説明

光学フィルタモジュール、および光学フィルタシステム

【課題】自然光が入る昼間だけでなく夜間などの暗視下であっても撮影を可能とする。
【解決手段】撮像デバイス1に設けられた光学フィルタモジュール3には、複数のフィルタが設けられている。複数のフィルタは、可視光を透過し、少なくとも赤外線をカットする第1フィルタ4と、赤外線のみをパスする第2フィルタ7とであり、第1フィルタ4と第2フィルタ7とが選択的に切換可能に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルタモジュール、および光学フィルタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なビデオカメラやデジタルスチルカメラ等に代表される電子カメラの光学系では、光軸に沿って被写体側から、結合光学系、赤外線カットフィルタ、光学ローパスフィルタ、CCD(Charge Coupled Device )やMOS(Metal Oxide Semiconductor )等の撮像素子が順に配設されている(例えば、特許文献1参照)。なお、ここでいう撮像素子は、人の目が視認可能な波長帯域の光線(可視光線)よりも広い波長帯域の光線に応答する感度特性を有している。そのため、可視光線に加えて、赤外域や紫外域の光線にも応答してしまう。
【0003】
人の目は、暗所において400〜620nm程度の範囲の波長の光線に応答し、明所において420〜700nm程度の範囲の波長の光線に応答する仕組みになっている。これに対し、例えば、CCDでは、400〜700nmの範囲の波長の光線に高感度で応答し、さらに400nm未満の波長の光線や700nmを越える波長の光線にも応答する。
【0004】
このため、下記する特許文献1に記載の撮像デバイスでは、撮像素子であるCCDのほかに赤外線カットフィルタが設けられ、撮像素子に赤外域の光線を到達させないようにし、人の目に近い撮像画像が得られるようにしている。
【0005】
また、従来の光学フィルタでは、人間の目で見える可視域での透過率を少しでも向上させるために当該可視域において光の反射を低減させる反射防止膜(ARコート)を光学フィルタの主面に施すことが一般的なフィルタ構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−209510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、撮像デバイスには、一般的なビデオカメラやデジタルスチルカメラ以外に、監視カメラなどの通常の撮影とは異なる他の用途で用いる撮像デバイスがある。
【0008】
例えば、監視カメラでは、昼間だけではなく、夜間などの暗視下での監視撮影も行う必要がある。暗視下では、人の目で見えない状態での撮影となるので、通常の可視域を撮影の帯域とするカメラでは暗視下における撮影を行うことができない。そのため、現在、暗視下における撮影は、赤外域の光線を用いて行なわれているが、上記の特許文献1に記載の撮像デバイスでは、赤外域の光線をカットする赤外線カットフィルタを設けているので、暗視での撮影に用いることができない。
【0009】
そこで、上記課題を解決するために本発明は、自然光が入る昼間だけでなく夜間などの暗視下であっても撮影が可能な光学フィルタモジュール、および光学フィルタシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる光学フィルタモジュールは、撮像デバイスに設ける、複数のフィルタを切換配置可能な光学フィルタモジュールにおいて、複数のフィルタは、可視光を透過し、少なくとも赤外線をカットする第1フィルタと、赤外線のみをパスする第2フィルタとであり、前記第1フィルタと前記第2フィルタとが選択的に切換可能に配置されたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、前記第1フィルタと前記第2フィルタとが選択的に切換可能に配置されるので、自然光が入る昼間だけでなく夜間などの暗視下であっても撮影が可能となる。具体的には、昼間の時に前記第1フィルタが配置され、暗視状態の時に前記第2フィルタが配置されることで、昼間だけでなく夜間などの暗視下であっても撮影が可能となる。特に、可視光を透過し、少なくとも赤外線をカットする前記第1フィルタが介在した状態で昼間の撮影を行うことができるため、昼間は人の目に近いより自然な撮像画像が得られる。また、赤外線のみをパスする前記第2フィルタが介在した状態で夜間撮影を行うことができるため、夜間撮影中に可視域の自然光の一部が入射することで白飛びが発生することが一切なくなり、より安定した鮮明な赤外線の撮影画像が得られる。
【0012】
前記構成において、前記第2フィルタは、赤外線の予め設定した特定帯域のみをパスし、赤外線の他の帯域をカットしてもよい。
【0013】
この場合、上述の作用効果に加えて、前記第2フィルタは、赤外線の予め設定した特定帯域のみをパスし、赤外線の他の帯域をカットするので、暗視下における撮影をより良好にすることが可能となる。
【0014】
前記構成において、前記第1フィルタは、赤外線を吸収する赤外線吸収体と、赤外線を反射する赤外線反射体とを備えてもよい。
【0015】
この場合、上述の作用効果に加えて、前記第1フィルタは、赤外線を吸収する赤外線吸収体と、赤外線を反射する赤外線反射体とを備えているので、ゴーストやフレアを抑制しながら、色再現性も同時に高めることができるので、昼間の撮影をより良好にすることが可能となる。
【0016】
前記構成において、前記赤外線吸収体は、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示し、前記赤外線反射体は、670nm〜690nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示し、前記赤外線吸収体と前記赤外線反射体の組み合わせにより、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となり、700nmの波長で透過率が5%未満となる光透過特性を示してもよい。
