説明

光反射性異方性導電接着剤及び発光装置

【課題】発光ダイオード(LED)素子等の発光素子を配線板に異方性導電接着剤を用いてフリップチップ実装して発光装置を製造する際に、製造コストの増大を招くような光反射層をLED素子に設けなくても、発光効率を改善できる異方性導電接着剤を提供する。
【解決手段】発光素子を配線板に異方性導電接続するために使用する光反射性異方性導電接着剤は、熱硬化性樹脂組成物、導電粒子及び光反射性絶縁粒子を含有する。このような光反射性絶縁粒子は、酸化チタン粒子を、Al、SiO、SiO、ZnO、ZnO及びZrOからなる群より選択された一種で表面処理したものである。光反射性絶縁粒子の酸化チタン含有量は、85〜93%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を配線板に異方性導電接続するために使用する光反射性異方性導電接着剤、その接着剤を用いて発光素子を配線板に実装してなる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)素子を使用した発光装置が広く使用されており、旧タイプの発光装置の構造は、図3に示すように、基板31上にダイボンド接着剤32でLED素子33を接合し、その上面のp電極34とn電極35とを、基板31の接続端子36に金ワイヤ37でワイヤボンディングし、LED素子33全体を透明モールド樹脂38で封止したものとなっている。ところが、図3の発光装置の場合、LED素子33が発する光のうち、上面側に出射する400〜500nmの波長の光を金ワイヤ37が吸収し、また、下面側に出射した光の一部がダイボンド接着剤32により吸収されてしまい、LED素子33の発光効率が低下するという問題がある。
【0003】
このため、図4に示すように、LED素子33をフリップチップ実装することが提案されている(特許文献1)。このフリップチップ実装技術においては、p電極34とn電極35とにバンプ39がそれぞれ形成されており、更に、LED素子33のバンプ形成面には、p電極34とn電極35とが絶縁されるように光反射層40が設けられている。そして、LED素子33と基板31とは、異方性導電ペースト41や異方性導電フィルム(図示せず)を用い、それらを硬化させて接続固定される。このため、図4の発光装置においては、LED素子33の上方へ出射した光は金ワイヤで吸収されず、下方へ出射した光の殆どは光反射層40で反射して上方に出射するので、発光効率(光取り出し効率)が低下しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−168235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術ではLED素子33に光反射層40を、p電極34とn電極35とが絶縁されるように金属蒸着法などにより設けなければならず、製造上、コストアップが避けられないという問題があった。
【0006】
他方、光反射層40を設けない場合には、硬化した異方性導電ペーストや異方性導電フィルム中の金、ニッケルあるいは銅で被覆された導電粒子の表面は茶色乃至は暗茶色を呈し、また、導電粒子を分散させているエポキシ樹脂バインダー自体も、その硬化のために常用されるイミダゾール系潜在性硬化剤のために茶色を呈しており、発光素子が発した光の発光効率(光取り出し効率)を向上させることが困難であるという問題もあった。
【0007】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、発光ダイオード(LED)素子等の発光素子を配線板に異方性導電接着剤を用いてフリップチップ実装して発光装置を製造する際に、製造コストの増大を招くような光反射層をLED素子に設けなくても、発光効率を改善できる異方性導電接着剤、その接着剤を使用して発光素子を配線板にフリップチップ実装してなる発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、異方性導電接着剤そのものに光反射機能を持たせれば、発光効率を低下させないようにできるとの仮定の下、異方性導電接着剤に、屈折率の高い酸化チタン粒子を光反射性絶縁粒子として配合することにより、発光素子の発光効率を低下させないようにできることを見出した。本発明者らは、また、高い光触媒作用を示す表面を有する酸化チタン粒子を含有する光反射性異方性導電接着剤を発光装置に適用した場合、硬化した接着剤中に含まれる有機物が光分解してしまうことが懸念されるものの、酸化チタン粒子の表面を酸化アルミニウムなどの金属酸化物で被覆するように表面処理することにより、そのような懸念が払拭されることを見出した。そしてこれらの知見に基づき、本発明者らは本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、発光素子を配線板に異方性導電接続するために使用する光反射性異方性導電接着剤であって、熱硬化性樹脂組成物、導電粒子及び光反射性絶縁粒子を含有してなり、該光反射性絶縁粒子が、酸化チタン粒子をそれ以外の金属酸化物で表面処理したものであることを特徴とする光反射性異方性導電接着剤を提供する。
【0010】
また、本発明は、上述の光反射性異方性導電接着剤を介して、発光素子がフリップチップ方式で配線板に実装されている発光装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
