説明

光学フィルター用積層プラスチックフィルム

【課題】 ディスプレイ面への密着力を高め、ガラス面に貼合する時に撓んでしまうことが無く、かつ、ディスプレイ面に静電気による、塵埃付着を避けるための十分な帯電防止性能を持ち、画像の明晰性を高める光学フィルター用積層プラスチックフィルムを提供することにある。
【解決手段】 プラスチックフィルム(1)の片面(A)に、反射防止層を設け、該反射防止層の表面をマスキングフィルムで保護し、さらに該プラスチックフィルム(1)の他面(B)に、着色粘着層を順次積層した積層フィルム(I)と、プラスチックフィルム(2)の片面(C)に、帯電防止層及び粘着層を順次積層し、該粘着層の表面を離型フィルムで保護した積層フィルム(II)のプラスチックフィルム(2)の他面(D)を、積層フィルム(I)の着色粘着層面と対向させて粘着剤を介して貼合した積層フィルム(III)である光学フィルター用積層プラスチックフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置に好適な光学フィルター用積層プラスチックフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス製の平面陰極線管(以下CRTと表す)、プラズマディスプレイパネル(以下PDPと表す)、液晶ディスプレイパネル(以下LCDと表す)および電界放出型ディスプレイ(以下FEDと表す)等の表示装置には、破損したときの飛散防止あるいはガラス表面の光学的性質の改善等の目的のために、その表示面にプラスチックフィルムを貼り合わせることが行なわれている。そして、そのプラスチックフィルムには、一般に、その表面保護、帯電防止および視認性向上等を目的に、ハードコートフィルム等の積層プラスチックフィルムが用いられている。
【0003】
積層プラスチックフィルムの帯電防止機能付与には、例えば、金属酸化物などの蒸着加工で透明性が高い導電性薄膜を形成することにより、静電気による粉塵付着を高いレベルで防止する方法があるが、蒸着工程は生産性が劣る等の理由からコストが高く、しかも耐擦傷性が十分でないという問題があった。
【0004】
プラスチックフィルムに帯電防止機能を有する塗剤をコーティングする手法もあり、樹脂成分に導電性金属酸化物粒子を分散し、コーティングし被膜を形成する方式が知られている。
【0005】
また、近年ディスプレイは大画面表示に加え薄型化が主流となり、次世代の大型表示デバイスとしてPDPが一般的になってきており、同様に次世代のディスプレイとしてFEDが大きく注目されているが、これらには外部からの光(例えば、室内灯等の光)が、ディスプレイパネル表面(映像表示部分)で反射し、画像の明晰性、視認性を著しく阻害するとの問題があった。
【0006】
このような問題に対し、表面に反射防止機能を持った各種積層プラスチックフィルムをガラス面に貼合する方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、これら各種積層プラスチックフィルムをガラス面に貼合する実際の作業において、枚葉で積層プラスチックフィルムを持ち上げると撓みを発生することがあり、撓んだ状態のまま積層プラスチックフィルムの貼り付けを強行すると、組み付けた製品のディスプレイパネルの光学特性を損ない、しいてはその寿命に影響を与える等の問題につながることがあった。このことから積層プラスチックフィルムの撓み抑制は、ディスプレイパネルの組立工程における作業性低下防止、更には製品性能低下防止の面で重要な要因であった。
【特許文献1】特開2006−189784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ディスプレイ面への密着力を高め、枚葉にてディスプレイ面に貼合する時にたわみ、ズレ等を無くし作業適性を大幅に改善し、かつ、ディスプレイ面に静電気による塵埃付着を避けるための十分な帯電防止性能を持ち、画像の明晰性を高める光学フィルター用積層プラスチックフィルムを得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するための本発明は、次の構成を特徴とするものである。
【0010】
プラスチックフィルム(1)の片面(A)に、反射防止層を設け、該反射防止層の表面をマスキングフィルムで保護し、さらに該プラスチックフィルム(1)の他面(B)に、着色粘着層を順次積層した積層フィルム(I)と、プラスチックフィルム(2)の片面(C)に、帯電防止層及び粘着層を順次積層し、該粘着層の表面を離型フィルムで保護した積層フィルム(II)のプラスチックフィルム(2)の他面(D)を、積層フィルム(I)の着色粘着層面と対向させて粘着剤を介して貼合した積層フィルム(III)である光学フィルター用積層プラスチックフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ディスプレイ面への密着力を高め、枚葉にてディスプレイ面に貼合する時にたわみ、ズレ等を無くし作業適性を大幅に改善し、かつ、ディスプレイ面に静電気による塵埃付着を避けるための十分な帯電防止性能を持ち、画像の明晰性を高める光学フィルター用積層プラスチックフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、プラスチックフィルム(1)の片面(A)に、反射防止層を設け、該反射防止層表面をマスキングフィルムで保護し、さらに該プラスチックフィルム(1)の他面(B)に、着色粘着層を順次積層した積層フィルム(I)と、プラスチックフィルム(2)の片面(C)に、帯電防止層及び粘着層を順次積層し、該粘着層表面を離型フィルムで保護した積層フィルム(II)のプラスチックフィルム(2)の他面(D)を、積層フィルム(I)の着色粘着層面と対向させて粘着剤を介して貼合した積層フィルム(III)である光学フィルター用積層プラスチックフィルムである。
【0013】
積層フィルム(I)について説明する。
【0014】
本発明の光学フィルター用積層プラスチックフィルムでは、積層フィルム(I)で用いるプラスチックフィルム(1)は、溶融製膜もしくは溶液製膜可能なフィルムが好適に用いられる。その具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、アセテート、ポリカーボネート、アクリル系樹脂などからなるフィルムを挙げることができる。これらの内、特に透明性、機械的強度、寸法安定性などに優れた熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましい。
【0015】
光学フィルター用途に用いるためにプラスチックフィルム(1)は、全光線透過率が高く、ヘイズ値が低いことが好ましいため、ポリエステル、アセテートおよびアクリル系樹脂より選ばれた少なくとも1種からなるプラスチックフィルムが好ましい。透明性、ヘイズ値、機械特性、フィルム単体での屈折率の点から、特にポリエステルからなるプラスチックフィルムが好ましく用いられる。本発明で好ましく用いられるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどが挙げられる。これらの2種以上が混合されたものであってもよい。
【0016】
また、本発明の光学フィルター用積層プラスチックフィルムにおいて、積層フィルム(I)で用いられるプラスチックフィルムは、2層以上の積層構造の複合体フィルムであっても良い。
【0017】
積層フィルム(I)で用いられるプラスチックフィルムの厚みは、本発明におけるハードコートフィルムが使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度やハンドリング性などの点、そして、積層フィルム(III)として見掛け弾性値が100kg/μ・mm〜200kg/μ・mmとなるように厚みを選定する。今回はPETフィルムを選択したが、PETフィルムの場合、好ましくは25〜250μm、より好ましくは75〜188μmであり、もっとも好ましいのは、100μmである。
