説明

光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板及び液晶表示装置

【課題】光学フィルム用途として、加熱加工時に、裁断性および延伸性が良好で、輝点異物の発生が抑えられ、端部の着色が低く、延伸後のヘイズ値が低い光学フィルム、該光学フィルムを使用した偏光板及び液晶表示装置、更には溶媒の乾燥及び回収に伴う製造負荷、設備負荷及び環境負荷を低減した光学フィルムの製造方法を提供。
【解決手段】セルロースエステルと下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする光学フィルム。
【化1】


(式中R101およびR102はアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表し、nおよびnは、0または1を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRTディスプレイに代わる薄型ディスプレイとして、液晶表示装置(液晶ディスプレイ)、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイの台頭が目覚しい。これらの新世代のディスプレイには多くの光学フィルムが搭載されているが、薄型がゆえにそれら光学フィルムが持つ各種機能に対する性能向上の要求が年々厳しいものになってきている。従って、より性能向上が達せられた光学フィルムの登場が待ち望まれている。
【0003】
一方、ノートパソコンの薄型軽量化、大型画面化、高精細化の開発が進んでいる。それに伴って、液晶表示装置用の光学フィルムもますます薄膜化、広幅化、高品質化の要求が強くなってきている。液晶表示装置用の光学フィルムとして種々の樹脂が用いられているが、光学フィルムとしての偏光板保護フィルムには、現在、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィンが用いられている。その中でも、セルロースエステルを用いたセルロースエステルフィルムが圧倒的に多く使用されている。
【0004】
しかしながら、現在のセルロースエステルフィルムの製造方法はハロゲン系の溶媒を用いた溶液流延製膜法による製造方法であるため、溶媒回収に要する費用は非常に大きい負担となっているため、セルロースエステルを溶融製膜する試みが行われている。
【0005】
セルロースエステルは溶融時の粘度が非常に高い高分子であり、かつガラス転移温度も高いため、溶融してダイから押出し、冷却ドラムまたは冷却ベルト上にキャスティングしてもレベリングし難く、押出し後に短時間で固化するため、得られるフィルムの物性特性である平面性が溶液流延フィルムよりも低いといった大きな課題を有していることが分かっている。
【0006】
このため、溶融時の温度を上げることで粘度を下げようとすると、セルロースエステルの熱分解による分子量低下が起こり、加工安定性の低下、偏光を用いて観察される輝点異物(以下「輝点異物」と称する場合がある)の発生といった加工安定性、性能面での課題が発生する。特に、フィルム端部をスリットする際に、裁断面が荒れる、割れるなどの故障がおこり、加工安定性が低下する問題があり、改良が求められている。
【0007】
また、溶融時の温度を上げることにより、着色の上昇といった性能面での課題も発生し、改良が求められている。特に幅手方向の端部の着色の改良が難しいのが現状である。広幅のセルロースエステルフィルムを製膜する際、両端部に付与するナーリング加工部や、広幅原反を規定の幅にスリッティングする際に生じる端部(耳部ともいう)を返材として有効利用する際に、端部の着色が著しい場合には返材としての利用もできず、廃棄せざるを得ないため、端部の着色は特に改良が求められていた。
【0008】
更に最近は、薄膜化、広幅化の要求に答えるため、高倍率延伸が検討されており、延伸中にフィルムが破断しやすいという問題や、ヘイズ値が上昇し、偏光版に加工したときに、コントラストが低下するという、新たな加工安定性、性能面での劣化が問題となっている。
【0009】
一方、セルロースエステルの溶融製膜における機械強度、熱劣化、着色を改良するために、フェノール系劣化防止剤、チオエーテル系化合物、リン系化合物等を含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0010】
しかし、いずれの公知技術をもってしても加工安定性、輝点異物の発生、着色及び延伸後のヘイズ値の改良が不十分であるのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−241428号公報
【特許文献2】特開2008−257220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は光学フィルム用途として、加熱加工時に、裁断性および延伸性が良好で、輝点異物の発生が抑えられ、端部の着色が低く、延伸後のヘイズ値が低い光学フィルム、該光学フィルムを使用した偏光板及び液晶表示装置、更には溶媒の乾燥及び回収に伴う製造負荷、設備負荷及び環境負荷を低減した光学フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0014】
1.セルロースエステルと下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする光学フィルム。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中R101およびR102はアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表し、nおよびnは、0または1を表す。)
2.セルロースエステルと前記一般式(1)で表される化合物と、ホスファイト、ホスホナイト及びホスフィナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン系化合物、を含有することを特徴とする前記1項に記載の光学フィルム。
【0017】
3.前記一般式(1)で表される化合物の添加量をa(モル)、ホスファイト、ホスホナイト及びホスフィナイトから選ばれるリン系化合物の合計の添加量をb(モル)としたときに、下記式(A)を満たすことを特徴とする前記2項に記載の光学フィルム。
【0018】
式(A): 0.005≦a/b≦0.5
4.前記1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムを溶融流延法により製造することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0019】
5.前記1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム、または前記4項に記載の光学フィルムの製造方法によって製造された光学フィルムを偏光子の少なくとも一方の面に有することを特徴とする偏光板。
【0020】
6.前記5項に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に用いることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、加熱加工時に、裁断性および延伸性が良好で、輝点異物の発生が抑えられ、端部の着色が低く、延伸後のヘイズ値が低い光学フィルム、該光学フィルムを使用した偏光板及び液晶表示装置、更には溶媒の乾燥及び回収に伴う製造負荷、設備負荷及び環境負荷を低減した光学フィルムの製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の1つの実施形態を示す概略フローシートである。
【図2】図1の製造装置の要部拡大フローシートである。
【図3】図3(a)は流延ダイの要部の外観図、図3(b)は流延ダイの要部の断面図である。
【図4】挟圧回転体の第1実施形態の断面図である。
【図5】挟圧回転体の第2実施形態の回転軸に垂直な平面での断面図である。
【図6】挟圧回転体の第2実施形態の回転軸を含む平面での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
(光学フィルム)
本発明において光学フィルムとは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の各種表示装置に用いられる機能フィルムのことであり、詳しくは液晶表示装置用の偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、防眩フィルム、帯電防止フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルム等を含む。
【0025】
本発明の光学フィルムの基材となる樹脂フィルムに用いられる樹脂としては、セルロースエステル系樹脂単独、あるいは、セルロースエステル系樹脂とポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アクリル系樹脂(共重合体も含む)、オレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂等)、あるいはビニル系樹脂(ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等も含む)等の樹脂を併用したものを挙げることができる。この中で、セルロースエステル系樹脂単独、或いはセルロースエステル系樹脂にアクリル系樹脂を併用させたものが好ましい。
【0026】
セルロースエステル系樹脂に別の種類の樹脂を併用した場合、併用する樹脂の含有量としては0.1〜90質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
【0027】
本発明に係る光学フィルムは、偏光板保護フィルム(機能性層を付与した偏光板保護フィルムを含む)、及び位相差フィルムに好ましく用いられる。
【0028】
セルロースエステル光学フィルムの製造法は主に二つあり、その一つである溶液流延法は、セルロースエステルを溶媒に溶解した溶液を流延し、溶媒を蒸発、乾燥することによって製膜するものであり、この方法はフィルム内部に残存する溶媒を除去しなければならないため、乾燥ライン、乾燥エネルギー、及び蒸発した溶媒の回収及び再生装置等、製造ラインへの設備投資及び製造コストが膨大になっており、これらを削減することが重要な課題となっている。これに対し溶融流延法による製膜では、溶液流延としてセルロースエステルの溶液を調整するための溶媒を用いないため、前述の乾燥負荷、設備負荷が生じない。従って、本発明では溶液流延法よりも、溶融流延法で製造することが好ましい。
【0029】
本発明者らは上記課題に対し鋭意検討の結果、溶融製膜しても、加熱加工時に、輝点異物、裁断性および延伸性が改良され、端部の着色、延伸後のヘイズ値が改善された光学フィルムが得られることが分かった。これらの効果により溶液製膜法で作製されたものと同等以上の特性を有するセルロースエステル光学フィルムを溶融製膜法でも得られることが分かった。
【0030】
以下、本発明に用いられる各種化合物について詳述する。
【0031】
(一般式(1)の化合物)
前記一般式(1)において、R101およびR102はアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表す。nおよびnは、0または1を表す。R101およびR102は同一であっても、異なっても良い。好ましくは同一である。
【0032】
アルキル基としては、炭素数1〜22のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられる。
【0033】
さらに好ましくは、炭素数2〜20のアルキル基が好ましく、炭素数8〜18が特に好ましい。アリール基としては、例えば炭素数6〜12のアリール基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。シクロアルキル基としては、例えば、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましく、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。特にシクロヘキシル基が好ましい。
【0034】
101およびR102が表す基は、置換基を有していてもよい。
【0035】
置換基としては、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子等)、アリル基(例えばオクチルアリル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、シアノ基、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基等)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、ウレイド基(例えば3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基等)、スルファモイルアミノ基(ジメチルスルファモイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えばエチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アシル基(例えばアセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基等)、アミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミンオキシド基(例えばピリジン−オキシド基)、イミド基(例えばフタルイミド基等)、ジスルフィド基(例えばベンゼンジスルフィド基、ベンゾチアゾリル−2−ジスルフィド基等)、カルボキシル基、スルホ基、ヘテロ環基(例えば、ピロール基、ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基等)等が挙げられる。
【0036】
また、前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)のような、互変異性体の構造をとってもよい。
【0037】
【化2】

