13の表面側を部分的に除去する工程を含むものとするのが好ましい。つまり、上述の実施形態の光半導体装置の製造方法の半導体層9を選択成長させる工程において、半導体層9として、第2上部クラッド層4B及びコンタクト層13を形成し、窓構造10を形成する工程の後に、コンタクト層13の表面側を部分的に除去する工程を含むものとするのが好ましい。これにより、コンタクト層13の表面状態を良好なものとすることができ、コンタクト層13上に形成される電極18とのオーミック特性を良好なものとすることができる。例えば、上述の実施形態のように、コンタクト層13をGaAsコンタクト層とすると、窓構造10を形成するための熱処理によって、GaAsコンタクト層13の表面近傍のAsが抜けてしまう場合がある。この場合、コンタクト層13の表面側のAsが抜けてしまった部分を例えばエッチングによって除去することで、コンタクト層13の表面状態を良好なものとすることができ、コンタクト層13上に形成される電極18とのオーミック特性を良好なものとすることができる。
【0041】
なお、例えば、コンタクト層13の表面側を部分的に除去した後、コンタクト層の膜厚を確保するために、再度、コンタクト層を形成するようにしても良い。但し、予めコンタクト層の膜厚を厚くしておいた場合には、コンタクト層の表面側を部分的に除去した後に、再度、コンタクト層を形成しなくても良い。
また、ここでは、コンタクト層13の表面側を部分的に除去するようにしているが、これに限られるものではない。例えば、コンタクト層を例えばエッチングによって全て除去した後、再び、第2上部クラッド層4B上にコンタクト層を形成するようにしても良い。つまり、窓構造10を形成する工程の後に、コンタクト層を除去する工程と、第2上部クラッド層上にコンタクト層を形成する工程とを含むものとしても良い。この場合も上述の場合と同様の効果が期待できる。この場合、最初に形成するコンタクト層、即ち、窓構造10を形成するための熱処理後に全て除去されるコンタクト層は、コンタクト層として機能しうるものでなくても良く、表面保護半導体層であれば良い。
【0042】
また、上述の実施形態のように、共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8を、2層構造の半導体層9、即ち、p型InGaP第2上部クラッド層4B及びp型GaAsコンタクト層13で覆った状態で熱処理を行なって窓構造10を形成する場合、窓構造10を形成する工程においてAsを含む雰囲気で熱処理を行なうのが好ましい。つまり、上述の実施形態の光半導体装置の製造方法の半導体層9を選択成長させる工程において、半導体層9として、第2上部クラッド層4B及びAsを含むコンタクト層13を形成し、窓構造10を形成する工程においてAsを含む雰囲気で熱処理を行なうのが好ましい。これにより、コンタクト層13の表面状態を良好なものとすることができ、コンタクト層13上に形成される電極18とのオーミック特性を良好なものとすることができる。つまり、窓構造10を形成するための熱処理によって、GaAsコンタクト層13の表面近傍のAsが抜けてしまうのを防ぐために、As雰囲気下で熱処理を行なうことで、コンタクト層13の表面状態を良好なものとすることができ、コンタクト層13上に形成される電極18とのオーミック特性を良好なものとすることができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかる光半導体装置の製造方法について、図5を参照しながら説明する。
【0043】
本実施形態にかかる光半導体装置の製造方法は、上述の第1実施形態の製造方法に対し、図5に示すように、半導体層9を選択成長させる工程の後、窓構造10を形成する工程の前に、半導体層9及び空孔生成促進膜6の表面を覆う表面保護膜20を形成する工程を含む点が異なる。
つまり、本光半導体装置の製造方法は、以下の各工程を含む。
【0044】
まず、上述の第1実施形態の場合と同様に、図5(A)に示すように、半導体基板1の上方に半導体積層構造5を形成する。具体的には、n型GaAs基板1上に、n型GaAsバッファ層11、n型AlGaAs下部クラッド層2、GaAs/InGaAs−MQW活性層3、p型AlGaAs第1上部クラッド層4A、p型GaAs表面保護層12を順次成長させて、半導体積層構造5を形成する。
【0045】
次に、上述の第1実施形態の場合と同様に、図5(B)に示すように、半導体積層構造5の共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7上に空孔生成促進膜6を形成する。具体的には、半導体積層構造5の最上層を構成するp型GaAs表面保護層12の第1領域7上に、空孔生成促進膜としてのSiO膜6をパターニングする。
