説明

光増幅素子を搭載した検査チップ

【課題】光を利用した検査チップにおいて、高い精度で光を照射できる検査チップを提供する。また、複数の光を用いて簡便にサンプルの検査を行うことができる検査チップを提供する。
【解決手段】光増幅素子5と、サンプルを保持するサンプル保持部8と、を備えた検査チップ1であって、光増幅素子はサンプル保持部に面して配置されており、光増幅素子から放出される光は、サンプル保持部に保持されたサンプルに照射されることを特徴とする検査チップを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査チップおよび検査装置に係り、特に、物質から発生する光、熱、音などを直接的あるいは間接的に検出することによって、物質を検査するための検査チップおよび検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光を利用した検査装置は、特定の光が物質に照射されたときの反応、すなわち、光の吸収や蛍光、燐光、温度変化、音波発生、屈折率変化などを検知することで、間接的に対象物の存在・消滅・濃度・変質などを測定するものである。
【0003】
そして、これらの光を利用した検査装置に用いられる検査チップは、マイクロファブリケーションによって近年更に小型化し、少量のサンプルでも精度よく検査することが出来るようになってきている。
【0004】
この時の光源には、目的に応じた特定の波長の光源として、レーザー又はレーザー様な光放射を利用したものが用いられている。
【0005】
しかし、これらの光源は、装置として大型であるものが多く、検査チップ上にこれらの光源を搭載することは困難であった。このため、これらの光源は、検査チップとは別に設置され、外部から光を照射する必要があった。この場合、検査チップ上の特定の位置に、正確に光を照射する必要があるが、チップが小型化した場合に、高い精度で照射位置を制御することは容易ではない。
【0006】
さらに、検査において複数の光(波長同じ場合や波長が異なる場合を含む)が必要な場合には、それに対応して複数の光源を用いる必要があり、装置が複雑となるという問題があった。また、これらの光源は、一般に高価な場合が多く、複数の光源を用いた場合には、コストが高くなるという問題もあった。
【0007】
ところで、光導波路を利用した光増幅素子は、外部からレーザー光等を照射することにより、任意の波長の光を放出できる素子として、近年注目されてきている(特許文献1参照)。
【0008】
しかし、これらの光増幅素子を用いた検査チップについては、知られていない。
【特許文献1】特開2001−160642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、光を利用した検査チップにおいて、高い精度で光を照射できる検査チップを提供することを課題とする。また、本発明は、複数の光を用いて簡便にサンプルの検査を行うことができる検査チップを提供することを課題とする。更に、本発明は、上記検査チップを用いた検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光増幅素子と、サンプルを保持するサンプル保持部と、を備えた検査チップであって、前記光増幅素子は前記サンプル保持部に面して配置されており、前記光増幅素子から放出される光は、前記サンプル保持部に保持されたサンプルに照射されることを特徴とする検査チップである。
【0011】
また、本発明は、前記光が照射されることにより、前記サンプルからエネルギーが放出される、またはサンプルに於いて化学的あるいは物理的構造変化が生じることを特徴とする上記の検査チップである。
【0012】
また、本発明は、基板と、この基板上に形成される光増幅素子と、前記基板上の光増幅素子の近傍においてサンプルを保持するサンプル保持部とを備えた検査チップであって、前記光増幅素子は、前記基板上に配置されて外部からの励起光を伝播させる励起光導波路と、この励起光導波路上に配置されて前記励起光により所定のレーザー光を放出するレーザー導波路とを備えていることを特徴とする検査チップである。
【0013】
また、本発明は、基板と、この基板上に形成される光増幅素子と、前記基板上の光増幅素子の近傍においてサンプルを保持するサンプル保持部とを備えた検査チップであって、前記光増幅素子は、前記基板上に配置されて外部からの励起光により所定のレーザー光を放出するレーザー導波路を備えていることを特徴とする検査チップである。
【0014】
