説明

光回路基板およびその製造方法

【課題】光導波路のコアと光路変換手段とが高い位置精度で形成された光回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】光回路基板100は、プリント配線板110と、これに平行に配置された光導波路120とを備えており、光導波路120の所定の位置に光路変換手段のミラー130が設けられている。ミラー130は、導体パターン層111と同じ銅で形成されており、プリント配線板110上に光導波路120が形成される前に、導体パターン層111の形成と同時に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の光軸を略垂直に変換する光路変換手段を備えた光回路基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体からなる集積素子の分野では、高速・高密度化への進展が著しく、従来の電気的な配線による相互接続では、信号の遅延、減衰、干渉等により、十分な特性が期待できなくなることが問題となっている。この問題は、IOボトルネックといわれ、これを解決するために光インターコネクション技術が注目されている。光インターコネクション技術は、通信機器相互間や通信機器内のボード間にとどまらず、1つのボード内の集積回路素子間にも適用することが検討されている。
【0003】
従来のボード内光インターコネクションを実現するための光回路基板としては、特許文献1に開示されている光導波路が形成された多層プリント基板が知られている。ここでは、基板表面に実装された面発光型素子(VCSEL)から基板に垂直な方向に出射された信号光を、光配線に形成された光路変換ミラーで反射させることで光導波路を導波させ、導波した信号光を別の光路変換ミラーで反射させて面受光型光素子(プレーナー型フォトダイオード)によって受光するものである。
【0004】
このような光回路基板では、基板表面側から光回路基板内の光導波路に光を入射させたり、光導波路を伝播する光を基板表面側に取り出したりする必要がある。基板表面側で光導波路に光を入出射させる方向は、光導波路の光軸と直交する方向となるため、基板表面側から入射した光を光導波路の光軸に一致するように光軸を90°変換させる手段が必要となる。このような光路変換手段として、特許文献1では光路変換ミラーが用いられている。
【0005】
光軸を90°変換する光路変換手段は、光軸に対して45°傾斜した反射面を有しており、この45°傾斜した反射面を形成する方法が従来より知られている。一例として、ダイシングソーを用いた図7に示す方法が多く用いられている。この方法は、研磨面が45°傾斜しているダイシングソー901を用いて光導波路902を研磨することで、研磨された光導波路部分に反射面903を形成する方法である。光導波路902の光軸に直交する方向に、ダイシングソー901を直線状に移動させながら光導波路902を研磨する。これにより、光導波路902の光軸に対して45°の傾斜角を有する研磨面が形成され、この研磨面に金属を蒸着することで反射面903を形成することができる。
【0006】
光路変換手段を形成する別の方法として、図8に示す方法も従来より知られている。この方法は、光回路基板911を45°だけ傾け、ドライエッチングやレーザー加工等の方法を用いて垂直方向に光回路基板911に切断面を形成する。これにより、光導波路912に傾斜角45°の切断面が形成され、この切断面に金属を蒸着することで反射面913を形成する。
【0007】
光路変換手段を形成するさらに別の方法として、図9に示す方法が特許文献2に開示されている。特許文献2に記載の方法によれば、光回路基板921の所定の位置に、光導波路922を取り除いた孔部923を形成し、この孔部923に断面が直角2等辺三角形のミラー部品924を搭載している。この方法では、ミラー部品924を光回路基板921の所定の位置にはんだ接続あるいは接着剤で接着している。
【0008】
光路変換手段を形成するさらに別の方法として、図10に示す方法が特許文献3に開示されている。特許文献3に記載の方法によれば、光導波路のコア931を形成するフォトリソ工程で使用するフォトマスク932に傾斜部分933を形成し、そのグレースケール領域をミラーにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−120956号
【特許文献2】特開2003−50328号
【特許文献3】特開2000−298221号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の光回路基板およびその製造方法では、以下のような問題があった。ダイシングソーを用いて反射面を形成する方法では、ダイシングソーによる研磨面が光導波路を直線状に横断するように形成されるため、たとえば、所定の限られた部分だけを研磨して反射面を形成するといったことができない。また、ダイシングブレードが劣化しやすく、劣化すると研磨面が一様に研磨されなくなり、反射面としての精度が低下するおそれがある。さらに、ダイシングブレードの先端等が磨耗して丸くなる等により、研磨面の形状が変化してしまうおそれもある。
【0011】