次に、上述の第1実施形態の場合と同様に、図5(C)に示すように、空孔生成促進膜6をマスクとして、半導体積層構造5の第1領域7以外の第2領域8上に半導体層9を選択成長させる。具体的には、空孔生成促進膜としてのSiO膜6をマスクとして、半導体積層構造5の最上層を構成するp型GaAs表面保護層12の第1領域7以外の第2領域8上に、2層構造の半導体層9、即ち、p型InGaP第2上部クラッド層4B及びp型GaAsコンタクト層13を選択成長させる。
【0046】
このようにして、半導体積層構造5の表面上のレーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7を空孔生成促進膜としてのSiO膜6で覆い、それ以外の第2領域8を2層構造の半導体層9、即ち、p型InGaP第2上部クラッド層4B及びp型GaAsコンタクト層13で覆う。
次に、図5(D)に示すように、半導体層9及び空孔生成促進膜6の表面を覆う表面保護膜20を形成する。具体的には、ウエハの表面全体、即ち、p型GaAsコンタクト層13及びSiO膜6の表面を覆うように、表面保護膜としてのSiN膜20(誘電体膜)を形成する。これにより、後述の窓構造10を形成するための熱処理の際に、GaAsコンタクト層13の表面近傍のAsが抜けてしまうのを防ぐことができる。
【0047】
そして、上述の第1実施形態の場合と同様に、図5(E)に示すように、熱処理を行なって、共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7に窓構造10を形成する。具体的には、窒素(N)ガス雰囲気中で、ランプヒータによって、温度約900℃で、約30秒間加熱するRTAを行なって、半導体積層構造5の共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7に窓構造10を形成する。つまり、このような比較的低温のRTAを行なうことで、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7に形成されている空孔生成促進膜としてのSiO膜6の下方に位置するp型GaAs表面保護層12からIII族原子(ここではGa原子)がSiO膜6中に吸収されることでその表面に空孔が生成される。そして、この空孔が拡散して、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7の活性層3のIII族原子(ここではIn原子)の拡散が引き起こされ、活性層3が混晶化される。これにより、活性層3を構成するInGaAs井戸層のIn原子が少なくなり、活性層3のバンドギャップが大きくなって、端面窓構造10が形成される。
【0048】
この場合、上述のように、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7の活性層3の上方に、厚さ約0.1μmのp型AlGaAs第1上部クラッド層4A、及び、厚さ約0.05μmのp型GaAs表面保護層12を形成し、活性層3と空孔生成促進膜としてのSiO膜6との間の距離を小さくしている。また、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8の活性層3の上方に、厚さ約1.0μmのp型InGaP第2上部クラッド層4B、及び、厚さ約0.3μmのp型GaAsコンタクト層13を形成し、半導体レーザとして機能させるために、必要な膜厚が確保された上部クラッド層4(4A,4B)及びコンタクト層13を設けている。これにより、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7で空孔生成促進膜としてのSiO膜6と活性層3までの距離が小さくなるため、p型GaAs表面保護層12の表面で生成された空孔を効率的に活性層3まで拡散させ、活性層3のIII族原子の拡散を引き起こすことが可能である。このため、比較的低温のRTAによって窓構造10を形成しながら、必要な膜厚が確保された上部クラッド層4(4A,4B)を有する半導体レーザを実現することが可能である。
【0049】
