説明

光学フィルム、偏光板、及び画像表示装置

【課題】ムラ故障などの問題なく高い生産性で作製可能であり、かつ、表示装置の最前面に使用することのできる物理性能を有した光学異方性を有する光学フィルムを提供すること。
【解決手段】透明支持体の一方の側に液晶性化合物を含有する光学異方性層が積層され、もう一方の側にハードコート層が積層されてなる光学フィルム。光学異方性層表面には、光学異方性層のバインダーと共有結合を形成しない含フッ素化合物を含有し、ハードコート層が形成された側の光学フィルム表面には、含フッ素またはシリコーン系の化合物が共有結合により固定されてなり、更に、ハードコート層が形成された側の表面物性が特定条件を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化された液晶性化合物を含有する光学フィルム、光学フィルムを有する偏光板、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムの位相差を制御して様々な機能を付与したいわゆる位相差フィルムは、様々な用途に用いられている。
例えば、液晶ディスプレイにおいて各種の液晶セルのモードに応じて視野角の拡大などを目的として、位相差フィルムが設計されている。また、液晶表示装置以外にも、1/4波長の位相差を有するλ/4板などは、輝度向上膜、光ディスク用ピックアップやPS変換素子に使用されている。
これら位相差膜の位相差の発現方法には、ポリマーフィルムを延伸する方法、液晶性化合物を含有する塗布液を基材上に塗布し、所定の方向に配向させることで光学異方性を発現させる方法などが知られている。中でも液晶化合物を用いた位相差の制御方法は、配向膜、液晶化合物、液晶化合物の配向制御剤、配向制御のための工程条件などで様々に位相差を制御することが可能であり、応用範囲も広く、大量に高速で生産することができる(特許文献1、2)。
また、位相差板の用途として、有機EL、タッチパネル、3D表示装置等に適用し、装置の内部でなく最前面に使用される構成も提案されている。しかしながらが、従来の位相差板では、傷つきやすく強度が不十分である、外光が当たったときの反射率が高い、耐光性が弱い、汚れが付きやすく取れ難い、等の問題があり、最前面に使用するには更なる改良が求められていた。
【0003】
液晶化合物層の保護のために、高硬度の保護膜を液晶化合物層の上に設ける技術が開示されている(特許文献3)。しかしながら、一般に液晶層が光学的に異方性を有しているため、液晶層の光学的に異方性のない保護膜を単純に設けただけでは、観察する方向により光の干渉条件が大きく異なり虹状のムラなどが発生しやすいという問題を有していることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−4837号公報
【特許文献2】特開2004−53841号公報
【特許文献3】特開2004−126534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記課題の解決のため、透明支持体の液晶性化合物層が塗設されていない側にハードコート層を有する光学フィルムの検討を行った。その結果、得られた光学フィルムをロール状態で保管するとロールを外から観察したときに、まだらにムラが発生することがわかった。ロールをほどいてシート状にしてもハードコート層側表面にムラが残り、不織布などで一部は除去できるものの完全には取り除けないことがあることが判明した。
このロール状態での保管後のムラ発生に対して、以下の手段が有効であることを見出し、本発明を成すに至った。
【0006】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、ムラ故障などの問題なく高い生産性で作製可能であり、かつ、表示装置の最前面に使用することのできる物理性能を有した光学異方性を有する光学フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の構成により、本発明の上記課題は達成することができる。
[1]
透明支持体の一方の側に液晶性化合物を含有する光学異方性層が積層され、もう一方の側にハードコート層が積層されてなる光学フィルムにおいて、
光学異方性層表面には、光学異方性層のバインダーと共有結合を形成しない含フッ素化合物を含有し、ハードコート層が形成された側の光学フィルム表面には、含フッ素又はシリコーン系の化合物が共有結合により固定されてなり、
更に、ハードコート層が形成された側の表面物性が以下の条件を満たすことを特徴とする光学フィルム。
(1) Ra 0.05〜0.25μm
(2) Rz 0.4〜3.0μm
(3) Sm 40〜200μm
(4) 表面ヘイズ 0.1〜15
(5) 内部ヘイズ 0〜28
(6) 全ヘイズ 0.1〜30
ここで、Ra、Rz及びSmは、それぞれ表面の算術平均粗さ、十点平均粗さ及び凹凸の平均間隔を表す。
[2]
光学異方性層の表面自由エネルギー(Elc)が21〜30mN/mであり、
ハードコート層側表面の表面自由エネルギー(Ehc)が14〜24mN/mである[1]の光学フィルム。
[3]
Ehc−Elc≦0であることを特徴とする[2]に記載の光学フィルム。
[4]
ハードコート層側表面に、ハードコート層とは別の機能層が形成されていることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[5]
ハードコート層が形成された側の表面物性が更に以下の条件を満たすことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(4) 表面ヘイズ 0.1〜10
(5) 内部ヘイズ 0〜10
(6) 全ヘイズ 0.1〜15
[6]
ハードコート層が形成された側の表面物性が更に以下の条件を満たすことを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(4) 表面ヘイズ 0.1〜8
(5) 内部ヘイズ 0〜5
(6) 全ヘイズ 0.1〜10
[7]
ハードコート層中に、バインダーと透光性粒子を含有し、透光性粒子のサイズが1〜12μmであり、バインダーと透光性粒子の屈折率差の絶対値が0.05未満であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[8]
ハードコート層中に、バインダーと透光性粒子を含有し、透光性粒子のサイズが3〜12μmであり、バインダーと透光性粒子の屈折率差の絶対値が0.001〜0.020であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[9]光学フィルムがロール状に巻き取られていることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[10]
光学フィルムの550nmにおける面内レターデーションReが80〜200nmであり、下記式で表される550nmにおけるNz値が0.1〜0.9である[1]〜[9]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
ここで、Nz値=0.5+Rth/Re(Rth:厚み方向のレターデーション)である。
[11]
[1]〜[10]のいずれか1項に記載の光学フィルムを保護膜として使用した偏光板。
[12]
[1]〜[10]のいずれか1項に記載の光学フィルム、又は[11]に記載の偏光板を少なくとも1つ含む画像表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学フィルムは、ロール状態での保管後のムラの発生が抑えられ、物理性に優れた光学フィルムを提供することができる。更には、適度な防眩性を有しつつも光学異方性フィルムとしての機能を失うことなく画像表示装置の表面に用いることのできる光学フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の光学フィルムの一例の断面模式図である。
【図2】本発明の偏光板の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
【0011】
本発明の光学フィルムは、透明支持体の一方の側に液晶性化合物を含有する光学異方性層が積層されており、逆の側にハードコート層が積層されハードコート層が積層された側が特定の表面物性を有する積層体である。透明支持体と液晶性化合物を含有する光学異方性層の間には液晶化合物の配向を制御するための配向膜が設けられていてもよい。ハードコート層上には、更に別の層が設けられていてもよい。本発明の位相差フィルム積層光学フィルムの構成例を示す概念図を図1に示す。
本発明の光学フィルムの光学特性は、特に規定されるものではないが、550nmにおける面内レターデーションReが5〜300nmが好ましく、更に好ましくは10〜250nmであり、最も好ましくは80〜200nmである。また、以下に定義されるNz値が0〜2.0であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜1.6であり、最も好ましくは0.1〜0.9である(ここでNz値=0.5+Rth/Reで表され、Rthは厚み方向のレターデーションである。これら光学特性の測定方法は後述する)。特にλ/4板を想定した時には、Reが80〜200nmでNz値が0.1〜0.9が好ましく、更に好ましくはReが100〜150nmでNz値が0.1〜0.9である。
【0012】
本発明の光学フィルムは、ロールtoロールで光学異方性層及びハードコート層を積層することができるため、生産性が高い。
本発明の光学フィルムは、
透明支持体の一方の側に液晶性化合物を含有する光学異方性層が積層され、もう一方の側にハードコート層が積層されてなる光学フィルムにおいて、
光学異方性層表面には、光学異方性層のバインダーと共有結合を形成しない含フッ素化合物を含有し、ハードコート層が形成された側の光学フィルム表面には、含フッ素又はシリコーン系の化合物が共有結合により固定されてなり、
更に、ハードコート層が形成された側の表面特性が以下の条件を満たすことを特徴とする光学フィルムである。
(1)Ra 0.05〜0.25μm
(2)Rz 0.4〜3.0μm
(3)Sm 40〜200μm
(4)表面ヘイズ 0.1〜15
(5)内部ヘイズ 0〜28
(6)全ヘイズ 0.1〜30
【0013】
このような光学フィルムの構成にすることで、光学フィルムのロール状態での保管の後にもムラが発生することなく、物理性に優れた光学異方性を有する光学フィルムを提供することができる。上記表面特性は、光学フィルムのハードコート層側の表面が満足するべき表面特性であって、ハードコート層が最表面にあってもよいし、ハードコート層上に更に別の層が設けられていてもよい。
本発明において、ハードコート層側の表面特性は、Raは0.05〜0.25μmであり、好ましくは0.08〜0.20μmであり、更に好ましくは0.08〜0.15μmである。Rzは0.4〜3.0μmであり、好ましくは0.5〜3.0μmであり、より好ましくは0.8〜2.5μmであり、更に好ましくは0.8〜1.5μmである。Smは40〜200μmであり、好ましくは40〜150μm、最も好ましくは50〜110μmである。また、表面ヘイズは、0.1〜15であり、好ましくは0.1〜10であり、最も好ましくは0.1〜8である。内部ヘイズは、0〜28であり、好ましくは0〜10、最も好ましくは0〜5である。全ヘイズは、0.1〜30であり、好ましくは0.1〜15であり、最も好ましくは0.1〜10である。
ここで、上記Ra(粗さ曲線の算術平均粗さ)、Rz(粗さ曲線の十点平均粗さ),Sm(粗さ曲線の凹凸の間隔)はJIS B 0601:1998に準拠して測定することができる。また、本発明のフィルムのヘイズはJIS−K7105に規定されたヘイズ値のことであり、JIS−K7361−1で規定された測定法に基づき測定できる。表面ヘイズと内部ヘイズについては、以下の測定により、算出することができる。
1.JIS−K7136に準じて得られたフィルムのヘイズ値(H)を測定する。この値を全ヘイズとする。
2.得られたフィルムのハードコート層側の表面及び裏面にシリコーンオイルを数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATSUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られたフィルムを光学的に密着し、表面ヘイズを除去した状態でヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間にシリコーンオイルのみを挟みこんで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ(Hi)として算出した。
3.上記1で測定した全ヘイズ(H)から上記2で算出した内部ヘイズ(Hi)を引いた値をフィルムの表面ヘイズ(Hs)として算出した。
【0014】
本発明においては、光学フィルムのハードコート層側の表面物性を上記範囲にすることで光学フィルムの光学フィルムのロール状態での保管の後にもムラが発生することなく、物理性に優れた光学異方性を有する光学フィルムを提供することができる。また、光学異方性を損なうことなく画像表示装置に用いることができる。
【0015】
また、本発明においては、含フッ素又はシリコーン系の化合物は、ハードコート層が形成された側の最表面に共有結合している必要があるが、最表面がハードコート層であってもよいし、ハードコート層の上に更に別の層が積層されて最表面を形成していてもよい。ハードコート層の上に形成される光学フィルムの最表面としては、オーバーコート層、低屈折率層、防汚層などが挙げられる。
ハードコート層側の表面エネルギー(Ehc)は14〜24mN/mが好ましく、更に好ましくは14〜22mN/mであり、最も好ましくは14〜20mN/mである。また、液晶性化合物を含有する光学異方性層の表面自由エネルギー(Elc)は、21〜30mN/mが好ましく、更に好ましくは22〜30である。また、Ehc−Elc≦0であることが好ましい。この範囲にすることで、光学フィルムをロール状態で保存したときに、互いの表面の化合物が転写することなくロール状態でのムラの発生を効果的に抑制することができる。
【0016】
以下、本発明の光学フィルム、偏光板、画像表示装置に使用される材料、及びそれらの製造方法について詳細に説明する。
[ハードコート層]
本発明において、ハードコート層とは、該層を形成することで透明支持体の鉛筆硬度が上昇する層をいう。実用的には、ハードコート層積層後の鉛筆硬度(JIS K5400)はH以上が好ましく、更に好ましくは2H以上であり、最も好ましくは3H以上である。ハードコート層の厚みは、0.4〜35μmが好ましく、更に好ましくは1〜30μmであり、最も好ましくは1.5〜20μmである。
本発明の光学フィルムにおいて、ハードコート層が形成された側の表面には、含フッ素又はシリコーン系の化合物が共有結合により固定されてなり、更に、ハードコート層が形成された側の表面特性が以下の条件を満たすことを特徴とする。
(1) Ra 0.05〜0.25μm
(2) Rz 0.4〜3.0μm
(3) Sm 40〜200μm
(4) 表面ヘイズ 0.1〜15
(5) 内部ヘイズ 0〜28
(6) 全ヘイズ 0.1〜30
【0017】
本発明において、ハードコート層は、不飽和二重結合を有する化合物、透光性粒子、重合開始剤、必要に応じて含フッ素又はシリコーン系化合物、溶剤を含有する組成物を、支持体上に直接又は他の層を介して塗布・乾燥・硬化することにより形成することができる。以下各成分について説明する。
【0018】
[不飽和二重結合を有する化合物]
本発明のハードコート層形成用組成物には不飽和二重結合を有する化合物を含有することができる。不飽和二重結合を有する化合物はバインダーとして機能することができ、重合性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーであることが好ましい。該重合性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーは、硬化剤として機能することができ、塗膜の強度や耐擦傷性を向上させることが可能となる。重合性不飽和基は3つ以上であることがより好ましい。これらモノマーは、1又は2官能のモノマーと3官能以上のモノマーを併用して用いることもできる。
【0019】
不飽和二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び−C(O)OCH=CHが好ましい。特に好ましくは下記の1分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を用いることができる。
【0020】
重合性の不飽和結合を有する化合物の具体例としては、アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0021】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類は市販されているものを用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKエステル A−TMMT、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA等を挙げることができる。多官能モノマーについては、特開2009−98658号公報の段落[0114]〜[0122]に記載されており、本発明においても同様である。
