説明

光反射板

【課題】 本発明は、太陽光や人工光などの光源の光を反射して、400〜470nmの波長領域又は570〜700nmの波長領域の光を強調することによって、人間の目では認識しにくい青色又は赤色を明るく感じさせ、青色又は赤色を認識しやすくする光反射板を提供する。
【解決手段】 本発明の光反射板は、光反射層1の一面に発光体層2が積層一体化されてなる光反射板であって、上記発光体層2は、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、又は、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体の何れか一方或いは双方を含有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、又は、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体の何れか一方或いは双方を含有する光反射板であり、波長が400〜470nmの青系の反射光、又は、570〜700nmの赤系の反射光の何れか一方或いは双方の光量を増加させることによって、人間の目では認識しにくい青色又は赤色を明るく感じさせ、青色又は赤色を認識しやすくすることができ、照明や表示装置、及び、それらにより照らされた物体の色相を変え、従来の白色及び銀色反射板では表現することができなかった色相を表現することができ、更に、植物栽培にも好適に用いることができる光反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、テレビやモニターなどのディスプレイ分野、シーリングライト、ダウンライト、防犯灯、非常灯、誘虫灯などの照明分野、広告灯などの電飾看板分野などにおいて、蛍光灯や冷陰極管などの光源からの光を有効に利用するために光源の背後に高反射性の光反射板が用いられている。この反射板は銀色又は白色であり、可視光領域において、光源から発せられる光のスペクトルを変化させることなく反射している。
【0003】
近年、ディスプレイ分野においては、CCFL(冷陰極管)だけでは表現することができなかった色相を出すために、CCFLと、特定波長の光を放射するLED(発光ダイオード)とを併用することにより、ディスプレイの色相を変える試みがされている。
【0004】
又、防犯灯、誘虫灯に用いられている人工灯などのように、一部の波長の光を利用した照明などが提案されている。何れの方法も特定波長領域の光を放射するような特殊な光源を使用しているためにコストが高いといった問題点を有している。
【0005】
一方、地球温暖化などの地球環境の変化に伴い干ばつや洪水などの異常気象が頻発し、更に、地球規模での人口増加に対応するべく、太陽光をレンズや光反射板などによって集光させて植物に照射し栽培する技術や、人工光を利用した植物栽培技術の開発が近年、急速に求められており、それに伴って、太陽光や人工光を利用しながら、植物栽培に適した特定波長領域の光量が多くなるような照明部材の開発も急がれている。
【0006】
特許文献1には、白色顔料であるチタニアと、発光スペクトルのピークが480〜620nmにある蛍光顔料及び励起スペクトルのピークが420〜450nmにある蛍光顔料から選ばれた少なくとも1種以上の蛍光顔料を含有する塗料を金属板に塗布した反射板が提案されている。
【0007】
しかし、上記反射板は、人間の目の最も強い視感度である波長555nm近傍での光線反射率が高くなるように設計されて緑系の光が強調されている。人間の目は555nm近傍の波長領域の光(緑系の光)を明るく認識し易い一方、400〜470nmの波長領域(青系の光)及び570〜700nmの波長領域の光(赤系の光)を緑系の光に比して認識しにくい。
【0008】
従って、人間の目が認識し易い波長領域の光、即ち、緑系の光をできるだけ高く反射させることによって、光反射板の明度の向上を図っているものと思われる。
【0009】
しかしながら、光反射板の明度のみを考慮するのであれば、人間の目が明るく認識しやすい緑系の光の光線反射率を向上することで可能となる。しかし、人間の目が明るく認識しやすい緑系の光を高く反射させると、反射光において緑系が強調される結果、緑系の光に比して視感度に劣る青系、赤系の光を人間の目がより認識しにくくなるといった問題を生じる。
【0010】
特に、表示装置や照明などの用途に用いられる場合には、表示装置の表示画面の色彩や、照明によって照らされる物体の色相が重視されるため、上述のように、緑系の光が強調された光反射板を用いると、表示画面や物体に関して表現できない色相が生じるといった問題を生じる。
【0011】
又、波長555nmの光は、植物の成長には必要のない光であるため、植物栽培の用途には適さない。しかも、金属板を用いており、金属板が光を吸収するために金属板の吸収領域の波長を有する光を利用することができないといった問題点を有している。
【0012】
更に、白色顔料を塗布しているため、白色顔料が光反射板から欠落して、照明装置などの機械の誤作動を引き起こす可能性がある。又、植物栽培に用いた場合には、植物に顔料が付着してしまう可能性もあり、植物栽培の用途には適さない。
【0013】
又、特許文献2には、可視光線透過率が70%以上、紫外線透過率が0〜30%で膜厚が5〜150μmのフィルムから成る紫外線吸収層の下面に膜厚が50〜200μmの蛍光着色層、及び、隠蔽率が70%以上で膜厚が5〜50μmの光反射層を順次、積層一体化したフィルムが提案されている。