発光素子を配線板に異方性導電接続するために使用する本発明の光反射性異方性導電接着剤は、屈折率が高い酸化チタン粒子の表面を金属酸化物で表面処理してなる光反射性絶縁粒子を含有する。従って、この光反射性異方性導電接着剤は光を反射することができる。しかも、この酸化チタン粒子自体は、それ以外の金属酸化物(以下、本発明において「金属酸化物」と記載した場合には、酸化チタン以外の金属酸化物を意味するものとする)で表面処理されているため、接着剤の硬化物中の有機物と直接接触しないようになっている。このため、光反射性異方性導電接着剤を発光装置における発光素子を配線板に実装する際に適用した場合でも、硬化した接着剤中に含まれる有機物が光分解されないようにすることができる。
【0012】
更に、導電粒子として、金属材料で被覆されているコア粒子と、その表面に酸化亜鉛(ZnO)粒子又は酸化アルミニウム(Al)粒子から形成された白色〜灰色の光反射層とから構成されている光反射性導電粒子を使用した場合、この光反射性導電粒子自体が白色〜灰色を呈しているため、可視光に対する反射特性の波長依存性が小さく、従って、発光効率を更に向上させることができ、しかも発光素子の発光色をそのままの色で反射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】異方性導電接着剤用の光反射性導電粒子の断面図である。
【図1B】異方性導電接着剤用の光反射性導電粒子の断面図である。
【図2】本発明の発光装置の断面図である。
【図3】従来の発光装置の断面図である。
【図4】従来の発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、発光素子を配線板に異方性導電接続するために使用する光反射性異方性導電接着剤であって、熱硬化性樹脂組成物、導電粒子及び光反射性絶縁粒子を含有する光反射性異方性導電接着剤であり、異方性導電接着剤に入射した光を外部に反射するための光反射性絶縁粒子として、酸化チタン粒子を金属酸化物で表面処理したものを使用することが特徴となっている。
【0015】
本発明において、光反射性絶縁粒子として酸化チタン(TiO)粒子を利用する理由は、屈折率が有機物である接着剤成分よりも高く、白色隠蔽性が高いからである。このような酸化チタンとして、ルチル型、アナターゼ型のいずれも使用することができるが、より屈折率が高い点からルチル型を好ましく使用することができる。
【0016】
また、酸化チタン粒子を金属酸化物で表面処理する理由は、酸化チタンの高い光触媒作用により接着剤の硬化物に含まれる有機物が光分解してしまわないように、酸化チタン粒子と接着剤の硬化物とが直接接触することを防ぐためである。
【0017】
酸化チタン粒子を表面処理するための金属酸化物としては、光反射性且つ絶縁性であることが必要であり、具体的には、酸化アルミニウム(Al)、一酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化亜鉛(ZnO)及び酸化ジルコニウム(ZrO)からなる群より選択された少なくとも一種を挙げることができる。好ましくは少なくともAlを使用する。なお、SiOは、それ自身比較的屈折率が低いために、酸化チタンの高い屈折率に影響を与え難いと思われる。
【0018】
酸化チタン粒子の金属酸化物による表面処理の手法としては、公知のドライ又はウェット表面処理プロセスを採用することができる。例えば、ドライ表面処理プロセスとしては、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、メカノフュージョン法等を挙げることができる。また、ウェット表面処理プロセスとしては、コロイド状の金属酸化物中に、酸化チタン粒子を分散させ、その表面に金属酸化物を吸着させる方法、酸化チタン粒子の水性分散液に金属ハロゲン化物又は金属アルコキシドを投入し、必要により塩酸等を用いて加水分解処理することにより金属酸化物のコーティング膜を形成する方法等が挙げられる。
【0019】
ウェット表面処理プロセスに従って酸化チタン粒子をAlで表面処理する例(イ)及び(ロ)を以下に説明する。
【0020】
(イ)まず、原料である酸化チタン粒子を水に分散させて水性スラリーを取得し、得られた水性スラリーに、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の表面処理剤を添加し、酸化チタン粒子の表面に表面処理剤を吸着させ、乾燥した後、焼成、粉砕することによって、Alで表面被覆された酸化チタン粒子を得ることができる。
【0021】
(ロ)別法として、酸化チタン粒子を含む水性スラリーに前述の表面処理剤を添加した後、酸又はアルカリにてpHを6〜7程度に調整し、二酸化チタン粒子を表面処理剤で被覆した後、水性スラリーをフィルタープレス、ドラムフィルター等で濾過し、洗浄して、残存する塩類を洗い流す。その後、バンドドライヤー、噴霧乾燥機等で乾燥して、乾燥物を得る。次いで、この乾燥物を電気炉又は回転型焼成炉等の適宜の手段を用いて、400〜1000℃の範囲、好ましくは、500〜900℃の範囲の温度で焼成する。これにより焼成塊状物として、Alで表面被覆された酸化チタン粒子を得ることができる。
【0022】
なお、このようにして得られた焼成塊状物は、そのまま流体エネルギーミルを用いて粉砕してもよいし、水性スラリーとしてビーズミルで粉砕を行い、濾過、水洗、乾燥の各工程を経た後、流体エネルギーミルで粉砕してもよい。
【0023】
また、上記(イ)及び(ロ)において乾燥物を粉砕するに際し、必要に応じて、適当な有機処理剤を用いてもよい。そのような有機処理剤として、例えば、多価アルコール、アルカノールアミン、シリコーンオイル、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を挙げることができる。
【0024】
