光学フィルム並びにそれを用いた光学補償フィルム、偏光板及び液晶表示装置
【課題】広範囲にわたり高いコントラスト比を有し、カラーシフトを抑制可能な光学フィルム並びに該光学フィルムを用いた光学材料及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】フィルムのレタ−デーションが下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする光学フィルム。(1)0≦Re(550)≦10、(2)−25≦Rth(550)≦25、(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)ここで、I=Re(450)−Re(550)、II=Re(650)−Re(550)III=Rth(450)−Rth(550)、IV=Rth(650)−Rth(550)である。
(式中Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)でありる。)
【解決手段】フィルムのレタ−デーションが下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする光学フィルム。(1)0≦Re(550)≦10、(2)−25≦Rth(550)≦25、(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)ここで、I=Re(450)−Re(550)、II=Re(650)−Re(550)III=Rth(450)−Rth(550)、IV=Rth(650)−Rth(550)である。
(式中Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)でありる。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に有用な光学フィルムに関するものである。また、さらにそれを用いた光学補償フィルム、偏光板などの光学材料および液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低電圧・低消費電力で小型化・薄膜化が可能など様々な利点からパーソナルコンピューターや携帯機器のモニター、テレビ用途に広く利用されている。このような液晶表示装置は液晶セル内の液晶分子の配列状態により様々なモードが提案されているが、従来は液晶セルの下側基板から上側基板に向かって約90°捩れた配列状態になるTNモードが主流であった。
一般に液晶表示装置は液晶セル、光学補償シート、偏光子から構成される。光学補償シートは画像着色を解消したり、視野角を拡大するために用いられており、延伸した複屈折フィルムや透明フィルムに液晶を塗布したフィルムが使用されている。例えば、特許文献1ではディスコティック液晶をトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し配向させて固定化した光学補償シートをTNモードの液晶セルに適用し、視野角を広げる技術が開示されている。しかしながら、大画面で様々な角度から見ることが想定されるテレビ用途の液晶表示装置は視野角依存性に対する要求が厳しく、前述のような手法をもってしても要求を満足することはできていない。そのため、IPS(In−Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、VA(Vertically Aligned)モードなど、TNモードとは異なる液晶表示装置が研究されている。特にVAモードはコントラストが高く、比較的製造の歩留まりが高いことからTV用の液晶表示装置として着目されている。
【0003】
しかしながらVAモードでは、パネル法線方向においてはほぼ完全な黒色表示ができるものの、斜め方向からパネルを観察すると光漏れが発生し、視野角が狭くなるという問題があった。この問題を解決するためにフィルム面内の屈折率に対して膜厚方向の屈折率が十分小さい屈折率異方性を有する位相差板を液晶層と偏光板の間の少なくとも一方に配置することで光漏れを低減することが提案されている(例えば特許文献1)。また、正の一軸性の屈折率異方性を有する第一の位相差板とフィルム面内の屈折率に対して膜厚方向の屈折率が十分小さい負の屈折率異方性を有する第2の位相差板とを併用することにより光漏れを低減する方法が提案されている(例えば特許文献2)。さらにフィルムの3次元方向の屈折率がいずれも異なる、光学的に二軸の位相差板を用いることによりVAモードの液晶表示装置の視野角特性を向上することが提案されている(例えば特許文献3)。
【0004】
一方IPSモードにおいても、黒表示時の対角位斜め入射方向での僅かな光漏れが表示品質の低下の原因として顕在化してきた。この色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、液晶層と偏光板の間に複屈折特性を有する光学補償材料を配置することがIPSモードにおいても検討されている。例えば、傾斜時の液晶層のレターデーションの増減を補償する作用を有する光軸を互いに直交した複屈折媒体を基板と偏光板との間に配置することで、白表示又は中間調表示を斜め方向から直視した場合の色付きが改善できることが開示されている(特許文献4参照)。また、負の固有複屈折を有するスチレン系ポリマーやディスコチック液晶性化合物からなる光学補償フィルムを使用した方法(特許文献5、6、7参照)や、光学補償フィルムとして複屈折が正で光学軸がフィルムの面内にある膜と複屈折が正で光学軸がフィルムの法線方向にある膜とを組み合わせる方法(特許文献8参照)、レターデーションが二分の一波長の二軸性の光学補償シートを使用する方法(特許文献9参照)、偏光板の保護膜として負のレターデーションを有する膜を使い、この表面に正のレターデーションを有する光学補償層を設ける方式(特許文献10参照)が提案されている。また、Nzが0.4〜0.6であり、面内位相差が200〜350nmの位相差膜を用いることにより直交偏光板を斜めから見た場合の偏光軸交差角度の直交からのズレに基づく光漏れを抑える発明が開示されている(特許文献11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−210423号
【特許文献2】特許3027805号
【特許文献3】特許3330574号
【特許文献4】特開平9−80424号公報
【特許文献5】特開平10−54982号公報
【特許文献6】特開平11−202323号公報
【特許文献7】特開平9−292522号公報
【特許文献8】特開平11−133408号公報
【特許文献9】特開平11−305217号公報
【特許文献10】特開平10−307291号公報
【特許文献11】特開2004−4642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の方法はある波長域(例えば550nm付近の緑光)に対して光漏れを低減しているのみであり、それ以外の波長域(例えば450nm付近の青光、650nm付近の赤光)に対する光漏れは考慮していない。このため例えば黒表示をして斜めから観察すると、青色や赤色に着色するいわゆるカラーシフトの問題が解決されていなかった。
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、広範囲にわたり高いコントラスト比を有し、カラーシフト(斜め方向から見た際の色味変化)を抑制可能な光学フィルム並びに該光学フィルムを用いた光学補償フィルム、偏光板などの光学材料及び液晶表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は以下の手段によって達成された。
<1>
レターデーションが下記式(1)〜(3)及び(4−A)〜(7−A)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
(1)0≦Re(550)≦10
(2)−25≦Rth(550)≦25
(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)
(4−A)−50≦I≦0
(5−A)0≦II≦50
(6−A)−50≦III<0
(7−A)0<IV≦50
ここで、I=Re(450)−Re(550)II=Re(650)−Re(550)III=Rth(450)−Rth(550)IV=Rth(650)−Rth(550)である。
(式中Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
<2>
光学フィルムの原料ポリマーにセルロースアシレートが使用されていることを特徴とする<1>に記載の光学フィルム。
<3>
セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基のみからなり、その全置換度が2.56〜3.00であることを特徴とする<2>に記載の光学フィルム。
<4>
セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなり、その全置換度が2.50〜3.00であることを特徴とする<2>に記載の光学フィルム。
<5>
Rth(550)を低下させる化合物を、下記式(8)および(9)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(8)(Rth[A]−Rth[0])/A≦−1.0
(9)0.01≦A≦30
ここで、Rth[A]:Rth(550)を低下させる化合物をA%含有した光学フィルムの550nmにおけるRth(nm)Rth[0]:Rth(550)を低下させる化合物を含有しない光学フィルムの550nmにおけるRth(nm)A:光学フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
<6>
下記式(10)で表されるΔRthを増加させる化合物を、下記式(11)および(12)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(10)ΔRth=Rth(450)−Rth(650)
(11)(ΔRth[B]−ΔRth[0])/B≧1.0
(12)0.01≦B≦30
ここで、ΔRth[B]:ΔRthを増加させる化合物をB%含有した光学フィルムのΔRth(nm)ΔRth[0]:ΔRthを増加させる化合物を含有しない光学フィルムのΔRth(nm)B:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
<7>
膜厚が20〜200μmであることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の光学フィルム。
<8>
<1>〜<7>のいずれか1項に記載の光学フィルムおよび下記式(13)および(14)を満たす光学異方性層を含むことを特徴とする光学補償フィルム。
(13)0≦Re≦400
(14)−400≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
<9>
<1>〜<7>のいずれか1項に記載の光学フィルム、又は<8>に記載の光学補償フィルムの少なくとも1枚と、偏光子とを有することを特徴とする偏光板。
<10>
<1>〜<7>のいずれか1項に記載の光学フィルム、<8>に記載の光学補償フィルム、及び<9>に記載の偏光板の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
<11>
<1>〜<7>のいずれか1項に記載の光学フィルム、<8>に記載の光学補償フィルム、及び<9>に記載の偏光板の少なくともいずれかを含み、かつ、下記式(15)および(16)を満たす光学異方性層を少なくとも一層含むことを特徴とする液晶表示装置。
(15)0≦Re≦400
(16)−400≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
<12>
黒表示時に液晶分子が垂直配向、平行配向、またはベンド配向している液晶セルを含むことを特徴とする<10>または<11>に記載の液晶表示装置。
<13>
黒表示時に液晶分子が垂直配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層が下記式(17)および(18)を満たす層を少なくとも一層含むことを特徴とする<12>に記載の液晶表示装置。
(17)10≦Re≦150
(18)50≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
<14>
黒表示時に液晶分子が平行配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層が下記式(19)〜(22)のいずれかを満たす層を少なくとも一層含むことを特徴とする<12>に記載の液晶表示装置。
(19)100≦Re≦400、且つ−50≦Rth≦50
(20)0≦Re≦20、且つ−400≦Rth≦−50
(21)60≦Re≦200、且つ20≦Rth≦120
(22)30≦Re≦150、且つ100≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
<15>
黒表示時に液晶分子がベンド配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層がディスコティック液晶化合物を含有する層を少なくとも含むことを特徴とする<12>に記載の液晶表示装置。
<16>
レターデーションが下記式(1)〜(3)及び(4−A)〜(7−A)を満たす光学フィルムを用い、かつIPS型の液晶セルを有する液晶表示装置。
(1)0≦Re(550)≦10
(2)−25≦Rth(550)≦25
(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)
(4−A)−50≦I≦0
(5−A)0≦II≦50
(6−A)−50≦III<0
(7−A)0<IV≦50
ここで、I=Re(450)−Re(550)
II=Re(650)−Re(550)
III=Rth(450)−Rth(550)
IV=Rth(650)−Rth(550)である。
(式中Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
本発明は、上記<1>〜<16>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項についても記載している。
【0008】
[1]フィルムのレターデーションが下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
