説明

光学デバイスの製造方法、光学用両面粘着テープ、光学用両面粘着テープ付き光学部材及び光学デバイス

【課題】製品歩留まりを向上させることができる光学デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】(a)第1の光学部材10を準備する工程と、(b)第2の光学部材20を準備する工程と、(c)第1の基材層13と、第1の基材層の一方の面上に配置される第1の粘着層11と、第1の基材層の他方の面上に配置される紫外線硬化成分を含む中間層2と、中間層の第1の基材層と接する面の反対面上方に配置される第2の粘着層21とを有する光学用両面粘着テープの第1の粘着層を、第1の光学部材の一方の面に貼り合わせる工程と、(d)前記光学用両面粘着テープの第2の粘着層を、第2の光学部材の一方の面に貼り合わせることにより、第1の光学部材と第2の光学部材を光学用両面粘着テープを介して貼り合わせる工程とからなり、(e)(d)における貼り合せが良好に行われなかった場合に、中間層を分離して貼り直しができる工程からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学デバイスの製造方法、光学用両面粘着テープ、光学用両面粘着テープ付き光学部材及び光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを有する携帯電話機、携帯情報端末をはじめとする移動体通信端末の出入力デバイスである表示画面は、視認性向上及び省電力を目的として、タッチパネルが光学用両面粘着テープにより全面、直に液晶ディスプレイ等に貼り合わせられている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
タッチパネルと液晶ディスプレイを表示画面外枠の部分のみで両面粘着テープにより貼り合わせる手法が知られている。この手法は、貼り合わせが容易であり、また、粘着面積が小さいため、何らかの理由によりタッチパネルと液晶ディスプレイの両者を再分離して再加工に使用する、いわゆるリワーク性も良好である。
【0004】
一方、表示画面外枠の部分のみで張り合わせる手法は、タッチパネルと液晶ディスプレイとの間に空間が存在するために、液晶ディスプレイから発せられる光がタッチパネルの貼り合わせ面(底面)側で乱反射して映像がにじむという問題がある。
【0005】
この乱反射を抑制する目的で、タッチパネルの底面に反射防止処理が施される。この反射防止処理では、基材に塗布された反射防止膜が、入射光の位相を半波長ずらすように反射し、該反射光と入射光とが打ち消しあうような膜厚に設定され、人間の目に感度が高いとされる550nmを中心になるべく広い可視光の波長領域で打ち消しあうような多層構造となっている。そのため、コストがかさむことに加えて、色味変化や明度低下など、視認性の一部を損なうことがある。
【0006】
これに対して、上述したタッチパネルを光学用両面粘着テープにより液晶ディスプレイ等の表示画面全体に直に貼り合せる手法は、上述の乱反射を防ぐことができ、視認性向上及び省電力化を果たす上での効果が高いため、現在広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−238915号公報
【特許文献2】特開2005−255877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液晶ディスプレイは、一般的に光学ガラスを基板として用いた薄板状の積層体であり、可撓性は低い。光学ガラスを基板として用いた薄板状のタッチパネルを、液晶ディスプレイの表示画面全面に貼り合せる場合、双方の可撓性が低いため、片方を撓ませて貼り合せる手法は採用できない。また、タッチパネルは各種移動体通信端末等において最表面に配置される画面入力デバイスであるため、張り合わせ不良に起因する気泡及び異物混入等は外観上許容されない。したがって、貼り合わせに要求される水準は非常に高いものとなっている。
【0009】
通常、光学用両面粘着テープは、粘着剤に凝集力を持たせつつ粘着力、保持力、及び使用利便性を制御している。そのため、液晶ディスプレイとガラス基板のタッチパネルなど可撓性の低い被着体どうしを全面で貼り合せると、良好な貼り合わせが行われた場合は問題がないが、貼り合わせ不良などの理由から両者を再分離したい場合、再分離は非常に困難である。
【0010】
片方の被着体から両面粘着テープの粘着層を割裂により引き剥がすこと、すなわち両面粘着テープの界面破壊によって被着体を再分離することは、たとえ両面粘着テープの粘着力が低くても双方の被着体が撓まないと非常に困難である。また、剪断力により両面粘着テープの粘着層を横方向(粘着面に水平な方向)にずらすように凝集破壊させて両被着体を再分離することも、粘着剤の凝集力のため非常に困難である。
【0011】
薄板状の可撓性の低い被着体(光学部材)どうしを全面貼り合わせる場合、従来の光学用両面粘着テープを用いると加工難度が高く、さらに、リワーク性が著しく低く、製品歩留まりを下げている。液晶ディスプレイやタッチパネルなどの光学部材は、それぞれ所定の製造工程を経て組み上げられ、両者を貼り合わせる段階では部品単価が高額となっているので、製品歩留まりを上げることが求められている。
【0012】
本発明の目的は、製品歩留まりを向上させることができる光学デバイスの製造方法を提供することである。
【0013】
また、本発明の他の目的は、製品歩留まりを向上させることができる光学デバイスの製造方法で使用される光学用両面粘着テープを提供することである。
【0014】