また、本発明は、前記光増幅素子は、前記サンプル保持部に面して配置されていることを特徴とする上記検査チップである。
【0015】
また、本発明は、前記レーザー光は、前記サンプル保持部に保持されたサンプルに照射されることを特徴とする上記検査チップである。
【0016】
また、本発明は、前記レーザー光が前記サンプルに照射されることにより、前記サンプルからエネルギーが放出され、またはサンプルに於いて化学的あるいは物理的構造変化が生じることを特徴とする上記検査チップである。
【0017】
また、本発明は、前記サンプルから放出されるエネルギーが、光、熱、および音からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記検査チップである。
【0018】
また、本発明は、前記サンプルから放出されるエネルギーが、前記照射された光の透過光または反射光であることを特徴とする上記検査チップである。
【0019】
また、本発明は、前記サンプルにおける化学的・物理的変化が、電気抵抗値、屈折率、光透過率、光感受率、キャリア移動度、屈折率波長依存性、光透過率波長依存性からなる群より選択される、少なくとも1種を用いて検査することを特長とする上記検査チップである。
【0020】
また、本発明は、複数の光増幅素子を備えたことを特徴とする、上記検査チップである。
【0021】
また、本発明は、前記複数の光増幅素子のうち、少なくとも1つの光増幅素子が他の光増幅素子と異なる波長の光を放出することを特徴とする上記検査チップ。
【0022】
また、本発明は、前記光増幅素子は、1つのサンプル保持部に対して複数個配置されていることを特徴とする上記検査チップである。
【0023】
また、本発明は、前記サンプル保持部は細長い流路状に形成されており、前記光増幅素子が流路に沿って配置されていることを特徴とする上記検査チップである。
【0024】
また、本発明は、前記基板が回転中心を有し、前記サンプル保持部は前記回転中心から半径方向に沿って延びていることを特徴とする上記検査チップである。
【0025】
また、本発明は、前記サンプル保持部はY字状に分岐した流路状に形成されており、前記複数の光増幅素子が各枝状流路に配置されていることを特徴とする上記検査チップである。
【0026】
また、本発明は、前記サンプル保持部は円形状に形成されており、前記複数の光増幅素子が前記サンプル保持部の周囲に配置されていることを特徴とする上記検査チップである。
【0027】
また、本発明は、前記基板上には複数のサンプル保持部が形成されていることを特徴とする上記検査チップである。
【0028】
また、本発明は、前記サンプルが、血液、体液、生物、生体、細胞、酵素、薬品、タンパク質、ペプチド、糖類、酵素反応代謝産物、反応複合体、脂質、低分子化合物、核酸からなる生化学サンプル群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記検査チップである。
【0029】
また、本発明は、前記放出されたエネルギーを検出するエネルギー検出部を、さらに備えたことを特徴とする上記検査チップである。
【0030】
また、本発明は、上記いずれに記載の検査チップと、前記検査チップの光増幅素子にレーザーを照射するレーザー照射部と、前記検査チップから放出されたエネルギーを検出するエネルギー検出部と、を備えることを特徴とする、検査装置である。
【0031】
また、本発明は、上記検査チップと、前記検査チップの光増幅素子にレーザーを照射するレーザー照射部と、を備えることを特徴とする、検査装置である。
【0032】
また、本発明は、上記いずれかに記載の検査チップと、前記検査チップの光増幅素子にレーザーを照射するレーザー照射部と、前記検査チップから放出されるエネルギーを検出するエネルギー検出部と、を備える検査装置であって、1つのレーザー照射部から放出されたレーザーが、複数の光増幅素子に照射されることを特徴とする、検査装置である。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、光を利用した検査チップにおいて、高い精度で光を照射できる検査チップを提供することができる。