【0038】
本発明の化合物の具体例としては以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【化3】

【0040】
【化4】

【0041】
【化5】

【0042】
また、市販品として、JP−202((1)−1;城北化学工業株式会社製)、JP−260((1)−30;城北化学工業株式会社製)、Chelex H−8((1)−2;SC有機化学株式会社製)、Chelex H−12((1)−3;SC有機化学株式会社製)、Chelex H−18D((1)−4;SC有機化学株式会社製)が挙げられる。
【0043】
一般式(1)で表される化合物の添加量は、セルロースエステル100質量部に対して、1×10−7〜1.0質量部、好ましくは1×10−6〜0.5質量部、さらに好ましくは1×10−5〜0.1質量部である。
【0044】
(セルロースエステル)
本発明に用いられるセルロースエステルは特に限定されないが、溶融製膜可能なセルロースエステルであることがより好ましい。例えば芳香族カルボン酸エステル等も用いられるが、光学特性等の得られるフィルムの特性を鑑みると、セルロースの低級脂肪酸エステルを使用するのが好ましい。本発明においてセルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が5以下の脂肪酸を意味し、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースピバレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの好ましいものとして挙げられる。炭素原子数が6以上の脂肪酸で置換されたセルロースエステルでは、溶融製膜性は良好であるものの、得られるセルロースエステルフィルムの力学特性が低く、実質的に光学フィルムとして用いることが難しいためである。力学特性と溶融製膜性の双方を両立させるために、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等のように混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
【0045】
上記セルロースエステルの中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましく用いられる。
【0046】
次に、本発明に用いられるセルロースエステルのアシル基の置換度について説明する。
【0047】
セルロースには、1グルコース単位の2位、3位、6位に1個ずつ、計3個の水酸基があり、総置換度とは、平均して1グルコース単位にいくつのアシル基が結合しているかを示す数値である。従って、最大の置換度は3.0である。これらアシル基は、グルコース単位の2位、3位、6位に平均的に置換していてもよいし、分布をもって置換していてもよい。
【0048】
セルロースエステルとして好ましいセルロースの低級脂肪酸エステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)、(II)及び(III)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロース樹脂である。なお、アセチル基の置換度と他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
【0049】
式(I) 2.4≦X+Y≦2.9
式(II) 0≦X≦2.4
式(III) 0.5≦Y≦2.9
この内、特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.2≦X≦2.1であり、0.6≦Y≦1.4であることが好ましい。アシル基の置換度の異なるセルロースエステルをブレンドして、セルロースエステルフィルム全体として上記範囲に入っていてもよい。上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
【0050】
上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
【0051】
本発明に用いられるセルロースエステルは、50000〜150000の数平均分子量(Mn)を有することが好ましく、55000〜120000の数平均分子量を有することが更に好ましく、60000〜100000の数平均分子量を有することが最も好ましい。
【0052】
更に、本発明に用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比が1.3〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.5〜5.0であり、更に好ましくは1.7〜4.0であり、更に好ましくは2.0〜3.5のセルロースエステルが好ましく用いられる。
【0053】
なお、Mn及びMw/Mnは下記の要領で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより算出した。
【0054】
測定条件は以下の通りである。
【0055】
溶媒 :テトヒドロフラン
装置 :HLC−8220(東ソー(株)製)
カラム :TSKgel SuperHM−M(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
試料濃度 :0.1質量%
注入量 :10μl
流量 :0.6ml/min
校正曲線 :標準ポリスチレン:PS−1(Polymer Laboratories社製)Mw=2,560,000〜580までの9サンプルによる校正曲線を使用した。
【0056】
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよい。木材パルプには針葉樹と広葉樹があるが、針葉樹の方がより好ましい。しかし、製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターがより好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、或いは単独で使用することができる。
【0057】
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることができる。
【0058】
セルロースエステルは、例えば、原料セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸及び/または無水酪酸を用いて常法によりアセチル基、プロピオニル基及び/またはブチル基を上記の範囲内に置換することで得られる。このようなセルロースエステルの合成方法は、特に限定はないが、例えば、特開平10−45804号或いは特表平6−501040号に記載の方法を参考にして合成することができる。
【0059】
本発明に用いられるセルロースエステルのアルカリ土類金属含有量は、1〜50ppmの範囲であることが好ましい。50ppmを超えるとリップ付着汚れが増加或いは熱延伸時や熱延伸後でのスリッティング部で破断しやすくなる。1ppm未満でも破断しやすくなるがその理由はよく分かっていない。1ppm未満にするには洗浄工程の負担が大きくなり過ぎるためその点でも好ましくない。更に1〜30ppmの範囲が好ましい。ここでいうアルカリ土類金属とはCa、Mgの総含有量のことであり、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて測定することができる。
【0060】
本発明に用いられるセルロースエステル中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜45ppmの範囲であることが好ましい。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸含有量が45ppmを超えると熱溶融時のダイリップ部の付着物が増加するため好ましくない。また、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際に破断しやすくなるため好ましくない。少ない方が好ましいが、0.1未満とするにはセルロースエステルの洗浄工程の負担が大きくなり過ぎるため好ましくないだけでなく、逆に破断しやすくなることがあり好ましくない。これは洗浄回数が増えることが樹脂に影響を与えているのかもしれないがよく分かっていない。更に1〜30ppmの範囲が好ましい。残留硫酸含有量は、ASTM−D817−96に規定の方法により測定することができる。
【0061】
本発明に用いられるセルロースエステル中の遊離酸含有量は、1〜500ppmであることが好ましい。500ppmを超えるとダイリップ部の付着物が増加し、また破断しやすくなる。洗浄で1ppm未満にすることは困難である。更に1〜100ppmの範囲であることが好ましく、更に破断しにくくなる。特に1〜70ppmの範囲が好ましい。遊離酸含有量はASTM−D817−96に規定の方法により測定することができる。
【0062】
合成したセルロースエステルの洗浄を、溶液流延法に用いられる場合に比べて、更に十分に行うことによって、残留酸含有量を上記の範囲とすることができ、溶融流延法によってフィルムを製造する際に、リップ部への付着が軽減され、平面性に優れるフィルムが得られ、寸法変化、機械強度、透明性、耐透湿性、後述するRt値、Ro値が良好なフィルムを得ることができる。また、セルロースエステルの洗浄は、水に加えて、メタノール、エタノールのような貧溶媒、或いは結果として貧溶媒であれば貧溶媒と良溶媒の混合溶媒を用いることができ、残留酸以外の無機物、低分子の有機不純物を除去することができる。更に、セルロースエステルの洗浄は、ヒンダードアミン、亜リン酸エステルといった酸化防止剤の存在下で行うことが好ましく、セルロースエステルの耐熱性、製膜安定性が向上する。
【0063】
また、セルロースエステルの耐熱性、機械物性、光学物性等を向上させるため、セルロースエステルの良溶媒に溶解後、貧溶媒中に再沈殿させ、セルロースエステルの低分子量成分、その他不純物を除去することができる。この時、前述のセルロースエステルの洗浄同様に、酸化防止剤の存在下で行うことが好ましい。
【0064】
更に、セルロースエステルの再沈殿処理の後、別のポリマー或いは低分子化合物を添加してもよい。
【0065】
本発明において、異物除去のために濾過をすることが好ましい。輝点異物を溶融濾過によって除去する場合、セルロースエステルを単独で溶融させたものを濾過するよりも可塑剤、劣化防止剤、酸化防止剤等を添加混合したセルロースエステル組成物を濾過することが異物の除去効率が高く好ましい。もちろん、セルロースエステルの合成の際に溶媒に溶解させて濾過により低減させてもよい。紫外線吸収剤、その他の添加物も適宜混合したものを濾過することができる。濾過はセルロースエステルを含む溶融物の粘度が10000Pa・s以下で濾過されることが好ましく、5000Pa・s以下がより好ましく、1000Pa・s以下が更に好ましく、500Pa・s以下であることがさらにより好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂等の弗素樹脂等の従来公知のものが好ましく用いられるが、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下のものが好ましく用いられ、30μm以下のものがより好ましく、10μm以下のものがさらにより好ましく、5μm以下のものが更に好ましく用いられる。これらは適宜組み合わせて使用することもできる。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることができるが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましく用いられる。
【0066】
別の実施態様では、原料のセルロースエステルは少なくとも一度溶媒に溶解させた後、溶媒を乾燥させたセルロースエステルを用いてもよい。その際には可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、酸化防止剤及びマット剤の少なくとも1つ以上と共に溶媒に溶解させた後、乾燥させたセルロースエステルを用いる。溶媒としては、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等の溶液流延法で用いられる良溶媒を用いることができ、同時にメタノール、エタノール、ブタノール等の貧溶媒を用いてもよい。溶解の過程で−20℃以下に冷却したり、80℃以上に加熱したりしてもよい。このようなセルロースエステルを用いると、溶融状態にした時の各添加物を均一にしやすく、光学特性を均一にできることがある。
【0067】
本発明の光学フィルムはセルロースエステル以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにした時の透過率が80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上であることが好ましい。
【0068】
(可塑剤)
本発明の光学フィルムには、可塑剤を添加することが好ましい。
【0069】
一般的に、可塑剤として知られる化合物を添加することは機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等のフィルムの改質の観点において好ましい。また、溶融流延法においては、用いるセルロースエステル単独のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させる目的、または同じ加熱温度においてセルロースエステルよりも可塑剤を含むフィルム構成材料の粘度が低下できる目的を含んでいる。
【0070】
本発明において、多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤はセルロースエステルと親和性が高く、より好ましい。本発明において好ましく用いられるエステル系可塑剤の原料である多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、グレセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトール等を挙げることができる。特に、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0071】
多価アルコールエステル系の一つであるエチレングリコールエステル系の可塑剤としては、具体的には、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等のエチレングリコールアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジシクロプロピルカルボキシレート、エチレングリコールジシクロヘキルカルボキシレート等のエチレングリコールシクロアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジ4−メチルベンゾエート等のエチレングリコールアリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更にエチレングリコール部も置換されていてもよく、エチレングリコールエステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0072】
多価アルコールエステル系の一つであるグリセリンエステル系の可塑剤としては、具体的にはトリアセチン、トリブチリン、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンオレートプロピオネート等のグリセリンアルキルエステル、グリセリントリシクロプロピルカルボキシレート、グリセリントリシクロヘキシルカルボキシレート等のグリセリンシクロアルキルエステル、グリセリントリベンゾエート、グリセリン4−メチルベンゾエート等のグリセリンアリールエステル、ジグリセリンテトラアセチレート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンテトララウレート、等のジグリセリンアルキルエステル、ジグリセリンテトラシクロブチルカルボキシレート、ジグリセリンテトラシクロペンチルカルボキシレート等のジグリセリンシクロアルキルエステル、ジグリセリンテトラベンゾエート、ジグリセリン3−メチルベンゾエート等のジグリセリンアリールエステル等が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更にグリセリン、ジグリセリン部も置換されていてもよく、グリセリンエステル、ジグリセリンエステルの部分構造がポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0073】
その他の多価アルコールエステル系の可塑剤としては、具体的には特開2003−12823号公報の段落30〜33記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
【0074】
これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更に多価アルコール部も置換されていてもよく、多価アルコールの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0075】
上記多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤の中では、アルキル多価アルコールアリールエステルが好ましく、具体的には上記のエチレングリコールジベンゾエート、グリセリントリベンゾエート、ジグリセリンテトラベンゾエート、特開2003−12823号公報の段落31記載の例示化合物16、特開2006−188663号公報の段落64記載の例示化合物48が挙げられる。
【0076】
多価カルボン酸エステル系の一つであるジカルボン酸エステル系の可塑剤としては、具体的には、ジドデシルマロネート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ−4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。
【0077】
これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0078】
多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤の添加量は、セルロースエステル100質量部に対して、通常0.1〜50質量部、好ましくは1〜30質量部、更に好ましくは3〜15質量部である。
【0079】
その他の多価カルボン酸エステル系の可塑剤としては、具体的にはトリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また1置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造がポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0080】
上記多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤の中では、アルキルジカルボン酸アルキルエステルが好ましく、具体的には上記のジオクチルアジペートが挙げられる。
【0081】
本発明に用いられるその他の可塑剤としては、燐酸エステル系可塑剤、炭水化物エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤等が挙げられる。
【0082】
燐酸エステル系の可塑剤としては、具体的には、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等の燐酸アルキルエステル、トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等の燐酸シクロアルキルエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート等の燐酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同士が共有結合で結合していてもよい。
【0083】
また、エチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等の燐酸エステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同士が共有結合で結合していてもよい。
【0084】
更に燐酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。上記化合物の中では、燐酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
【0085】
ポリマー可塑剤としては、具体的には、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの共重合体、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの共重合体、等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。数平均分子量は1000〜500000程度が好ましく、特に好ましくは、5000〜200000である。1000以下では揮発性に問題が生じ、500000を超えると可塑化能力が低下し、セルロースエステルフィルムの機械的性質に悪影響を及ぼす。
【0086】
これらポリマー可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。また、上記ポリマーを2種以上併用して用いてもよい。
【0087】
また、本発明においては、従来公知の炭水化物エステル系可塑剤も本発明の効果を損なわない範囲で併せて用いることができる。
【0088】
可塑剤としては、多価アルコールエステル系、アクリル系ポリマーが特に好ましい。
【0089】
可塑剤の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、より好ましくは1〜30質量部、更に好ましくは3〜15質量部である。
【0090】
(酸化防止剤)
本発明の光学フィルムにおいて、溶融製膜時の高温環境下では、光学フィルム成形材料の熱、及び酸素による分解が促進されるため、酸化防止剤を含有することが好ましい。
【0091】
本発明において有用な酸化防止剤としては、光学フィルム成形材料の劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でもホスファイト(phosphite)、ホスホナイト(phosphonite)、またはホスフィナイト(phosphinite)からなる群より選ばれる少なくとも1種のリン系化合物を用いることが好ましい。
【0092】
また、フェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、イオウ系化合物、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー、ベンゾフラノン系化合物、酸補足剤等を用いることも好ましく、これらの中でも、特にフェノール系化合物、耐熱加工安定剤、が好ましい。
【0093】
これらの化合物を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、熱や酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
(リン系化合物)
本発明において用いられるホスファイト(phosphite)、ホスホナイト(phosphonite)、またはホスフィナイト(phosphinite)からなる群より選ばれる少なくとも1種のリン系化合物について説明する。これらの化合物は、例えば、特開2002−138188号、特開2005−344044号段落番号0022〜0027、特開2004−182979号段落番号0023〜0039、特開平10−306175号、特開平1−254744号、特開平2−270892号、特開平5−202078号、特開平5−178870号、特表2004−504435号、特表2004−530759号、および特願2005−353229号の明細書中に記載されている。
【0095】
好ましいリン系化合物としては、一般式(I)から(V)のホスファイト、一般式(VI)から(XII)のホスホナイト、一般式(XIII)から(XIV)のホスフィナイトが挙げられる。
【0096】
【化6】