光回路基板を45°だけ傾斜させてドライエッチングやレーザー加工で切断面を形成する方法では、光回路基板の傾斜角度や位置の調整が容易でないといった問題がある。また、反射面に用いる面が傾斜のついたスリット状の切断部分の側面に相当するため、これに金属を蒸着させるのが容易でないといった問題もある。
【0012】
特許文献2による方法では、反射面の位置、向きおよび傾斜角度が所望通りとなるようにミラーを高精度に配置するのが困難であり、特にはんだで溶接するときに、はんだの表面張力でミラーが動いてしまうといった問題がある。
【0013】
特許文献3に記載の方法では、フォトマスクの傾斜部分に相当する位置のコア用樹脂は、光量不足の状態で硬化された状態にある。そのため、フォトマスクの傾斜に合わせて樹脂が硬化するというよりも、不完全な硬化状態となって硬化された部分の形状が安定しない状態となる。その結果、傾斜角45°の平面状の反射面を形成するのが容易でないといった問題がある。
【0014】
そこで、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、光導波路のコアと光路変換手段とが高い位置精度で形成された光回路基板およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の光回路基板の製造方法の第1の態様は、絶縁層の少なくとも一方の面に導体パターン層を作製するプリント配線板の製造工程と、光軸が前記一方の面と平行に配置されたコアとこれを取り囲むクラッドとを作製する光導波路の製造工程と、を有する光回路基板の製造方法であって、前記プリント配線板の製造工程では、前記プリント配線板の一方の面上にコア厚さとコアと導体パターン間のクラッド厚さとを足し合わせた以上の厚さで形成された厚銅層の所定位置に、所定幅の第1の段層を形成するように前記厚銅層を所定厚さまでエッチングし、端部の包絡面が略45°の傾斜面となるように前記第1の段層を順次エッチングして2以上の段層を形成し、前記厚銅層は前記導体パターン層としての厚さまでエッチングし、前記2以上の段層全体をエッチングして各段層の角部を除去することにより、前記光軸を前記一方の面に対し略垂直の方向に変換する光路変換手段を形成することを特徴とする。
【0016】
この発明の光回路基板の製造方法の他の態様は、前記光路変換手段を前記導体パターン層と一体に形成することを特徴とする。
【0017】
この発明の光回路基板の製造方法の他の態様は、前記プリント配線板の製造工程では、前記光路変換手段の形成と同時に、前記光路変換手段に近接してエッチングにより、前記光導波路の製造工程におけるフォトマスクと前記プリント配線板を位置合わせするための認識マークを形成することを特徴とする。
【0018】
この発明の光回路基板の製造方法の他の態様は、前記光導波路の製造工程では、前記光路変換手段から所定距離だけ離して前記コアを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光路変換手段をプリント配線板の作製と同一工程で形成することにより、光導波路のコアと光路変換手段とが高い位置精度で形成され、コアを光路変換手段から所定距離だけ離して形成することにより、光路変換手段近くの歪んだ形状のコアがなく確実に光路変換する光回路基板およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の光回路基板を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態の光回路基板の製造方法を説明する図である。
【図3】本発明の別の実施形態の光回路基板の製造方法を説明する図である。
【図4】従来の光導波路の製造工程を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態の光導波路の製造方法を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態の光導波路の製造方法を説明する図である。
【図7】従来の光回路基板の製造方法を説明する図である。
【図8】従来の光回路基板の製造方法を説明する図である。
【図9】従来の光回路基板の製造方法を説明する図である。
【図10】従来の光回路基板の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して本発明の好ましい実施の形態における光回路基板の構成及びその製造方法について詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0022】
本発明の光回路基板の実施の形態を、図1を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態の光回路基板100の断面図を示している。光回路基板100は、プリント配線板110と、これに平行に配置された光導波路120とを備えており、光導波路120の所定の位置に光路変換手段のミラー130が設けられている。
【0023】
プリント配線板110は、絶縁層112の上に銅で形成された導体パターン層111が設けられている。また、光導波路120は、コア121とこれを取り囲むクラッド122で構成されており、コア121は、その光軸がプリント配線板110と平行になるように形成されている。ミラー130は、コア121の光軸をプリント配線板110に対し略垂直となる方向に変換するものであり、コア121の光軸に対し45°傾斜させた反射面131を有している。