【0018】
見掛け弾性値はフィルム固有の引っ張り弾性係数を使用して求める。計算方法については後述する。
【0019】
積層フィルム(I)での反射防止層は、好ましくは、プラスチックフィルム(1)に、ハードコート層を設け、次いで、高屈折率層次いで、低屈折率層を積層した3層よりなる。
【0020】
積層フィルム(I)の反射防止層に設けられるハードコート層としては、好ましくは、アクリル樹脂層、エポキシ樹脂層、ウレタン樹脂層、シリコーン樹脂層等を挙げることができ、通常、その厚さは、1〜50μm、好ましくは、1〜10μmであり、さらに好ましくは1〜5μmである。
【0021】
積層フィルム(I)の反射防止層に、好ましく設けられるハードコート層は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂のいずれでもよいが、紫外線硬化性樹脂が好ましい。
【0022】
積層フィルム(I)の反射防止層に、好ましく設けられるハードコート層に用いられる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂などを挙げることができる。
【0023】
積層フィルム(I)の反射防止層に、好ましく設けられるハードコート層に用いられる紫外線硬化性樹脂は、例えば、炭素、炭素二重結合等の光重合性基を有するモノマー及び/又はオリゴマー(好ましくは(メタ)アクリル系モノマー及び/又はオリゴマー)、そして光重合開始剤等を含むものである。上記モノマー及び/又はオリゴマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー類;ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水糖類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4’−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2’,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。特にウレタンアクリレート、アクリレートモノマーの混合物が好ましい。これらの紫外線硬化性樹脂を、熱重合開始剤とともに用いて熱硬化性樹脂として使用してもよい。ハードコート層とするには、上記の紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)の内、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0024】
紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤として、紫外線硬化性樹脂の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0025】
これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のような安息香酸系又は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)が好ましい。光重合開始剤の量は、樹脂組成物に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。ハードコート層は、透明基板より屈折率が低いことが好ましく、上記紫外線硬化性樹脂を用いることにより一般に基板より低い屈折率を得られやすい。従って、透明基板としては、PET等の高い屈折率の材料を用いることが好ましい。このため、ハードコート層は、屈折率を1.60以下にすることが好ましい。
【0026】
積層フィルム(I)での反射防止層において、低屈折率層の屈折率が1.42以下であることが好ましく、かつ、低屈折率層と高屈折率層の屈折率差が0.15以上であることが好ましい。
【0027】
低屈折率層の屈折率は、1.25〜1.42であることが、より好ましく、さらに好ましくは1.30〜1.38である。
【0028】
低屈折率層は、一例として、シランカップリング剤、アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂を含むことが好ましい。
【0029】
シランカップリング剤成分としては、一般式
R(1)R(2)SiX4−(a+b)
で表される化合物ないしはその加水分解生成物である。ここで、R(1)R(2)は各々アルキル基、アルケニル基、アリル基、またはハロゲン基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、メタクリルオキシ基、ないしシアノ基を有する炭化水素基である。Xはアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン基ないしアシルオキシ基から選ばれた加水分解可能な置換基である。a、bは各々0、1または2であり、かつa+bが1、2または3である。
【0030】
アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂は、一般式
R(3)R(4)SiX4−(a+b)
で表される化合物ないしはその加水分解物生成物である。ここでR(3)R(4)は各々フッ素置換したアルキル基、アルケニル基、アリル基、メタクリルオキシ基、ないし(メタ)アクリロイル基を有する炭化水素基である。Xはアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン基ないしアシルオキシ基から選ばれた加水分解可能な置換基である。c、dは、0、1、2または3であり、かつc+dが1、2または3である。
【0031】
積層フィルム(I)での反射防止層は、好ましくは、低屈折率層を形成する際に、さらに必要に応じて、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、レベリング剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0032】
また積層フィルム(I)での反射防止層の低屈折率層には、硬度を高めるために、シリカ微粒子を併用しても構わない。シリカ微粒子成分は、乾式シリカ、湿式シリカ、コロイド状に分散したシリカ微粒子等が挙げられるが、粒度分布が揃っている球状シリカ微粒子を含有させるのが好ましい。該シリカ微粒子の粒径は平均1次粒子径(球相当径:BET法)が0.001〜0.2μmのものが一般に使用できるが、好ましくは0.005〜0.15μmの粒子径のものが用いられる。これら微粒子を含有させることにより、低屈折率層の表面は、微粒子に由来する凹凸を有する。この凹凸により、干渉による反射防止だけでなく、散乱による反射防止効果も加わることで、波長400〜700nmにおける表面反射スペクトルを全体に低反射率化させることが可能となる。
【0033】
積層フィルム(I)での反射防止層の低屈折率層の表面粒さは、中心線平均粒さRaが0.5〜15.0nmが好ましく、さらに最大高さRmaxが5〜150nmであることが好ましい。RaおよびRmaxがこの範囲より低いと散乱による反射防止効果が少なくなり、逆にこの範囲を超えると、ヘイズや耐擦傷性が悪くなり、また指紋が拭き取りにくくなるので好ましくない。
【0034】
積層フィルム(I)での反射防止層において、低屈折率層の低屈折率化の方法として、シリカ微粒子を含有する組成中に気泡を含有させることも好ましい。この場合、低屈折率層の空隙率が5%以上であることが好ましく、さらには10%以上であることが好ましい。気泡を含有させる方法としては、コーティング膜を乾燥時に発泡させる方法、有機粒子や無機粒子を含有させておき、乾燥時の硬化収縮を利用して粒子界面でボイドを形成する方法、中空もしくは気泡を内在する有機粒子や無機粒子を配合する方法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0035】