【0097】
【化7】

【0098】
それぞれの基は互いに独立に、Rは、C1〜C24のアルキル(直鎖もしくは分岐、ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C5〜C30のシクロアルキル(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C1〜C30のアルキルアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール(C1〜C18のアルキル(直鎖もしくは分岐)、C5〜C12のシクロアルキルもしくはC1〜C18のアルコキシ基で置換された)であり、Rは、H、C1〜C24のアルキル(直鎖もしくは分岐、ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C5〜C30のシクロアルキル(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C1〜C30のアルキルアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール(C1〜C18のアルキル(直鎖もしくは分岐)、C5〜C12のシクロアルキルもしくはC1〜C18のアルコキシ基で置換された)であり、Rは、C1〜C30のアルキレンタイプのn価の基(直鎖もしくは分岐、ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C1〜C30のアルキリデン(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C5〜C12のシクロアルキレンもしくはC6〜C24のアリーレン(C1〜C18のアルキル(直鎖もしくは分岐)、C5〜C12のシクロアルキルもしくはC1〜C18のアルコキシで置換された)であり、Rは、C1〜C24のアルキル(直鎖もしくは分岐、ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C5〜C30のシクロアルキル(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C1〜C30のアルキルアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール(C1〜C18のアルキル(直鎖もしくは分岐)、C5〜C12のシクロアルキルもしくはC1〜C18のアルコキシ基で置換された)であり、Rは、C1〜C24−アルキル(直鎖もしくは分岐、ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C5〜C30のシクロアルキル(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、C1〜C30のアルキルアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール、C6〜C24のアリールもしくはヘテロアリール(C1〜C18のアルキル(直鎖もしくは分岐)、C5〜C12のシクロアルキルもしくはC1〜C18のアルコキシ基で置換された)であり、Aは、直接結合、C1〜C30のアルキリデン(ヘテロ原子、N、O、P、Sが含まれてもよい)、>NH、>NR、−S−、>S(O)、>S(O)、−O−であり、Xは、Cl、Br、Fであり、kは0から4であり、nは1から4であり、mは0から5であり、pは0もしくは1である。
【0099】
このような化合物のうち特に好ましい化合物として以下の化合物が挙げられる。またこれらの化合物は2種以上併用して使用してもよい。リン系化合物の添加量は、セルロースエステル100質量部に対して、通常0.01〜1質量部、好ましくは0.05〜0.5質量部、更に好ましくは0.1〜0.3質量部である。
【0100】
具体的な好ましい化合物例としては下記の化合物が挙げられる。
【0101】
【化8】

【0102】
【化9】

【0103】
【化10】

【0104】
【化11】

【0105】
【化12】

【0106】
【化13】

【0107】
【化14】

【0108】
【化15】

【0109】
【化16】

【0110】
【化17】

【0111】
【化18】

【0112】
【化19】

【0113】
一般式(1)で表される化合物の添加量をa(モル)、ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物または、ホスフィナイト系化合物から選ばれるリン系化合物の合計の添加量をb(モル)としたときに、a/bの比率は0.005≦a/b≦0.5であることが好ましく、0.05≦a/b≦0.3がより好ましく、0.1≦a/b≦0.2であることが最も好ましい。
【0114】
a/bが0.5以下であると、加工安定性が優れ、延伸後のヘイズ値を十分に抑えることができる。また、0.005以上であると、加工安定性、輝点異物の改良効果が遺憾なく発揮される。
【0115】
(フェノール系化合物)
フェノール系化合物は既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されており、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。このような化合物のうち好ましい化合物として、下記一般式(a)で表される化合物が好ましい。
【0116】
【化20】

