光受信装置
【課題】遅延干渉計の位相を最適値に調整する時間を従来よりも短縮する。
【解決手段】差動M相位相シフト変調方式によって変調された光信号を受信する光受信装置101において、遅延干渉計3−1,3−2の各々には、分岐部2で分岐された光信号が個別に入力される。バランス検波器4A,4Bの各々は対応の遅延干渉計の出力を検波する。再生部7は、各バランス検波器の出力に基づいて、Nビットのデータを順次再生する。誤り訂正部8は、再生部7によって順次再生されたNビットのデータの誤り訂正を行なう。位相補正部15Bは、少なくとも一部のビットパターンについて、各ビットパターンが別の1または複数のビットパターンに誤って識別される確率である誤識別率を、誤り訂正部8の訂正結果に基づいて検出し、検出したビットパターンの誤識別率に基づいて、遅延干渉計3−1,3−2のうち少なくとも1つの位相の設定値を補正する。
【解決手段】差動M相位相シフト変調方式によって変調された光信号を受信する光受信装置101において、遅延干渉計3−1,3−2の各々には、分岐部2で分岐された光信号が個別に入力される。バランス検波器4A,4Bの各々は対応の遅延干渉計の出力を検波する。再生部7は、各バランス検波器の出力に基づいて、Nビットのデータを順次再生する。誤り訂正部8は、再生部7によって順次再生されたNビットのデータの誤り訂正を行なう。位相補正部15Bは、少なくとも一部のビットパターンについて、各ビットパターンが別の1または複数のビットパターンに誤って識別される確率である誤識別率を、誤り訂正部8の訂正結果に基づいて検出し、検出したビットパターンの誤識別率に基づいて、遅延干渉計3−1,3−2のうち少なくとも1つの位相の設定値を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying:差動四相位相シフト変調)方式などの、差動M相位相シフト変調方式で変調された光信号を受信する光受信装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムにおいて、従来から強度変調方式が用いられてきたが、信号対雑音比の向上が困難なために近年の通信トラフィックの急増に対応しきれなくなってきた。そこで、信号対雑音比の向上が可能なDQPSK方式などの差動M相位相シフト変調方式が主流になりつつある。たとえばDQPSK方式では、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)に対して、位相0,π/2,π,3π/2が割り当てられ、先に送信した搬送波と次に送信する搬送波の位相を割り当てられた位相だけ変化させることで任意のビットパターンが送信される。
【0003】
差動M相位相シフト変調方式によって変調された光信号を受信側で復調するために、一般に遅延干渉計が用いられる。たとえば、特開2008−72555号公報(特許文献1)に記載された光受信装置は、可変分散補償器と、遅延干渉計と、復調部と、監視部と、設定部とを含む。可変分散補償器は、受信した光信号に対して可変な分散補償量によって分散補償を行なう。遅延干渉計は、可変分散補償器から出力された光信号を2つに分岐させ、一方の分岐成分を1シンボル遅延させ、他方の分岐成分を可変な位相量によって位相制御し、2つの分岐成分を干渉させる。復調部は、遅延干渉計から出力される干渉結果を電気信号に変換することによって復調する。監視部は、復調部から出力される復調電気信号の誤り率などのエラー状態を監視する。設定部は、エラー状態情報を監視しながら可変分散補償器の分散補償量と遅延干渉計の位相量とを交互に変化させることで、エラー状態が良好(たとえば、誤り率が最小)となる分散補償量および位相量を探索して設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−72555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、遅延干渉計の位相制御量は、光信号の波長レベルで精密に調整する必要があるため、適切な値に調整するまでには時間がかかる。上記の特開2008−72555号公報(特許文献1)に記載された光受信装置の場合には、記憶部に記憶された過去の設定値または他のチャネルの設定値などを利用することによって、適切な値に設定するまでの時間短縮が図られている。しかしながら、最も近い波長のチャネルの設定値を初期値として利用できたとしても、その後は、誤り率が最小となるように試行錯誤的に位相を調整するので、最適値に位相を調整するまでに比較的長時間を要することになってしまっていた。さらには、位相調整中の段階では、かえって誤り率を劣化させる場合もあり得た。
【0006】
この発明の目的は、遅延干渉計の位相を最適値に調整する時間を従来よりも短縮することが可能な光受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は一局面において、M=2N(Nは2以上の整数)である差動M相位相シフト変調方式によって変調された光信号を受信する光受信装置であって、分岐部と、M/2組の遅延干渉計と、M/2組のバランス検波器と、再生部と、誤り訂正部と、位相補正部とを備える。分岐部は、受信した光信号をM/2個に分岐する。各遅延干渉計は、分岐部で分岐された光信号が個別に入力され、入力された光信号を2つの分岐成分に分岐し、分岐した一方の分岐成分を他方の分岐成分に対して1シンボル遅延させるとともにいずれか一方の分岐成分の位相を設定された位相だけシフトさせ、その後、両分岐成分を結合して出力する。M/2組のバランス検波器は、M/2組の遅延干渉計にそれぞれ対応し、各々が対応の遅延干渉計の出力を検波する。再生部は、M/2組のバランス検波器の出力に基づいて、Nビットのデータを順次再生する。誤り訂正部は、再生部によって順次再生されたNビットのデータの誤り訂正を行なう。位相補正部は、少なくとも一部のビットパターンについて、各ビットパターンが別の1または複数のビットパターンに誤って識別される確率である誤識別率を、誤り訂正部の訂正結果に基づいて検出し、検出したビットパターンの誤識別率に基づいて、M/2組の遅延干渉計のうち少なくとも1つの位相の設定値を補正する。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、誤り訂正部の訂正結果に基づいて検出されたビットパターンの誤識別率に基づいて、遅延干渉計の位相の設定値が補正されるので、各遅延干渉計の位相を最適値に調整する時間を従来よりも短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1による光受信装置100の構成を示すブロック図である。
【図2】ツインフォトダイオード4A,4Bの出力について説明するための図である。
【図3】遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2によるシフト量と、ツインPD4Bの差動出力との関係を示す図である。
【図4】遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1によるシフト量と、ツインPD4Aの差動出力との関係を示す図である。
【図5】移相器12−1,12−2の位相がそれぞれ+π/4,−π/4からずれた場合における各ビットパターンの識別精度の変化および出現頻度の変化をまとめたものである。
【図6】図1の出現頻度比較部9、判別部10および制御部11による遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態1の変形例による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態2による光受信装置101の構成を示すブロック図である。
【図9】図8の識別精度比較部13、判別部10および制御部11による遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態2の変形例1による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2の変形例2による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態2の変形例3による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態3による光受信装置102の構成を示すブロック図である。
【図14】図13の出現頻度比較部9、識別精度比較部13、判別部10および制御部11による遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図15】遅延干渉計3−1,3−2の両方の位相がずれている場合の識別精度の変化を説明するための図である。
【図16】図5のA〜Dの場合と図15のE〜Hの場合とを考慮したときの遅延干渉計3−1,3−2の位相のずれ方の判別方法について説明するための図である。
【図17】この発明の実施の形態5による光受信装置103の構成を示すブロック図である。
【図18】ツインフォトダイオード4A,4B,4C,4Dの出力について説明するための図である。
【図19】図17の各遅延干渉計に設けられた移相器による位相のシフト量とツインPDの差動出力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0011】
<実施の形態1>
この発明は、差動M相位相シフト変調方式(M=2Nであって、Nは2以上の自然数)を用いて、Nビットの送信データで変調された光信号を受信する光受信装置に適用可能である。以下では、M=4(N=2)の場合、つまりDQPSK変調方式を用いて、2ビットの送信データで変調された光信号を受信する場合について説明する。
【0012】
[光受信装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態1による光受信装置100の構成を示すブロック図である。図1を参照して、光受信装置100は、平面光回路1と、バランス検波器4A,4Bと、トランスインピーダンスアンプ5−1,5−2と、クロック・データ・リカバリ(CDR:Clock Data Recovery)回路6−1,6−2と、再生部7と、誤り訂正部8と、出現頻度比較部9と、判別部10と、制御部11とを含む。出現頻度比較部9、判別部10、および制御部11によって、遅延干渉計3−1,3−2のうち少なくとも1つの位相の設定値を調整する位相補正部15Aが構成される。なお、再生部7、誤り訂正部8、出現頻度比較部9、および判別部10は、たとえば、マイクロコンピュータを用いて実現することができる。
【0013】
平面光回路1は、分岐部2と、遅延干渉計3−1,3−2とを含む。平面光回路1において、光受信装置100に入力された光信号LSは分岐部2において2分岐され、2分岐された光信号は遅延干渉計3−1,3−2にそれぞれ入力される。なお、一般の差動M相位相シフト変調方式用の光受信装置の場合には、分岐部2において光信号LSはM/2個に分岐され、分岐後の信号光はM/2組の遅延干渉計に個別に入力される。バランス検波器は、遅延干渉計にそれぞれ対応してM/2組設けられる。
【0014】
遅延干渉計3−1に入力された光信号は、第1のアームと第2のアームとに分岐される。第1のアームの光路長は第2のアームの光路長よりも光信号のパルス時間間隔(1シンボル)に相当するτだけ長い。さらに、第2のアームに分岐された光信号成分の位相は、移相器(フェーズシフタ)12−1によって規定値である+π/4だけシフトされる。移相器12−1の位相は、+π/4に等しくなるように制御部11によって設定される。その後、第1アームと第2のアームとが近接することによって、両アームを通過する光信号成分は結合し、相互に干渉する。なお、移相器12−1を第1のアームに設けてもよく、この場合には、移相器12−1を通過する光信号の位相は、−π/4だけシフトされる。
【0015】
遅延干渉計3−2の構成は、遅延干渉計3−1の構成と同様である。ただし、遅延干渉計3−2の場合には、第2のアームに設けられた移相器12−2によって、第2のアームに分岐された光信号成分の位相は−π/4だけシフトされる。なお、移相器12−2を第1のアームに設けてもよく、この場合には、移相器12−2を通過する光信号の位相は、+π/4だけシフトされる。
【0016】
遅延干渉計3−1の出力はバランス検波器4Aに入力される。バランス検波器4Aは、直列接続されたフォトダイオード(PD:Photo-Diode)4−1,4−2(ツインフォトダイオードとも称する)を含む。フォトダイオード4−1,4−2は逆バイアスされている。これらのフォトダイオード4−1,4−2の差動出力がトランスインピーダンスアンプ5−1に入力される。同様に、遅延干渉計3−2の出力は、フォトダイオード4−3,4−4によって構成されるバランス検波器4Bに入力される。これらのフォトダイオード4−3,4−4の差動出力がトランスインピーダンスアンプ5−2に入力される。
【0017】
図2は、ツインフォトダイオード4A,4Bの出力について説明するための図である。DQPSK方式では、隣接シンボル間の位相差が0,π/2,π,3π/2の4通りあり、これらの位相差に対して2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)がそれぞれ割当てられる。
【0018】
図2を参照して、遅延干渉計3−1の場合には、隣接シンボル間の位相差に対して+π/4が加えられるので、加算後の位相差Δφは、π/4,3π/4,5π/4,7π/4となる。PD4−1に生成される光電流はcos2(Δφ/2)に比例し、PD4−2に生成される光電流はsin2(Δφ/2)に比例する。ツインPD4Aの差動出力はそれらの差、すなわち、
sin2(Δφ/2)−cos2(Δφ/2) …(1)
に比例する。
【0019】
遅延干渉計3−2の場合には、隣接シンボル間の位相差に対して−π/4が加えられるので、加算後の位相差Δφは、−π/4,π/4,3π/4,5π/4となる。ツインPD4Bの差動出力は、加算後の各位相差Δφを上式(1)に代入することによって得られる値に比例する。
【0020】
ここで、たとえばツインPD4A,4Bの差動出力がマイナスの場合を0、プラスの場合を1として、遅延干渉計3−2,遅延干渉計3−1の順に出力データを並べると(すなわち、遅延干渉計3−2の出力を上位ビットとし、遅延干渉計3−1の出力を下位ビットとすると)、隣接シンボル位相差0,π/2,π,3π/2に対して(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)のビットパターンがそれぞれ復調されることになる。
【0021】
再び図1を参照して、各ビットパターンを実際に復調するために、トランスインピーダンスアンプ5−1,5−2は、ツインPD4A,4Bから出力された電流信号を電圧信号に変換し、変換後の電圧信号をCDR回路6−1,6−2にそれぞれ入力する。
【0022】
CDR回路6−1,6−2は、入力された電気信号からクロック信号を抽出し、当該クロック信号に同期して、電気信号を“1”か“0”に識別する。
【0023】
再生部7は、CDR回路6−1,6−2での識別結果に基づいて2ビットのデータを順次再生して出力する。
【0024】
誤り訂正部8は、CDR回路6−1,6−2での識別結果の誤りを、公知の誤り訂正技術を適用して訂正する。
【0025】
[遅延干渉計3−1,3−2の位相の設定値がずれた場合の出力変化]
図3は、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2によるシフト量と、ツインPD4Bの差動出力との関係を示す図である。
【0026】
図4は、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1によるシフト量と、ツインPD4Aの差動出力との関係を示す図である。図3、図4では、送信された2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)(隣接シンボル間の位相差0,π/2,π,3π/2にそれぞれ対応する)の各々に対してツインPDの出力の計算結果が示される。
【0027】
図1、図3を参照して、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相が−π/4に正確に設定されているとする。この場合、送信されたデータが(0,0)(0,1)(隣接シンボル間の位相差が0,π/2)のときには、ツインPD4Bの出力はマイナスとなるので、送信データの上位ビットは“0”と識別される。送信データが(1,1)(1,0)(隣接シンボル間の位相差がπ,3π/2)のときには、ツインPD4Bの出力はプラスとなるので、送信データの上位ビットは“1”と識別される。
【0028】
これに対して、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相の設定値が−π/4よりもプラス側へずれた場合には(図3のA)、各送信データの上位ビットが“0”または“1”に識別される確率は次のように変化する。すなわち、送信データが(0,0)(位相差が0)のときにはツインPD4Bの差動出力はよりマイナスに変化するために、送信データの上位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなる。送信データが(0,1)(位相差がπ/2)のときにはツインPD4Bの差動出力はプラス方向に変化するために、送信データの上位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなる。送信データが(1,1)(位相差がπ)のときにはツインPD4Bの差動出力はよりプラスに変化するために、送信データの上位ビットは“1”と正しく識別される確率がより高くなる。送信データが(1,0)(位相差が3π/2)のときにはツインPD4Bの差動出力はマイナス方向に変化するために、送信データの上位ビットは“0”と誤って識別される確率が高くなる。
【0029】
上記の結果、本来、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)が等確率で現れるのに対して、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相が−π/4よりもプラス側へずれた場合には、(0,0)(1,1)の現れる確率が高くなる。
【0030】
同様に、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相が−π/4よりもマイナス側へずれた場合には(図3のB)、各送信データの上位ビットが“0”または“1”に識別される確率は次のように変化する。すなわち、送信データが(0,0)(位相差が0)のときにはツインPD4Bの差動出力はプラス方向に変化するために、送信データの上位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなる。送信データが(0,1)(位相差がπ/2)のときにはツインPD4Bの差動出力はよりマイナスに変化するために、送信データの上位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなる。送信データが(1,1)(位相差がπ)のときにはツインPD4Bの差動出力はマイナス方向に変化するために、送信データの上位ビットは“0”と誤って識別される確率が高くなる。送信データが(1,0)(位相差が3π/2)のときにはツインPD4Bの差動出力はよりプラスに変化するために、送信データの上位ビットは“1”と正しく識別される確率がより高くなる。
【0031】
上記の結果、本来、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)が等確率で現れるのに対して、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相が−π/4よりもマイナス側へずれた場合には、(0,1)(1,0)の現れる確率が高くなる。
【0032】
次に図1、図4を参照して、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相が+π/4に正確に設定されているとする。この場合、送信されたデータが(0,0)(1,0)(隣接シンボル間の位相差が0,3π/2)のときには、ツインPD4Aの出力はマイナスとなり、送信データの下位ビットは“0”と識別される。送信データが(0,1)(1,1)(隣接シンボル間の位相差がπ/2,π)のときには、ツインPD4Aの出力はプラスとなり、送信データの下位ビットは“1”と識別される。