(1)0≦Re(550)≦10
(2)−25≦Rth(550)≦25
(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)ここで、I=Re(450)−Re(550)II=Re(650)−Re(550)III=Rth(450)−Rth(550)IV=Rth(650)−Rth(550)である。
(式中Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)は波長450nm、550nm、650nmそれぞれの光で測定した厚み方向のレターデーション値である。)
[2]前記I、II、III、及びIVが下記式(4−A)〜(7−A)を満たすことを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
(4−A)−50≦I≦0
(5−A)0≦II≦50
(6−A)−50≦III<0
(7−A)0<IV≦50
[3]前記I、II、III、及びIVが下記式(4−B)〜(7−B)を満たすことを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
(4−B)−50≦I<0
(5−B)0<II≦50
(6−B)0≦III≦50
(7−B)−50≦IV≦0
[4]前記I、II、III、及びIVが下記式(4−C)〜(7−C)を満たすことを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
(4−C)0≦I≦50
(5−C)−50≦II≦0
(6−C)0<III≦50
(7−C)−50≦IV<0
[5]前記I、II、III、及びIVが下記式(4−D)〜(7−D)を満たすことを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
(4−D)0<I≦50
(5−D)−50≦II<0
(6−D)−50≦III≦0
(7−D)0≦IV≦50
【0009】
[6]光学フィルムの原料ポリマーに、セルロースアシレートが使用されていることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の光学フィルム。
[7]セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基のみからなり、その全置換度が2.56〜3.00であることを特徴とする[6]に記載の光学フィルム。
[8]セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなり、その全置換度が2.50〜3.00であることを特徴とする[6]に記載の光学フィルム。
[9]Rth(550)を低下させる化合物を、下記式(8)および(9)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の光学フィルム。
(8)(Rth[A]−Rth[0])/A≦−1.0
(9)0.01≦A≦30ここで、Rth[A]:Rth(550)を低下させる化合物をA%含有した光学フィルムの550nmにおけるRth(nm)Rth[0]:Rth(550)を低下させる化合物を含有しない光学フィルムの550nmにおけるRth(nm)A:光学フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
[10]下記式(10)で表されるΔRthを増加させる化合物を、下記式(11)および(12)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載の光学フィルム。
(10)ΔRth=Rth(450)−Rth(650)
(11)(ΔRth[B]−ΔRth[0])/B≧1.0
(12)0.01≦B≦30
ここで、ΔRth[B]:ΔRthを増加させる化合物をB%含有した光学フィルムのΔRth(nm)ΔRth[0]:ΔRthを増加させる化合物を含有しない光学フィルムのΔRth(nm)B:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
【0010】
[11]膜厚が20〜200μmであることを特徴とする[1]〜[10]に記載の光学フィルム。
[12][1]〜[11]のいずれかに記載の光学フィルムおよび下記式(13)及び
(14)を満たす光学異方性層を含むことを特徴とする光学補償フィルム。
(13)0≦Re≦400
(14)−400≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
[13]光学異方性層がディスコティック液晶を含むことを特徴とする[12]に記載の光学補償フィルム。
[14]光学異方性層がコレステリック液晶を含むことを特徴とする[12]または[13]に記載の光学補償フィルム。
[15]光学異方性層が棒状液晶を含むことを特徴とする[12]〜[14]のいずれかに記載の光学補償フィルム。
【0011】
[16]光学異方性層がポリマーフィルムを含むことを特徴とする[12]〜[15]のいずれかに記載の光学補償フィルム。
[17]光学異方性層を形成するポリマー化合物が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、およびポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマー材料を含有することを特徴とする[12]〜[16]のいずれかに記載の光学補償フィルム。
[18][1]〜[11]のいずれかに記載の光学フィルム、又は[12]〜[17]のいずれかに記載の光学補償フィルムの少なくとも1枚と、偏光子とを有することを特徴とする偏光板。
[19][1]〜[11]のいずれかに記載の光学フィルム、[12]〜[17]のいずれかに記載の光学補償フィルム、及び[18]に記載の偏光板、の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
[20][1]〜[11]のいずれかに記載の光学フィルム、[12]〜[17]のいずれかに記載の光学補償フィルム、及び[18]に記載の偏光板の少なくともいずれかを含み、かつ、下記式(15)及び(16)を満たす光学異方性層を少なくとも1層含むことを特徴とする液晶表示装置。
(15)0≦Re≦400
(16)−400≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【0012】
[21]光学異方性層がディスコティック液晶を含むことを特徴とする[20]に記載の液晶表示装置。
[22]光学異方性層がコレステリック液晶を含むことを特徴とする[20]または[21]に記載の液晶表示装置。
[23]光学異方性層が棒状液晶を含むことを特徴とする[20]〜[22]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[24]光学異方性層がポリマーフィルムを含むことを特徴とする[20]〜[23]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[25]光学異方性層を形成するポリマー化合物が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、およびポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマー材料を含有することを特徴とする[20]〜[24]のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0013】
[26]黒表示時に液晶分子が垂直配向、平行配向、またはベンド配向している液晶セルを含むことを特徴とする[19]〜[25]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[27]黒表示時に液晶分子が垂直配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層が下記式(17)および(18)を満たす層を少なくとも一層含むことを特徴とする[26]に記載の液晶表示装置。
(17)10≦Re≦150
(18)50≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
[28]黒表示時に液晶分子が平行配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層が下記式(19)〜(22)のいずれかを満たす層を少なくとも一層含むことを特徴とする[26]に記載の液晶表示装置。
(19)100≦Re≦400、−50≦Rth≦50
(20)0≦Re≦20、−400≦Rth≦−50
(21)60≦Re≦200、20≦Rth≦120
(22)30≦Re≦150、100≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
[29]黒表示時に液晶分子がベンド配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層がディスコティック液晶化合物を含有する層を少なくとも含むことを特徴とする[26]に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学フィルムは、本発明者らの鋭意検討の結果得られた知見に基づいて完成されたものであり、素材や製造方法を適宜選択する等により、光学補償フィルムの面内のレターデーションと厚さ方向のレターデーションの波長分散を独立に制御し、その光学的な最適値を求め、液晶セルの黒状態の視角補償を全ての波長において可能にするものである。具体的には、素材に関しては、ポリマー原料素材の選択、光学特性を制御する添加剤の種類と量を適宜選択した。その結果、本発明の液晶表示装置は、黒表示時の斜め方向の光抜けが軽減され、視野角コントラストが著しく改善されている。また、本発明の液晶表示装置は、黒表示時の斜め方向の光抜けを全ての可視光波長領域で抑えることができるため、従来問題であった視野角に依存した黒表示時の色ずれが大きく改善されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の液晶表示装置の構成例を説明する概略模式図である。
【図2】従来の液晶表示装置の構成例を説明する概略模式図である。
【図3】従来の液晶表示装置の構成例を説明する概略模式図である。
【図4】従来の液晶表示装置の一例における入射光の偏光状態の変化を説明するために用いたポアンカレ球の概略図である。
【図5】本発明の液晶表示装置の構成例を説明する概略模式図である。
【図6】本発明の液晶表示装置の一例における入射光の偏光状態の変化を説明するために用いたポアンカレ球の概略図である。
【図7】本発明に用いられる光学フィルムの一例についての光学特性を示すグラフである。
【図8】偏光状態を説明するために用いたポアンカレ球の概略図である。
【図9】セルロースアシレートのアシル置換度と光学フィルムのRthの関係の一例について示すグラフである。
【図10】Rth低下剤濃度と光学フィルムのRthの関係の一例について示すグラフである。
【図11】波長分散調整剤濃度とΔRthの関係の一例について示すグラフである。
【図12】本発明の液晶表示装置の一例(実施例11のIPS−1)における入射光の偏光状態の変化を説明するために用いたポアンカレ球の概略図である。
【図13】従来の液晶表示装置の一例(実施例11のIPS−2)における入射光の偏光状態の変化を説明するために用いたポアンカレ球の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の作用を説明する。本発明は液晶表示装置の駆動方式には依存せずすべての液晶モードで有効であるが、例として図1では、一般的なVAモードの液晶表示装置の構成を示す模式図を示した。VAモードの液晶表示装置は、電圧無印加時、即ち黒表示時に、液晶が基板面に対して垂直配向する液晶層を有する液晶セル3と、該液晶セル3を挟持し、且つ互いの透過軸方向(図1では縞線で示した)を直交させて配置された偏光板1及び偏光板2とを有する。図1中、光は、偏光板1側から入射するものとする。電圧無印加時に、法線方向、即ち、z軸方向に進む光が入射した場合、偏光板1を通過した光は、直線偏光状態を維持したまま、液晶セル3を通過し、偏光板2において完全に遮光される。その結果、コントラストの高い画像を表示できる。
【0017】
しかし、図2に示す様に、斜光入射の場合には状況が異なる。光が、z軸方向でない斜め方向、即ち、偏光板1および2の偏光方向に対して斜めの方位(いわゆるOFF AXIS)から入射する場合、入射光は、液晶セル3の垂直配向した液晶層を通過する際に、斜め方向のレターデーションの影響を受け、その偏光状態が変化する。さらに、偏光板1と偏光板2の見かけの透過軸が直交配置からずれる。この2つの要因のため、OFF AXISにおける斜め方向からの入射光は、偏光板2で完全に遮光されず、黒表示時に光抜けが生じ、コントラストを低下させることになる。
【0018】
ここで、極角と方位角を定義する。極角はフィルム面の法線方向、即ち、図1及び図2中のz軸からの傾き角であり、例えば、フィルム面の法線方向は、極角=0度の方向である。方位角は、x軸の正の方向を基準に反時計回りに回転した方位を表しており、例えばx軸の正の方向は方位角=0度の方向であり、y軸の正の方向は方位角=90度の方向である。前述したOFF AXISにおける斜め方向とは、極角が0度ではない場合で且つ、方位角=45度、135度、225度、315度の場合を主に指す。
【0019】
図3に、通常の液晶表示装置における偏光の作用を説明するための構成例の模式図を示す。図3の構成は、図1の構成に、液晶セル3と偏光板1との間に光学補償フィルム4を配置した構成である。この構成のVAモード液晶表示装置において光学補償フィルム4は、一般に波長550nmにおけるRe(550)=20〜100nmおよびRth(550)=100〜300nm程度のものが用いられる。また光学補償フィルム4は通常、正の屈折率異方性素材を用いて作製される場合はRe(450)≧Re(550)≧Re(650)かつRth(450)≧Rth(550)≧Rth(650)、すなわちRe、Rthともに短波長ほど大きい値を持つものである。
【0020】
図4に、図3の構成における補償機構について、ポアンカレ球を用いて説明した図を示す。ポアンカレ球は偏光状態を記述する三次元マップで、球の赤道上は直線偏光を表している。ここで、光の伝播方向は方位角=45度、極角=34度である。図4中、S2軸は、紙面上から下に垂直に貫く軸であり、図4は、ポアンカレ球を、S2軸の正の方向から見た図である。また、図4は、平面的に示されているので、偏光状態の変化前と変化後の点の変位は、図中直線の矢印で示されているが、実際は、液晶層や光学補償フィルムを通過することによる偏光状態の変化は、ポアンカレ球上では、それぞれの光学特性に応じて決定される特定の軸の回りに、特定の角度回転させることで表される。