また、本発明により、複数の光を用いて簡便にサンプルの検査を行うことができる検査チップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の検査チップおよび検査装置の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の検査チップおよび検査装置の一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の検査チップの一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の検査チップの一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明の検査チップの一例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の検査チップの一例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の検査チップの一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明に用いる光増幅素子の作用を示す図である。
【図9】図9は、本発明に用いる光増幅素子の作用を示す図である。
【図10】図10は、本発明をSPRセンサに応用した例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明において、光増幅素子とは、エネルギーが供給されることにより発光し、その発光した光を一定方向に収束して放出する性質を有する素子をいう。
【0036】
本発明に用いられる光増幅素子としては、例えば、アクリル樹脂等の光透過性プラスチックを用いて製造した光導波路を挙げることができる。即ち、例えば、基板上に光硬化性アクリル樹脂を2〜10μmの厚さで堆積させ、必要に応じて色素をこれにドーピングし、これに紫外線レーザーを2方向から照射して干渉縞を形成させ、必要であれば適宜エッチングなどの処理を施して、物理的あるいは光学的な回折格子を有する光増幅素子を得ることができる。そして、この光増幅素子にレーザーなどのエネルギーを照射することにより、特定の波長の光だけを帰還させ、フィルター効果により狭いスペクトル幅でレーザー発振を得ることが可能となる。
【0037】
そして、このときの干渉縞を制御することにより、任意の波長の光を放出する光増幅素子を製造することができることとなる。また別の方法に依れば、シリコン基板などを型として利用して、この型に導波路や分岐機関構造を作製し、アクリル樹脂などの光透過性樹脂にレーザー色素をドープしたものを型から写し取って作製することも可能である。このような原理を基に、有機色素をドープしたプラスチック(一例としてはポリメタクリル酸メチルを主成分とする高分子)を用いて光増幅素子を作成する場合、分布帰還(DFB)構造をその一部または全体に持つことで、励起光を照射するだけで発振する導波型固体色素レーザーとして機能する光増幅素子となる。この光増幅素子は、プラスチックからなる基板上に、色素をドープしない励起光導波路と、励起光導波路上において色素をドープしDFB構造としたレーザー導波路とからなる。または、プラスチックからなる基板上に、色素をドープしDFB構造としたレーザー導波路からなる。
【0038】
本発明に用いられる光増幅素子の大きさとしては、検査チップに配置できるものであれば特に制限はないが、例えば、長さ1〜20mm、幅1μm〜1mm、厚さ2〜10μmのものを挙げることができる。
【0039】
図8および図9に、光増幅素子の作用を示す。図8において、エネルギー60が光増幅素子5に照射されると、照射されたエネルギーは、光増幅素子5に吸収され、特定の波長の光を、矢印で示す方向に出力光55として放出する。また、図9においては、レーザー光源15から放出されたレーザーが、光ファイバー18を通って光増幅素子5に照射され、出力光55として、特定の波長の光が放出されることとなる。
【0040】
次に、本発明の検査チップおよび検査装置について説明する。図1は、本発明の検査チップおよび検査装置を示す模式図である。図1において、本発明の検査チップ1は、光増幅素子5a,5b,5cと、サンプル保持部8、エネルギー検出部10a,10b,10cを備えている。光増幅素子5a,5b,5cの端部はそれぞれサンプル保持部8に面している。また、光増幅素子5a,5b,5cは、光ファイバー18を介して、レーザー光源15に接続されている。なお、図1において、レーザー光源15および光ファイバー18は、本発明の検査装置20におけるレーザー照射部を構成する。
【0041】