また、本発明の他の目的は、製品歩留まりを向上させた光学デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一観点によれば、 光学デバイスの製造方法は、(a)第1の光学部材を準備する工程と、(b)第2の光学部材を準備する工程と、(c)第1の基材層と、前記第1の基材層の一方の主面上に配置される第1の粘着層と、前記第1の基材層の他方の主面上に配置される未凝集状態の紫外線硬化成分を含む中間層と、前記中間層の前記第1の基材層と接する面の反対面上方に配置される第2の粘着層とを有する光学用両面粘着テープの前記第1の粘着層を、前記第1の光学部材の一方の主面に貼り合わせる工程と、(d)前記光学用両面粘着テープの前記第2の粘着層を、前記第2の光学部材の一方の主面に貼り合わせることにより、前記第1の光学部材と前記第2の光学部材を前記光学用両面粘着テープを介して貼り合わせる工程と、(e)前記工程(d)における貼り合せが良好に行われなかった場合に、剪断力により前記中間層を分離して、前記第1の光学部材と前記第2の光学部材とを分離する工程と、(f)前記工程(d)における貼り合せが良好に行われた場合に、紫外線を照射することにより、前記中間層を硬化凝集させる工程とを有する。
【0016】
本発明の他の観点によれば、光学用両面粘着テープは、第1の基材層と、前記第1の基材層の一方の主面上に配置される第1の粘着層と、前記第1の基材層の他方の主面上に配置される未凝集状態の紫外線硬化成分を含む中間層と、前記中間層の前記第1の基材層と接する面の反対面上方に配置される第2の粘着層とを有する。
【0017】
本発明の他の観点によれば、光学用両面粘着テープ付き光学部材は、第1の基材層と、前記第1の基材層の一方の主面上に配置される第1の粘着層と、前記第1の基材層の他方の主面上に配置される未凝集状態の紫外線硬化成分を含む中間層と、前記中間層の前記第1の基材層と接する面の反対面上方に配置される第2の粘着層と、一方の主面が前記第1の粘着層と粘着された光学部材とを有する。
【0018】
本発明の他の観点によれば、光学デバイスは、第1の基材層と、前記第1の基材層の一方の主面上に配置される第1の粘着層と、前記第1の基材層の他方の主面上に配置される紫外線照射により硬化凝集された中間層と、前記中間層の前記第1の基材層と接する面の反対面上方に配置される第2の粘着層と、一方の主面が前記第1の粘着層と粘着された第1の光学部材と、一方の主面が前記第2の粘着層と粘着された第2の光学部材とを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、製品歩留まりを向上させることができる光学デバイスの製造方法を提供することができる。
【0020】
また、本発明によれば、製品歩留まりを向上させることができる光学デバイスの製造方法で使用される光学用両面粘着テープを提供することができる。
【0021】
さらに、本発明によれば、製品歩留まりを向上させた光学デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例による4層構造の光学用両面粘着テープ100の厚さ方向の概略断面図である。
【図2】本発明の実施例による光学用両面粘着テープ100の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図3】本発明の実施例による5層構造の光学用両面粘着テープ101の構成及び製造方法を説明するための厚さ方向の概略断面図である。
【図4】本発明の実施例による光学用両面粘着テープ100を用いた光学デバイス200及びその製造方法を説明するための光学デバイス200の厚さ方向概略断面図である。
【図5】本発明の実施例による光学用両面粘着テープ101を用いた光学デバイス201及びその製造方法を説明するための光学デバイス201の厚さ方向概略断面図である。
【図6】本発明の実施例による光学用両面粘着テープ100を用いた光学デバイス200の製造方法において、2枚の光学部材10及び20を再分離する工程を説明するための概略断面図である。
【図7】本発明の実施例による光学用両面粘着テープ100又は101を用いた光学デバイス200の製造方法におけるリワーク性の確認結果を表す表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施例による4層構造の光学用両面粘着テープ100の厚さ方向の概略断面図である。図2は、本発明の実施例による光学用両面粘着テープ100の製造方法を説明するための概略断面図である。
【0024】
光学用両面粘着テープ100は、粘着層11、21、基材層13、剥離フィルム14、24及び剪断層(中間層)2aを含んで構成される多層構造の光学用両面粘着テープである。光学用両面粘着テープ100は、使用時に剥離される剥離フィルム14及び24を除いて4層構造を有している。
【0025】
まず図2(A)に示すように、剥離フィルム14上に粘着層11を塗布形成する。
【0026】
粘着層11は、被着体に光学用両面粘着テープ100を粘着させるための層であり、全光線透過率90%程度以上の高透明で、分子中にカルボン酸残基を含まず、かつ紫外線吸収剤が成分として配合されていないアクリル系粘着剤と硬化剤を含んで構成される。粘着層11の乾燥後の厚みは、35〜80μmである。
【0027】
配合材料であるアクリル系粘着剤はハンドリングを加味してメチルエチルケトン(MEK)、トルエン、酢酸エチルなどの有機溶剤に溶解された溶液の形態として、当該アクリル系粘着剤の凝集に最も適する硬化剤とともに、市販品を使用可能である。これらの配合材料の混合溶液を粘度1000〜2000mPa・sとなるように上記MEK、トルエン、酢酸エチルなどの有機溶剤のうちの一つあるいは複数の組み合わせで調整し、図2(A)に示すように、剥離フィルム14上に、コンマコーターあるいはリバースコーターにて均一な厚さに塗布して粘着層11を形成する。なお、粘着剤として、アクリル系粘着剤の他に、シリコーン系、ウレタン系、エポキシ系の粘着剤の使用が考えられる。