また、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8では、半導体層9上、即ち、p型GaAsコンタクト層13上に表面保護膜としてのSiN膜20が形成されているため、RTAによってp型GaAsコンタクト層13の表面に空孔が生成され、この空孔が拡散するおそれがある。しかしながら、第2領域8では、SiN膜20と活性層3との間に、p型AlGaAs第1上部クラッド層4A、p型GaAs表面保護層12だけでなく、p型InGaP第2上部クラッド層4B及びp型GaAsコンタクト層13も形成されており、SiN膜20と活性層3との間の距離が大きくなっている。また、第1領域7における活性層3と空孔生成促進膜としてのSiO膜6との間の距離を小さくしているため、比較的低温のRTAによって窓構造10を形成することができる。したがって、比較的低温のRTAによってp型GaAsコンタクト層13の表面に空孔が生成され、この空孔が拡散したとしても、この空孔が活性層3まで到達するのは困難であるため、空孔拡散による活性層3のバンドギャップの変化を抑制することが可能である。つまり、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8において、活性層3のバンドギャップの変化を抑制することが可能である。
【0050】
このように、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8における活性層3のバンドギャップの変化を抑制しながら、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7の活性層2のバンドギャップを大きくして端面窓構造10を形成することができる。
その後、例えばHF系エッチャントでSiN膜20を除去した後、上述の第1実施形態の場合(図3、図4参照)と同様のプロセスを経て、リッジ構造16や電極18、19を形成して、本実施形態の光半導体装置、即ち、半導体レーザが完成する。
【0051】
なお、その他の詳細については、上述の第1実施形態の場合と同様であるため、省略する。
したがって、本実施形態にかかる光半導体装置の製造方法によれば、上述の第1実施形態の場合と同様に、共振器端面及びその近傍領域となる領域7以外の領域8における活性層3のバンドギャップの変化を抑制しながら、共振器端面及びその近傍領域となる領域7の活性層3のバンドギャップを大きくして端面窓構造10を形成できるという利点がある。
【0052】
なお、上述の第1実施形態の変形例のうち、本実施形態に適用可能なものを、上述の本実施形態のものに適用しても良い。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態にかかる光半導体装置の製造方法について、図6、図7を参照しながら説明する。
【0053】
本実施形態にかかる光半導体装置の製造方法は、上述の実施形態の製造方法に対し、図6、図7に示すように、半導体層9を選択成長させる工程において、半導体層9として第2上部クラッド層4Bを形成し、窓構造10を形成する工程の後に、第2上部クラッド層4Bの表面側を部分的に除去する工程と、第2上部クラッド層4B上にコンタクト層13を形成する工程とを含む点が異なる。
【0054】
つまり、本光半導体装置の製造方法は、以下の各工程を含む。
まず、上述の第1実施形態の場合と同様に、図6(A)に示すように、半導体基板1の上方に半導体積層構造5を形成する。具体的には、n型GaAs基板1上に、n型GaAsバッファ層11、n型AlGaAs下部クラッド層2、GaAs/InGaAs−MQW活性層3、p型AlGaAs第1上部クラッド層4A、p型GaAs表面保護層12を順次成長させて、半導体積層構造5を形成する。
【0055】
次に、上述の第1実施形態の場合と同様に、図6(B)に示すように、半導体積層構造5の共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7上に空孔生成促進膜6を形成する。具体的には、半導体積層構造5の最上層を構成するp型GaAs表面保護層12の第1領域7上に、空孔生成促進膜としてのSiO膜6をパターニングする。
次に、上述の第1実施形態の場合と同様に、図6(C)に示すように、空孔生成促進膜6をマスクとして、半導体積層構造5の第1領域7以外の第2領域8上に半導体層9を選択成長させる。本実施形態では、空孔生成促進膜としてのSiO膜6をマスクとして、半導体積層構造5の最上層を構成するp型GaAs表面保護層の12の第1領域7以外の第2領域8上に、1層の半導体層9、即ち、例えば厚さ約1.0μmで、p型不純物としてZnがドーピングされているp型InGaP第2上部クラッド層4Bのみを選択成長させる。
【0056】
このようにして、半導体積層構造5の表面上のレーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7を空孔生成促進膜としてのSiO膜6で覆い、それ以外の第2領域8を1層の半導体層9、即ち、p型InGaP第2上部クラッド層4Bで覆う。