【0033】
これに対して、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相が+π/4よりもプラス側へずれた場合には(図4のC)、各送信データの下位ビットが“0”または“1”に識別される確率は次のように変化する。すなわち、送信データが(0,0)(位相差が0)のときにはツインPD4Aの差動出力はプラス方向に変化するために、送信データの下位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなる。送信データが(0,1)(位相差がπ/2)のときにはツインPD4Aの差動出力はよりプラスに変化するために、送信データの下位ビットは“1”と正しく識別される確率がより高くなる。送信データが(1,1)(位相差がπ)のときにはツインPD4Aの差動出力はマイナス方向に変化するために、送信データの下位ビットは“0”と誤って識別される確率が高くなる。送信データが(1,0)(位相差が3π/2)のときにはツインPD4Aの差動出力はよりマイナスに変化するために、送信データの下位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなる。
【0034】
上記の結果、本来、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)が等確率で現れるのに対して、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相が+π/4よりもプラス側へずれた場合には、(0,1)(1,0)の現れる確率が高くなる。
【0035】
同様に、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相が+π/4よりもマイナス側へずれた場合には(図4のD)、各送信データの下位ビットが“0”または“1”に識別される確率は次のように変化する。すなわち、送信データが(0,0)(位相差が0)のときにはツインPD4Aの差動出力はよりマイナスに変化するために、送信データの下位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなる。送信データが(0,1)(位相差がπ/2)のときにはツインPD4Aの差動出力はマイナス方向に変化するために、送信データの下位ビットは“0”と誤って識別される確率が高くなる。送信データが(1,1)(位相差がπ)のときにはツインPD4Aの差動出力はよりプラスに変化するために、送信データの下位ビットは“1”と正しく識別される確率がより高くなる。送信データが(1,0)(位相差が3π/2)のときにはツインPD4Aの差動出力はプラス方向に変化するために、送信データの下位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなる。
【0036】
上記の結果、本来、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)が等確率で現れるのに対して、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相が+π/4よりもマイナス側へずれた場合には、(0,0)(1,1)の現れる確率が高くなる。
【0037】
図5は、移相器12−1,12−2の位相がそれぞれ+π/4,−π/4からずれた場合における各ビットパターンの識別精度の変化および出現頻度の変化をまとめたものである。
【0038】
図5を参照して、移相器12−1,12−2によって設定される位相のずれ方は、図3に示したA,Bの場合と図4に示したC,Dの場合との4通りある。A,Dの場合には(0,0)(1,1)のビットパターンが現れる確率が増加し、B,Cの場合には(0,1)(1,0)のピットパターンが現れる確率が増加する。
【0039】
[出現頻度比較部9、判別部10および制御部11の動作]
図6は、図1の出現頻度比較部9、判別部10および制御部11による遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。以下、図1、図6を参照して、出現頻度比較部9、判別部10および制御部11の動作について詳しく説明する。
【0040】
まずステップS110で、再生部7によって、受信した光信号LSから2ビットのデジタルデータが再生される。通常の信号では、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されているときには、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)の各々は等確率で現れる。実際の信号に代えて、(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)の各ビットパターンが等確率で現れるテストデータを用いてもよい。
【0041】
次に、出現頻度比較部9は、再生部7によって順次再生されたデータを、(0,0)(1,1)のビットパターンからなる第1グループと、(0,1)(1,0)のビットパターンからなる第2グループとに分類する。そして、出現頻度比較部9は、いずれのグループの出現頻度のほうが大きいのか、グループごとの出現頻度を比較する(ステップS120,S130,S140)。なお、各ビットパターンの出現頻度を個別に比較して、4つのビットパターンのうち出現頻度の大きい2個のビットパターンを選択するようにしても構わない。
【0042】
判別部10は、出現頻度比較部9による比較結果に基づいて、現在の位相の設定値が最適値よりもずれている可能性のある遅延干渉計について、位相ずれを補正するために、現在の位相の設定値よりも増加するのか減少するのかを判別する。具体的な手順は以下のとおりである。なお、上記の第1、第2グループの出現頻度を比較するだけでは、遅延干渉計3−1,3−2のうち、どちらの遅延干渉計の位相がずれているのかまでは特定することができない。
【0043】
(0,0)(1,1)の出現頻度のほうが大きい場合には(ステップS130でYES)、図5(A),(D)のいずれかの場合に該当する。そこで、判別部10は、遅延干渉計3−1,3−2の一方を選択する。判別部10は、遅延干渉計3−1を選択した場合には、移相器12−1の位相をプラス側にずらすように制御部11に指令する。判別部10は、遅延干渉計3−2を選択した場合には、移相器12−2の位相をマイナス側にずらすように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10からの指令に従って、判別部10によって選択された遅延干渉計の位相の設定値を、現在の設定値から増加または減少させる(ステップS150)。
【0044】
逆に(0,1)(1,0)の出現頻度のほうが大きい場合には(ステップS140でYES)、図5(B),(C)のいずれかの場合に該当する。そこで、判別部10は、遅延干渉計3−1,3−2の一方を選択する。判別部10は、遅延干渉計3−1を選択した場合には、移相器12−1の位相をマイナス側にずらすように制御部11に指令する。判別部10は、遅延干渉計3−2を選択した場合には、移相器12−2の位相をプラス側にずらすように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10からの指令に従って、判別部10によって選択された遅延干渉計の位相の設定値を、現在の設定値から増加または減少させる(ステップS160)。
【0045】
ステップS150またはS160が実行された後に、ステップS110からの手順が再び実行される。前回のステップS150で遅延干渉計3−1の位相をプラス側にずらすように調整したにも拘らず、(0,0)(1,1)の出現頻度がさらに増加した場合には、判別部10は、今回のステップS150では、もう一方の遅延干渉計3−2を選択し、移相器12−2の位相をマイナス側にずらずように制御部11に指令する。逆に、前回のステップS150で遅延干渉計3−2の位相をマイナス側にずらすように調整したにも拘らず、(0,0)(1,1)の出現頻度がさらに増加した場合には、判別部10は、今回のステップS150では、もう一方の遅延干渉計3−1を選択し、移相器12−1の位相をプラス側にずらずように制御部11に指令する。
【0046】
同様に、前回のステップS160で遅延干渉計3−1の位相をマイナス側にずらすように調整したにも拘らず、(0,1)(1,0)の出現頻度がさらに増加した場合には、判別部10は、今回のステップS160では、もう一方の遅延干渉計3−2を選択し、移相器12−2の位相をプラス側にずらずように制御部11に指令する。逆に、前回のステップS160で遅延干渉計3−2の位相をプラス側にずらすように調整したにも拘らず、(0,1)(1,0)の出現頻度がさらに増加した場合には、判別部10は、今回のステップS160では、もう一方の遅延干渉計3−1を選択し、移相器12−1の位相をマイナス側にずらずように制御部11に指令する。
【0047】
上記の一連の手順による遅延干渉計3−1,3−2の位相の調整は、(0,1)(1,0)の出現頻度と(0,0)(1,1)の出現頻度とが等しくなるまで(ステップS130でNOかつステップS140でNOとなるまで)繰返される。こうして遅延干渉計3−1,3−2の位相の設定値が最適値にロックされる。
【0048】
出現頻度比較部9によってグループごとの出現頻度を相互に比較しない場合には、図5に示したA〜Dの4通りを順次試していく必要がある。このため、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整を開始してから最適値にロックするまでに比較的長時間を要することになる。これに対して、実施の形態1による光受信装置100のように、第1グループ(0,0)(1,1)の出現頻度が大きいのか、第2グループ(0,0)(1,1)の出現頻度が大きいのかを判別することによって、図5に示したA〜Dの4通りの位相の設定値のずれ方を2通りの場合に絞ることができる。この結果、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整に要する時間を短縮することができる。
【0049】
[実施の形態1の変形例]
上記の実施の形態1では、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたときには、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)の各々が等確率で現れることを前提としていた。この変形例では、光受信装置の特性の偏りなどが原因で、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたとしても、(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)の各々の出現頻度が等しくならない場合について説明する。
【0050】
図7は、実施の形態1の変形例による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【0051】
図1、図7を参照して、まず始めに、予め再生部7で順次再生されたデータの誤り率が最小になるように遅延干渉計3−1,3−2の位相が調整される。誤り率は、誤り訂正部8に入力されるデータ総数に対する、誤っていたデータ数の割合で表される。この初回の位相調整のみは、従来の方法で行なわれる。出現頻度比較部9は、このように誤り率が最小となるように調整された状態で、第1グループ(0,0)(1,1)の出現頻度と第2グループ(0,1)(1,0)の出現頻度とを検出し、これらの出現頻度を基準値として記憶する(ステップS105)。
【0052】
次に、再生部7によって、現時点で受信した光信号LSから2ビットのデジタルデータが再生される(ステップS110)。
【0053】
出現頻度比較部9は、現在の受信信号から再生されたデータを用いて第1および第2のグループの出現頻度を検出し、グループごとに、現時点での出現頻度と予め記憶された誤り率最小のときの出現頻度との偏差を算出する(ステップS115)。そして、出現頻度比較部9は、第1グループ(0,0)(1,1)の出現頻度の偏差のほうが大きいのか、第2のグループ(0,1)(1,0)の出現頻度の偏差のほうが大きいのか、グループごとの出現頻度の偏差を比較する(ステップS120A,130A,S140A)。第1グループ(0,0)(1,1)の出現頻度の偏差のほうが大きい場合は(ステップS130AでYES)、図5(A),(D)の場合のいずれかに該当し、第2グループ(0,1)(1,0)の出現頻度の偏差のほうが大きい場合は(ステップS140AでYES)、図5(B),(C)の場合のいずれかに該当する。
【0054】
判別部10は、出現頻度比較部9による比較結果に基づいて、現在の位相の設定値が最適値よりもずれている可能性のある遅延干渉計について、位相ずれを補正するために、現在の位相の設定値よりも増加するのか減少するのかを判別する。具体的な手順は、図6のステップS150,S160と同様であるので、説明を繰返さない。なお、上記の第1、第2グループの出現頻度の偏差を比較するだけでは、遅延干渉計3−1,3−2のうち、どちらの遅延干渉計の位相がずれているのかまでは特定することができない。
【0055】
なお、差動M相位相変調方式では、各遅延干渉計で設定する位相がずれると、受信品質が低下し、誤り率の劣化が発生する。このため、各遅延干渉計の位相が精度良く調整された状態を維持しなければならない。各遅延干渉計の位相は、温度変化や経年等により変化するので、位相調整を継続的に行なう必要がある。この位相調整の際、上記のステップS105は初回のときだけ実行すればよいので、2回目以降については、現在の出現頻度のみを検出することによって、従来よりも短時間で遅延干渉計3−1,3−2の位相を調整することができる。
【0056】
<実施の形態2>
図8は、本発明の実施の形態2による光受信装置101の構成を示すブロック図である。図8の光受信装置101は、出現頻度比較部9に代えて識別精度比較部13を含む点で図1の光受信装置100と異なる。識別精度比較部13は、全ビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)のうち少なくとも一部のビットパターンについて、各ビットパターンが別の1または複数のビットパターンに誤って識別される確率である誤識別率を、誤り訂正部8の訂正結果に基づいて検出する。そして、識別精度比較部13は、検出した複数の誤識別率を相互に比較する。なお、識別精度比較部13、判別部10、および制御部11によって、遅延干渉計3−1,3−2のうち少なくとも1つの位相の設定値を調整する位相補正部15Bが構成される。
【0057】
具体的に、識別精度比較部13は、(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率と、(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率と、(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率と、(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率とを比較する。遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されている場合には、原理的にこれら第1〜第4の場合の確率は等しくなるはずであるが、位相がずれている場合にはこれらの確率は等しくならない。
【0058】
図5(A)のように遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/4よりもプラス側にずれている場合には、(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率が増加する。
【0059】
図5(B)のように遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/4よりもマイナス側にずれている場合には、(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率が増加する。
【0060】
図5(C)のように遅延干渉計3−1の位相の設定値が+π/4よりもプラス側にずれている場合には、(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率が増加する。
【0061】
図5(D)のように遅延干渉計3−1の位相の設定値が+π/4よりもマイナス側にずれている場合には、(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率が増加する。したがって、上記の第1〜第4の各場合の確率を比較することによって、図5(A)〜(D)のどの場合に該当するか、すなわち、位相の設定値が最適値よりもずれている遅延干渉計を特定するとともに、特定した遅延干渉計の位相の設定値がプラス側にずれているのか、マイナス側にずれているのかを判別することができる。この判別は、図8の判別部10によって行なわれる。図8のその他の点は図1の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0062】
図9は、図8の識別精度比較部13、判別部10および制御部11による遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【0063】
図8、図9を参照して、ステップS210で、再生部7によって、受信した光信号LSから2ビットのデジタルデータが順次再生される。再生されたデジタルデータの誤りは、誤り訂正部8によって公知の誤り訂正技術を用いて訂正される。
【0064】
次に、識別精度比較部13は、誤り訂正部8の訂正結果に基づいて、(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率と、(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率と、(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率と、(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率とを比較する(ステップS211)。
【0065】
(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS212でYES)、図5(A)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相を現在の設定値よりもマイナス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相を調整する(ステップS216)。
【0066】
(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS213でYES)、図5(B)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相を現在の設定値よりもプラス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相を調整する(ステップS217)。
【0067】
(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS214でYES)、図5(C)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−1の位相を現在の設定値よりもマイナス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相を調整する(ステップS218)。
【0068】
(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS215でYES)、図5(D)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−1の位相を現在の設定値よりもプラス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相を調整する(ステップS219)。