なお、空隙率を制御して屈折率をコントロールするという点からは、中空もしくは気泡を内在する有機粒子や無機粒子を配合する方法が好ましい。特に、前記シリカ微粒子として、多孔質状、もしくは、中空状シリカ微粒子を用いることが好ましい。その場合、微粒子の空隙率としては、5%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。このような中空粒子の例としては、例えば、特開2001−233611号公報、J.Am.Chem.soc.2003,125,316−317などの公知文献に記載がある。また、粒子径の異なる粒子を組み合わせることで、さらに、中空粒子の濃度を増加させて、屈折率を下げることができる。
【0036】
また、積層フィルム(I)での反射防止層において、低屈折率層を形成する場合には、シランカップリング剤、アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂、もしくは、あらかじめこれらの混合物を共重合させたもの、および必要に応じて、シリカ微粒子を含有する組成物を、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコール、n一ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、イソプロピルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセチルアセトン、アセチルアセトンから選ばれる少なくとも1種以上の溶剤に分散させた液を、塗布した後、乾燥・硬化させ、低屈折率層を形成する方法をとることが好ましい。これにより、耐擦傷性を高くすることができる。この場合の溶剤の量は、必要とする組成物の粘度、目的とする硬化被膜の厚さ、乾燥温度条件などにより適宜変更できる。通常は、塗布液中の有効成分であるシランカップリング剤、アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂、シリカ微粒子等の構成成分の合計量1重量部に対して、好ましくは0.05〜100倍重量部、より好ましくは0.1〜50倍重量部、さらに好ましくは、1〜40倍重量部の溶剤を用いる。
【0037】
積層フィルム(I)での反射防止層において、低屈折率層を形成する場合には、硬化触媒としては、シランカップリング剤の縮合反応を促進するものが好ましく、このようなものとして酸化合物を挙げることができる。これらの中でルイス酸化合物が好ましい。ルイス酸化合物の例として、アセトアセトキシアルミニウム等の金属アルコキシドや金属キレートを挙げることができる。この硬化触媒の量は、適宜決定することができるが、例えば、シランカップリング剤100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部である。低屈折率層の構成比としては固形分比で、シランカップリング剤が0.2〜0.4、アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂が0.2〜0.4、シリカ微粒子が0.2〜0.6であることが反射率などの光学特性、表面硬度などの点からも好ましい。また、塗膜表面のF元素とSi元素との原子比がF/Siが0.5〜5.0であり、さらには0.7〜3.0であることが耐擦傷性と防汚性の点から好ましい。原子比はElectron Spectroscopy for Chemica1 Analysis (ESCA分析)により求めることができる。
【0038】
積層フィルム(I)での反射防止層では、高屈折率層の屈折率は1.50〜1.70であることが好ましく、さらに好ましくは、1.55〜1.69である。
【0039】
積層フィルム(I)の反射防止層に、好ましく設けられる高屈折率層は、樹脂成分に、(メタ)アクリレート化合物が用いることが好ましい。
【0040】
高屈折率層に用いられる(メタ)アクリレート化合物は、活性光線照射によりラジカル重合し、形成される膜の耐溶剤性や硬度を向上させるため好ましく、さらに、(メタ)アクリロイル基が分子内に2個以上の多官能(メタ)アクリレート化合物は、耐溶剤性等が向上するので特に好ましい。例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌル酸エステルトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
高屈折率層に用いられる樹脂成分には、金属化合物粒子の分散性を向上させるため、カルボキシル基や、リン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物が使用できる。具体的には、酸性官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸(メタ)アクリル酸エステル、2−スルホエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などの極性を持った結合を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
【0042】
積層フィルム(I)の反射防止層は、好ましくは、表面抵抗値1014Ω/□以下である。
【0043】
積層フィルム(I)の反射防止層は、好ましくは、帯電防止機能をもつ。反射防止層に帯電防止機能を付与する為、反射防止層は、ITO、ATO、Sb、SbO、ln、SnO、ZnO、AlをドープしたZnO、TiO等の導電性金属酸化物微粒子(無機化合物)が分散した層とすることが好ましい。金属酸化物微粒子としては、平均粒径10〜10000nm、好ましくは10〜50nmのものが好ましい。膜厚は一般に10〜1000nmの範囲、好ましくは60〜120nmである。
【0044】
以上記述した積層フィルム(I)での反射防止層において、好ましく用いられる帯電防止機能を持つ3層からなる反射防止層の形成方法は、好ましくは、コーティング法によることができる。プラスチックフィルムに連続的にコーティングする際のコーティング方法としては、グラビアロールで直接コーティング液を支持体にコーティングするダイレクト方式をとる。
【0045】
コーティングに用いるグラビアロールとしては、特に限定されないが、メッシュ10〜300/cm、深さ5〜500μmのものを好ましく使用することができる。メッシュ300/cm以下、深さ5μm以上とすることにより、塗膜の湿潤膜厚が薄くなり過ぎることを避け塗膜形成を容易にすることができ、またコーティング液の供給不足による塗膜の欠陥の発生を避けることができる。またメッシュ10/cm以上、深さ500μm以下とすることにより、コーティング液の過剰供給を防ぎ、グラビアロール又はオフセットロールと支持体との間にコーティング液の液溜りが生じることを防ぎ、塗面の均一性を高めると共に液状成分の蒸発を容易にすることができる。しかしながら、メッシュ及び深さが前記規定の範囲外であっても、許容しうる本発明の効果を得ることができる。
【0046】
グラビアロール表面のセルの形状は特に限定されず、ピラミッド型、格子型、斜線型等いずれの形状のセルを有するグラビアロールでも使用することができる。
【0047】
コーティングする際のグラビアロールの回転方法はコーティング方向に対して正回転、逆回転のいずれであってもよい。支持体のコーティング速度に対するグラビアロールの回転速度の比は0.001〜500であることが好ましい。速度比を0.001以上とすることにより塗膜の湿潤膜厚が薄くなり過ぎることを避けることができ、またコーティング液の供給不足による塗膜の欠陥の発生を避けることができる。速度比を500以下とすることによりコーティング液の過剰供給を防ぎ、グラビアロール又はオフセットロールと支持体との間にコーティング液の液溜りが生じることを防ぎ、塗面の均一性を高めると共に液状成分の蒸発を容易にすることができる。支持体のコーティング速度に対するグラビアロールの回転速度の比が0.001〜500以外であっても問題はない。
