説明

光学パネル装置

【課題】保護パネルに十分な強度が得られ、然も、保護パネルの厚さの影響を受ける特性を良好に維持することが出来る光学パネル装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る光学パネル装置は、光学パネルと、該光学パネルの前面を覆う透光性の保護パネル2と、光硬化性樹脂を硬化させてなり前記光学パネルと保護パネルとの間に介在するボンディング層3を具え、前記保護パネル2は強化ガラス板21によって構成され、該強化ガラス板21の厚さは、2.5mm以上、6mm以下に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば画像表示ユニットの画像表示面を覆って透光性の保護パネルが配備されている画像表示装置など、各種の光学パネル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビジョン受像機等の画像表示装置においては、図7に示す如く、筐体(92)の内部に画像表示ユニット(9)を収容すると共に、該画像表示ユニット(9)の画像表示面(90)に対向させて、透明ガラス製の保護パネル(91)を配備し、筐体(92)の前面開口部を保護パネル(91)により塞いだ構造が採用されている。
尚、図7に示す画像表示装置においては、画像表示ユニット(9)と保護パネル(91)との間にエアーギャップSが形成されている。
【0003】
又、保護パネル(91)として強化ガラスを採用することにより、装置の前面を更に強化することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−22027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の画像表示装置を例えば屋外に設置する場合、保護パネル(91)に対して不測の衝撃力が加わる虞があるため、保護パネル(91)を強化ガラスによって構成すると共に、保護パネル(91)の厚さを出来るだけ大きく設定する必要がある。
しかしながら、保護パネル(91)の厚さの増大に伴って、画像のコントラスト比が低下したり、色再現性が低下したりする問題がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、保護パネルに十分な強度が得られ、然も、保護パネルの厚さの影響を受ける特性を良好に維持することが出来る光学パネル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光学パネル装置は、
光学パネルと、
該光学パネルの前面を覆う透光性の保護パネルと、
光硬化性樹脂を硬化させてなり、前記光学パネルと保護パネルとの間に介在するボンディング層
とを具え、前記保護パネルは強化ガラス板によって構成され、該強化ガラス板の厚さは、2.5mm以上、6mm以下に設定されている。
具体的には、前記光学パネルは画像表示パネルである。
【0008】
前記保護パネルを構成する強化ガラス板は、具体的には、その組成として、SiO:70〜74重量%、NaO:12〜16重量%、CaO:6〜12重量%を含んでいる。
【0009】
上記光学パネル装置においては、光学パネル(画像表示パネル)と保護パネルとの間に樹脂製のボンディング層が介在しており、該ボンディング層が衝撃吸収性能を発揮するため、光学パネル(画像表示パネル)と保護パネルとの間にエアーギャップが形成されている光学パネル装置と比較して、保護パネルに対して外部から衝撃力が加わった場合の強度が高いものとなる。
【0010】
比較実験によれば、ボンディング層が発揮する衝撃吸収性能は、保護パネルを構成する強化ガラスの厚さの約1mm分に相当する。
光学パネル(画像表示パネル)と保護パネルとの間にエアーギャップが形成されている従来の光学パネル装置(画像表示装置)においては、保護パネルの強度を考慮して、厚さ3.5mm以上の強化ガラス板が採用されている。
そこで、本発明においては、保護パネルを構成する強化ガラス板の厚さの下限値を2.5mmとする。
【0011】
又、保護パネルの厚さが増大するにつれて色再現性は低下するが、実験によれば、保護パネルを構成する強化ガラス板の厚さが6mm以下では色再現性に殆ど低下はないが、6mmを越えると、急激に色再現性が低下することが判明した。