【0023】
不飽和二重結合を有する化合物としては、水素結合性の置換基を有する化合物であることが、支持体との密着性、低カール、後述する含フッ素又はシリコーン系化合物の固定性の点から好ましい。水素結合性の置換基とは、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどの電気陰性度が大きな原子と水素原子とが共有結合で結びついた置換基を指し、具体的にはOH−、SH−、−NH−、CHO−、CHN−などが挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート類や水酸基を有する(メタ)アクリレート類が好ましい。市販されている(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートを用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKオリゴ U4HA、同NKエステルA−TMM−3、日本化薬(株)製KAYARAD PET−30等を挙げることができる。
【0024】
本発明のハードコート層形成用組成物中の不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、十分な重合率を与えて硬度などを付与するため、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、70〜99質量%が好ましく、80〜99質量%がより好ましい。
【0025】
[透光性粒子]
本発明のハードコート層には、ハードコート層表面に微細な凹凸を形成させるため、以下の透光性粒子を用いることが好ましい。
【0026】
本発明のハードコート層には透光性粒子は、ポリメチルメタクリレート粒子(屈折率1.49)、架橋ポリ(アクリル−スチレン)共重合体粒子(屈折率1.54)、メラミン樹脂粒子(屈折率1.57)、ポリカーボネート粒子(屈折率1.57)、ポリスチレン粒子(屈折率1.60)、架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61)、ポリ塩化ビニル粒子(屈折率1.60)、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子(屈折率1.68)、シリカ粒子(屈折率1.46)、アルミナ粒子(屈折率1.63)、ジルコニア粒子、チタニア粒子、又は中空や細孔を有する粒子等が用いられる。
【0027】
なかでも架橋ポリ((メタ)アクリレート)粒子、架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子が好ましく用いられ、これらの粒子の中から選ばれた各透光性粒子の屈折率にあわせてバインダーの屈折率を調整することにより、本発明の光学フィルムのハードコート層に好適な表面凹凸、表面ヘイズ、内部ヘイズ、全ヘイズを達成することができる。
【0028】
本発明におけるバインダー(透光性樹脂)の屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましく、より好ましくは1.48〜1.65である。
また、本発明においては、透光性粒子と、ハードコート層のバインダーとの屈折率の差(「透光性粒子の屈折率」−「該透光性粒子を除くハードコート層の屈折率」)は、絶対値として、好ましくは0.05未満であり、より好ましくは0.001〜0.030、更に好ましくは0.001〜0.020である。ハードコート層中の透光性粒子とバインダーとの屈折率の差を0.05未満にすると、透光性粒子による光の屈折角度が小さくなり、散乱光が広角まで広がらず、光学異方性層の透過光の偏光を解消するなどの悪化作用が無く好ましい。
【0029】
上記の粒子とバインダーの屈折率差を実現するためには、透光性粒子の屈折率を調節しても、バインダーの屈折率を調節してもよい。
好ましい第1の態様としては、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを主成分としたバインダー(硬化後の屈折率が1.50〜1.53)とアクリル含率50〜100質量パーセントである架橋ポリ(メタ)アクリレート/スチレン重合体からなる透光性粒子を組み合わせて用いることが好ましい。低屈折率であるアクリル成分と高屈折率であるスチレン成分の組成比を調節することで、透光性粒子とバインダーとの屈折率差を0.05未満にすることが容易である。アクリル成分とスチレン成分の比率は質量比で50/50〜100/0が好ましく、更に好ましくは60/40〜100/0であり、最も好ましくは65/35〜90/10である。架橋ポリ(メタ)アクリレート/スチレン重合体からなる透光性粒子の屈折率としては、1.49〜1.55が好ましく、更に好ましくは1.50〜1.54であり、最も好ましくは1.51〜1.53である。
好ましい第2の態様としては、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを主成分としたバインダーに対して、1〜100nmの平均粒子サイズの無機微粒子を併用することで、モノマーと無機微粒子からなるバインダーの屈折率を調節し、既存の透光性粒子との屈折率差を調節するものである。無機粒子としては、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも一つの金属の酸化物、具体例としては、SiO、ZrO、TiO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITO等が挙げられる。好ましくは、SiO、ZrO、Alなどが挙げられる。これら無機粒子は、モノマーの総量に対して1〜90質量%の範囲で混合して用いることができ、好ましくは5〜65質量%である。
ここで、該透光性粒子を除くハードコート層の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。前記透光性粒子の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に透光性粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定される。
【0030】
透光性粒子の平均粒径は、1.0〜12μmが好ましく、より好ましくは3.0〜12μm、更に好ましくは4.0〜10.0μm、最も好ましくは4.5〜8μmである。屈折率差及び粒子サイズを上記範囲に設定することで、光の散乱角度分布が広角にまで広がらず、ディスプレイの文字ボケ、コントラスト低下を引き起こしにくい。添加する層の膜厚を厚くする必要がなく、カールやコスト上昇といった問題が生じにくい点で、12μm以下が好ましい。更に上記範囲内にすることは、塗工時の塗布量を抑えられ、乾燥が速く、乾燥ムラ等の面状欠陥を生じにくい点でも好ましい。
また、透光性粒子の粒子サイズ(球相当直径D)とハードコート層の膜厚dとの関係は、D/dの値として、20〜120%が好ましく、30〜80%が特に好ましい。この範囲にすることで、必要な表面凹凸形状を達成することができる。
【0031】
透光性粒子の平均粒径の測定方法は、粒子の平均粒径を測る測定方法であれば、任意の測定方法が適用できるが、好ましくは透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とできる。
【0032】
本発明において、透光性粒子の形状は、特に限定されないが、真球状粒子の他に、異形粒子(例えば、非真球状粒子)といった形状の異なる透光性粒子を併用して用いてもよい。特に非真球状粒子の短軸をハードコート層の法線方向にそろえると、真球粒子に比べ、粒子径が小さなものが使用できるようになる。
【0033】
前記透光性粒子は、ハードコート層全固形分中に0.1〜40質量%含有されるように配合されることが好ましい。より好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは1〜20質量%、である。表面に均一に凸部を設けられる点で0.1質量%以上が好ましく、画像ボケや表面の白濁やギラツキ等の問題が生じにくい点で、40質量%以下が好ましい。
【0034】
また、透光性粒子の塗布量は、好ましくは10〜2500mg/m、より好ましくは30〜2000mg/m、更に好ましくは100〜1500mg/mである。
【0035】
<透光性粒子調製、分級法>
本発明に係る透光性粒子の製造法は、懸濁重合法、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、分散重合法、シード重合法等を挙げることができ、いずれの方法で製造されてもよい。これらの製造法は、例えば「高分子合成の実験法」(大津隆行、木下雅悦共著、化学同人社)130頁及び146頁から147頁の記載、「合成高分子」1巻、p.246〜290、同3巻、p.1〜108等に記載の方法、及び特許第2543503号明細書、同第3508304号明細書、同第2746275号明細書、同第3521560号明細書、同第3580320号明細書、特開平10−1561号公報、特開平7−2908号公報、特開平5−297506号公報、特開2002−145919号公報等に記載の方法を参考にすることができる。
【0036】
透光性粒子の粒度分布はヘイズ値と拡散性の制御、塗布面状の均質性から単分散性粒子が好ましい。粒子径の均一さを表すCV値は15%以下が好ましく、より好ましくは13%以下、更に好ましくは10%以下である。更に平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、更に好ましくは0.01%以下である。このような粒度分布を持つ粒子は、調製又は合成反応後に、分級することも有力な手段であり、分級の回数を上げることやその程度を強くすることで、望ましい分布の粒子を得ることができる。
分級には風力分級法、遠心分級法、沈降分級法、濾過分級法、静電分級法等の方法を用いることが好ましい。
【0037】
本発明の光学フィルムは、ハードコート層が形成された側の表面が凹凸形状を有し、光学フィルム表面で光が散乱する。また、凹凸を形成するために用いた粒子により光学フィルム内部で光散乱を生ずる。3Dディスプレイや有機ELディスプレイなどの表面などに用いられるλ/4板では、光学異方性層により形成された偏光が解消されないように散乱がないクリアなフィルムが必要であると考えられてきた。しかしながら本願に記載の範囲の表面物性の範囲であれば、期待される光学異方性が損なわれること無く使用できることが明らかとなった。光学異方性が損なわれないためには、光学フィルムの内部ヘイズが0〜28が好ましく、更に好ましくは0〜10であり、最も好ましくは0〜5である。
【0038】
[光重合開始剤]
次に、本発明のハードコート層形成用組成物に含有される光重合開始剤について説明する。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。光重合開始剤の具体例、及び好ましい態様、市販品などは、特開2009−098658号公報の段落[0133]〜[0151]に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
【0039】
「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0040】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の「イルガキュア651」、「イルガキュア184」、「イルガキュア819」、「イルガキュア907」、「イルガキュア1870」(CGI−403/Irg184=7/3混合開始剤)、「イルガキュア500」、「イルガキュア369」、「イルガキュア1173」、「イルガキュア2959」、「イルガキュア4265」、「イルガキュア4263」、「イルガキュア127」、“OXE01”等;日本化薬(株)製の「カヤキュアーDETX−S」、「カヤキュアーBP−100」、「カヤキュアーBDMK」、「カヤキュアーCTX」、「カヤキュアーBMS」、「カヤキュアー2−EAQ」、「カヤキュアーABQ」、「カヤキュアーCPTX」、「カヤキュアーEPD」、「カヤキュアーITX」、「カヤキュアーQTX」、「カヤキュアーBTC」、「カヤキュアーMCA」など;サートマー社製の“Esacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KTO46,KT37,KIP150,TZT)”等、及びそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
【0041】
本発明のハードコート層形成用組成物中の光重合開始剤の含有量は、ハードコート層形成用組成物に含まれる重合可能な化合物を重合させるのに十分多く、かつ開始点が増えすぎないよう十分少ない量に設定するという理由から、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.5〜8質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0042】
[溶剤]
本発明のハードコート層形成用組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては、モノマーの溶解性、透光性粒子の分散性、塗工時の乾燥性等を考慮し、各種溶剤を用いることができる。係る有機溶剤としては、例えばジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール、炭酸ジメチル、炭酸メチルエチル、炭酸ジエチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、2−メトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1,2−ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
本発明のハードコート層形成用組成物の固形分の濃度は20〜80質量%の範囲となるように溶媒を用いるのが好ましく、より好ましくは30〜75質量%であり、更に好ましくは40〜70質量%である。
【0044】
[フッ素又はシリコーン系化合物]
本発明の光学フィルムのハードコート層側の最表層には、フッ素又はシリコーン系化合物が共有結合により固定されている。分子内に重合性不飽和基を有するこれら化合物を、重合性不飽和基を有する化合物とともに硬化することで固定できる。
本発明の光学フィルムのハードコート層側表面は、ハードコート層が最表面になる構成も取り得るが、別の機能層を設けることもできる。ハードコート層が最表面層の場合には、該層にこれら化合物を添加する必要がある。以下にフッ素又はシリコーン系化合物について説明する。
【0045】
本発明において、フッ素又はシリコーン系化合物は、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物又は重合性不飽和基を有する重量平均分子量が3000以上のポリシロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0046】
[重合性不飽和基を有する含フッ素化合物]
本発明における重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(以下、「含フッ素硬化剤」ともいう)について説明する。
本発明の含フッ素硬化剤は下記一般式(F)で表される構造を含むフッ素系化合物であることが好ましい。
一般式(F): (Rf)−[(W)−(R
(式中、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Wは連結基、Rは重合性不飽和基を表す。nは1〜3の整数を表す。mは1〜3の整数を表す。)
【0047】
本発明における含フッ素硬化剤は、重合性不飽和基を有することで、以下の(1)〜(3)の効果があると考えられる。
(1)有機溶剤への溶解性、不飽和二重結合を有する化合物等との相溶性が高まるため、含フッ素硬化剤が凝集体を形成することなく、均一に表面に局在化できるようになると考えられる。また、凝集体による欠陥の発生を防ぐことができる。
(2)含フッ素硬化剤が表面に局在化しても、含フッ素硬化剤同士、或いは不飽和二重結合を有する化合物と光重合反応により共有結合を形成できるため、ロール形態で光学フィルムを保管した場合でも、接触する光学異方性層側にこれら化合物が転写することがない。
(3)ロール形態で光学フィルムを保管した場合でも、ハードコート層側表面の表面自由エネルギーが低く、接触する光学異方性層側のバインダーと共有結合を形成していない含フッ素化合物がハードコート層側の表面へ転写するのが妨げられる。
【0048】
一般式(F)において、Rは重合性不飽和基を表す。重合性不飽和基は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することによりラジカル重合反応を起こしうる基であれば特に限定は無く、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びこれらの基における任意の水素原子がフッ素原子に置換した基が好ましく用いられる。
重合性不飽和基の具体例としては以下のものが好ましい。
【0049】
【化1】