【0017】
この場合、前記第1フィルタは前記赤外線吸収体と前記赤外線反射体とを備え、前記赤外線吸収体は、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示し、前記赤外線反射体は、670nm〜690nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示し、前記赤外線吸収体と前記赤外線反射体の組み合わせにより、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となり、700nmの波長で透過率が5%未満となるので、これら前記赤外線吸収体と前記赤外線反射体との組み合わせにより、可視域から赤外域に亘って、緩やかに透過率が減少し、700nmの波長で透過率が約0%となる人の目の感度特性に近い光透過特性を得ることが可能となる。
【0018】
また、前記赤外線吸収体には、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示す前記赤外線吸収体、例えば、図10のL11に示す光透過特性を有する赤外線吸収ガラスが用いられており、透過率が約0%(5%未満)となるポイントは、前記赤外線吸収体での赤外線吸収作用に前記赤外線反射体での赤外線反射作用を組み合わせることにより、700nmに合わせられている。このため、本発明の第1フィルタは、図10のL12に示す光透過特性を有する赤外線吸収ガラスからなる従来の赤外線カットフィルタに比べて、可視域、特に、600nm〜700nmの波長帯域で、高い透過率を維持することが可能となる。つまり、波長が700nmを超える赤外線をカットしつつ、前記撮像デバイスの前記撮像素子で感知し得る十分な量の赤色の光線(波長が600nm〜700nmの光線)を透過させることができる。よって、前記撮像デバイスの赤外線カットフィルタに、本発明の前記第1フィルタを適用することで、前記撮像素子の赤色の感度が弱く、前記撮像デバイスで撮像した画像が暗い画像になり易いという欠点を解消することが可能となる。
【0019】
また、前記第1フィルタでは、前記赤外線反射体に前記赤外線吸収体を組み合わせることで、前記赤外線反射体によって反射される光の量が抑制されている。このため、前記赤外線反射体での光の反射によるゴーストの発生を抑制することが可能となる。
【0020】
また、640nmの波長で透過率が50%となる図10のL11に示す光透過特性を有する前記赤外線吸収ガラスの厚みが、従来の赤外線カットフィルタとして用いられる図10のL12に示す光透過特性を有する赤外線吸収ガラスの厚みの半分以下であることに教示されるように、本発明の前記第1フィルタを構成する620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を有する前記赤外線吸収体には、図10のL12に示す光透過特性を有する従来の赤外線吸収ガラスからなる赤外線カットフィルタよりも厚みの薄いものを使用できる。このため、本発明の前記第1フィルタによれば、赤外線吸収体のみで構成された従来の赤外線カットフィルタと同じ厚み又は薄い厚みで、赤色の可視光線を十分に透過しつつ、赤外線をカットし、且つ、可視域において、人の目に近い光透過特性を有する赤外線カットフィルタを提供できる。
【0021】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる光学フィルタシステムは、光軸に沿って外部の被写体側から、少なくとも、外部から光を入射する結合光学系、複数のフィルタを切換配置可能な光学フィルタシステム、光学フィルタ、撮像素子が順に配設された撮像デバイスの光学フィルタシステムにおいて、複数のフィルタは、可視光を透過し、少なくとも赤外線をカットする第1フィルタと、赤外線のみをパスする第2フィルタとであり、前記第1フィルタと前記第2フィルタとのいずれか一方が選択的に前記光軸上に切換配置されたことを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、前記第1フィルタと前記第2フィルタとのいずれか一方が選択的に前記光軸上に切換配置されるので、自然光が入る昼間だけでなく夜間などの暗視下であっても撮影が可能となる。具体的には、昼間の時に前記第1フィルタが前記光軸上に切換配置され、暗視状態の時に前記第2フィルタが前記光軸上に切換配置されることで、昼間だけでなく夜間などの暗視下であっても撮影が可能となる。特に、可視光を透過し、少なくとも赤外線をカットする前記第1フィルタが介在した状態で昼間の撮影を行うことができるため、昼間は人の目に近いより自然な撮像画像が得られる。また、赤外線のみをパスする前記第2フィルタが介在した状態で夜間撮影を行うことができるため、夜間撮影中に可視域の自然光の一部が入射することで白飛びが発生することが一切なくなり、より安定した鮮明な赤外線の撮影画像が得られる。
【0023】
前記構成において、前記第2フィルタは、赤外線の予め設定した特定帯域のみをパスし、赤外線の他の帯域をカットしてもよい。
【0024】
この場合、上述の作用効果に加えて、前記第2フィルタは、赤外線の予め設定した特定帯域のみをパスし、赤外線の他の帯域をカットするので、暗視下における撮影をより良好にすることが可能となる。
【0025】
前記構成において、前記第1フィルタは、赤外線を吸収する赤外線吸収体と、赤外線を反射する赤外線反射体とを備えてもよい。
【0026】
この場合、上述の作用効果に加えて、前記第1フィルタは、赤外線を吸収する赤外線吸収体と、赤外線を反射する赤外線反射体とを備えているので、ゴーストやフレアを抑制しながら、色再現性も同時に高めることができるので、昼間の撮影をより良好にすることが可能となる。
【0027】