【0028】
剥離フィルム14は、粘着層11の乾燥後、被着体に粘着させるまでの間、粘着層11を保護するためのフィルムである。剥離フィルム14は、例えば、シリコーン剥離剤が塗布された市販のPETフィルムである。粘着層11に含まれる粘着剤に対する剥離力が100〜200mN/50mmの範囲内で、フィルム厚25〜125μmの範囲内のものが使用可能である。なお、フィルム厚25〜50μmのPETフィルムが製造工程上あるいは使用に際して、扱いやすく好ましい。なお、図2(A)に示す状態とした後に、次の工程までの間、粘着層11の剥離フィルム14と粘着している面とは逆の面に、剥離フィルム14と同等の剥離力又は軽い剥離力を有する剥離フィルムを一時的に貼り合わせても良い。
【0029】
その後、図2(B)に示すように、基材層13を粘着層11の剥離フィルム14と粘着している面とは逆の面に貼り合わせる(又は形成する)。
【0030】
基材層13は、フィルム素材自体もしくはその少なくとも片面が易接着処理で官能基がついた状態又はコロナ処理により表面があらされた状態で、紫外線露光により硬化凝集する剪断層2aが接着可能なプラスチックフィルムである。
【0031】
基材層13の素材としては、ポリカーボネート(PC)、易接着処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが使用可能である。基材層13は、全光線透過率が90%程度以上、内部ヘーズ1%程度以下の高透明フィルムであることが望ましいが、全光線透過率が90%以下、内部ヘーズ1%以上であっても、厚さ等の条件により使用可能である。
【0032】
また、紫外線硬化型オリゴマーと光重合開始剤を主成分とする高透明な配合物を均一厚みのフィルム状にコンマコーターあるいはリバースコーターにて、粘着層11上に塗布形成し、紫外線硬化させて紫外線硬化フィルムを形成して基材層13としても良い。この紫外線硬化フィルムは、塗布形成によるため、紫外線硬化後の厚さ5〜80μmの任意の厚みにすることが可能である。
【0033】
基材層13の厚さは、5〜50μmとすることができる。なお、市販のプラスチックフィルムは厚さ6〜38μmのものが入手可能であり、光学用両面粘着テープ100の総厚みを減ずる観点から可能な限り薄いものが好ましい。紫外線硬化フィルムを用いる場合は、加工が容易でフィルム厚さが可能な限り小さい10〜20μmが好ましい。
【0034】
次に、図2(C)に示すように、基材層13の粘着層11と粘着している面とは逆の面上に、剪断層2aを塗布形成する。
【0035】
剪断層(中間層)2aは、1種類又は複数種類の紫外線硬化型オリゴマーを乾燥時重量部90部以上、及び紫外線硬化型オリゴマーを重合させるために必要な光重合開始剤適当量を含んで構成される高透明(全光線透過率90%以上)の未凝集層である。光学用両面粘着テープ100の未使用時(紫外線照射前)には、剪断層2aは未凝集状態であり、紫外線露光によって、高透明状態を維持しつつ硬化凝集するとともに、基材層13及び粘着層21(後述する5層構造の光学用両面粘着テープ101の場合は基材層13及び23)に接着して硬化層2となる。
【0036】
剪断層2aの厚さは、1〜10μmであることが好ましく、2〜4μmであることがさらに好ましい。剪断層2aの厚さが10μmを超えると、剪断層2aの紫外線硬化型オリゴマーの選定にかかわらず、剪断層2aの成分が光学用両面粘着テープ100の端面から漏れ出しやすくなるため、未使用保管時あるいは使用に際して利便性が低くなる。
【0037】
剪断層2aの未凝集状態は、180°ピール法により確認することができる。室温(23℃)においては、300〜600mN/25mmで凝集破壊により、光学用両面粘着テープ100は、基材層13側と粘着層21側とに(後述する5層構造の光学用両面粘着テープ101の場合は基材層13側と基材層23側とに)剪断層2aの中央部から分離し、50℃に加熱された状態では、100〜200mN/25mmで同様に分離する。
【0038】
剪断層2aの未凝集状態に対する室温下でのピール法による同測定値が300mN/25mmより低い数値、すなわち剪断層2aの乾燥時の粘度が低い状態では、未使用保管時あるいは使用に際して剪断層成分が流動し、光学用両面粘着テープ100の端面からもれ出る可能性があるとともに、剥離フィルム14(又は24)を剪断層2aが分離しないように剥がす事が困難である。一方、50℃に加熱された状態において、ピール法による同測定値が500mN/25mmよりも高い場合、すなわち剪断層2aの乾燥時の粘度が高い場合は、剪断による分離が困難となる。なお、剪断層2aの乾燥時の粘度の調整は、使用する紫外線硬化型樹脂の選定及び組み合わせによって可能である。
【0039】
剪断層2aの成分として用いる紫外線硬化型オリゴマーは、分子骨格中に複数のアクリレート飽和基又はメタアクリレート飽和基を有する紫外線硬化型オリゴマーであればどのようなものでもよく、市販品として豊富な種類のポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリウレタンアクリレート系などの紫外線硬化型オリゴマーの中から選択可能である。
【0040】
剪断層2aの成分として用いる光重合開始剤は、カルボニル化合物に代表される、波長450nm程度よりも短波長側の紫外線を吸収することにより自身が励起され、ついで光開裂反応、電子移動、あるいは周辺の分子から水素引き浮き反応を引き起こしてラジカルを生成するものであればいずれでも良く、市販品としてもベンゾフェノン系、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾインエーテル系、あるいはベンジルジメチルケタール系などの豊富な製品の中から選択可能である。なお、本発明の実施例では、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製のイルガキュア651(ベンジルメチルケタール)を用いた。なお、光重合開始剤の適当量は、乾燥時重量部にして10以下が好ましく、紫外線硬化型オリゴマーの光重合(硬化)反応効率の観点から、0.1〜5がさらに好ましい。