【0050】
一般式(F)において、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を表す。
ここで、(パー)フルオロアルキル基は、フルオロアルキル基及びパーフルオロアルキル基のうち少なくとも1種を表し、(パー)フルオロポリエーテル基は、フルオロポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基のうち少なくとも1種を表す。防汚性の観点では、Rf中のフッ素含有率は高いほうが好ましい。
【0051】
(パー)フルオロアルキル基は、炭素数1〜20の基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜10の基である。
(パー)フルオロアルキル基は、直鎖(例えば−CFCF、−CH(CFH、−CH(CFCF、−CHCH(CFH等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF、CHCF(CF、CH(CH)CFCF、CH(CH)(CFCFH等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等)であっても良い。
【0052】
(パー)フルオロポリエーテル基は、(パー)フルオロアルキル基がエーテル結合を有している場合を指し、1価でも2価以上の基であってもよい。フルオロポリエーテル基としては、例えばCHOCHCFCF、CHCHOCHH、CHCHOCHCH17、CHCHOCFCFOCFCFH、フッ素原子を4個以上有する炭素数4〜20のフルオロシクロアルキル基等が挙げられる。また、パーフルオロポリエーテル基としては、例えば、(CFO(CFCFO)、[CF(CF)CFO]―[CF(CF)]、(CFCFCFO)、(CFCFO)などが挙げられる。
p及びqの総計は1〜83が好ましく、1〜43が更に好ましく、5〜23が最も好ましい。
本発明の含フッ素硬化剤は、光学フィルムの裏面からの転写防止能に優れるという観点から−(CFO)−(CFCFO)−で表されるパーフルオロポリエーテル基を有することが特に好ましい。
上記p及びqはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。ただしp+qは1以上の整数である。
【0053】
本発明においては、前記(1)〜(3)に示した効果がより顕著に得られるという観点から、含フッ素硬化剤は、パーフルオロポリエーテル基を有し、かつ重合性不飽和基を一分子中に複数有することが好ましい。
【0054】
一般式(F)において、Wは連結基を表す。Wとしては、例えばアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアルキレン基、又はこれらの組み合わさった連結基が挙げられる。これらの連結基は、更に、オキシ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、スルホンアミド基等やこれらの組み合わさった官能基を有しても良い。
Wとして、好ましくは、エチレン基、より好ましくは、カルボニルイミノ基と結合したエチレン基である。
【0055】
含フッ素硬化剤のフッ素原子含有量には特に制限は無いが、20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。
【0056】
好ましい含フッ素硬化剤の例としてはダイキン化学工業(株)製、R−2020、M−2020、R−3833、M−3833、オプツールDAC(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF−171、F−172、F−179A、ディフェンサMCF−300、MCF−323(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0057】
前記(1)〜(3)に示した効果がより顕著に得られるという観点から、一般式(F)において、nとmの積(n*m)は2以上が好ましく、4以上がより好ましい。
【0058】
一般式(F)において、nとmが同時に1である場合について、以下の好ましい態様の具体例として下記一般式(F−1)〜(F−3)が挙げられる。
【0059】
一般式(F−1):
Rf(CFCFR’CHCHOCOCR=CH
【0060】
(式中、Rfは、フッ素原子、又は炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれかを示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは単結合又はアルキレン基を示し、R’は単結合又は2価の連結基を示し、pは重合度を示す整数であり、重合度pはk(kは3以上の整数)以上である。)
【0061】
R’が2価の連結基を表す場合、該2価の連結基としては、前述のWと同様のものが挙げられる。
【0062】
一般式(F−1)におけるフッ素原子を含むテロマー型アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類等が挙げられる。
【0063】
一般式(F−1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0064】
【化2】

【0065】
上記の一般式(F−1)で表される化合物は、合成の際にテロメリゼイションを用いると、テロメリゼイションの条件及び反応混合物の分離条件等によっては一般式(F−1)の基Rf(CFCFCHCHO−のpがそれぞれk、k+1、k+2、・・・等の複数の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含むことがある。
【0066】
一般式(F−2):
F(CF−CH−CHX−CH
(式中、qは1〜20の整数、X及びYはそれぞれ独立に(メタ)アクリロイルオキシ基又は水酸基のいずれかであり、少なくとも一方は(メタ)アクリロイルオキシ基である。)
【0067】
一般式(F−2)で表される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、末端にトリフルオロメチル基(CF−)をもつ炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有しており、この含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは少量でもトリフルオロメチル基が表面に有効に配向される。
【0068】
裏面からの転写防止性及び製造の容易性から、qは6〜20が好ましく、8〜10より好ましい。炭素数8〜10のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、他の鎖長のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと比較しても優れた撥水・撥油性を発現するため、防汚性に優れる。
【0069】
一般式(F−2)で表される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルとして具体的には、1−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン及び1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシ4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン等が挙げられる。本発明においては、1−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカンが好ましい。
【0070】
一般式(F−3):
F(CFO(CFCFO)CFCHOCOCR=CH
(式中Rは水素原子又はメチル基であり、sは1〜20の整数であり、rは1〜4の整数を表す。)
【0071】
上記一般式(F−3)で表されるフッ素原子含有単官能(メタ)アクリレートは、下記一般式(FG−3)で表されるフッ素原子含有アルコール化合物と(メタ)アクリル酸ハライドとを反応させることにより得ることができる。
【0072】
一般式(FG−3):
F(CFO(CFCFO)CFCHOH
(一般式(FG−3)中、sは1〜20の整数の整数であり、rは1〜4の整数を表す。)
【0073】
前記一般式(FG−3)表されるフッ素原子含有アルコール化合物の具体例としては、例えば、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサヘプタン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサオクタン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサトリデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサヘキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサノナデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサイコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサドコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサトリコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサペンタコサン−1−オール等を挙げることができる。
これらは市場で入手でき、その具体例としては例えば、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサヘプタン−1−オール(商品名「C5GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカン−1−オール(商品名「C7GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサデカン−1−オール(商品名「C8GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカン−1−オール(商品名「C10GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサヘキサデカン−1−オール(商品名「C12GOL」、エクスフロアー社製)等が挙げられる。
本発明においては、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサトリデカン−1−オールを用いることが好ましい。
【0074】
また、前記一般式(FG−3)で表されるフッ素原子含有アルコール化合物と反応させる(メタ)アクリル酸ハライドとしては、(メタ)アクリル酸フルオライド、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド、(メタ)アクリル酸アイオダイドを挙げることができる。入手しやすさ等の観点から(メタ)アクリル酸クロライドが好ましい。
【0075】
以下に一般式(F−3)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、一般式(F−3)で表される好ましい具体例は、特開2007−264221号公報にも記載がある。
【0076】
(b−1):FOCOCOCFCHOCOCH=CH
(b−2):FOCOCOCFCHOCOC(CH)=CH
【0077】
更に一般式(F−3)で表される化合物とは別に、下記一般式(F−3)’で表される化合物も好ましく用いることができる。
【0078】
一般式(F−3)’:
Rf−[(O)(O=C)(CX−CX=CX
(式中、X及びXは各々独立に、H又はFを表し、XはH、F、CH又はCFを表し、X及びXは各々独立に、H、F、又はCFを表し、a、b、及びcは各々独立に0又は1を表し、Rfは炭素数18〜200のエーテル結合を含む含フッ素アルキル基を表し、Rf基中に、一般式(FG−3)’:
−(CXCFCFO)−
(式中、XはF又はH)で示される繰り返し単位を6個以上有する。)
【0079】
前記一般式(F−3)’表される含フッ素ポリエーテル化合物の例としては、
(c−1) Rf−[(O)(O=C)−CX=CX
(c−2) Rf−[(O)(O=C)−CX=CX
(c−3) Rf−[(O)(O=C)−CF=CH
などを挙げることができ、上記含フッ素ポリエーテル化合物の重合性不飽和基としては、以下の構造を含むものを好ましく用いることができる。(c−1)〜(c−3)における各記号の定義は一般式(F−3)’と同義である。
【0080】
【化3】