また、酸化チタン粒子に対する表面処理剤の使用量は、光反射性絶縁粒子における酸化チタン粒子の必要とされる含有量に応じて、水性スラリーに対する表面処理剤の添加量を調整することにより決定することができる。
【0025】
光反射性絶縁粒子中の酸化チタンの含有量は、少なすぎると(即ち、酸化チタン粒子の表面に存在する金属酸化物量が多くなり、金属酸化物表面処理膜が厚くなりすぎると)、酸化チタンの高い屈折率を利用することが困難となる傾向があり、逆に多すぎると(即ち、酸化チタン粒子の表面に存在する金属酸化物量が少なくなり、金属酸化物表面処理膜が薄くなりすぎると)、酸化チタン粒子の光触媒作用を十分に抑制できないおそれが生ずるので、原子数基準で好ましくは80〜96%、より好ましくは85〜93%である。なお、この数値は、蛍光X線分析により取得することができる。
【0026】
酸化チタン粒子をコア粒子とする光反射性絶縁粒子の形状としては、略球状、鱗片状、無定形状、針状等でもよいが、反射効率や樹脂組成物への分散性、金属酸化物による表面処理のハンドリング性等を考慮すると、略球状が好ましい。
【0027】
また、このような略球状の光反射性絶縁粒子の粒径としては、コア粒子である酸化チタンが高い屈折率を有していることから、光反射剤として広く使用されている0.5μm以上の粒径の酸化亜鉛よりも、より小さい粒径のものを使用することができ、光反射性絶縁粒子の配合に基づく異方性導電接続の信頼性を防止することが可能となる。他方、過度に粒径が小さいと、光反射率が低下する傾向がある。従って、好ましい粒径は、0.1〜10μm、特に好ましくは0.2〜0.3μmである。また、この範囲は、光反射性異方性導電接着剤を使って青色の光を発光するLED素子をフリップチップ実装する上で効果的である。
【0028】
光反射性絶縁粒子は、その屈折率(JIS K7142)が、好ましくは熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)よりも大きいこと、より好ましくは少なくとも0.02程度大きいことが好ましい。これは、屈折率差が小さいとそれらの界面での反射効率が低下するからである。
【0029】
なお、本発明において、以上説明した酸化チタン粒子を金属酸化物で表面処理した光反射性絶縁粒子以外の光反射性絶縁粒子を、本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。このような併用可能な光反射性絶縁粒子としては、金属粒子の表面を透明な絶縁性樹脂で被覆した樹脂被覆金属粒子が挙げられる。金属粒子としては、ニッケル、銀、アルミニウム等を挙げることができる。粒子の形状としては、無定形状、球状、鱗片状、針状等を挙げることができるが、中でも、光拡散効果の点から球状、全反射効果の点から鱗片状の形状が好ましい。特に好ましいものは、光の反射率の点から鱗片状又は球状銀粒子、中でも鱗片状銀粒子である。
【0030】
このような樹脂被覆金属粒子の大きさは、形状によっても異なるが、一般に大きすぎると、異方性導電粒子による接続を阻害するおそれがあり、小さすぎると光を反射しにくくなるので、好ましくは球状の場合には粒径0.1〜30μm、より好ましくは0.2〜10μmであり、鱗片状の場合には、長径が好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは1〜50μmで厚みが好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0031】
なお、光反射性絶縁粒子の大きさは、絶縁被覆されている場合には、その絶縁被覆も含めた大きさである。
【0032】
このような樹脂被覆金属粒子における当該樹脂としては、種々の絶縁性樹脂を使用することができる。機械的強度や透明性等の点からアクリル系樹脂の硬化物を好ましく利用することができる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物などのラジカル重合開始剤の存在下で、メタクリル酸メチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとをラジカル共重合させた樹脂を挙げることができる。この場合、2,4−トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤で架橋されていることがより好ましい。また、金属粒子としては、予めシランカップリング剤でγ−グリシドキシ基やビニル基等を金属表面に導入しておくことが好ましい。
【0033】
このような樹脂被覆金属粒子は、例えば、トルエンなどの溶媒中に金属粒子とシランカップリング剤とを投入し、室温で約1時間攪拌した後、ラジカルモノマーとラジカル重合開始剤と、必要に応じて架橋剤とを投入し、ラジカル重合開始温度に加温しながら攪拌することにより製造することができる。
【0034】
以上説明した光反射性絶縁粒子の、光反射性異方性導電接着剤中の配合量は、少なすぎると十分な光反射を実現することができず、また多すぎると、併用している導電粒子に基づく接続が阻害されるので、熱硬化性樹脂組成物に対し、好ましくは1〜50体積%、より好ましくは2〜25体積%である。
【0035】
本発明の光反射性異方性導電接着剤を構成する導電粒子としては、異方性導電接続用の従来の導電粒子において用いられている金属粒子を利用することができる。例えば、金、ニッケル、銅、銀、半田、パラジウム、アルミニウム、それらの合金、それらの多層化物(例えば、ニッケルメッキ/金フラッシュメッキ物)等を挙げることができる。中でも、金、ニッケル、銅は、導電粒子を茶色としてしまうことから、本発明の効果を他の金属材料よりも享受することができる。
【0036】