本発明の検査チップおよび検査装置は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1において、レーザー光源15から放出されたレーザーは、光ファイバー15を通って光増幅素子5a,5b,5cにそれぞれ照射される。レーザーを照射された光増幅素子5a,5b,5cは、それぞれ特定の波長の光を放出し、サンプル保持部8に保持されたサンプルに照射される。ここで、図1はチップを上面から見た図であるが、サンプル保持部は例えば液状のサンプルを保持するために、周囲部よりも僅かに凹んでいる。そして、光を照射されたサンプルからは、それぞれの反応に応じたエネルギーがサンプルから放出されることとなる。次に、サンプルから放出されたエネルギーは、エネルギー検出部10a,10b,10cによりそれぞれ検出され、サンプルの検査が行われることとなる。
【0042】
なお、ここで放出されるエネルギーとしては、例えば、照射された光そのものの透過光や反射光の他、蛍光や燐光などの光、熱、音等を挙げることができる。
【0043】
本発明により、1つのサンプル保持部に対して複数の光増幅素子が設けられているので、1つのサンプルについて複数の波長の光を用いて同時に検査することが可能となる。また、図1に示すように、レーザー光源15からの励起光を光増幅素子の数だけ分岐して接続するように構成すれば、そのための光源として、1つのレーザー放出装置のみで検査することが可能となる。
【0044】
図2は、本発明の検査チップおよび検査装置の他の例を示す図である。図2において、本発明の検査チップ1は、複数のサンプル保持部8を備えており、各々のサンプル保持部8には、単数又は複数の光増幅素子5が配置されている。ここで、光増幅素子5a,5b,5cの端部はそれぞれサンプル保持部8に面している。
【0045】
また、図2において、本発明の検査装置20は、レーザー光源15、走査ミラー30、検査チップ1、エネルギー検出部10から構成されている。
【0046】
レーザー光源15により放出された励起光としてのレーザー25は、走査ミラー30で反射され、光増幅素子5に照射される。図2においては光増幅素子の下面からレーザー25が照射されている。レーザー25が照射された光増幅素子5は、特定の波長の光を放出し、この放出された光がサンプル保持部8に保持されたサンプルに照射される。光を照射されたサンプルからは、エネルギー35が放出され、放出されたエネルギー35は、エネルギー検出部10により検出され、サンプルの検査が行われることとなる。
【0047】
本発明により、走査ミラー30を使ってレーザー25を走査することにより、1つのレーザー光源15により複数の光増幅素子5にレーザーを照射することが可能なる。また、複数のサンプル保持部および複数の光増幅素子を有することにより、1つの検査チップで他種類の検査を行うことが可能となる。
【0048】
図3は、本発明の検査チップの他の例を示す図である。図3において、本発明の検査チップ1は、サンプルリザーバ40、サンプル受け部45、サンプル保持部8、光増幅素子5を備えている。光増幅素子5は、サンプル保持部8の長手方向に沿って複数個配置されている。また、光増幅素子5の端部はそれぞれサンプル保持部8に面している。
【0049】
図3において、サンプルリザーバ40に配置されたサンプルは、細長い通路状のサンプル保持部8を移動し、サンプル受け部45に到達する。そして、サンプル保持部8を移動する際に、光増幅素子5に励起用のレーザーを照射することにより各光増幅素子5から光が放出され、サンプルに照射されることとなる。この際にサンプルから放出されるエネルギーを検出することにより、サンプルを検査することが可能となる。
【0050】
本発明により、サンプル保持部8の上流側(図中の左方)から下流側(図中の右方)に向かって複数の光増幅素子が配列されているので、サンプルが流動や泳動等をする際に受ける変化を検出することが可能となる。
【0051】
図4は、本発明の検査チップの他の例を示す図である。図4において、本発明の検査チップ1は、サンプルリザーバ40a、40b、サンプル受け部45、サンプル保持部8、光増幅素子5a,5b,5c,5d,5e,5fを備えている。図に示すように、サンプル保持部8はY字状に分岐している。そして、2本の分枝の上流側(図中の左方)に2つのサンプルリザーバ40a,40bが設けられ、逆に下流側(図中の右方)にサンプル受け部45が設けられている。図に示す例では、サンプル保持部8の2本の分枝に、それぞれ1個づつ光増幅素子5a,5bが配置されている。また、下流側に向かうサンプル保持部8には、長手方向に沿って4つの光増幅素子5c,5d,5e,5fが配置されている。そして、各光増幅素子の端部はそれぞれサンプル保持部8に面している。
【0052】