【0048】
また、塗液に紫外線硬化性樹脂を使用しているため、コーティング後、オーブンにて溶媒を揮発させた後、紫外線を照射して硬化することにより密着性の向上、膜の硬度の上昇という効果が得られる。紫外線硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【0049】
たとえば、以上の工程により、帯電防止機能を持った反射防止膜を持つ積層フィルム(I)を得る事ができる。
【0050】
また積層フィルム(I)では、好ましくは、低屈折率層をコーティング後、塗工面保護のため、塗工面乾燥後、粘着付フィルムを塗工面に貼合する。
【0051】
積層フィルム(I)では、反射防止層表面をマスキングフィルムで保護し、さらに該プラスチックフィルム(1)の他面(B)に、色補正を目的とした着色粘着層を順次積層する。積層フィルム(I)では、プラスチックフィルム(1)の他面(B)に、着色粘着層を積層する。積層フィルム(I)の着色粘着層は、優れた光学特性として、適度な明るさと、高いコントラストそして鮮やかな色調等が得られるようにするため、好ましくは、反射防止機能を付与した基材フィルムの背面に色補正を目的とした着色粘着層を設けるため、アクリル系樹脂に、顔料、色素(顔料)等を含有させた塗液をコーティングする。
【0052】
本発明に使用される着色剤としては、染料、顔料等が挙げられるが、着色粒子の光散乱による表示品位の低下を防ぐためには染料が好ましいと言われている。
【0053】
しかし、染料よりも顔料の方が温湿度等環境による劣化を起こす可能性が低く、安定している。また、顔料の粒経を小さくすることで光散乱による表示品位の低下を抑えることができるため、本発明では顔料(カーボンブラック)を使用した。
【0054】
本発明での使用に適したカーボンブラックとしては、平均粒子径が好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下であり、BET比表面積が100m2/g以上、さらに好ましくは250m2/g以上のものである。
【0055】
画像表示部の光透過率、光散乱率を適宜の範囲に調整するためには、上記の粒径およびBET比表面積を備えていることが好ましい。
【0056】
本発明で使用されるカーボンブラックにさらに好まれる特性としては、吸油量が高いこと、pH4以下の酸性カーボンであること、揮発分が10重量%以上であることが挙げられる。
【0057】
上記特性を充足するカーボンブラックは市場で容易に入手することができる。
【0058】
例えば、デグサ社(ドイツ)の“Color Black FW200(平均粒子径13nm,BET比表面積460m2/g,pH2.5)”、“Special Black 4(25nm,180m2/g,pH3.0)”、“Color Black FW 2(13nm,460m2/g,pH2.5)”、“Special Black 6(17nm,300m2/g,pH2.5)”、三菱化学社の“#2350(15nm,260m2/g,pH2)”、“#2400(15nm,260m2/g,pH2)”、”#1000(18nm,200m2/g,pH3)”、”#970(16nm,250m2/g,pH3.5)”、デグサ社の”Special Black 5 (20nm,240m2/g,pH3)”、”キャボット社の“MONARCH1300(13nm,560m2/g,pH3)”、“MONARCH1400(13nm,560m2/g,pH3)”、“MONARCH1000(16nm,340m2/g,pH3)”、“Black Pearls1300(13nm,560m2/g,pH3)”、“Black Pearls1400(13nm,560m2/g,pH3)”、“Black Pearls1000(16nm,340m2/g,pH3)”、”MOGUL(24nm,140m2/g,pH4)”,"Black Pearls L(24nm,140m2/g,pH4)"、コロンビア社の“Raven7000(11nm,640m2/g,pH3)”、“Raven5750(12nm,620m2/g,pH3)”、“Raven5000(8nm,580m2/g,pH3)”、“Raven3500(13nm,380m2/g,pH4)”、”Raven5250(16nm,590m2/g,pH3)”等が挙げられる。
【0059】
着色粘着層に用いる粘着剤がカルボキシル基又は水酸基を有する場合には、酸性カーボンを用いることが好ましい。好ましいカーボンのpHは4以下である。
【0060】
着色粘着層において添加する顔料がカーボンブラックのみであると、目的の色相にならないことがあり、褐色になり易く、発色体によっては黒白のコントラストを不良とし、あるいは各種色相を不良とする場合がある。
【0061】
このため、貼着フィルムの色相を発色体等の変化による要求に応えるため、顔料が添加される。
【0062】
顔料としては平均粒子径が、0.01〜5μm、さらに好ましくは0.01〜1μmであるものが好ましく使用される。
【0063】
本発明での使用に適した顔料を例示すると次の通りである。
【0064】
イソインドリノン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、アゾ系、ナフトール系、キノフタロン系、アゾメチン系、ベンズイミダゾロン系、ペリノン系、ピランスロン系、キナクリドン系、ペリレン系、フタロシアニン系、スレン系等。
【0065】
好ましいものとしては、ジオキサジン系、アゾ系、ナフトール系、キナクリドン系の赤色系顔料、フタロシアニン系の青色系顔料があげられ、もっとも好ましい顔料としては、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、銅フタロシアニン系顔料があげられる。
【0066】
これらの顔料は、目的とする色相に調整するため適宜混合して使用することもできる。
酸性カーボンは、カーボン表面を酸化処理して得られる。染料で染色できるプラスチックについては、灰色から黒色または青系に染色することが画像品位を保持する点から好ましく、さらに好ましくは灰色または黒色が良い。
【0067】
灰色、黒色となる染料としては、例えば赤色、黄色、青色、緑色等の染料を任意の割合で混合した混合染料が使用できる。
【0068】
本発明での色素添加量は、固形分費0.01〜10%範囲で添加することができるが、塗工溶液の安定特性から0.1〜1.0%が好ましく、最も好ましくは0.1〜0.5%である。
【0069】
積層フィルム(I)では、着色粘着層に使用される粘着剤としては、2つの物体をその粘着作用により接着させるものであれば特に限定されない。粘着剤としては、ゴム系、ビニル重合系、縮合重合系、熱硬化性樹脂系、シリコーン系などを用いることができる。この中で、ゴム系の粘着剤としては、ブタジエン−スチレン共重合体系(SBR)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体系(NBR)、クロロプレン重合体系、 イソブチレン−イソプレン共重合体系(ブチルゴム)などを挙げることができる。
【0070】
ビニル重合系の粘着剤としては、アクリル系、スチレン系、酢酸ビニル−エチレン共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系などを挙げることができる。また、縮合重合系の粘着剤としては、ポリエステル系を挙げることができる。さらに熱硬化樹脂系の粘着剤としては、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、ホルマリン樹脂系などを挙げることができる。これらの中でも透明性に優れ、耐候性、耐熱性、耐湿熱性、基材密着性等を考慮すると、アクリル系粘着剤が好適に用いられる。かかるアクリル系粘着剤の具体例としては、綜研化学株式会社製 SKダイン(登録商標)1310、1435、SKダイン1811L、SKダイン1888、SKダイン2094、SKダイン2096、SKダイン2137、SKダイン3096、SKダイン1852等が好適な例として挙げられる。