【0014】
しかしながら、上記フィルムは、紫外線領域の光を吸収して可視光領域の光を発光する発光体を用いることができない。更に、光反射層として樹脂中に白色顔料を分散させたフィルムを用いる場合、光反射層が非常に薄いため、フィルム中に高濃度に白色顔料を分散させることが困難であるという問題点を有する。そこで、フィルムの表面に白色顔料を塗布することも考えられるが、このような場合、白色顔料が欠落して、機械の誤作動を引き起こす原因となり又は植物に白色顔料が付着してしまう可能性があるといった別の問題点が発生する。
【0015】
特許文献3には、内部に気泡を含有する白色フィルムの片面に紫外線吸収能を有する物質と蛍光増白剤とを含有した塗布層が設けられた反射フィルムが提案されている。しかしながら、上記反射フィルムは、その用途からして反射フィルムを白色に見せる必要があることから、従来の白色反射板と表現できる色相は同じである。また、入射光と反射光とは同等のスペクトルを有している必要があるため、植物の生育に効果のある波長領域の光反射には効果がなく、植物栽培の用途には適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−73624号公報
【特許文献2】特開平4−345835号公報
【特許文献3】特開2002−40214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、太陽光や人工光などの光源の光を反射して、緑系の光に比して人間の目に認識されにくい青系又は赤系の光、即ち、400〜470nmの波長領域又は570〜700nmの波長領域の光を強調することによって、青色又は赤色を認識しやすくすることができ、照明や表示装置、及び、それらにより照らされた物体の色相を変え、従来の白色及び銀色反射板では表現できなかった色相にすることができ、更に、植物栽培にも好適に用いることができる光反射板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の光反射板Aは、光反射層1の一面に発光体層2が積層一体化されてなる光反射板であって、上記発光体層2は、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、又は、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体の何れか一方或いは双方を含有している。
【0019】
上記光反射層1としては、後述する発光体層2中に含有させている発光体が発光する波長領域の光を反射させることができればよく、好ましくは、発光体層2中に含有させている発光体が吸収する波長領域の光を更に反射させることができればよい。光反射層1の光線全反射率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。
【0020】
このような光反射層1としては、例えば、酸化チタンやシリカなどの粒子を含有させている光反射性非発泡シート又は発泡シート、互いに非相溶の合成樹脂を混合してなる混合樹脂からなるシートを延伸して多数のボイドを形成してなる非発泡シート、フィラーを含有するシートを延伸して多数のボイドを形成してなる非発泡シート、微細な気泡を多量に含んだ光反射性発泡シートなどが挙げられ、熱成形可能であるものが好ましい。なお、光反射層1は、上記非発泡シート又は発泡シートを適宜選択して複数層、積層一体化させたものであってもよい。又、光反射板の剛性や成形性の向上を目的として光反射性の低い発泡体層又は非発泡体層を光反射層1の他面に積層一体化させてもよい。
【0021】
光反射層1を構成している合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6などのポリアミド系樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートなどのポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。なお、合成樹脂は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0022】
上記光反射性非発泡シート又は発泡シートに含有される粒子としては、例えば、酸化亜鉛、亜鉛華、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタンなどが挙げられ、合成樹脂との屈折率の差が大きく反射性の高い酸化チタンが好ましい。
【0023】
酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ブルツカイト型があるが、ルチル型酸化チタンが好ましい。酸化チタンは通常、その光触媒作用により樹脂を劣化させてしまうため、酸化チタンには表面処理をすることが好ましい。
【0024】
合成樹脂シート中における酸化チタンの含有量は、少ないと、光反射板の光反射性能が低下する一方、多いと、光反射板の軽量性も低下するので、50〜200g/m2が好ましく、50〜150g/m2がより好ましい。
【0025】
次に、光反射層1上に積層一体化されてなる発光体層2について説明する。この発光体層2は、合成樹脂中に、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、又は、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体の何れか一方或いは双方を含有している。