【0041】
上述の剪断層材料は混合溶液の粘度が300〜1000mPa・sとなるように、MEKや酢酸エチルなどの有機溶剤のうちの一つあるいは複数で調整し、基材層13の表面に乾燥後の厚みが1〜4μmとなるようにグラビア印刷により塗布する。溶剤は100℃で15分間乾燥して蒸発させる。
【0042】
次に、図2(D)に示すように、剥離フィルム24上に粘着層21を塗布形成する。剥離フィルム24上への粘着層21の塗布形成は、図2(A)に示す剥離フィルム14上への粘着層11の塗布形成と同様の工程で行う。また、剥離フィルム24及び粘着層21は、それぞれ剥離フィルム14及び粘着層11と同様の構成である。剥離フィルム24及び粘着層21の積層は、図2(A)に示す剥離フィルム14及び粘着層11の積層と同一組成であるので、図2(A)に示す剥離フィルム14及び粘着層11と同時に作製するようにしても良い。
【0043】
最後に、図1に示すように、図2(C)に示す剥離フィルム14、粘着層11、基材層13及び剪断層2aの積層と図2(D)に示す剥離フィルム24及び粘着層21の積層を剪断層2aと粘着層21を重ねることにより貼り合わせて、4層構造の光学用両面粘着テープ100が完成する。このようにして作製した4層構造の光学用両面粘着テープ100は、室温において未凝集状態の剪断層2aの分離に優先して剥離フィルム14、24が粘着層11、21から剥離するため、2枚の被着体を粘着層11、21の全面に貼り合わせることができる。また、後述するように、2枚の被着体を光学用両面粘着テープ100との接着面と平行な方向にずらすことにより、未凝集状態の剪断層2aを凝集破壊させて、再分離することが可能となる。
【0044】
図3は、本発明の実施例による5層構造の光学用両面粘着テープ101の構成及び製造方法を説明するための厚さ方向の概略断面図である。図3(A)は、本発明の実施例による5層構造の光学用両面粘着テープ101の厚さ方向の概略断面図である。図3(B)は、5層構造の光学用両面粘着テープ101の製造方法を説明するための概略断面図である。
【0045】
この5層構造の光学用両面粘着テープ101が、図1に示す4層構造の光学用両面粘着テープ100と異なる点は、光学用両面粘着テープ101では、接着層21の表面に基材層23が貼り合わせられ(形成され)、その後、基材層23の表面と剪断層2aが接着されているところである。すなわち、この5層構造の光学用両面粘着テープ101は、図3(B)に示す剥離フィルム24、粘着層21、基材層21の積層(図2(B)に示すものと同一の組成である)と、図2(C)に示す剥離フィルム14、粘着層11、基材層13及び剪断層2aの積層とを貼り合わせたものである。その他の構成は、図1に示す4層構造の光学用両面粘着テープ100と同一であるので説明を省略する。
【0046】
図4は、本発明の実施例による光学用両面粘着テープ100を用いた光学デバイス200及びその製造方法を説明するための光学デバイス200の厚さ方向概略断面図である。
【0047】
図5は、本発明の実施例による光学用両面粘着テープ101を用いた光学デバイス201及びその製造方法を説明するための光学デバイス201の厚さ方向概略断面図である。
【0048】
光学デバイス200(又は201)は、2枚の薄板状の光学部材10及び20を、図1に示す光学用両面粘着テープ100(又は図3に示す光学用両面粘着テープ101)を介して貼り合わせたものであり、例えば、タッチパネルつきの表示装置である。なお、光学デバイス200(又は201)は、タッチパネルつきの表示装置に限らず、少なくとも1枚が透明な光学部材10及び20を、光学用両面粘着テープ100(又は101)を介して貼り合わせたものであれば良い。
【0049】
光学部材10は、可撓性の低い高透明の薄板状の光学部材であり、例えば、ガラス基板を使用した抵抗膜方式、表面型静電容量方式、影型静電容量方式のタッチパネルである。
【0050】
光学部材20は、可撓性の低い薄板状の光学部材であり、例えば、液晶ディスプレイパネルである。なお、光学部材20は液晶ディスプレイパネルに限らず、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル等、平面状の表示画面に映像を映し出すものであればどのようなものでも良い。
【0051】
まず、光学用両面粘着テープ100(又は101)の一方の剥離フィルム14(又は24)を剥離し、光学部材10の底面(又は光学部材20の表面)の全面に光学用両面粘着テープ100(又は101)の粘着層11(又は21)の全面を粘着させる。なお、光学部材10の底面(又は光学部材20の表面)に光学用両面粘着テープ100(又は101)を貼り合わせただけの状態での保管、移動、販売等も可能である。
【0052】
次に、光学用両面粘着テープ100(又は101)の他方の剥離フィルム24(又は14)を剥離し、光学部材20の表面(又は光学部材10の底面)の全面に光学用両面粘着テープ100(又は101)の粘着層21(又は11)の全面を粘着させる。
【0053】
なお、貼り合わせ面に気泡が残存する場合は、室温又は50℃、圧力0.5MPaで、1時間程度加圧することにより、ほぼ完全に消失させることができる。この間、未凝集状態の剪断層2aは、貼り合わせ端面からもれ出ることなく層内に保持される。
【0054】