【0071】
アクリル系粘着剤は、それだけでは凝集力が低いので、架橋剤により架橋させるのが好ましく、かかる架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物などが好適に用いられる。
【0072】
また、アクリル系粘着剤には、被着体(ガラスや機能フィルム)の材質に応じて、着色顔料もしくは着色染料の他に、酸化防止剤や紫外線吸収剤、シランカップリング剤、金属不活性剤などを適宜添加配合することも好適に行われる。
【0073】
粘着層は、アルコール等で予め脱脂したガラス板に光学フィルムを貼り合わせた場合の90度におけるフィルム剥離強度が1〜25N/25mmの範囲であるものが好ましく、さらには5〜15N/25mmの範囲が好ましい。剥離強度が、上記値より低いと、粘着力が弱く剥がれやすくなり、逆に剥離強度が上記値より高いと、リワーク性が悪くなるので好ましくない。
【0074】
本発明において、着色粘着層の全光線透過率は35〜97%が好ましい。より好ましくは50〜80%、さらに好ましくは45〜95%である。
【0075】
着色粘着層は貼り合わせ工程にかけられるまでの間、作業性を考慮して離型フィルムと貼り合わされる。かかる離型フィルムとしては、ポリエステルなどのフィルム基材にシリコーン等の離型剤がコーティングされたフィルムが好適に用いられる。かかる離型フィルムの具体例としては、東レフィルム加工株式会社製 「セラピール」(登録商標)などが挙げられる。
【0076】
着色粘着層は、例えば3本リバースコーターや正転またはリバースグラビアコーター、コンマコーター、ダイコーターなどのコーティング方式により、前記離型フィルムの離型層面に塗工され、オーブンで乾燥して成膜した後、光学フィルムに積層する方法が好ましいが、本方法に限定されるものではない。
本発明の光学フィルター用積層プラスチックフィルムは、好ましくは、下記の積層フィルム(II)のプラスチックフィルム(2)の他面(D)を、積層フィルム(I)の着色粘着層面と対向させて粘着剤を介して貼合した積層フィルム(III)である。
【0077】
本発明の光学フィルター用積層プラスチックフィルムは、好ましくは、プラスチックフィルム(2)の片面(C)に、帯電防止層及び透明粘着層を順次積層し、該粘着層表面を離型フィルムで保護した積層フィルム(II)を用いる。
【0078】
次に、プラスチックフィルム(2)の片面(C)に、帯電防止層及び粘着層を順次積層し、該粘着層表面を離型フィルムで保護した積層フィルム(II)について説明する。
【0079】
プラスチックフィルム(2)は、光学フィルター用途に用いるため、光線透過率が高く、ヘイズ値が低いことが好ましい。プラスチックフィルム(2)は、ポリエステル、アセテートおよびアクリル系樹脂より選ばれた少なくとも1種からなるフィルムが好ましい。透明性、ヘイズ値、機械特性の点から、特にポリエステルからなるフィルムが好ましく用いられる。
【0080】
プラスチックフィルム(2)において、ポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した場合、その厚みは、好ましくは25〜250μm、より好ましくは125〜188μmであり、もっとも好ましいのは188μmである。
【0081】
積層フィルム(II)では、プラスチックフィルム(2)の片面に、帯電防止層及び粘着層を順次積層する。
【0082】
積層フィルム(II)の帯電防止層は導電性成分を含んでなる。導電成分としては例えば、カーボンナノチューブが挙げられる。
【0083】
積層フィルム(II)の帯電防止層の表面抵抗値が10Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗値を得る手段として、本発明では、カーボンナノチューブを用いる。該帯電防止層中のカーボンナノチューブの含有量は、重要な特性である全光透過率と表面抵抗値を支配する因子であり、含有量は少なくなるほど全光透過率が高くなり好ましいが、少なくなりすぎると表面抵抗値も高くなる。したがって、かかる含有量はそれら特性を考慮して決められるが、好ましくは0.1mg/m以上10mg/m以下、さらに好ましくは1mg/m以上6mg/m以下であるのが、表面抵抗値、全光透過率ともに良好な帯電防止層を得る上からよい。かかる含有量が、10mg/mを越えると、全光透過率が低くなるので好ましくない。また、該含有量が、0.1mg/mを下回ると、所望する表面抵抗値が得られなくなるので好ましくない。
【0084】
本発明でいうカーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ(SWNT)、2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブ(DWNT)、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブ(MWNT)という。カーボンナノチューブを用いた導電フィルムの報告例はいくつかあるが、実用に耐え得る全光透過率と表面抵抗値には到達していない。その理由として、用いているカーボンナノチューブの直径が細く、単層であるが故に、カーボンナノチューブ数10本以上が集まってバンドル構造をとりやすく、単分散し難いため、光透過率、表面抵抗率とも不十分となることが考えられる。また、層数の多いMWNTはバンドルを組まず、分散はしやすいが、層数が多すぎると透明性が落ちて全光透過率、表面抵抗値とも不十分となる。
【0085】
本発明で用いるカーボンナノチューブとしては、特徴的にはバンドルを組みにくく分散しやすく、かつ層数の少ないカーボンナノチューブであることが好ましく採用される。その理由は明らかにはなってはいないが、太いカーボンナノチューブはバンドルを組みにくく、特に、内径が3nm以上のものが液中でバンドルを組みにくい。このような内径が3nm以上で、層数が少なく、バンドル構造をとりにくいカーボンナノチューブを用いれば、分散性が良好となるため、基材表面に薄く、均一に塗布できるので全光透過率の面から好ましい。また、塗布されたカーボンナノチューブ層も内径が太いためフィルム表面がカーボンナノチューブで埋め尽くされても光透過性を維持することができる。そこで液に分散させるカーボンナノチューブとしては、カーボンナノチューブ100本中内径3nm以上のカーボンナノチューブが50本以上含まれるカーボンナノチューブが好ましく、より好ましくは70本以上、さらに好ましくは90本以上である。カーボンナノチューブ100本中に含まれる内径3nm以上のカーボンナノチューブの本数の測定方法は後述する。
【0086】
本発明で用いるカーボンナノチューブの内径は、上記したように3nm以上であることがカーボンナノチューブの体積あたりの全光透過率が高くなるので好ましく、より好ましくは内径4nm以上、特に好ましくは5nm以上である。上限としては、カーボンナノチューブの安定性から、好ましくは10nm以下、より好ましくは8nm以下、特に好ましくは内径6nm以下であるのがよい。
【0087】
また、カーボンナノチューブの層数は特に限定されるものではないが、好ましくは上記した内径3nm以上のカーボンナノチューブ100本中に50本以上の割合で、層数が単層から5層であるカーボンナノチューブを含有するものが好ましく使用される。このように内径が比較的太く、層数が単層〜5層までのカーボンナノチューブを用いることで、液中に分散させた場合や、それを用いて帯電防止層を形成する場合に、該カーボンナノチューブがバンドル構造をとりにくいという利点がある。ここで層数は少ないほど好ましいが、単層カーボンナノチューブでは耐久性が低く、多層よりもバンドルを組みやすいので、好ましくは2層以上のものが好ましい。また、該層数が2層以上のカーボンナノチューブは表面が酸化されても内部のカーボンナノチューブが守られるなど導電性においても優れているものの、5層以上のカーボンナノチューブは、最外層の欠陥が多くなるため導電性が高くない場合があるため、層数は2層〜4層がより好ましい。