【0081】
また、前記一般式(F−3)’表される含フッ素ポリエーテル化合物は、重合性不飽和基を複数個有していても良く、
【0082】
【化4】

【0083】
などの構造が好ましく挙げられる。本発明においては−O(C=O)CF=CHの構造を有するものが重合(硬化)反応性が特に高く、効率よく硬化物を得ることができる点で好ましい。
【0084】
前記一般式(F−3)’表される含フッ素ポリエーテル化合物においてRf基は、一般式(FG−3)’の含フッ素ポリエーテル鎖は繰り返し単位で6個以上Rf中に含んでいることが重要であり、それによって裏面からの転写防止性を付与できる。
また更に詳しくは、含フッ素ポリエーテル鎖の繰り返し単位が6個以上のものを含んでいる混合物でもよいが、混合物の形で使用する場合、前記繰り返し単位が6個未満の含フッ素不飽和化合物と6個以上の含フッ素不飽和化合物との分布においてポリエーテル鎖の繰り返し単位が6個以上の含フッ素不飽和化合物の存在比率が最も高い混合物とするのが好ましい。
一般式(FG−3)’の含フッ素ポリエーテル鎖の繰り返し単位は6個以上であることが好ましく、10個以上がより好ましく、18個以上が更に好ましく、20個以上が特に好ましい。それによって、撥水性だけでなく、防汚性、特に油成分を含む汚れに対する除去性を改善できる。また、気体透過性もより一層効果的に付与できる。また、含フッ素ポリエーテル鎖はRf基の末端にあっても、鎖中の途中に存在していても良い。
【0085】
Rf基は具体的には、
一般式(c−4):
−(CXCFCFO)−(R
(式中、Xは式(FG−3)’と同じ、Rは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基、含フッ素アルキル基、エーテル結合を含むアルキル基及びエーテル結合を含む含フッ素アルキル基から選ばれる少なくとも1種、Rは二価以上の有機基、tは6〜66の整数、eは0又は1を表す。)の構造であることが好ましい。
つまり、二価以上の有機基Rを介して、反応性の炭素−炭素二重結合と結合し、更に末端にRを有する含フッ素有機基である。
は一般式(FG−3)’の含フッ素ポリエーテル鎖を反応性の炭素−炭素二重結合に結合させることができる有機基であれば、如何なるものでもよい。例えば、アルキレン基、含フッ素アルキレン基、エーテル結合を含むアルキレン基及びエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基から選ばれる。中でも含フッ素アルキレン基、エーテル結合を含む含フッ素アルキレン基であることが、透明性、低屈折率性の面で好ましい。
【0086】
一般式(F−3)’で表される含フッ素ポリエーテル化合物の具体例としては、再公表特許WO2003/022906号パンフレットに挙げられる化合物などが好ましく用いられる。本発明においては、CH=CF−COO―CHCFCF−(OCFCFCF−OCを特に好ましく用いることができる。
【0087】
一般式(F)において、nとmが同時に1でない場合については、以下の好ましい態様として一般式(F−4)及び一般式(F−5)が挙げられる。
【0088】
一般式(F−4):(Rf)−[(W)−(R
(一般式(F−4)中、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Wは連結基、Rは不飽和二重結合を有する官能基を表す。nは1〜3、mは1〜3の整数を表し、nとmは同時に1であることはない。)
撥水撥油性に優れると共に撥水撥油性の持続(防汚耐久性)に優れるという観点からnが2〜3、mが1〜3であることが好ましく、nが2〜3、mが2〜3であることがより好ましく、nが3、mが2〜3であることが最も好ましい。
【0089】
Rfは一価から三価のものを用いることができる。Rfが一価の場合、末端基としては(C2n+1)−、(C2n+1O)−、(XC2nO)−、(XC2n+1)−(式中Xは水素、塩素、又は臭素であり、nは1〜10の整数)であることが好ましい。具体的にはCFO(CO)CF−、CO(CFCFCFO)CFCF−、CO(CF(CF)CFO)CF(CF)−、F(CF(CF)CFO)CF(CF)−等を好ましく使用することができる。
【0090】
ここでpの平均値は0〜50である。好ましくは3〜30、より好ましくは3〜20、最も好ましくは4〜15である。
【0091】
Rfが二価の場合は、−(CFO)(CO)CF−、−(CFO(CO)(CF−、−CFO(CO)CF−、−CO(CO)−、−CF(CF)(OCFCF(CF))OC2tO(CF(CF)CFO)CF(CF)−等を好ましく使用することができる。
【0092】
ここで、式中q、r、sの平均値は0〜50である。好ましくは3〜30、より好ましくは3〜20、最も好ましくは4〜15である。tは2〜6の整数である。
一般式(F−4)で表される化合物の好ましい具体例や合成方法は国際公開第2005/113690号に記載されている。
【0093】
以下では、F(CF(CF)CFO)CF(CF)−においてpの平均値が6〜7のものを“HFPO−”と記載し、−(CF(CF)CFO)CF(CF)−においてpの平均値が6〜7のものを“−HFPO−”と記載し、一般式(F−4)の具体的化合物を示すが、これらに限定されるものではない。
【0094】
(d−1):HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CHCHCH
(d−2):HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CH
(d−3):HFPO−CONH−CNHCHとトリメチロールプロパントリアクリレートの1:1マイケル付加重合物
(d−4):(CH=CHCOOCHH−C−CONH−HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CH
(d−5):(CH=CHCOOCH−C−CONH−HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CH
【0095】
更に、一般式(F−4)で表される化合物として下記一般式(F−5)で表される化合物を用いることもできる。
【0096】
一般式(F−5):
CH=CX−COO−CHY−CH−OCO−CX=CH
(式中X及びXは、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、Yは、フッ素原子を3以上有する炭素数2〜20のフルオロアルキル基又はフッ素原子を4個以上有する炭素数4〜20のフルオロシクロアルキル基を示す。)
【0097】
本発明において、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物は、複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有していても良い。含フッ素硬化剤が複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有していることにより、硬化させた際には、三次元網目構造を呈し、ガラス転移温度が高く、含フッ素硬化剤の転写性が低く、また汚れの繰り返しの拭取りに対する耐久性を向上させることができる。更には、耐熱性、耐候性等に優れた硬化被膜を得ることができる。
【0098】
前記一般式(F−5)で表される化合物の具体例としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロノニルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ノナデカフルオロデシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−3−トリフルオロメチル−4,4,4−トリフルオロブチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1−メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1−メチル−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルエチレングリコール等を好ましく挙げることができ、使用に際しては単独若しくは混合物として用いることができる。このようなジ(メタ)アクリル酸エステルを調製するには、特開平6−306326号公報に挙げられるような公知の方法により製造できる。本発明においては、ジアクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロノニルエチレングリコールが好ましく用いられる。
【0099】
本発明においては、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物として、一分子中に複数個の(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を有している化合物であってもよい。
【0100】
本発明における含フッ素硬化剤は、モノマー、オリゴマー、ポリマーいずれでも良い。
含フッ素硬化剤は、更にハードコート層側最表層皮膜中での結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。
含フッ素硬化剤はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよい。
【0101】
また、(a)成分である重合性不飽和基を有する含フッ素化合物は、分子中にケイ素原子を含有してもよく、シロキサン構造を含有してもよいし、シロキサン構造以外の構造を有してもよい。ただし、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、重量平均分子量は15000未満である。
【0102】
含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、該化合物は好ましくは下記一般式(F−6)で表される。
【0103】
一般式(F−6):
SiO(4−a−b−c)/2
(式中、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はフェニル基であり、Rはフッ素原子を含有する有機基であり、Rは重合性不飽和基を含有する有機基であり、0<a、0<b、0<c、a+b+c<4である。)
【0104】
aは好ましくは1〜1.75、より好ましくは1〜1.5であり、1以上であると化合物の合成が工業的に容易となり、1.75以下であると硬化性、裏面からの転写防止性及び、防汚性の両立がしやすくなる。
【0105】
における重合性不飽和基としては、前記一般式(F)におけるRと同様の重合性不飽和基が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びこれらの基における任意の水素原子がフッ素原子に置換した基である。
【0106】
含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、該シロキサン構造の好ましい例としてはジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端及び/又は側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としては(メタ)アクリロイル基、(メタアクリロイルオキシ)基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられ、特に(メタ)アクリロイルオキシ基が含フッ素硬化剤のブリードアウトを抑止する観点で好ましい。また置換基数としては、官能基等量として1500〜20000g・mol−1が含フッ素硬化剤の偏在性向上とブリードアウト抑止の観点で好ましい。
【0107】
はフッ素原子を含有する有機基であり、C2x+1(CH−(式中、xは1〜8の整数、pは2〜10の整数である。)で示される基又はパーフルオロポリエーテル置換アルキル基であることが好ましい。bは好ましくは0.2〜0.4、より好ましくは0.2〜0.25であり、0.2以上であると裏面からの転写防止性が向上し、0.4以下であると硬化性が向上する。Rは炭素数8のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0108】
は(メタ)アクリル基を含有する有機基であり、工業的な合成のし易さからSi原子への結合がSi−O−C結合であることがより好ましい。cは好ましくは0.4〜0.8、より好ましくは0.6〜0.8であり、0.4以上であると硬化性が向上し、0.8以下であると裏面からの転写防止性が向上する。
【0109】
また、a+b+cは好ましくは2〜2.7、より好ましくは2〜2.5であり、2より小さいと表面への偏在化が起こりにくくなり、2.7より大きいと硬化性、裏面からの転写防止性の両立ができなくなる。
【0110】
含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、該化合物は、1分子中にF原子を3個以上及びSi原子を3個以上、好ましくはF原子を3〜17個及びSi原子を3〜8個含有するものであることが好ましい。F原子が3個以上あると防汚性が十分となり、Si原子が3個以上あるとでは表面への偏在化が促進され、防汚性が十分となる。
【0111】
含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、該化合物は、特開2007−145884号公報に挙げられる公知の方法などを用いて製造することができる。
【0112】
含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、該シロキサン構造としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、これらの中で特に分岐状、環状のものが、後述する不飽和二重結合を有する化合物等と相溶性がよく、ハジキがなく、表面への偏在化が起こりやすいために好ましい。
【0113】
ここで、シロキサン構造が分岐状の化合物としては、下記一般式(F−7)で表されるものが好ましい。一般式(F−7):
SiR〔OSiR(OR3−m3−k
(式中、R、R、Rは上記と同様であり、m=0,1又は2、特にm=2であり、k=0又は1である。)
【0114】
また、シロキサン構造が環状構造の化合物としては、下記一般式(F−8)で表されるものが好ましい。一般式(F−8):
(RRSiO)(RRSiO)
(式中、R、R、Rは上記と同様であり、n≧2、特に3≦n≦5である。)
【0115】
このような含フッ素ポリシロキサン化合物の具体例としては以下の化合物等が挙げられる。
【0116】
【化5】

