説明

光学ガラス

【課題】本発明は、1.59〜1.65の屈折率(n)、59〜67のアッベ数(ν)であり、さらに化学的耐久性の良好な光学ガラス及び光学素子を提供する。
【解決手段】酸化物基準の質量%で、P 30〜60%、 BaO 30〜50%、 B 0〜10%の範囲で含有し、質量比B/Pが0.2以下である光学ガラス。酸化物基準の質量%で、ZnOを0.5%以上含有する前記光学ガラス。B/Pの値が0.1〜0.2の範囲であることを特徴とする前記光学ガラス。 BaO+CaOの合計量が44〜50%の範囲であり、かつSrOを3%未満含有する前記光学ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1.59〜1.65の屈折率(n)、59〜67のアッベ数(ν)である光学ガラス、光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学系を使用する機器のデジタル化や高精細化が急速に進んでおり、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮影機器をはじめ、各種光学機器に用いられるレンズ等の光学素子に対する高精度化、軽量、及び小型化の要求は、ますます強まっている。
【0003】
光学素子を作製する光学ガラスの中でも、特に1.59〜1.65の屈折率(n)、59〜67のアッベ数(ν)を有するガラスはその需要が大きく、そのようなガラスとして特許文献1に代表されるようなガラスが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
また、1.59以上1.65以下の屈折率(n)を有し、59以上67以下のアッベ数(ν)を持ちかつ酸化鉛を含有しない光学ガラスとして、Gd等を含んだ種々のガラスが開発されており、例えば特許文献2等に開示されている。
【特許文献1】特開平02−188442
【特許文献2】特開昭52−068217
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたガラスを用いて、精密モールドプレスを実施する場合の環境は金型の酸化防止のために還元性雰囲気に保たれているため、ガラス成分に酸化鉛を含有しているとガラス表面から還元された鉛が析出し、これが金型表面に付着して、金型の精密面を維持できなくなるという問題点があった。又、酸化鉛は環境に対して有害であり、含有しないことが望まれている。さらに、ZnO成分を多量に含有するため化学的耐久性が非常に悪いという問題があった。
【0006】
特許文献2に開示されているガラスは、Gd、Y、Ta成分が含有しているため原料費が高価であり、さらにYb成分が含有している事で、赤外域で吸収が見られ赤外域で使うレンズとしては好ましくない。また実際に光学機器に搭載するには耐失透性と化学的耐久性が不十分であった。
【0007】
本発明は、耐失透性および化学的耐久性に優れると共に、1.59以上1.65以下の屈折率(n)を有し、59以上67以下のアッベ数(ν)の光学定数を持ち、かつ安価で酸化鉛を含有しない光学ガラスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、酸化物基準のガラス全質量に対して、質量%でP成分、BaO成分、B成分及びZnO成分を所定範囲で、含有させることによって、鉛を含有しなくとも、上記特定範囲の光学恒数を有した光学ガラスを得ることができ、かつ耐失透性および化学的耐久性に優れた光学ガラスを完成するに至った。具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1)酸化物基準の質量%で、P 30〜60%, BaO 30〜50%, B 0〜10%の範囲で含有し、質量比B/Pが0.2以下である光学ガラス。
【0010】
(2)酸化物基準の質量%で、ZnOを0.5%以上含有する(1)の光学ガラス。
【0011】
(3)酸化物基準の質量%で、ZnOを0.5〜3%含有する(1)又は(2)記載の光学ガラス
【0012】
(1)から(3)の態様によれば、1.59以上1.65以下の屈折率(n)を有し、59以上67以下のアッベ数(ν)の光学定数を有しかつ耐失透性や化学的耐久性に優れた光学ガラスを得ることができる
【0013】
(4) B/Pの値が0.1〜0.2の範囲であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の光学ガラス。
【0014】
(4)の態様によれば、B/Pの割合をより限定することでより安定性が向上し、耐失透性に優れた光学ガラスが得られる。
【0015】
(5) 酸化物基準の質量%で、BaO+CaOの合計量が44〜50%の範囲であり、かつSrOを3%未満含有する(1)〜(4)のいずれかに記載の光学ガラス。
【0016】
(5)の態様によれば、BaO+CaOの範囲が上記の範囲であればガラスの液相温度の低下、安定性を向上することができる。またSrOの含有量を3%未満にすることで耐失透性をさらに向上させることができる。