導電粒子として適用する金属粒子の形状としては、球状形状、フレーク状形状等が挙げられるが、球状形状が好ましく、その粒径は大きすぎると接続信頼性の低下となるので、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜10μm、特に好ましくは3〜6μmである。
【0037】
また、導電粒子として、樹脂粒子を金属材料で被覆した金属被覆樹脂粒子を使用することができる。このような樹脂粒子としては、スチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子などが挙げられる。樹脂粒子を金属材料で被覆する方法としても従来公知の方法を採用することができ、無電解メッキ法、電解メッキ法等を利用することができる。また、被覆する金属材料の層厚は、良好な接続信頼性を確保するに足る厚さであり、樹脂粒子の粒径や金属の種類にもよるが、通常、0.1〜3μmである。
【0038】
また、樹脂粒子の粒径は、小さすぎると導通不良が生じ、大きすぎるとパターン間ショートが生じる傾向があるので、好ましくは1〜20μm、より好ましくは3〜10μm、特に好ましくは3〜5μmである。この場合、樹脂粒子の形状としては球状が好ましいが、フレーク状、ラクビーボール状であってもよい。
【0039】
好ましい金属被覆樹脂粒子は球状形状であり、その粒径は大きすぎると接続信頼性の低下となるので、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜10μm、特に好ましくは3〜6μmである。
【0040】
特に、本発明においては、上述したような導電粒子に対し光反射性を付与し、光反射性導電粒子とすることが好ましい。図1A、図1Bは、このような光反射性導電粒子10、20の断面図である。まず、図1Aの光反射性導電粒子から説明する。
【0041】
光反射性導電粒子10は、金属材料で被覆されているコア粒子1と、その表面に酸化亜鉛(ZnO)粒子又は酸化アルミニウム(Al)粒子から選択された少なくとも一種の無機粒子2から形成された光反射層3とから構成される。酸化亜鉛粒子又は酸化アルミニウム粒子は、太陽光の下では白色を呈する無機粒子である。従って、それらから形成された光反射層3は白色〜灰色を呈する。白色〜灰色を呈しているということは、可視光に対する反射特性の波長依存性が小さく、且つ可視光を反射しやすいことを意味する。
【0042】
なお、酸化亜鉛粒子又は酸化アルミニウム粒子のうち、硬化した光反射性異方性導電接着剤の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の光劣化が懸念される場合には、光劣化に対して触媒性がなく、屈折率も高い酸化亜鉛粒子を好ましく使用することができる。
【0043】
コア粒子1は、異方性導電接続に共されるものであるので、その表面が金属材料で構成されている。ここで、表面が金属材料で被覆されている態様としては、前述したように、コア粒子1そのものが金属材料(例えばニッケル、半田、銅など)である態様、もしくは、先に説明した金属被覆樹脂粒子のような、樹脂粒子の表面が金属材料で被覆された態様が挙げられる。
【0044】
無機粒子2から形成された光反射層3の層厚は、コア粒子1の粒径との相対的大きさの観点からみると、コア粒子1の粒径に対し、小さすぎると反射率の低下が著しくなり、大きすぎると導通不良が生ずるので、好ましくは0.5〜50%、より好ましくは1〜25%である。
【0045】
また、光反射性導電粒子10において、光反射層3を構成する無機粒子2の粒径は、小さすぎると光反射現象が生じ難くなり、大きすぎると光反射層の形成が困難となる傾向があるので、好ましくは0.02〜4μm、より好ましくは0.1〜1μm、特に好ましくは0.2〜0.5μmである。この場合、光反射させる光の波長の観点からみると、無機粒子2の粒径は、反射させるべき光(即ち、発光素子が発する光)が透過してしまわないように、その光の波長の50%以上であることが好ましい。この場合、無機粒子2の形状としては無定形状、球状、鱗片状、針状等を挙げることができるが、中でも、光拡散効果の点から球状、全反射効果の点から鱗片状の形状が好ましい。
【0046】
図1Aの光反射性導電粒子10は、大小の粉末同士を物理的に衝突させることにより大粒径粒子の表面に小粒径粒子からなる膜を形成させる公知の成膜技術(いわゆるメカノフュージョン法)により製造することができる。この場合、無機粒子2は、コア粒子1の表面の金属材料に食い込むように固定され、他方、無機粒子2同士が融着固定されにくいから、無機粒子2のモノレイヤーが光反射層3を構成する。従って、図1Aの場合、光反射層3の層厚は、無機粒子2の粒径と同等乃至はわずかに薄くなると考えられる。
【0047】
次に、図1Bの光反射性導電粒子20について説明する。この光反射性導電粒子20においては、光反射層3が接着剤として機能する熱可塑性樹脂4を含有し、この熱可塑性樹脂4により無機粒子2同士も固定され、無機粒子2が多層化(例えば2層あるいは3層に多層化)している点で、図1Aの光反射性導電粒子10と相違する。このような熱可塑性樹脂4を含有することにより、光反射層3の機械的強度が向上し、無機粒子2の剥落などが生じにくくなる。
【0048】
熱可塑性樹脂4としては、環境低負荷を意図してハロゲンフリーの熱可塑性樹脂を好ましく使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリスチレン、アクリル樹脂等を好ましく使用することができる。
【0049】