【0117】
[含フッ素硬化剤の分子量]
重合性不飽和基を有する含フッ素硬化剤の重量平均分子量(Mw)は、分子排斥クロマトグラフィー、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などを用いて測定できる。本発明で用いる含フッ素硬化剤のMwは400以上5000未満が好ましく、1000以上5000未満がより好ましく、1000以上3500未満が更に好ましい。Mwが400以上であると、含フッ素硬化剤の表面移行性が高くなるため好ましい。また、Mwが5000未満であると、塗布から硬化する工程の間に、含フッ素硬化剤の表面移行性が妨げられず、ハードコート層表面に均一に配向しやすいため、裏面からの転写防止性及び膜硬度が向上するため好ましい。
ただし、含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、Mwは15000未満であり、好ましくは1000以上5000未満であり、より好ましくは1000以上3500未満である。
ハードコート層内における含フッ素硬化剤の膜厚方向の分布状態は、Xをハードコート層の表面近傍におけるフッ素量、Yをハードコート層全体でのフッ素量としたとき、51%<X/Y<100%を満たすことが好ましい。X/Yが51%より大きい場合、含フッ素硬化剤が膜内部まで分布しておらず、耐擦傷性の点で好ましい。なお、表面近傍とは、ハードコート層の表面から1μm未満の深さの領域を指し、飛行時間二次イオン質量分析(TOF−SIMS)で測定したFフラグメントの比率で測定することができる。
【0118】
[含フッ素硬化剤の添加量]
重合性不飽和基を有する含フッ素硬化剤の添加量は、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。添加量が1質量%以上であると、撥水撥油性を有する含フッ素硬化剤の割合が適度になり、十分な裏面からの転写防止性が得られる。また、添加量が20質量%以下であると、バインダー成分と混合できない含フッ素硬化剤が表面に析出することがなく、膜が白化したり表面に白粉を生じることがないため好ましい。
【0119】
次いで、シリコーン系化合物について述べる。
本発明に係るシリコーン系化合物は、重合性不飽和基を有する重量平均分子量が3000以上のポリシロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「ポリシロキサン硬化剤」ともいう)である。ポリシロキサン硬化剤の好ましい例としてはジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端及び/又は側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としては(メタ)アクリロイル基、(メタアクリロイルオキシ)基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられ、特に(メタ)アクリロイルオキシ基が含フッ素硬化剤のブリードアウトを抑止する観点で好ましい。また置換基数としては、官能基等量として1500〜20000g・mol−1が硬化剤の偏在性向上とブリードアウト抑止の観点で好ましい。
【0120】
ポリシロキサン硬化剤は、特開2007−145884号公報に挙げられる公知の方法などを用いて製造することができる。
ポリシロキサン構造を有する添加剤としては、反応性基含有ポリシロキサン{例えば“KF−100T”,“X−22−169AS”,“KF−102”,“X−22−3701IE”,“X−22−164C”,“X−22−5002”,“X−22−173B”,“X−22−174D”,“X−22−167B”,“X−22−161AS”(商品名)、以上、信越化学工業(株)製;“AK−5”,“AK−30”,“AK−32”(商品名)、以上東亜合成(株)製;、「サイラプレーンFM0725」,「サイラプレーンFM0721」(商品名)、以上チッソ(株)製;、“DMS−U22”、“RMS−033”、“UMS−182”(商品名)、以上Gelest製等}を添加するのも好ましい。
【0121】
ポリシロキサン硬化剤に含まれるシロキサン構造としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、これらの中で特に分岐状、環状のものが、後述する不飽和二重結合を有する化合物等と相溶性がよく、ハジキがなく、表面への偏在化が起こりやすいために好ましい。
【0122】
[ポリシロキサン硬化剤の分子量]
ポリシロキサン硬化剤の重量平均分子量は、3000以上であり、好ましくは5000以上100000以下であり、より好ましくは、5000以上50000以下である。ポリシロキサン硬化剤の重量平均分子量が3000未満であると、ポリシロキサンの表面偏在性が低減することにより、転写防止能の悪化並びに硬度の低下を招く観点から好ましくない。
ポリシロキサン硬化剤の重量平均分子量は、分子排斥クロマトグラフィー、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などを用いて測定できる。
【0123】
[ポリシロキサン硬化剤の添加量]
ポリシロキサン硬化剤の添加量は、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して1質量%以上25質量%未満であることが好ましく、1質量%以上20質量%未満がより好ましく、1質量%以上15質量%未満が更に好ましく、1質量%以上10質量%未満が最も好ましい。添加量が1質量%以上であると、撥水撥油性を有するポリシロキサン硬化剤の割合が適度になり、十分な防汚性が得られる。また、添加量が25質量%未満であると、バインダー成分と混合できないポリシロキサン硬化剤が表面に析出することがなく、膜が白化したり表面に白粉を生じることがないため好ましい。
【0124】
前記含フッ素又はシリコーン系化合物は、20℃において液体又は溶媒に溶解するものが好ましい。該溶媒としては、化合物の極性に応じて適宜選択することができ、脂肪族又は芳香族のアルコール、ケトン、エステル、エーテル系溶媒が挙げられる。
前記含フッ素又はシリコーン系化合物が固定されたハードコート層側最表面の表面自由エネルギーは、裏面からの転写防止性の観点から、表面張力が24.0mN/m以下であることが好ましく、22.0mN/m以下であることがより好ましく、14.0mN/m以上20.0mN/m以下であることが更に好ましい。
表面自由エネルギー(γs:単位、mN/m)はD.K.Owens:J.Appl.Polym.Sci.,13,1741(1969)から求めることができ、特開2010−152311号公報[0297]段落に記載の方法で測定することができる。
【0125】
[本発明の光学フィルムの層構成]
本発明の光学フィルムは、透明支持体上にハードコート層を有し、更に目的に応じて、必要な機能層を単独又は複数層設けてもよい。例えば、反射防止層(低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層など屈折率を調整した層)、防眩層、帯電防止層、紫外線吸収層、防汚層などを設けることができる。ハードコート層が、防眩性、帯電防止性、紫外線吸収性を有していてもよい。
【0126】
本発明の光学フィルムのより具体的な層構成の例を下記に示す。
光学異方性層/透明支持体/ハードコート層
光学異方性層/透明支持体/ハードコート層/オーバーコート層
光学異方性層/透明支持体/ハードコート層/低屈折率層
光学異方性層/透明支持体/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/透明支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学異方性層/透明支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/防汚層
【0127】
これら層構成でハードコート層側の光学フィルムの最表層に、含フッ素又はシリコーン系の化合物が共有結合により固定化されていることが必要である。
これら各機能層に用いることのできる材料及び詳細な層構成については、特開2010−152311号公報の段落番号0018〜0167、段落番号0170〜0183、段落番号0187〜0243に記載されているものを使用できる。
【0128】
上記構成のなかでも、ハードコート層側の最表層には、低屈折率層が設けられていることが好ましい。低屈折率層が最表層の場合には、該低屈折率層は、前述の(a)フッ素又はシリコーン系化合物を必須成分として、(b1)含フッ素硬化性ポリマー、(b2)重合性不飽和基を有する含フッ素又は非含フッ素モノマー、(c)無機粒子から選ばれる少なくとも1つの成分を含有する組成物から形成されることが好ましい。更に好ましくは、(a)(b1)(c)、(a)(b1)(b2)(c)、又は(a)(b2)(c)の組み合わせで各成分を含有する組成物から形成されることが好ましい。
【0129】
本発明で特に有用な(b1)含フッ素硬化性ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類又はビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%の場合である。好ましいポリマーについては、特開2002−243907号、特開2002−372601号、特開2003−26732号、特開2003−222702号、特開2003−294911号、特開2003−329804号、特開2004−4444号、特開2004−45462号の各公報に記載のものを挙げることができる。
【0130】
本発明の含フッ素ポリマーには防汚性、及び耐擦傷性を付与する目的で、ポリシロキサン構造が導入されていても良い。ポリシロキサン構造の導入方法に制限はないが例えば特開平6−93100号、特開平11−189621号、同11−228631号、特開2000−313709号の各公報に記載のごとく、シリコーンマクロアゾ開始剤を用いてポリシロキサンブロック共重合成分を導入する方法、特開平2−251555号、同2−308806号の各公報に記載のごとくシリコーンマクロマーを用いてポリシロキサングラフト共重合成分を導入する方法が好ましい。特に好ましい化合物としては、特開平11−189621号の実施例1、2、及び3のポリマー、又は特開平2−251555号の共重合体A−2及びA−3を挙げることができる。これらのポリシロキサン成分はポリマー中の0.5〜10質量%であることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%である。
【0131】
[無機微粒子]
本発明では、低屈折率化、耐擦傷性改良の観点から、低屈折率層に無機微粒子を用いる。該無機微粒子は、平均粒子サイズが5〜120nmであれば特に制限はないが、低屈折率化の観点からは、無機の低屈折率粒子が好ましい。
【0132】
無機微粒子としては、低屈折率であることからフッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点でシリカ微粒子が好ましい。これら無機粒子のサイズ(1次粒径)は、5〜120nmが好ましく、より好ましくは10〜100nm、20〜100nm、最も好ましくは30〜90nmである。
【0133】
無機微粒子の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなり、大きすぎると低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する。また、後述の中空シリカ微粒子を用いた場合は粒径が小さすぎると、空腔部の割合が減り屈折率の充分な低下が見込めない。無機微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であってもよい。
【0134】
無機微粒子の塗設量は、1mg/m〜100mg/mが好ましく、より好ましくは5mg/m〜80mg/m、更に好ましくは10mg/m〜60mg/mである。少なすぎると、充分な低屈折率化が見込めなかったり、耐擦傷性の改良効果が減ったりし、多すぎると、低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する。
【0135】
(多孔質又は中空の微粒子)
低屈折率化を図るには、多孔質又は中空構造の微粒子を使用することが好ましい。特に中空構造のシリカ粒子を用いることが好ましい。これら粒子の空隙率は、好ましくは10〜80%、更に好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。中空微粒子の空隙率を上述の範囲にすることが、低屈折率化と粒子の耐久性維持の観点で好ましい。
【0136】
多孔質又は中空粒子がシリカの場合には、微粒子の屈折率は、1.10〜1.40が好ましく、更に好ましくは1.15〜1.35、最も好ましくは1.15〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。
【0137】
また、中空シリカは粒子平均粒子サイズの異なるものを2種以上併用して用いることができる。ここで、中空シリカの平均粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。
【0138】
本発明において中空シリカの比表面積は、20〜300m/gが好ましく、更に好
ましくは30〜120m/g、最も好ましくは40〜90m/gである。表面積は窒素を用いBET法で求めることができる。
【0139】
本発明においては、中空シリカと併用して空腔のないシリカ粒子を用いることができる。空腔のないシリカの好ましい粒子サイズは、30nm以上150nm以下、更に好ましくは35nm以上100nm以下、最も好ましくは40nm以上80nm以下である。
【0140】
[無機微粒子の表面処理方法]
また、本発明においては無機微粒子は常法によりシランカップリング剤等により表面処理して用いることができる。
特に、低屈折率層形成用バインダーへの分散性を改良するために、無機微粒子の表面はオルガノシラン化合物の加水分解物及び/又はその部分縮合物により処理がされているのが好ましく、処理の際に、酸触媒及び金属キレート化合物のいずれか、あるいは両者が使用されることが更に好ましい。
無機微粒子の表面の処理方法については、特開2008−242314号公報の段落番号[0046]〜[0076]に記載されており、該文献に記載されたオルガノシラン化合物、シロキサン化合物、表面処理の溶媒、表面処理の触媒、金属キレート化合物などは本発明においても好適に用いることができる。
【0141】
本発明の低屈折率層には、(b2)重合性不飽和基を有する含フッ素又は非含フッ素モノマーを用いることができる。非含フッ素モノマーについては、ハードコート層で使用できるとして説明した不飽和二重結合を有する化合物も用いることが好ましい。含フッ素のモノマーとしては、下記一般式(1)で表され、フッ素を35質量%以上含有し、全ての架橋間分子量の計算値が500よりも小さい含フッ素多官能モノマー(d)を用いることが好ましい。
一般式(1): Rf2{−(L)m−Y}n
(一般式(1)中、Rf2は少なくとも炭素原子及びフッ素原子を含むn価の基を表し、nは3以上の整数を表す。Lは単結合又は二価の連結基を表し、mは0又は1を表す。Yは重合性不飽和基を表す。)
Rf2は酸素原子及び水素原子の少なくともいずれかを含んでも良い。また、Rf2
は鎖状(直鎖又は分岐)又は環状である。
【0142】
Yは、不飽和結合を形成する2つの炭素原子を含む基であることが好ましく、ラジカル重合性の基であることがより好ましく、(メタ)アクリロイル基、アリル基、α−フルオロアクリロイル基、及び−C(O)OCH=CHから選ばれるものが特に好ましい。これらの中でも、重合性の観点から、より好ましいのは、ラジカル重合性を有する(メタ)アクリロイル基、アリル基、α−フルオロアクリロイル基、及びC(O)OCH=CHである。
【0143】
Lは二価の連結基を表し、詳しくは、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、−O−、−S−、−N(R)−、炭素数1〜10のアルキレン基と−O−、−S−又はN(R)−を組み合わせて得られる基、炭素数6〜10のアリーレン基と−O−、−S−又はN(R)−を組み合わせて得られる基を表す。Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。Lがアルキレン基又はアリーレン基を表す場合、Lで表されるアルキレン基及びアリーレン基はハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物の具体例は、特開2010−152311号公報[0121]〜[0163]段落に記載されている。
【0144】
(ハードコート層の塗布方法)
本発明の光学フィルムに係るハードコート層は以下の方法で形成することができる。
まずハードコート層形成用組成物が調製される。次に、該組成物をディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法(米国特許2681294号明細書、特開2006−122889号公報参照)がより好ましく、ダイコート法が特に好ましい。
本発明の光学フィルムは、透明支持体の片面に液晶性化合物を含有する光学異方性層が塗布され、別の面にハードコート層が塗布されている光学フィルムであり、両層を塗設する順番は特に限定されるものではない。
【0145】
ハードコート層は、透明支持体上に塗布した後、溶剤を乾燥するために加熱されたゾーンにウェブで搬送される。その際の乾燥ゾーンの温度は25℃〜140℃が好ましく、乾燥ゾーンの前半は比較的低温であり、後半は比較的高温であることが好ましい。但し、各層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。例えば、紫外線硬化樹脂と併用される市販の光ラジカル発生剤のなかには120℃の温風中で数分以内にその数10%前後が揮発してしまうものもあり、また、単官能、2官能のアクリレートモノマー等は100℃の温風中で揮発が進行するものもある。そのような場合には、前記のようにハードコート層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。
【0146】
また、ハードコート層の塗布組成物を基材フィルム上に塗布した後の乾燥風は、前記塗布組成物の固形分濃度が1〜50%の間は塗膜表面の風速が0.1〜2m/秒の範囲にあることが、乾燥ムラを防止するために好ましい。
また、ハードコート層の塗布組成物を基材フィルム上に塗布した後、乾燥ゾーン内で基材フィルムの塗布面とは反対の面に接触する搬送ロールと基材フィルムとの温度差が0℃〜20℃以内とすると、搬送ロール上での伝熱ムラによる乾燥ムラが防止でき、好ましい。
【0147】
溶剤の乾燥ゾーンの後に、ウェブで電離放射線照射によりハードコート層を硬化させるゾーンを通過させ、塗膜を硬化する。例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm〜1000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して塗膜を硬化するのが好ましい。その際、ウェブの幅方向の照射量分布は中央の最大照射量に対して両端まで含めて50〜100%の分布が好ましく、80〜100%の分布がより好ましい。更に表面硬化を促進する為に窒素ガス等をパージして酸素濃度を低下する必要がある際には、酸素濃度0.01%〜5%が好ましく、幅方向の分布は酸素濃度で2%以下が好ましい。紫外線照射の場合、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。また、硬化反応を促進するために、硬化時に温度を高めることもでき、25〜100℃が好ましく、更に好ましくは30〜80℃、最も好ましくは40〜70℃である。
【0148】
このようにして本発明のハードコート層が塗布・乾燥・硬化できる。また必要に応じてその他の機能層を設けることもできる。ハードコート層に加えてその他の機能層を積層する場合には、複数の層を同時に塗布してもよいし、逐次塗布してもよい。それらの層の製造方法は、ハードコート層の製造方法に準じて行うことができる。
【0149】
[透明支持体]
[透明支持体の材質]
本発明の透明支持体を形成する材料としては、光学性能透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるポリマーが好ましい。本発明でいう透明とは、可視光の透過率が60%以上であることを示し、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0150】
また、本発明の透明支持体を形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
【0151】
また、本発明の透明支持体を形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。以下に、本発明の透明支持体の例として、主にセルロースアシレートについて詳細を説明するが、その技術的事項は、他の高分子フィルムについても同様に適用できることは明らかである。
【0152】
[セルロースアシレート置換度]
次に上述のセルロースを原料に製造される本発明のセルロースアシレートについて記載する。本発明のセルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。本発明のセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。
【0153】
上述のように本発明のセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることがのぞましい。更には置換度が2.75〜3.00であることがのぞましく、2.85〜3.00であることがよりのぞましい。
【0154】
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でも芳香族基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。これらによりアシル化されたセルロースエステルとしては、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれ更に置換された基を有していてもよい。好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
【0155】
[セルロースアシレートの重合度]
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。
【0156】
[セルロースアシレートへの添加剤]
本発明のセルロースアシレートには、種々の添加剤(例えば、光学的異方性調整剤、波長分散調整剤、微粒子、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、など)を加えることができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程(セルロースアシレート溶液の作製工程)における何れでも良いが、ドープ作製工程の最後に添加剤を添加し調製する工程を行ってもよい。セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物の具体例としては、たとえば特開2006−199855号公報の[0035]から[0058]記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれら化合物に限定されない。
【0157】
[透明支持体の添加剤]
(UV吸収剤)
本発明の光学フィルムは、ディスプレイの視認側に用いられることが多いため、透明支持体にはUV吸収剤(紫外線吸収剤)を含有することが望ましい。セルロースアシレートフィルムのUV吸収剤の具体例としては、たとえば特開2006−199855号公報の[0059]から[0135]記載の化合物が挙げられる。
【0158】
[マット剤微粒子]
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上が更に好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0159】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凸部を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下が更に好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。また、フィルム表面の凹凸の状態はAFMなどの手法により測定することができる。
【0160】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0161】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0162】
[可塑剤、劣化防止剤、剥離剤]
光学的に異方性を低下する化合物、UV吸収剤の他に、本発明のセルロースアシレートフィルムには、前述のように、用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。これらの素材の詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている。
【0163】
[ナーリング]
本発明の透明支持体は、幅広で薄膜であっても、ロール状態でハンドリングした際にブラックバンドの発生やフィルムの変形を抑制するために、透明支持体のフィルム端部にナーリング部を有することが好ましい。本発明のナーリング部とは、透明長尺支持体の幅方向の端部に凹凸を付与して端部を嵩高くしたものであり、両端部に設けることが好ましい。ナーリング部として凹凸を付与する方法としては、フィルムに加熱されたエンボスロールを押し当てることにより形成することが出来る。エンボスロールには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることが出来る。本発明に係るナーリング部の高さは、フィルム表面からエンボス凸部までの高さを言う。ナーリングは、透明支持体の表裏の両面に設けることもでき、片面に3以上設けることもできる。ナーリング部の高さは、光学異方性層及びハードコート層を含む光学機能層全体の膜厚よりも1μm以上高くすることが好ましく、1本のナーリング部の幅は、5mm〜30mmの範囲であることが好ましい。フィルムの表裏の両面にナーリング部を設ける場合は、ナーリング部の高さの和が少なくとも1μm以上高くなればよい。1μm以上にすることで、ブラックバンドの発生やフィルムの変形を抑制効果が現れる。ナーリング部の高さは好ましくは光学機能層全体の膜厚よりも2μm〜10μmの範囲で高くすることである。この範囲にすることで、ブラックバンドの発生やフィルムの変形が防止でき、巻きずれやナーリング部のふくらみによる支持体変形などの弊害も発生しない。
【0164】
本発明において、特に表裏の機能層全体の積層厚みが3μmを超え厚く、それら機能層表面の平滑性が高くロール状態にした時に密着しやすい層を積層する場合には、光学異方性層を設ける前にあらかじめ透明支持体の両面の同じ位置又は異なる位置にナーリング部を設けたり、光学異方性層を設けた後に更に支持体の表面又は裏面に別のナーリング部を設けたり、光学異方性層を設けた後に既存のナーリング部に重ねて更にナーリングを行うこともできる。
ナーリング部の付与については、特開平2005−99245号公報、特開平2005−219272号公報に記載されている方法を使用することができる。
【0165】
透明長尺支持体の幅は、生産効率及び光学フィルムを画像表示装置に適用する場合の利用効率が高いため、好ましくは1400mm〜4000mmであり、特に好ましくは1400〜3000mmである。この様な広幅の透明長尺支持体を用いる場合には、上記第1のナーリング部及び第2のナーリング部は、透明支持体端部だけではなく、その内側にも設けることが好ましい。即ち、透明支持体に複数列のナーリング部を設けることも好ましい。例えば、透明支持体の中央にナーリング部を設けると、広幅の透明支持体中央に発生し易いブロッキングを効果的に防止することが出来る。また、透明長尺支持体のロール長さは100〜6000mが好ましく、更に好ましくは500〜4000mである。
【0166】
[光学異方性層]
本発明においては、各種用途に合わせ材料及び製造条件を選択することができるが、重合性液晶性化合物を用いたλ/4膜が一つの好ましい態様である。
まず、光学特性の測定方法について説明する。本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、又は測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。なお、この測定方法は、後述する光学異方性層中のディスコティック液晶分子の配向膜側の平均チルト角、その反対側の平均チルト角の測定においても一部利用される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(III)よりRthを算出することもできる。
【0167】
【数1】