【0026】
本発明の光反射板は、発光体層2に入射した入射光の一部を発光体が吸収し、発光体はそれぞれが有している発光領域、即ち、400〜470nmの波長領域又は570〜700nmの波長領域に光を発する。
【0027】
即ち、発光体層2に含まれている発光体が400〜470nmの波長領域の光(青系の光)又は570〜700nmの波長領域の光(赤系の光)を放射することによって、光反射板によって反射される反射光は、入射光に比して、青系又は赤系の光の何れか一方或いは双方が強調されている。
【0028】
従って、青系又は赤系の光の何れか一方或いは双方を強調することによって、青系又は赤系の光を人間の目が認識しやすくなり、表示装置や照明などの色相を重視する用途に好適に用いることができる。
【0029】
なお、発光体層2には、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、又は、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体の何れか一方だけが含有されていても、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、及び、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体の双方が含有されていてもよいが、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体と、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体の何れを含有させるのか或いは双方を含有させるのかは、発光体層2に入射する入射光のスペクトルに応じて適宜、調整すればよい。
【0030】
又、発光体層2に、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、又は、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体が含有されている場合、光反射板の反射スペクトルにおいて、400〜470nmの波長領域における最大光線反射率と、470〜570nmの波長領域における最小光線反射率との差をΔ1とし、570〜700nmの波長領域における最大光線反射率と、470〜570nmの波長領域における最小光線反射率との差をΔ2としたとき、Δ1又はΔ2が1%以上であることが好ましい。
【0031】
このように、Δ1又はΔ2を1%以上となるように調整することによって、光反射板の反射光において、緑系の光に比して視感度が劣る青系又は赤系の光を人間の目が認識しやすくなる。
【0032】
更に、発光体層2に、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、又は、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体が含有されている場合、光反射板の反射スペクトルにおいて、400〜470nmの波長領域における最大光線反射率、又は、570〜700nmの波長領域における最大光線反射率が100%を越えていることが好ましい。このように調整することによって、光反射板の反射光において入射光よりも青系の光又は赤系の光の光量を多くして更に確実に強調することができ、緑系の光に比して視感度が劣る青系又は赤系の光を人間の目がより認識しやすくなる。
【0033】
又、発光体層2に、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、及び、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体が含有されている場合、光反射板の反射スペクトルにおいて、400〜470nmの波長領域における最大光線反射率と、470〜570nmの波長領域における最小光線反射率との差をΔ1とし、570〜700nmの波長領域における最大光線反射率と、470〜570nmの波長領域における最小光線反射率との差をΔ2としたとき、Δ1及びΔ2が1%以上であることが好ましい。
【0034】
このように、Δ1及びΔ2を1%以上となるように調整することによって、光反射板の反射光において、青系の光及び赤系の光をより確実に強調することができ、緑系の光に比して視感度が劣る青系及び赤系の光を人間の目がより認識しやすくなる。
【0035】
更に、発光体層2に、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、及び、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体が含有されている場合、光反射板の反射スペクトルにおいて、400〜470nmの波長領域における最大光線反射率、及び、570〜700nmの波長領域における最大光線反射率が100%を越えていることが好ましい。このように調整することによって、光反射板の反射光において入射光よりも青系の光及び赤系の光の光量を多くして更に確実に強調することができ、緑系の光に比して視感度が劣る青系及び赤系の光を人間の目がより認識しやすくなる。
【0036】
なお、発光体層2を構成している合成樹脂は、光反射層1を構成している合成樹脂と同様であるのでその説明を省略する。発光体層2を構成している合成樹脂と、光反射層1を構成している合成樹脂は相違していてもよい。
【0037】