前記構成において、前記赤外線吸収体は、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示し、前記赤外線反射体は、670nm〜690nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示し、前記赤外線吸収体と前記赤外線反射体の組み合わせにより、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となり、700nmの波長で透過率が5%未満となる光透過特性を示してもよい。
【0028】
この場合、前記第1フィルタは前記赤外線吸収体と前記赤外線反射体とを備え、前記赤外線吸収体は、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示し、前記赤外線反射体は、670nm〜690nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示し、前記赤外線吸収体と前記赤外線反射体の組み合わせにより、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となり、700nmの波長で透過率が5%未満となるので、これら前記赤外線吸収体と前記赤外線反射体との組み合わせにより、可視域から赤外域に亘って、緩やかに透過率が減少し、700nmの波長で透過率が約0%となる人の目の感度特性に近い光透過特性を得ることが可能となる。
【0029】
また、前記赤外線吸収体には、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示す前記赤外線吸収体、例えば、図10のL11に示す光透過特性を有する赤外線吸収ガラスが用いられており、透過率が約0%(5%未満)となるポイントは、前記赤外線吸収体での赤外線吸収作用に前記赤外線反射体での赤外線反射作用を組み合わせることにより、700nmに合わせられている。このため、本発明の第1フィルタは、図10のL12に示す光透過特性を有する赤外線吸収ガラスからなる従来の赤外線カットフィルタに比べて、可視域、特に、600nm〜700nmの波長帯域で、高い透過率を維持することが可能となる。つまり、波長が700nmを超える赤外線をカットしつつ、前記撮像デバイスの前記撮像素子で感知し得る十分な量の赤色の光線(波長が600nm〜700nmの光線)を透過させることができる。よって、前記撮像デバイスの赤外線カットフィルタに、本発明の前記第1フィルタを適用することで、前記撮像素子の赤色の感度が弱く、前記撮像デバイスで撮像した画像が暗い画像になり易いという欠点を解消することが可能となる。
【0030】
また、前記第1フィルタでは、前記赤外線反射体に前記赤外線吸収体を組み合わせることで、前記赤外線反射体によって反射される光の量が抑制されている。このため、前記赤外線反射体での光の反射によるゴーストの発生を抑制することが可能となる。
【0031】
また、640nmの波長で透過率が50%となる図10のL11に示す光透過特性を有する前記赤外線吸収ガラスの厚みが、従来の赤外線カットフィルタとして用いられる図10のL12に示す光透過特性を有する赤外線吸収ガラスの厚みの半分以下であることに教示されるように、本発明の前記第1フィルタを構成する620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を有する前記赤外線吸収体には、図10のL12に示す光透過特性を有する従来の赤外線吸収ガラスからなる赤外線カットフィルタよりも厚みの薄いものを使用できる。このため、本発明の前記第1フィルタによれば、赤外線吸収体のみで構成された従来の赤外線カットフィルタと同じ厚み又は薄い厚みで、赤色の可視光線を十分に透過しつつ、赤外線をカットし、且つ、可視域において、人の目に近い光透過特性を有する赤外線カットフィルタを提供できる。
【0032】
また、上記の本発明の構成において、前記赤外線反射体は、700nmの波長で透過率が10%〜40%となる光透過特性を示し、前記赤外線反射体は、700nmの波長で透過率が15%未満となる光透過特性を示してもよい。
【0033】
この場合、700nmの波長で透過率が10%〜40%となる光透過特性を示す前記赤外線吸収体と、700nmの波長で透過率が15%未満となる光透過特性を示す前記赤外線反射体との組み合わせにより、赤色の可視光線の波長帯域(600nm〜700nm)で高い透過率を確実に得ることが可能となる。
【0034】
また、上記の本発明の構成において、前記赤外線反射体は、430nm〜650nmの波長帯域で90%以上の透過率を有する光透過特性を示してもよい。
【0035】
この場合、430nm〜650nmの波長帯域で前記赤外線吸収体の光透過特性に依存した光透過特性が得られるから、可視域から赤外域に亘って、緩やかに透過率が減少し、700nmの波長で透過率が約0%となる人の目の感度特性に近い光透過特性を得ることができる上に、可視域、特に、赤色の可視光線の波長帯域(600nm〜700nm)で高い透過率を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、自然光が入る昼間だけでなく夜間などの暗視下であっても撮影が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、実施の形態に係る撮像デバイスの概略構成を示す概略模式図である。
【図2】図2は、実施の形態に係る第1フィルタの光透過特性を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態に係る第1フィルタの概略構成を示す概略模式図である。
【図4】図4は、実施の形態に係る第1フィルタの赤外線反射体の概略構成を示す部分拡大図である。
【図5】図5は、実施の形態に係る第2フィルタの光透過特性を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態に係る第2フィルタの概略構成を示す概略模式図である。
【図7】図7は、実施の形態に係る第2フィルタの赤外線透過体の概略構成を示す部分拡大図である。
【図8】図8は、実施例に係る赤外線カットフィルタの光透過特性を示す図である。
【図9】図9は、他の実施の形態に係る撮像デバイスの概略構成を示す概略模式図である。