【0024】
本実施形態の光回路基板100は、ミラー130が導体パターン層111と一体に形成されていることを特徴としている。すなわち、ミラー130は、導体パターン層111と同様に銅で形成されており、プリント配線板110上に光導波路120が形成される前に、導体パターン層111の形成と同時に形成されている。
【0025】
また、本実施形態の光導波路120は、コア121がミラー130の反射面131の直前までしか形成されておらず、コア121と反射面131との間にはコア121が形成されない隙間が設けられている。本実施形態では、この隙間をクラッド122で埋めている。クラッド122は、コア121及びミラー130を覆うように形成されている。
【0026】
上記のように形成された本実施形態の光回線基板100では、ミラー130の反射面131がコア121の光軸に対し45°の傾斜角となるように高精度に作製されている。本実施形態では、光導波路120をプリント配線板110上に形成する前に、ミラー130が導体パターン層111と一体に形成されている。そのため、光導波路120を、ミラー130との位置合わせを高精度に行って形成することができる。このように、ミラー130を形成したのちに、これと位置合わせして光導波路120を形成することができることから、コア121の光軸がミラー130の反射面131に対し高精度に位置合わせすることが可能となる。
【0027】
また、本実施形態ではコア121をミラー130から所定距離だけ離して形成されている。そのため、ミラー130近くに生じる歪んだ形状のコアを除外して確実に光路変換することができる。このようにミラー130が導体パターン層111と一体に形成されているプリント配線板110上に、コア121をミラー130から所定距離だけ離して形成することで、ミラー130近くに生じる歪んだ形状のコアを除外することができることから、確実に光路変換することが可能となる。
【0028】
次に、本発明の光回路基板の製造方法の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。以下では、上記実施形態の光回路基板100を製造する工程について説明する。本実施形態の光回路基板の製造方法は、プリント配線板110の製造工程と光導波路120の製造工程を有している。ミラー130は、プリント配線板110の製造工程において形成される。
【0029】
ミラー130が製造される工程を、図2を用いて以下に説明する。図2は、本実施形態のミラー130を製造する工程を、プリント配線板110の断面図を用いて説明する図である。ミラー130を製造する工程では、まず絶縁層112の上に導体パターン層111を形成しておくか絶縁層112と導体パターン層111が一体となった基材を用意しておく(図2(a))。つぎに、ミラー130を製造する第1ステップとして、導体パターン
層111の所定の位置に銅めっきを行って第1段目の銅層132aを形成する(図2(b))。
【0030】
次の第2ステップとして、第1ステップで形成された第1段目の銅層132aの上に銅めっきを行って第2段目の銅層132bを形成する(図2(c))。以下、銅めっきにより所定の段数の銅層を順次形成していく。なお、図2では、簡単のため銅層132(132a、132b)を2層のみとしている。このような銅層132を順次形成するにあたっては、各銅層132の頂部が傾斜角45°の仮想的な平面133a、133bに接するように各銅層132の位置を決定する。
【0031】
最上部の段まで銅層132が銅めっきにより階段状に形成されると、つぎに銅層132全体にさらに銅めっきを行う。この銅めっきでは、階段状に形成された銅層132のコーナー部134に電解集中するため、この部分が優先的に銅めっきされる。その結果、図2(d)に示すように、コーナー部134が銅で埋められて平面状の45°傾斜した反射面131が形成される。なお、最上部の段の上に形成される頂部135は、90°角の頂点が形成されずなだらかな形状となるが、頂部135がコア121より垂直方向に高い位置となるようにすることで、頂部135の側面は光路変換手段に用いられることはない。
【0032】
本発明の光回路基板の製造方法の別の実施形態として、ミラー130の別の製造方法を図3を用いて以下に説明する。図3は、本実施形態のミラー130を製造する工程を、プリント配線板110の断面図を用いて説明する図である。本実施形態のミラー130を製造する工程では、まず絶縁層112の上に導体パターン層111よりも十分大きい厚さの厚銅層136を形成しておく(図3(a))。つぎに、ミラー130を製造する第1ステップとして、厚銅層136の所定の領域を残してそれ以外の部分をエッチングにより所定の厚さまで除去する。これにより、ミラー130全体を含む最上段の段層137aを形成する(図3(b))。
【0033】
次の第2ステップとして、第1ステップで形成された段層137aとその外周の所定の領域を残して厚銅層136を導体パターン層111の厚さまでエッチングして除去する。これにより上部から2段目の段層137bが形成される(図3(c))。以下、新たに形成された段層部分を順次エッチングしていくことにより、最上段から順に段層を形成していく。なお、図3では、簡単のため段層137(137a、137b)を2段のみとしている。このような段層137を順次形成するにあたっては、各段層の頂部が傾斜角45°の仮想的な平面に接するように各段層137の位置を決定する。