発光体層2中に含有されている発光体としては、蛍光若しくは燐光を生じる顔料又は染料が用いられる。蛍光とは、励起一重項状態から基底状態へ遷移するときに放出される光のことをいい、工業的には、この現象を利用した発光体が蛍光顔料、蛍光染料として広く利用されている。
【0038】
又、燐光とは、励起三重項状態から基底状態へ遷移するときに放出される光のことをいい、工業的には、この現象を利用した発光体が蓄光顔料、蓄光染料として広く利用されている。
【0039】
400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、又は、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体には、有機系の色素構造を有する有機系発光体、無機系の色素構造を有する無機系発光体がある。
【0040】
有機系発光体としては、例えば、キサンテン系、クマリン系、ペリレン系、ナフタルイミド系、アクリジン系、チオフラビン系、ジアミノスチルベン系、イミダゾール系、チアゾール系、オキサゾール系、ピラゾリン系、アンスラキノン系、メチン系、ベンゾピラン系、チオインジゴ系、アゾ系、フタロシアニン系などの有機系色素構造を有する発光体が挙げられる。有機系発光体は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0041】
又、無機系発光体としては、例えば、ZnS、(ZnCd)Sなどの硫化物、Zn2SiO4、Cd225、YVO3、CaWO4などの酸化物などの無機系色素構造を有する発光体が挙げられる。無機系発光体は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0042】
なお、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、即ち、紫外領域の光を吸収して400〜470nmの波長領域の蛍光若しくは燐光を発する顔料又は染料としては、クラリアント社から商品名「ホスタルックス KCB」、イーストマン社から商品名「OB−1」、住友精化社から商品名「TBO」、日本層達社から商品名「ケイコール」、日本化薬社から商品名「カヤライト」、BASF社から商品名「Lumogen F Blue 650」及び「Lumogen F Violet 570」、シンロイヒ社から商品名「FZ−2808」、「FZ−SB」及び「FZ−5009」、デイグロ社から商品名「ZQ−19」及び「IPO−19」にて市販されている。
【0043】
又、570〜700nmの光の波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、即ち、紫外領域又は可視光領域の光を吸収して570〜700nmの波長領域の蛍光又は燐光を発する顔料又は染料としては、例えば、日本化薬社から商品名「カヤクリルローダミンFB」、BASF社から商品名「Lumogen F Red 305」、シンロイヒ社から商品名「FZ−2803」、「FZ−2801」、「FZ−2817」、「FX−301」、「FX−303」、「FX−307」及び「FX−327」、デイグロ社から商品名「NX−13」、「GPL−13」、「Z−13」及び「IPO−13」、猪名川顔料社から商品名「ローダミンBレーキ」にて市販されている。
【0044】
発光体層2中における発光体の総量は、少ないと、発光体層の発光量が少なくなるので、合成樹脂100重量部に対して0.01重量部以上が好ましく、多くても、発光体層2の発光量に変化はないので、合成樹脂100重量部に対して65重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましい。
【0045】
上記光反射層1及び発光体層2には、これらの物性を損なわない範囲内において、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、金属不活性剤などの安定剤、帯電防止剤、難燃剤などの添加剤が添加されていてもよい。
【0046】
次に、本発明の光反射板の製造方法について説明する。光反射板の製造方法としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂と、発光体とを含有する発光体層用熱可塑性樹脂組成物を第一押出機に供給して溶融混練する一方、熱可塑性樹脂と上記粒子とを含有する光反射層用熱可塑性樹脂組成物を第二押出機に供給して溶融混練し、第一、第二押出機を接続させている同一のダイに発光体層用熱可塑性樹脂組成物及び光反射層用熱可塑性樹脂組成物を供給して共押出しすることによって、光反射層用熱可塑性樹脂組成物からなる光反射層の一面に、発光体層用熱可塑性樹脂組成物からなる発光体層を積層一体化してなる光反射板を製造する方法、予め用意した光反射層上に、発光体を含有する塗料を塗布、乾燥させて発光体層を積層一体化して光反射板を製造する方法などが挙げられる。
【0047】
このようにして得られた光反射板は、発光体層2中に400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、又は、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体の何れか一方或いは双方を含有しており、光反射板の発光体層2に入射した光を発光体が吸収して、これらの発光体が、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する光又は570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する光の一方或いは双方を放射する。