【図10】図10は、赤外線吸収ガラスの光透過特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0039】
<実施の形態>
本実施の形態にかかる撮像デバイス1は、図1に示すように、光軸11に沿って外部の被写体側から、少なくとも、外部から光を入射する結合光学系であるレンズ2、複数のフィルタ(下記参照)を切替配置可能な光学フィルタモジュール3、OLPFである光学フィルタ8、および撮像素子9が順に配設されている。
【0040】
光学フィルタモジュール3では、可視光を透過し、少なくとも赤外線をカットする第1フィルタ4と、赤外線のみをパスする第2フィルタ7が設けられている。これら第1フィルタ4と第2フィルタ7のいずれか一方が、周知の切替手段(図示省略)により選択的に光軸11上に切替配置される。具体的に、昼間などの自然光が入る時は、第1フィルタ4が光軸11上に配され、夜間などの暗視下では、第2フィルタ7が光軸11上に配される。なお、第2フィルタ7が光軸11上に配された際には、光のピーク波長が850〜900nm(本実施の形態では870nm)であるLED(図示省略)からの光を被写体に照射する。なお、本実施の形態でいう昼間の定義は、照度が400lxを超える場合のことをいい、夜間の定義は、照度が400lx以下の場合のことをいう。なお、ここでいう400lxは、一例であり、昼間と夜間との境界照度は、当業者が自由に設定可能である。または、夜間の定義のみを行い、夜間の定義から外れた照度を昼間と判断してもよく、もしくは昼間の定義のみを行い、昼間の定義から外れた照度を夜間と判断するように設定してもよい。つまり、照度の基準を予め設定し、設定した照度に基づいて第1フィルタ4と、第2フィルタ7とを切り替えてもよい。
【0041】
また、光学フィルタモジュール3に第1フィルタ4が含まれているので、OLPFである光学フィルタ8には、赤外線カットフィルタが形成されておらず、2つの波長帯域(可視域と赤外域)における光線の反射を防止する単層の反射防止膜81のみが両主面に形成されている。なお、本実施の形態では、光学フィルタ8に単層の反射防止膜81のみが両主面に形成されているが、これに限定されるものではなく、これに限定されるものではなく、特定波長の光線の反射を防止することができる反射防止膜が形成されていればよい。
【0042】
図1に示す撮像デバイス1によれば、昼間時に、光軸11に沿って外部の被写体側から、レンズ2、第1フィルタ4、光学フィルタ8、および撮像素子9が順に配設される。この第1フィルタ4を光学11上に配した構成により、撮像デバイス1(光学フィルタモジュール3)は、図2に示す光透過特性を有する。一方、夜間時には、光軸11に沿って外部の被写体側から、レンズ2、第2フィルタ7、光学フィルタ8、撮像素子9が順に配設される。この第2フィルタ7を光学11上に配した構成により、撮像デバイス1(光学フィルタモジュール3)は、図5に示す光透過特性を有する。
【0043】
このように、図1に示す撮像デバイス1によれば、第1フィルタ4と第2フィルタ7のいずれか一方が選択的に光軸11上に切換配置されるので、可視域においては、人の目の感度特性に近い分光特性が得られ、かつ、赤外域の所望の帯域のみの光を透過させることができる。その結果、図1に示す撮像デバイス1によれば、赤外線をカットする昼間の撮影と、赤外線のみをパスする夜間などの暗視下での撮影を好適に行うことができる。すなわち、自然光が入る昼間だけでなく夜間などの暗視下であっても撮影が可能となる。具体的には、昼間の時に第1フィルタ4が光軸11上に切換配置され、暗視状態の時に第2フィルタ7が光軸11上に切換配置されることで、昼間だけでなく夜間などの暗視下であっても撮影ができる。特に、可視光を透過し、少なくとも赤外線をカットする第1フィルタ4が介在した状態で昼間の撮影を行うことができるため、昼間は人の目に近いより自然な撮像画像が得られる。また、赤外線のみをパスする第2フィルタ7が介在した状態で夜間撮影を行うことができるため、夜間撮影中に可視域の自然光の一部が入射することで白飛びが発生することが一切なくなり、より安定した鮮明な赤外線の撮影画像が得られる。
【0044】
次に、光学フィルタモジュール3について、図1〜7を用いて説明する。光学フィルタモジュール3には、第1フィルタ4と第2フィルタ7と周知の切替手段(図示省略)とが設けられている。
【0045】
第1フィルタ4は、図2,3に示すように、可視光線を透過し、且つ、赤外線を吸収する赤外線吸収体5と、可視光線を透過し、且つ赤外線を反射する赤外線反射体6とが接着されてなる。
【0046】
赤外線吸収体5は、赤外線吸収ガラス51の一主面52に反射防止膜54(ARコート)が形成されてなる。
【0047】
赤外線吸収ガラス51としては、銅イオン等の色素を分散させた青色ガラスで、例えば、厚さが0.2mm〜1.2mmの方形薄板状のガラスが使用される。
【0048】
また、反射防止膜54は、赤外線吸収ガラス51の一主面52に対して、MgF2からなる単層、Al22とZrO2とMgF2とからなる多層膜、TiO2とSiO2とからなる多層膜のいずれかの膜を周知の真空蒸着装置(図示省略)によって真空蒸着することにより形成される。なお、反射防止膜54は、膜厚をモニタしながら蒸着動作を行い、所定の膜厚に達したところで蒸着源(図示省略)近傍に設けられたシャッター(図示省略)を閉じるなどして蒸着物質の蒸着を停止することにより行われる。
【0049】
赤外線吸収体5は、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となって、700nmの波長で透過率が10%〜40%となる光透過特性を示す。なお、このような赤外線吸収体5の光透過特性において、透過率は、400nm〜550nmの波長帯域内の波長で90%以上の最大値となる。
【0050】
赤外線反射体6は、透明基板61の一主面62に赤外線反射膜64が形成されてなる。
【0051】
透明基板61としては、可視光線及び赤外線を透過する無色透明ガラスで、例えば、厚さが0.2mm〜1.0mmの方形薄板状のガラスを使用している。