【0069】
上記の調整手順は、上記の第1〜第4の場合の確率が等しくなるまで(すなわち、ステップS212〜S215の全てでNOとなるまで)繰返される。こうして遅延干渉計3−1,3−2の位相の設定値が最適値にロックされる。
【0070】
識別精度比較部13によって第1〜第4の場合の誤識別率を相互に比較しない場合には、図5に示したA〜Dの4通りを順次試していく必要がある。このため、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整を開始してから最適値にロックするまでに比較的長時間を要することになる。これに対して、実施の形態2による光受信装置101のように、第1〜第4の場合の誤識別率をそれぞれ検出し、検出した複数の誤識別率を相互に比較することによって、位相が最適値からずれた遅延干渉計を特定することができるとともに、位相ずれを補正するために、特定した遅延干渉計の位相を増加させるのか減少させるのかを判別することができる。この結果、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整に要する時間を従来よりも短縮することができる。さらに、各遅延干渉計の位相の設定値が最適値からずれるほど誤り率が増大するため、仮に識別精度比較部13による比較結果に基づいた位相調整を行なわない場合には、位相調整中に誤り率を劣化させる可能性があるが、本実施の形態の光受信装置101によれば誤り率の増加を抑制することができる。
【0071】
[実施の形態2の変形例1]
上記の実施の形態1では、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたときには、上記の第1〜第4の場合の誤識別率が互いに等しくなることを前提としていた。この変形例では、光受信装置の特性の偏りなどが原因で、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたとしても、第1〜第4の場合の誤識別率が互いに等しくならない場合について説明する。
【0072】
図10は、実施の形態2の変形例1による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【0073】
図8、図10を参照して、まず始めに、予め再生部7で順次再生されたデータの誤り率が最小になるように遅延干渉計3−1,3−2の位相が調整される。この初回の位相調整のみは、従来の方法で行なわれる。識別精度比較部13は、このように誤り率が最小となるように調整された状態で、(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率と、(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率と、(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率と、(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率とを検出し、検出したこれらの4パターンの確率を記憶する(ステップS201)。
【0074】
次に、再生部7によって、受信した現時点での光信号LSから2ビットのデジタルデータが再生される(ステップS210)。
【0075】
次に、識別精度比較部13は、現時点での再生データに基づいて(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率(誤識別率)と、(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率と、(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率と、(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率とを検出する。識別精度比較部13は、第1〜第4の場合の各々について、ステップS201で記憶した誤り率が最小のときに検出された誤識別率と現在検出されている誤識別率との偏差を算出する(ステップS211A)。そして、識別精度比較部13は、算出した第1〜第4の場合の誤識別率の偏差を相互に比較する(ステップS212A〜ステップS215A)。
【0076】
(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の誤識別率の偏差が最も大きい場合には(ステップS212AでYES)、図5(A)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相を現在の設定値よりもマイナス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相を調整する(ステップS216)。
【0077】
(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の誤識別率の偏差が最も大きい場合には(ステップS213AでYES)、図5(B)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相を現在の設定値よりもプラス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相を調整する(ステップS217)。
【0078】
(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の誤識別率の偏差が最も大きい場合には(ステップS214AでYES)、図5(C)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−1の位相を現在の設定値よりもマイナス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相を調整する(ステップS218)。
【0079】
(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の誤識別率の偏差が最も大きい場合には(ステップS215AでYES)、図5(D)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−1の位相を現在の設定値よりもプラス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−1の位相を調整する(ステップS219)。
【0080】
上記の調整手順は、第1〜第4の場合の誤識別率の偏差が0になるまで(すなわち、ステップS212A〜S215Aの全てでNOとなるまで)繰返される。こうして遅延干渉計3−1,3−2の位相の設定値が最適値にロックされる。
【0081】
[実施の形態2の変形例2]
実施の形態2では、(0,0)(0,1)が誤って識別される確率が増加する場合に着目したが、(1,1)(1,0)が誤って識別される確率が増加する場合に着目してもよい。
【0082】
すなわち、図5(A)のように遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/4よりもプラス側にずれている場合には、(1,0)が(0,0)と誤って識別される第5の場合の確率が増加する。
【0083】
図5(B)のように遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/4よりもマイナス側にずれている場合には、(1,1)が(0,1)と誤って識別される第6の場合の確率が増加する。
【0084】
図5(C)のように遅延干渉計3−1の位相の設定値が+π/4よりもプラス側にずれている場合には、(1,1)が(1,0)と誤って識別される第7の場合の確率が増加する。
【0085】
図5(D)のように遅延干渉計3−1の位相の設定値が+π/4よりもマイナス側にずれている場合には、(1,0)が(1,1)と誤って識別される第8の場合の確率が増加する。したがって、上記の第5〜第8の場合の誤識別率を相互に比較することによって、図5(A)〜(D)のどの場合に該当するか、すなわち、位相の設定値が最適値よりもずれた遅延干渉計を特定することができる。
【0086】
図11は、実施の形態2の変形例2による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。図11のフローチャートは、前述の第1〜第4の場合の誤識別率にそれぞれ代えて、上記の第5〜第8の場合の誤識別率がそれぞれ用いられる点で、図9のフローチャートと異なる。図11のその他の点は、図9の場合と同じであるので同一または相当するステップには、同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0087】
[実施の形態2の変形例3]
実施の形態2の変形例1では、(0,0)(0,1)が誤って識別される確率の偏差が増加する場合に着目したが、(1,1)(1,0)が誤って識別される確率の偏差が増加する場合に着目してもよい。
【0088】
図12は、実施の形態2の変形例3による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。図12のフローチャートは、前述の第1〜第4の場合の誤識別率にそれぞれ代えて、上記の第5〜第8の場合の誤識別率がそれぞれ用いられる点で、図10のフローチャートと異なる。図12のその他の点は、図10の場合と同じであるので同一または相当するステップには、同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0089】
<実施の形態3>
図13は、本発明の実施の形態3による光受信装置102の構成を示すブロック図である。図13の光受信装置102は、実施の形態1で説明した出現頻度比較部9と、実施の形態2で説明した識別精度比較部13との両方を含む点で、実施の形態1,2による光受信装置100,101と異なる。判別部10は、出現頻度比較部9による比較結果と識別精度比較部13による比較結果との両方に基づいて、遅延干渉計3−1,3−2のうち位相の設定値が最適値よりもずれている遅延干渉計を特定するとともに、位相ずれを補正するために、特定した遅延干渉計の位相の設定値を現在の設定値よりも増加するのか減少するのかを判別する。図13において、出現頻度比較部9、識別精度比較部13、判別部10、および制御部11によって、遅延干渉計3−1,3−2のうち少なくとも1つの位相の設定値を調整する位相補正部15Cが構成される。図13のその他の点は図1、図8の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0090】
図14は、図13の出現頻度比較部9、識別精度比較部13、判別部10および制御部11による遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【0091】
図13、図14を参照して、ステップS301で、再生部7によって、受信した光信号LSから2ビットのデジタルデータが順次再生される。
【0092】
次に、出現頻度比較部9は、再生部7によって順次再生されたデータを、(0,0)(1,1)のビットパターンからなる第1グループと(0,1)(1,0)のビットパターンからなる第2グループとに分類し、いずれのグループの出現頻度のほうが大きいのか、グループごとの出現頻度を比較する(ステップS302,S303,S304)。
【0093】
(0,0)(1,1)の出現頻度のほうが大きい場合には(ステップS303でYES)、図5(A),(D)に該当する。この場合、識別精度比較部13は、(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率と、(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率とを比較する(ステップS305)。
【0094】
(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS306でYES)、図5(A)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相を現在の設定値よりもマイナス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相を調整する(ステップS307)。
【0095】
(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS306でNO)、図5(D)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−1の位相を現在の設定値よりもプラス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相を調整する(ステップS308)。
【0096】
一方、(0,1)(1,0)の出現頻度のほうが大きい場合には(ステップS304でYES)、図5(B),(C)の場合に該当する。この場合、識別精度比較部13は、(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率と、(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率とを比較する(ステップS309)。
【0097】
(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS310でYES)、図5(B)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相を現在の設定値よりもプラス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相を調整する(ステップS311)。
【0098】
(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS310でNO)、図5(C)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−1の位相を現在の設定値よりもマイナス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相を調整する(ステップS312)。
【0099】
上記の一連の手順による遅延干渉計3−1,3−2の位相の調整は、(0,1)(1,0)の出現頻度と(0,0)(1,1)の出現頻度とが等しくなるまで(ステップS303でNOかつステップS304でNOとなるまで)繰返される。こうして遅延干渉計3−1,3−2の位相の設定値が最適値にロックされる。
【0100】
出現頻度比較部9による出現頻度の比較および識別精度比較部13による誤識別率の比較を行なわない場合には、図5に示したA〜Dの4通りを順次試していく必要がある。このため、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整を開始してから最適値にロックするまでに比較的長時間を要することになる。これに対して、実施の形態3の光受信装置102によれば、位相が最適値からずれた遅延干渉計を特定することができるとともに、特定した遅延干渉計の位相を増加させるのか減少させるのかを判別することができる。この結果、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整に要する時間を従来よりも短縮することができる。さらに、各遅延干渉計の位相の設定値が最適値からずれるほど誤り率が増大するため、仮に出現頻度比較部9および識別精度比較部13による比較結果に基づいた位相調整を行なわない場合には、位相調整中に誤り率を劣化させる可能性があるが、本実施の形態の光受信装置102によれば誤り率の増加を抑制することができる。
【0101】
なお、図14のステップS305,S306では、第1の場合の誤識別率と第4の場合の誤識別率との比較を行なったが、これに代えて(1,0)が(0,0)と誤って識別される第5の場合の確率と、(1,0)が(1,1)と誤って識別される第8の場合の確率との比較を行なってもよい。さらに、図14のステップS310,S311では、第2の場合の誤識別率と第3の場合の誤識別率との比較を行なったが、これに代えて(1,1)が(0,1)と誤って識別される第6の場合の確率と、(1,1)が(1,0)と誤って識別される第7の場合の確率との比較を行なってもよい。
【0102】
光受信装置の特性の偏りなどが原因で、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたとしても、上記の第1、第2グループの出現頻度が互いに等しくならない場合、さらには上記の第1〜第4の場合の誤識別率が互いに等しくならない場合には、実施の形態1の変形例および実施の形態2の変形例1と同様の方法を用いることができる。すなわち、再生部7の再生データの誤り率が最小になるように遅延干渉計3−1,3−2の位相が調整された状態で、第1、第2グループの出現頻度と、第1〜第4の場合の誤識別率とがそれぞれ検出され記憶される。ステップS302〜S304では、第1、第2の各グループごとに、現時点での出現頻度と誤り率最小のときの出現頻度との偏差が算出され、算出された2個の出現頻度の偏差が相互に比較される。ステップS305,S306,S309,S310では、上記の第1〜第4の場合ごとに、現時点での誤識別率と誤り率最小のときの誤識別率との偏差が算出され、算出された4個の誤識別率の偏差が相互に比較される。
【0103】
<実施の形態4>
実施の形態4では、遅延干渉計3−1,3−2の両方の位相がずれている場合を考慮したときの位相調整方法について説明する。光受信装置の構成は、図8で示した実施の形態2の場合と同様である。
【0104】
図15は、遅延干渉計3−1,3−2の両方の位相がずれている場合の識別精度の変化を説明するための図である。図15に示すようにE〜Hの4通りが考えられる。
【0105】
まず、図15(E)の場合、すなわち、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもプラス側にずれ(図3のA)、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもプラス側にずれた(図4のC)場合について説明する。この場合、(0,0)の上位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなり、下位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなる。したがって、(0,0)が(0,1)と誤って識別される確率が増加する。同様に、図15(E)の場合には、(0,1)が(1,1)と誤って識別される確率が増加し、(1,1)が(1,0)と誤って識別される確率が増加し、(1,0)が(0,0)と誤って識別される確率が増加する。
【0106】
次に、図15(F)の場合、すなわち、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもマイナス側にずれ(図3のB)、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもマイナス側にずれた(図4のD)場合について説明する。この場合、(0,0)の上位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなり、下位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなる。したがって、(0,0)が(1,0)と誤って識別される確率が増加する。同様に、図15(F)の場合には、(0,1)が(0,0)と誤って識別される確率が増加し、(1,1)が(0,1)と誤って識別される確率が増加し、(1,0)が(1,1)と誤って識別される確率が増加する。
【0107】
次に、図15(G)の場合、すなわち、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもプラス側にずれ(図3のA)、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもマイナス側にずれた(図4のD)場合について説明する。この場合、(0,0)の上位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなり、下位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなる。したがって、(0,0)が(0,0)と正しく識別される確率がより増加する。同様に、図15(G)の場合には、(0,1)が(1,0)と誤って識別される確率が増加し、(1,1)が(1,1)と正しく識別される確率がより増加し、(1,0)が(0,1)と誤って識別される確率が増加する。