【0021】
図3中の偏光板1を通過した入射光の偏光状態は、図4では点(i)に相当し、図3中の偏光板2の吸収軸によって遮光される偏光状態は、図4では点(ii)に相当する。従来、VAモードの液晶表示装置において、斜め方向におけるOFF AXISの光抜けは、この点(i)と点(ii)がずれていることに起因する。光学補償フィルムは、一般的に、液晶層における偏光状態の変化も含めて、入射光の偏光状態を点(i)から点(ii)に変化させるために用いられる。液晶セル3の液晶層は正の屈折率異方性を示し、垂直配向しているので、液晶層を通過することによる入射光の偏光状態の変化は、ポアンカレ球上では、図4中の上から下への矢印で示され、S1軸回りの回転として表される。
【0022】
S1軸回りに回転した回転角度は、液晶層の斜め方向からの実効的なレターデーションΔn’d’を光の波長λで割った値Δn’d’/λに比例するので、波長が異なるR、G、Bの各波長においては、回転角度は一致しない。従って、回転後にはR、G、Bのいずれかの波長の光が(ii)からずれてしまう。このずれた波長の光だけが偏光板2で遮断されないため光漏れとなる。光の色はR、G、Bの足し合わせからなるので、特定の波長の光だけが光漏れすると、R、G、Bの足し合わせの比率がずれるために、色味の変化がおこる。これが、液晶表示装置を斜め方向から見たときに「色味変化」となって観察される。
【0023】
ここで、本明細書においては、R、G、Bの波長として、Rは波長650nm、Gは波長550nm、Bは波長450nmを用いた。R、G、Bの波長は必ずしもこの波長で代表されるものではないが、本発明の効果を奏する光学特性を規定するのに適当な波長であると考えられる。
【0024】
上述したように、光学補償フィルム4が通常の正の固有複屈折を持つ素材から作製されたものであれば、レターデーションはRe(450)≧Re(550)≧Re(650)かつRth(450)≧Rth(550)≧Rth(650)、すなわちRe、Rthともに短波長ほど大きい値を持つものであり、この場合液晶表示装置を斜め方向から見た場合の実効的なレターデーションも短波長ほど大きい値(R≦G≦B)を持つ。このとき(i)の位置からの移動量はこの実効的なレターデーションの大きさに依存するので、移動量もR≦G≦Bとなり三者はずれている。
【0025】
同様にして液晶セルを通過するときの偏光状態の変化も、液晶セルの液晶分子が通常正の固有複屈折を持つ素材であるため、Re、Rthともに短波長ほど大きい値を持つものであり、この場合液晶表示装置を斜め方向から見た場合の実効的なレターデーションも短波長ほど大きい値を持つ。したがって(ii)の位置への移動量短波長ほど大きくなるためにR、G、B三者の位置関係は図4のようになる。
【0026】
そこで本発明では、R、G、B三者の位置関係を(ii)で一致させるために、本発明の光学フィルム5を用いた。図5に、本発明の作用を説明するための構成例についての模式図を示す。ここで本発明の光学フィルム5の位置は液晶セル3と偏光板2の間に置かれているが、本発明においてこの位置は特に限定されるものではない。
【0027】
図6に、図5の構成における補償機構について、ポアンカレ球を用いて説明した図を示す。光学フィルム5を挿入することで、R、G、Bをほぼ一点に一致させることができる。具体的には、斜め方向に入射したR、G、B各波長の光について、各波長ごとに異なった遅相軸及びレターデーションで光学補償している。すなわち、R、G、Bの波長R(650nm)は(ii)地点より右上にあり、ここから(ii)へ左下へ移動させるには、光学フィルム5のRe(650)は正でかつRth(650)が負の値であれば良い。同様にして波長G(550nm)は(ii)地点から移動させる必要が無いのでRe(550)、Rth(550)はともにゼロであれば良い。さらに、波長B(450nm)は(ii)地点より左下にあり、ここから(ii)へ右上へ移動させるには、光学フィルム5のRe(450)は負でかつRth(450)が正の値であれば良い。以上の光学性能を持つような光学フィルム5のReおよびRthの波長依存性を図7に示した。
【0028】
以上の議論は、通常の液晶表示装置における光学補償において、(ii)地点で中心波長であるG(550nm)を合わせても、RやBがずれてしまう全ての場合に適用することができる。図8に、ポアンカレ球で(ii)地点周辺を拡大し、(ii)地点からずれた点1〜9を表記し、これら1〜9の点を(ii)へ移動させるために必要な光学フィルム5に求められる性能を表1に示した。なお図8および表1中の点5は(ii)地点と同一である。
【0029】
【表1】
【0030】
R、G、BのうちG(550nm)が目標とする点5に合わせても、RやBがずれてしまう場合を、図8の点1〜9を用いて考えると、表2の(1)〜(8)に場合分けできるが、これらはA=(1)〜(2)、B=(3)〜(4)、C=(5)〜(6)、D=(7)〜(8)の4つに分類できる(表2)。このとき光学フィルム5に要求されるRe、Rthの値を表1から読み取り、ReおよびRthの波長依存性を同時に表3にまとめた。
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
なお、以上の説明では、R、G、Bのうち中心波長であるG(550nm)が理想の点
(ii)となる場合、すなわちRe(550)およびRth(550)がともにゼロである場合を例示したが、実際の液晶表示装置においては、必ずしも完全にRe(550)およびRth(550)がともにゼロを達成することは困難である。できる限りこれらRe(550)およびRth(550)がともにゼロであることが求められるが、本発明の発明者は、Re(550)およびRth(550)ができるだけゼロに近く色味変化が許容できる範囲として、本発明の光学フィルムの光学性能は、0≦Re(550)≦10nmかつー25≦Rth(550)≦25(nm)、好ましくは0≦Re(550)≦5nmかつ−15≦Rth(550)≦15(nm)であることを見出した。
【0034】
このように、本発明によれば、液晶表示装置の出射側の偏光板の手前でR、G、Bが分離しているのを表3のA、B、C、Dに分類したいずれかの波長依存性を有する光学フィルムを適用すればR、G、Bを一致させて光漏れを防ぐことができる。すなわちどのような液晶モード、光学材料・光学部品の構成であっても、本発明の光学フィルムを用いて表3のA、B、C、Dに分類したいずれかRe、Rthの波長依存性を持つ光学フィルムを適用すれば斜めから見た際の色味変化を防ぐことができる。すなわち本発明の範囲は、液晶層の表示モードによって限定されず、VAモード、IPSモード、OCBモード、TNモードおよびECBモード等、いずれの表示モードの液晶層を有する液晶表示装置にも用いることができる。
【0035】
本発明の光学フィルムは、フィルムのレターデーションが下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする。
(1)0≦Re(550)≦10
(2)−25≦Rth(550)≦25
(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)
ここで、I=Re(450)−Re(550)
II=Re(650)−Re(550)
III=Rth(450)−Rth(550)
IV=Rth(650)−Rth(550)である。
【0036】
上の(1)および(2)は先に述べたように、本発明の光学フィルムは、Re(550)およびRth(550)ができるだけゼロに近い値である必要があることを示す。式(3)は、R、G、Bを液晶表示装置で一致させるためには、適当なReおよびRthの波長依存性が必要であることを示す。式(3)を満たさない光学性能のフィルムは、ReおよびRthの波長依存性がほとんどないことを示し、このフィルムでは液晶表示装置を斜めから見たときに生じる色味変化を低減できないことがわかる。
【0037】
式(3)は、好ましくは
|I|+|II|+|III|+|IV|>2.0(nm)
であり、さらに好ましくは
|I|+|II|+|III|+|IV|>4.0(nm)
である。
【0038】
本発明の光学フィルムは、上記した様にA、B、C、Dに分類することができ、それぞれ以下の光学性能を持つ。
【0039】
本発明の光学フィルムのうち、分類Aに属する光学フィルムのレタ−デーションは、先の式(1)〜(3)を満たし、かつ下記式(4−A)〜(7−A)を満たすことが好ましい。
(4―A)−50≦I≦0
(5―A)0≦II≦50
(6―A)−50≦III<0
(7―A)0<IV≦50
より好ましくは、
(4―A’)−25≦I≦0
(5―A’)0≦II≦25
(6―A’)−25≦III<0
(7―A’)0<IV≦25である。
【0040】
本発明の光学フィルムのうち、分類Bに属する光学フィルムのレタ−デーションは、先の式(1)〜(3)を満たし、かつ下記式(4−B)〜(7−B)を満たすことが好ましい。
(4―B)−50≦I<0
(5―B)0<II≦50
(6―B)0≦III≦50
(7―B)−50≦IV≦0
より好ましくは、
(4―B’)−25≦I<0
(5―B’)0<II≦25
(6―B’)0≦III≦25
(7―B’)−25≦IV≦0である。
【0041】
本発明の光学フィルムのうち、分類Cに属する光学フィルムのレタ−デーションは、先の式(1)〜(3)を満たし、かつ下記式(4−C)〜(7−C)を満たすことが好ましい。
(4―C)0≦I≦50
(5―C)−50≦II≦0
(6―C)0<III≦50
(7―C)−50≦IV<0
より好ましくは、
(4―C’)0≦I≦25
(5―C’)−25≦II≦0
(6―C’)0<III≦25
(7―C’)−25≦IV<0である。
【0042】
本発明の光学フィルムのうち、分類Dに属する光学フィルムのレタ−デーションは、先の式(1)〜(3)を満たし、かつ下記式(4−D)〜(7−D)を満たすことが好ましい。
(4―D)0<I≦50
(5―D)−50≦II<0
(6―D)−50≦III≦0
(7―D)0≦IV≦50
より好ましくは、
(4―D’)10≦I≦50
(5―D’)−50≦II≦−10
(6―D’)−50≦III≦−30
(7―D’)30≦IV≦50である。
【0043】
[レターデーションおよびその波長分散特性]
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。IPSモードの場合にはRth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフイルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフイルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の2方向からレタデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。dはフィルムの膜厚を表す。
【0044】
【数1】
【0045】
注記:上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレタデーション値をあらわす。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d −−− 式(2)
【0046】
[光学フィルムの材質]
本発明の光学フィルムを形成する材料としては、光学性能、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるポリマーが好ましく、上述のRe、Rthが、上述した光学性能を満たす範囲であればどのような材料を用いても良い。例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーを混合したポリマーも例として挙げられる。
【0047】
また、本発明の光学フィルムを形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることができる。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等が挙げられる。
【0048】
また、本発明の光学フィルムを形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきたセルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を特に好ましく用いることができる。セルロースアシレートの代表例としては、トリアセチルセルロースが挙げられる。以下にセルロースアシレートについて詳細を説明する。
【0049】
[セルロースアシレート原料綿]
本発明の光学フィルムに用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、セルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0050】
[セルロースアシレート置換度]
次に上述のセルロースを原料に製造されるセルロースアシレートについて記載する。セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。セルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。
【0051】
上述のようにセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることがのぞましい。さらには置換度が2.56〜3.00であることがのぞましく、2.75〜3.00であることがよりのぞましい。アシル置換度が大きいほどフィルムの光学異方性を低下させることができる。
【0052】
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
【0053】
本発明の発明者が鋭意検討した結果、上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基が、実質的にアセチル基、プロピオニル基及びブタノイル基から選ばれる少なくとも2種類である場合においては、その全置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性が低下できることがわかった。より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、さらにのぞましくは2.65〜3.00である。