【0017】
(6)酸化物基準の質量%で、WO成分含有量が5%未満である(1)〜(5)のいずれかに記載の光学ガラス。
【0018】
(6)の態様によれば、WO成分の含有量が5%未満であることで、ガラスのさらに安定性が向上する。
【0019】
(7) 酸化物基準の質量%で、
MgO成分 0%を超え10.0%以下、及び
ZnO成分 0%を超え〜5.0% 並びに
LiO成分 0〜5.0%及び/又は
CaO成分 0〜10.0%及び/又は
SrO成分 0〜3.0%未満及び/又は
La成分 0〜5.0%及び/又は
Al成分 0〜5.0%及び/又は
WO成分 0〜5.0%未満及び/又は
Sb成分 0〜1.0%である(1)〜(6)のいずれかに記載の光学ガラス。
【0020】
(7)の態様によれば、は各成分の範囲を所定の範囲に限ることにより、より安定的してガラスの生産ができるようになる。
【0021】
(8)1.59以上1.65以下の屈折率(n)、59〜67のアッベ数(ν)である(1)から(7)のいずれかに記載の光学ガラス。
【0022】
(8)の態様によれば、屈折率、アッベ数が上記範囲にあるガラスであるため、レンズ枚数を減少し、光学ガラスを使用する機器の軽量化、小型化を図ることが出来る。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、1.59以上1.65以下の屈折率(n)を有し、59以上67以下のアッベ数(ν)の範囲の光学恒数を有する光学ガラスを得ることができ、さらに化学的耐久性および耐失透性に優れた光学ガラス、光学素子を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0025】
本発明の光学ガラスに含有できる成分について説明する。以下、特に断りのない限り各成分の含有率は酸化物基準の質量%で表すものとする。
【0026】
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中において、各成分の含有率は特に断りがない場合は、全て酸化物基準のガラス全質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物基準」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が溶融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0027】
<必須成分、任意成分について>
上記本発明の光学ガラスにおいて、P成分はガラス形成成分であり、ガラスの溶解温度を下げる成分である。特に、P成分の含有率を30.0%以上にすることで、ガラス化しやすくなり、60.0%以下にすることで、所望の屈折率を得ることができる。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するP成分の含有率は、好ましくは30.0%、より好ましくは35.0%、最も好ましくは40.0%を下限とし、好ましくは60.0%、より好ましくは50.0%、最も好ましくは45.0%を上限とする。P成分は、原料として例えばAl(PO、Ca(PO、Ba(PO、BPO、HPO等を用いてガラス内に含有できる。
【0028】
成分は、ガラス形成酸化物として有用な成分であり、安定なガラスの形成を促し、耐失透性を高める成分である。従って、上限は好ましくは10%、より好ましくは8.5wt%、最も好ましくは7.5wt%として含有することが出来る。B成分は、原料として例えばHBO、Na、Na・10HO、BPO等を用いてガラス内に含有できる。
【0029】
本発明の光学ガラスでは、質量比B/Pが、0.2以下であることが好ましい。この質量比を所定の範囲にすることで、耐失透性が向上され低い温度で溶解することができる。したがって、好ましくは0.2、より好ましくは0.18、最も好ましくは0.15を下限とし、好ましくは0.1、より好ましくは0.11、最も好ましくは0.12を下限とする。
【0030】
BaO成分は、ガラスの屈折率を高め、ガラスの耐失透性を高める成分であり、ガラス中の任意成分である。特に、BaO成分の含有率を50.0%以下にすることで、所望の屈折率を得易くし、耐失透性や化学的耐久性の低下を抑えることができる。また30%以上とすることにより失透性を改善出来る。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するBaO成分の含有率は、好ましくは50.0%、より好ましくは45.0%、最も好ましくは40.0%を上限とし、好ましくは30%、より好ましくは33.0%、最も好ましくは35.0%を下限とする。BaO成分は、原料として例えばBaCO、Ba(NO、BaF等を用いてガラス内に含有できる。
【0031】