【0108】
次に、図15(H)の場合、すなわち、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもマイナス側にずれ(図3のB)、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもプラス側にずれた(図4のC)場合について説明する。この場合、(0,0)の上位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなり、下位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなる。したがって、(0,0)が(1,1)と誤って識別される確率が増加する。同様に、図15(H)の場合には、(0,1)が(0,1)と正しく識別される確率がより増加し、(1,1)が(0,0)と誤って識別される確率が増加し、(1,0)が(1,0)と正しく識別される確率がより増加する。
【0109】
図16は、図5のA〜Dの場合と図15のE〜Hの場合とを考慮したときの遅延干渉計3−1,3−2の位相のずれ方の判別方法について説明するための図である。
【0110】
図16を参照して、図8の識別精度比較部13は、誤り訂正部8による訂正結果に基づいて、
・(0,0)が(1,1)と誤って識別される確率
・(0,0)が(1,0)と誤って識別される確率
・(0,0)が(0,1)と誤って識別される確率
・(0,1)が(1,0)と誤って識別される確率
・(0,1)が(1,1)と誤って識別される確率
・(0,1)が(0,0)と誤って識別される確率
を相互に比較する。
【0111】
(0,0)が(1,1)と誤って識別される確率が最も高い場合には、図8の判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもマイナス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもプラス側にずれている(図15(H))と判別する。
【0112】
(0,0)が(1,0)と誤って識別される確率が最も高い場合には、図5(B)または図15(F)に該当する。そこで、識別精度比較部13は、(0,1)が(0,0)と誤って識別される確率と、(1,1)が(0,1)と誤って識別される確率とをさらに比較する。(0,1)が(0,0)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもマイナス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもマイナス側にずれている(図15(F))と判別する。(1,1)が(0,1)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもマイナス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が最適である(図5(B))と判別する。
【0113】
(0,0)が(0,1)と誤って識別される確率が最も高い場合には、図5(C)または図15(E)に該当する。そこで、識別精度比較部13は、(0,1)が(1,1)と誤って識別される確率と、(1,1)が(1,0)と誤って識別される確率とをさらに比較する。(0,1)が(1,1)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもプラス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもプラス側にずれている(図15(E))と判別する。(1,1)が(1,0)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が最適であり、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもプラス側にずれている(図5(C))と判別する。
【0114】
(0,1)が(1,0)と誤って識別される確率が最も高い場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもプラス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもマイナス側にずれている(図15(G))と判別する。
【0115】
(0,1)が(1,1)と誤って識別される確率が最も高い場合には、図5(A)または図15(E)に該当する。そこで、識別精度比較部13は、(0,0)が(0,1)と誤って識別される確率と、(1,0)が(0,0)と誤って識別される確率とをさらに比較する。(0,0)が(0,1)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもプラス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもプラス側にずれている(図15(E))と判別する。(1,0)が(0,0)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもプラス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が最適である(図5(A))と判別する。
【0116】
(0,1)が(0,0)と誤って識別される確率が最も高い場合には、図5(D)または図15(F)に該当する。そこで、識別精度比較部13は、(0,0)が(1,0)と誤って識別される確率と、(1,0)が(1,1)と誤って識別される確率とをさらに比較する。(0,0)が(1,0)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもマイナス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもマイナス側にずれている(図15(F))と判別する。(1,0)が(1,1)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が最適であり、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもマイナス側にずれている(図5(D))と判別する。
【0117】
判別部10は、上記の判別手順によって、位相の設定値が最適値よりもずれた遅延干渉計を特定することができ、特定した遅延干渉計の位相を増加させるのか減少させるのかを判別することができる。そして、上記手順で比較した各パターンの確率が等しくなるまで、遅延干渉計の位相の調整を繰返すことによって、位相の設定値を最適値に調整することができる。
【0118】
上記の判別手順を実行しない場合には、図5(A)〜(D)と図15(E)〜(H)の合計8通りを順次試していく必要がある。このため、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整を開始してから最適値にロックするまでに比較的長時間を要することになる。これに対して、実施の形態4の光検出装置によれば、位相が最適値からずれた遅延干渉計を特定することができるとともに、特定した遅延干渉計の位相を増加させるのか減少させるのかを判別することができるので、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整に要する時間を従来よりも短縮することができる。さらに、各遅延干渉計の位相の設定値が最適値からずれるほど誤り率が増大するため、仮に上記の判別手順によらない場合には位相調整中に誤り率を劣化させる可能性があるが、実施の形態4の場合には上記の判別手順を実行することによって誤り率の増加を抑制することができる。
【0119】
上記の実施の形態4では、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたときには、各場合の誤識別率が互いに等しくなることを前提としていた。光受信装置の特性の偏りなどが原因で、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたとしても、各場合の誤識別率が互いに等しくならない場合には、実施の形態2の変形例1の場合と同様の方法を用いるのがよい。すなわち、再生部7で再生されたデータの誤り率が最小になるように遅延干渉計3−1,3−2の位相が調整された状態で、図16の各場合の誤識別率が予め検出され記憶される。そして、図16の各場合ごとに、現時点で検出された誤識別率と、誤り率最小のときに検出された誤識別率との偏差が算出され、算出された複数の誤識別率の偏差が相互に比較される。
【0120】
なお、実施の形態4では、ビットパターンが誤って識別される誤識別率が増加する場合について着目し、算出した各場合の誤識別率を相互に比較した。これに対して、ビットパターンが正しく識別される確率が増加する場合について着目し、正しく識別される確率を各ビットパターンごとに比較してもよい。
【0121】
<実施の形態5>
実施の形態1〜4では、差動M相位相シフト変調方式(M=2Nであって、Nは2以上の自然数)において、N=2の場合、すなわちDQPSK変調方式について説明したが、この発明は、N=2に限らず、Nが2以上である任意の自然数の場合に適用可能である。実施の形態5では、N=3の場合、すなわちD8PSK(Differential 8-Phase Shift Keying)変調方式の場合について簡単に説明する。
【0122】
図17は、この発明の実施の形態5による光受信装置103の構成を示すブロック図である。図17を参照して、光受信装置は、平面光回路1と、バランス検波器(ツインPD)4A,4B,4C,4Dと、トランスインピーダンスアンプ5−1,5−2,5−3,5−4と、CDR回路6−1,6−2,6−3,6−4と、再生部7と、誤り訂正部8と、識別精度比較部13と、判別部10と、制御部11とを含む。平面光回路1は、光受信装置103に入力された光信号LSを4分岐する分岐部2と、分岐された光信号が個別に入力される遅延干渉計3−1,3−2,3−3,3−4とを含む。遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相は+3π/8に設定される。遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相は−π/8に設定される。遅延干渉計3−3に設けられた移相器12−3の位相は+π/8に設定される。遅延干渉計3−4に設けられた移相器12−4の位相は−3π/8に設定される。識別精度比較部13、判別部10、および制御部11によって、遅延干渉計3−1〜3−4のうち少なくとも1つの位相の設定値を調整する位相補正部15Dが構成される。
【0123】
なお、図17の光受信装置103は、図8の光受信装置101に設けられた遅延干渉計、ツインPD、トランスインピーダンスアンプ、およびCDR回路の各個数を2個から4個の増加したものであり、各構成要素の機能は既に説明したとおりである。以下の説明では、図1、図8の光受信装置100,101と同一または相当する部分については同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0124】
図18は、ツインフォトダイオード4A,4B,4C,4Dの出力について説明するための図である。D8PSK方式では、隣接シンボル間の位相差が0,π/4,π/2,3π/4,π,5π/4,3π/2,7π/4の8通りある。これらの位相差に対応して、3ビットのビットパターン(0,0,1)(0,0,0)(1,0,0)(1,0,1)(1,1,1)(1,1,0)(0,1,0)(0,1,1)がそれぞれ割り当てられるものとする。
【0125】
図18を参照して、遅延干渉計3−1の場合には、隣接シンボル間の位相差に対して+3π/8が加算される。したがって、加算後の位相差Δφは、3π/8,5π/8,7π/8,9π/8,11π/8,13π/8,15π/8,17π/8となる。ツインPD4Aから出力される光電流は、+3π/8シフト後の位相差Δφを前述の式(1)に代入して得られた値に比例する。ツインPD4B,4C,4Dについても同様である。
【0126】
図19は、図17の各遅延干渉計に設けられた移相器による位相のシフト量とツインPDの差動出力との関係を示す図である。図19では、3ビットのビットパターン(0,0,1)(0,0,0)(1,0,0)(1,0,1)(1,1,1)(1,1,0)(0,1,0)(0,1,1)の各々に対して、ツインPDの出力の計算結果が示される。以下、図17、図19を参照して、各遅延干渉計に設けられた移相器の設定値が最適値よりずれた場合に、3ビットデータの識別精度がどのように変化について説明する。
【0127】
(i) 遅延干渉計3−1の位相の設定値が+3π/8よりも増加した場合、(0,0,0)に着目すると、ツインPD4Aの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,0,0)および(1,0,1)に(0,0,0)が誤って識別される確率が増加する。
【0128】
(ii) 遅延干渉計3−1の位相の設定値が+3π/8よりも減少した場合、(1,1,1)に着目すると、ツインPD4Aの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,0,0)および(1,0,1)に(1,1,1)が誤って識別される確率が増加する。
【0129】
(iii) 遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/8よりも増加した場合、(1,0,1)に着目すると、ツインPD4Bの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,1,1)および(1,1,0)に(1,0,1)が誤って識別される確率が増加する。
【0130】
(iv) 遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/8よりも減少した場合、(0,1,0)に着目すると、ツインPD4Bの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,1,1)および(1,1,0)に(0,1,0)が誤って識別される確率が増加する。
【0131】
(v) 遅延干渉計3−3の位相の設定値が+π/8よりも増加した場合、(1,0,0)に着目すると、ツインPD4Cの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,0,1)および(1,1,1)に(1,0,0)が誤って識別される確率が増加する。
【0132】
(vi) 遅延干渉計3−3の位相の設定値が+π/8よりも減少した場合、(1,1,0)に着目すると、ツインPD4Cの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,0,1)および(1,1,1)に(1,1,0)が誤って識別される確率が増加する。
【0133】
(vii) 遅延干渉計3−4の位相の設定値が−3π/8よりも増加した場合、(1,1,1)に着目すると、ツインPD4Dの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,1,0)および(0,1,0)に(1,1,1)が誤って識別される確率が増加する。
【0134】
(viii) 遅延干渉計3−4の位相の設定値が−3π/8よりも減少した場合、(0,1,1)に着目すると、ツインPD4Dの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,1,0)および(0,1,0)に(0,1,1)が誤って識別される確率が増加する。
【0135】
したがって、上記の(i)〜(viii)の場合のうち、どの場合の確率が最も増加しているかを識別精度比較部13によって検出することによって、遅延干渉計3−1,3−2,3−3,3−4のうち位相の設定値が最適値よりもずれている遅延干渉計を特定するとともに、特定した遅延干渉計の位相ずれの方向(増加または減少)を判別することができる。たとえば、上記の場合(iv)、すなわち、(1,1,0)が(1,0,1)および(1,1,1)に誤って識別される確率が増加している場合には、図17の判別部10は、遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/8よりも減少していると判別する。
【0136】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0137】
1 平面光回路、2 分岐部、3−1〜3−4 遅延干渉計、4−1〜4−8 フォトダイオード、4A〜4D バランス検波器(ツインフォトダイオード)、5−1〜5−4 トランスインピーダンスアンプ、6−1〜6−4 CDR回路、7 再生部、8 誤り訂正部、9 出現頻度比較部、10 判別部、11 制御部、12−1〜12−4 移相器、13 識別精度比較部、15A〜15D 位相補正部、100〜103 光受信装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying:差動四相位相シフト変調)方式などの、差動M相位相シフト変調方式で変調された光信号を受信する光受信装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムにおいて、従来から強度変調方式が用いられてきたが、信号対雑音比の向上が困難なために近年の通信トラフィックの急増に対応しきれなくなってきた。そこで、信号対雑音比の向上が可能なDQPSK方式などの差動M相位相シフト変調方式が主流になりつつある。たとえばDQPSK方式では、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)に対して、位相0,π/2,π,3π/2が割り当てられ、先に送信した搬送波と次に送信する搬送波の位相を割り当てられた位相だけ変化させることで任意のビットパターンが送信される。
【0003】
差動M相位相シフト変調方式によって変調された光信号を受信側で復調するために、一般に遅延干渉計が用いられる。たとえば、特開2008−72555号公報(特許文献1)に記載された光受信装置は、可変分散補償器と、遅延干渉計と、復調部と、監視部と、設定部とを含む。可変分散補償器は、受信した光信号に対して可変な分散補償量によって分散補償を行なう。遅延干渉計は、可変分散補償器から出力された光信号を2つに分岐させ、一方の分岐成分を1シンボル遅延させ、他方の分岐成分を可変な位相量によって位相制御し、2つの分岐成分を干渉させる。復調部は、遅延干渉計から出力される干渉結果を電気信号に変換することによって復調する。監視部は、復調部から出力される復調電気信号の誤り率などのエラー状態を監視する。設定部は、エラー状態情報を監視しながら可変分散補償器の分散補償量と遅延干渉計の位相量とを交互に変化させることで、エラー状態が良好(たとえば、誤り率が最小)となる分散補償量および位相量を探索して設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−72555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、遅延干渉計の位相制御量は、光信号の波長レベルで精密に調整する必要があるため、適切な値に調整するまでには時間がかかる。上記の特開2008−72555号公報(特許文献1)に記載された光受信装置の場合には、記憶部に記憶された過去の設定値または他のチャネルの設定値などを利用することによって、適切な値に設定するまでの時間短縮が図られている。しかしながら、最も近い波長のチャネルの設定値を初期値として利用できたとしても、その後は、誤り率が最小となるように試行錯誤的に位相を調整するので、最適値に位相を調整するまでに比較的長時間を要することになってしまっていた。さらには、位相調整中の段階では、かえって誤り率を劣化させる場合もあり得た。
【0006】