【0048】
しかも、発光体に吸収されることなく発光体層2を透過した入射光は、光反射層1によって発光体層2側に反射され、発光体層2中を再度、通過する途上に発光体に吸収されて上述のような発光スペクトルを有する光を放射し、更に、発光体が放射した光のうち、光反射層1側に放射された光も光反射層1が発光体層2側に反射する。従って、発光体層2の発光体から放射された上述のような発光スペクトルを有する光は発光体層2から効率良く放射される。
【0049】
従って、本発明の光反射板Aによれば、光反射版Aに入射した光よりも光反射板Aから放射された光の方が、発光体層2中の発光体の発光作用により、400〜470nmの波長領域又は570〜700nmの波長領域における光量が多いため、緑系の光に比して視感度が劣る青系又は赤系の光を人間の目がより認識しやすくなり、表示装置や照明などの色相の重視される用途に好適に用いることができる。
【0050】
上述では、本発明の光反射板は緑系の光に比して視感度が劣る青系又は赤系の光を人間の目が認識しやすくなっていることから、液晶表示装置などの表示装置や照明に好適に用いることができることを説明したが、植物栽培用途にも用いることができる。
【0051】
上述の通り、本発明の光反射板Aに蛍光灯などの人工光や太陽光を照射すると、発光体層2に含まれている発光体の作用によって、従来の白色又は銀色の光反射板で反射された反射光よりも、本発明の光反射板Aで反射された反射光の方が、400〜470nmの波長領域又は570〜700nmの波長領域の何れか一方或いは双方において光量が多くなっている。
【0052】
そして、400〜470nmの波長領域の光、及び、570〜700nmの波長領域の光は植物の生育に有効な光であり、よって、本発明の光反射板によれば、太陽光やCCFL、蛍光灯などの人工光を用いて植物栽培をする場合、植物の生育に有効な光をより多く植物に照射させることができるので、植物の生育の促進を図ることができ、又、植物の生育を屋外だけでなく、室内において行うこともできる。更に、人工光を用いた場合、人工光の光源の消費電力の節減も図ることができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明の光反射板は、上述のような構成を有しているので、反射光は、400〜470nmの波長領域(青系)又は570〜700nmの波長領域(赤系)の光が強調され、人間の目では認識しにくい青色又は赤色を認識しやすくすることができ、照明や表示装置、及び、それらにより照らされた物体の色相を変え、従来の白色及び銀色反射板では表現できなかった色相にすることができ、表示装置や照明用途などの色相が重視される用途において好適に用いることができる。
【0054】
更に、本発明の光反射板は、入射光よりも反射光の方が、植物の生育に有効な波長領域において、即ち、400〜470nmの波長領域又は570〜700nmの波長領域の一方或いは双方において光量が多くなっており、太陽光や人工光を用いて植物の生育の促進を図ることができ、更に、人工光の光源の消費電力の節減も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の光反射板を示した縦断面図である。
【図2】実施例1、5、7及び比較例1の光反射板の反射スペクトルを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
(実施例1)
ポリプロピレン(サンアロマー社製 商品名「PL500A」)100重量部及び発光体として蛍光染料(クラリアント社製 商品名「ホスタルックス KCB」)0.1重量部を含有する発光体層用熱可塑性樹脂組成物を第一押出機に、ポリプロピレン(サンアロマー社製 商品名「PL500A」)100重量部、及び、エチレン−プロピレンブロック共重合体中にルチル型酸化チタンを含有させたマスターバッチ(東洋インキ社製 商品名「PPM 1KB662 WHT FD」、エチレン−プロピレンブロック共重合体:酸化チタン=30重量%:70重量%)100重量部を含有する光反射層用熱可塑性樹脂組成物を第二押出機に、ポリプロピレン(サンアロマー社製 商品名「PL500A」)24重量部、ポリプロピレン(日本ポリプロ社製 商品名「FB3312」)76重量部、エチレン−プロピレンブロック共重合体中にルチル型酸化チタンを含有させたマスターバッチ(東洋インキ社製 商品名「PPM 1KB662 WHT FD」、エチレン−プロピレンブロック共重合体:酸化チタン=30重量%:70重量%)25重量部、及び、気泡剤として重炭酸ナトリウムとクエン酸との混合物1.4重量部を含有する発泡体層用熱可塑性樹脂組成物を第三押出機に供給して溶融混練し、第一〜三押出機から発光体層用熱可塑性樹脂組成物、光反射層用熱可塑性樹脂組成物及び発泡体層用熱可塑性樹脂組成物を合流ダイに押出し、発泡体層用熱可塑性樹脂組成物からなる断面円環状の発泡性樹脂層と、この発泡性樹脂層の外面に積層され且つ光反射層用熱可塑性樹脂組成物からなる断面円環状の非発泡性樹脂層と、この非発泡性樹脂層の外面に積層され且つ発光体層用熱可塑性樹脂組成物からなる断面円環状の発光樹脂層とからなる積層体を形成し、この積層体を合流ダイに接続させた環状ダイに供給し、環状ダイから円筒状に押出発泡させて円筒状発泡体を得た。
【0057】