そして、上述の第1実施形態の場合と同様に、図6(D)に示すように、熱処理を行なって、共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7に窓構造10を形成する。具体的には、窒素(N)ガス雰囲気中で、ランプヒータによって、温度約900℃で、約30秒間加熱するRTAを行なって、半導体積層構造5の共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7に窓構造10を形成する。つまり、このような比較的低温のRTAを行なうことで、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7に形成されている空孔生成促進膜としてのSiO膜6の下方に位置するp型GaAs表面保護層12からIII族原子(ここではGa原子)がSiO膜6中に吸収されることでその表面に空孔が生成される。そして、この空孔が拡散して、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7の活性層3のIII族原子(ここではIn原子)の拡散が引き起こされ、活性層3が混晶化される。これにより、活性層3を構成するInGaAs井戸層のIn原子が少なくなり、活性層3のバンドギャップが大きくなって、端面窓構造10が形成される。
【0057】
この場合、p型InGaP第2上部クラッド層4Bの下方の領域、即ち、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8において、空孔の生成・拡散は少なく、活性層3のバンドギャップの変化を抑制することができる。
このように、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8における活性層3のバンドギャップの変化を抑制しながら、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7の活性層3のバンドギャップを大きくして端面窓構造10を形成することができる。
【0058】
次に、図7(A)に示すように、第2上部クラッド層4Bの表面側を部分的に除去する。具体的には、上述の窓構造10を形成するための熱処理によって、p型InGaP第2上部クラッド層4Bの表面側のPが抜けてしまった部分を、例えば塩素系のエッチャントを用いてエッチングして除去する。これにより、クラッド層4Bの表面状態を良好なものとすることができる。
【0059】
次に、図7(B)に示すように、第2上部クラッド層4B上にコンタクト層13を形成する。具体的には、p型InGaP第2上部クラッド層4B上に、例えば厚さ約0.3μmで、p型不純物としてZnがドーピングされているp型GaAsコンタクト層13を形成する。このように、窓構造10を形成するための熱処理の後に、Znがドーピングされたp型GaAsコンタクト層13を形成しているため、例えば高濃度にZnがドーピングされたp型GaAsコンタクト層13からの熱によるZnの拡散を防ぐことが可能である。
【0060】
上述のように、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7の活性層3の上方に、厚さ約0.1μmのp型AlGaAs第1上部クラッド層4A、及び、厚さ約0.05μmのp型GaAs表面保護層12を形成し、活性層3と空孔生成促進膜としてのSiO膜6との間の距離を小さくしている。また、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8の活性層3の上方に、厚さ約1.0μmのp型InGaP第2上部クラッド層4B、及び、厚さ約0.3μmのp型GaAsコンタクト層13を形成し、半導体レーザとして機能させるために、必要な膜厚が確保された上部クラッド層4(4A,4B)及びコンタクト層13を設けている。これにより、レーザ共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7で空孔生成促進膜としてのSiO膜6と活性層3までの距離が小さくなるため、p型GaAs表面保護層12の表面で生成された空孔を効率的に活性層3まで拡散させ、活性層3のIII族原子の拡散を引き起こすことが可能である。このため、比較的低温のRTAによって窓構造10を形成しながら、必要な膜厚が確保された上部クラッド層4(4A,4B)を有する半導体レーザを実現することが可能である。
【0061】
その後、上述の第1実施形態の場合(図3、図4参照)と同様のプロセスを経て、リッジ構造16や電極18、19を形成して、本実施形態の光半導体装置、即ち、半導体レーザが完成する。
なお、その他の詳細については、上述の第1実施形態の場合と同様であるため、省略する。