【0168】
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・式(III)
【0169】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0170】
[液晶性化合物を含む光学異方性層]
本発明の光学フィルムにおける光学異方性層の形成に用いられる液晶性化合物の種類については特に制限されない。例えば、低分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して得られる光学異方性層や、高分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、冷却することによって当該配向を固定化して得られる光学異方性層を用いることもできる。なお本発明では、光学異方性層に液晶性化合物が用いられる場合であっても、光学異方性層は、該液晶性化合物が重合等によって固定されて形成された層であり、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。重合性液晶性化合物は、多官能性重合性液晶でもよいし、単官能性重合性液晶性化合物でもよい。また、液晶性化合物は、ディスコティック液晶性化合物でもよいし、棒状液晶性化合物でもよい。
【0171】
前記光学異方性層において、液晶性化合物の分子は、垂直配向、水平配向、ハイブリッド配向及び傾斜配向のいずれかの配向状態に固定化されていることが好ましい。視野角依存性が対称である位相差板を作製するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤面がフィルム面(光学異方性層面)に対して実質的に垂直であるか、又は、棒状液晶性化合物の長軸がフィルム面(光学異方性層面)に対して実質的に水平であることが好ましい。ディスコティック液晶性化合物が実質的に垂直とは、フィルム面(光学異方性層面)とディスコティック液晶性化合物の円盤面とのなす角度の平均値が70°〜90°の範囲内であることを意味する。80°〜90°がより好ましく、85°〜90°が更に好ましい。棒状液晶性化合物が実質的に水平とは、フィルム面(光学異方性層面)と棒状液晶性化合物のダイレクターとのなす角度が0°〜20°の範囲内であることを意味する。0°〜10°がより好ましく、0°〜5°が更に好ましい。
液晶性化合物の分子をハイブリッド配向させて視野角依存性が非対称である光学補償フィルムを作製する場合、液晶性化合物のダイレクターの平均傾斜角は5〜85°であることが好ましく、10〜80°であることがより好ましく、15〜75°であることが更に好ましい。
【0172】
前記光学フィルムは、液晶性化合物を含有する光学異方性層を含むが、該光学異方性層は一層のみからなっていてもよいし、二層以上の光学異方性層の積層体であってもよい。
【0173】
前記光学異方性層は、棒状液晶性化合物又はディスコティック液晶性化合物等の液晶性化合物と、所望により、後述する重合開始剤や配向制御剤や他の添加剤を含む塗布液を、支持体上に塗布することで形成することができる。支持体上に配向膜を形成し、該配向膜表面に前記塗布液を塗布して形成するのが好ましい。
【0174】
[ディスコティック液晶性化合物]
本発明では、前記光学フィルムが有する光学異方性層の形成に、ディスコティック液晶性化合物を用いるのが好ましい。ディスコティック液晶性化合物は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載されている。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0175】
本発明において好ましく用いることのできるディスコティック液晶性化合物の具体例としては、特開2009−97002号公報[0038]〜[0069]記載の化合物が挙げられる。また、トリフェニレン化合物で、波長分散の小さいディスコティック液晶性化合物としては、特開2007−108732号公報の段落[0062]〜[0067]記載の化合物等が挙げられる。
【0176】
[棒状液晶性化合物]
本発明では、棒状液晶性化合物を用いてもよい。棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物を重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶性化合物には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物を用いることができる。
【0177】
[垂直配向促進剤]
前記光学異方性層を形成する際に、液晶性化合物の分子を均一に垂直配向させるためには、配向膜界面側及び空気界面側において液晶性化合物を垂直に配向制御可能な配向制御剤を用いるのが好ましい。この目的のために、配向膜に、排除体積効果、静電気的効果又は表面エネルギー効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を、液晶性化合物とともに含有する組成物を用いて光学異方性層を形成するのが好ましい。また、空気界面側の配向制御に関しては液晶性化合物の配向時に空気界面に偏在し、その排除体積効果、静電気的効果、又は表面エネルギー効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を、液晶性化合物とともに含有する組成物を用いて光学異方性層を形成するのが好ましい。このような配向膜界面側で液晶性化合物の分子を垂直に配向させるのを促進する化合物(配向膜界面側垂直配向剤)としては、ピリジニウム誘導体が好適に用いられる。空気界面側で液晶性化合物の分子を垂直に配向させるのを促進する化合物(空気界面側垂直配向剤)としては、該化合物が空気界面側に偏在するのを促進する、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含む化合物が好適に用いられる。また、これらの化合物を配合することによって、例えば、液晶性組成物を塗布液として調製した場合に、該塗布液の塗布性が改善され、ムラ、ハジキの発生が抑制される。以下に垂直配向剤に関して詳細に説明する。
【0178】
[配向膜界面側垂直配向剤]
本発明に使用可能な配向膜界面側垂直配向剤としては、ピリジニウム誘導体(ピリジニウム塩)が好適に用いられ、化合物の具体例としては、特開2006−113500号公報明細書中[0058]〜[0061]に記載の化合物が挙げられる。
【0179】
前記光学異方性層形成用の組成物中における前記ピリジニウム誘導体の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、前記組成物(塗布液として調製した場合は溶媒を除いた液晶性組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
【0180】
[空気界面側垂直配向剤]
本発明における空気界面側垂直配向剤としては、下記フッ素系ポリマー(式(II)を部分構造として含む)又は一般式(III)で表される含フッ素化合物が好適に用いられる。
【0181】
まずフッ素系ポリマー(式(II)を部分構造として含む)について説明する。本発明の空気界面側垂直配向剤としては、フッ素系ポリマーが、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される繰り返し単位と下記式(II)で表される繰り返し単位とを含む共重合体であることが好ましい。
【0182】
【化6】

【0183】
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;Lは下記の連結基群から選ばれる2価の連結基又は下記の連結基群から選ばれる2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表し、
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR−(Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、−S−、−SO−、−P(=O)(OR)−(Rはアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基;
Qはカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、又はホスホノキシ{−OP(=O)(OH)}若しくはその塩を表す。
【0184】
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含有することを特徴とする。ポリマーの種類としては、「改訂 高分子合成の化学」(大津隆行著、発行:株式会社化学同人、1968)1〜4ページに記載があり、例えば、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスルホン類、ポリカーボナート類、ポリエーテル類、ポリアセタール類、ポリケトン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリアリレート類、PTFE類、ポリビニリデンフロライド類、セルロース誘導体などが挙げられる。前記フッ素系ポリマーは、ポリオレフィン類であることが好ましい。
【0185】
前記フッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基を側鎖に有するポリマーである。前記フルオロ脂肪族基は、炭素数1〜12であるのが好ましく、6〜10であるのがより好ましい。脂肪族基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状である場合は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。中でも、直鎖状の炭素数6〜10のフルオロ脂肪族基が好ましい。フッ素原子による置換の程度については特に制限はないが、脂肪族基中の50%以上の水素原子がフッ素原子に置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましい。フルオロ脂肪族基は、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合、チオエーテル結合、芳香族環などを介してポリマー主鎖と結合した側鎖に含まれる。
【0186】
フッ素系ポリマーとして本発明に好ましく用いられるフルオロ脂肪族基含有共重合体の具体例として、特開2006−113500公報の段落[0110]〜[0114]に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はそれら具体例によってなんら制限されるものではない。
【0187】
本発明に用いる前記フッ素系ポリマーの質量平均分子量は1,000,000以下であるのが好ましく、500,000以下であるのがより好ましく、100,000以下であり、10000以上であるのが更に好ましい。この範囲にすることで、溶解性を満足しつつ液晶化合物の配向制御に有効である。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定可能である。
【0188】
組成物中における前記フッ素系ポリマーの含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、光学異方性層の形成に用いる場合は、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜3質量%であるのが更に好ましい。前記フッ素系ポリマーの添加量が0.005質量%未満では効果が不十分であり、また8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、光学フィルムとしての性能(例えばレターデーションの均一性等)に悪影響を及ぼす。
【0189】
下記式(III)で表される含フッ素化合物。
(III) (R−L−(W)
式中、Rはアルキル基、末端にCF基を有するアルキル基、又は末端にCFH基を有するアルキル基を表し、mは1以上の整数を表す。複数個のRは同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF基又はCFH基を有するアルキル基を表す。Lは(m+n)価の連結基を表し、Wはカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、又はホスホノキシ{−OP(=O)(OH)}若しくはその塩を表し、nは1以上の整数を表す。
【0190】
本発明に使用可能な式(III)にて表される含フッ素化合物の具体例として、特開2006−113500公報の段落[0136]〜[0140]に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はそれら具体例によってなんら制限されるものではない。
【0191】
組成物中における前記含フッ素化合物の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、光学異方性層の形成に用いる場合は、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜3質量%であるのが更に好ましい。
なお、本発明に係る前記含フッ素化合物は、光学異方性層に含まれるバインダー(液晶性化合物やアクリレートモノマー等)と共有結合し得る官能基(重合性基)を有さない。
【0192】
[重合開始剤]
配向(好ましくは垂直配向)させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定する。固定化は、液晶性化合物に導入した重合性基(P)の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
【0193】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることが更に好ましい。液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm〜50J/cmであることが好ましく、100〜800mJ/cmであることが更に好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下や0.1%以下の低酸素濃度化で光照射を実施してもよい。液晶性化合物を含有する光学異方性の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることが更に好ましく、1〜5μmであることが最も好ましい。
【0194】
[光学異方性層の他の添加剤]
上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることができる。これらの素材は液晶性化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
【0195】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶性化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0196】
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物、特願2003−295212号明細書中の段落番号[0069]〜[0126]記載の化合物が挙げられる。
【0197】
液晶性化合物とともに使用するポリマーは、塗布液を増粘できることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃が更に好ましい。
【0198】
本発明の液晶性化合物を含有する光学異方性層の表面は、液晶性化合物が欠陥なく配向するためには、平滑であることが好ましい。粗さ曲線の算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)の範囲としては、0〜0.05μmが好ましく、更に好ましくは0.01〜0.04μmである。このような平滑な表面では、ロール状態で対向するハードコート層側表面との接触により、液晶性化合物を配向させるための含フッ素化合物が転写しやすい傾向がある。しかしながら、本願発明は、対向するハードコート層側表面の形状や表面自由エネルギーを特定範囲にすることで解決できる。
【0199】
[塗布溶剤]
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0200】
[塗布方法]
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0201】
[配向膜]
本発明では、配向膜の表面に前記組成物を塗布して、液晶性化合物の分子を配向させるのが好ましい。配向膜は液晶性化合物の配向方向を規定する機能を有するため、本発明の好ましい態様を実現する上で利用するのが好ましい。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを別の透明支持体上に転写して本発明の光学フィルム用光学基材を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。更に、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。
【0202】
ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが更に好ましく、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0203】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%が更に好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は100〜5000であることが好ましい。
【0204】
前記配向膜において、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。
【0205】
配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾール及びジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0206】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%が更に好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
【0207】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤及び添加剤を含む溶液を透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることが更に好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
【0208】
配向膜形成時に利用する塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法又はロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1乃至10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5が好ましい。
【0209】
配向膜は、透明支持体上に設けられることが好ましい。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
【0210】
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0211】
配向膜のラビング処理面に前記組成物を塗布して、液晶性化合物の分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させることで、前記光学異方性層を形成することができる。
【0212】
[偏光板]
本発明の偏光板は、偏光膜と該偏光膜の両面を保護する2枚の保護フィルムを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が本発明の光学フィルムであることが好ましい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造することができる。
【0213】
光学フィルムの液晶性化合物を含有する光学異方性層側が接着剤又は他の基材を介して偏光膜に接着しており、偏光膜のもう一方の側にも保護フィルムを有する構成が好ましく、更に好ましくは、光学フィルムの光学異方性層が接着剤を介して直接偏光膜に接着している構成である。光学異方性層と偏光膜の間の接着性を改良するために、光学異方性層の表面は表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線(UV)処理、火炎処理、鹸化処理、溶剤洗浄)を実施することが好ましい。また、光学異方性層の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。
また、偏光板を構成するもう一方の保護フィルムの偏光膜と反対側の面には粘着剤層を有していても良い。
【0214】
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることにより、λ/4膜などに期待される光学性能に加え、物理強度、防汚性、耐久性に優れた偏光板が作製できる。
【0215】
また、本発明の偏光板は、光学補償機能を有することもできる。その場合、2枚の表面保護フィルムの表面及び裏面のいずれかの一面側のみを上記光学フィルムを用いて形成されており、該偏光板の光学フィルムを有する側とは他面側の表面保護フィルムが光学補償フィルムであることが好ましい。
【0216】
[画像表示装置]
本発明の光学フィルム及び偏光板は、有機EL、タッチパネル、3D表示装置、3D表示装置観察用メガネなどの用途で画像表示装置の表面に用いることができる。
【実施例】
【0217】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0218】
[光学フィルムの製造例1]
[光学基材の製造1]
<透明支持体(セルロースアセテートフィルムT1)の作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.7〜61.1%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 336質量部
メタノール(第2溶媒) 29質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
【0219】
別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤(A)16質量部、メチレンクロライド92質量部及びメタノール8質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液25質量部を混合し、充分に攪拌して固形分濃度22.4質量%のドープAを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、6.0質量部であった。
【0220】
【化7】