【0034】
上記のようなエッチングにより、最下段まで段層137が階段状に形成されると、つぎに段層137全体をさらにエッチングする。このエッチングでは、階段状に形成された段層137の角部(凸部)138が優先的にエッチングされる。その結果、図3(d)に示すように、角部138が除去されて平面状に45°傾斜した反射面131が形成される。
【0035】
上記の実施形態のいずれかでミラー130が形成されると、つぎの光導波路の製造工程では、ミラー130と光結合する光導波路120が形成される。光導波路の製造方法に係る実施形態を以下に説明する。プリント配線板110上にミラー130がすでに形成されていることから、このミラー130と高精度に位置合わせして光導波路120を形成することができる。
【0036】
光導波路の製造工程は、まずプリント配線板110の導体パターン層111の上に下部クラッド用の樹脂をラミネートし、その後、下部クラッド用樹脂の上にコア用の樹脂をラミネートする。コア用樹脂は、露光によりコア121を配置する部分だけが硬化され、現像によりそれ以外の未硬化部分が除去される。コア121が形成されると、その上から上部クラッド用の樹脂がラミネートされて光導波路120が作製される。
【0037】
上記の光導波路120の製造工程では、コア121を形成する際に、コア121の部分以外を遮光するフォトマスクで蔽った上でコア用樹脂を露光している。図4は、従来の光導波路の製造工程において、コア121を形成する方法を説明する図である。図4(a)、(b)は、フォトマスク143をコア用樹脂141の上に蔽う前の状態を示すそれぞれ断面図および平面図であり、図4(c)は、フォトマスク143を蔽った状態を示す平面図である。図4(a)は、同図(b)に示す断面AA’における断面図である。同図(c)に示すように、露光時にはミラー130がフォトマスク143で覆われてしまうため、コア121を形成するための第1の光透過部143aをミラー130に対して精度良く位置合わせすることができなくなる。
【0038】
そこで、本実施形態の光導波路120の製造方法では、コア121を形成する部分を位置合わせするための認識マークを、ミラー130の形成と同時に導体パターン層111上に作製している。本実施形態の光導波路120の製造方法を、図5を用いて以下に説明する。図5(a)、(b)は、フォトマスク143をコア用樹脂141の上に蔽う前の状態を示すそれぞれ断面図および平面図であり、図5(c)は、フォトマスク143を蔽った状態を示す平面図である。図5(a)は、同図(b)に示す断面AA’における断面図である。
【0039】
図5に示すように、本実施形態ではミラー130の近傍に認識マーク144が形成されている。認識マーク144は、ミラー130とコア121との位置合わせが可能な場所に設ければ良く、図5に示した位置に限定されるものではない。また、認識マーク144は、反射面131の向きを精度良く確認できるような形状に形成されるのが好ましく、ここではミラー130の垂直断面の方向を示す指示線144aと、ミラー130に平行な方向を示す指示線144bとが形成されている。
【0040】
また、本実施形態で用いるフォトマスク143には、認識マーク144を視認できるように第2の光透過部143bが設けられており、その中に認識マーク145が描かれている。認識マーク145は、認識マーク144との相対位置と相対角度を精度良く確認できるような形状であることが好ましく、ここではマーク中心位置を示す点145aと、認識マーク144の指示線144aと指示線144bとが間を通るように円弧145bとが描かれている。これにより、第2の光透過部143bから認識マーク145と認識マーク144を重ね合わせながら確認し、たとえば第1の光透過部143aの長手方向が認識マーク144の指示線144aと平行でかつミラー130に対し光透過部143a端部が所定の場所に位置するようにフォトマスク143を位置決めすることができる。その結果、第1の開口部143aの位置に形成されるコア121が、ミラー130に対して精度良く位置決めされて形成される。
【0041】
本実施形態の光導波路120の製造方法では、コア121をミラー130の反射面131に接する位置までは形成せず、その手前で終端となるように形成している。ミラー130近傍におけるコア121の配置方法を、図6を用いて以下に説明する。図6(a)は、導体パターン層111の上に下部クラッド142aをラミネートした状態を示している。次に、下部クラッド142aの上にコア121を形成した状態を図6(b)に示す。次にコア121を形成するためのフォトマスク143を配置しコア用樹脂141が露光された状態を図6(c)に示す。本実施形態では、コア121形成用のフォトマスク143の光透過部143aの終端部がミラー130の反射面131の手前の位置としている。
【0042】
比較のために、ミラー130の反射面131までコア121形成用のフォトマスク143の光透過部143aの終端部をのばした状態を図6(d)に示す。コア121形成用のフォトマスク143の光透過部143aの終端部を反射面131までのばすと、コア用樹脂141を硬化させるために照射した光が、反射面131で向きを変えて反射され、反射面131上部およびその周辺にラミネートされたコア用樹脂141は、反射面131から離れた他の部分とは露光量が異なった状態となる。その結果、露光によって形成されるコア121の形状が、反射面131周辺と他の反射面131から離れた位置とで異なったものとなり、安定した形状が得られなくなってしまう。