【0054】
[セルロースアシレートの重合度]
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538に詳細に記載されている。特に、アシル置換基が、実質的にアセチル基のみからなり、平均重合度が180〜550であるセルロースアシレートを用いて本発明の光学フィルムを作製すると、良好な性能を発揮できる。
【0055】
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。2.0〜4.0であることが好ましく、2.0〜3.5であることがさらに好ましく、2.3〜3.3であることが最も好ましい。
【0056】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0057】
セルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
【0058】
[光学フィルムへの添加剤]
本発明の光学フィルム溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下させる化合物、光学異方性を上昇させる化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0059】
[Rthを低下させる化合物]
本発明の光学フィルムは、フィルム膜厚方向のレターデーションRth(550)を低下させる化合物(以下、Rth低下剤ともいう)を、下記式(8)および(9)をみたす範囲で少なくとも一種含有することが望ましい。
(8)(Rth[A]−Rth[0])/A≦−1.0
(9)0.01≦A≦30である。
上記数式(8)、(9)において、より望ましくは、
(8’):(Rth[A]−Rth[0])/A≦−2.0
(9’):0.01≦A≦20であり、さらに望ましくは、
(8”):(Rth[A]−Rth[0])/A≦−3.0
(9”):0.01≦A≦15である。
ここで、Rth[A]:Rth(550)を低下させる化合物をA%含有した光学フィルムの550nmでのRth(nm)Rth[0]:Rth(550)を低下させる化合物を含有しない光学フィルムの550nmでのRth(nm)A:光学フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
【0060】
(Rth低下剤の構造的特徴)
本発明の光学フィルムにおけるRth低下剤の構造と機能について以下に説明する。光学異方性を十分に低下させ、Re、Rthがともにゼロに近くなるようにするためには、フィルム中の高分子ポリマーが、正面方向及び膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いることが好ましい。また、光学異方性を低下させる化合物は、高分子ポリマーに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
【0061】
Rth低下剤は、芳香族基を含有してもよいし、含有しなくてもよい。またRth低下剤は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
【0062】
(LogP値)
本発明の光学フィルムを作製するに当たって材料としてセルロースアシレートのような親水性ポリマーを用いる場合には、上記のように、フィルム中の高分子ポリマーが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制するRth低下剤のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜7である化合物を選択することが好ましい。logP値が7以下の化合物であれば、高分子ポリマーとの相溶性に優れ、フィルムの白濁や粉吹きなどの不都合を生じない。またlogP値が0以上の化合物は、親水性が高くなりすぎることがなく、セルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させるなどの問題が生じないので好ましい。logP値としてさらに好ましい範囲は1〜6であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
【0063】
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS Z−7260−107(2000)に記載のフラスコ震盪法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は、実測に代わって、計算化学的手法又は経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.comput.Sci.”,27巻、p.21(1987年)}、Viswanadhan’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.comput.Sci.”,29巻、p.163(1989年)}、Broto’s fragmentation法{“Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.”,19巻、p.71(1984年)}などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法がより好ましい。ある化合物のlogPの値が、測定方法又は計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断するものとする。
【0064】
(Rth低下剤の物性)
Rth低下剤は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。またRth低下剤は、高分子ポリマーフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
【0065】
Rth低下剤の添加量は、高分子ポリマーの0.01〜30質量%であることが好ましく、0.05〜25質量%であることがより好ましく、0.1〜20質量%であることが特に好ましい。
【0066】
Rth低下剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。Rth低下剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0067】
このようなRth低下剤としては、特開2005−139304に開示されている化合物を好ましく用いることができる。その中でも下記の一般式(1)で表される化合物が好ましい。次ぎに一般式(1)の化合物について説明する。
一般式(1):
【0068】
【化1】
【0069】
上記一般式(1)において、R11はアルキル基又はアリール基を表し、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。また、R11、R12及びR13の炭素原子数の総和は10以上であることが特に好ましく、またこれらのアルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。
【0070】
置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基及びスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基及びスルホンアミド基が特に好ましい。
【0071】
アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシルなど)が特に好ましい。
【0072】
アリール基としては、炭素原子数が6〜30のものが好ましく、6〜24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニルなど)が特に好ましい。一般式(1)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0073】
【化2】
【0074】
【化3】
【0075】
【化4】
【0076】
【化5】
【0077】
Rth低下剤としては、また下記の一般式(2)で表される化合物を例示することができる。
一般式(2):
【0078】
【化6】
【0079】
上記一般式(2)において、R21はアルキル基又はアリール基を表し、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものが最も好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。アリール基は炭素原子数が6〜36のものが好ましく、6〜24のものがより好ましい。さらに、R21及びR22の炭素原子数の総和は10以上であることが好ましく、それぞれ、アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。
【0080】
上記のアルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素など)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基及びアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基及びアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基及びアシルアミノ基である。
【0081】
以下に、一般式(2)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0082】
【化7】
【0083】
【化8】
【0084】
【化9】
【0085】
【化10】
【0086】
【化11】
【0087】
【化12】
【0088】
[波長分散調整剤]
本発明の光学フィルムにおいて、短波長側の光学異方性を大きくしたい場合には下記式(10)で表されるΔRthを増加させる化合物(以下、波長分散調整剤ともいう)を、下記式(11)および(12)をみたす範囲で少なくとも一種含有することが好ましい。光学フィルム原料として使用するポリマーの種類や、前述のRth低下剤等の他の添加剤との組み合わせにもよるが、短波長側のRthを大きくしたい場合(前述の表3の分類Bまたは分類C)には、単位フィルム原料ポリマー量に対する波長分散調整剤の使用量を多くすることが好ましい。逆に短波長側のRthを小さくしたい場合(前述の表3の分類Aまたは分類D)には、その使用量は少なくするか、もしくは使用しないことが好ましい。
(10)ΔRth=Rth(450)−Rth(650)
(11)(ΔRth[B]−ΔRth[0])/B≧1.0
(12)0.01≦B≦30
上記数式(11)、(12)において、より望ましくは、
(11’):(ΔRth[B]−ΔRth[0])/B≧5.0
(12’):0.05≦B≦20であり、さらに望ましくは、
(11”):(ΔRth[B]−ΔRth[0])/B≧10.0
(12”):0.1≦B≦10ここで、 ΔRth[B]:ΔRthを増加させる化合物をB%含有した光学フィルムのΔRth(nm)ΔRth[0]:ΔRthを増加させる化合物を含有しない光学フィルムのΔRth(nm)B:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
【0089】
上記の波長分散調整剤としては、200〜400nmの紫外領域に吸収を有する化合物を少なくとも1種用いることが好ましい。 200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は長波長側よりも短波長側の吸光度が大きい波長分散特性をもつ。この化合物自身が光学フィルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいては光学特性の波長分散は吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。
【0090】
したがって上述したような、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身の光学特性の波長分散が短波長側が大きいと想定されるものを用いることによって、光学フィルムの光学特性の波長分散を調製することができる。このためには波長分散を調整する化合物はフィルム原料ポリマーに十分均一に相溶することが要求される。このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmが好ましいが、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。
【0091】
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるに、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、波長分散調整剤を光学フィルムに添加する場合、分光透過率が優れている要求される。本発明の光学フィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下が好ましく、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがのぞましい。
【0092】
上述のような、本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤は揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
【0093】
上述した本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤の添加量は、フィルム原料ポリマーに対して0.01ないし30質量%であることが好ましく、0.1ないし20質量%であることがより好ましく、0.2ないし10質量%であることが特に好ましい。
【0094】
(波長分散調整剤の添加方法)
波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。またこれら波長分散調整剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0095】
本発明に好ましく用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