良好な貼り合わせが行われた場合、すなわち、貼り合わせ面に気泡の残存、異物混入等がない等の不良がない場合は、積算照射量300〜1000mJ/cm(測定波長365nm)の紫外線露光により剪断層2aは透明性を保ちつつ硬化凝集して硬化層2となり、基材層13及び粘着層11(図5に示す5層構造の光学用両面粘着テープ101を用いた光学デバイス201の場合は、基材層13と基材層23)と良好に接着する。
【0055】
光学部材10がタッチパネルである場合には、通常、画面外枠に加飾印刷が施されており、剪断層2aの紫外線露光はその部位で遮蔽され、紫外線硬化反応が阻害されることが予想されたが、本発明者らの実験では、入射紫外光は貼り合わせ品の層間で反射し、被遮蔽域の一部にも紫外光が届くため、貼り合わせ品端面及び画面の印刷端部から5mm程度入った部位までは被遮蔽域の剪断層2aが紫外線硬化反応することが確認された。
【0056】
すなわち、画面外枠による被遮蔽域の幅が10mm未満であれば、外部からの紫外線露光により剪断層2aは被遮蔽域も含めて硬化凝集し、基材層13等に良好に接着する。被遮蔽域の幅が10mmを超える場合はその被遮蔽域の端面から5mm程度入った中央部において、剪断層2aの未凝集領域が島状に残存することになるため、それを回避するためには、光学部材(液晶ディスプレイパネル)20のサイズに合わせて、光学用両面粘着テープ100(又は101)の大きさを整える、又は型抜き及びカス上げにより適切な形状に整えてから貼り合わせることが望ましい。
【0057】
図6は、本発明の実施例による光学用両面粘着テープ100を用いた光学デバイス200の製造方法において、2枚の光学部材10及び20を再分離する工程を説明するための概略断面図である。
【0058】
2枚の光学部材10及び20を光学用両面粘着テープ100を介して貼り合わせる工程において、良好な貼り合わせが行われなかった場合、すなわち、貼り合わせ面に気泡の残存、異物混入等の不良がある場合は、図6に示すように、2枚の被着体(光学部材10及び20)の再分離が可能である。紫外線露光以前では、剪断層2aは未凝集状態であり、図6に示すように、2枚の被着体(光学部材10及び20)をずらすように剪断方向(粘着面に平行な方向)に力を加えると、剪断層2aが凝集破壊し、ずれ分離するため2枚の被着体(光学部材10及び20)の再分離が可能である。
【0059】
2枚の被着体(光学部材10及び20)の再分離は室温(23℃前後)でも可能であるが、50℃前後に加熱することにより、未凝集状態の剪断層2aはさらに凝集力を低下させるため、より低い負荷の剪断力で再分離が可能となる。
【0060】
以上のように、本実施例による光学用両面粘着テープ100により、ひとたび貼り合わされた薄板状の撓みにくい2枚の被着体(光学部材10及び20)は、貼り合せ不良又はその他の理由により被着体同士を再分離して、再度貼りあわせたい場合にも、簡単に再分離することができる。
【0061】
なお、再分離した2枚の被着体(光学部材10及び20)の貼りあわせ面のそれぞれには、粘着層11(又は21)、基材層13(片方の光学部材のみ)、及び剪断層2aの未凝集成分を含む光学用両面粘着テープ100の剪断片が、全面に付着している。再分離した2枚の被着体(光学部材10及び20)を再利用する場合には、この剪断片を剥離する必要がある。
【0062】
なお、剪断片には、未凝集剪断層2aに起因するべたつきがあるので、これに対して積算照射量300mJ/cmの紫外線露光を行い、剪断層2aの硬化凝集を行い、べたつきをなくして粘着層11(及び21)及び基材層13と一体化させ、その後に、剪断片を被着体(光学部材10及び20)から剥離することが好ましい。
【0063】
基材層13が含まれる方の光学用両面粘着テープ100の剪断片は、被着体から糊残りなく剥離することが可能である。一方、基材層13が含まれない方の剪断片は、紫外線露光により硬化凝集した硬化層2の剪断片がフィルム基材と同様な働きを示す。しかし、硬化層2は、薄膜であり、強度が不足するので、剪断片に強粘着テープ等を貼り付けて支持体とすることにより、被着体から糊残りなく剥離することが可能である。
【0064】
なお、図6には、光学用両面粘着テープ100を用いた場合のみを図示したが、光学用両面粘着テープ101を用いた場合でも、2枚の被着体(光学部材10及び20)の再分離は、同様に可能である。光学用両面粘着テープ101を用いる場合には、再分離後の双方の被着体(光学部材10及び20)に付着する剪断片に、基材層13又は23が含まれるので、被着体からの剪断片の剥離が、さらに容易に行うことができる。
【0065】
図7は、本発明の実施例による光学用両面粘着テープ100又は101を用いた光学デバイス200の製造方法におけるリワーク性の確認結果を表す表である。
【0066】
本発明者らは、本発明の実施例による光学用両面粘着テープ100又は101を用いた光学デバイス200の製造方法におけるリワーク性を確認するために、2枚の被着体を実施例による光学用両面粘着テープ100又は101を用いて実際に貼り合わせたサンプル(実施例A〜D)を実際に作製し、再分離を試みた。なお、比較例として、2枚の被着体を粘着層のみの光学用両面粘着テープを用いて実際に貼り合わせたサンプル(比較例)も作製して、再分離を試みた。以下の、サンプル(実施例A〜D及び比較例)のすべてにおいて、被着体10及び20として、光学部材の代わりに、厚さ1.1mm、大きさ50mm×50mmのソーダガラスを2枚使用した。以下の、実施例A〜Dのサンプルの説明においては、図4及び図5を参照する。
【0067】
実施例Aのサンプルは、図5に示す5層構造の光学用両面粘着テープ101を用いたものである。まず、シリコーン剥離剤が塗布された厚さ38μmのPET基材フィルム(剥離フィルム)14及び24の剥離面に、コンマコーターにて乾燥後50μmの均一厚さになるように、2液架橋型アクリル系粘着剤を乾燥時重量部99部、イソシアネート系硬化剤を乾燥時重量部1部含む粘度1000〜2000mPa・sの有機溶剤溶液を塗布し、120℃で2分間乾燥させ粘着層11及び21を形成した。その後、両面易接着処理された厚さ38μmのPETフィルム(基材層13及び23)の片面と、粘着層11及び21を貼りあわせ、3日間〜10日間室温下に置き、粘着層11及び21を架橋させた。