【0062】
したがって、本実施形態にかかる光半導体装置の製造方法によれば、上述の第1実施形態の場合と同様に、共振器端面及びその近傍領域となる領域7以外の領域8における活性層3のバンドギャップの変化を抑制しながら、共振器端面及びその近傍領域となる領域7の活性層3のバンドギャップを大きくして端面窓構造10を形成できるという利点がある。
【0063】
なお、上述の第1実施形態の変形例のうち、本実施形態に適用可能なものを、上述の本実施形態のものに適用しても良い。
また、上述の実施形態では、半導体層9を選択成長させる工程において、半導体層9として第2上部クラッド層4Bを形成し、窓構造10を形成する工程の後に、第2上部クラッド層4Bの表面側を部分的に除去する工程と、第2上部クラッド層4B上にコンタクト層13を形成する工程とを行なうようにしているが、これに限られるものではない。
【0064】
例えば、半導体層9を選択成長させる工程において、半導体層9として、Pを含む第2上部クラッド層4Bを形成し、窓構造10を形成する工程においてPを含む雰囲気で熱処理を行ない、窓構造10を形成する工程の後に、第2上部クラッド層4B上にコンタクト層13を形成する工程を含むものとしても良い。つまり、共振器端面及びその近傍領域となる第1領域7以外の第2領域8を、1層の半導体層9、即ち、p型InGaP第2上部クラッド層4Bで覆った状態で熱処理を行なって窓構造10を形成する場合に、窓構造10を形成する工程においてPを含む雰囲気で熱処理を行ない、窓構造10を形成する工程の後に、p型InGaP第2上部クラッド層4B上にp型GaAsコンタクト層13を形成するようにしても良い。このように、窓構造10を形成するための熱処理によって、InGaP第2上部クラッド層4Bの表面近傍のPが抜けてしまうのを防ぐために、P雰囲気下で熱処理を行なうことで、クラッド層4Bの表面状態を良好なものとすることができる。
【0065】
また、上述の実施形態では、表面側を部分的に除去した第2上部クラッド層4B上にコンタクト層13を形成しているが、これに限られるものではない。例えば、第2上部クラッド層4Bの表面側を部分的に除去した後、再度、第2上部クラッド層4Bを形成し、その後にコンタクト層13を形成するようにしても良い。これは上部クラッド層4(4A,4B)の膜厚を確保するためである。このため、第2上部クラッド層4Bを形成する際に、予め第2上部クラッド層4Bの膜厚を上述の実施形態のものよりも厚くしておいた場合には、第2上部クラッド層4Bの表面側を部分的に除去した後に、再度、第2上部クラッド層4Bを形成しなくても良い。
[その他]
なお、本発明は、上述した各実施形態及び変形例に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0066】
例えば、上述の各実施形態及び変形例の光半導体装置を構成する半導体材料の代わりに、半導体レーザを構成しうる他の半導体材料を用いても良い。
また、n型の導電性を有する基板の代わりに、例えばp型の導電性を有する基板を用いても良い。この場合、基板上に形成される各層の導電性は全て逆になる。また、半絶縁性などの他の基板を用いても良い。また、GaAs基板の代わりに、例えばInP基板を用い、InP基板上に結晶成長(例えばエピタキシャル成長)しうる半導体材料を用いて各層を形成しても良い。
【0067】
また、量子井戸活性層の代わりに、例えばバルク型の半導体材料を用いたバルク活性層や量子ドット活性層などの他の活性層構造を採用しても良い。
また、リッジ型導波路構造の代わりに、例えば半絶縁性埋込構造などの埋込構造を用いた埋込型導波路構造を採用しても良い。また、回折格子を備えるものとしても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 n型GaAs基板(半導体基板)
2 n型AlGaAs下部クラッド層(下部クラッド層)
3 GaAs/InGaAs−MQW活性層(活性層)
4 上部クラッド層
4A p型AlGaAs第1上部クラッド層
4B p型InGaP第2上部クラッド層
5 半導体積層構造
6 SiO膜(空孔生成促進膜)
7 共振器端面及びその近傍領域となる第1領域
8 第1領域以外の第2領域
9 半導体層
10 窓構造
11 n型GaAsバッファ層
12 p型GaAs表面保護層
13 p型GaAsコンタクト層
14 SiO
15 レジスト
16 リッジ構造
17 SiO絶縁膜
18 上部電極(p側電極)
19 下部電極(n側電極)
20 SiN膜(表面保護膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上方に、活性層を含む半導体積層構造を形成する工程と、