【0096】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、下記一般式(3)で示されるものが本発明の波長分散調整剤として好ましく用いられる。
一般式(3):Q31−Q32−OH
(式中、Q31は含窒素芳香族ヘテロ環、Q32は芳香族環を表す。)
【0097】
Q31は含窒素方向芳香族へテロ環をあらわし、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5〜6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等が挙げられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾールである。
【0098】
Q31で表される含窒素芳香族ヘテロ環は、更に置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
【0099】
Q32で表される芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。最も好ましくはベンゼン環である。
【0100】
芳香族ヘテロ環として、好ましくは窒素原子又は硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として、好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0101】
Q32で表される芳香族環として、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。Q32は更に置換基を有してもよく、下記の置換基Tが好ましい。
【0102】
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、i−プロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子
(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0103】
一般式(3)として、好ましくは下記一般式(3−1)で表される化合物である。一般式(3−1):
【0104】
【化13】
【0105】
上記一般式(3−1)において、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37及びR38は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、置換基としては上記の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は、更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0106】
R31及びR33として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
【0107】
R32、及びR34として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0108】
R35及びR38として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0109】
R36及びR37として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
【0110】
一般式(3)として、より好ましくは下記一般式(3−2)で表される化合物である。一般式(3−2):
【0111】
【化14】
【0112】
式中、R31、R33、R36及びR37は、上記一般式(3−1)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0113】
以下に一般式(3)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0114】
【化15】
【0115】
【化16】
【0116】
以上例にあげたベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以上のものが、本発明の光学フィルムを作製した場合に、保留性の点で有利であり好ましい。
【0117】
また本発明に用いられる波長分散調整剤の1つであるベンゾフェノン系化合物としては一般式(4)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(4):
【0118】
【化17】
【0119】
式中、Q41及びQ42は、それぞれ独立に芳香族環を表す。X41はNR41(R41は水素原子又は置換基を表す)、酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0120】
Q41及びQ42で表される芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0121】
Q41及びQ42で表される芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。更に好ましくはベンゼン環である。
【0122】
Q41及びQ42で表される芳香族ヘテロ環として、好ましくは酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のどれか1つを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0123】
Q41及びQ42であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換又は無置換のベンゼン環である。
【0124】
Q41及びQ42は更に置換基を有してもよく、前記の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸、スルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
【0125】
X41は、NR42(R42は水素原子又は置換基を表す。置換基としては前記の置換基Tが適用できる)、酸素原子又は硫黄原子を表し、X41として好ましくは、NR42
(R42として好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい)、又は酸素であり、特に好ましくは酸素である。
【0126】
一般式(4)として、好ましくは下記一般式(4−1)で表される化合物である。
一般式(4−1):
【0127】
【化18】
【0128】
式中、R411、R412、R413、R414、R415、R416、R417、R418及びR419は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、置換基としては前記の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は、更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0129】
R411、R413、R414、R415、R416、R418及びR419として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0130】
R412として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0131】
R417として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。
【0132】
一般式(4)として、より好ましくは下記一般式(4−2)で表される化合物である。
一般式(4−2):
【0133】
【化19】
【0134】
式中、R420は水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアリール基を表し、置換基としては前記の置換基Tが適用できる。R420として、好ましくは置換又は無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20の置換又は無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜12の置換又は無置換のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基、などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12の置換又は無置換のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。
【0135】
一般式(4)であらわされる化合物は特開平11−12219号公報記載の公知の方法により合成できる。
【0136】
以下に一般式(4)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0137】
【化20】
【0138】
【化21】
【0139】
また本発明に用いられる波長分散調整剤の1つであるシアノ基を含む化合物としては一般式(5)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(5):
【0140】
【化22】
【0141】
式中、Q51及びQ52は、それぞれ独立に芳香族環を表す。X51及びX52は水素原子又は置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。Q51及びQ52で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0142】
芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。更に好ましくはベンゼン環である。
【0143】
芳香族ヘテロ環として、好ましくは窒素原子又は硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0144】
Q51及びQ52であらわされる芳香族環として、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。Q51及びQ52は更に置換基を有してもよく、前記の置換基Tが好ましい。
【0145】
X51及びX52は、水素原子又は置換基を表し、少なくともどちらか1つは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。X51及びX52で表される置換基は、前記の置換基Tを適用することができる。また、X51及びX52はで表される置換基は更に他の置換基によって置換されてもよく、X51及びX52は、それぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
【0146】
X51及びX52として、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基{−C(=O)OR51(R51は、炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基及びこれらを組み合せたもの)}である。
【0147】
一般式(5)として、好ましくは下記一般式(5−1)で表される化合物である。
一般式(5−1):
【0148】
【化23】
【0149】
式中、R511、R512、R513、R514、R515、R516、R517、R518、R519及びR520は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、置換基としては前記の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。X511及びX512は、それぞれ前記一般式(5)におけるX51及びX52と同義である。
【0150】
R511、R512、R514、R515、R516、R517、R519及びR520として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0151】
R513及びR518として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0152】
一般式(5)として、より好ましくは下記一般式(5−2)で表される化合物である。
一般式(5−2):
【0153】
【化24】
【0154】
式中、R513及びR518は一般式(5−1)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。X513は水素原子又は置換基を表し、置換基としては、前記の置換基Tが適用でき、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。
【0155】
X513は水素原子又は置換基を表し、置換基としては、前記の置換基Tが適用でき、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。X513として、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基{−C(=O)OR52(R52は、炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基及びこれらを組み合せたもの)}である。
【0156】
一般式(5)として、更に好ましくは一般式(5−3)で表される化合物である。
一般式(5−3):
【0157】
【化25】
【0158】
式中、R513及びR518は、一般式(5−1)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R52は炭素数1〜20のアルキル基を表す。R52として、好ましくは、R513及びR518が両方水素の場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
【0159】
R52として、好ましくはR513及びR518が水素以外の場合には、一般式(5−3)で表される化合物の分子量が300以上になり、且つ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。
【0160】
本発明において、一般式(5)で表される化合物は、“J.Am.Chem.Soc.”,63巻、3452頁(1941年)記載の方法によって合成できる。
【0161】