この発明の目的は、遅延干渉計の位相を最適値に調整する時間を従来よりも短縮することが可能な光受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は一局面において、M=2N(Nは2以上の整数)である差動M相位相シフト変調方式によって変調された光信号を受信する光受信装置であって、分岐部と、M/2組の遅延干渉計と、M/2組のバランス検波器と、再生部と、誤り訂正部と、位相補正部とを備える。分岐部は、受信した光信号をM/2個に分岐する。各遅延干渉計は、分岐部で分岐された光信号が個別に入力され、入力された光信号を2つの分岐成分に分岐し、分岐した一方の分岐成分を他方の分岐成分に対して1シンボル遅延させるとともにいずれか一方の分岐成分の位相を設定された位相だけシフトさせ、その後、両分岐成分を結合して出力する。M/2組のバランス検波器は、M/2組の遅延干渉計にそれぞれ対応し、各々が対応の遅延干渉計の出力を検波する。再生部は、M/2組のバランス検波器の出力に基づいて、Nビットのデータを順次再生する。誤り訂正部は、再生部によって順次再生されたNビットのデータの誤り訂正を行なう。位相補正部は、少なくとも一部のビットパターンについて、各ビットパターンが別の1または複数のビットパターンに誤って識別される確率である誤識別率を、誤り訂正部の訂正結果に基づいて検出し、検出したビットパターンの誤識別率に基づいて、M/2組の遅延干渉計のうち少なくとも1つの位相の設定値を補正する。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、誤り訂正部の訂正結果に基づいて検出されたビットパターンの誤識別率に基づいて、遅延干渉計の位相の設定値が補正されるので、各遅延干渉計の位相を最適値に調整する時間を従来よりも短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1による光受信装置100の構成を示すブロック図である。
【図2】ツインフォトダイオード4A,4Bの出力について説明するための図である。
【図3】遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2によるシフト量と、ツインPD4Bの差動出力との関係を示す図である。
【図4】遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1によるシフト量と、ツインPD4Aの差動出力との関係を示す図である。
【図5】移相器12−1,12−2の位相がそれぞれ+π/4,−π/4からずれた場合における各ビットパターンの識別精度の変化および出現頻度の変化をまとめたものである。
【図6】図1の出現頻度比較部9、判別部10および制御部11による遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態1の変形例による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態2による光受信装置101の構成を示すブロック図である。
【図9】図8の識別精度比較部13、判別部10および制御部11による遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態2の変形例1による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2の変形例2による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態2の変形例3による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態3による光受信装置102の構成を示すブロック図である。
【図14】図13の出現頻度比較部9、識別精度比較部13、判別部10および制御部11による遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【図15】遅延干渉計3−1,3−2の両方の位相がずれている場合の識別精度の変化を説明するための図である。
【図16】図5のA〜Dの場合と図15のE〜Hの場合とを考慮したときの遅延干渉計3−1,3−2の位相のずれ方の判別方法について説明するための図である。
【図17】この発明の実施の形態5による光受信装置103の構成を示すブロック図である。
【図18】ツインフォトダイオード4A,4B,4C,4Dの出力について説明するための図である。
【図19】図17の各遅延干渉計に設けられた移相器による位相のシフト量とツインPDの差動出力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0011】
<実施の形態1>
この発明は、差動M相位相シフト変調方式(M=2Nであって、Nは2以上の自然数)を用いて、Nビットの送信データで変調された光信号を受信する光受信装置に適用可能である。以下では、M=4(N=2)の場合、つまりDQPSK変調方式を用いて、2ビットの送信データで変調された光信号を受信する場合について説明する。
【0012】
[光受信装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態1による光受信装置100の構成を示すブロック図である。図1を参照して、光受信装置100は、平面光回路1と、バランス検波器4A,4Bと、トランスインピーダンスアンプ5−1,5−2と、クロック・データ・リカバリ(CDR:Clock Data Recovery)回路6−1,6−2と、再生部7と、誤り訂正部8と、出現頻度比較部9と、判別部10と、制御部11とを含む。出現頻度比較部9、判別部10、および制御部11によって、遅延干渉計3−1,3−2のうち少なくとも1つの位相の設定値を調整する位相補正部15Aが構成される。なお、再生部7、誤り訂正部8、出現頻度比較部9、および判別部10は、たとえば、マイクロコンピュータを用いて実現することができる。
【0013】
平面光回路1は、分岐部2と、遅延干渉計3−1,3−2とを含む。平面光回路1において、光受信装置100に入力された光信号LSは分岐部2において2分岐され、2分岐された光信号は遅延干渉計3−1,3−2にそれぞれ入力される。なお、一般の差動M相位相シフト変調方式用の光受信装置の場合には、分岐部2において光信号LSはM/2個に分岐され、分岐後の信号光はM/2組の遅延干渉計に個別に入力される。バランス検波器は、遅延干渉計にそれぞれ対応してM/2組設けられる。
【0014】
遅延干渉計3−1に入力された光信号は、第1のアームと第2のアームとに分岐される。第1のアームの光路長は第2のアームの光路長よりも光信号のパルス時間間隔(1シンボル)に相当するτだけ長い。さらに、第2のアームに分岐された光信号成分の位相は、移相器(フェーズシフタ)12−1によって規定値である+π/4だけシフトされる。移相器12−1の位相は、+π/4に等しくなるように制御部11によって設定される。その後、第1アームと第2のアームとが近接することによって、両アームを通過する光信号成分は結合し、相互に干渉する。なお、移相器12−1を第1のアームに設けてもよく、この場合には、移相器12−1を通過する光信号の位相は、−π/4だけシフトされる。
【0015】
遅延干渉計3−2の構成は、遅延干渉計3−1の構成と同様である。ただし、遅延干渉計3−2の場合には、第2のアームに設けられた移相器12−2によって、第2のアームに分岐された光信号成分の位相は−π/4だけシフトされる。なお、移相器12−2を第1のアームに設けてもよく、この場合には、移相器12−2を通過する光信号の位相は、+π/4だけシフトされる。
【0016】
遅延干渉計3−1の出力はバランス検波器4Aに入力される。バランス検波器4Aは、直列接続されたフォトダイオード(PD:Photo-Diode)4−1,4−2(ツインフォトダイオードとも称する)を含む。フォトダイオード4−1,4−2は逆バイアスされている。これらのフォトダイオード4−1,4−2の差動出力がトランスインピーダンスアンプ5−1に入力される。同様に、遅延干渉計3−2の出力は、フォトダイオード4−3,4−4によって構成されるバランス検波器4Bに入力される。これらのフォトダイオード4−3,4−4の差動出力がトランスインピーダンスアンプ5−2に入力される。
【0017】
図2は、ツインフォトダイオード4A,4Bの出力について説明するための図である。DQPSK方式では、隣接シンボル間の位相差が0,π/2,π,3π/2の4通りあり、これらの位相差に対して2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)がそれぞれ割当てられる。
【0018】
図2を参照して、遅延干渉計3−1の場合には、隣接シンボル間の位相差に対して+π/4が加えられるので、加算後の位相差Δφは、π/4,3π/4,5π/4,7π/4となる。PD4−1に生成される光電流はcos2(Δφ/2)に比例し、PD4−2に生成される光電流はsin2(Δφ/2)に比例する。ツインPD4Aの差動出力はそれらの差、すなわち、
sin2(Δφ/2)−cos2(Δφ/2) …(1)
に比例する。
【0019】
遅延干渉計3−2の場合には、隣接シンボル間の位相差に対して−π/4が加えられるので、加算後の位相差Δφは、−π/4,π/4,3π/4,5π/4となる。ツインPD4Bの差動出力は、加算後の各位相差Δφを上式(1)に代入することによって得られる値に比例する。
【0020】
ここで、たとえばツインPD4A,4Bの差動出力がマイナスの場合を0、プラスの場合を1として、遅延干渉計3−2,遅延干渉計3−1の順に出力データを並べると(すなわち、遅延干渉計3−2の出力を上位ビットとし、遅延干渉計3−1の出力を下位ビットとすると)、隣接シンボル位相差0,π/2,π,3π/2に対して(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)のビットパターンがそれぞれ復調されることになる。
【0021】
再び図1を参照して、各ビットパターンを実際に復調するために、トランスインピーダンスアンプ5−1,5−2は、ツインPD4A,4Bから出力された電流信号を電圧信号に変換し、変換後の電圧信号をCDR回路6−1,6−2にそれぞれ入力する。
【0022】
CDR回路6−1,6−2は、入力された電気信号からクロック信号を抽出し、当該クロック信号に同期して、電気信号を“1”か“0”に識別する。
【0023】
再生部7は、CDR回路6−1,6−2での識別結果に基づいて2ビットのデータを順次再生して出力する。
【0024】
誤り訂正部8は、CDR回路6−1,6−2での識別結果の誤りを、公知の誤り訂正技術を適用して訂正する。
【0025】
[遅延干渉計3−1,3−2の位相の設定値がずれた場合の出力変化]
図3は、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2によるシフト量と、ツインPD4Bの差動出力との関係を示す図である。
【0026】
図4は、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1によるシフト量と、ツインPD4Aの差動出力との関係を示す図である。図3、図4では、送信された2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)(隣接シンボル間の位相差0,π/2,π,3π/2にそれぞれ対応する)の各々に対してツインPDの出力の計算結果が示される。
【0027】
図1、図3を参照して、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相が−π/4に正確に設定されているとする。この場合、送信されたデータが(0,0)(0,1)(隣接シンボル間の位相差が0,π/2)のときには、ツインPD4Bの出力はマイナスとなるので、送信データの上位ビットは“0”と識別される。送信データが(1,1)(1,0)(隣接シンボル間の位相差がπ,3π/2)のときには、ツインPD4Bの出力はプラスとなるので、送信データの上位ビットは“1”と識別される。
【0028】
これに対して、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相の設定値が−π/4よりもプラス側へずれた場合には(図3のA)、各送信データの上位ビットが“0”または“1”に識別される確率は次のように変化する。すなわち、送信データが(0,0)(位相差が0)のときにはツインPD4Bの差動出力はよりマイナスに変化するために、送信データの上位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなる。送信データが(0,1)(位相差がπ/2)のときにはツインPD4Bの差動出力はプラス方向に変化するために、送信データの上位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなる。送信データが(1,1)(位相差がπ)のときにはツインPD4Bの差動出力はよりプラスに変化するために、送信データの上位ビットは“1”と正しく識別される確率がより高くなる。送信データが(1,0)(位相差が3π/2)のときにはツインPD4Bの差動出力はマイナス方向に変化するために、送信データの上位ビットは“0”と誤って識別される確率が高くなる。
【0029】
上記の結果、本来、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)が等確率で現れるのに対して、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相が−π/4よりもプラス側へずれた場合には、(0,0)(1,1)の現れる確率が高くなる。
【0030】
同様に、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相が−π/4よりもマイナス側へずれた場合には(図3のB)、各送信データの上位ビットが“0”または“1”に識別される確率は次のように変化する。すなわち、送信データが(0,0)(位相差が0)のときにはツインPD4Bの差動出力はプラス方向に変化するために、送信データの上位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなる。送信データが(0,1)(位相差がπ/2)のときにはツインPD4Bの差動出力はよりマイナスに変化するために、送信データの上位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなる。送信データが(1,1)(位相差がπ)のときにはツインPD4Bの差動出力はマイナス方向に変化するために、送信データの上位ビットは“0”と誤って識別される確率が高くなる。送信データが(1,0)(位相差が3π/2)のときにはツインPD4Bの差動出力はよりプラスに変化するために、送信データの上位ビットは“1”と正しく識別される確率がより高くなる。
【0031】
上記の結果、本来、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)が等確率で現れるのに対して、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相が−π/4よりもマイナス側へずれた場合には、(0,1)(1,0)の現れる確率が高くなる。
【0032】
次に図1、図4を参照して、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相が+π/4に正確に設定されているとする。この場合、送信されたデータが(0,0)(1,0)(隣接シンボル間の位相差が0,3π/2)のときには、ツインPD4Aの出力はマイナスとなり、送信データの下位ビットは“0”と識別される。送信データが(0,1)(1,1)(隣接シンボル間の位相差がπ/2,π)のときには、ツインPD4Aの出力はプラスとなり、送信データの下位ビットは“1”と識別される。
【0033】
これに対して、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相が+π/4よりもプラス側へずれた場合には(図4のC)、各送信データの下位ビットが“0”または“1”に識別される確率は次のように変化する。すなわち、送信データが(0,0)(位相差が0)のときにはツインPD4Aの差動出力はプラス方向に変化するために、送信データの下位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなる。送信データが(0,1)(位相差がπ/2)のときにはツインPD4Aの差動出力はよりプラスに変化するために、送信データの下位ビットは“1”と正しく識別される確率がより高くなる。送信データが(1,1)(位相差がπ)のときにはツインPD4Aの差動出力はマイナス方向に変化するために、送信データの下位ビットは“0”と誤って識別される確率が高くなる。送信データが(1,0)(位相差が3π/2)のときにはツインPD4Aの差動出力はよりマイナスに変化するために、送信データの下位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなる。
【0034】
上記の結果、本来、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)が等確率で現れるのに対して、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相が+π/4よりもプラス側へずれた場合には、(0,1)(1,0)の現れる確率が高くなる。
【0035】
同様に、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相が+π/4よりもマイナス側へずれた場合には(図4のD)、各送信データの下位ビットが“0”または“1”に識別される確率は次のように変化する。すなわち、送信データが(0,0)(位相差が0)のときにはツインPD4Aの差動出力はよりマイナスに変化するために、送信データの下位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなる。送信データが(0,1)(位相差がπ/2)のときにはツインPD4Aの差動出力はマイナス方向に変化するために、送信データの下位ビットは“0”と誤って識別される確率が高くなる。送信データが(1,1)(位相差がπ)のときにはツインPD4Aの差動出力はよりプラスに変化するために、送信データの下位ビットは“1”と正しく識別される確率がより高くなる。送信データが(1,0)(位相差が3π/2)のときにはツインPD4Aの差動出力はプラス方向に変化するために、送信データの下位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなる。
【0036】
上記の結果、本来、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)が等確率で現れるのに対して、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相が+π/4よりもマイナス側へずれた場合には、(0,0)(1,1)の現れる確率が高くなる。
【0037】
図5は、移相器12−1,12−2の位相がそれぞれ+π/4,−π/4からずれた場合における各ビットパターンの識別精度の変化および出現頻度の変化をまとめたものである。
【0038】
図5を参照して、移相器12−1,12−2によって設定される位相のずれ方は、図3に示したA,Bの場合と図4に示したC,Dの場合との4通りある。A,Dの場合には(0,0)(1,1)のビットパターンが現れる確率が増加し、B,Cの場合には(0,1)(1,0)のピットパターンが現れる確率が増加する。
【0039】
[出現頻度比較部9、判別部10および制御部11の動作]
図6は、図1の出現頻度比較部9、判別部10および制御部11による遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。以下、図1、図6を参照して、出現頻度比較部9、判別部10および制御部11の動作について詳しく説明する。
【0040】