【0221】
上記ドープAに平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)をセルロースアセテート100質量部に対して0.02質量部添加したマット剤入りドープBを調製した。ドープAと同じ溶剤組成で固形分濃度が19質量%になるように調節した。
【0222】
ドープAを主流とし、マット剤入りドープBを最下層及び最上層になるようにして、バンド延伸機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、70℃の温風で1分乾燥し、バンドからフィルムをはがし140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアセテートフィルムT1を作製した。マット剤入りの最下層及び最上層はそれぞれ3μmに、主流は54μmになるように流量を調節した。
【0223】
得られた長尺状のセルロースアセテートフィルムT1の幅は2300mmであり、厚さは60μmであった。また、面内レターデーション(Re)は6nm、厚み方向のレターデーション(Rth)は60nmであった。
【0224】
<透明支持体(セルロースアセテートフィルムT2)の作製>
上記のセルロースアセテートフィルムT1の作製おいて、ドープAの流量を調節してフィルムの膜厚を変える以外は同様にして、セルロースアセテートフィルムT2を作製した。セルロースアセテートフィルムT2の全層の厚さは80μmであり、Reは8nm、Rthは78nmであった。
【0225】
<透明支持体(セルロースアセテートフィルムT3)の作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、固形分濃度22質量%のセルロースアセテート溶液(ドープC)を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.7〜61.1%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
紫外線吸収剤(チヌビン328 チバ・ジャパン製) 0.9質量部
紫外線吸収剤(チヌビン326 チバ・ジャパン製) 0.2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 336質量部
メタノール(第2溶媒) 29質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
【0226】
上記ドープCに平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)をセルロースアセテート100質量部に対して0.02質量部添加したマット剤入りドープDを調製した。ドープCと同じ溶剤組成で固形分濃度が19質量%になるように調節した。
【0227】
ドープCを主流とし、マット剤入りドープDを最下層及び最上層になるようにして、バンド延伸機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、70℃の温風で1分乾燥し、バンドからフィルムをはがし140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアセテートフィルムT3を作製した。マット剤入りの最下層及び最上層はそれぞれ3μmに、主流は74μmになるように流量を調節した。
【0228】
得られた長尺状のセルロースアセテートフィルムT3の幅は2300mmであり、厚さは80μmであった。また、面内レターデーション(Re)は3nm、厚み方向のレターデーション(Rth)は45nmであった。
【0229】
《液晶性化合物を含む光学異方性層の形成》
(アルカリ鹸化処理)
セルロースアシレートフィルムT1を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムのバンド面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/mで塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0230】
(アルカリ溶液組成)
───────────────────────────────────
アルカリ溶液組成(質量部)
───────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CHCHO)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
───────────────────────────────────
【0231】
(配向膜の形成)
上記のように鹸化処理した長尺状のセルロースアセテートフィルムに、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥した。
配向膜塗布液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー2959、チバ・ジャパン製) 0.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0232】
【化8】

【0233】
(ディスコティック液晶性化合物を含む光学異方性層の形成)
上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は反時計回りに45°の方向とした。
【0234】
下記の組成のディスコティック液晶化合物を含む塗布液Bを上記作製した配向膜上に#2.7のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶化合物の配向熟成のために、120℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶性化合物の配向を固定化し厚さ1μmの光学異方性層を形成し、光学基材F1を得た。
【0235】
光学異方性層塗布液(B)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のディスコティック液晶化合物 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のピリジニウム塩 1質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP2) 0.4質量部
メチルエチルケトン 252質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0236】
【化9】

【0237】
作製した光学基材F1は、550nmにおけるReが145nm、Nz値は0.53であった。遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と直交していた。すなわち、支持体の長手方向に対して、遅相軸は時計回りに45°の方向であった。ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。光学異方性側表面の算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)は0.01〜0.04μmの範囲にあり、平滑性の高いものであった。
なお、前記フッ素系ポリマー(FP2)は前記ディスコティック液晶(光学異方性層のバインダー)とは共有結合を形成しない。
【0238】
[光学基材の製造2]
光学基材の製造1において、セルロースアセテートフィルムをT2に変更し、セルロースアセテートフィルムT2のバンド面側の表面を鹸化処理し、更に製造例1と同様に配向膜を設けた。作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は反時計回りに45°の方向とした。
【0239】
下記の組成のディスコティック液晶化合物を含む塗布液Cを上記作製した配向膜上に#3.6のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶化合物の配向熟成のために、120℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶性化合物の配向を固定化し厚さ1.6μmの光学異方性層を形成し、光学基材F2を得た。
作製した光学基材F2は、550nmにおけるReが125nm、Nz値は0.9であった。遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と直交していた。すなわち、支持体の長手方向に対して、遅相軸は時計回りに45°の方向であった。ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。光学異方性側表面の算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)は0.01〜0.04μmの範囲にあり、平滑性の高いものであった。
なお、下記組成中のフッ素系ポリマー(FP1及びFP3)は下記組成中のディスコティック液晶やアクリレートモノマー(光学異方性層のバインダー)とは共有結合を形成しない。
【0240】
光学異方性層塗布液(C)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のディスコティック液晶化合物 91質量部
下記アクリレートモノマー 5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のピリジニウム塩 0.5質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP1) 0.2質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP3) 0.1質量部
メチルエチルケトン 189質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0241】
【化10】

【0242】
アクリレートモノマー:
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)
【0243】
【化11】

【0244】
[光学基材の製造3]
光学基材の製造1において、セルロースアセテートフィルムをT3に変更した以外は光学基材F1の製造方法と同様にして光学基材F3を作製した。作製した光学基材F3は、550nmにおけるReが143nm、Nz値は0.4であった。光学異方性側表面の算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)は0.01〜0.04μmの範囲にあり、平滑性の高いものであった。
【0245】
[光学基材の製造4]
上記セルロースアセテートフィルムT3の作製と同様にして、セルロースアセテート溶液(ドープC)を調製し、内層用ドープとした。
【0246】
上記ドープCに平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)をセルロースアセテート100質量部に対して0.05質量添加し、ドープCと同じ溶剤組成で固形分濃度が20質量%になるようにし、マット剤入り外層用ドープEを調製した。
【0247】
上記ドープCに平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)をセルロースアセテート100質量部に対して0.25質量添加し、ドープCと同じ溶剤組成で固形分濃度が20質量%になるようにし、マット剤入り外層用ドープFを調製した。
【0248】
ドープCを内層とし、マット剤入りドープEが最下層、マット剤入りドープFが最上層になるようにして、鏡面ステンレス支持体上に共流延した。支持体上での膜面温度が40℃となってから、70℃の温風で1分乾燥し、フィルムをはがし140℃の乾燥風で10分乾燥した。各層の厚みは、支持体面側外層:内層:空気界面側外層=3μm:75μm:2μmになるように流量を調節し、セルロースアシレートフィルムT4を得た。
【0249】
得られた長尺状のセルロースアセテートフィルムT4の幅は2300mmであり、厚さは80μmであった。また、面内レターデーション(Re)は2nm、厚み方向のレターデーション(Rth)は40nmであった。
【0250】
光学基材の製造2において、セルロースアセテートフィルムをT4に変更した以外は光学基材F2の製造方法と同様にして光学基材F4を作製した。このとき、光学異方性層はセルロースアセテートフィルムT4の鏡面ステンレス支持体面側に形成した。作製した光学基材F4は、550nmにおけるReが125nm、Nz値は0.5であった。光学異方性側表面の算術平均粗さRa(JIS B 0601:1998)は0.01〜0.04μmの範囲にあり、平滑性の高いものであった。
【0251】
〔ハードコート層の積層〕
下記に示す各層形成用塗布液を調製した。
(ハードコート層用塗布液HC−1の調製)
以下に示す成分を混合し、最終溶媒組成がMIBK(メチルイソブチルケトン)と MEK(メチルエチルケトン)の50:50質量%混合比となるように調整して、最終的に固形分50質量%の混合液を調製した。
PET−30(100%) 60.0g
ビスコート360(100%) 40.0g
イルガキュア127(100%) 3.0g
8μm架橋アクリル粒子(30%分散液) 11.0g
8μm架橋アクリル・スチレン粒子(30%分散液) 7.0g
CABポリマー(20%溶液) 10.0g
SP−13(2%溶液) 1.0g
【0252】
上記ハードコート層用塗布液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して塗布液を調製した。上記塗布液において硬化後のマトリックスの屈折率は1.525であった。
【0253】
使用した材料を以下に示す。
・8μm架橋アクリル粒子 屈折率1.49(30質量%MIBK分散液)
・8μm架橋アクリル・スチレン粒子 屈折率1.55(30質量%MIBK分散液)
・PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
・ビスコート360:エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート[大阪有機化学(株)製]
・CABポリマー:セルロースアセテートブチレート(20質量%溶液)[イーストマン・ケミカル(株)製531・1のMIBK溶液]
・イルガキュア127:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
・レベリング剤(SP-13):下記フッ素ポリマーの2質量%MEK溶液
【0254】
【化12】

【0255】
上記ハードコート層用塗布液HC−1において、粒子の種類及び含量、その他添加剤の種類及び量を以下の表1以下に示すように変更して塗布液HC−2〜HC−7を調製した。表1中の含量は、硬化性モノマー100質量部に対する固形分の質量部を表す。
【0256】
【表1】

【0257】
(中屈折率層用塗布液Mn−1の調製)
リン含有酸化錫(PTO)分散液(触媒化成工業(株)製 ELCOM JX−1001PTV及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)を混合し、硬化後の屈折率が1.62になるよう調整した中屈折率層用塗布液を調製した。
【0258】
(高屈折率層用塗布液Hn−1の調製)
ZrO微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])15.7質量部に、メチルエチルケトン61.9質量部、メチルイソブチルケトン3.4質量部、シクロヘキサノン1.1質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用塗布液を調製した。
【0259】
(低屈折率層用塗布液Ln−1〜Ln−6の調製)
各成分を下記のように混合し、MEK/MMPG−ACの90/10混合物(質量比)に溶解して固形分5質量%の低屈折率層塗布液を調製した。
【0260】
(Ln−1の組成)
下記のパーフルオロオレフィン共重合体(P−1) 15質量部
DPHA 7質量部
RMS−033 5質量部
下記の含フッ素モノマー(M−1) 20質量部
中空シリカ粒子固形分として 50質量部
イルガキュア127 3質量部
【0261】
(Ln−2の組成)
下記のパーフルオロオレフィン共重合体(P−1) 15質量部
DPHA 7質量部
オプツールDAC 5質量部
下記の含フッ素モノマー(M−1) 20質量部
中空シリカ粒子固形分として 50質量部
イルガキュア127 3質量部
【0262】
(Ln−3の組成)
下記のパーフルオロオレフィン共重合体(P−1) 15質量部
DPHA 7質量部
一般式(F−4)の具体例(d−4) 5質量部
下記の含フッ素モノマー(M−1) 20質量部
中空シリカ粒子固形分として 50質量部
イルガキュア127 3質量部
【0263】
(Ln−4の組成)
DPHA 32質量部
RMS−033 5質量部
中空シリカ粒子固形分として 60質量部
イルガキュア127 3質量部
【0264】
(Ln−5の組成)
DPHA 67質量部
RMS−033 5質量部
MEK−ST固形分として 25質量部
イルガキュア127 3質量部
【0265】
(Ln−6の組成)
下記のパーフルオロオレフィン共重合体(P−1) 15質量部
DPHA 7質量部
下記の含フッ素モノマー(M−1) 20質量部
中空シリカ粒子固形分として 50質量部
イルガキュア127 3質量部
【0266】
使用した化合物を以下に示す。
【0267】
【化13】