【0088】
カーボンナノチューブは、直線が好ましいが屈曲部を有するものでもかまわない。カーボンナノチューブ中の屈曲部とは、カーボンナノチューブのグラファイト構造中に炭素6員環以外に5員環と7員環が存在することによる屈曲をいい、カーボンナノチューブが長さ方向の途中で折れ曲がった状態になって観察される部分のことをいう。屈曲部が多くなるほど分散性が良くなり、導電ネットワークを形成しやすいという利点がある。一方、屈曲部が多くなるとグラファイト構造の欠陥も増加し、導電性が低下する場合がある。従って、屈曲カーボンナノチューブを用いる場合は、導電ネットワークの交絡点間における屈曲部の数を10個以下、さらには5個以下とするのが好適である。
【0089】
該帯電防止層のカーボンナノチューブの形態は、超高分解能透過型電子顕微鏡や超高分解能電界放射型走査電子顕微鏡で調べることができるが、塗布前のカーボンナノチューブを含有してなる液からカーボンナノチューブをピペットを用いてマイクログリッド上に数μLとり、風乾させた後、上記した電子顕微鏡でマイクログリッド上のカーボンナノチューブを調べることもできるし、フィルムをエポキシ樹脂で包埋した後、カミソリなどを用いて0.1μm以下に薄く切断した切片を観察する超薄切片法によって、該帯電防止層中のカーボンナノチューブを上記した電子顕微鏡で調べることができる。また、該帯電防止層をカミソリなどで掻きとって、その掻きとった組成物を上記した電子顕微鏡で観察することによっても調べることができる。
【0090】
カーボンナノチューブの内径は、上記した方法で試料を作成し、超高分解能透過型電子顕微鏡で200万倍で観察し、100nm四方の視野の中で視野面積の10%がカーボンナノチューブであり、かつ10本以上のカーボンナノチューブが含まれるところで写真を撮り、各カーボンナノチューブの内径を測定する。上記測定を数カ所について行い、合計100本のカーボンナノチューブについて内径を測定することによって100本中に含まれるカーボンナノチューブの内径とその本数を確認することができる。このとき、カーボンナノチューブ1本とは、視野中で一部カーボンナノチューブが見えていれば1本と計上し、必ずしも両端が見えている必要はない。また視野中で2本と認識されても視野外でつながって1本となっていることもあり得るが、その場合は2本と計上する。カーボンナノチューブの内径を測る位置はカーボンナノチューブが湾曲していない直線性のある位置を選んで測定するものとする。
【0091】
かかるカーボンナノチューブの合成方法は、アーク放電法、レーザーアブレーション法でも合成できるが、触媒化学気相成長法がカーボンナノチューブの内径を太く、かつアモルファスカーボンなどの不純物を少なくすることができる点でもっとも好ましく用いられる。かかる触媒化学気相成長法による合成例としては、例えば特開2004−352512号公報や特開2005−097024号公報に記載の方法が好ましい例として挙げられる。
【0092】
本発明で用いられる該帯電防止層は、カーボンナノチューブ、分散剤、分散媒からなる塗液をフィルム基材の上にコーティングし、乾燥することにより形成するのが好ましい。分散剤としてはカーボンナノチューブの分散媒中の分散性を向上させるものであれば特に限定するものではないが、界面活性剤が好ましく用いられる。
【0093】
かかる界面活性剤としては、イオン性界面活性剤のものと非イオン性界面活性剤のものに分けられるが、いずれの界面活性剤を用いることも可能である。イオン性界面活性剤としては、例えば以下のような界面活性剤があげられる。かかる界面活性剤は単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0094】
まず、イオン性界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤および陰イオン性界面活性剤にわけられる。陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などがあげられる。両イオン性界面活性剤としては、アルキルベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤がある。陰イオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸系界面活性剤、モノソープ系アニオン性界面活性剤、エーテルサルフェート系界面活性剤、フォスフェート系界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤であり、中でも、分散能、分散安定能、高濃度化に優れることから、芳香環を含むもの、すなわち芳香族系イオン性界面活性剤が好ましく、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等の芳香族系イオン性界面活性剤が好ましい。
【0095】
次に、非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの糖エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエチルなどの脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリプロピレングリコールなどのエーテル系界面活性剤、ポリオキシアルキレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルジブチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルビスフェニルエーテル、ポリオキシアルキルクミルフェニルエーテル等の芳香族系非イオン性界面活性剤があげられる。中でも、分散能、分散安定能、高濃度化に優れることから、芳香族系非イオン性界面活性剤が好ましく、中でもポリオキシエチレンフェニルエーテルが好ましい。
【0096】
さらに界面活性剤以外にも各種高分子材料も分散剤として用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩等の水溶性ポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(Na−CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アミロース、シクロアミロース、キトサン等の糖類ポリマー、さらに、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマーが使用できる。なかでも、導電性ポリマーを使用することによりカーボンナノチューブの導電特性を効率的に発揮することができ好ましい。
【0097】
なお、分散媒としては、溶媒を用いることができ、この溶媒としては使用目的に応じ、水または非水系の任意の溶媒を用いることができる。
【0098】
かかる非水系溶媒としては、炭化水素類(トルエン、キシレン等)、塩素含有炭化水素類(メチレンクロリド、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等)、エーテルアルコール(エトキシエタノール、メトキシエトキシエタノール等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、ケトン類(シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等)、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、フェノール等)、低級カルボン酸(酢酸等)、アミン類(トリエチルアミン、トリメタノールアミン等)、窒素含有極性溶媒(N、N−ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、N−メチルピロリドン等)、硫黄化合物類(ジメチルスルホキシド等)などを使用することができる。