まずステップS110で、再生部7によって、受信した光信号LSから2ビットのデジタルデータが再生される。通常の信号では、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されているときには、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)の各々は等確率で現れる。実際の信号に代えて、(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)の各ビットパターンが等確率で現れるテストデータを用いてもよい。
【0041】
次に、出現頻度比較部9は、再生部7によって順次再生されたデータを、(0,0)(1,1)のビットパターンからなる第1グループと、(0,1)(1,0)のビットパターンからなる第2グループとに分類する。そして、出現頻度比較部9は、いずれのグループの出現頻度のほうが大きいのか、グループごとの出現頻度を比較する(ステップS120,S130,S140)。なお、各ビットパターンの出現頻度を個別に比較して、4つのビットパターンのうち出現頻度の大きい2個のビットパターンを選択するようにしても構わない。
【0042】
判別部10は、出現頻度比較部9による比較結果に基づいて、現在の位相の設定値が最適値よりもずれている可能性のある遅延干渉計について、位相ずれを補正するために、現在の位相の設定値よりも増加するのか減少するのかを判別する。具体的な手順は以下のとおりである。なお、上記の第1、第2グループの出現頻度を比較するだけでは、遅延干渉計3−1,3−2のうち、どちらの遅延干渉計の位相がずれているのかまでは特定することができない。
【0043】
(0,0)(1,1)の出現頻度のほうが大きい場合には(ステップS130でYES)、図5(A),(D)のいずれかの場合に該当する。そこで、判別部10は、遅延干渉計3−1,3−2の一方を選択する。判別部10は、遅延干渉計3−1を選択した場合には、移相器12−1の位相をプラス側にずらすように制御部11に指令する。判別部10は、遅延干渉計3−2を選択した場合には、移相器12−2の位相をマイナス側にずらすように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10からの指令に従って、判別部10によって選択された遅延干渉計の位相の設定値を、現在の設定値から増加または減少させる(ステップS150)。
【0044】
逆に(0,1)(1,0)の出現頻度のほうが大きい場合には(ステップS140でYES)、図5(B),(C)のいずれかの場合に該当する。そこで、判別部10は、遅延干渉計3−1,3−2の一方を選択する。判別部10は、遅延干渉計3−1を選択した場合には、移相器12−1の位相をマイナス側にずらすように制御部11に指令する。判別部10は、遅延干渉計3−2を選択した場合には、移相器12−2の位相をプラス側にずらすように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10からの指令に従って、判別部10によって選択された遅延干渉計の位相の設定値を、現在の設定値から増加または減少させる(ステップS160)。
【0045】
ステップS150またはS160が実行された後に、ステップS110からの手順が再び実行される。前回のステップS150で遅延干渉計3−1の位相をプラス側にずらすように調整したにも拘らず、(0,0)(1,1)の出現頻度がさらに増加した場合には、判別部10は、今回のステップS150では、もう一方の遅延干渉計3−2を選択し、移相器12−2の位相をマイナス側にずらずように制御部11に指令する。逆に、前回のステップS150で遅延干渉計3−2の位相をマイナス側にずらすように調整したにも拘らず、(0,0)(1,1)の出現頻度がさらに増加した場合には、判別部10は、今回のステップS150では、もう一方の遅延干渉計3−1を選択し、移相器12−1の位相をプラス側にずらずように制御部11に指令する。
【0046】
同様に、前回のステップS160で遅延干渉計3−1の位相をマイナス側にずらすように調整したにも拘らず、(0,1)(1,0)の出現頻度がさらに増加した場合には、判別部10は、今回のステップS160では、もう一方の遅延干渉計3−2を選択し、移相器12−2の位相をプラス側にずらずように制御部11に指令する。逆に、前回のステップS160で遅延干渉計3−2の位相をプラス側にずらすように調整したにも拘らず、(0,1)(1,0)の出現頻度がさらに増加した場合には、判別部10は、今回のステップS160では、もう一方の遅延干渉計3−1を選択し、移相器12−1の位相をマイナス側にずらずように制御部11に指令する。
【0047】
上記の一連の手順による遅延干渉計3−1,3−2の位相の調整は、(0,1)(1,0)の出現頻度と(0,0)(1,1)の出現頻度とが等しくなるまで(ステップS130でNOかつステップS140でNOとなるまで)繰返される。こうして遅延干渉計3−1,3−2の位相の設定値が最適値にロックされる。
【0048】
出現頻度比較部9によってグループごとの出現頻度を相互に比較しない場合には、図5に示したA〜Dの4通りを順次試していく必要がある。このため、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整を開始してから最適値にロックするまでに比較的長時間を要することになる。これに対して、実施の形態1による光受信装置100のように、第1グループ(0,0)(1,1)の出現頻度が大きいのか、第2グループ(0,0)(1,1)の出現頻度が大きいのかを判別することによって、図5に示したA〜Dの4通りの位相の設定値のずれ方を2通りの場合に絞ることができる。この結果、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整に要する時間を短縮することができる。
【0049】
[実施の形態1の変形例]
上記の実施の形態1では、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたときには、2ビットのビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)の各々が等確率で現れることを前提としていた。この変形例では、光受信装置の特性の偏りなどが原因で、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたとしても、(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)の各々の出現頻度が等しくならない場合について説明する。
【0050】
図7は、実施の形態1の変形例による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【0051】
図1、図7を参照して、まず始めに、予め再生部7で順次再生されたデータの誤り率が最小になるように遅延干渉計3−1,3−2の位相が調整される。誤り率は、誤り訂正部8に入力されるデータ総数に対する、誤っていたデータ数の割合で表される。この初回の位相調整のみは、従来の方法で行なわれる。出現頻度比較部9は、このように誤り率が最小となるように調整された状態で、第1グループ(0,0)(1,1)の出現頻度と第2グループ(0,1)(1,0)の出現頻度とを検出し、これらの出現頻度を基準値として記憶する(ステップS105)。
【0052】
次に、再生部7によって、現時点で受信した光信号LSから2ビットのデジタルデータが再生される(ステップS110)。
【0053】
出現頻度比較部9は、現在の受信信号から再生されたデータを用いて第1および第2のグループの出現頻度を検出し、グループごとに、現時点での出現頻度と予め記憶された誤り率最小のときの出現頻度との偏差を算出する(ステップS115)。そして、出現頻度比較部9は、第1グループ(0,0)(1,1)の出現頻度の偏差のほうが大きいのか、第2のグループ(0,1)(1,0)の出現頻度の偏差のほうが大きいのか、グループごとの出現頻度の偏差を比較する(ステップS120A,130A,S140A)。第1グループ(0,0)(1,1)の出現頻度の偏差のほうが大きい場合は(ステップS130AでYES)、図5(A),(D)の場合のいずれかに該当し、第2グループ(0,1)(1,0)の出現頻度の偏差のほうが大きい場合は(ステップS140AでYES)、図5(B),(C)の場合のいずれかに該当する。
【0054】
判別部10は、出現頻度比較部9による比較結果に基づいて、現在の位相の設定値が最適値よりもずれている可能性のある遅延干渉計について、位相ずれを補正するために、現在の位相の設定値よりも増加するのか減少するのかを判別する。具体的な手順は、図6のステップS150,S160と同様であるので、説明を繰返さない。なお、上記の第1、第2グループの出現頻度の偏差を比較するだけでは、遅延干渉計3−1,3−2のうち、どちらの遅延干渉計の位相がずれているのかまでは特定することができない。
【0055】
なお、差動M相位相変調方式では、各遅延干渉計で設定する位相がずれると、受信品質が低下し、誤り率の劣化が発生する。このため、各遅延干渉計の位相が精度良く調整された状態を維持しなければならない。各遅延干渉計の位相は、温度変化や経年等により変化するので、位相調整を継続的に行なう必要がある。この位相調整の際、上記のステップS105は初回のときだけ実行すればよいので、2回目以降については、現在の出現頻度のみを検出することによって、従来よりも短時間で遅延干渉計3−1,3−2の位相を調整することができる。
【0056】
<実施の形態2>
図8は、本発明の実施の形態2による光受信装置101の構成を示すブロック図である。図8の光受信装置101は、出現頻度比較部9に代えて識別精度比較部13を含む点で図1の光受信装置100と異なる。識別精度比較部13は、全ビットパターン(0,0)(0,1)(1,1)(1,0)のうち少なくとも一部のビットパターンについて、各ビットパターンが別の1または複数のビットパターンに誤って識別される確率である誤識別率を、誤り訂正部8の訂正結果に基づいて検出する。そして、識別精度比較部13は、検出した複数の誤識別率を相互に比較する。なお、識別精度比較部13、判別部10、および制御部11によって、遅延干渉計3−1,3−2のうち少なくとも1つの位相の設定値を調整する位相補正部15Bが構成される。
【0057】
具体的に、識別精度比較部13は、(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率と、(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率と、(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率と、(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率とを比較する。遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されている場合には、原理的にこれら第1〜第4の場合の確率は等しくなるはずであるが、位相がずれている場合にはこれらの確率は等しくならない。
【0058】
図5(A)のように遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/4よりもプラス側にずれている場合には、(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率が増加する。
【0059】
図5(B)のように遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/4よりもマイナス側にずれている場合には、(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率が増加する。
【0060】
図5(C)のように遅延干渉計3−1の位相の設定値が+π/4よりもプラス側にずれている場合には、(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率が増加する。
【0061】
図5(D)のように遅延干渉計3−1の位相の設定値が+π/4よりもマイナス側にずれている場合には、(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率が増加する。したがって、上記の第1〜第4の各場合の確率を比較することによって、図5(A)〜(D)のどの場合に該当するか、すなわち、位相の設定値が最適値よりもずれている遅延干渉計を特定するとともに、特定した遅延干渉計の位相の設定値がプラス側にずれているのか、マイナス側にずれているのかを判別することができる。この判別は、図8の判別部10によって行なわれる。図8のその他の点は図1の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0062】
図9は、図8の識別精度比較部13、判別部10および制御部11による遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【0063】
図8、図9を参照して、ステップS210で、再生部7によって、受信した光信号LSから2ビットのデジタルデータが順次再生される。再生されたデジタルデータの誤りは、誤り訂正部8によって公知の誤り訂正技術を用いて訂正される。
【0064】
次に、識別精度比較部13は、誤り訂正部8の訂正結果に基づいて、(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率と、(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率と、(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率と、(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率とを比較する(ステップS211)。
【0065】
(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS212でYES)、図5(A)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相を現在の設定値よりもマイナス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相を調整する(ステップS216)。
【0066】
(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS213でYES)、図5(B)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相を現在の設定値よりもプラス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相を調整する(ステップS217)。
【0067】
(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS214でYES)、図5(C)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−1の位相を現在の設定値よりもマイナス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相を調整する(ステップS218)。
【0068】
(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS215でYES)、図5(D)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−1の位相を現在の設定値よりもプラス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相を調整する(ステップS219)。
【0069】
上記の調整手順は、上記の第1〜第4の場合の確率が等しくなるまで(すなわち、ステップS212〜S215の全てでNOとなるまで)繰返される。こうして遅延干渉計3−1,3−2の位相の設定値が最適値にロックされる。
【0070】
識別精度比較部13によって第1〜第4の場合の誤識別率を相互に比較しない場合には、図5に示したA〜Dの4通りを順次試していく必要がある。このため、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整を開始してから最適値にロックするまでに比較的長時間を要することになる。これに対して、実施の形態2による光受信装置101のように、第1〜第4の場合の誤識別率をそれぞれ検出し、検出した複数の誤識別率を相互に比較することによって、位相が最適値からずれた遅延干渉計を特定することができるとともに、位相ずれを補正するために、特定した遅延干渉計の位相を増加させるのか減少させるのかを判別することができる。この結果、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整に要する時間を従来よりも短縮することができる。さらに、各遅延干渉計の位相の設定値が最適値からずれるほど誤り率が増大するため、仮に識別精度比較部13による比較結果に基づいた位相調整を行なわない場合には、位相調整中に誤り率を劣化させる可能性があるが、本実施の形態の光受信装置101によれば誤り率の増加を抑制することができる。
【0071】
[実施の形態2の変形例1]
上記の実施の形態1では、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたときには、上記の第1〜第4の場合の誤識別率が互いに等しくなることを前提としていた。この変形例では、光受信装置の特性の偏りなどが原因で、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたとしても、第1〜第4の場合の誤識別率が互いに等しくならない場合について説明する。
【0072】
図10は、実施の形態2の変形例1による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【0073】
図8、図10を参照して、まず始めに、予め再生部7で順次再生されたデータの誤り率が最小になるように遅延干渉計3−1,3−2の位相が調整される。この初回の位相調整のみは、従来の方法で行なわれる。識別精度比較部13は、このように誤り率が最小となるように調整された状態で、(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率と、(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率と、(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率と、(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率とを検出し、検出したこれらの4パターンの確率を記憶する(ステップS201)。
【0074】
次に、再生部7によって、受信した現時点での光信号LSから2ビットのデジタルデータが再生される(ステップS210)。
【0075】
次に、識別精度比較部13は、現時点での再生データに基づいて(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率(誤識別率)と、(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率と、(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率と、(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率とを検出する。識別精度比較部13は、第1〜第4の場合の各々について、ステップS201で記憶した誤り率が最小のときに検出された誤識別率と現在検出されている誤識別率との偏差を算出する(ステップS211A)。そして、識別精度比較部13は、算出した第1〜第4の場合の誤識別率の偏差を相互に比較する(ステップS212A〜ステップS215A)。
【0076】
(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の誤識別率の偏差が最も大きい場合には(ステップS212AでYES)、図5(A)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相を現在の設定値よりもマイナス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相を調整する(ステップS216)。