【0117】
式中、R11〜R16は置換基を表す。置換基としては、水素原子、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、シアノ基、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基等)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、ウレイド基(例えば3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基等)、スルファモイルアミノ基(ジメチルスルファモイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えばエチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アシル基(例えばアセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基等)、アミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミンオキシド基(例えばピリジン−オキシド基)、イミド基(例えばフタルイミド基等)、ジスルフィド基(例えばベンゼンジスルフィド基、ベンゾチアゾリル−2−ジスルフィド基等)、カルボキシル基、スルホ基、ヘテロ環基(例えば、ピロール基、ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基等)等が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
【0118】
また、R11は水素原子、R12、R16はt−ブチル基であるフェノール系化合物が好ましい。フェノール系化合物の具体例としては、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス−[エチレン−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリスリトール−テトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのフェノール化合物は、例えば、チバ・ジャパン(株)から、“IRGANOX 1076”及び“IRGANOX 1010”という商品名で市販されている。
【0119】
(ヒンダードアミン系化合物)
本発明において有用な酸化防止剤の一つとして、下記一般式(b)で表されるヒンダードアミン系化合物が好ましい。
【0120】
【化21】

【0121】
式中、R22〜R28は置換基を表す。置換基としては前記一般式(a)のR11〜R16で表される置換基と同義である。R24は水素原子、メチル基、R27は水素原子、R22、R23、R25、R26はメチル基が好ましい。
【0122】
ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
【0123】
また、高分子タイプの化合物でもよく、具体例としては、N,N′,N″,N″′−テトラキス−[4,6−ビス−〔ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ〕−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ[(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕]等の、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物等の、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物等で、数平均分子量(Mn)が2,000〜5,000のものが好ましい。
【0125】
上記タイプのヒンダードフェノール化合物は、例えば、チバ・ジャパン(株)から、“TINUVIN 144”及び“TINUVIN 770”、旭電化工業株式会社から“ADK STAB LA−52”という商品名で市販されている。
【0126】
(イオウ系化合物)
本発明において有用な酸化防止剤の一つとして、下記一般式(c)で表されるイオウ系化合物が好ましい。
【0127】
一般式(c)
33−S−R34
式中、R33及びR34は置換基を表す。置換基としては前記一般式(a)のR11〜R16で表される置換基と同義である。
【0128】
イオウ系化合物の具体例としては、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0129】
上記タイプのイオウ系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“Sumilizer TPL−R”及び“Sumilizer TP−D”という商品名で市販されている。
【0130】
(耐熱加工安定剤)
耐熱加工安定剤としては、下記一般式(d)で表される、アクリレート基またはメタクリレート基と、フェノール性水酸基とを同一分子内に有する化合物が好ましい。
【0131】
【化22】