【0099】
かかる分散媒の中でも、水、アルコール、トルエン、アセトン、エーテルおよびそれらを組み合わせた溶媒を含有する分散媒が好ましく使用される。
【0100】
かくして得られる塗液中のカーボンナノチューブと分散剤との混合比(分散剤/カーボンナノチューブ)としては、特に限定されないが、重量比で好ましくは0.1〜20、より好ましくは0.3〜10である。かかる混合比はカーボンナノチューブの分散性が良好な範囲でより小さい値とするのが好ましい。
【0101】
かかる塗液は、塗料製造に用いられる公知の混合分散機(例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等)を用いて混合し、塗液を製造することができる。
【0102】
さらに上記塗液は、遠心分離やフィルター濾過によってサイズ分画することが好ましい。例えば、塗液を遠心分離することによって、未分散のカーボンナノチューブや、過剰量の界面活性剤、カーボンナノチューブ合成時に混入する可能性のある金属触媒などは沈殿するので、遠心上清を回収すれば塗液中に分散しているカーボンナノチューブを液体の形で採取することができる。未分散のカーボンナノチューブおよび、不純物などは沈殿物として除去することができ、それによって、カーボンナノチューブの再凝集を防止でき、塗液の安定性を向上することができる。
【0103】
サイズ分画後の該塗液中のカーボンナノチューブの含有量は、カーボンナノチューブを好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上含有していることがよい。上限としては、2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下の濃度で含有していることである。
【0104】
かかる塗液のコーティング方法は、公知の塗布方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、バーコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷、またはロールコーティングなどを用いることができるが、塗膜厚みの均一性、塗膜厚みのコントロールが容易である点から、マイクログラビアコーティングが好適に用いられる。
【0105】
積層フィルム(II)の厚さは、25μmから250μmが好ましい。
【0106】
積層フィルム(II)では、好ましくは、帯電防止層に隣接させて粘着層を積層する。該粘着層は、好ましくは、積層フィルム(I)で実施する方法と同一の方法で先述の通り離型フィルムの離型層面に粘着層を形成し、粘着層面と上記フィルムの帯電防止層をラミネートし、ロール状の積層フィルム(II)を得ることができる。
【0107】
積層フィルム(II)における粘着層は、アクリル系樹脂と粘着剤とを含む。
【0108】
アクリル系樹脂と粘着剤は前述した着色粘着層で用いたものと同様のものを用いることができる。積層フィルム(II)における粘着層としては、透明粘着層が好ましい。
【0109】
本発明の光学フィルター用積層プラスチックフィルムは、好ましくは、積層フィルム(II)のプラスチックフィルム(2)の他面(D)を、積層フィルム(I)の粘着層面と対向させて粘着剤を介して貼合した積層フィルム(III)である。
【0110】
積層フィルム(III)は、好ましくは、積層フィルム(I)の粘着層面をカバーしていた離型フィルムを剥離しながら、積層フィルム(II)の非粘着層面とを密着させ、連続的にラミネートを行い、ロール状の積層フィルム(III)を得る。ラミネートは通常の圧力貼合方式を用いて行なう事ができる。
【0111】
本発明において、積層フィルム(III)の見掛け弾性値が100kg/μ・mm〜200kg/μ・mmであることが好ましい。積層プラスチックフィルムの撓みは見掛け弾性値で表すことができ、実際にはフィルム固有の引張り弾性係数を使用して求める。
【0112】
東レ株式会社製ルミラーの弾性率は400kg/mmである。この弾性率をkg/μ・mmに単位換算すると0.4kg/μ・mmであり、この数値にプラスチックフィルムの厚みを乗じて見掛け弾性率を計算する。つまり厚みが100μmのフィルムの弾性率は、100×0.4kg/μ・mmとなり、40kg/μ・mmとなる。
積層フィルム(III)の見掛け弾性値は、積層フィルム(I)と積層フィルム(II)に使用したプラスチックフィルムの弾性率の合計値となる。今回の積層フィルム(III)は見掛け弾性値が100kg/μ・mm〜200kg/μ・mmが最適であり、積層フィルム(I)に使用したプラスチックフィルム(1)が100μで、積層フィルム(II)に使用したプラスチックフィルム(2)が188μの場合、見掛け弾性値は115.2kg/μ・mmとなる。
【0113】
また、機械的強度やハンドリング性などの点、そして、積層フィルム(III)として見掛け弾性値が100kg/μ・mm〜200kg/μ・mmとなるように厚みを選定する。
【0114】
積層フィルム(III)は反射防止層面の他面を直接ディスプレイパネルに貼合する事を特徴とするフィルムである。積層フィルム(III)の見掛け弾性値が100kg/μ・mm未満だと、積層フィルムに腰が無い為、ディスプレイパネルへの貼合時に積層フィルムがたるんでしまい、貼合シワ、貼合ズレの大きな原因になる。
【0115】
また、見掛け弾性値が200kg/μ・mm以上の場合、積層フィルムの腰が強すぎる為、ディスプレイパネルへの貼合時にハンドリング性が悪く、貼合ズレ、表層のキズ発生の大きな原因となるので見掛け弾性値の最適範囲は100kg/μ・mm〜200kg/μ・mmである。
【0116】
本発明において、積層フィルム(III)の全光線透過率が35%〜97%である。
【0117】
本発明において、積層フィルム(III)の反射防止層面の他面は、平面陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイパネル(LCD)および電界放出型ディスプレイ(FED)等のディスプレイパネルに直接貼合することができる。
【0118】
本発明の光学フィルター用積層プラスチックフィルムは、好ましくは、貼合することにより、ディスプレイ装置として用いることができる。
【実施例】
【0119】
実施例で用いた撓み測定方法について説明する。
【0120】
・表面抵抗値(1995年版)
JIS K6911に定める評価方法に従って、三菱油化製「ハイレスター」(登録商標)MCP−HT201を用いて、測定する。
【0121】
・全光線透過率(1997年版)
JIS K7361に定める全光線透過率計(日本電色工業株式会社製 NDH−2000)を用いて測定する。
【0122】
・撓み測定法(TAF法)
A4サイズにカットをしたフィルムサンプルを平坦な台から15cm送り出す。その際に送り出した15cmのフィルム部分が何cm垂れ下がっているのかを測定する。
【0123】
垂れ下がったフィルムの長さにより、下記の通り評価を行った。
ランクA 垂れ下がり0cm
ランクB 垂れ下がり1〜3cm
ランクC 垂れ下がり3〜5cm
ランクD 垂れ下がり5cm以上。
【0124】
・コストを含む生産適正
積層フィルムのトータル厚みが厚くなると、腰が強すぎる為、ディスプレイパネルへの貼合時にハンドリング性が悪く、貼合ズレ、表層のキズ発生の大きな原因となる、また、フィルム単体のコストも上がることから、ハンドリング性とコストの両面から考えた生産適正を、○、△、×の3段階にて評価した。
【0125】
・総合評価
見掛け弾性値、撓み測定法、コストを含む生産適正の3つを考慮し、総合判定を○、△、×の3段階にて評価した。
【0126】
(実施例1)
厚さ100μmのPETフィルム(東レ株式会社製 ルミラーU48)の一方の面にシリカ微粒子分散紫外線硬化性樹脂(JSR株式会社製 オプスターZ7534)からなるハードコート層形成用塗工液をマイクログラビアコーターで塗工し、オーブンにて乾燥後、紫外線照射して塗工面を硬化させ、厚さ3μmのハードコート層を形成した。