【0077】
(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の誤識別率の偏差が最も大きい場合には(ステップS213AでYES)、図5(B)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相を現在の設定値よりもプラス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相を調整する(ステップS217)。
【0078】
(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の誤識別率の偏差が最も大きい場合には(ステップS214AでYES)、図5(C)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−1の位相を現在の設定値よりもマイナス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相を調整する(ステップS218)。
【0079】
(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の誤識別率の偏差が最も大きい場合には(ステップS215AでYES)、図5(D)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−1の位相を現在の設定値よりもプラス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−1の位相を調整する(ステップS219)。
【0080】
上記の調整手順は、第1〜第4の場合の誤識別率の偏差が0になるまで(すなわち、ステップS212A〜S215Aの全てでNOとなるまで)繰返される。こうして遅延干渉計3−1,3−2の位相の設定値が最適値にロックされる。
【0081】
[実施の形態2の変形例2]
実施の形態2では、(0,0)(0,1)が誤って識別される確率が増加する場合に着目したが、(1,1)(1,0)が誤って識別される確率が増加する場合に着目してもよい。
【0082】
すなわち、図5(A)のように遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/4よりもプラス側にずれている場合には、(1,0)が(0,0)と誤って識別される第5の場合の確率が増加する。
【0083】
図5(B)のように遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/4よりもマイナス側にずれている場合には、(1,1)が(0,1)と誤って識別される第6の場合の確率が増加する。
【0084】
図5(C)のように遅延干渉計3−1の位相の設定値が+π/4よりもプラス側にずれている場合には、(1,1)が(1,0)と誤って識別される第7の場合の確率が増加する。
【0085】
図5(D)のように遅延干渉計3−1の位相の設定値が+π/4よりもマイナス側にずれている場合には、(1,0)が(1,1)と誤って識別される第8の場合の確率が増加する。したがって、上記の第5〜第8の場合の誤識別率を相互に比較することによって、図5(A)〜(D)のどの場合に該当するか、すなわち、位相の設定値が最適値よりもずれた遅延干渉計を特定することができる。
【0086】
図11は、実施の形態2の変形例2による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。図11のフローチャートは、前述の第1〜第4の場合の誤識別率にそれぞれ代えて、上記の第5〜第8の場合の誤識別率がそれぞれ用いられる点で、図9のフローチャートと異なる。図11のその他の点は、図9の場合と同じであるので同一または相当するステップには、同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0087】
[実施の形態2の変形例3]
実施の形態2の変形例1では、(0,0)(0,1)が誤って識別される確率の偏差が増加する場合に着目したが、(1,1)(1,0)が誤って識別される確率の偏差が増加する場合に着目してもよい。
【0088】
図12は、実施の形態2の変形例3による光受信装置において、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。図12のフローチャートは、前述の第1〜第4の場合の誤識別率にそれぞれ代えて、上記の第5〜第8の場合の誤識別率がそれぞれ用いられる点で、図10のフローチャートと異なる。図12のその他の点は、図10の場合と同じであるので同一または相当するステップには、同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0089】
<実施の形態3>
図13は、本発明の実施の形態3による光受信装置102の構成を示すブロック図である。図13の光受信装置102は、実施の形態1で説明した出現頻度比較部9と、実施の形態2で説明した識別精度比較部13との両方を含む点で、実施の形態1,2による光受信装置100,101と異なる。判別部10は、出現頻度比較部9による比較結果と識別精度比較部13による比較結果との両方に基づいて、遅延干渉計3−1,3−2のうち位相の設定値が最適値よりもずれている遅延干渉計を特定するとともに、位相ずれを補正するために、特定した遅延干渉計の位相の設定値を現在の設定値よりも増加するのか減少するのかを判別する。図13において、出現頻度比較部9、識別精度比較部13、判別部10、および制御部11によって、遅延干渉計3−1,3−2のうち少なくとも1つの位相の設定値を調整する位相補正部15Cが構成される。図13のその他の点は図1、図8の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0090】
図14は、図13の出現頻度比較部9、識別精度比較部13、判別部10および制御部11による遅延干渉計3−1,3−2の位相調整手順を示すフローチャートである。
【0091】
図13、図14を参照して、ステップS301で、再生部7によって、受信した光信号LSから2ビットのデジタルデータが順次再生される。
【0092】
次に、出現頻度比較部9は、再生部7によって順次再生されたデータを、(0,0)(1,1)のビットパターンからなる第1グループと(0,1)(1,0)のビットパターンからなる第2グループとに分類し、いずれのグループの出現頻度のほうが大きいのか、グループごとの出現頻度を比較する(ステップS302,S303,S304)。
【0093】
(0,0)(1,1)の出現頻度のほうが大きい場合には(ステップS303でYES)、図5(A),(D)に該当する。この場合、識別精度比較部13は、(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率と、(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率とを比較する(ステップS305)。
【0094】
(0,1)が(1,1)と誤って識別される第1の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS306でYES)、図5(A)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相を現在の設定値よりもマイナス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相を調整する(ステップS307)。
【0095】
(0,1)が(0,0)と誤って識別される第4の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS306でNO)、図5(D)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−1の位相を現在の設定値よりもプラス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相を調整する(ステップS308)。
【0096】
一方、(0,1)(1,0)の出現頻度のほうが大きい場合には(ステップS304でYES)、図5(B),(C)の場合に該当する。この場合、識別精度比較部13は、(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率と、(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率とを比較する(ステップS309)。
【0097】
(0,0)が(1,0)と誤って識別される第2の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS310でYES)、図5(B)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相を現在の設定値よりもプラス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相を調整する(ステップS311)。
【0098】
(0,0)が(0,1)と誤って識別される第3の場合の確率が最も大きい場合には(ステップS310でNO)、図5(C)に該当するので、判別部10は、遅延干渉計3−1の位相を現在の設定値よりもマイナス側にずらずように制御部11に指令する。制御部11は、判別部10の指令に従って、遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相を調整する(ステップS312)。
【0099】
上記の一連の手順による遅延干渉計3−1,3−2の位相の調整は、(0,1)(1,0)の出現頻度と(0,0)(1,1)の出現頻度とが等しくなるまで(ステップS303でNOかつステップS304でNOとなるまで)繰返される。こうして遅延干渉計3−1,3−2の位相の設定値が最適値にロックされる。
【0100】
出現頻度比較部9による出現頻度の比較および識別精度比較部13による誤識別率の比較を行なわない場合には、図5に示したA〜Dの4通りを順次試していく必要がある。このため、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整を開始してから最適値にロックするまでに比較的長時間を要することになる。これに対して、実施の形態3の光受信装置102によれば、位相が最適値からずれた遅延干渉計を特定することができるとともに、特定した遅延干渉計の位相を増加させるのか減少させるのかを判別することができる。この結果、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整に要する時間を従来よりも短縮することができる。さらに、各遅延干渉計の位相の設定値が最適値からずれるほど誤り率が増大するため、仮に出現頻度比較部9および識別精度比較部13による比較結果に基づいた位相調整を行なわない場合には、位相調整中に誤り率を劣化させる可能性があるが、本実施の形態の光受信装置102によれば誤り率の増加を抑制することができる。
【0101】
なお、図14のステップS305,S306では、第1の場合の誤識別率と第4の場合の誤識別率との比較を行なったが、これに代えて(1,0)が(0,0)と誤って識別される第5の場合の確率と、(1,0)が(1,1)と誤って識別される第8の場合の確率との比較を行なってもよい。さらに、図14のステップS310,S311では、第2の場合の誤識別率と第3の場合の誤識別率との比較を行なったが、これに代えて(1,1)が(0,1)と誤って識別される第6の場合の確率と、(1,1)が(1,0)と誤って識別される第7の場合の確率との比較を行なってもよい。
【0102】
光受信装置の特性の偏りなどが原因で、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたとしても、上記の第1、第2グループの出現頻度が互いに等しくならない場合、さらには上記の第1〜第4の場合の誤識別率が互いに等しくならない場合には、実施の形態1の変形例および実施の形態2の変形例1と同様の方法を用いることができる。すなわち、再生部7の再生データの誤り率が最小になるように遅延干渉計3−1,3−2の位相が調整された状態で、第1、第2グループの出現頻度と、第1〜第4の場合の誤識別率とがそれぞれ検出され記憶される。ステップS302〜S304では、第1、第2の各グループごとに、現時点での出現頻度と誤り率最小のときの出現頻度との偏差が算出され、算出された2個の出現頻度の偏差が相互に比較される。ステップS305,S306,S309,S310では、上記の第1〜第4の場合ごとに、現時点での誤識別率と誤り率最小のときの誤識別率との偏差が算出され、算出された4個の誤識別率の偏差が相互に比較される。
【0103】
<実施の形態4>
実施の形態4では、遅延干渉計3−1,3−2の両方の位相がずれている場合を考慮したときの位相調整方法について説明する。光受信装置の構成は、図8で示した実施の形態2の場合と同様である。
【0104】
図15は、遅延干渉計3−1,3−2の両方の位相がずれている場合の識別精度の変化を説明するための図である。図15に示すようにE〜Hの4通りが考えられる。
【0105】
まず、図15(E)の場合、すなわち、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもプラス側にずれ(図3のA)、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもプラス側にずれた(図4のC)場合について説明する。この場合、(0,0)の上位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなり、下位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなる。したがって、(0,0)が(0,1)と誤って識別される確率が増加する。同様に、図15(E)の場合には、(0,1)が(1,1)と誤って識別される確率が増加し、(1,1)が(1,0)と誤って識別される確率が増加し、(1,0)が(0,0)と誤って識別される確率が増加する。
【0106】
次に、図15(F)の場合、すなわち、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもマイナス側にずれ(図3のB)、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもマイナス側にずれた(図4のD)場合について説明する。この場合、(0,0)の上位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなり、下位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなる。したがって、(0,0)が(1,0)と誤って識別される確率が増加する。同様に、図15(F)の場合には、(0,1)が(0,0)と誤って識別される確率が増加し、(1,1)が(0,1)と誤って識別される確率が増加し、(1,0)が(1,1)と誤って識別される確率が増加する。
【0107】
次に、図15(G)の場合、すなわち、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもプラス側にずれ(図3のA)、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもマイナス側にずれた(図4のD)場合について説明する。この場合、(0,0)の上位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなり、下位ビットは“0”と正しく識別される確率がより高くなる。したがって、(0,0)が(0,0)と正しく識別される確率がより増加する。同様に、図15(G)の場合には、(0,1)が(1,0)と誤って識別される確率が増加し、(1,1)が(1,1)と正しく識別される確率がより増加し、(1,0)が(0,1)と誤って識別される確率が増加する。
【0108】
次に、図15(H)の場合、すなわち、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもマイナス側にずれ(図3のB)、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもプラス側にずれた(図4のC)場合について説明する。この場合、(0,0)の上位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなり、下位ビットは“1”と誤って識別される確率が高くなる。したがって、(0,0)が(1,1)と誤って識別される確率が増加する。同様に、図15(H)の場合には、(0,1)が(0,1)と正しく識別される確率がより増加し、(1,1)が(0,0)と誤って識別される確率が増加し、(1,0)が(1,0)と正しく識別される確率がより増加する。
【0109】
図16は、図5のA〜Dの場合と図15のE〜Hの場合とを考慮したときの遅延干渉計3−1,3−2の位相のずれ方の判別方法について説明するための図である。
【0110】
図16を参照して、図8の識別精度比較部13は、誤り訂正部8による訂正結果に基づいて、
・(0,0)が(1,1)と誤って識別される確率
・(0,0)が(1,0)と誤って識別される確率
・(0,0)が(0,1)と誤って識別される確率
・(0,1)が(1,0)と誤って識別される確率
・(0,1)が(1,1)と誤って識別される確率
・(0,1)が(0,0)と誤って識別される確率
を相互に比較する。
【0111】
(0,0)が(1,1)と誤って識別される確率が最も高い場合には、図8の判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもマイナス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもプラス側にずれている(図15(H))と判別する。
【0112】
(0,0)が(1,0)と誤って識別される確率が最も高い場合には、図5(B)または図15(F)に該当する。そこで、識別精度比較部13は、(0,1)が(0,0)と誤って識別される確率と、(1,1)が(0,1)と誤って識別される確率とをさらに比較する。(0,1)が(0,0)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもマイナス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもマイナス側にずれている(図15(F))と判別する。(1,1)が(0,1)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもマイナス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が最適である(図5(B))と判別する。
【0113】
(0,0)が(0,1)と誤って識別される確率が最も高い場合には、図5(C)または図15(E)に該当する。そこで、識別精度比較部13は、(0,1)が(1,1)と誤って識別される確率と、(1,1)が(1,0)と誤って識別される確率とをさらに比較する。(0,1)が(1,1)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもプラス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもプラス側にずれている(図15(E))と判別する。(1,1)が(1,0)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が最適であり、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもプラス側にずれている(図5(C))と判別する。
【0114】
(0,1)が(1,0)と誤って識別される確率が最も高い場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもプラス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもマイナス側にずれている(図15(G))と判別する。