尚、保護パネルの厚さが増大するにつれてコントラスト比も低下するが、実験によれば、保護パネルを構成する強化ガラス板の厚さが6mm以下におけるコントラスト比の低下は軽微であり、問題とならないことが判明した。
そこで、本発明においては、保護パネルを構成する強化ガラス板の厚さの上限値を6.0mmとする。
【0012】
具体的態様において、前記保護パネルは、強化ガラス板の片面若しくは両面に無反射コーティング膜を形成して構成されている。
該具体的態様によれば、正面側から見た保護パネルの反射率が低下し、これに伴って画像のコントラスト比が増大する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る光学パネル装置によれば、保護パネルに十分な強度が得られ、然も、保護パネルの厚さの影響を受ける特性を良好に維持することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である画像表示装置の斜視図である。
【図2】図2は、画像表示装置の組立において画像表示ユニットに保護パネルをボンディングする工程を示す図である。
【図3】図3は 画像表示装置のパネル構造を示す縦断面図である。
【図4】図4は、従来の画像表示装置を対象とする強化ガラス板の強度試験方法を示す図である。
【図5】図5は、本発明の画像表示装置を対象とする強化ガラス板の強度試験方法を示す図である。
【図6】図6は、強化ガラス板の厚さと色再現性の関係を表わすグラフである。
【図7】図7は、従来の画像表示装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施形態である画像表示装置は、図1に示す如く、画像表示ユニット(1)の前面に厚さ約1mmのボンディング層(3)を介して保護パネル(2)を接合して構成される。
【0016】
該画像表示装置の組立工程においては、図2(a)に示す如く、画像表示ユニット(1)の表面に、紫外線の照射によって硬化するアクリル系接着樹脂である光硬化性樹脂(31)を塗布した後、該光硬化性樹脂(31)の表面に保護パネル(2)を重ね合わせる。そして、この状態で、図2(b)の如く保護パネル(2)の表面側から紫外線を照射して、光硬化性樹脂(31)を硬化させる。
これによって画像表示ユニット(1)の前面に保護パネル(2)が接合されることになる。
【0017】
画像表示ユニット(1)は、図3に示す如く、液晶表示パネルからなる画像表示パネル(5)と、該画像表示パネル(5)の両面に配備された偏光板(6)(6)と、画像表示パネル(5)の背面側に配備されたバックライト(7)とを具えている。
又、保護パネル(2)は、強化ガラス板(21)の両面に無反射コーティング膜(22)(22)を形成して構成されている。
【0018】
画像表示ユニット(1)と保護パネル(2)は、ボンディング層(3)によって互いに接合された状態で、フレーム(4)によって保持され、この状態で密閉構造を有する合成樹脂製の筐体(図示省略)の内部に収容されている。
【0019】
保護パネル(2)を構成する強化ガラス板(21)は、次の表1に示す組成を有しており、ガラス板を700℃前後に加熱した状態から20℃程度まで急激に冷却する熱処理によって強化が施されている。
【0020】
【表1】

【0021】
強化ガラス板(21)の厚さTは、屋外設置用の画像表示装置として十分な強度が得られ、然も、画像表示パネル(5)に表示される画像のコントラスト比や色再現性の点で優れた特性を維持することが出来る、2.5mm以上、6mm以下の範囲内に設定されている。
【0022】
強化ガラス板(21)の厚さTの下限値2.5mmは次の様にして決定された。
図4に示す如く画像表示パネル(50)の前面に厚さ1mmのエアーギャップ(32)を介してガラス板(20)を配備した試験セット(82)と、図5に示す如く画像表示パネル(50)の前面に厚さ1mmのボンディング層(30)を介してガラス板(20)を配備した試験セット(83)とを準備し、各試験セット(82)(83)を十分に堅い床面(8)上に設置し、上方からガラス板(20)の前面へ500gの鉄球(81)を自由落下させて、ガラス板(20)の破損状況を調べる実験を行なった。
【0023】
実験においては、表2及び表3に示す様に、厚さが1mm〜6mmの6種類のガラス板に対して、鉄球の落下高さを30cmから300cmの範囲で変更し、各落下高さにおいてガラス板に割れが発生したか否かを調べた。