【0132】
一般式(d)において、R〜Rは、互いに同一または相異なり、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基である。
【0133】
耐熱加工安定剤の具体的化合物例としては、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。上記タイプの耐熱加工安定剤は、住友化学株式会社から、“Sumilizer GM”及び“Sumilizer GS”という商品名で市販されている。
【0134】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
【0135】
本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物が好ましい。
【0136】
また、特開平10−182621号、同8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号、特開2003−113317号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
【0137】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0138】
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)900、チヌビン(TINUVIN)928、チヌビン(TINUVIN)360(いずれもチバ・ジャパン(株)製)、LA31((株)ADEKA製)、RUVA−100(大塚化学製)が挙げられる。
【0139】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0140】
本発明においては、紫外線吸収剤は樹脂に対して0.1〜5質量%添加することが好ましく、更に0.2〜3質量%添加することが好ましく、更に0.5〜2質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
【0141】
またベンゾトリアゾール構造やトリアジン構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、可塑剤、酸化防止剤、酸掃去剤等の他の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0142】
従来公知の紫外線吸収性ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、RUVA−93(大塚化学製)を単独重合させたポリマー及びRUVA−93と他のモノマーとを共重合させたポリマー等が挙げられる。
【0143】
具体的には、RUVA−93とメチルメタクリレートを3:7の比(質量比)で共重合させたPUVA−30M、5:5の比(質量比)で共重合させたPUVA−50M等が挙げられる。更に、特開2003−113317号公報に記載のポリマー等が挙げられる。
【0144】
(マット剤)
また、本発明の光学フィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては無機化合物として、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
【0145】
二酸化珪素微粒子の一次粒子平均径としては、5〜16nmが好ましく、5〜12nmがより好ましい。一次粒子の平均径が小さい方がヘイズが低く好ましい。また、見かけ比重は90〜200g/Lが好ましく、100〜200g/Lが更に好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0146】
マット剤の添加量は1m当たり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.10〜0.18gが特に好ましい。
【0147】
二酸化珪素微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製のAEROSIL R972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600、NAX50等、日本触媒(株)製のKE−P10、KE−P30、KE−P100、KE−P150等が挙げられ、この中でも、AEROSIL200V、R972Vが一次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/L以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。また、NAX50、KE−P30、KE−P100は、少量で摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0148】
また、酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。また、ポリマーの例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0149】
これら微粒子は、通常平均粒径が0.01〜1.0μmの二次粒子を形成させることが好ましく、0.1〜0.8μmが更に好ましく、0.2〜0.5μmが最も好ましい。これらの微粒子はフィルム中では、一次粒子の凝集体として存在しフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を形成させる。これらの微粒子の含有量は、セルロースエステルフィルムに対して0.005〜0.3質量%が好ましく、0.05〜0.2質量%が好ましく、0.1〜0.2質量%が最も好ましい。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。
【0150】
(溶融流延法)
従来の有機溶媒を多量に使用する溶液流延法に比較して、溶融流延法はフィルム製造時の有機溶媒使用量を、大幅に少なくすることができ、環境適性が大幅に向上したフィルムが得られる。
【0151】
本発明における溶融流延とは、実質的に溶媒を用いずにセルロースエステルが流動性を示す温度まで加熱溶融し、これを用いて製膜する方法であり、例えば流動性のセルロースエステルをダイスから押し出して製膜する方法である。
【0152】
なお溶融セルロースエステルを調製する過程の一部で溶媒を使用してもよいが、フィルム状に成形を行う溶融製膜プロセスにおいては実質的に溶媒を用いずに成形加工する。
【0153】
溶融流延による成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度等に優れる光学フィルムを得るためには、溶融押し出し法が優れている。以下、溶融押し出し法を例にとり、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。
【0154】
図1は、本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の1つの実施形態の一例を示す概略フローシート図である。
【0155】
図2は、図1の製造装置の要部拡大の一例を示すフローシートである。
【0156】
光学フィルムの製造方法は、セルロース樹脂等の光学フィルム材料を混合した後、押出し機1を用いて、流延ダイ4から第1冷却ロール5上に溶融押し出し、第1冷却ロール5に外接させるとともに、更に、第2冷却ロール7、第3冷却ロール8の合計3本の冷却ロールに順に外接させて、冷却固化して光学フィルム10とする。
【0157】
次いで、剥離ロール9によって剥離した光学フィルム10を、次いで延伸装置12により光学フィルムの両端部を把持して幅方向に延伸した後、巻き取り機16により巻き取る。
【0158】
また、平面性を矯正するために溶融フィルムを第1冷却ロール5表面に挟圧する6が設けられている。このタッチロール6は表面が弾性を有し、第1冷却ロール5との間でニップを形成している。タッチロール6についての詳細は後述する。
【0159】
光学フィルムの製造方法において、溶融押し出しの条件は、他のポリエステル等の熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして行うことができる。材料は予め乾燥させておくことが好ましい。真空または減圧乾燥機や除湿熱風乾燥機等で水分を1000ppm以下、好ましくは200ppm以下に乾燥させることが望ましい。
【0160】
例えば、熱風や真空または減圧下で乾燥したセルロースエステル系樹脂を押出し機1を用いて、押し出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルター2等で濾過し、異物を除去する。
【0161】
供給ホッパー(図示略)から押出し機1へ導入する際は、真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして、酸化分解等を防止することが好ましい。
【0162】
可塑剤等の添加剤を予め混合しない場合は、それらを押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー等の混合装置を用いることが好ましい。
【0163】
本発明において、セルロース樹脂と、その他必要により添加される安定化剤等の添加剤は、溶融する前に混合しておくことが好ましく、セルロース樹脂と添加剤を加熱前に混合することが更に好ましい。混合は、混合機等により行ってもよく、また、前記したようにセルロース樹脂調製過程において混合してもよい。混合機を使用する場合は、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー等一般的な混合機を用いることができる。
【0164】
上記のように光学フィルム構成材料を混合した後に、その混合物を押出し機1を用いて直接溶融して製膜するようにしてもよいが、一旦、光学フィルム構成材料をペレット化した後、該ペレットを押出し機1で溶融して製膜するようにしてもよい。
【0165】
また、光学フィルム構成材料が、融点の異なる複数の材料を含む場合には、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦、いわゆるおこし状の半溶融物を作製し、半溶融物を押出し機1に投入して製膜することも可能である。
【0166】
光学フィルム構成材料に熱分解しやすい材料が含まれる場合には、溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。
【0167】
押出し機1は、市場で入手可能な種々の押出し機を使用可能であるが、溶融混練押出し機が好ましく、単軸押出し機でも2軸押出し機でもよい。
【0168】
光学フィルム構成材料からペレットを作製せずに、直接製膜を行う場合、適当な混練度が必要であるため2軸押出し機を用いることが好ましいが、単軸押出し機でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト、ダルメージ等の混練型のスクリューに変更することにより、適度の混練が得られるので、使用可能である。光学フィルム構成材料として、一旦、ペレットやおこし状の半溶融物を使用する場合は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも使用可能である。
【0169】
押出し機1内及び押し出した後の冷却工程は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。
【0170】
押出し機1内の光学フィルム構成材料の溶融温度は、光学フィルム構成材料の粘度や吐出量、製造するシートの厚み等によって好ましい条件が異なるが、150〜300℃が好ましく、180〜280℃がより好ましく、200〜260℃が更に好ましい。押し出し時の溶融粘度は、1〜10000Pa・s、好ましくは10〜1000Pa・sである。また、押出し機1内での光学フィルム構成材料の滞留時間は短い方が好ましく、5分以内、好ましくは3分以内、より好ましくは2分以内である。
【0171】
滞留時間は、押出し機1の種類、押し出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
【0172】
押出し機1のスクリューの形状や回転数等は、光学フィルム構成材料の粘度や吐出量等により適宜選択される。本発明において押出し機1でのせん断速度は、1/秒〜10000/秒、好ましくは5/秒〜1000/秒、より好ましくは10/秒〜100/秒である。
【0173】
本発明に使用できる押出し機1としては、一般的にプラスチック成形機として入手可能である。
【0174】
押出し機1から押し出された光学フィルム構成材料は、流延ダイ4に送られ、流延ダイ4のスリットから光学フィルム状に押し出される。流延ダイ4はシートや光学フィルムを製造するために用いられるものであれば特に限定はされない。
【0175】
流延ダイ4の材質としては、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)等を溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以降の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨等の加工を施したもの等が挙げられる。流延ダイ4のリップ部の好ましい材質は、流延ダイ4と同様である。またリップ部の表面精度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
【0176】
この流延ダイ4のスリットは、そのギャップが調整可能なように構成されている。
【0177】
これを図3(a)は流延ダイの要部の一例を示す外観図、図3(b)は流延ダイの要部の一例を示す断面図である。
【0178】
流延ダイ4のスリット32を形成する一対のリップのうち、一方は剛性の低い変形しやすいフレキシブルリップ33であり、他方は固定リップ34である。
【0179】
そして、多数のヒートボルト35が流延ダイ4の幅方向即ちスリット32の長さ方向に一定ピッチで配列されている。各ヒートボルト5には、埋め込み電気ヒーター37と冷却媒体通路とを具えたブロック36が設けられ、各ヒートボルト35が各ブロック36を縦に貫通している。
【0180】
ヒートボルト35の基部はダイ本体31に固定され、先端はフレキシブルリップ33の外面に当接している。そしてブロック36を常時空冷しながら、埋め込み電気ヒーター37の入力を増減してブロック36の温度を上下させ、これによりヒートボルト35を熱伸縮させて、フレキシブルリップ33を変位させて光学フィルムの厚さを調整する。
【0181】
ダイ後流の所要箇所に厚さ計を設け、これによって検出されたウェブ厚さ情報を制御装置にフィードバックし、この厚さ情報を制御装置で設定厚み情報と比較し、同装置から来る補正制御量の信号によってヒートボルトの発熱体の電力またはオン率を制御するようにすることもできる。
【0182】
ヒートボルトは、好ましくは、長さ20〜40cm、直径7〜14mmを有し、複数、例えば数十本のヒートボルトが、好ましくはピッチ20〜40mmで配列されている。
【0183】
ヒートボルトの代わりに、手動で軸方向に前後動させることによりスリットギャップを調節するボルトを主体とするギャップ調節部材を設けてもよい。
【0184】
ギャップ調節部材によって調節されたスリットギャップは、通常200〜1000μm、好ましくは300〜800μm、より好ましくは400〜600μmである。
【0185】
第1〜第3冷却ロールは、肉厚が20〜30mm程度のシームレスな鋼管製で、表面が鏡面に仕上げられている。その内部には、冷却液を流す配管が配置されており、配管を流れる冷却液によってロール上の光学フィルムから熱を吸収できるように構成されている。
【0186】
一方、第1冷却ロール5に当接するタッチロール6は、表面が弾性を有し、第1冷却ロール5への押圧力によって第1冷却ロール5の表面に沿って変形し、第1ロール5との間にニップを形成する。タッチロール6は挟圧回転体ともいう。タッチロール6としては、登録特許3194904号、登録特許3422798号、特開2002−36332号、特開2002−36333号などで開示されているタッチロールを好ましく用いることができる。これらは市販されているものを用いることもできる。以下にこれらについて、更に詳細に説明する。
【0187】
図4は挟圧回転体の一例を示す断面図である。(タッチロール6の第1の例(以下、タッチロールA)の概略断面)を示す。図に示すように、タッチロールAは、可撓性の金属スリーブ41の内部に弾性ローラ42を配したものである。
【0188】
金属スリーブ41は厚さ0.3mmのステンレス製であり、可撓性を有する。金属スリーブ41が薄過ぎると強度が不足し、逆に厚過ぎると弾性が不足する。
【0189】
これらのことから、金属スリーブ41の厚さとしては、0.1〜1.5mmが好ましい。
【0190】
弾性ローラ42は、軸受を介して回転自在な金属製の内筒43の表面にゴム44を設けてロール状としたものである。
【0191】
そして、タッチロールAが第1冷却ロール5に向けて押圧されると、弾性ローラ42が金属スリーブ41を第1冷却ロール5に押しつけ、金属スリープ41及び弾性ローラ42は第1冷却ロール5の形状になじんだ形状に対応しつつ変形し、第1冷却ロールとの間にニップを形成する。金属スリーブ41の内部で弾性ローラ42との間に形成される空間には、冷却水45が流される。
【0192】
図5は挟圧回転体の第2の例(以下、タッチロールB)を示す回転軸に垂直な平面での断面図である。
【0193】
図6は挟圧回転体の第2の例(タッチロールB)の回転軸を含む平面の一例を示す断面図である。
【0194】
図5、図6においてタッチロールBは、可撓性を有する、シームレスなステンレス鋼管製(厚さ4mm)の外筒51と、この外筒51の内側に同一軸心状に配置された高剛性の金属内筒52とから概略構成されている。
【0195】
外筒51と内筒52との間の空間53には、冷却液54が流される。詳しくは、タッチロールBは、両端の回転軸55a、55bに外筒支持フランジ56a、56bが取付けられ、これら両外筒支持フランジ56a、56bの外周部間に薄肉金属外筒51が取付けられている。
【0196】
また、一方の回転軸55aの軸心部に形成されて流体戻り通路57を形成する流体排出孔58内に、流体供給管59が同一軸心状に配設され、この流体供給管59が薄肉金属外筒51内の軸心部に配置された流体軸筒60に接続固定されている。
【0197】
この流体軸筒60の両端部に内筒支持フランジ61a、61bがそれぞれ取付けられ、これら内筒支持フランジ61a、61bの外周部間から他端側外筒支持フランジ56bにわたって約15〜20mm程度の肉厚を有する金属内筒52が取付けられている。
【0198】
そしてこの金属内筒52と薄肉金属外筒51との間に、例えば10mm程度の冷却液の流送空間53が形成され、また金属内筒52に両端部近傍には、流送空間53と内筒支持フランジ61a、61b外側の中間通路62a、62bとを連通する流出口52a及び流入口52bがそれぞれ形成されている。
【0199】
また、外筒51は、ゴム弾性に近い柔軟性と可撓性、復元性をもたせるために、弾性力学の薄肉円筒理論が適用できる範囲内で薄肉化が図られている。
【0200】
この薄肉円筒理論で評価される可撓性は、肉厚t/ロール半径rで表されており、t/rが小さいほど可撓性が高まる。
【0201】
このタッチロールBではt/r≦0.03の場合に可撓性が最適の条件となる。
【0202】
通常、一般的に使用されているタッチロールは、ロール径R=200〜500mm(ロール半径r=R/2)、ロール有効幅L=500〜1600mmで、r/L<1で横長の形状である。
【0203】
そして図6に示すように、例えばロール径R=300mm、ロール有効幅L=1200mmの場合、肉厚tの適正範囲は150×0.03=4.5mm以下であるが、溶融シート幅を1300mmに対して平均線圧を98N/cmで挟圧する場合、同一形状のゴムロールと比較して、外筒51の肉厚を3mmとすることで相当ばね定数も等しく、外筒51と冷却ロールとのニップのロール回転方向のニップ幅kも約9mmで、このゴムロールのニップ幅約12mmとほぼ近い値を示し、同じような条件下で挟圧できることが分かる。
【0204】
なお、このニップ幅kにおけるたわみ量は0.05〜0.1mm程度である。
【0205】