【0043】
また、ミラー130の上部にコア用樹脂141をラミネートすると、ミラー130の上部にかかるラミネートの圧力は局所的に大きくなり、コア用樹脂141の厚さはミラー130手前までの厚さと比較して薄く変化してしまう。
【0044】
さらに、ミラー130の手前までは、プリント配線板110と平行にラミネートされてきたコア用樹脂141がミラー130の上部で反射面131に沿って曲がってしまい、反射面131に対する入射角が変化してしまうことから、垂直に光路変換することが出来なくなってしまう。
【0045】
これに対し、図6(c)に示した本実施形態によるコア121は、反射面131の近傍には形成されないようにしていることから、コア用樹脂141の露光が一様に行われ、均一形状のコア121が得られ、さらにコアが反射面131に沿って曲がってしまうことなくプリント配線板110に平行に光が伝播される。コア121が形成された後、上部クラッド用樹脂142bがラミネートされてクラッド122が形成される(図6(e))。このとき、コア121の先端と反射面131との間にも上部クラッド用樹脂142bがラミネートされ、隙間なくクラッド122が形成されることから、コア121と反射面131との間でも、光が直線状に通光することができる。
【0046】
以上説明したように本発明によれば、光路変換手段であるミラーをプリント配線板の製造工程で同時に形成することにより、光導波路のコアと光路変換手段のミラーとの位置精度が高い光回路基板、およびその製造方法を提供することができる。本発明の光回路基板の製造方法では、光路変換手段の配置や光導波路との配置関係等に制約がないことから、光回路基板の設計の自由度を大幅に高めることができる。
【0047】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る光回路基板及びその製造方法の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における光回路基板等の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
100、911、921 光回路基板
110 プリント配線板
111 導体パターン層
112 絶縁層
120、902、912、922 光導波路
121、931 コア
122 クラッド
130 ミラー
131、903、913 反射面
132 銅層
136 厚銅層
144、145 認識マーク
901 ダイシングソー
932 フォトマスク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層の少なくとも一方の面に導体パターン層を作製するプリント配線板の製造工程と、光軸が前記一方の面と平行に配置されたコアとこれを取り囲むクラッドとを作製する光導波路の製造工程と、を有する光回路基板の製造方法であって、
前記プリント配線板の製造工程では、
前記プリント配線板の一方の面上にコア厚さとコアと導体パターン間のクラッド厚さとを足し合わせた以上の厚さで形成された厚銅層の所定位置に、所定幅の第1の段層を形成するように前記厚銅層を所定厚さまでエッチングし、
端部の包絡面が略45°の傾斜面となるように前記第1の段層を順次エッチングして2以上の段層を形成し、
前記厚銅層は前記導体パターン層としての厚さまでエッチングし、
前記2以上の段層全体をエッチングして各段層の角部を除去することにより、
前記光軸を前記一方の面に対し略垂直の方向に変換する光路変換手段を形成する
ことを特徴とする光回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記光路変換手段を前記導体パターン層と一体に形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の光回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記プリント配線板の製造工程では、
前記光路変換手段の形成と同時に、前記光路変換手段に近接してエッチングにより、前記光導波路の製造工程におけるフォトマスクと前記プリント配線板とを位置合わせするための認識マークを形成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記光導波路の製造工程では、
前記光路変換手段から所定距離だけ離して前記コアを形成する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−113330(P2012−113330A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−61515(P2012−61515)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2008−60139(P2008−60139)の分割
【原出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】