尚、ガラス板の厚さが4mm以下の場合、熱強化処理によってガラス板に反りが発生する虞があるため、厚さ1mm〜2mmのガラス板には熱強化処理が施されていない。これに対し、厚さ2.5mm〜4mmのガラス板には本来の約2分の1程度の熱強化処理(半強化)が施され、厚さ6mmのガラス板には本来の熱強化処理が施されて、何れも強化ガラス板を構成している。
【0024】
この実験によって表2及び表3に示す結果が得られた。各表中には、ガラス板に割れが生じなかった試験セットについては○印を付し、ガラス板に割れが生じた試験セットについては×印を付した。
【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【0027】
表2の結果によれば、ガラス板の厚さTが3.5mm以上では、十分な厚さと熱強化処理の効果として、鉄球の落下高さが230cm以上で割れが発生しているのに対し、ガラス板の厚さTが2.5mm以下では、不十分な厚さが原因で、鉄球の落下高さが100cm以上で割れが発生している。
【0028】
画像表示ユニットと保護パネルの間にエアーギャップが存在する従来の画像表示装置においては、一般に、保護パネルを構成する強化ガラス板として厚さ3.5mm以上のものが採用されているが、この事実を図2の結果と照らし合わせれば、強化ガラス板の厚さの基準(下限値)は、鉄球の落下高さが200cm以下で割れが生じないことであると言える。
【0029】
一方、画像表示パネルとガラス板の間にボンディング層が介在する試験セットにおいては、表3に示す様に、ガラス板の厚さTが2.5mm以上では、ボンディング層(30)による衝撃吸収性と熱強化処理の効果として、鉄球の落下高さが230cm以上で割れが発生しているのに対し、ガラス板の厚さTが2.0mm以下では、不十分な厚さと不十分な熱強化処理が原因で、鉄球の落下高さが150cm以上で割れが発生している。
【0030】
ここで、強化ガラス板の厚さの基準(下限値)を、上述の如く鉄球の落下高さが200cm以下で割れが生じない厚さとすれば、画像表示パネルと強化ガラス板の間にボンディング層が介在する場合の強化ガラス板の厚さTの下限値は、2.5mmであると言える。
表2と表3の全体的な比較からも、ボンディング層の有無による強化ガラス板の厚さの差は1.0mmであると言うことが出来る。
そこで、本発明に係る画像表示装置においては、強化ガラス板の厚さTの下限値を、従来よりも1.0mmだけ薄い、2.5mmに設定している。
【0031】
強化ガラス板(21)の厚さTの上限値6.0mmは次の様にして決定された。
外光の明るさが1000lxの条件で、画像表示ユニットに対向配備すべきガラス板の厚さTを2mm〜13mmの範囲内で変化させると共に視野角を0°〜85°で変化させて、各厚さ、各視野角における色再現性を比較する実験を行なった。
【0032】
尚、視野角とは、画像表示パネルの画像表示面に対する垂線を0°として、該垂線を基準とする視線の傾斜角度を言う。
又、色再現性とは、国際照明委員会(CIE)によるxy色度図において、3原色RGBの3点(R:x=0.67,y=0.33、G:x=0.21,y=0.71、B:x=0.14、y=0.08)を頂点とする基準三角形の面積を100%として、実際に観察される3原色RGBの3点を頂点とする三角形の内、前記基準三角形に内包されている領域の面積割合(%)をいう。
【0033】
この実験によって表4及び図6に示す結果が得られた。尚、厚さ2mmのガラス板には熱強化処理が施されていないのに対し、厚さ4mmのガラス板には本来の約2分の1程度の熱強化処理が施され、厚さ6mm以上のガラス板には本来の熱強化処理が施されて、何れも強化ガラス板を構成している。
【0034】
【表4】

【0035】
図6から明らかな様に、視野角が増大するにつれて色再現性は低下し、強化ガラス板の厚さが増大するにつれて色再現性は低下している。
但し、色再現性については、何れの視野角においても、強化ガラス板の厚さTが6mmを越えると、50%以上の値から急激に色再現性が低下している。
一般に、色再現性が50%以上であれば、屋外であっても画像鑑賞に問題はない。
【0036】
又、外光の明るさが1000lxの条件で、画像表示ユニットに対向配備すべきガラス板の厚さTを2mm〜13mmの範囲内で変化させると共に視野角を0°〜85°で変化させて、各厚さ、各視野角におけるコントラスト比を比較する実験を行なった。