ここで、t/r≦0.03としたが、一般的なロール径R=200〜500mmの場合では、特に2mm≦t≦5mmの範囲とすると、可撓性も十分に得られ、また機械加工による薄肉化も容易に実施でき、極めて実用的な範囲となる。肉厚が2mm以下では加工時の弾性変形で高精度な加工ができない。
【0206】
この2mm≦t≦5mmの換算値は、一般的なロール径に対して0.008≦t/r≦0.05となるが、実用にあたってはt/r≦0.03の条件下でロール径に比例して肉厚も大きくするとよい。
【0207】
例えばロール径:R=200ではt=2〜3mm、ロール径:R=500ではt=4〜5mmの範囲で選択する。
【0208】
このタッチロールA、Bは付勢手段により第1冷却ロールに向けて付勢される。その付勢手段の付勢力をF、ニップにおける光学フィルムの、第1冷却ロール5の回転軸に沿った方向の幅Wを除した値F/W(線圧)は、9.8〜147N/cmに設定される。
【0209】
本発明において、タッチロールA、Bと第1冷却ロール5との間にニップが形成され、当該ニップを光学フィルムが通過する間に平面性を矯正することが好ましい。従って、タッチロールが剛体で構成され、第1冷却ロールとの間にニップが形成されない場合と比べて、小さい線圧で長時間かけて光学フィルムを挟圧するので、平面性をより確実に矯正することができる。
【0210】
即ち、線圧が9.8N/cmよりも小さいと、ダイラインを十分に解消することができなくなる。逆に、線圧が147N/cmよりも大きいと、光学フィルムがニップを通過しにくくなり、光学フィルムの厚さにかえってムラができてしまう。
【0211】
また、タッチロールA、Bの表面を金属で構成することにより、タッチロールの表面がゴムである場合よりもタッチロールA、Bの表面を平滑にすることができるので、平滑性の高い光学フィルムを得ることができる。なお、弾性ローラ42の弾性体44の材質としては、エチレンプロピレンゴム、ネオプレンゴム、シリコンゴム等を用いることができる。
【0212】
さて、タッチロール6によってダイラインを良好に解消するためには、タッチロール6が光学フィルムを挟圧するときの光学フィルムの粘度が適切な範囲であることが重要となる。
【0213】
また、セルロースエステルは温度による粘度の変化が比較的大きいことが知られている。
【0214】
従って、タッチロール6が光学フィルムを挟圧するときの粘度を適切な範囲に設定するためには、タッチロール6がセルロースフィルムを挟圧するときの光学フィルムの温度を適切な範囲に設定することが重要となる。
【0215】
光学フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、光学フィルムがタッチロール6に挟圧される直前の光学フィルムの温度Tを、Tg<T<Tg+110℃を満たすように設定することが好ましい。
【0216】
即ち、タッチロール6に挟圧される直前の光学フィルムの温度Tが上記の範囲にすると、光学フィルムを挟圧するときの光学フィルムの粘度を適切な範囲に設定することができ、ダイラインの矯正が可能となり、また、光学フィルム表面とロールが均一に接着し、ダイラインの矯正が可能となる。
【0217】
好ましくはTg+10℃<T<Tg+90℃、更に好ましくはTg+20℃<T<Tg+70℃である。
【0218】
タッチロール6が光学フィルムを挟圧するときの光学フィルムの温度を適切な範囲に設定するには、流延ダイ4から押し出された溶融物が第1冷却ロール5に接触する位置から第1冷却ロール5とタッチロール6とのニップの、第1冷却ロール5の回転方向に沿った長さLを調整すればよい。
【0219】
本発明において、第1ロール5、第2ロール6に好ましい材質は、炭素鋼、ステンレス鋼、樹脂、等が挙げられる。また、表面精度は高くすることが好ましく表面粗さとして0.3S以下、より好ましくは0.01S以下とする。
【0220】
本発明においては、流延ダイ4の開口部(リップ)から第1ロール5までの部分を70kPa以下に減圧させることにより、上記、ダイラインの矯正効果がより大きく発現する。好ましくは減圧は50〜70kPaである。流延ダイ4の開口部(リップ)から第1ロール5までの部分の圧力を70kPa以下に保つ方法としては、特に制限はないが、流延ダイ4からロール周辺を耐圧部材で覆い、減圧する等の方法がある。
【0221】
このとき、吸引装置は、装置自体が昇華物の付着場所にならないようヒーターで加熱する等の処置を施すことが好ましい。本発明では、吸引圧が小さ過ぎると昇華物を効果的に吸引できないため、適当な吸引圧とする必要がある。
【0222】
本発明において、Tダイ4から溶融状態のフィルム状のセルロースエステルを、第1ロール(第1冷却ロール)5、第2冷却ロール7、及び第3冷却ロール8に順次密着させて搬送しながら冷却固化させ、未延伸の光学フィルム10を得る。
【0223】
図1に示す本発明の実施形態の一例では、第3冷却ロール8から剥離ロール9によって剥離した冷却固化された未延伸の光学フィルム10は、ダンサーロール(光学フィルム張力調整ロール)11を経て延伸機12に導き、そこで光学フィルム10を横方向(幅方向)に延伸する。この延伸により、光学フィルム中の分子が配向される。
【0224】
本発明において、流延ダイ4から溶融状態のフィルム状のセルロースエステル系樹脂を、第1ロール(第1冷却ロール)5、第2冷却ロール7、及び第3冷却ロール8に順次密着させて搬送しながら冷却固化させ、未延伸のセルロースエステル系樹脂フィルム10を得る。
【0225】
図1に示す本発明の実施形態では、第3冷却ロール8から剥離ロール9によって剥離した冷却固化された未延伸のフィルム10は、ダンサーロール(フィルム張力調整ロール)11を経て延伸機12に導き、そこでフィルム10を横方向(幅方向)に延伸する。この延伸により、フィルム中の分子が配向される。
【0226】
フィルムを幅方向に延伸する方法は、公知のテンター等を好ましく用いることができる。特に延伸方向を幅方向とすることで、偏光フィルムとの積層がロール形態で実施できるので好ましい。幅方向に延伸することで、セルロースエステル系樹脂フィルムからなる光学フィルムの遅相軸は幅方向になる。
【0227】
一方、偏光フィルムの透過軸も、通常、幅方向である。偏光フィルムの透過軸と光学フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、液晶表示装置の表示コントラストを高くすることができるとともに、良好な視野角が得られるのである。
【0228】
フィルム構成材料のガラス転移温度Tgはフィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率を異ならしめることにより制御できる。光学フィルムとして位相差フィルムを作製する場合、Tgは120℃以上、好ましくは135℃以上とすることが好ましい。液晶表示装置においては、画像の表示状態において、装置自身の温度上昇、例えば光源由来の温度上昇によってフィルムの温度環境が変化する。このときフィルムの使用環境温度よりもフィルムのTgが低いと、延伸によってフィルム内部に固定された分子の配向状態に由来するリタデーション値及びフィルムとしての寸法形状に大きな変化を与えることとなる。フィルムのTgが高過ぎると、フィルム構成材料をフィルム化するとき温度が高くなるために加熱するエネルギー消費が高くなり、またフィルム化するときの材料自身の分解、それによる着色が生じることがあり、従って、Tgは250℃以下が好ましい。
【0229】
また延伸工程には公知の熱固定条件、冷却、緩和処理を行ってもよく、目的とする光学フィルムに要求される特性を有するように適宜調整すればよい。
【0230】
位相フィルムの物性と液晶表示装置の視野角拡大のための位相フィルムの機能付与するために、上記延伸工程、熱固定処理は適宜選択して行われている。このような延伸工程、熱固定処理を含む場合、加熱加圧工程は、それらの延伸工程、熱固定処理の前に行うようにする。
【0231】
光学フィルムとして位相差フィルムを製造し、更に偏光板保護フィルムの機能を複合させる場合、屈折率制御を行う必要が生じるが、その屈折率制御は延伸操作により行うことが可能であり、また延伸操作が好ましい方法である。以下、その延伸方法について説明する。
【0232】
位相差フィルムの延伸工程において、セルロース樹脂の1方向に1.0〜2.0倍及びフィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜2.5倍延伸することで、必要とされるリタデーションRo及びRtを制御することができる。ここで、Roとは面内リタデーションを示し、Rtとは厚み方向リタデーションを示す。
【0233】
リタデーションRo、Rtは下記式により求められる。
【0234】
式(i) Ro=(nx−ny)×d
式(ii) Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率(屈折率は23℃、55%RHの環境下、波長590nmで測定)、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。)
光学フィルムの屈折率は、アッベ屈折率計(4T)を用いて、フィルムの厚さは市販のマイクロメーターを用いて、リタデーション値は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)等を用いて、各々測定することができる。
【0235】
延伸は、例えばフィルムの長手方向及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅方向に対して、逐次または同時に行うことができる。このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となりフィルム破断が発生してしまう場合がある。
【0236】
例えば溶融流延方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大き過ぎると、nzの値が大きくなり過ぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制、或いは幅方向にも延伸することで改善できる。幅方向に延伸する場合、幅方向で屈折率に分布が生じることがある。この分布は、テンター法を用いた場合に現れることがあり、フィルムを幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制でき、幅方向の位相差の分布を少なくできる。
【0237】
互いに直行する2軸方向に延伸することにより、得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。位相差フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
【0238】
光学フィルムの膜厚変動は、±3%、更に±1%の範囲とすることが好ましい。以上のような目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に1.0〜2.0倍、幅方向に1.01〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に1.01〜1.5倍、幅方向に1.05〜2.0倍に範囲で行うことが必要とされるリタデーション値を得るためにより好ましい。
【0239】
長手方向に偏光子の吸収軸が存在する場合、幅方向に偏光子の透過軸が一致することになる。長尺状の偏光板を得るためには、位相差フィルムは、幅方向に遅相軸を得るように延伸することが好ましい。
【0240】
応力に対して、正の複屈折を得るセルロースエステルを用いる場合、上述の構成から、幅方向に延伸することで、位相差フィルムの遅相軸が幅方向に付与することができる。この場合、表示品質の向上のためには、位相差フィルムの遅相軸が、幅方向にあるほうが好ましく、目的とするリタデーション値を得るためには、
式 (幅方向の延伸倍率)>(流延方向の延伸倍率)
の条件を満たすことが必要である。
【0241】
延伸後、フィルムの端部をスリッター13により製品となる幅にスリットして裁ち落とした後、エンボスリング14及びバックロール15よりなるナール加工装置によりナール加工(エンボッシング加工)をフィルム両端部に施し、巻取り機16によって巻き取ることにより、光学フィルム(元巻き)F中の貼り付きや、すり傷の発生を防止する。ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、変形しており、フィルム製品として使用できないので、切除されて、原料として再利用される。
【0242】
次に、フィルムの巻き取り工程は、円筒形巻きフィルムの外周面とこれの直前の移動式搬送ロールの外周面との間の最短距離を一定に保持しながらフィルムを巻き取りロールに巻き取るものである。かつ巻取りロールの手前には、フィルムの表面電位を除去または低減する除電ブロア等の手段が設けられている。
【0243】
本発明に係る光学フィルムの製造に係わる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻き取り方法で巻き取ることができる。なお、光学フィルムの巻き取り時の初期巻き取り張力が90.2〜300.8N/mであるのが好ましい。
【0244】
本発明の方法におけるフィルムの巻き取り工程では、温度20〜30℃、湿度20〜60%RHの環境条件にて、フィルムを巻き取ることが好ましい。このように、フィルムの巻き取り工程での温度及び湿度を規定することにより、厚み方向リタデーション(Rt)の湿度変化の耐性が向上する。
【0245】
巻き取り工程における温度が20℃未満であれば、シワが発生し、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。フィルムの巻き取り工程における温度が30℃を超えると、やはりシワが発生し、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。
【0246】
また、フィルムの巻き取り工程における湿度が20%RH未満であれば、帯電しやすく、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。フィルムの巻き取り工程における湿度が60%RHを超えると、巻品質、貼り付き故障、搬送性が劣化するので、好ましくない。
【0247】
光学フィルムをロール状に巻き取る際の、巻きコアとしては、円筒上のコアであれは、どのような材質のものであってもよいが、好ましくは中空プラスチックコアであり、プラスチック材料としては加熱処理温度にも耐える耐熱性プラスチックであればどのようなものであってもよく、フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。またガラス繊維等の充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。例えば、中空プラスチックコア:FRP製の外径6インチ(以下、インチは2.54cmを表す。)、内径5インチの巻きコアが用いられる。
【0248】
これらの巻きコアへの巻き数は、100巻き以上であることが好ましく、500巻き以上であることが更に好ましく、巻き厚は5cm以上であることが好ましく、フィルム基材の幅は80cm以上であることが好ましく、1m以上であることが特に好ましい。
【実施例】
【0249】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0250】
実施例1
(光学フィルムNo.1−1の作製)
下記の添加剤、セルロースエステルを用いて、溶融流延法により光学フィルムNo.1−1を作製した。
【0251】
C−1 (セルロースエステル;セルロースアセテートプロピオネート;アセチル基置換度1.6、プロピオニル基置換度1.2、分子量Mn=8.1万、Mw/Mn=2.8) 100質量部
ペンタエリスリトールテトラベンゾエート (可塑剤) 8質量部
IRGANOX−1010 (フェノール系化合物;ペンタエリトリトール−テトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];チバ・ジャパン社製) 0.5質量部
HIT−6 (リン系化合物) 0.1質量部
(1)−2 (一般式(1)の化合物) 0.005質量部
Sumilizer−GS (熱加工安定剤;2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート;住友化学社製) 0.3質量部
Tinuvin−928 (紫外線吸収剤;2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール;チバ・ジャパン社製) 2.0質量部
アエロジルNAX50(マット剤;日本アエロジル社製) 0.2質量部
KE−P100(マット剤;日本触媒社製) 0.02質量部
上記の添加剤、セルロースエステルを混合し、60℃ 5時間減圧乾燥した。このセルロースエステル組成物を、2軸式押出し機を用いて235℃で溶融混合、ペレット化を行い、ペレットを図1に示す製造装置に掛けてフィルム製膜した。
【0252】
第1冷却ロール及び第2冷却ロールはステンレス製で、表面にハードクロムメッキを施した。又、内部には温度調整用のオイルを循環させて、ロール表面温度を制御した。弾性タッチロールは内筒と外筒はステンレス製で、外筒の表面にはハードクロムメッキを施した。外筒の肉厚は2mmとし、内筒と外筒との間の空間に温度調整用のオイルを循環させて弾性タッチロールの表面温度を制御した。
【0253】
得られたペレットを、1軸押出し機を用いてTダイからフィルム状に表面温度130℃の第1冷却ロール上に溶融温度260℃でフィルム状に溶融押し出しドロー比20で、キャストフィルムを得た。
【0254】
更に、第1冷却ロール上で弾性タッチロールで押圧した。押圧時のタッチロール側のフィルム温度は、180℃であった。なお、弾性タッチロールの表面温度は130℃、第2冷却ロールの表面温度は100℃とした。弾性タッチロール、第1冷却ロール、第2冷却ロールの各ロールの表面温度は、ロールにフィルムが最初に接する位置から回転方向に対して90°手前の位置のロール表面の温度を非接触温度計を用いて幅方向に10点測定した平均値を各ロールの表面温度とした。
【0255】
得られたフィルムを、160℃加熱してロール延伸により、長手方向に1.01倍(1%)延伸し、続いて予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターに導入し、幅方向に160℃で1.05倍(5%)延伸した後、幅方向に2%緩和しながら70℃まで冷却し、クリップから開放後、フィルム端部のクリップ把持部をスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取った。仕上がりの光学フィルムは、幅1430mm、膜厚130μm、巻長は2000mで、これを光学フィルムNo.1とする。
【0256】
フィルム端部のスリットは、フィルム幅方向の両端に、フィルム表裏面にフィルムをはさむように配置された一対のロータリー式裁断刃からなり、一方は円盤状の裁断刃、他方は裁断刃を受ける溝付ボトムロールからなり、それぞれフィルムの搬送方向に回転してフィルムを連続的に断裁し巻き取った。
【0257】
同様に以下、本発明の化合物(1)−2、セルロースエステルC−1およびリン系化合物HIT−6を、下記表1に示すように変更する以外は同様にして、本発明の光学フィルムNo.1−2〜1−23、比較の光学フィルムNo.1−24〜1−37を作製した。
【0258】
なお、セルロースエステルC−1に代わるセルロースエステルの添加量は、セルロースエステルC−1と同じ質量部とし、また、一般式(1)で表される本発明の化合物およびリン系化合物の添加量は、表1に記載のように変更を行った。
【0259】
C−2:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.3、プロピオニル基置換度1.2、分子量Mn=6.5万、Mw/Mn=3.0)
C−3:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.4、プロピオニル基置換度1.3、分子量Mn=8.1万、分散度=2.5)
C−4:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度2.1、プロピオニル基置換度0.7、分子量Mn=9.0万、Mw/Mn=2.5)
C−5:セルロースアセテートブチレート、(アセチル置換度=1.1、ブチリル置換度=1.8、分子量Mn=7.8万、Mw/Mn=3.6)
【0260】
【化23】