【0268】
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
・RMS−033:シリコーン系多官能アクリレート(Gelest製、Mwt=28000)
・オプツールDAC:硬化性フッ素系化合物(ダイキン化学工業(株)製)
・d−4:硬化性含フッ素化合物一般式(F−4)の例示化合物(d−4)
・イルガキュア127:光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製
・中空シリカ:中空シリカ粒子分散液(平均粒子サイズ45nm、屈折率1.25、表面をアクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理、MEK分散液濃度20%)
・MEK−ST:平均粒径12nmのシリカのMEK分散液(30%)[日産化学(株)製]
・MEK:メチルエチルケトン
・MMPG−Ac:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0269】
上記低屈折率層用塗布液は孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して塗布液を調製した。上記塗布液を塗布硬化してなる低屈折率層の硬化後の屈折率はLn−1〜3、Ln−6は1.34、Ln−4は1.36、Ln−5は1.50であった。
【0270】
(オーバーコート層用塗布液OC−1の調製)
各成分を下記のように混合し、MEKに溶解して固形分25質量%のオーバーコート層塗布液を調製した。
【0271】
(OC−1の組成)
DPHA 92質量部
オプツールDAC 5質量部
イルガキュア127 3質量部
【0272】
上記オーバーコート層用塗布液は孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して塗布液を調製した。上記塗布液を硬化してなるオーバーコート層の屈折率は1.52であった。
【0273】
[光学フィルム試料の作製]
(光学フィルム試料101の作製)
上記で作製した光学基材F1をロール形態から巻き出して光学異方性層が塗設されていない側の支持体表面に、ハードコート層用塗布液HC−1を使用し、特開2006−122889号公報実施例1記載のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、更に窒素パージ下酸素濃度約0.1%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ巻き取った。ハードコート層の膜厚は14μmになるよう塗布量を調整した。
【0274】
(光学フィルム試料108の作製)
上記で作製した光学基材F1をロール形態から巻き出して光学異方性層が塗設されていない側の支持体表面に、ハードコート層用塗布液HC−1を使用し、特開2006−122889号公報実施例1記載のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、更に窒素パージ下酸素濃度約0.1%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量100mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ巻き取った。ハードコート層の膜厚は14μmになるよう塗布量を調整した。
このハードコート層の上に、低屈折率層用塗布液Ln−1を塗布した。低屈折率層の乾燥条件は60℃、60秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm、照射量300mJ/cmの照射量とした。低屈折率層の屈折率は1.34、膜厚は95nmであった。
以上のように、ハードコート層、低屈折率層がこの順で積層された光学フィルム108を作製した。
【0275】
(光学フィルム試料116の作製)
上記で作製した光学基材F1をロール形態から巻き出して光学異方性層が塗設されていない側の支持体表面に、ハードコート層用塗布液HC−4を使用し、特開2006−122889号公報実施例1記載のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、更に窒素パージ下酸素濃度約0.1%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量100mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ巻き取った。ハードコート層の膜厚は14μmになるよう塗布量を調整した。このハードコート層の上に、上記オーバーコート層用塗布液OC−1を塗布した。60℃で150秒乾燥の後、更に窒素パージ下酸素濃度約0.1%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ巻き取った。オーバーコート層の膜厚は1μmになるよう塗布量を調整した。オーバーコート層の屈折率は1.51であった。
【0276】
(光学フィルム試料117の作製)
上記で作製した光学基材F1をロール形態から巻き出して光学異方性層が塗設されていない側の支持体表面に、ハードコート層用塗布液HC−2を使用し、特開2006−122889号公報実施例1記載のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、更に窒素パージ下酸素濃度約0.1%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量100mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ巻き取った。ハードコート層の膜厚は11μmになるよう塗布量を調整した。
このハードコート層の上に、上記中屈折率層用塗布液Mn−1を塗布した。乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm、照射量240mJ/cmの照射量とした。中屈折率層の屈折率は1.62、膜厚は60nmであった。
続いて、形成した中屈折率層の上に、上記高屈折率層用塗布液Hn−1を塗布した。乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm、照射量240mJ/cmの照射量とした。高屈折率層の屈折率は1.72、膜厚は110nmであった。
続いて、形成した高屈折率層の上に、上記低屈折率層用塗布液Ln−1を塗布した。低屈折率層の乾燥条件は60℃、60秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm、照射量300mJ/cmの照射量とした。低屈折率層の屈折率は1.34、膜厚は95nmであった。
以上のように、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層された光学フィルム117を作製した。
【0277】
上記で作製した光学基材(光学異方性層つき透明支持体)の上に、ハードコート層及びその他構成層が表2の組み合わせになるようにして、光学フィルム試料No.101〜132を作製した。各層の膜厚及び硬化条件は、特に表中に記載がない限りにおいて、上記試料101、108、116、117に代表される同様の層構成の試料に準じて行った。
なお、表2において、光学異方性層Bと透明支持体T1との組み合わせは上記で作製した光学基材F1を用いたことを意味する。同様に、光学異方性層Cと透明支持体T2との組み合わせは上記で作製した光学基材F2を、光学異方性層Bと透明支持体T3との組み合わせは上記で作製した光学基材F3を、光学異方性層Bと透明支持体T4との組み合わせは上記で作製した光学基材F4をそれぞれ用いたことを意味する。
【0278】
【表2】

【0279】
前記ハードコート層、低屈折率層、オーバーコート層に含有される含フッ素又はシリコーン系化合物は重合性基を有し、各層のバインダーと共有結合を形成していた。
また、ハードコート層や光学干渉層形成後のフィルムのRe及びNz値は、該層形成前の光学基材のRe及びNz値から変化はなかった。
【0280】
以下の方法により光学フィルムの諸特性の測定を行った。
(光学フィルムの特性の測定)
(1)光学フィルムの表面形状
光学フィルムの光学異方性層が形成されていないハードコート層側の表面の以下の特性をJIS B 0601:1998に準拠して測定した。
Ra:粗さ曲線の算術平均粗さ
Rz:粗さ曲線の十点平均粗さ
Sm:粗さ曲線の凹凸の間隔
【0281】
(2)ヘイズ
以下の測定により、得られたフィルムのヘイズ(H)、内部ヘイズ(Hi)、表面ヘイズ(Hs)を測定した。
1.JIS−K7136に準じて得られたフィルムのヘイズ値(H)を測定する。この値を全ヘイズとする。
2.得られたフィルムのハードコート層側の表面及び裏面にシリコーンオイルを数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATSUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られたフィルムを光学的に密着し、表面ヘイズを除去した状態でヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間にシリコーンオイルのみを挟みこんで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ(Hi)として算出した。
3.上記1で測定した全ヘイズ(H)から上記2で算出した内部ヘイズ(Hi)を引いた値をフィルムの表面ヘイズ(Hs)として算出した。
【0282】
(3)平均反射率(積分球反射率)
光学フィルムの裏面、すなわちハードコート層が塗設されていない側の表面をサンドペーパーで粗面化した後に黒色インクで処理し、裏面反射をなくした状態で、表面側を、分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの積分球反射率の算術平均値を用いた。
【0283】
(4)鉛筆硬度
JIS K5400に記載の鉛筆硬度評価を行い、ハードコート層を塗布した面を下記の基準で評価した。
◎:4H以上
○:3H
×:2H未満
【0284】
(5)表面自由エネルギー
光学フィルムのハードコート層側最表面及び光学異方性層側最表面の表面自由エネルギーは、水とヨウ化メチレンの接触角を測定し、前述の方法で算出した。
【0285】
(ロール状態での光学フィルムの評価)
上記で作製した光学フィルムのロール状態での経時安定性を評価するために、各光学フィルムを幅300mmで50m長のロールに巻き取った。ロール状態で40℃相対湿度55%のもと1週間保管したのちの光学フィルムロールを用いて、評価を行った。経時後のロールフィルムを目視で観察し、以下の基準でランク付けした。
AA:外観上の変化は特に認められない。
A :ロール状態で経時後に外観が変化し巻き姿に反射光ムラが発生したが、ロールをほどきシート状態で観察すると経時での反射光ムラの発生は確認できない。
B :ロール状態で経時後に外観が変化し巻き姿に反射光ムラが発生し、ロールをほどきシート状態で観察しても経時での反射光ムラの発生が認められた。光学フィルム表面を不織布でふき取ると一拭きで除去できる。
C :ロール状態で経時後に外観が変化し巻き姿に反射光ムラが発生し、ロールをほどきシート状態で観察しても経時での反射光ムラの発生が認められた。光学フィルム表面を不織布でふき取るのは容易でない。
【0286】
[偏光板及び画像表示装置の作製]
上記作製した光学フィルムは、画像表示装置での評価をおこなうため、以下の偏光板加工を行い画像表示装置での評価を行った。
上記で作製した光学フィルムの光学異方性層の表面をMEKで洗浄した。洗浄後のフィルム表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理した各フィルムと、同様のアルカリ鹸化処理したVA用位相差フィルム(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth = 50/125)を用意し、これらの鹸化した面が偏光膜側となるようにして偏光膜を間に挟んで貼り合わせ、光学フィルムとVA用位相差フィルムが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板101〜132を作製した。このとき光学フィルムの遅相軸と偏光子の透過軸のなす角度が45度になるようにした。
【0287】
(実装)
TV:SAMSUNG社製UN46C7000(3D−TV)の視認側の偏光板をはがし、上記作製した偏光板のVA用位相差フィルムとLCセルを粘着剤を介して貼合し、立体表示装置を作製した。LCシャッターメガネ:SAMSUNG社製 SSG−2100AB(LCシャッターメガネ)の目と反対側(パネル側)の偏光板をはがし、そこに上記作製した光学フィルム試料118の光学異方性層側を粘着剤を介して貼合し、LCシャッターメガネを作製した。ここでメガネに貼合した光学フィルムの遅相軸は、TVに貼合した偏光板に含まれる光学フィルムの遅相軸と直交するようにした。
【0288】
(表示装置の評価)
蛍光灯のある部屋で、パネル面の照度がおよそ200luxとなる環境下で、上記作製したLCシャッターメガネをかけ、3D映像を鑑賞した。
画像の評価は、3D画像の立体感及びクロストークを以下の基準で官能評価した。
[3D画像の立体感]
光学フィルム129(ハードコート層を形成していないフィルム)を貼合したTVを評価3点とし、全TV中最も立体感に劣るものを評価1とし、最も立体感に優れるものを評価5点として官能評価し1〜5の5段階で得点付けした。評価者5人の平均値をとり立体感の指標とした。[クロストーク]
顔を傾けて見たときや斜め方向から見たときのクロストーク(二重像)を観察し、クロストークが気になるものを×、ほとんど気にならないものを○として評価した。
【0289】
上記の各項目での評価結果を表3に示す。
【0290】
【表3】

【0291】
表3に示すように、光学フィルムのハードコート層側表面を本願の形状にすることで、ロール状態での経時での外観の変化が無く、期待される光学異方性を損なうこともない光学フィルムが得られることが分かる。
【0292】
[画像表示装置の作製2]
上記偏光板の作製において、VA用位相差フィルムを用いる代わりに光学基材F1(セルロースアセテートフィルム表面をアルカリ鹸化処理)を用いて、光学フィルム117と光学基材F1とが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板を作製した。この偏光板を有機ELディスプレイの表面に光学フィルム117の低屈折率層が外側になるように粘着剤で貼り付けた。反射防止性に優れ、傷つきや色ムラがなく、良好な表示性能が得られた。さらに、偏光サングラスを介して見たとき、顔を傾斜させたり、ディスプレイ回転させたりした時の輝度低下が抑えられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体の一方の側に液晶性化合物を含有する光学異方性層が積層され、もう一方の側にハードコート層が積層されてなる光学フィルムにおいて、
光学異方性層表面には、光学異方性層のバインダーと共有結合を形成しない含フッ素化合物を含有し、
ハードコート層が形成された側の光学フィルム表面には、含フッ素又はシリコーン系の化合物が共有結合により固定されてなり、
更に、ハードコート層が形成された側の表面物性が以下の条件を満たすことを特徴とする光学フィルム。
(1) Ra 0.05〜0.25μm
(2) Rz 0.4〜3.0μm
(3) Sm 40〜200μm
(4) 表面ヘイズ 0.1〜15
(5) 内部ヘイズ 0〜28
(6) 全ヘイズ 0.1〜30
ここで、Ra、Rz及びSmは、それぞれ表面の算術平均粗さ、十点平均粗さ及び凹凸の平均間隔を表す。
【請求項2】
光学異方性層の表面自由エネルギー(Elc)が21〜30mN/mであり、
ハードコート層側表面の表面自由エネルギー(Ehc)が14〜24mN/mであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
Ehc−Elc≦0であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
ハードコート層側表面に、ハードコート層とは別の機能層が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
ハードコート層が形成された側の表面物性が更に以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(4) 表面ヘイズ 0.1〜10
(5) 内部ヘイズ 0〜10
(6) 全ヘイズ 0.1〜15
【請求項6】
ハードコート層が形成された側の表面物性が更に以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(4) 表面ヘイズ 0.1〜8
(5) 内部ヘイズ 0〜5
(6) 全ヘイズ 0.1〜10
【請求項7】
ハードコート層中に、バインダーと透光性粒子を含有し、透光性粒子のサイズが1〜12μmであり、バインダーと透光性粒子の屈折率差の絶対値が0.05未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
ハードコート層中に、バインダーと透光性粒子を含有し、透光性粒子のサイズが3〜12μmであり、バインダーと透光性粒子の屈折率差の絶対値が0.001〜0.02であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
光学フィルムがロール状に巻き取られていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
光学フィルムの550nmにおける面内レターデーションReが80〜200nmであり、下記式で表される550nmにおけるNz値が0.1〜0.9である請求項1〜9のいずれか1項に記載の光学フィルム。
ここで、Nz値=0.5+Rth/Re(Rth:厚み方向のレターデーション)である。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルムを保護膜として使用した偏光板。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルム、又は請求項11に記載の偏光板を少なくとも1つ含む画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−103689(P2012−103689A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226068(P2011−226068)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】