図4において、サンプルリザーバ40aに配置された第1のサンプルと、サンプルリザーバ40bに配置された第2のサンプルとは、サンプル保持部8を移動することにより混合されるようになっている。そして、混合される前の第1と第2のサンプルは、光増幅素子5a、5bを用いてそれぞれ検査され、混合直後のサンプルは、光増幅素子5cを用いて検査される。さらに、混合による第1と第2のサンプルの反応物について、光増幅素子5dを用いて検査される。
【0053】
本発明により、複数のサンプルを混合した場合の変化を、適切な波長の光を用いて検出することが可能となる。
【0054】
さらに、本発明において、光増幅素子5e,5fを用いて光を照射することにより、サンプルの反応を制御することも可能となる。
【0055】
図5は、本発明の検査チップの他の例を示す図である。図5において、本発明の検査チップ1は、複数の光増幅素子5a,5b,5cおよびサンプル保持部8を備えている。サンプル保持部8は円形形状をしており、このサンプル保持部8の周囲部に、放射状に光増幅素子5a,5b,5c...がそれぞれ配置され、各光増幅素子5a,5b,5cの端部がサンプル保持部に面している。本例では、8個の光増幅素子が配置されているが、これは一例であって、これより少なくても良いし逆に多くてもよい。本例では平面上に光増幅素子5a,5b,5c...がそれぞれ配置されているが、3次元的に配置されていても良い。すなわちサンプル保持部8の下や、保持部8のふたをする形でその上方5に光増幅素子を1つ以上配置することも可能である。
【0056】
本発明において、レーザーを照射する光増幅素子を5a,5b、5cの順に、切り替えていくことにより、1つのサンプルについて、複数の波長の光による検査を行うことが可能となる。また、レーザーを照射する光増幅素子を短時間に切り替えることにより、非常に早い時間変化に対応した検査を行うことが可能となる。具体的には、例えば各光増幅素子5a,5b,5cの発振波長が僅かに異なるように設定する。そして、最初に光増幅素子5aにレーザーを照射し、次に1ns後に次の光増幅素子5bに光を照射する。更に、1ns経過後(合計2ns)に次の光増幅素子5cにレーザーを照射する。このような条件の下でサンプルから散乱する散乱粒子の数を波長別で計測することで、光検出器などのエネルギー検出部の時間分解能を超えてサンプルの検査をすることが可能となる。また、別の例として、異なる発振波長を持つ各光増幅素子5a,5b,5cに照射するレーザーを短時間に切り替え、波長分解能を持たない一つの光検出器で得られる信号を時間的に分離して信号処理することで、波長を分解する機能のない光検出器であっても、信号を波長分解して検査することが可能となる。
【0057】
図6は、本発明の検査チップの他の例を示す図である。図6において、本発明の検査チップ1は、ディスク状の形態であり、回転中心41の近傍にサンプルリザーバ40と、サンプルリザーバ40に接続されたサンプル保持部8、サンプル保持部8の他端のディスクの円周部近傍に位置するサンプル受け部45を、各々複数備えている。即ち、各サンプル保持部8は、回転中心41から放射状に延びる細長い流路状となっている。また、サンプル受け部45の近傍のサンプル保持部8には、それぞれ光増幅素子5が配置されている。各光増幅素子5の端部はサンプル保持部8に面している。光増幅素子は各サンプル保持部8に対して1つだけでなく、複数個をそれぞれ配置するようにしてもよい。
【0058】
図6において、サンプルリザーバ40に配置されたサンプルは、ディスクを回転させることにより、遠心力によりサンプル保持部8を半径方向外側に向かって移動し、サンプル受け部45に到達する。そして、光増幅素子5を用いてサンプルを検査することが可能となる。
【0059】
本発明により、例えば分子量等のサンプルの情報を容易に得ることが可能となる。また、各サンプル保持部8において、サンプル中のそれぞれ異なる因子を別々に検査することができる。
【0060】
図7は、本発明の検査チップの他の例を示す図である。図7において、本発明の検査チップ1は、光増幅素子5および光増幅素子5の側方近傍にサンプル保持部8を備えている。そして、光増幅素子5の端部はサンプル保持部8に面している。
【0061】
図7において、光増幅素子5にレーザーが照射されると、矢印で示す方向に出力光55が導波され、放出される。このとき、光増幅素子5の側面において、近接場光50がしみ出すこととなる。この近接場光50は、通常は、光増幅素子5から放出される光の波長の1/10〜1/2程度の距離を有する領域にしみ出すことが知られている。そして、サンプル保持部8はレーザーの表面に面して保持されており、保持部8のレーザー表面近傍にあるサンプルに近接場光50を照射することにより、サンプルの検査を行うことが可能となる。