【0127】
次いで、このハードコート層の上に平均粒経50nmのATO微粒子を分散させた紫外線硬化性樹脂(日本化薬株式会社製、HRA−196)をハードコート層と同様にマイクログラビアコーターで塗工、乾燥後、紫外線を照射して硬化させ、厚さ0.1μmの高屈折率層を形成した。
【0128】
さらに高屈折率層の上に、メチルトリメトキシシラン 95.2質量部、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン65.4質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテル300質量部、イソプロピルアルコール100質量部に溶解した。この溶液に、数平均粒子径50nmの外殻の内部に空洞を有するシリカ微粒子分散液(触媒化成工業製 スルーリア(登録商標)、イソプロパノール分散型、固形分濃度20.5%)297.9質量部、水54質量部およびギ酸1.8質量部を、撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間攪拌し加水分解反応を完結させた。その後、溶液をバス温85℃で2時間加熱し、内温を80℃まで上げて、1.5時間加熱して脱水縮合した後、室温まで冷却し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液に、アルミニウム系硬化剤として、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)(川研ファインケミカル製「アルミキレートA(W)」)4.8質量部をメタノール125質量部に溶解したものを添加し、さらにイソプロピリアルコール1500質量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル250質量部を添加して、室温にて2時間撹拌し、低屈折率層用塗料を作製し、マイクログラビアコーターにて塗工し、乾燥させ0.1μmの低屈折率層を形成し、反射防止機能を付与したフィルムを作成した。
【0129】
また、低屈折率層塗工時に、塗工面の保護のため、塗工、乾燥後、微粘着PETフィルム(商品名E−MASK IP300:日東電工株式会社製)を貼合した。
【0130】
さらに、離型フィルムの離型面にアクリル系粘着剤(東洋インキ工業株式会社製、BPS5896)を酢酸エチル、トルエンにて希釈した液体に、着色剤(東洋インキ工業株式会社製、BXX3778−10)を混ぜ、さらに硬化剤、硬化促進剤。硬化遅延剤等を追加し、よく撹拌した塗液をダイ方式にてコーティングし、上記の反射防止フィルムの反射防止機能が付与されていない面にラミネートし、粘着層の厚みが20〜25μmロール状の構成体(I)を作成した。
【0131】
次に、厚さ188μmのPETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーU48)にカーボンナノチューブ含有塗料の母液を16倍に稀釈した塗料(カーボンナノチューブ濃度0.06質量%)をマイクログラビアコーターにより塗布し、その後100℃で1分間乾燥し、帯電防止層の平均厚みが5nmで、カーボンナノチューブの含有量が3mg/mの帯電防止層を形成した。
【0132】
次に、離型フィルムの離型面にアクリル系粘着剤(綜研化学株式会社製 SKダイン1310)を酢酸エチル、トルエン、MEKにて希釈した塗液をダイ方式にてコーティングし、上記の帯電防止機能付き188μmのPETフィルムの帯電防止層にラミネートし、粘着層の厚みが20〜25μmのロール状の構成体(II)を作成した。
【0133】
積層フィルム(I)の粘着層を保護する離型フィルムを剥がしながら、積層フィルム(II)の未処理面をラミ圧力2Kg以上で密着させながらラミネートし、ロール状の積層フィルム(III)を得た。こちらの見掛け弾性値と、撓み測定法の測定結果に、コストを含む生産適正も合わせて評価し、結果を表1に表す。
【0134】
(実施例2)
構成体(I)及び、構成体(II)に使用したPETフィルムを125μmにしたこと以外は、実施例1と同じ製造方法にて作成した実施例2の積層プラスチックフィルムを得た。こちらの見掛け弾性値と、撓み測定法の測定結果に、コストを含む生産適正も合わせて評価し、結果を表1に表す。
【0135】
(実施例3)
構成体(I)及び、構成体(II)に使用したPETフィルムを188μmにしたこと以外は、実施例1と同じ製造方法にて作成した実施例2の積層プラスチックフィルムを得た。こちらの見掛け弾性値と、撓み測定法の測定結果に、コストを含む生産適正も合わせて評価し、結果を表1に表す。
【0136】
(実施例4)
構成体(I)及び、構成体(II)に使用したPETフィルムを250μmにしたこと以外は、実施例1と同じ製造方法にて作成した実施例4の積層プラスチックフィルムを得た。こちらの見掛け弾性値と、撓み測定法の測定結果に、コストを含む生産適正も合わせて評価し、結果を表1に表す。
【0137】
(比較例1)
構成体(I)及び、構成体(II)に使用したPETフィルムを100μmにしたこと以外は、実施例1と同じ製造方法にて作成した比較例1の積層プラスチックフィルムを得た。こちらの見掛け弾性値と、撓み測定法の測定結果に、コストを含む生産適正も合わせて評価し、結果を表1に表す。
【0138】
(比較例2)
構成体(I)に使用したPETフィルムを250μm、構成体(II)に使用したPETフィルムを300μmにしたこと以外は、実施例1と同じ製造方法にて作成した比較例2の積層プラスチックフィルムを得た。こちらの見掛け弾性値と、撓み測定法の測定結果に、コストを含む生産適正も合わせて評価し、結果を表1に表す。
【0139】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム(1)の片面(A)に、反射防止層を設け、該反射防止層の表面をマスキングフィルムで保護し、さらに該プラスチックフィルム(1)の他面(B)に、着色粘着層を順次積層した積層フィルム(I)と、プラスチックフィルム(2)の片面(C)に、帯電防止層及び粘着層を順次積層し、該粘着層の表面を離型フィルムで保護した積層フィルム(II)のプラスチックフィルム(2)の他面(D)を、積層フィルム(I)の着色粘着層面と対向させて粘着剤を介して貼合した積層フィルム(III)である光学フィルター用積層プラスチックフィルム。
【請求項2】
積層フィルム(I)の反射防止層の表面抵抗値が1014Ω/□以下であり、かつ積層フィルム(II)の帯電防止層の表面抵抗値が109Ω/□以下である請求項1に記載の光学フィルター用積層プラスチックフィルム。
【請求項3】
積層フィルム(II)の帯電防止層に、0.1mg/m〜10mg/mであるカーボンナノチューブを含有している請求項1または2に記載の光学フィルター用積層プラスチックフィルム。
【請求項4】
積層フィルム(III)の全光線透過率が35%〜97%である、請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルター用積層プラスチックフィルム。
【請求項5】
積層フィルム(III)の離型フィルム面を直接ディスプレイパネルに貼合する事を特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルター用積層プラスチックフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルター用積層プラスチックフィルムを貼合した、ディスプレイ装置。

【公開番号】特開2010−115818(P2010−115818A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289508(P2008−289508)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】