【0052】
赤外線反射膜64は、図4に示すように、高屈折率材料からなる第1薄膜65と、低屈折率材料からなる第2薄膜66とが交互に複数積層された多層膜である。なお、この実施の形態では、第1薄膜65にTiO2を用い、第2薄膜66にSiO2を用いていており、奇数層がTiO2、偶数層がSiO2となっているが、奇数層がSiO2、偶数層がTiO2となってもよい。
【0053】
赤外線反射膜64の製造方法としては、透明基板61の一主面62に対して、周知の真空蒸着装置(図示省略)によってTiO2とSiO2とを交互に真空蒸着し、図4に示すような赤外線反射膜64を形成する方法が用いられる。なお、第1薄膜65および第2薄膜66の膜厚調整は、膜厚をモニタしながら蒸着動作を行い、所定の膜厚に達したところで蒸着源(図示省略)近傍に設けられたシャッター(図示省略)を閉じるなどして蒸着物質(TiO2、SiO2)の蒸着を停止することにより行われる。
【0054】
また、赤外線反射膜64は、図4に示すように、透明基板61の一主面62側から順に序数詞で定義される複数層、本実施の形態では1層、2層、3層・・・から構成されている。これら1層、2層、3層・・・それぞれの層は、第1薄膜65と第2薄膜66とが積層されて構成されている。これら積層される第1薄膜65と第2薄膜66との光学膜厚が異なることにより1層、2層、3層・・・それぞれの厚さが異なる。なお、ここでいう光学膜厚は、下記の数式1により求められる。
【0055】
[数式1]
Nd=d×N×4/λ(Nd:光学膜厚、d:物理膜厚、N:屈折率、λ:中心波長)
本実施の形態では、赤外線反射体6が、430nm〜650nmの波長帯域での透過率が90%以上で、660nm〜690nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となり、700nmの波長で透過率が15%未満となる光透過特性を有するように、赤外線反射膜64の層数及び各層の光学膜厚が適宜調整されている。
【0056】
このような赤外線吸収体5と赤外線反射体6とからなる第1フィルタ4は、例えば0.4mm〜1.6mmの厚さを有する。つまり、赤外線吸収体5を構成する赤外線吸収ガラス51の厚み、及び赤外線反射体6を構成する透明基板61の厚みは、赤外線吸収体5と赤外線反射体6の厚みの合計が、例えば、0.4mm〜1.6mmとなるように、適宜調整されている。
【0057】
そして、第1フィルタ4は、上記の赤外線吸収体5及び赤外線反射体6の光透過特性の組み合わせにより、400nm〜550nmの波長帯域内の波長で透過率が最大値となり、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となって、700nmの波長で透過率が5%未満となる光透過特性を示す。
【0058】
上記構成からなる第1フィルタ4には、上記の通り、赤外線を吸収する赤外線吸収体5と、赤外線を反射する赤外線反射体6とを備えているので、ゴーストやフレアを抑制しながら、色再現性も同時に高めることができるので、昼間の撮影をより良好にすることができる。
【0059】
また、第2フィルタ7は、図5,6に示すように、赤外線の予め設定した特定帯域(本実施の形態では半値で850nm以上)のみをパスし、可視域をカットする。なお、第2フィルタ7には、光のピーク波長が850〜900nm(本実施の形態では870nm)であるLED(図示省略)が設けられ、第2フィルタ7が光軸11上に配された際にLEDからの光を被写体に照射する。このように、第2フィルタ7は、暗視下における撮影専用のフィルタであり、昼間などの可視下における撮影を目的とするものではなく、可視下における撮影を行うことができない。なお、この実施の形態に限らず、870nmに近接する特定帯域のみをパスする構成としてもよい。この場合さらにノイズを無くしより良好な暗視撮影が可能となる。
【0060】
この第2フィルタ7は、赤外線の予め設定した特定帯域のみ(本実施の形態ではLEDから照射する光の波長に対応)をパスし、赤外線の他の帯域をカットするために、透明基板71の一主面72に赤外線パスコート74(IRパスコート)が形成されてなる。なお、第2フィルタ7の他主面73には、反射防止膜77が形成されている。反射防止膜77は、第2フィルタ7の他主面73に対して、MgF2からなる単層、Al22とZrO2とMgF2とからなる多層膜、TiO2とSiO2とからなる多層膜のいずれかの膜を周知の真空蒸着装置(図示省略)によって真空蒸着することにより形成される。この第2フィルタ7によれば、赤外線の予め設定した特定帯域のみ(本実施の形態ではLEDから照射する光の波長に対応)をパスし、赤外線の他の帯域をカットするので、暗視下における撮影をより良好にすることができる。
【0061】
透明基板71としては、可視光線及び赤外線を透過する無色透明ガラスで、例えば、厚さが0.4mm〜1.6mmの方形薄板状のガラスを使用している。
【0062】
赤外線パスコート74は、図7に示すように、高屈折率材料からなる第1薄膜75と、低屈折率材料からなる第2薄膜76とが交互に複数積層された多層膜である。なお、この実施の形態では、第1薄膜75にTiO2を用い、第2薄膜76にSiO2を用いていており、奇数層がTiO2、偶数層がSiO2となっているが、奇数層がSiO2、偶数層がTiO2となってもよい。
【0063】
赤外線パスコート74の製造方法としては、透明基板71の一主面72に対して、周知の真空蒸着装置(図示省略)によってTiO2とSiO2とを交互に真空蒸着し、図7に示すような赤外線パスコート74を形成する方法が用いられる。なお、第1薄膜75および第2薄膜76の膜厚調整は、膜厚をモニタしながら蒸着動作を行い、所定の膜厚に達したところで蒸着源(図示省略)近傍に設けられたシャッター(図示省略)を閉じるなどして蒸着物質(TiO2、SiO2)の蒸着を停止することにより行われる。
【0064】