前記半導体積層構造の共振器端面及びその近傍領域となる第1領域上に空孔生成促進膜を形成する工程と、
前記空孔生成促進膜をマスクとして、前記半導体積層構造の前記第1領域以外の第2領域上に半導体層を選択成長させる工程と、
熱処理を行なって前記第1領域に窓構造を形成する工程とを含むことを特徴とする光半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体積層構造を形成する工程において、前記半導体積層構造として、下部クラッド層、活性層、第1上部クラッド層を含む半導体積層構造を形成し、
前記半導体層を選択成長させる工程において、前記半導体層として、第2上部クラッド層及びコンタクト層を形成し、
前記窓構造を形成する工程の後に、前記コンタクト層の表面側を部分的に除去する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体積層構造を形成する工程において、前記半導体積層構造として、下部クラッド層、活性層、第1上部クラッド層を含む半導体積層構造を形成し、
前記半導体層を選択成長させる工程において、前記半導体層として、第2上部クラッド層及び表面保護半導体層を形成し、
前記窓構造を形成する工程の後に、前記表面保護半導体層を除去する工程と、前記第2上部クラッド層上にコンタクト層を形成する工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体積層構造を形成する工程において、前記半導体積層構造として、下部クラッド層、活性層、第1上部クラッド層を含む半導体積層構造を形成し、
前記半導体層を選択成長させる工程において、前記半導体層として、第2上部クラッド層及びAsを含むコンタクト層を形成し、
前記窓構造を形成する工程においてAsを含む雰囲気で熱処理を行なうことを特徴とする、請求項1に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体積層構造を形成する工程において、前記半導体積層構造として、下部クラッド層、活性層、第1上部クラッド層を含む半導体積層構造を形成し、
前記半導体層を選択成長させる工程において、前記半導体層として、第2上部クラッド層及びコンタクト層を形成し、
前記半導体層を選択成長させる工程の後、前記窓構造を形成する工程の前に、前記半導体層及び前記空孔生成促進膜の表面を覆う表面保護膜を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記半導体積層構造を形成する工程において、前記半導体積層構造として、下部クラッド層、活性層、第1上部クラッド層を含む半導体積層構造を形成し、
前記半導体層を選択成長させる工程において、前記半導体層として、第2上部クラッド層を形成し、
前記窓構造を形成する工程の後に、前記第2上部クラッド層の表面側を部分的に除去する工程と、前記第2上部クラッド層上にコンタクト層を形成する工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体積層構造を形成する工程において、前記半導体積層構造として、下部クラッド層、活性層、第1上部クラッド層を含む半導体積層構造を形成し、
前記半導体層を選択成長させる工程において、前記半導体層として、Pを含む第2上部クラッド層を形成し、
前記窓構造を形成する工程においてPを含む雰囲気で熱処理を行ない、
前記窓構造を形成する工程の後に、前記第2上部クラッド層上にコンタクト層を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記半導体積層構造を形成する工程において、前記半導体積層構造として、下部クラッド層、活性層、第1上部クラッド層を含む半導体積層構造を形成し、
前記窓構造を形成する工程の後に、前記半導体層を除去する工程と、前記空孔生成促進膜をマスクとして、前記半導体積層構造の前記第2領域上に第2上部クラッド層及びコンタクト層を選択成長させる工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記空孔生成促進膜は、SiO膜又はSiN膜であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−110366(P2013−110366A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256521(P2011−256521)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】