【0062】
本発明によれば、近接場光を用いて微小領域における検査を行うことが可能となる。また、近接場光の変化を利用してサンプルの屈折率変化や吸収率変化を利用した検査をおこなうことも可能となる。これは後述するSPRセンサーと同様に屈折率変化を直接的に測定することが可能な応用である。
【0063】
本発明に用いられるサンプルとしては、光を利用して検査できるものであれば特に制限はないが、例えば、DNA、タンパク質、ペプチド、糖類、酵素反応代謝産物、反応複合体、脂質、低分子化合物、核酸からなる生化学サンプル群などの生化学サンプルを挙げることができる。そして、本発明を用いることにより、DNA等の微小試料においても、精度よく検査を行うことが可能となる。
【0064】
以上、検査チップについて説明したが、レーザー導波路を有する光増幅素子を用いることで、表面プラズモン共鳴(SPR)センサ71を製作することもできる。即ち、図10に示すように、レーザー導波路72上に金属薄膜73を形成する。そして、光増幅素子に励起光Pを入射させる。これにより、レーザー導波路72でレーザー光が発生するが、図中の矢印の方向に進みながら減衰し、金属薄膜73の表面にプラズモン波が発生する。ここで、金属薄膜73の表面にサンプルを保持する構造を設け、この領域での屈折率の変化をプラズモン共鳴で観測する。そして、波長を僅かづつ変化させる方法を用いて、SPR条件を満たす場合にそのレーザーの出力が大きく減衰する現象を利用する。このようなSPRセンサ71は、外部に複雑で大型の光学系を用いる従来のSPR測定系とは異なり、小さなチップ上に実装することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 検査チップ
5,5a,5b,5c,5d,5e,5f 光増幅素子
8 サンプル保持部
10,10a,10b,10c エネルギー検出部
15 レーザー光源
18 光ファイバー
20 検査装置
25 レーザー
30 走査ミラー
35 放出したエネルギー
40 サンプルリザーバ
45 サンプル受け部
50 近接場光
55 出力光
60 エネルギー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光増幅素子と、サンプルを保持するサンプル保持部と、を備えた検査チップであって、
前記光増幅素子は前記サンプル保持部に面して配置されており、前記光増幅素子から放出される光は、前記サンプル保持部に保持されたサンプルに照射されることを特徴とする検査チップ。
【請求項2】
前記光が照射されることにより、前記サンプルからエネルギーが放出される、またはサンプルに於いて化学的あるいは物理的構造変化が生じることを特徴とする請求項1に記載の検査チップ。
【請求項3】
基板と、この基板上に形成される光増幅素子と、前記基板上の光増幅素子の近傍においてサンプルを保持するサンプル保持部とを備えた検査チップであって、
前記光増幅素子は、前記基板上に配置されて外部からの励起光を伝播させる励起光導波路と、この励起光導波路上に配置されて前記励起光により所定のレーザー光を放出するレーザー導波路とを備えていることを特徴とする検査チップ。あるいは、前記基板上に配置されて外部からの励起光により所定のレーザー光を放出するレーザー導波路を備えていることを特徴とする検査チップ。
【請求項4】
基板と、この基板上に形成される光増幅素子と、前記基板上の光増幅素子の近傍においてサンプルを保持するサンプル保持部とを備えた検査チップであって、
前記光増幅素子は、前記基板上に配置されて外部からの励起光により所定のレーザー光を放出するレーザー導波路を備えていることを特徴とする検査チップ。
【請求項5】
前記光増幅素子は、前記サンプル保持部に面して配置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の検査チップ。
【請求項6】
前記レーザー光は、前記サンプル保持部に保持されたサンプルに照射されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の検査チップ。
【請求項7】
前記レーザー光が前記サンプルに照射されることにより、前記サンプルからエネルギーが放出され、またはサンプルに於いて化学的あるいは物理的構造変化が生じることを特徴とする請求項6に記載の検査チップ。
【請求項8】