以下に一般式(5)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0162】
【化26】
【0163】
【化27】
【0164】
【化28】
【0165】
本発明の光学フィルムは、以上で説明したRth(550)を低下させる化合物と、式
(10)ΔRth=Rth(450)−Rth(650)で表されるΔRthを増加させる化合物とを、それぞれ少なくとも1種ずつ含んでも良い。
【0166】
[高分子ポリマー溶液の有機溶媒]
本発明では、光学フィルムの製造方法は特に限定はされない。公知のあらゆる技術を用いることができ、溶融製膜法を用いても溶液製膜法を用いてもよい。ソルベントキャスト法により高分子からなる光学フィルムを製造することが好ましく、原料のポリマーを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。本発明の主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0167】
以上、本発明の光学フィルムに対しては塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としても良いし、発明協会公開技報2001−1745(12頁〜16頁)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としても良く、本発明の光学フィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0168】
その他、本発明の光学フィルムに用いる高分子ポリマー溶液及びフィルムについての溶媒は、その溶解方法も含め以下の特許に開示されており、好ましい態様である。それらは、例えば、特開2000−95876、特開平12−95877、特開平10−324774、特開平8−152514、特開平10−330538、特開平9−95538、特開平9−95557、特開平10−235664、特開平12−63534、特開平11−21379、特開平10−182853、特開平10−278056、特開平10−279702、特開平10−323853、特開平10−237186、特開平11−60807、特開平11−152342、特開平11−292988、特開平11−60752、特開平11−60752などに記載されている。これらの特許によると本発明の高分子ポリマーに好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、本発明においても好ましい態様である。
【0169】
[光学フィルムの製造工程]
[溶解工程]
本発明の高分子ポリマー溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明における高分子ポリマー溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
【0170】
(ドープ溶液の透明度)
本発明の高分子ポリマー溶液のドープ透明度としては85%以上であることがのぞましい。より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上であることがのぞましい。本発明においては高分子ポリマードープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認した。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、島津製作所)で550nmの吸光度を測定した。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比から高分子ポリマー溶液の透明度を算出した。
【0171】
[流延、乾燥、巻き取り工程]
次に、本発明の高分子ポリマー溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明の光学フィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が好ましく用いられる。以下に、該方法の好ましい態様について述べる。
溶解機(釜)から調製されたドープ(高分子ポリマー溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ドープ膜を金属支持体からフィルムとして剥離後、フィルムを延伸する工程を設けてもよい。この際、延伸温度や延伸倍率等を適宜調節することによりフィルムの光学特性の波長依存性を調節することもできる。本発明の光学フィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
【0172】
本発明の光学フィルムの膜厚は20〜200μmであることが好ましい。30〜160μmであることがより好ましく、40〜120μmであることがさらに好ましい。
【0173】
[積層型の光学補償フィルム]
本発明の光学フィルムは、下記式(13)〜(14)を満たす光学異方性層と積層してもよい。
(13)0≦Re≦400
(14)−400≦Rth≦400好ましくは、
(13’)0≦Re≦300
(14’)−300≦Rth≦300である。
尚、式(13)〜(14’)中のRe及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。測定する波長は、400〜700nmであることが好ましく、450〜650nmであることがより好ましく、500〜600nmであることが最も好ましい。
【0174】
本発明において、上記(13)および(14)を満たす光学異方性層は単層構造に限定されるものではなく、複数の層を積層した積層構造を有していてもよい。積層構造の態様では、各層の素材は同種でなくてもよく、例えば、ディスコティック液晶、コレステリック液晶、棒状液晶を用いた光学異方性層を単独または組み合わせて用いても良い。また、ポリマーフィルムと液晶性化合物からなる光学異方性層との積層体であってもよい。積層構造の態様では、厚さを考慮すると、高分子の延伸フィルムの積層体よりも、塗布によって形成された層を含む塗布型の積層体が好ましい。
【0175】
(液晶化合物からなる光学補償フィルム)
上記(13)および(14)を満たす光学異方性層の作製にあたっては、光学異方性層の作製に液晶性化合物を用いた場合は、液晶性化合物には多様な配向形態があるので、液晶性化合物を特定の配向状態に固定して作製した光学異方性層は、単層でまたは複数層の積層体により、所望の光学的性質を発現する。即ち、前記光学異方性層は、支持体と該支持体上に形成された1以上の光学異方性層とからなる態様であってもよい。かかる態様の光学異方性層全体のレターデーションは、光学異方性層の光学異方性によって調整することができる。液晶性化合物は、その分子の形状から、ディスコティック液晶、コレステリック液晶、棒状液晶に分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがあり、いずれも使用することができる。
【0176】
(ポリマーフィルムからなる光学異方性層)
上記した様に、光学異方性層はポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびセルロースエステル(例、セルローストリアセーテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体あるいはポリマー混合物を用いてもよい。
【0177】
ポリマーフィルムの光学異方性は、延伸により得ることが好ましい。延伸は一軸延伸または二軸延伸であることが好ましい。具体的には、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、またはポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸、これらを組み合わせての二軸延伸が好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを用いて、二枚以上のフィルム全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることが最も好ましい。
【0178】
また、光学異方性層を形成するポリマーフィルムとして、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドポリエステルイミド、およびポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマー材料を用い、これを溶媒に溶解した溶液を基材に塗布し、溶媒を乾燥させてフィルム化する方法も好ましく用いることができる。この際、上記ポリマーフィルムと基材とを積層後、ともに延伸して光学異方性を発現させて光学異方性層として用いる手法も好ましく用いることができ、本発明の光学フィルムは上記基材として好ましく用いることができる。また、上記ポリマーフィルムを別の基材の上で作製しておき、ポリマーフィルムを基材から剥離させたのちに本発明の光学フィルムと貼合し、合わせて光学異方性層として用いることも好ましい。この手法ではポリマーフィルムの厚さを薄くすることができ、50μm以下であることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
【0179】
[表面処理]
本発明の光学フィルムは、場合により表面処理を行うことによって、光学フィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0180】
[アルカリ鹸化処理によるフィルム表面の接触角]
本発明の光学フィルムを偏光板の透明保護フィルムとして用いる場合、表面処理の有効な手段の1つとしてアルカリ鹸化処理が上げられる。この場合、アルカリ鹸化処理後のフィルム表面の接触角が55°以下であることがのぞましい。よりのぞましくは50°以下であり、45°以下であることがさらにのぞましい。接触角の評価法はアルカリ鹸化処理後のフィルム表面に直径3mmの水滴を落とし、フィルム表面と水滴のなす角をもとめる通常の手法によって親疎水性の評価として用いることができる。
【0181】
[偏光板]
本発明の光学フィルムは、偏光板の透明保護膜として好ましく用いることができる。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られた光学フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面に保護フィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。保護フィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、保護フィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置してもよい。全ての可視光波長領域で光学補償できるようにする本発明の目的からは、液晶セル側の偏光板保護フィルムとして本発明の光学フィルムを用いることが効果的であり好ましい。
【0182】
[光学補償フィルム一体型偏光板]
本発明の光学フィルムを光学補償フィルムとして用いた場合、例えば本発明の光学フィルムの片面に光学異方性層を塗布または貼り合わせた場合は、すでに偏光子の両面を保護フィルムで貼り合わせて作製された偏光板に粘着剤を介して光学補償フィルムを貼り合わせてもよいし、もしくは、本発明の光学フィルムの光学異方性層を塗布または貼り合わせていない側を表面処理し、偏光板の保護フィルムとして、直接偏光子と貼り合わせてもよい。この場合、例えばポリビニルアルコール系の偏光板を作製する方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。たとえば、光学フィルムの表面をアルカリ鹸化処理、プラズマ処理、コロナ放電処理などにより表面改変し、ポリビニルアルコールフィルム(PVA)を沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に貼り合わせる方法を用いることができる。
【0183】
[機能層]
本発明の光学フィルムを偏光板の保護膜とし、液晶表示装置に用いる場合、表面に各種の機能層を付与してもよい。それらは、例えば、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、防眩層、反射防止層、易接着層、光学補償層、配向層、液晶層帯電防止層、などである。本発明の光学フィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0184】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、光学フィルム(光学補償フィルム)、液晶セル、偏光板を組み合わせて用いる。光学フィルム(光学補償フィルム)、液晶セル、偏光板は密着していることが好ましく、密着させるためには公知の粘着剤や接着剤を用いることができる。
【0185】
本発明の光学フィルム、およびこれを用いた光学補償フィルムや偏光板は、様々な表示モードの液晶表示装置に適用することができる。代表的な表示モードとして、VA(Vertically Aligned)、IPS(In−Plane Switching)、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の光学フィルムを用いたときの効果は、とくに大画面液晶表示装置で顕著であり、その点で大型TV用に用いられるVAモード、IPSモード、OCBモードの液晶表示装置に用いることが特に好ましい。
【0186】
本発明の光学フィルムは、VAモードなどの黒表示時に液晶分子が垂直配向する表示モード、IPSやFFSモードなどの黒表示時に液晶分子が平行配向する表示モード、液晶分子がベンド配向するOCBモードなどに好ましく用いることができる。
例えば本発明の光学フィルム、光学補償フィルム、及び偏光板の少なくともいずれかを液晶表示装置に使用する場合、液晶表示装置は、光学異方性層を少なくとも一層含んでいてもよい。該光学異方性層は下記式(15)および(16)を満たすことが好ましい。
(15)0≦Re≦400
(16)−400≦Rth≦400
尚、(15)及び(16)式中、Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。測定する波長は、400〜700nmであることが好ましく、450〜650nmであることがより好ましく、500〜600nmであることが最も好ましい。