このような光反射性導電粒子20も、メカノフュージョン法により製造することができる。メカノフュージョン法に適用する熱可塑性樹脂4の粒子径は、小さすぎると接着機能が低下し、大きすぎるとコア粒子に付着しにくくなるので、好ましくは0.02〜4μm、より好ましくは0.1〜1μmである。また、このような熱可塑性樹脂4の配合量は、少なすぎると接着機能が低下し、多すぎると粒子の凝集体が形成されるので、無機粒子2の100質量部に対し、好ましくは0.2〜500質量部、より好ましくは4〜25質量部である。
【0050】
本発明の光反射性異方性導電接着剤に使用する熱硬化性樹脂組成物としては、なるべく無色透明なものを使用することが好ましい。異方性導電接着剤中の光反射性導電粒子の光反射効率を低下させず、しかも入射光の光色を変えずに反射させるためである。ここで、無色透明とは、熱硬化性樹脂組成物の硬化物が、波長380〜780nmの可視光に対して光路長1cmの光透過率(JIS K7105)が80%以上、好ましくは90%以上となることを意味する。
【0051】
本発明の光反射性異方性導電接着剤において、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対する光反射性導電粒子等の導電粒子の配合量は、少なすぎると導通不良が生じ、多すぎるとパターン間ショートが生ずる傾向があるので、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは10〜50質量部である。
【0052】
本発明の光反射性異方性導電接着剤の反射特性は、発光素子の発光効率を向上させるために、光反射性異方性導電接着剤の硬化物の波長450nmの光に対する反射率(JIS K7105)が、少なくとも30%であることが望ましい。このような反射率とするためには、使用する光反射性導電粒子の反射特性や配合量、熱硬化性樹脂組成物の配合組成などを適宜調整すればよい。通常、反射特性の良好な光反射性導電粒子の配合量を増量すれば、反射率も増大する傾向がある。
【0053】
また、光反射性異方性導電接着剤の反射特性は屈折率という観点から評価することもできる。即ち、その硬化物の屈折率が、導電粒子と光反射性絶縁粒子とを除いた熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率よりも大きいと、光反射性絶縁粒子とそれを取り巻く熱硬化性樹脂組成物の硬化物との界面での光反射量が増大するからである。具体的には、光反射性絶縁粒子の屈折率(JIS K7142)から、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)を差し引いた差が、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.2以上であることが望まれる。なお、通常、エポキシ樹脂を主体とする熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率は約1.5である。
【0054】
本発明の光反射性異方性導電接着剤を構成する熱硬化性樹脂組成物としては、従来の異方性導電接着剤や異方性導電フィルムにおいて使用されているものを利用することができる。一般に、このような熱硬化性樹脂組成物は、絶縁性バインダー樹脂に硬化剤を配合したものである。絶縁性バインダー樹脂としては、脂環式エポキシ化合物や複素環系エポキシ化合物や水素添加エポキシ化合物などを主成分としたエポキシ系樹脂が好ましく挙げられる。
【0055】
脂環式エポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するものが好ましく挙げられる。これらは液状であっても、固体状であってもよい。具体的には、グリシジルヘキサヒドロビスフェノールA、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート等を挙げることができる。中でも、硬化物にLED素子の実装等に適した光透過性を確保でき、速硬化性にも優れている点から、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートを好ましく使用することができる。
【0056】
複素環系エポキシ化合物としては、トリアジン環を有するエポキシ化合物を挙げることができ、特に好ましくは1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオンを挙げることができる。
【0057】
水素添加エポキシ化合物としては、先述の脂環式エポキシ化合物や複素環系エポキシ化合物の水素添加物や、その他公知の水素添加エポキシ化合物を使用することができる。
【0058】
脂環式エポキシ化合物や複素環系エポキシ化合物や水素添加エポキシ化合物は、単独で使用してもよいが、2種以上を併用することができる。また、これらのエポキシ化合物に加えて本発明の効果を損なわない限り、他のエポキシ化合物を併用してもよい。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、ジアリールビスフェノールA、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、クレゾール、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ベンゾフェノン、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビキシレノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多価フェノールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテル; グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル; p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル; フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル; アミノフェノール、アミノアルキルフェノールから得られるグリシジルアミノグリシジルエーテル; アミノ安息香酸から得られるグリシジルアミノグリシジルエステル; アニリン、トルイジン、トリブロモアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホンなどから得られるグリシジルアミン; エポキシ化ポリオレフィン等の公知のエポキシ樹脂類が挙げられる。