しかる後、円筒状発泡体を徐々に拡径させた後に冷却マンドレルに供給して成形しながら冷却した後、円筒状発泡体を径方向の対向する二点において押出し方向に連続的に内外周面間に亘って切断することによって切り開いて展開し、全体の密度が0.7g/cm3である光反射板を得た。
【0058】
なお、光反射板は、発泡性樹脂層を発泡させてなる厚みが0.5mmの発泡体層上に、非発泡性樹脂層からなる厚みが0.15mmの光反射層1が積層一体化されてなり、更に、光反射層1上に発光樹脂層から形成されてなる厚みが0.05mmの発光体層2が積層一体化されていた。
【0059】
(実施例2)
発光体として、蛍光染料の代わりに、蛍光顔料(シンロイヒ社製 商品名「FX−301」)1重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして光反射板を得た。
【0060】
(実施例3)
発光体として、蛍光染料の代わりに、蛍光顔料(シンロイヒ社製 商品名「FX−303」)1重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして光反射板を得た。
【0061】
(実施例4)
発光体として、蛍光染料の代わりに、蛍光顔料(シンロイヒ社製 商品名「FX−303」)65重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして光反射板を得た。
【0062】
(実施例5)
発光体として、蛍光染料の代わりに、蛍光顔料(シンロイヒ社製 商品名「FX−307」)1重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして光反射板を得た。
【0063】
(実施例6)
発光体として、蛍光染料の代わりに、蛍光顔料(シンロイヒ社製 商品名「FX−327」)1重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして光反射板を得た。
【0064】
(実施例7)
発光体として、蛍光染料を単独で用いる代わりに、蛍光染料(クラリアント社製 商品名「ホスタルックス KCB」)0.1重量部及び蛍光顔料(シンロイヒ社製 商品名「FX−307」)1重量部を併用したこと以外は実施例1と同様にして光反射板を得た。
【0065】
(実施例8)
発光体として、蛍光染料を単独で用いる代わりに、蛍光染料(クラリアント社製 商品名「ホスタルックス KCB」)0.1重量部及び蛍光顔料(シンロイヒ社製 商品名「FX−327」)1重量部を併用したこと以外は実施例1と同様にして光反射板を得た。
【0066】
(実施例9)
ポリプロピレン(サンアロマー社製 商品名「PL500A」)100重量部及び発光体として蛍光染料(クラリアント社製 商品名「ホスタックス KCB」)0.1重量部を含有する発光体層用熱可塑性樹脂組成物を第一押出機に、ポリプロピレン(サンアロマー社製 商品名「PL500A」)100重量部、及び、エチレン−プロピレンブロック共重合体中にルチル型酸化チタンを含有させたマスターバッチ(東洋インキ社製 商品名「PPM 1KB662 WHT FD」、エチレン−プロピレンブロック共重合体:酸化チタン=30重量%:70重量%)100重量部を含有する光反射層用熱可塑性樹脂組成物を第二押出機に供給して溶融混練し、第一、二押出機から発光体層用熱可塑性樹脂組成物及び光反射層用熱可塑性樹脂組成物を合流ダイに押出し、光反射層用熱可塑性樹脂組成物からなる非発泡性樹脂層上に、発光体層用熱可塑性樹脂組成物からなる発光樹脂層が積層されてなる積層シートを形成し、この積層シートを合流ダイに接続したTダイに供給してTダイから全体の密度が1.3g/cm3である光反射板を共押出成形した。なお、光反射板の厚みが0.2mmとなるように引き取った。
【0067】
なお、光反射板は、非発泡性樹脂層から形成されてなる厚みが0.15mmの光反射層1と、この光反射層1上に積層一体化され且つ発光樹脂層から形成されてなる厚みが0.05mmの発光体層2とから構成されていた。
【0068】
(実施例10)
発光体として、蛍光染料の代わりに、蛍光顔料(シンロイヒ社製 商品名「FX−301」)1重量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして光反射板を得た。
【0069】
(実施例11)
発光体として、蛍光染料の代わりに、蛍光顔料(シンロイヒ社製 商品名「FX−303」)1重量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして光反射板を得た。
【0070】
(実施例12)
発光体として、蛍光染料の代わりに、蛍光顔料(シンロイヒ社製 商品名「FX−307」)1重量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして光反射板を得た。
【0071】
(実施例13)
発光体として、蛍光染料の代わりに、蛍光顔料(シンロイヒ社製 商品名「FX−327」)1重量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして光反射板を得た。
【0072】
(実施例14)
発光体として、蛍光染料を単独で用いる代わりに、蛍光染料(クラリアント社製 商品名「ホスタルックス KCB」)0.1重量部及び蛍光顔料(シンロイヒ社製 商品名「FX−307」)1重量部を併用したこと以外は実施例9と同様にして光反射板を得た。
【0073】
(実施例15)