【0261】
【表1】

【0262】
表1において、光学フィルム1−26及び1−30(比較例)は特許文献2の実施例に近似しており、光学フィルム1−38(比較例)は特許文献1の実施例を再現したものである。
【0263】
さらに、下記の添加剤、セルロースエステルを用いて、光学フィルムNo.1−1と同様な方法で、比較の光学フィルム1−38を作製した。
【0264】
C−1 (セルロースエステル) 100質量部
ペンタエリスリトールテトラベンゾエート 8質量部
A−1 0.15質量部
HIT−1 (リン系化合物) 0.3質量部
Tinuvin−928(チバ・ジャパン社製) 2.0質量部
アエロジルNAX50(日本アエロジル社製) 0.2質量部
KE−P100(日本触媒社製) 0.02質量部
【0265】
【化24】

【0266】
(評価)
作製した本発明の光学フィルムNo.1−1〜1−23、比較の光学フィルムNo.1−24〜1−38について以下の評価を行った。
【0267】
結果を表2に示す。
【0268】
(裁断性)
巻き取った光学フィルム試料をゆっくり回し、巻き終わりから長さ1mのところで裁断し、試料を採取した。該フィルムを目視で観察し、視認可能な切り粉の個数をカウントし、1m当たりの個数に換算して評価した。
【0269】
A:1個未満/m
B:1個〜2個未満/m
C:2個〜5個未満/m
D:5個以上/m
(輝点異物)
巻き取った光学フィルム試料から、サンプルを切り出し、直交状態(クロスニコル)に二枚の偏光板を配置して透過光を遮断し、二枚の偏光板の間に各サンプルを置く。偏光板はガラス製保護板のものを使用した。片側から光を照射し、反対側から光学顕微鏡(50倍)で25mmあたりの輝点異物(直径0.01mm以上以上の異物)の数を100ヶ所測定し、その平均値を求めた。
【0270】
A:0〜30個/m
B:31〜50個/m
C:51〜80個/m
D:81〜100個/m
E:101個以上/m
〈延伸性の評価〉
巻き取った光学フィルム試料から、10cm×10cmに切断したフィルム試料を10枚用意し、2軸延伸を行った。まず100%MD延伸を行い、次いで100%TD延伸を行った。延伸温度は160℃、延伸速度は100%毎分で行った。
【0271】
このような延伸操作を10枚のフィルムについて行い、破断せずに2軸延伸できたフィルムの枚数を評価した。
【0272】
A:10枚とも延伸できた
B:8枚以上延伸できた
C:5枚以上延伸できた
D:5枚未満しか延伸できなかった
E:1枚も延伸できなかった。
【0273】
(延伸後のフィルムのヘイズ値評価)
延伸後の光学フィルム試料から、30mm×30mmのフィルム試料を10枚切り出し、ヘイズ値を、ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定し、平均値を算出した。ヘイズ値は小さい方が好ましい。
【0274】
A:0.3未満
B:0.3以上0.5未満
C:0.5以上0.7未満
D:0.7以上。
【0275】
(幅手方向端部の着色評価(端部と中央部イエローインデックスYI比率))
光学フィルムの製造において溶融押出し直後の光学フィルムの幅手方向両端部から30mm四方のサンプル及びフィルム中央部から30mm四方のサンプルを切り出し、日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計U−3310を用いて、その吸収スペクトルを測定し、三刺激値X、Y、Zを算出した。この三刺激値X、Y、Zから、JIS−K7103に基づいてフィルム両端部のイエローインデックスYe、及びフィルム中央部のイエローインデックスYcを算出し、その比率Ye/Ycを求めた。なお前記イエローインデックスは切り出したサンプル内で最大となる部分の箇所を読み取った。端部と中央部のイエローインデックスの比率は各フィルムで50点求め、その平均値から、次の評価基準で評価を行った。
【0276】
A:Ye/Ycが1.2未満(実用上非常に優れたレベルである。)
B:Ye/Ycが1.2以上3.0未満(実用上問題のないレベルである。)
C:Ye/Ycが3.0以上7.0未満(実用上問題発生する可能性のあるレベルである。)
D:Ye/Ycが7.0以上10.0未満(実用上問題が発生するレベルである。)
E:Ye/Ycが10.0以上(実用上問題が発生するレベルである。)
【0277】
【表2】