【0059】
硬化剤としては、酸無水物、イミダゾール化合物、ジシアンなどを挙げることができる。中でも、硬化物を変色させ難い酸無水物系硬化剤、特に脂環式酸無水物系硬化剤を好ましく使用できる。具体的には、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物等を好ましく挙げることができる。
【0060】
本発明の光反射性異方性導電接着剤の熱硬化性樹脂組成物において、脂環式エポキシ化合物と脂環式酸無水物系硬化剤とを使用する場合、それぞれの使用量は、脂環式酸無水物系硬化剤が少なすぎると未硬化エポキシ化合物が多くなり、多すぎると余剰の硬化剤の影響で被着体材料の腐食が促進される傾向があるので、脂環式エポキシ化合物100質量部に対し、脂環式酸無水物系硬化剤を、好ましくは80〜120質量部、より好ましくは95〜105質量部の割合で使用する。
【0061】
本発明の光反射性異方性導電接着剤は、光反射性絶縁粒子と導電粒子(好ましくは光反射性導電粒子)と熱硬化性樹脂組成物とを均一に混合することにより製造することができる。また、光反射性異方性導電フィルムとする場合には、それらをトルエン等の溶媒とともに分散混合し、剥離処理したPETフィルムに所期の厚さとなるように塗布し、約80℃程度の温度で乾燥すればよい。
【0062】
次に、本発明の発光装置について図2を参照しながら説明する。発光装置200は、基板21上の接続端子22と、発光素子としてLED素子23のn電極24とp電極25とのそれぞれに形成された接続用のバンプ26との間に、前述の本発明の光反射性異方性導電接着剤を塗布し、基板21とLED素子23とがフリップチップ実装されている発光装置である。ここで、図2における光反射性異方性導電接着剤の硬化物100は、光反射性絶縁粒子(図示せず)と光反射性導電粒子10とが熱硬化性樹脂組成物の硬化物11中に分散してなるものである。光反射性導電粒子10に代えて非光反射性導電粒子を使用することができる。なお、必要に応じて、LED素子23の全体を覆うように透明モールド樹脂で封止してもよい。また、LED素子23に従来と同様に光反射層を設けてもよい。
【0063】
このように構成されている発光装置200においては、LED素子23が発した光のうち、基板21側に向かって発した光は、光反射性異方性導電接着剤の硬化物100中の光反射性絶縁粒子と光反射性導電粒子10とで反射し、LED素子23の上面から出射する。従って、発光効率の低下を防止することができる。
【0064】
本発明の発光装置200における光反射性異方性導電接着剤以外の構成(LED素子23、バンプ26、基板21、接続端子22等)は、従来の発光装置の構成と同様とすることができる。また、本発明の発光装置200は、本発明の光反射性異方性導電接着剤を使用すること以外は、従来の異方性導電接続技術を利用して製造することができる。なお、発光素子としては、LED素子の他、本発明の効果を損なわない範囲で公知の発光素子を適用することができる。
【実施例】
【0065】
実施例1
屈折率が約1.50の無色透明な熱硬化型エポキシ系バインダー組成物(YX−8000、JER(株):MeHHPAを50質量%で含有)に、以下の光反射性絶縁粒子1を12体積%、導電粒子として平均粒径5μmのAu被覆樹脂導電粒子(平均粒径4.6μmの球状アクリル樹脂粒子に0.2μm厚の無電解金メッキを施した粒子(ブライト20GNB4.6EH、日本化学工業(株))を10質量%となる割合で均一に混合することにより、外観色が白色の光反射性異方性導電接着剤を得た。
【0066】
(光反射率評価試験)
得られた光反射性異方性導電接着剤を、セラミック製の白色板に乾燥厚で100μmとなるように塗布し、200℃で1分間加熱し、硬化させた。この硬化物について、分光光度計(U3300、(株)日立製作所)を用いて、波長450nmの光に対する反射率(JIS K7150)を測定した。得られた結果を表1に示す。反射率は、実用上30%以上であることが望まれる。
【0067】
(LED実装サンプルにおける全光束量評価試験)
100μmピッチの銅配線にNi/Au(5.0μm厚/0.3μm厚)メッキ処理した配線を有するガラスエポキシ基板に、バンプボンダー(FB700、(株)カイジョー)を用いて15μm高の金バンプを形成した。この金バンプ付きエポキシ基板に、光反射性異方性導電接着剤を用いて、青色LED(Vf=3.2(If=20mA))を200℃、60秒、1Kg/チップという条件でフリップチップ実装し、テスト用LEDモジュールを得た。
【0068】
得られたテスト用LEDモジュールについて、全光束量測定システム(積分全球)(LE−2100、大塚電子(株))を用いて全光束量を測定した(測定条件;If=20mA(定電流制御))。得られた結果を表1に示す。全光束量は実用上300mlm以上であることが望まれる。
【0069】
(耐光性試験)