【0068】
次に、基材層13の外側面(露出面)に、グラビア塗工により乾燥後4μmの均一厚さになるように、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型オリゴマーを乾燥時重量部97部、ベンジルジメチルケタール光開始剤を乾燥時重量部3部含む粘度300〜1000mPa・sの有機溶剤溶液を塗布し、100℃で1.5分間乾燥させて剪断層2aを形成した。その後、基材層23の外側面(露出面)と剪断層2aの外側面(露出面)とを貼りあわせて、光学用両面粘着テープ101を作製した。
【0069】
作製した実施例Aの光学用両面粘着テープ101の総厚みは180μmであり、ガラス鏡面に対する接着力は27N/25mmであった。これの室温(23℃)における剥離フィルム14及び24の粘着層11及び21からの剥離力を180°ピール法により測定したところ、200mN/50mmであった。これに対して、剪断層2aの凝集破壊に要する分離強度を180°ピール法により測定したところ、400mN/25mmであった。剥離フィルム14及び24の剥離力が、剪断層2aの凝集破壊に要する分離強度と比較して十分に小さかったため、剥離フィルム14及び24を剥離する際に、剪断層2aが分離することがなく、被着体10及び20を貼り合わせることができた。
【0070】
また、剪断層2aの凝集破壊に要する分離強度の測定値は、50℃に加熱することにより、100mN/25mmと弱くなり、貼り合わせた被着体同士を剪断方向にずらすように剪断力を加えると、剪断層2aが分離して、被着体同士を再分離することができた。
【0071】
再分離された被着体10及び20のそれぞれには、光学用両面粘着テープ101の剪断片として粘着層11又は21、基材層13又は23及び凝集破壊した剪断層2aが付着したままであったが、剪断層2aのべたつきを抑制するために高圧水銀灯などにより積算照射量300mJ/cm程度(測定波長365nm)の紫外線露光により硬化させた。これにより、被着体10及び20への新たな糊付着がなく、また、糊残りなく剪断片を被着体10及び20から剥離することができ、良好なリワーク性が確認された。
【0072】
実施例Bのサンプルは、図4に示す4層構造の光学用両面粘着テープ100を用いたものである。剥離フィルム14、粘着層11及び基材層13については、実施例Aと同様に作製し、剥離フィルム24及び粘着層21については、剥離フィルム24上に実施例Aと同様に粘着層21を塗布形成した後に、仮の剥離フィルムを粘着層21の外側面(露出面)に貼りあわせて、3日間〜10日間室温下に置き、粘着層21を架橋させた。仮の剥離フィルムは、剥離フィルム14及び24と同等もしくは弱い剥離強度を呈するものを使用する必要があり、ここでは同等の剥離強度のものを用いた。その後、実施例Aと同様に剪断層2aを形成し、これと粘着層21の外側面(露出面)とを貼りあわせて、光学用両面粘着テープ100を作製した。
【0073】
作製した実施例Bの光学用両面粘着テープ100の総厚みは142μmであり、ガラス鏡面に対する接着力は27N/25mmであった。これの室温(23℃)における剥離フィルム14及び24の粘着層11及び21からの剥離力を180°ピール法により測定したところ、200mN/50mmであった。これに対して、剪断層2aの凝集破壊に要する分離強度を180°ピール法により測定したところ、300mN/25mmであった。剥離フィルム14及び24の剥離力が、剪断層2aの凝集破壊に要する分離強度と比較して小さかったため、実施例Aに比べるとやや困難ではあったが、剥離フィルム14及び24を剥離する際に、剪断層2aが分離することがなく、被着体10及び20を貼り合わせることができた。
【0074】
また、剪断層2aの凝集破壊に要する分離強度の測定値は、50℃に加熱することにより、90mN/25mmと弱くなり、貼り合わせた被着体同士を剪断方向にずらすように剪断力を加えると、剪断層2aが分離して、被着体同士を再分離することができた。
【0075】
なお、実施例Aと同様に、剪断片に対して紫外線露光を行うことにより、被着体10及び20への新たな糊付着がなく、また、糊残りなく剪断片を被着体10及び20から剥離することができ、良好なリワーク性が確認された。
【0076】
実施例Cのサンプルは、実施例Aの基材層13及び23を、片面コロナ処理された厚さ6μmのPETフィルムを使用して作製したものである。その他は実施例Aと同様に作製した。
【0077】
作製した実施例Cの光学用両面粘着テープ101の総厚みは116μmであり、ガラス鏡面に対する接着力は27N/25mmであった。これの室温(23℃)における剥離フィルム14及び24の粘着層11及び21からの剥離力を180°ピール法により測定したところ、200mN/50mmであった。これに対して、剪断層2aの凝集破壊に要する分離強度を180°ピール法により測定したところ、300mN/25mmであった。剥離フィルム14及び24の剥離力が、剪断層2aの凝集破壊に要する分離強度と比較して小さかったため、実施例Aに比べるとやや困難ではあったが、剥離フィルム14及び24を剥離する際に、剪断層2aが分離することがなく、被着体10及び20を貼り合わせることができた。
【0078】
また、剪断層2aの凝集破壊に要する分離強度の測定値は、50℃に加熱することにより、80mN/25mmと弱くなり、貼り合わせた被着体同士を剪断方向にずらすように剪断力を加えると、剪断層2aが分離して、被着体同士を再分離することができた。
【0079】