ZnO成分は、ガラスの溶融性を向上する成分であり、失透安定性を向上させ得る成分である。したがって、酸化物基準のガラス全質量に対するZnO成分の含有率は、好ましくは0%を超え、より好ましくは0.5%、最も好ましくは1.0%を下限とし、好ましくは5%、より好ましくは3.0%、最も好ましくは2.5%を上限とする。ZnO成分は、原料として例えばZnO、ZnF等を用いてガラス内に含有できる。
【0032】
MgO成分は、ガラスの液相温度を下げ、ガラスの屈折率を調整するのに有用な成分である。特に、MgO成分の含有率を10.0%以下にすることで、所望の屈折率を得やすくし、ガラスの失透を低減することができる。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するMgO成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、最も好ましくは4.0%を上限とし、好ましくは0%を超え、より好ましくは1.0%、最も好ましくは2.5%を下限として含有する。MgO成分は、原料として例えばMgCO、MgF等を用いてガラス内に含有できる。なお、MgO成分は含有しなくとも本発明の所望の物性を有する光学ガラスを得ることはできる。
【0033】
Al成分は、ガラスの化学的耐久性を向上し、ガラス溶融時の粘度を高める任意成分である。特に、Al成分の含有率を5.0%以下にすることで、ガラスの溶融性を高めつつ、ガラスの失透傾向も弱めることができる。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するAl成分の含有率は、好ましくは5.0%、より好ましくは4.5%、最も好ましくは4.0%を上限とする。Al成分は、原料として例えばAl、Al(OH)、AlF等を用いてガラス内に含有できる。
【0034】
CaO成分は、ガラスの液相温度を下げ、ガラスの耐失透性を高める任意成分である。特に、CaO成分の含有率を10.0%以下にすることで、所望の高屈折率及び高分散を得易くし、耐失透性や化学的耐久性の低下を抑えることができる。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するCaO成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.5%、最も好ましくは7.0%を上限とする。CaO成分は、原料として例えばCaCO、CaF等を用いてガラス内に含有できる。
【0035】
なお、所望の光学恒数を有しつつ耐失透性および化学的耐久性が良いガラスを得るためには、酸化物基準の質量%で、BaO+CaOの合計量を40〜55%にすることが好ましい。BaO+CaOの合計量の好ましい範囲は、40.0〜55.0%、より好ましくは42.0〜52.0、さらに好ましくは44.0〜50.0である。
【0036】
La成分は、ガラスの屈折率を高めるとともに、ガラスの化学的耐久性を向上する任意成分である。特に、La成分の含有率を5.0%以下にすることで、所望の高分散を得易くすることができ、ガラスの耐失透性をも高めることができる。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するLa成分の含有率は、好ましくは5.0%、より好ましくは4.0%、最も好ましくは3.0%を上限とする。La成分は、原料として例えばLa、La(NO・XHO(Xは任意の整数)等を用いてガラス内に含有できる。
【0037】
WO成分は、ガラスの屈折率及び分散を調整し、ガラスの耐失透性を向上する成分である。特に、WO成分の含有率を5.0%以下にすることで、ガラスの耐失透性を高めることができる。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するWO成分の含有率は、好ましくは5.0%、より好ましくは3.0%、最も好ましくは2.0%を上限とする。WO成分は、原料として例えばWO等を用いてガラス内に含有できる。
【0038】
LiO成分は、ガラスの溶融温度を下げる成分であるとともに、ガラス形成時の耐失透性を高める成分である。特に、LiO成分の含有率を5.0%以下にすることで、所望の屈折率を得易くすることができ、ガラスの安定性を高めて失透の発生を低減できる。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するLiO成分の含有率は、好ましくは5.0%、より好ましくは3.0%、最も好ましくは2.0%を上限とする。LiO成分は、原料として例えばLiCO、LiNO、LiF等を用いてガラス内に含有できる。
【0039】
Sb成分は、溶融ガラスの脱泡に有用な任意成分である。特に、Sb成分の含有率を1.0%以下にすることで、ガラス溶融時における過度の発泡を生じ難くすることができ、Sb成分が溶解設備と合金化し難くすることができる。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するSb成分の含有率は、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.7%、最も好ましくは0.5%を上限とする。Sbは、原料として例えばSb、Sb、NaSb・5HO等を用いてガラス内に含有することができる。