全光束量評価試験に適用したテスト用LEDモジュールを新たに作成し、エージング条件(85℃、85%RH、500時間)下で点灯し続けた。そして、エージング前(初期)後のテスト用LEDモジュールの全光束量を、全光束量評価試験の場合と同様に測定し、以下の評価基準に従って評価した。実用上、少なくとも「△」評価であることが望ましい。
【0070】
<評価基準>
◎:エージング前の全光束量に対するエージング後の全光束量の減少率(%)が5%未満
○:エージング前の全光束量に対するエージング後の全光束量の減少率(%)が5%以上10%未満
△:エージング前の全光束量に対するエージング後の全光束量の減少率(%)が10%以上20%未満
×:エージング前の全光束量に対するエージング後の全光束量の減少率(%)が20%以上
【0071】
実施例2
光反射性絶縁粒子の配合量を7体積%とすること以外、実施例1と同様にして外観色が白色の光反射性異方性導電接着剤を得た。また、実施例1と同様に、光反射率評価試験、LED実装サンプルにおける全光束量評価試験及び耐光性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0072】
実施例3
光反射性絶縁粒子の配合量を21体積%とすること以外、実施例1と同様にして外観色が白色の光反射性異方性導電接着剤を得た。また、実施例1と同様に、光反射率評価試験、LED実装サンプルにおける全光束量評価試験及び耐光性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0073】
実施例4
Au被覆樹脂導電粒子に代えて、平均粒径5μmのNi被覆樹脂導電粒子(平均粒径4.6μmの球状アクリル樹脂粒子に0.2μm厚の無電解ニッケルメッキを施した粒子)を使用すること以外、実施例1と同様にして外観色が白色の光反射性異方性導電接着剤を得た。また、実施例1と同様に、光反射率評価試験、LED実装サンプルにおける全光束量評価試験及び耐光性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0074】
実施例5〜10及び比較例1
以下の光反射性絶縁粒子2〜8をそれぞれ使用すること以外、実施例1と同様にして外観色が白色の実施例5〜10及び比較例1の光反射性異方性導電接着剤を得た。また、実施例1と同様に、光反射率評価試験、LED実装サンプルにおける全光束量評価試験及び耐光性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0075】
<光反射性絶縁粒子1(実施例1〜4で使用)>
AlとSiOとで表面処理された酸化チタン粒子(KR−380、チタン工業(株):粒子径0.5μm、チタン含有量94%)
【0076】
<光反射性絶縁粒子2(実施例5で使用)>
AlとSiOとで表面処理された酸化チタン粒子(R−7E、チタン工業(株):粒子径0.23μm、チタン含有量85%又は僅かに超)
【0077】
<光反射性絶縁粒子3(実施例6で使用)>
AlとSiOとZrOとで表面処理された酸化チタン粒子(D−918、チタン工業(株):粒子径0.26μm、チタン含有量88%又は僅かに超)
【0078】
<光反射性絶縁粒子4(実施例7で使用)>
AlとSiOとで表面処理された酸化チタン粒子(R−3L、チタン工業(株):粒子径0.23μm、チタン含有量90%又は僅かに超)
【0079】
<光反射性絶縁粒子5(実施例8で使用)>
AlとSiOとZnOとで表面処理された酸化チタン粒子(R−650、チタン工業(株):粒子径0.23μm、チタン含有量93%又は僅かに超)
【0080】
<光反射性絶縁粒子6(実施例9で使用)>
Alで表面処理された酸化チタン粒子(SR−1、チタン工業(株):粒子径0.25μm、チタン含有量94%又は僅かに超)
【0081】
<光反射性絶縁粒子7(実施例10で使用)>
Alで表面処理された酸化チタン粒子(R−11P、チタン工業(株):粒子径0.2μm、チタン含有量95%又は僅かに超)
【0082】
<光反射性絶縁粒子8(比較例1で使用)>
金属酸化物で表面処理されていない酸化チタン粒子(R−310、チタン工業(株):粒子径0.2μm、チタン含有量97%又は僅かに超)
【0083】
【表1】

【0084】
表1からわかるように、光反射性絶縁粒子を含有する実施例1〜10の光反射性異方性導電接着剤の場合、光反射率がいずれも30%以上あり、450nmの光の青色がそのままの色で反射していた。しかも全光束量も300mlm以上であった。そして耐光性も少なくとも「△」評価であった。
【0085】
それに対し、比較例1の場合、光反射性絶縁粒子が金属酸化物で表面処理されていない酸化チタン粒子を使用したため、反射率と全光束量については好ましい結果であったが、耐光性試験の結果が「×」評価であった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の光反射性異方性導電接着剤は、発光ダイオード(LED)素子等の発光素子を配線板に異方性導電接着剤を用いてフリップチップ実装して発光装置を製造する際に、製造コストの増大を招くような光反射層を発光素子に設けなくても、発光効率を低下させないようにすることができる。また、耐光性にも優れている。よって、本発明の光反射性異方性導電接着剤は、LED素子をフリップチップ実装する際に有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 コア粒子
2 無機粒子
3 光反射層
4 熱可塑性樹脂
10、20 光反射性導電粒子
11 熱硬化性樹脂組成物の硬化物
21 基板
22 接続端子
23 LED素子
24 n電極
25 p電極
26 バンプ