【0278】
表2より、本発明の化合物を使用した本発明の光学フィルムNo.1−1〜1−23は輝点異物、裁断性、延伸性が良好で、延伸後のヘイズ値が小さく、端部と中央部の着色の差が少ない光学フィルムであることがわかる。
【0279】
実施例2
下記の組成物を調製した。
【0280】
(帯電防止層塗布組成物(1))
ポリメチルメタアクリレート(重量平均分子量55万、Tg:90℃) 0.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 60質量部
メチルエチルケトン 16質量部
乳酸エチル 5質量部
メタノール 8質量部
導電性ポリマー樹脂P−1(0.1〜0.3μm粒子) 0.5質量部
【0281】
【化25】

【0282】
(ハードコート層塗布組成物(2))
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部
ジエトキシベンゾフェノン光反応開始剤 6質量部
シリコーン系界面活性剤 1質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 75質量部
メチルエチルケトン 75質量部
(カール防止層塗布組成物(3))
アセトン 35質量部
酢酸エチル 45質量部
イソプロピルアルコール 5質量部
ジアセチルセルロース 0.5質量部
超微粒子シリカ2%アセトン分散液(アエロジル:200V、日本アエロジル(株)製) 0.1質量部
下記に従って、機能付与した偏光板保護フィルムを作製した。
【0283】
(偏光板保護フィルム)
実施例1で作製した本発明の光学フィルム1−1の延伸後のセルロースエステルフィルムの片面に、カール防止層塗布組成物(3)をウェット膜厚13μmとなるようにグラビアコートし、乾燥温度80±5℃にて乾燥させた。これを試料1−1Aとする。
【0284】
このセルロースエステルフィルムのもう1方の面に帯電防止層塗布組成物(1)を28℃、82%RHの環境下でウェット膜厚で7μmとなるよう塗布し、次いで80±5℃に設定された乾燥部で乾燥して乾燥膜厚で約0.2μmの樹脂層を設け、帯電防止層付きセルロースエステルフィルムを得た。これを試料1−1Bとする。
【0285】
更に、この帯電防止層の上にハードコート層塗布組成物(2)をウェット膜厚で13μmとなるように塗設し、乾燥温度90℃にて乾燥させた後、紫外線を150mJ/mとなるように照射して、乾燥膜厚で5μmのクリアハードコート層を設けた。これを試料1−1Cとする。
【0286】
得られた本発明の光学フィルム試料1−1A、試料1−1B、試料1−1Cはともにブラッシングを起こすこともなく、乾燥後の亀裂の発生も認められず、塗布性は良好であった。
【0287】
光学フィルム1−1に代えて、本発明の光学フィルム1−2〜1−23に変更した以外は同様の方法で塗布を行った。その結果、試料1−2A〜1−23A、1−2B〜1−23B、1−2C〜1−23Cの何れもブラッシングを起こすこともなく、乾燥後の亀裂の発生も認められず、塗布性は良好であった。
【0288】
比較として、比較の光学フィルム1−24〜1−38について、それぞれ上記と同様な方法で塗布を行った。
【0289】
カール防止層塗布組成物(3)を塗布したものをそれぞれ試料1−24A〜1−38A、更に帯電防止層塗布組成物(1)を塗布したものをそれぞれ試料1−24B〜1−38B、更にこの帯電防止層の上にハードコート層塗布組成物(2)を塗布したものをそれぞれ試料1−24C〜1−38Cとした。
【0290】
その結果、高湿度環境で塗布したとき、試料1−24A〜1−38Aでブラッシングが起こった。また、試料1−24B〜1−38Bでは乾燥後微細な亀裂が認められることがあり、試料1−24C〜1−38Cでは乾燥後微細な亀裂が明確に認められた。
【0291】
(偏光板の作製と評価)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、沃化カリウム2質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液に浸漬し50℃で4倍に延伸し偏光子を作製した。
【0292】
実施例1で作製した本発明の光学フィルム1−1〜1−23及び比較の光学フィルム1−24〜1−38の延伸後のフィルムを、それぞれ40℃の2.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液に60秒間浸漬し、更に水洗乾燥して表面をアルカリ処理した。
【0293】
前記偏光子の両面に、本発明の光学フィルム1−1〜1−23及び比較例の光学フィルム1−24〜1−38のアルカリ処理面を、完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として両面から貼合し、保護フィルムが形成された本発明の偏光板1−1〜1−23及び比較の偏光板1−24〜1−38を作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
【0294】
(液晶表示装置としての特性評価)
VA型液晶表示装置である、シャープ(株)製32型テレビAQ−32AD5の偏光板を剥がし、上記で作製した各々の偏光板を液晶セルのサイズに合わせて断裁した。液晶セルを挟むようにして、前記作製した偏光板2枚を偏光板の偏光軸が元と変わらないように互いに直交するように貼り付け、32型VA型カラー液晶ディスプレイを作製し、光学フィルムの偏光板としての以下の特性を評価した。結果を表3に示す。
【0295】
(平面性)
得られた偏光板を水平なテーブルの上で少し引っ張りながら長手方向の両端をテープでテーブルに貼り付けて、偏光板表面の平面性を下記基準で目視評価した。
【0296】
A:表面に波打ち状のムラは全く認められない
B:表面にわずかに波打ち状のムラが認められる
C:表面に細かい波打ち状のムラが認められる
D:表面に大きな波打ち状のムラが認められる
(コントラスト)
23℃55%RHの環境で、この液晶テレビのバックライトを点灯して30分そのまま放置してから、コントラストを目視により以下の基準に従い評価した。
【0297】
A:黒がしまって見え、鮮明である
B:黒がしまって見えるが、やや鮮明さが低い
C:黒のしまりがなく、鮮明さがやや低い
D:黒のしまりがなく、鮮明さが低い
【0298】
【表3】

【0299】
表3より、本発明の偏光板1−1〜1−23は比較の偏光板1−24〜1−38に対して、着色、平面性に優れている保護フィルムで両面が保護されているため、非常に良好な偏光板の特性を有するという顕著に優れた効果を奏することがわかった。
【0300】
上表より、本発明の偏光板1−1〜1−23を用いた液晶表示装置は、比較の偏光板1−24〜1−38を用いた液晶表示装置に対してコントラストも高く、優れた表示性を示した。これにより、液晶ディスプレイ等の画像表示装置用の偏光板として優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0301】
1 押出し機
2 フィルター
3 スタチックミキサー
4 流延ダイ
5 回転支持体(第1冷却ロール)
6 挟圧回転体(タッチロール)
7 回転支持体(第2冷却ロール)
8 回転支持体(第3冷却ロール)
9、11、13、14、15 搬送ロール
10 セルロースエステルフィルム
16 巻き取り機
31 ダイ本体
32 スリット
41 金属スリーブ
42 弾性ローラ
43 金属製の内筒
44 ゴム
45 冷却水
51 外筒
52 内筒
53 空間
54 冷却液
55a、55b 回転軸
56a、56b 外筒支持フランジ
60 流体軸筒
61a、61b 内筒支持フランジ
62a、62b 中間通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステルと下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする光学フィルム。
【化1】

(式中R101およびR102はアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表し、nおよびnは、0または1を表す。)
【請求項2】
セルロースエステルと前記一般式(1)で表される化合物と、ホスファイト、ホスホナイト及びホスフィナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン系化合物、を含有することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物の添加量をa(モル)、ホスファイト、ホスホナイト及びホスフィナイトから選ばれるリン系化合物の合計の添加量をb(モル)としたときに、下記式(A)を満たすことを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
式(A): 0.005≦a/b≦0.5
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムを溶融流延法により製造することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム、または請求項4に記載の光学フィルムの製造方法によって製造された光学フィルムを偏光子の少なくとも一方の面に有することを特徴とする偏光板。
【請求項6】
請求項5に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に用いることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−248361(P2010−248361A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98766(P2009−98766)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】