【0040】
SrOは、ガラスの屈折率を調整し、ガラスの失透性を改善する成分である。特に、SrO成分の含有率を3.0%以下にすることで、所望の屈性率を得やすくすることができる。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するSrO成分の含有率は、好ましくは3.0%、より好ましくは、2.5%、最も好ましくは2.0%を上限とする。SrO成分は、原料として例えばSr(NO、SrF等を用いてガラス内に含有することができる。
【0041】
NaO成分は、ガラスの溶融性を改善し、失透を低減する成分である。特にNaO成分の含有率を5.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、ガラスの安定性を高めて失透等の発生を低減することができる。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するNaO成分の含有率は、好ましくは5.0%、より好ましくは3.5%、最も好ましくは3.0%を上限とする。NaO成分は、原料として例えばNaCO、NaNO、NaF,NaSiF等を用いてガラス内に含有することができる。
【0042】
O成分は、ガラスの溶融性を改善するとともに、ガラスの屈折率及びアッベ数を調整する成分である。特に、KO成分の含有率を5.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、ガラスの安定性を高めて失透等の発生を低減することができる。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するNaO成分の含有率は、好ましくは5.0%、より好ましくは3.5%、最も好ましくは3.0%を上限とする。KO成分は、原料として例えば、KCO,KNO、KF、KHF、KSiF等を用いてガラス内に含有することができる。
【0043】
SiO成分は、安定なガラス成形を促し、光学ガラスとして好ましくない失透を低減する成分である。特に、SiO成分の含有率を5.0%以下にすることで、本発明が目的とする屈折率を得やすくすることが出来る。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するSiO成分の含有率は、好ましくは3.0%、より好ましくは2.0%、最も好ましくは1.0%を上限とする。SiO成分は、原料として例えば、SiO、KSiF、NaSiF等を用いてガラス内に含有することができる。
【0044】
Ta成分は、ガラスの屈折率を調整し、ガラスを安定化させる成分である。特に、Ta成分の含有率を15.0%以下にすることで希少鉱物資源であるTa成分の使用量が低減されるため、ガラスの材料コストを低減することができる。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するTa成分の含有率は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、最も好ましくは5.0%を上限とする。Ta成分は、原料として例えばTa等を用いてガラス内に含有することができる。
【0045】
TiO成分は、ガラスの屈折率およびアッベ数を調整する成分である。特にTiO成分の含有率を15.0%以下にすることで、ガラスの着色が低減し、特に可視短波長(500nm以下)におけるガラスの透過率を改善することができる。従って、酸化物基準のガラス全質量に対するTiO成分の含有率は、好ましくは15.0%、より好ましくは12.0%、最も好ましくは10.0%を上限とする。TiO成分は、原料として例えばTiO等を用いてガラス内に含有することができる。
【0046】
Nb成分は、ガラスの屈折率を高め、ガラスを安定化する成分である。特に、Nb成分の含有率を20.0%以下にすることで、ガラス製造時の溶解温度の上昇を抑えることができる。従って、ガラス酸化物基準のガラス全質量に対するNb成分の含有率は、好ましくは20.0%、より好ましくは18.0%、最も好ましくは16.0%を上限とする。Nb成分は、原料として例えばNb等を用いてガラス内に含有することが出来る。
【0047】
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
【0048】
本発明の光学ガラスには、他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。ただし、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
【0049】
また、PbO等の鉛化合物及びAsなどの砒素化合物は、環境負荷が高い成分であるため、実質的に含有しないこと、すなわち、不可避な混入を除いて一切含有しないことが望ましい。これにより、特別な環境対策上の措置を講じなくとも、この光学ガラスを製造し、加工し、及び廃棄することができる。