尚、コントラスト比とは、黒パターンの輝度(最小輝度)に対する白パターンの輝度(最大輝度)の比をいう。
【0037】
この実験によって表5の結果が得られた。尚、厚さ2mmのガラス板には熱強化処理が施されていないのに対し、厚さ4mmのガラス板には本来の約2分の1程度の熱強化処理が施され、厚さ6mm以上のガラス板には本来の熱強化処理が施されて、何れも強化ガラス板を構成している。
【0038】
【表5】

【0039】
表5から明らかな様に、ガラス板の厚さTが10mm以上では、何れの視野角においても100を越えるコントラスト比は得られないが、ガラス板の厚さTが6mm以下では、視野角が0°〜30°の範囲で120を越える高いコントラスト比が得られている。
一般に、コントラスト比が100以上であれば、屋外であっても画像鑑賞に問題はない。
そこで、本発明に係る画像表示装置においては、色再現性とコントラス比の両方を勘案して、強化ガラス板の厚さTの上限値を6.0mmに設定している。
【0040】
上述の如く、本発明に係る画像表示装置においては、強化ガラス板(21)の厚さが、2.5mm以上、6mm以下の範囲内に設定されているので、画像表示ユニット(1)を覆う保護パネル(2)に十分な強度が得られ、然も、画像のコントラスト比や色再現性の点で優れた特性が維持される。
【0041】
又、図3に示す様に、保護パネル(2)は、強化ガラス板(21)の両面に無反射コーティング膜(22)(22)を形成して構成されているので、正面側から見た保護パネル(2)の反射率が低下し、これに伴って画像のコントラスト比が増大する。
【0042】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、強化ガラス板(21)としては、熱処理によって強化したものに限らず、化学処理によって強化したものを採用することも可能である。
又、強化ガラス板(21)としては、本来の強化処理を施したものに限らず、本来の強化処理よりも軽い強化処理によって半強化したものを採用することも可能である。
又、画像表示ユニット(1)、保護パネル(2)及びフレーム(4)を収容する筐体(図示省略)は、合成樹脂製に限らず、金属製、例えばアルミニウム製であってもよい。
【0043】
更に又、本発明は画像表示装置のみならず、例えば太陽光発電パネルの前面を覆って透光性の保護パネルが配備された、太陽光発電装置に実施することも可能である。この場合、保護パネルに十分な強度が得られると共に、保護パネルの厚さの影響を受ける受光効率を良好に維持し、ひいては発電効率を良好に維持することが出来る。
【符号の説明】
【0044】
(1) 画像表示ユニット
(5) 画像表示パネル
(2) 保護パネル
(21) 強化ガラス板
(22) 無反射コーティング膜
(3) ボンディング層
(31) 光硬化性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学パネルと、
該光学パネルの前面を覆う透光性の保護パネルと、
光硬化性樹脂を硬化させてなり、前記光学パネルと保護パネルとの間に介在するボンディング層
とを具え、前記保護パネルは強化ガラス板によって構成され、該強化ガラス板の厚さは、2.5mm以上、6mm以下に設定されている光学パネル装置。
【請求項2】
前記光学パネルは、画像表示パネルである請求項1に記載の光学パネル装置。
【請求項3】
前記保護パネルを構成する強化ガラス板は、その組成として、SiO:70〜74重量%、NaO:12〜16重量%、CaO:6〜12重量%を含んでいる請求項2に記載の光学パネル装置。
【請求項4】
前記強化ガラス板は、ガラス板に熱処理を施すことよって強化されている請求項2又は請求項3に記載の光学パネル装置。
【請求項5】
前記保護パネルは、強化ガラス板の片面若しくは両面に無反射コーティング膜を形成して構成されている請求項2乃至請求項4の何れかに記載の光学パネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−73549(P2012−73549A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220153(P2010−220153)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】