光学異方性層は単層構造に限定されるものではなく、複数の層を積層した積層構造を有していてもよい。積層構造の態様では、各層の素材は同種でなくてもよく、例えば、ディスコティック液晶、コレステリック液晶、棒状液晶を用いた光学異方性層を単独または組み合わせて用いても良い。また、ポリマーフィルムと液晶性化合物からなる光学異方性層との積層体であってもよい。積層構造の態様では、厚さを考慮すると、高分子の延伸フィルムの積層体よりも、塗布によって形成された層を含む塗布型の積層体が好ましい。
光学異方性層については、例えば前述の積層型の光学補償フィルムの説明において挙げたものを使用することができる。
【0187】
液晶表示装置が、黒表示時に液晶分子が垂直配向する液晶セルを含むとき、斜め方向の光漏れが小さく、かつ色味変化が小さい良好な視野角特性を得るためには、10≦Re≦150、および、50≦Rth≦400を満たす光学異方性層を少なくとも一層含むことが好ましい。該光学異方性層は、20≦Re≦120、および、60≦Rth≦350を満たすことがさらに好ましく、30≦Re≦100、および、80≦Rth≦300を満たすことが最も好ましい。
液晶表示装置が、黒表示時に液晶分子が平行配向する液晶セルを含むとき、斜め方向の光漏れが小さく、かつ色味変化が小さい良好な視野角特性を得るためには、下記式(19)〜(22)のいずれかを満たす光学異方性層を少なくとも一層含むことが好ましい。本発明の液晶表示装置のさらに好ましい態様の一つは、式(20)を満たす光学異方性層および式(21)を満たす光学異方性層を含む。もう一つのさらに好ましい態様は、式(20)を満たす光学異方性層および式(22)を満たす光学異方性層を含む。
(19)100≦Re≦400、且つ−50≦Rth≦50
(20)0≦Re≦20、且つ−400≦Rth≦−50
(21)60≦Re≦200、且つ20≦Rth≦120
(22)30≦Re≦150、且つ100≦Rth≦400
液晶表示装置が、黒表示時に液晶分子がベンド配向する液晶セルを含むとき、斜め方向の光漏れが小さく、かつ色味変化が小さい良好な視野角特性を得るためには、ディスコティック液晶化合物を含有する光学異方性層を少なくとも一層含むことが好ましい。該ディスコティック液晶化合物の配向状態は、円盤面が該光学異方性層面に対して傾斜していることが好ましく、該傾斜角は光学異方性層の厚さ方向において変化するハイブリッド配向であることがさらに好ましい。
尚、各光学異方性層のRe及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。測定する波長は、400〜700nmであることが好ましく、450〜650nmであることがより好ましく、500〜600nmであることが最も好ましい。
【実施例】
【0188】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本発明を実施するにあたり、原料素材の選択の際の検討基準としてポリマー素材にセルロースアシレートを用いた場合は、そのアシル置換度が大きいほどレターデーションを低下させるのに有効なことを見出した。セルローストリアセテートのアシル置換度を変えた場合のRth(550)を図9に示した。
【0189】
また、本発明ではフィルムの光学特性を制御する添加剤のひとつとして、Rth低下剤の量が多いほどフィルムのレターデーションを低下させるのに有効なことを見出した。化合物119の量を変えた場合のRth(550)を図10に示した。
【0190】
また、本発明ではフィルムの光学特性を制御する添加剤のひとつとして、波長分散調整剤の量が多いほどフィルムのΔRthを上昇させるのに有効なことを見出した。化合物UV102の量を変えた場合のRth(550)を図11に示した。
【0191】
以上のようにして本発明の光学フィルムは、ポリマー素材の種類や、光学特性を制御する添加剤の種類と量を適宜選択した。図9〜11は一例であり効果は素材の組合せなどにより程度が異なるが、これらの考えに基づいて光学フィルム作製の設計指針とした。
尚、本実施例において、Rth低下剤及び波長分散調整剤として示した化合物は、明細書中記載の化合物を表す。
【0192】
[実施例1]
(セルロースアシレート溶液CA−1の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレートの溶液CA−1を調製した。
【0193】
(セルロースアシレート溶液CA−1組成)
Ac置換度2.92のセルロースアセテート 100.0質量部
Rth低下剤 化合物119 14.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
【0194】
(マット剤溶液MT−1の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液MT−1を調製した。
【0195】
(マット剤溶液MT−1組成)
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアシレート溶液CA−1 10.3質量部
【0196】
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液AD−1を調製した。
【0197】
(添加剤溶液AD−1組成)
波長分散調整剤 UV−208 7.6質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液CA−1 12.8質量部
【0198】
(光学フィルム試料001の作製)
上記セルロースアシレート溶液CA−1を94.6質量部、マット剤溶液MT−1を1.3質量部、添加剤溶液AD−1を2.3質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成でRth低下剤および波長分散調整剤のセルロースアシレートに対する質量比はそれぞれ14.0%、1.0%であった。残留溶剤量30%でフィルムをバンドから剥離し、135℃で20分間乾燥させセルロースアシレートフィルムを製造した。出来あがった光学フィルム001の残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は80μmであった。
【0199】
このフィルムを25℃60%RHの環境下で2時間以上調湿したのち、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて25℃60%RHの環境下で2時間以上調湿し、波長450nm,550nm,650nmにおいて3次元複屈折測定を行い、面内のレターデーションReおよび傾斜角を変えてReを測定することで得られる膜厚方向のレターデーションRthを求めたところ表4に示す光学性能であることがわかった。
【0200】
[実施例2]
実施例1のセルロースアシレート溶液CA−1中の化合物119の量を12.0質量部に、添加剤溶液AD−1中のUV−208の量を3.0質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム002を得た。
【0201】
[実施例3]
実施例1のセルロースアシレート溶液CA−1中の化合物119の量を10.0質量部に、添加剤溶液AD−1中のUV−208の量を1.5質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム003を得た。
【0202】
[実施例4]
実施例1の添加剤溶液AD−1中のUV−208をUV−20に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム004を得た。
【0203】
[実施例5]
実施例1の添加剤溶液AD−1中のUV−208をUV−3に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム005を得た。
【0204】
[実施例6]
実施例1のセルロースアシレート溶液CA−1中の化合物119の量を16.0質量部に、添加剤溶液AD−1中のUV−208をUV−3に、UV−3の量を15.2質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム006を得た。
【0205】
[実施例7]
実施例6の添加剤溶液中のUV−3の量を12.2質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム007を得た。
【0206】
[実施例8]
実施例1のセルロースアシレート溶液CA−1中の化合物119の量を12.0質量部に、添加剤溶液AD−1中のUV−208をUV−102に、UV−102の量を9.1質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム008を得た。
【0207】
[比較例1]
比較例として、市販のセルロースアシレートフィルムであるフジタックTD80UL(富士写真フィルム社製、膜厚80μm)を用意した。このフィルムは表4に示す光学性能を持っていた。
【0208】
[比較例2]
比較例として、市販のシクロオレフィンのフィルムであるゼオノアZF−14(日本ゼオン社製、膜厚100μm)を用意した。このフィルムは表4に示す光学性能を持っていた。
【0209】
【表4】
【0210】
[実施例9]
(偏光板加工)
(偏光板の作製)
本発明の光学フィルム001の表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理した光学フィルム001と、同様のアルカリ鹸化処理したフジタックTD80UL(富士写真フィルム社製)を用意し、これらの鹸化した面が偏光膜側となるようにして偏光膜を間に挟んで貼り合わせ、光学フィルム001とTD80ULが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板101を得た。この際、光学フィルム001およびTD80ULの遅相軸が偏光膜の吸収軸と平行になるように貼り付けた。同様にして本発明の光学フィルム002〜008についても偏光板を作製し、以下これら偏光板を偏光板102〜108という。これら偏光板はいずれも十分な偏光性能を持っていた。
【0211】
比較例1のTD80ULについても上記と同様の操作により偏光板201を作製した。すなわち偏光板201は、両面がTD80ULで保護されている偏光板である。また、比較例2のゼオノアフィルムZF−14については、表面処理をアルカリ鹸化ではなく、コロナ放電処理を行い、それ以外の方法は同様にして偏光板202を得た。これら偏光板201、202は十分な偏光性能を持っていた。
【0212】
[実施例10]
(VAパネルへの実装)
液晶表示装置に用いる光学補償フィルムの光学特性の種類により、以下のA〜Dの4系統にてVAパネルへの実装評価を行った。
【0213】
(分類A)
本発明の光学フィルムをVAモードの液晶表示装置にて実装評価を行った。VAモードの液晶TV(LC−20C5、シャープ(株)製)の表裏の偏光板および位相差板を剥して実装用の液晶セルとして用いた。上記実施例9と同様にして偏光膜を作製した。この偏光膜の一方の面に、表面を鹸化処理した光学補償フィルム4−Aを、他方の面に、表面を鹸化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタック TD80UL、富士写真フイルム(株)製)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせ、偏光板4−Aを作製した。光学補償フィルム4−Aの光学特性を表5に示す。図5の構成で、光学補償フィルム4と偏光板1として偏光板4−A、液晶セル3として上記のVA液晶セル、光学フィルム5と偏光板2として上記実施例9で作製した偏光板101を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた。この際、偏光板4−Aの光学補償フィルム4−Aが液晶セル側になるように、かつ、偏光板101の光学フィルム001が液晶セル側になるように貼り合わせた。また光学補償フィルム4−Aの遅相軸は偏光板1の吸収軸と直交するように貼り合わせた。上記と同様にして、実施例9で得た偏光板102、比較例1、2を用いた偏光板201、202も表5に示す光学補償フィルム4−Aとの組合せで貼り合わせ実装した。
【0214】
【表5】
【0215】
(分類B)
上記実施例10(分類A)と同様の構成にて、偏光板101の代わりに偏光板103、104、201、または202を用い、さらに光学補償フィルム4−Aの代わりに表6に示す光学性能を有する光学補償フィルム4−Bを用いて貼り合わせ実装した。
【0216】
【表6】
【0217】
(分類C)
上記実施例10(分類A)と同様の構成にて、偏光板101の代わりに偏光板105、106、201、または202を用い、さらに光学補償フィルム4−Aの代わりに表7に示す光学性能を有する光学補償フィルム4−Cを用いて貼り合わせ実装した。
【0218】
【表7】
【0219】
(分類D)
上記実施例10(分類A)と同様の構成にて、偏光板101の代わりに偏光板107、108、201、または202を用い、さらに光学補償フィルム4−Aの代わりに表8に示す光学性能を有する光学補償フィルム4−Dを用いて貼り合わせ実装した。
【0220】
【表8】
【0221】
なお、以上表5〜表8に示した光学補償フィルム4−A、4−B、4−C、4−D、の作製は以下のようにしておこなった。
【0222】
(光学補償フィルムの作製)(セルロースアシレート溶液CA−2の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレートの溶液CA−2を調製した。
【0223】
(セルロースアシレート溶液CA−2組成)
Ac置換度2.81のセルロースアセテート 100.0質量部
TPP(トリフェニルフォスフェート) 7.8質量部
BDP(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
【0224】
(マット剤溶液MT−2の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液MT−2を調製した。
【0225】
(マット剤溶液MT−2組成)
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアシレート溶液CA−2 10.3質量部
【0226】
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液AD−2を調製した。
【0227】
(添加剤溶液AD−2組成)
下記のレターデーション発現剤X 11.5質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液CA−2 12.8質量部
【0228】