発光体として、蛍光染料を単独で用いる代わりに、蛍光染料(クラリアント社製 商品名「ホスタルックス KCB」)0.1重量部及び蛍光顔料(シンロイヒ社製 商品名「FX−327」)1重量部を併用したこと以外は実施例9と同様にして光反射板を得た。
【0074】
(比較例1)
発光体を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして光反射板を得た。
【0075】
(比較例2)
発光体を用いなかったこと以外は実施例9と同様にして光反射板を得た。
【0076】
得られた光反射板について、下記の要領で光線反射率を測定し、その結果を表1及び図2に示した。なお、図2には、実施例1、5、7及び比較例1の結果のみを示した。
【0077】
(光線反射率)
光反射板の光線反射率の測定には分光測色計(コニカミノルタ社製 商品名「CM−2600d」)を使用し、JIS Z 8722に準拠し、測定雰囲気の室温が20℃、測定雰囲気の相対湿度が60%の条件において、光反射板の光線反射率を360〜740nmの波長領域において10nm毎に測定した。
【0078】
得られた光線反射率において、400〜470nmの波長領域、及び、570〜700nmの波長領域において最大光線反射率を求め、470〜570nmの波長領域において最小光線反射率を求めた。
【0079】
400〜470nmの波長領域における最大光線反射率と、470〜570nmの波長領域における最小光線反射率との差Δ1を算出すると共に、570〜700nmの波長領域における最大光線反射率と、470〜570nmの波長領域における最小光線反射率との差Δ2を算出した。
【0080】
【表1】

【符号の説明】
【0081】
1 光反射層
2 発光体層
A 光反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射層の一面に発光体層が積層一体化されてなる光反射板であって、上記発光体層は、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、又は、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体を含有していることを特徴とする光反射板。
【請求項2】
発光体層中の発光体は、紫外領域若しくは可視光領域の光を吸収して400〜470nm若しくは570〜700nmの波長領域の蛍光若しくは燐光を発する顔料又は染料であることを特徴とする請求項1に記載の光反射板。
【請求項3】
光反射板の反射スペクトルにおいて、400〜470nmの波長領域における最大光線反射率と、470〜570nmの波長領域における最小光線反射率との差をΔ1とし、570〜700nmの波長領域における最大光線反射率と、470〜570nmの波長領域における最小光線反射率との差をΔ2としたとき、Δ1又はΔ2が1%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光反射板。
【請求項4】
光反射板の反射スペクトルにおいて、400〜470nmの波長領域における最大光線反射率、又は、570〜700nmの波長領域における最大光線反射率が100%を越えていることを特徴とする請求項1に記載の光反射板。
【請求項5】
光反射層の一面に発光体層が積層一体化されてなる光反射板であって、上記発光体層は、400〜470nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体、及び、570〜700nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有する発光体を含有していることを特徴とする光反射板。
【請求項6】
発光体は、紫外領域若しくは可視光領域の光を吸収して400〜470nm若しくは570〜700nmの波長領域に蛍光若しくは燐光を発する顔料又は染料であることを特徴とする請求項5に記載の光反射板。
【請求項7】
光反射板の反射スペクトルにおいて、400〜470nmの波長領域における最大光線反射率と、470〜570nmの波長領域における最小光線反射率との差をΔ1とし、570〜700nmの波長領域における最大光線反射率と、470〜570nmの波長領域における最小光線反射率との差をΔ2としたとき、Δ1及びΔ2が1%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光反射板。
【請求項8】
光反射板の反射スペクトルにおいて、400〜470nmの波長領域における最大光線反射率、及び、570〜700nmの波長領域における最大光線反射率が100%を越えていることを特徴とする請求項5に記載の光反射板。
【請求項9】
光反射層の他面に発泡体層が積層一体化されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の光反射板。
【請求項10】
植物栽培に用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の光反射板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−234583(P2010−234583A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83586(P2009−83586)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】