【0050】
さらに、Th、Cd、Tl、Os、Be,及びSeの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。したがって、環境上の影響を重視する場合には、これらを実質的に含有しないことが好ましい。
【0051】
次に本発明の光学ガラスの物性について説明する。
【0052】
前述とおり、本発明の光学ガラスは光学設計上の有用性の観点から、好ましくは1.59以上1.65以下の屈折率(n)を有し、59以上67以下のアッベ数(ν)の範囲の光学定数を有し、より好ましくは1.60以上1.63以下の屈折率(n)を有し、かつ62以上65以下のアッベ数(ν)の範囲の光学定数を有する。
【0053】
本発明の光学ガラスは光学素子製造の過程において1回以上の洗浄を行うため、ISO―8424:1987(E)の測定方法に準拠して測定した耐水性(RW)値が1又は2であることが好ましく、1であることより好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
本発明のガラスの実施例の組成を、これらのガラスの屈折率(nd)、アッベ数(νd)の値と共に表1に示す。表中、各成分の組成は質量%で表示するものとする。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示した本発明の実施例の光学ガラス(No.1〜5)は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の通常の光学ガラス用原料を表1に示した各実施例の組成の割合となるように秤量し、混合し、白金るつぼに投入し、組成による溶融性に応じて、1000〜1250℃で、3〜5時間溶融、清澄、攪拌して均質化した後、金型等に鋳込み徐冷することにより得ることができた。
【0058】
屈折率(nd)及びアッベ数(νd)は徐冷降温速度を−25℃/時にして得られた光学ガラスについて測定した。
【0059】
耐水性(RW)値はISO―8424:1987(E)の測定方法に準拠して測定したものである。
【0060】
表1に表されるように、本発明の実施例(NO.1〜5)の光学ガラスは、いずれも屈折率(nd)が1.59〜1.65、アッベ数(νd)が59.0〜67であり、かつ耐水性に優れていた。
【0061】
従って、本発明の実施例の光学ガラスは、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が所望の範囲内にありながら、安価で耐失透性、化学的耐久性に優れることが明らかになった。他方、比較例1及び2の光学ガラスはZnO成分が入っていない、またBaO+CaOの質量合計比が44.0以下のため、化学的耐久性に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準の質量%で、P 30〜60%, BaO 30〜50%, B 0〜10%の範囲で含有し、質量比B/Pが0.2以下である光学ガラス。
【請求項2】
酸化物基準の質量%で、ZnOを0.5%以上含有する請求項1の光学ガラス。
【請求項3】
酸化物基準の質量%で、ZnOを0.5〜3%含有する請求項1又は2記載の光学ガラス。
【請求項4】
/Pの値が0.1〜0.2の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項5】
酸化物基準の質量%で、BaO+CaOの合計量が44〜50%の範囲であり、かつSrOを3%未満含有する請求項1〜4のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項6】
酸化物基準の質量%で、WO成分含有量が5%未満である請求項1〜5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項7】
酸化物基準の質量%で、
MgO成分 0%を超え10.0%以下、及び
ZnO成分 0%を超え〜5.0% 並びに
LiO成分 0〜5.0%及び/又は
CaO成分 0〜10.0%及び/又は
SrO成分 0〜3.0%未満及び/又は
La成分 0〜5.0%及び/又は
Al成分 0〜5.0%及び/又は
WO成分 0〜5.0%未満及び/又は
Sb成分 0〜1.0%である請求項1〜6のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項8】
1.59以上1.65以下の屈折率(n)、59〜67のアッベ数(ν)である請求項1〜7のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの光学ガラスからなる光学素子。

【公開番号】特開2010−202418(P2010−202418A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46450(P2009−46450)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】