また、赤外線パスコート74は、図7に示すように、透明基板71の一主面72側から順に序数詞で定義される複数層、本実施の形態では1層、2層、3層・・・から構成されている。これら1層、2層、3層・・・それぞれの層は、第1薄膜75と第2薄膜76とが積層されて構成されている。これら積層される第1薄膜75と第2薄膜76との光学膜厚が異なることにより1層、2層、3層・・・それぞれの厚さが異なる。なお、ここでいう光学膜厚は、上記の数式1により求められる。
【0065】
本実施の形態では、第2フィルタが、860nmの波長帯域での透過率が90%以上で、850nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となり、840nmの波長で透過率が15%未満となる光透過特性を有するように、赤外線パスコート74の層数及び各層の光学膜厚が適宜調整されている。
【0066】
このような第2フィルタ7は、例えば、0.4mm〜1.6mmの厚さを有する。
【0067】
そして、第2フィルタ7は、赤外線パスコート74の光透過特性により、860nm以上の波長帯域内の波長で透過率が最大値となり、850nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となって、830nmの波長で透過率が5%未満となる光透過特性を示す。
【0068】
次に、第1フィルタ4および第2フィルタ5の波長特性を実際に測定し、その結果や構成を図8及び表1,2に実施例として示す。
【0069】
−実施例にかかる第1フィルタ4−
本実施例にかかる第1フィルタ4では、赤外線吸収ガラス51として、銅イオン等の色素を分散させた青色ガラスで、厚さが0.8mmで、N大気中における屈折率が約1.5のガラス板を用いている。そして、この赤外線吸収ガラス51の一主面52に、N大気中における屈折率が1.6のAl23膜、N大気中における屈折率が2.0のZrO2膜、N大気中における屈折率が1.4のMgF2膜の順に、反射防止膜54を構成する各膜を真空蒸着により形成して赤外線吸収体5を得た。
【0070】
この赤外線吸収体5は、図8のL1に示すような光透過特性を有する。なお、この実施例では、光線の入射角を0度、すなわち光線を垂直入射させている。
【0071】
図8に示すように、赤外線吸収ガラス51は、400nm〜550nmの波長帯域での透過率が90%以上で、550nm〜700nmの波長帯域で透過率が減少し、約640nmの波長で透過率が50%となり、700nmの波長で透過率が約17%となる光透過特性を示す。
【0072】
赤外線反射体6の透明基板61としては、N大気中における屈折率が1.5で、厚みが0.3mmのガラス板を用いている。また、赤外線反射膜64を構成する第1薄膜65として、N大気中における屈折率が2.30であるTiO2を用い、第2薄膜66として、N大気中における屈折率が1.46であるSiO2を用い、これらの中心波長は688nmである。
【0073】
これら第1薄膜65と第2薄膜66との各々の光学膜厚が、表1に示す上記の40層からなる赤外線反射膜64の製造方法により、透明基板61の一主面62に対して、第1薄膜65および第2薄膜66が形成(積層)されて、赤外線反射体6が得られる。
【0074】
【表1】

【0075】
表1は、第1フィルタ4の赤外線反射膜64の組成及び各薄膜(第1薄膜65、第2薄膜66)の光学膜厚を示している。
【0076】
この赤外線反射体6は、図8のL2に示すような光透過特性を有する。つまり、赤外線反射膜64の光透過特性は、395nm〜670nmの波長帯域(430nm〜650nmの波長帯域を含む波長帯域)で、約100%の透過率を示し、波長が約670nmを超えると急峻に透過率が減少して約680nmの波長で透過率が50%となり、700nmの波長で透過率が約4%となる光透過特性を示す。
【0077】
そして、図8に示すように、赤外線吸収ガラス51の他主面53に、透明基板61の他主面63を接着することにより、厚みが1.1mmの実施例に係る第1フィルタ4を得た。
【0078】
この第1フィルタ4は、赤外線吸収体5及び赤外線反射体6の光透過特性が組み合わさった図8のL3に示す光透過特性を有する。つまり、実施例の第1フィルタ4は、400nm〜550nmの波長帯域での透過率が90%以上で、550nm〜700nmの波長帯域で透過率が減少し、約640nmの波長で透過率が50%となり、700nmの波長で透過率が約0%となる光透過特性を示す。
【0079】
この実施例の第1フィルタ4の光透過特性に示されるように、本実施の形態に係る第1フィルタ4では、赤外線吸収体5と赤外線反射体6との組み合わせにより、400nm〜550nmの波長帯域内の波長で透過率が90%以上の最大値となり、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となって、700nmの波長で透過率が約0%(5%未満)となる光透過特性が得ることができる。つまり、可視域から赤外域に亘って、緩やかに透過率が減少し、700nmの波長で透過率が約0%となる人の目の感度特性に近い光透過特性を得ることができる。
【0080】
図8に示す実施例に係る第1フィルタ4の光透過特性L3を、従来の赤外線カットフィルタの光透過特性L4との比較により、より具体的に説明する。
【0081】
図8のL4に示す光透過特性を有する従来の赤外線カットフィルタは、赤外線吸収ガラスの両面に反射防止膜が形成されてなる赤外線吸収体で構成されたものである。この従来の赤外線カットフィルタでは、赤外線吸収体である赤外線吸収ガラスの厚みを1.6mmとすることで、透過率が0%となるポイントが700nmに合わせられている。
【0082】
これに対して、実施例の第1フィルタ4では、L4の光透過特性を示す従来の赤外線カットフィルタ(赤外線吸収体)の半分の厚さで、且つ、可視域、特に600nm〜700nmの波長帯域において、従来の赤外線カットフィルタよりも高い透過率を示す赤外線吸収体5、即ち、L1に示す光透過特性を示す赤外線吸収体5に、赤外線反射体6を組み合わせることで、透過率が0%となるポイントが700nmに合わせられている。
【0083】