【0115】
(0,1)が(1,1)と誤って識別される確率が最も高い場合には、図5(A)または図15(E)に該当する。そこで、識別精度比較部13は、(0,0)が(0,1)と誤って識別される確率と、(1,0)が(0,0)と誤って識別される確率とをさらに比較する。(0,0)が(0,1)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもプラス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもプラス側にずれている(図15(E))と判別する。(1,0)が(0,0)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもプラス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が最適である(図5(A))と判別する。
【0116】
(0,1)が(0,0)と誤って識別される確率が最も高い場合には、図5(D)または図15(F)に該当する。そこで、識別精度比較部13は、(0,0)が(1,0)と誤って識別される確率と、(1,0)が(1,1)と誤って識別される確率とをさらに比較する。(0,0)が(1,0)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が−π/4よりもマイナス側にずれ、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもマイナス側にずれている(図15(F))と判別する。(1,0)が(1,1)と誤って識別される確率のほうが大きい場合には、判別部10は、遅延干渉計3−2の位相が最適であり、遅延干渉計3−1の位相が+π/4よりもマイナス側にずれている(図5(D))と判別する。
【0117】
判別部10は、上記の判別手順によって、位相の設定値が最適値よりもずれた遅延干渉計を特定することができ、特定した遅延干渉計の位相を増加させるのか減少させるのかを判別することができる。そして、上記手順で比較した各パターンの確率が等しくなるまで、遅延干渉計の位相の調整を繰返すことによって、位相の設定値を最適値に調整することができる。
【0118】
上記の判別手順を実行しない場合には、図5(A)〜(D)と図15(E)〜(H)の合計8通りを順次試していく必要がある。このため、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整を開始してから最適値にロックするまでに比較的長時間を要することになる。これに対して、実施の形態4の光検出装置によれば、位相が最適値からずれた遅延干渉計を特定することができるとともに、特定した遅延干渉計の位相を増加させるのか減少させるのかを判別することができるので、遅延干渉計3−1,3−2の位相調整に要する時間を従来よりも短縮することができる。さらに、各遅延干渉計の位相の設定値が最適値からずれるほど誤り率が増大するため、仮に上記の判別手順によらない場合には位相調整中に誤り率を劣化させる可能性があるが、実施の形態4の場合には上記の判別手順を実行することによって誤り率の増加を抑制することができる。
【0119】
上記の実施の形態4では、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたときには、各場合の誤識別率が互いに等しくなることを前提としていた。光受信装置の特性の偏りなどが原因で、遅延干渉計3−1,3−2の位相が最適値に設定されたとしても、各場合の誤識別率が互いに等しくならない場合には、実施の形態2の変形例1の場合と同様の方法を用いるのがよい。すなわち、再生部7で再生されたデータの誤り率が最小になるように遅延干渉計3−1,3−2の位相が調整された状態で、図16の各場合の誤識別率が予め検出され記憶される。そして、図16の各場合ごとに、現時点で検出された誤識別率と、誤り率最小のときに検出された誤識別率との偏差が算出され、算出された複数の誤識別率の偏差が相互に比較される。
【0120】
なお、実施の形態4では、ビットパターンが誤って識別される誤識別率が増加する場合について着目し、算出した各場合の誤識別率を相互に比較した。これに対して、ビットパターンが正しく識別される確率が増加する場合について着目し、正しく識別される確率を各ビットパターンごとに比較してもよい。
【0121】
<実施の形態5>
実施の形態1〜4では、差動M相位相シフト変調方式(M=2Nであって、Nは2以上の自然数)において、N=2の場合、すなわちDQPSK変調方式について説明したが、この発明は、N=2に限らず、Nが2以上である任意の自然数の場合に適用可能である。実施の形態5では、N=3の場合、すなわちD8PSK(Differential 8-Phase Shift Keying)変調方式の場合について簡単に説明する。
【0122】
図17は、この発明の実施の形態5による光受信装置103の構成を示すブロック図である。図17を参照して、光受信装置は、平面光回路1と、バランス検波器(ツインPD)4A,4B,4C,4Dと、トランスインピーダンスアンプ5−1,5−2,5−3,5−4と、CDR回路6−1,6−2,6−3,6−4と、再生部7と、誤り訂正部8と、識別精度比較部13と、判別部10と、制御部11とを含む。平面光回路1は、光受信装置103に入力された光信号LSを4分岐する分岐部2と、分岐された光信号が個別に入力される遅延干渉計3−1,3−2,3−3,3−4とを含む。遅延干渉計3−1に設けられた移相器12−1の位相は+3π/8に設定される。遅延干渉計3−2に設けられた移相器12−2の位相は−π/8に設定される。遅延干渉計3−3に設けられた移相器12−3の位相は+π/8に設定される。遅延干渉計3−4に設けられた移相器12−4の位相は−3π/8に設定される。識別精度比較部13、判別部10、および制御部11によって、遅延干渉計3−1〜3−4のうち少なくとも1つの位相の設定値を調整する位相補正部15Dが構成される。
【0123】
なお、図17の光受信装置103は、図8の光受信装置101に設けられた遅延干渉計、ツインPD、トランスインピーダンスアンプ、およびCDR回路の各個数を2個から4個の増加したものであり、各構成要素の機能は既に説明したとおりである。以下の説明では、図1、図8の光受信装置100,101と同一または相当する部分については同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0124】
図18は、ツインフォトダイオード4A,4B,4C,4Dの出力について説明するための図である。D8PSK方式では、隣接シンボル間の位相差が0,π/4,π/2,3π/4,π,5π/4,3π/2,7π/4の8通りある。これらの位相差に対応して、3ビットのビットパターン(0,0,1)(0,0,0)(1,0,0)(1,0,1)(1,1,1)(1,1,0)(0,1,0)(0,1,1)がそれぞれ割り当てられるものとする。
【0125】
図18を参照して、遅延干渉計3−1の場合には、隣接シンボル間の位相差に対して+3π/8が加算される。したがって、加算後の位相差Δφは、3π/8,5π/8,7π/8,9π/8,11π/8,13π/8,15π/8,17π/8となる。ツインPD4Aから出力される光電流は、+3π/8シフト後の位相差Δφを前述の式(1)に代入して得られた値に比例する。ツインPD4B,4C,4Dについても同様である。
【0126】
図19は、図17の各遅延干渉計に設けられた移相器による位相のシフト量とツインPDの差動出力との関係を示す図である。図19では、3ビットのビットパターン(0,0,1)(0,0,0)(1,0,0)(1,0,1)(1,1,1)(1,1,0)(0,1,0)(0,1,1)の各々に対して、ツインPDの出力の計算結果が示される。以下、図17、図19を参照して、各遅延干渉計に設けられた移相器の設定値が最適値よりずれた場合に、3ビットデータの識別精度がどのように変化について説明する。
【0127】
(i) 遅延干渉計3−1の位相の設定値が+3π/8よりも増加した場合、(0,0,0)に着目すると、ツインPD4Aの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,0,0)および(1,0,1)に(0,0,0)が誤って識別される確率が増加する。
【0128】
(ii) 遅延干渉計3−1の位相の設定値が+3π/8よりも減少した場合、(1,1,1)に着目すると、ツインPD4Aの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,0,0)および(1,0,1)に(1,1,1)が誤って識別される確率が増加する。
【0129】
(iii) 遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/8よりも増加した場合、(1,0,1)に着目すると、ツインPD4Bの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,1,1)および(1,1,0)に(1,0,1)が誤って識別される確率が増加する。
【0130】
(iv) 遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/8よりも減少した場合、(0,1,0)に着目すると、ツインPD4Bの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,1,1)および(1,1,0)に(0,1,0)が誤って識別される確率が増加する。
【0131】
(v) 遅延干渉計3−3の位相の設定値が+π/8よりも増加した場合、(1,0,0)に着目すると、ツインPD4Cの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,0,1)および(1,1,1)に(1,0,0)が誤って識別される確率が増加する。
【0132】
(vi) 遅延干渉計3−3の位相の設定値が+π/8よりも減少した場合、(1,1,0)に着目すると、ツインPD4Cの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,0,1)および(1,1,1)に(1,1,0)が誤って識別される確率が増加する。
【0133】
(vii) 遅延干渉計3−4の位相の設定値が−3π/8よりも増加した場合、(1,1,1)に着目すると、ツインPD4Dの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,1,0)および(0,1,0)に(1,1,1)が誤って識別される確率が増加する。
【0134】
(viii) 遅延干渉計3−4の位相の設定値が−3π/8よりも減少した場合、(0,1,1)に着目すると、ツインPD4Dの出力は増加する。したがって、より差動出力の大きい(1,1,0)および(0,1,0)に(0,1,1)が誤って識別される確率が増加する。
【0135】
したがって、上記の(i)〜(viii)の場合のうち、どの場合の確率が最も増加しているかを識別精度比較部13によって検出することによって、遅延干渉計3−1,3−2,3−3,3−4のうち位相の設定値が最適値よりもずれている遅延干渉計を特定するとともに、特定した遅延干渉計の位相ずれの方向(増加または減少)を判別することができる。たとえば、上記の場合(iv)、すなわち、(1,1,0)が(1,0,1)および(1,1,1)に誤って識別される確率が増加している場合には、図17の判別部10は、遅延干渉計3−2の位相の設定値が−π/8よりも減少していると判別する。
【0136】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0137】
1 平面光回路、2 分岐部、3−1〜3−4 遅延干渉計、4−1〜4−8 フォトダイオード、4A〜4D バランス検波器(ツインフォトダイオード)、5−1〜5−4 トランスインピーダンスアンプ、6−1〜6−4 CDR回路、7 再生部、8 誤り訂正部、9 出現頻度比較部、10 判別部、11 制御部、12−1〜12−4 移相器、13 識別精度比較部、15A〜15D 位相補正部、100〜103 光受信装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
M=2N(Nは2以上の整数)である差動M相位相シフト変調方式によって変調された光信号を受信する光受信装置であって、
受信した光信号をM/2個に分岐する分岐部と、
前記分岐部で分岐された光信号が個別に入力され、各々が、入力された光信号を2つの分岐成分に分岐し、分岐した一方の分岐成分を他方の分岐成分に対して1シンボル遅延させるとともにいずれか一方の分岐成分の位相を設定された位相だけシフトさせ、その後、両分岐成分を結合して出力するM/2組の遅延干渉計と、
前記M/2組の遅延干渉計にそれぞれ対応し、各々が対応の遅延干渉計の出力を検波するM/2組のバランス検波器と、
前記M/2組のバランス検波器の出力に基づいて、Nビットのデータを順次再生する再生部と、
前記再生部によって順次再生されたNビットのデータの誤り訂正を行なう誤り訂正部と、
少なくとも一部のビットパターンについて、各ビットパターンが別の1または複数のビットパターンに誤って識別される確率である誤識別率を、前記誤り訂正部の訂正結果に基づいて検出し、検出したビットパターンの誤識別率に基づいて、前記M/2組の遅延干渉計のうち少なくとも1つの位相の設定値を補正する位相補正部とを備えた光受信装置。
【請求項2】
前記位相補正部は、
少なくとも一部のビットパターンについて各ビットパターンの誤識別率を検出し、検出した複数の誤識別率を相互に比較する識別精度比較部と、
位相の設定値が最適値からずれている可能性のある遅延干渉計について、位相の設定値を増加させるのか減少させるのかを、前記識別精度比較部の比較結果に基づいて判別する判別部とを含む、請求項1に記載の光受信装置。
【請求項3】
前記識別精度比較部は、前記少なくとも一部のビットパターンについて、前記再生部の再生データの誤り率が最小のときに検出された誤識別率と、現在の誤識別率との偏差を算出し、算出した複数の偏差を相互に比較する、請求項2に記載の光受信装置。
【請求項4】
前記位相補正部は、前記再生部の再生データから得られた各ビットパターンの出現頻度と、検出したビットパターンの誤識別率との両方に基づいて、前記M/2組の遅延干渉計のうち少なくとも1つの位相の設定値を補正する、請求項1に記載の光受信装置。
【請求項5】
M=2N(Nは2以上の整数)である差動M相位相シフト変調方式によって変調された光信号を受信する光受信装置であって、
受信した光信号をM/2個に分岐する分岐部と、
前記分岐部で分岐された光信号が個別に入力され、各々が、入力された光信号を2つの分岐成分に分岐し、分岐した一方の分岐成分を他方の分岐成分に対して1シンボル遅延させるとともにいずれか一方の分岐成分の位相を設定された位相だけシフトさせ、その後、両分岐成分を結合して出力するM/2組の遅延干渉計と、
前記M/2組の遅延干渉計にそれぞれ対応し、各々が対応の遅延干渉計の出力を検波するM/2組のバランス検波器と、
前記M/2組のバランス検波器の出力に基づいて、Nビットのデータを順次再生する再生部と、
前記再生部の再生データから得られた各ビットパターンの出現頻度に基づいて、前記M/2組の遅延干渉計のうち少なくとも1つの位相の設定値を補正する位相補正部とを備えた光受信装置。
【請求項6】
前記位相補正部は、
各ビットパターンの出現頻度または所定数のビットパターンによって構成される複数のグループの各々の出現頻度を検出し、検出した複数の出現頻度を相互に比較する出現頻度比較部と、
位相の設定値が最適値からずれている可能性のある遅延干渉計について、位相の設定値を増加させるのか減少させるのかを、前記出現頻度比較部の比較結果に基づいて判別する判別部とを含む、請求項5に記載の光受信装置。
【請求項7】
前記出現頻度比較部は、各ビットパターンまたは前記複数のグループの各々について、前記再生部の再生データの誤り率が最小のときに検出された出現頻度と、現在の出現頻度との偏差を算出し、算出した複数の偏差を相互に比較する、請求項6に記載の光受信装置。
【請求項1】
M=2N(Nは2以上の整数)である差動M相位相シフト変調方式によって変調された光信号を受信する光受信装置であって、
受信した光信号をM/2個に分岐する分岐部と、
前記分岐部で分岐された光信号が個別に入力され、各々が、入力された光信号を2つの分岐成分に分岐し、分岐した一方の分岐成分を他方の分岐成分に対して1シンボル遅延させるとともにいずれか一方の分岐成分の位相を設定された位相だけシフトさせ、その後、両分岐成分を結合して出力するM/2組の遅延干渉計と、
前記M/2組の遅延干渉計にそれぞれ対応し、各々が対応の遅延干渉計の出力を検波するM/2組のバランス検波器と、
前記M/2組のバランス検波器の出力に基づいて、Nビットのデータを順次再生する再生部と、
前記再生部によって順次再生されたNビットのデータの誤り訂正を行なう誤り訂正部と、
少なくとも一部のビットパターンについて、各ビットパターンが別の1または複数のビットパターンに誤って識別される確率である誤識別率を、前記誤り訂正部の訂正結果に基づいて検出し、検出したビットパターンの誤識別率に基づいて、前記M/2組の遅延干渉計のうち少なくとも1つの位相の設定値を補正する位相補正部とを備えた光受信装置。
【請求項2】
前記位相補正部は、
少なくとも一部のビットパターンについて各ビットパターンの誤識別率を検出し、検出した複数の誤識別率を相互に比較する識別精度比較部と、
位相の設定値が最適値からずれている可能性のある遅延干渉計について、位相の設定値を増加させるのか減少させるのかを、前記識別精度比較部の比較結果に基づいて判別する判別部とを含む、請求項1に記載の光受信装置。
【請求項3】
前記識別精度比較部は、前記少なくとも一部のビットパターンについて、前記再生部の再生データの誤り率が最小のときに検出された誤識別率と、現在の誤識別率との偏差を算出し、算出した複数の偏差を相互に比較する、請求項2に記載の光受信装置。
【請求項4】
前記位相補正部は、前記再生部の再生データから得られた各ビットパターンの出現頻度と、検出したビットパターンの誤識別率との両方に基づいて、前記M/2組の遅延干渉計のうち少なくとも1つの位相の設定値を補正する、請求項1に記載の光受信装置。
【請求項5】
M=2N(Nは2以上の整数)である差動M相位相シフト変調方式によって変調された光信号を受信する光受信装置であって、
受信した光信号をM/2個に分岐する分岐部と、
前記分岐部で分岐された光信号が個別に入力され、各々が、入力された光信号を2つの分岐成分に分岐し、分岐した一方の分岐成分を他方の分岐成分に対して1シンボル遅延させるとともにいずれか一方の分岐成分の位相を設定された位相だけシフトさせ、その後、両分岐成分を結合して出力するM/2組の遅延干渉計と、
前記M/2組の遅延干渉計にそれぞれ対応し、各々が対応の遅延干渉計の出力を検波するM/2組のバランス検波器と、
前記M/2組のバランス検波器の出力に基づいて、Nビットのデータを順次再生する再生部と、
前記再生部の再生データから得られた各ビットパターンの出現頻度に基づいて、前記M/2組の遅延干渉計のうち少なくとも1つの位相の設定値を補正する位相補正部とを備えた光受信装置。
【請求項6】
前記位相補正部は、
各ビットパターンの出現頻度または所定数のビットパターンによって構成される複数のグループの各々の出現頻度を検出し、検出した複数の出現頻度を相互に比較する出現頻度比較部と、
位相の設定値が最適値からずれている可能性のある遅延干渉計について、位相の設定値を増加させるのか減少させるのかを、前記出現頻度比較部の比較結果に基づいて判別する判別部とを含む、請求項5に記載の光受信装置。
【請求項7】
前記出現頻度比較部は、各ビットパターンまたは前記複数のグループの各々について、前記再生部の再生データの誤り率が最小のときに検出された出現頻度と、現在の出現頻度との偏差を算出し、算出した複数の偏差を相互に比較する、請求項6に記載の光受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−253400(P2012−253400A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122066(P2011−122066)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]