前記サンプルから放出されるエネルギーが、光、熱、および音からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2又は7に記載の検査チップ。
【請求項9】
前記サンプルから放出されるエネルギーが、前記照射された光の透過光または反射光であることを特徴とする、請求項2または7に記載の検査チップ。
【請求項10】
前記サンプルにおける化学的・物理的変化が、電気抵抗値、屈折率、光透過率、光感受率、キャリア移動度、屈折率波長依存性、光透過率波長依存性からなる群より選択される、少なくとも1種を用いて検査することを特長とする、請求項2または7に記載の検査チップ。
【請求項11】
複数の光増幅素子を備えたことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の検査チップ。
【請求項12】
前記複数の光増幅素子のうち、少なくとも1つの光増幅素子が他の光増幅素子と異なる波長の光を放出することを特徴とする、請求項11に記載の検査チップ。
【請求項13】
前記光増幅素子は、1つのサンプル保持部に対して複数個配置されていることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の検査チップ。
【請求項14】
前記サンプル保持部は細長い流路状に形成されており、前記光増幅素子が流路に沿って配置されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の検査チップ。
【請求項15】
前記基板が回転中心を有し、前記サンプル保持部は前記回転中心から半径方向に沿って延びていることを特徴とする請求項14に記載の検査チップ。
【請求項16】
前記サンプル保持部はY字状に分岐した流路状に形成されており、前記複数の光増幅素子が各枝状流路に配置されていることを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載の検査チップ。
【請求項17】
前記サンプル保持部は円形状に形成されており、前記複数の光増幅素子が前記サンプル保持部の周囲に配置されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の検査チップ。
【請求項18】
前記基板上には複数のサンプル保持部が形成されていることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の検査チップ。
【請求項19】
前記サンプルが、血液、体液、生物、生体、細胞、酵素、薬品、タンパク質、ペプチド、糖類、酵素反応代謝産物、反応複合体、脂質、低分子化合物、核酸からなる生化学サンプル群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の検査チップ。
【請求項20】
前記放出されたエネルギーを検出するエネルギー検出部を、さらに備えたことを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載の検査チップ。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれに記載の検査チップと、前記検査チップの光増幅素子にレーザーを照射するレーザー照射部と、前記検査チップから放出されたエネルギーを検出するエネルギー検出部と、を備えることを特徴とする、検査装置。
【請求項22】
請求項20に記載の検査チップと、前記検査チップの光増幅素子にレーザーを照射するレーザー照射部と、を備えることを特徴とする、検査装置。
【請求項23】
請求項10〜20の何いずれか一項に記載の検査チップと、前記検査チップの光増幅素子にレーザーを照射するレーザー照射部と、前記検査チップから放出されるエネルギーを検出するエネルギー検出部と、を備える検査装置であって、1つのレーザー照射部から放出されたレーザーが、複数の光増幅素子に照射されることを特徴とする、検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−237445(P2011−237445A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160066(P2011−160066)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【分割の表示】特願2006−514067(P2006−514067)の分割
【原出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】