このため、実施例に係る第1フィルタ4の光透過特性L3は、可視光域、特に、600nm〜700nmの波長帯域で、従来の赤外線カットフィルタの光透過特性L4に比べて高い透過率を示す。また、実施例に係る第1フィルタ4の光透過特性L3において、700nmの波長の光線に対する透過率は、従来の赤外線カットフィルタの光透過特性L4に比べて、より0%に近いものとなっている。
【0084】
具体的には、従来の赤外線カットフィルタの光透過特性L4では、600nmの波長での透過率が約55%で、約605nmの波長で透過率が50%となり、675nmの波長で透過率が約7.5%となって、700nmの波長で透過率が約3%となる。
【0085】
これに対し、実施例に係る第1フィルタ4の光透過特性L3では、600nmの波長での透過率が約75%で、約640nmの波長で透過率が50%となり、675nmの波長で透過率が約20%となって、700nmの波長で透過率が約0%となる。
【0086】
このように、実施例に係る第1フィルタ4の光透過特性L3は、従来の赤外線カットフィルタの光透過特性L4に比べて、600nm〜700nmの波長帯域、特に、600nm〜675nmの波長帯域での透過率が高く、且つ、700nmの波長での透過率が0%に近いものとなっている。つまり、実施例に係る第1フィルタ4は、従来の赤外線カットフィルタに比べ、700nmを超える赤外線を十分にカットしつつ、波長が600nm〜700nmの赤色の可視光線を十分に透過させることができるものであることが認められる。このため、実施例に係る第1フィルタ4が撮像デバイスに搭載されると、撮像素子9で、従来に比べて、赤みの強い色合いで画像を撮像することが可能となり、暗所の画像を明るく撮像することが可能となる。
【0087】
また、上記のように、本実施の形態に係る第1フィルタ4では、赤外線反射体6に赤外線吸収体5を組み合わせることで、赤外線反射体6によって反射される光の量が抑制されている。このため、赤外線反射体6での光の反射によるゴーストの発生を抑制することができる。
【0088】
また、第1フィルタ4の半値波長と赤外線吸収体5の半値波長とがほぼ一致するように、赤外線反射体6は、赤外線吸収体5の半値波長の光線に対して90%以上の透過率を示すように構成されているから、赤外線吸収体5の550nm〜700nmの波長で徐々に透過率が減少する人の目の感度特性に近い光透過特性が、赤外線カットフィルタに備えられ、人の目の感度特性に近い光透過特性が得られる。
【0089】
さらに、実施の形態に係る第1フィルタ4において、赤外線吸収体5は、L4に示す光透過特性を有する従来の赤外線カットフィルタよりも薄い厚みで構成することができる。このため、第1フィルタ4の厚みを、従来の赤外線カットフィルタと同じか、この従来の赤外線カットフィルタよりも薄くすることができる。
【0090】
−実施例にかかる第2フィルタ7−
本実施例にかかる第2フィルタ7では、透明基板71としてはN大気中における屈折率が1.5で、厚みが1.1mmのガラス板を用いている。また、赤外線パスコート74を構成する第1薄膜75として、N大気中における屈折率が2.30であるTiO2を用い、第2薄膜76として、N大気中における屈折率が1.46であるSiO2を用い、これらの中心波長は720nmである。
【0091】
これら第1薄膜75と第2薄膜76との各々の光学膜厚が、表2に示す上記の48層からなる赤外線パスコート74の製造方法により、透明基板71の一主面72に対して、第1薄膜75および第2薄膜76が形成(積層)されて、第2フィルタ7が得られる。
【0092】
【表2】

【0093】
表2は、第2フィルタ7の組成及び各薄膜(第1薄膜75、第2薄膜76)の光学膜厚を示している。この第2フィルタ7は、図5に示すような光透過特性を有する。なお、透明基板71の他主面73には、反射防止膜77が形成されている。
【0094】
なお、上記の実施の形態では、光学フィルタモジュール3に、第1フィルタ4と第2フィルタ7と切替手段(図示省略)とが設けられているが、これに限定されるものではなく、モジュール化せずに、第1フィルタ4と第2フィルタ7と切替手段(図示省略)とが撮像デバイス1に直接設けられた図9に示す光学フィルタシステムとして構築してもよい。
【0095】
また、透明基板61としてガラス板を用いているが、これに限定されるものではなく、光線が透過可能な基板であれば、例えば、水晶板であってもよい。また、透明基板61は、複屈折板であってもよく、複数枚からなる複屈折板であってもよい。また、水晶板とガラス板を組み合わせて透明基板61を構成してもよい。
【0096】
また、実施の形態では、第1薄膜65にTiO2を用いているが、これに限定されるものではなく、第1薄膜65が高屈折材料からなっていればよく、例えば、ZrO2、TaO2、Nb22等を用いてもよい。また、第2薄膜66にSiO2を用いているが、これに限定されるものではなく、第2薄膜66が低屈折材料からなっていればよく、例えば、MgF2等を用いてもよい。
【0097】
また、実施の形態の第1フィルタ4は、撮像デバイスにおいて、赤外線吸収体5が赤外線反射体6よりもレンズ2の側に位置するように配置されているが、これに限定されるものではない。即ち、第1フィルタ4は、赤外線反射体6が赤外線吸収体5よりもレンズ2の側に位置するように配置されてもよい。
【0098】
例えば、撮像デバイスにおいて、第1フィルタ4を、レンズ2の側に赤外線吸収体5が位置するように配置した場合、赤外線反射体6により反射された光を赤外線吸収体5で吸収することができるので、レンズ2の側に赤外線反射体6が位置するように配置した場合と比べ、赤外線反射体6により反射されてレンズ2を散乱する光の量を低減させることができ、ゴーストの発生を抑制することができる。一方、第1フィルタ4を、レンズ2の側に赤外線反射体6が位置するように配置した場合には、レンズ2の側に赤外線吸収体5が位置するように配置した場合に比べ、赤外線反射体6と撮像素子9との距離、具体的には、製造過程で赤外線反射体6内に発生した異物と撮像素子9の距離が離れるので、異物による映像の劣化を抑えることができる。
【0099】