31 基板
32 ダイボンド接着剤
33 LED素子
34 p電極
35 n電極
36 接続端子
37 金ワイヤ
38 透明モールド樹脂
39 バンプ
40 光反射層
41 異方性導電ペースト
100 光反射性異方性導電接着剤の硬化物
200 発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を配線板に異方性導電接続するために使用する光反射性異方性導電接着剤であって、熱硬化性樹脂組成物、導電粒子及び光反射性絶縁粒子を含有してなり、該光反射性絶縁粒子が、酸化チタン粒子をそれ以外の金属酸化物で表面処理したものであることを特徴とする光反射性異方性導電接着剤。
【請求項2】
光反射性絶縁粒子の酸化チタン含有量が、原子数基準で85〜93%である請求項1記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項3】
該金属酸化物が、Al、SiO、SiO、ZnO、ZnO及びZrOからなる群より選択された少なくとも一種である請求項1又は2記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項4】
該金属酸化物が、少なくともAlである請求項3記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項5】
該光反射性絶縁粒子の形状が、略球状である請求項1〜4のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項6】
光反射性絶縁粒子の粒径が、0.2〜0.3μmであり、導電粒子の粒径が2〜10μmである請求項1〜5のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項7】
光反射性絶縁粒子の屈折率が、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率よりも大きい請求項1〜6のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項8】
酸化チタン粒子をそれ以外の金属酸化物で表面処理した光反射性絶縁粒子に加えて、樹脂被覆金属粒子を光反射性絶縁粒子として含有する請求項1〜7のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項9】
樹脂被覆金属粒子が、鱗片状銀粒子である請求項8記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項10】
熱硬化性樹脂組成物に対する光反射性絶縁粒子の配合量が、1〜50体積%である請求項1〜9のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項11】
導電粒子が、金属材料で被覆されているコア粒子と、その表面に酸化亜鉛粒子又は酸化アルミニウム粒子から選択された少なくとも一種の無機粒子から形成された光反射層とからなる光反射性導電粒子である請求項1〜10のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項12】
導電粒子が、金属材料で被覆されているコア粒子と、その表面に酸化亜鉛粒子から形成された光反射層とからなる光反射性導電粒子である請求項11記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項13】
コア粒子が樹脂粒子の表面が金属材料で被覆されたものである請求項11又は12記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項14】
コア粒子の粒径に対する光反射層の層厚が0.5〜50%である請求項11〜13のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項15】
熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ系樹脂と酸無水物系硬化剤とを含有する請求項1〜14のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項16】
熱硬化性樹脂組成物の硬化物の波長380〜780nmの可視光に対する光路長1cmの光透過率(JIS K7105)が、80%以上である請求項1〜15のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項17】
熱硬化性樹脂組成物100質量部に対する光反射性導電粒子の配合量が、1〜100質量部である請求項11〜16のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項18】
光反射性異方性導電接着剤の硬化物の波長450nmに光に対する反射率(JIS K7105)が、少なくとも30%である請求項1〜17のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤を介して、発光素子がフリップチップ方式で配線板に実装されている発光装置。
【請求項20】
発光素子が、発光ダイオードである請求項19記載の発光装置。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−212865(P2012−212865A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45401(P2012−45401)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】