実施例Cにおいても、実施例A、Bと同様に、剪断片に対して紫外線露光を行うことにより、被着体10及び20への新たな糊付着がなく、また、糊残りなく剪断片を被着体10及び20から剥離することができ、良好なリワーク性が確認された。
【0080】
実施例Dのサンプルは、実施例Aの基材層13及び23を、紫外線硬化によって形成された紫外線硬化型オリゴマーの硬化フィルムを使用して作製したものである。その他は実施例Aと同様に作製した。なお、基材層13及び23の厚みは20μmとした。
【0081】
紫外線硬化型オリゴマーの硬化フィルムは、以下のように作成した。シリコーン剥離剤が塗布された厚さ75μmのPET基材剥離フィルムの剥離面に、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型オリゴマーを乾燥時重量部96部、ベンジルジメチルケタール光開始剤を乾燥時重量部2部、イソシアネート系硬化剤を乾燥時重量部2部含む粘度2000〜4000mPa・sの有機溶剤溶液を、乾燥後20μmの均一厚さとなるように塗布し、120℃で2分間乾燥させた後、別に用意した厚さ25μmの剥離フィルムの剥離面と貼り合わせて、3日間〜10日間室温下に置き、紫外線硬化型オリゴマー層を架橋させた。この紫外線硬化型オリゴマー層に使用するオリゴマーは、複数のウレタンアクリレート系紫外線硬化型オリゴマーから構成され、そのひとつが分子鎖中に水酸基(−OH)を持つため、イソシアネート系硬化剤により接着層の初期凝集力を調整できるため、紫外線照射以前においても2枚の剥離フィルム間で成形可能であり、光学糊としての使用も可能である。
【0082】
また、剥離フィルム14及び24上に実施例Aと同様に粘着層11及び21を塗布形成した後に、仮の剥離フィルムを粘着層11及び21の外側面(露出面)に貼りあわせて、3日間〜10日間室温下に置き、粘着層11及び21を架橋させたものを用意した。
【0083】
粘着層11上の仮の剥離フィルムと紫外線硬化型オリゴマー層の厚さ25μmの剥離フィルムをそれぞれ剥離し、両者をゴムローラーにより貼り合わせて暗所にて1日〜3日放置後、高圧水銀灯などにより積算照射量300〜1000mJ/cm程度(測定波長365nm)となるように紫外線を照射した。紫外線照射により紫外線硬化型オリゴマーは硬化して基材層13を形成し、剥離フィルム14、粘着層11及び基材層13からなる貼り合わせ品を得ることができる。なお、剥離フィルム24、粘着層21及び基材層23からなる貼り合わせ品も同様にして作製する。その後は、実施例Aと同様の工程で、光学用両面粘着テープ101を作製する。
【0084】
作製した実施例Dの光学用両面粘着テープ101の総厚みは144μmであり、ガラス鏡面に対する接着力は22N/25mmであった。実施例A〜Bと比較しての接着力の低下は、基材層13及び23を構成する紫外線硬化型オリゴマーの紫外線硬化反応に際して粘着層11及び21の流動性が一部抑制されたためと考えられるが、粘着力の低下は許容範囲内である。なお、紫外線硬化型オリゴマー層を先に紫外線硬化させてから粘着層と貼り合わせると、接着力の低下は起こらない。
【0085】
実施例Dの室温(23℃)における剥離フィルム14及び24の粘着層11及び21からの剥離力及び、剪断層2aの凝集破壊に要する分離強度を180°ピール法により測定したところ、それぞれ200mN/50mm、600mN/25mmであった。また、剪断層2aの凝集破壊に要する分離強度の測定値は、50℃に加熱することにより、300mN/25mmと弱くなり、貼り合わせた被着体同士を剪断方向にずらすように剪断力を加えると、実施例A〜Cと比べると困難ではあったものの、剪断層2aが分離して、被着体同士を再分離することができた。実施例Dにおいても、被着体同士の貼り合わせが可能であること及びリワーク性が確認された。
【0086】
比較例では、粘着層のみを有する光学用両面粘着テープを作製して、これにより2枚の被着体を貼りあわせた。まず、シリコーン剥離剤が塗布された厚さ75μmのPET基材剥離フィルムの剥離面に、コンマコーターにて乾燥後50μmの均一厚さになるように、2液架橋型アクリル系粘着剤を乾燥時重量部99部、イソシアネート系硬化剤を乾燥時重量部1部含む粘度1000〜2000mPa・sの有機溶剤溶液を塗布し、120℃で2分間乾燥させ粘着層を形成した。その後、厚さ38μmのPET基材剥離フィルムの剥離面と粘着層を貼りあわせ、3日間〜10日間室温下に置き、粘着層を架橋させて、比較例の光学用両面粘着テープを作製した。厚さ38μmの剥離フィルムは、厚さ75μmの剥離フィルムよりも剥離力の軽いものを使用した。
【0087】
作製した比較例の光学用両面粘着テープの総厚みは50μmであり、ガラス鏡面に対する接着力は27N/25mmであった。光学特性及び粘着特性は実施例A〜D同様に優れているものの、被着体同士を貼り合わせた後は、再分離が不可能であり、リワーク性がないことが確認された。
【0088】
実施例A〜Dの剪断層2aは、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型オリゴマーとベンジルジメチルケタール光開始剤とから構成された厚さ4μmの層を形成しており、紫外線照射以前では、未凝集状態であるため、剪断力により分離可能である。これに、積算照射量300〜1000mJ/cm(測定波長365nm)の紫外線を照射すると硬化凝集し、基材層13又は23あるいは粘着層21と強固に接着する。
【0089】
本発明者らは、紫外線照射後の、実施例A〜Dにおける被着体同士の接着状態、接着された被着体を通して得られた全光線透過率及びヘーズ値を測定した。なお、比較例は、紫外線に対する耐性を有するが、紫外線硬化成分を含まないため、図7の表には、参考値として紫外線を照射しない状態の物性値を記載した。全光線透過率及びヘーズ値は、株式会社村上色彩技術研究所のヘーズメーターHM−150を使用して測定した。