また、実施の形態では、赤外線吸収体5として、赤外線吸収ガラス2の一主面52又は両主面211,212に反射防止膜54が形成されたものが用いられているが、本発明でいう赤外線吸収体5はこれに限定されるものではない。例えば、赤外線吸収ガラス51の大気中における屈折率が、大気の屈折率とほぼ同じである場合には、反射防止膜54は形成されていなくてよい。つまり、反射防止膜が形成されていない赤外線吸収ガラスを赤外線吸収体として用いてもよい。
【0100】
また、実施の形態では、赤外線反射体6として、赤外線吸収ガラス51の他主面53に接着された透明基板61の一主面62に赤外線反射膜64を形成したものが用いられているが、本発明でいう赤外線反射体6はこれに限定されるものではない。例えば、赤外線吸収ガラスの表面に形成された赤外線反射膜を赤外線反射体としてもよい。この場合、上記光学フィルタモジュールや光学フィルタシステムの小型化と切り替え機構の簡略化省電力化が容易となる。
【0101】
つまり、実施の形態では、赤外線吸収ガラス51の他主面53に接着された透明基板61の一主面62に赤外線反射膜64を形成しているが、赤外線吸収ガラス51の他主面53に直接、赤外線吸収体としての赤外線反射膜64が形成されていてもよい。このように赤外線吸収ガラス51の他主面53に直接、赤外線反射膜64を形成すれば、第1フィルタ4を薄型化することができる。
【0102】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態や実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、撮像デバイスに用いる光学フィルタに適用できる。
【符号の説明】
【0104】
1 撮像デバイス
11 光軸
2 レンズ
3 光学フィルタモジュール
4 第1フィルタ
5 赤外線吸収体
51 赤外線吸収ガラス
52,53 主面
54 反射防止膜
6 赤外線反射体
61 透明基板
62,63 主面
64 赤外線反射膜
65 第1薄膜
66 第2薄膜
7 第2フィルタ
71 透明基板
72,73 主面
74 赤外線パスコート
75 第1薄膜
76 第2薄膜
77 反射防止膜
8 光学フィルタ
81 反射防止膜
9 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像デバイスに設けられる、複数のフィルタを切換配置可能な光学フィルタモジュールにおいて、
複数のフィルタは、可視光を透過し、少なくとも赤外線をカットする第1フィルタと、赤外線のみをパスする第2フィルタとであり、前記第1フィルタと前記第2フィルタとが選択的に切換可能に配置されたことを特徴とする光学フィルタモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光学フィルタモジュールにおいて、
前記第2フィルタは、赤外線の予め設定した特定帯域のみをパスし、赤外線の他の帯域をカットすることを特徴とする光学フィルタモジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学フィルタモジュールにおいて、
前記第1フィルタは、赤外線を吸収する赤外線吸収体と、赤外線を反射する赤外線反射体とを備えたことを特徴とする光学フィルタモジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の光学フィルタモジュールにおいて、
前記赤外線吸収体は、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示し、
前記赤外線反射体は、670nm〜690nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示し、
前記赤外線吸収体と前記赤外線反射体の組み合わせにより、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となり、700nmの波長で透過率が5%未満となる光透過特性を示すことを特徴とする光学フィルタモジュール。
【請求項5】
光軸に沿って外部の被写体側から、少なくとも、外部から光を入射する結合光学系、複数のフィルタを切換配置可能な光学フィルタシステム、光学フィルタ、撮像素子が順に配設された撮像デバイスの光学フィルタシステムにおいて、
複数のフィルタは、可視光を透過し、少なくとも赤外線をカットする第1フィルタと、赤外線のみをパスする第2フィルタとであり、前記第1フィルタと前記第2フィルタとのいずれか一方が選択的に前記光軸上に切換配置されたことを特徴とする光学フィルタシステム。
【請求項6】
請求項5に記載の光学フィルタシステムにおいて、
前記第2フィルタは、赤外線の予め設定した特定帯域のみをパスし、赤外線の他の帯域をカットすることを特徴とする光学フィルタシステム。
【請求項7】
請求項5または6に記載の光学フィルタシステムにおいて、
前記第1フィルタは、赤外線を吸収する赤外線吸収体と、赤外線を反射する赤外線反射体とを備えたことを特徴とする光学フィルタシステム。
【請求項8】
請求項7に記載の光学フィルタシステムにおいて、
前記赤外線吸収体は、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示し、
前記赤外線反射体は、670nm〜690nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となる光透過特性を示し、
前記赤外線吸収体と前記赤外線反射体の組み合わせにより、620nm〜660nmの波長帯域内の波長で透過率が50%となり、700nmの波長で透過率が5%未満となる光透過特性を示すことを特徴とする光学フィルタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−159658(P2012−159658A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18751(P2011−18751)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】