【0090】
紫外線照射後の被着体同士の接着状態は、実施例A〜Dのいずれにおいても良好であった。また、比較例においても被着体同士の接着状態は良好であった。全光線透過率は、実施例A〜Dで、それぞれ89.1%、90.1%、89.0%、90.0%であり、比較例の92.0%と比べても十分に高い透過率を有することがわかった。また、ヘーズ値は、実施例A〜Dで、それぞれ0.4%、1.2%、2.8%、1.1%であり、比較例の0.1%と比べても十分に低いことがわかった。
【0091】
以上の結果から、実施例A〜Dによる光学用両面粘着テープを用いた光学デバイスの製造方法では、薄板状の撓みにくい2枚の被着体同士をひとたび貼りあわせた後にも、双方を破壊することなく、簡単に再分離可能であり、リワーク性を備えていることが確認された。
【0092】
以上、本発明の実施例によれば、中間層に未凝集状態の紫外線硬化型樹脂を含む層を挿入した多層構造の光学用両面粘着テープを用いることで、薄板状の2枚の光学部材を貼り合わせる光学デバイスの製造方法において、貼りあわせが良好に行われた場合は紫外線照射を行って、未凝集状態の中間層を効果凝集させ、貼り合せが良好に行われなかった場合は、未凝集状態の中間層を凝集破壊により分離して、薄板状の2枚の光学部材を再分離し、剪断片を除去した後に、再度貼り合わせることが可能となる。これにより、貼りあわせ不良による光学デバイスの製造歩留まりの低下を抑制することが可能となる。
【0093】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0094】
2…剪断層(中間層)、11、21…粘着層、13、23…基材層、14、24…剥離フィルム、10…第1の光学部材(タッチパネル)、20…第2の光学部材(ディスプレイ)、100、101…光学用両面粘着テープ、200、201…光学デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の光学部材を準備する工程と、
(b)第2の光学部材を準備する工程と、
(c)第1の基材層と、前記第1の基材層の一方の主面上に配置される第1の粘着層と、前記第1の基材層の他方の主面上に配置される未凝集状態の紫外線硬化成分を含む中間層と、前記中間層の前記第1の基材層と接する面の反対面上方に配置される第2の粘着層とを有する光学用両面粘着テープの前記第1の粘着層を、前記第1の光学部材の一方の主面に貼り合わせる工程と、
(d)前記光学用両面粘着テープの前記第2の粘着層を、前記第2の光学部材の一方の主面に貼り合わせることにより、前記第1の光学部材と前記第2の光学部材を前記光学用両面粘着テープを介して貼り合わせる工程と、
(e)前記工程(d)における貼り合せが良好に行われなかった場合に、剪断力により前記中間層を分離して、前記第1の光学部材と前記第2の光学部材とを分離する工程と、
(f)前記工程(d)における貼り合せが良好に行われた場合に、紫外線を照射することにより、前記中間層を硬化凝集させる工程と
を有する光学デバイスの製造方法。
【請求項2】
さらに、(g)前記工程(e)の後に、前記第1の光学部材と前記第2の光学部材から、前記光学用両面粘着テープの剪断片を除去する工程を有し、
前記工程(g)の後に、前記工程(c)〜(f)を再度行う請求項1記載の光学デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記光学用両面粘着テープは、さらに、前記中間層と前記第2の粘着層との間に第2の基材層を有する請求項1又は2記載の光学デバイスの製造方法。
【請求項4】
第1の基材層と、
前記第1の基材層の一方の主面上に配置される第1の粘着層と、
前記第1の基材層の他方の主面上に配置される未凝集状態の紫外線硬化成分を含む中間層と、
前記中間層の前記第1の基材層と接する面の反対面上方に配置される第2の粘着層と
を有する光学用両面粘着テープ。
【請求項5】
前記光学用両面粘着テープは、さらに、前記中間層と前記第2の粘着層との間に第2の基材層を有する請求項4記載の光学用両面粘着テープ。
【請求項6】
第1の基材層と、
前記第1の基材層の一方の主面上に配置される第1の粘着層と、
前記第1の基材層の他方の主面上に配置される未凝集状態の紫外線硬化成分を含む中間層と、
前記中間層の前記第1の基材層と接する面の反対面上方に配置される第2の粘着層と、
一方の主面が前記第1の粘着層と粘着された光学部材と
を有する光学用両面粘着テープ付き光学部材。
【請求項7】
さらに、前記中間層と前記第2の粘着層との間に第2の基材層を有する請求項6記載の光学用両面粘着テープ付き光学部材。
【請求項8】
第1の基材層と、
前記第1の基材層の一方の主面上に配置される第1の粘着層と、
前記第1の基材層の他方の主面上に配置される紫外線照射により硬化凝集された中間層と、
前記中間層の前記第1の基材層と接する面の反対面上方に配置される第2の粘着層と、
一方の主面が前記第1の粘着層と粘着された第1の光学部材と、
一方の主面が前記第2の粘着層と粘着された第2の光学部材と
を有する光学デバイス。
【請求項9】
さらに、前記中間層と前記第2の粘着層との間に第2の基材層を有する請求項8記載の光学デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−188595(P2012−188595A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54662(P2011−54662)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(591054761)株式会社ウノン技研 (5)
【Fターム(参考)】