レターデーション発現剤X
【0229】
【化29】
【0230】
(セルロースアシレートフィルム試料401の作製)
上記セルロースアシレート溶液CA−2を94.6質量部、マット剤溶液MT−2を1.3質量部、添加剤溶液AD−2を2.3質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成でレターデーション発現剤のセルロースアシレートに対する質量比は1.0%であった。残留溶剤量30%でフィルムをバンド から剥離し、140℃で40分間乾燥させセルロースアシレートフィルムを製造した。出来あがったセルロースアシレートフィルム401の残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は140μmであった。
【0231】
(光学補償フィルム4−Aの作製)
上記で得たセルロースアシレートフィルム401を、連続した長尺フィルムをテンタークリップの長手方向の間隔が把持、搬送している間に狭くなる構造のテンターを用いて幅方向に延伸する工程を持っている延伸装置に送り出し、フィルム温度を180℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に延伸を開始、フィルム長手方向は0.72倍緩和収縮させ、テンタークリップにより幅方向を1.23倍延伸し、延伸後の膜厚182μmの光学補償フィルム4−Aを得た。
【0232】
(光学補償フィルム4−Bの作製)
上記光学補償フィルム4−Aの作製方法において、セルロースアシレート溶液CA−2組成中、Ac置換度2.81のセルロースアセテートをAc置換度2.92のセルロースアセテートにかえる以外は、同様の操作を行い、セルロースアシレートフィルム試料402を得た。これを用いて、上記光学補償フィルム4−Aの作製と同様の手法により光学補償フィルム4−Bを得た。
【0233】
(光学補償フィルム4−Cの作製)
上記光学補償フィルム4−Aの作製方法において、セルロースアシレート溶液CA−2組成中、Ac置換度2.81のセルロースアセテートをAc置換度2.86のセルロースアセテートにかえる以外は、同様の操作を行い、セルロースアシレートフィルム試料403を得た。これを用いて、フィルム温度を180℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に固定ニ軸延伸を開始、フィルム長手方向は1.2倍、幅方向を1.1倍延伸し、延伸後の膜厚180μmの光学補償フィルム4−Cを得た。
【0234】
(光学補償フィルム4−Dの作製)
上記光学補償フィルム4−Aの作製方法において、添加剤溶液AD−2組成中、レターデーション発現剤である化合物Xの量を11.5質量部から8.6質量部に変える以外は、同様の操作を行い、セルロースアシレートフィルム試料404を得た。これを用いて、フィルム温度を180℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に固定ニ軸延伸を開始、フィルム長手方向は1.2倍、幅方向を1.1倍延伸し、延伸後の膜厚180μmの光学補償フィルム4−Dを得た。
【0235】
(パネルの色味視野角評価)
上記(分類A)〜(分類D)で作製したVAモードの実装パネルを、図5の構成で偏光板1側にバックライトを設置した液晶表示装置とし、各々のサンプルについて、画面を黒表示とした場合の方位角45度、極角60度からの斜め方向の色味変化を評価した。結果は表4に記載した。色味評価において、色味変化(黄色味または赤味)が全く見られない場合を○、極角60度で色味変化が見られるが極角を60度から30度まで戻すと色味変化はなくなる場合を△、いずれの極角でも色味変化が認められる場合を×、とした。結果を表4に示す。本実施例にて作製した本発明の光学フィルム001〜008を用いたサンプルはいずれも斜め方向見ても色味変化が無く、また光漏れが見られなかった。一方、比較例1および2のフィルムを用いた液晶パネルを斜め方向から見たところ光漏れが認められ、漏れている光の着色(やや赤み傾向あり)が確認できた。これは、比較例1のTD80ULはRe、Rthの光学性能、とくにRthの絶対値が大きく、十分な光学補償が行われていないためである。また、比較例2のゼオノアZF−14は、本発明の光学フィルムと異なり、波長依存性がないため、図6において液晶セルを通過した偏光状態がR、G、B各波長で異なる点に移動しているのを、図5の光学フィルム5で一致させることができないためである。また、画面を白表示とした際にも測定を行い、黒表示時とのコントラスト比を求めたところ、本発明の光学フィルムを用いた場合はいずれも優れたコントラスト比を有することがわかった。
【0236】
以上より、本発明のReおよびRthが所望の性能をもつ光学フィルムは、色味変化を抑制可能で広範囲にわたり高いコントラスト比を有する優れたものであり、これらを用いた偏光板、さらには液晶表示装置も優れた性能を有することを確認できた。
【0237】
[実施例11]
(IPSパネルへの実装評価)
図2の構成で、偏光板1として、上記実施例9で作製した偏光板108、偏光板2として、上記実施例9で作製した偏光板201、液晶セル3として市販のIPS型の液晶セル、を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた液晶表示装置(IPS−1)を作製した。この際、液晶セルと偏光板108の光学フィルム008側を貼り合わせた。また上下の偏光板の透過軸を直交させ、上側の偏光板の透過軸は液晶セルの分子長軸方向と平行(すなわち光学補償層の遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルや電極・基板はIPSとして従来から用いられているものがそのまま使用できる。液晶セルの配向は水平配向であり、液晶は正の誘電率異方性を有している。一例として、IPSモードを用いた市販の液晶テレビ(松下電器製、TH−32LX500)から、偏光板やその他部材を取り除いた液晶セル、を好ましく用いることができる。
【0238】
比較例として上記と同様にして、図2の構成で、偏光板1、偏光板2の両方とも上記実施例9で作製した偏光板201、液晶セル3として市販のIPS型の液晶セル、を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた液晶表示装置(IPS−2)を作製した。
【0239】
以上のようにして作製した液晶表示装置IPS−1、IPS−2について、実施例10で行ったのと同様の評価方法で装置正面からの方位角方向45度、極角方向60度における黒表示時の光漏れ率を測定した。結果を表4に示す。本発明の光学フィルムを用いた偏光板108を用いた液晶表示装置IPS−1では、光漏れが小さく、斜めから見た色味変化がなかったのに対し、比較例1の光学フィルムを用いた偏光板201を用いた液晶表示装置IPS−2では光漏れがあり、色味変化が見られた。さらにIPS−1の方が、コントラストの視野角特性に優れていることがわかった。
【0240】
なお、本実施例11と比較例をポアンカレ球上で表記すると図12および図13となる。図12の偏光板1側の入射光がTinで偏光板2側の出射光がPoutである。実際の理想の出射光のポイントはAoutであるため、PoutとAoutの距離が近いほど理想に近い。この距離が黒表示時の光漏れに相当する。図13において、TinからP1までは偏光板201に使用された比較例のフィルムのレターデーションによって動く。P1からP2はAoutを中心に円弧を描いて液晶セルのレターデーション分だけ動く。さらにP2から偏光板2に使用した比較例のフィルムのレターデーションによってPoutへ動く。一方、図12では本発明の光学フィルム108にはほとんどレターデーションがないためにTinからP1の動きがほとんどない。このことによってP1からP2の動きの円弧の半径が小さくなり、結果としてPoutとAoutの距離が、図13の場合よりも近くなる。以上のことからも、本発明の光学フィルムを用いた場合の光漏れが少ないことを説明できる。
【0241】
[実施例12]
(光学補償フィルム5−Aの作製)
上記実施例10と同様にして、セルロースアシレートを含む溶液を調製した。セルロースアシレート溶液CA−2を100質量部とマット剤溶液MT−2を1.3質量部を混合し、さらに、セルロースアセテート100質量部に対してレタデーション発現剤Xが6質量部となるように添加剤溶液AD−2を混合し、製膜用ドープを調製した。
【0242】
得られたドープを、幅2mで長さ65mの長さのバンドを有する流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、130℃の条件で、テンターを用いて20%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外してセルロースアセテートフィルムを作製した。延伸終了後、さらに乾燥して残留溶媒量を0.1質量%未満としてセルロースアセテートフィルム(T1)を作製した。なお、使用したセルロースアシレートのTgは140℃である。
【0243】
作製したフィルムを温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、下記の組成のアルカリ溶液をバーコーターにより、14ml/m2塗布し、110℃に加熱したスチーム式遠赤外線ヒーター((株)ノリタケカンパニー製)の下に10秒間滞留させた後、同じくバーコーターを用いて純水を3ml/m2塗布した。このときのフィルム温度は40℃であった。次いでファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返して後に、70℃の乾燥ゾーンに2秒滞留させて乾燥した。このようにして、セルロースアセテートフィルム表面に鹸化処理を施した。
【0244】
<アルカリ溶液組成>
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.7質量部
イソプロパノール 64.8質量部
プロピレングリコール 14.9質量部
C16H33O(CH2CH2O)10H(界面活性剤) 1.0質量部
【0245】
得られたセルロースアセテートフィルムT1の幅は1340mmであり、厚さは88μmであった。自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)社製)を用いて、作製したセルロースアセテートフィルム(T1)の光学特性を測定した。590nmにおける面内のレタデーション(Re)は60nmであり、厚さ方向のレタデーション(Rth)は190nmであった。この光学異方性層の遅相軸の平均方向はフィルム長手に対して実質的に直交していた。
【0246】
上記作製した長尺状のセルロースアセテートフィルム(T1)の鹸化処理を施した面に、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。
【0247】
配向膜塗布液の組成
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
【0248】
【化30】
【0249】
下記の組成の棒状液晶化合物を含む塗布液を、上記作製した配向膜上に#5.0のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度は20m/minとした。室温から80℃に連続的に加温する工程で溶媒を乾燥させ、その後、80℃の乾燥ゾーンで90秒間加熱し、棒状液晶性化合物を配向させた。続いて、フィルムの温度を60℃に保持して、UV照射により液晶化合物の配向を固定化し、光学異方性層B1を形成した。続いて、55℃の1.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液中に作製したフィルムを2分間浸漬した後、水に浸漬し十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、35℃の5mmol/L硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。このようにして、セルロースアセテートフィルムT1に光学異方性層B1が積層された光学補償フィルム5−Aを作製した。
【0250】
棒状液晶化合物を含む塗布液の組成
下記の棒状液晶性化合物(I) 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のフッ素系ポリマー 0.4質量部
下記のピリジニム塩 1質量部
メチルエチルケトン 172質量部
【0251】
【化31】
【0252】
【化32】
【0253】
【化33】
【0254】
作製した光学補償フィルム5−Aから棒状液晶性化合物を含む光学異方性層B1のみを剥離し、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)社製)を用いて光学特性を測定した。波長590nmで測定した光学異方性層B1のみのReは0nmであり、Rthは−260nmであった。また、棒状液晶分子がフィルム面に対して実質的に垂直に配向している光学異方性層が形成されたことが確認できた。
【0255】
(光学補償フィルム5−Bの作製)
ポリカーボネートフィルムの両面に、熱収縮性フィルムをアクリル系粘着層を介して接着し、これを加熱して熱収縮性フィルムを収縮させながら延伸装置を用いて延伸した後、熱収縮性のフィルムを剥がした。このようにして、Reが268nm、Rthが1nm、厚さが60μmである光学補償フィルム5−Bを作製した。
【0256】
(光学補償フィルム5−Cの作製)
アートンフィルム(JSR(株)製)の両面に、熱収縮性フィルムをアクリル系粘着層を介して接着し、これを加熱して熱収縮性フィルムを収縮させながら延伸装置を用いて延伸した後、熱収縮性のフィルムを剥がした。このようにして、Reが195nm、Rthが−20nm、厚さが135μmである光学補償フィルム5−Cを作製した。
【0257】
(光学補償フィルム5−Dの作製)
アートンフィルム(JSR(株)製)を一軸延伸して、Reが170nm、Rthが85nm、厚さが70μmであるフィルムA1を作製した。
アートンフィルムA1の表面にコロナ処理を施し、その上に、上記と同様にして配向膜を形成した。さらに、上記の棒状液晶化合物を含む塗布液を用いて光学異方性層B2を形成した。光学異方性層B2のみのReは0nmであり、Rthは−135nmであった。また、棒状液晶分子がフィルム面に対して実質的に垂直に配向している光学異方性層が形成されたことが確認できた。このようにして、アートンフィルムA1に光学異方性層B2が積層された光学補償フィルム5−Dを作製した。
【0258】
(偏光板5−Aの作製)
上記実施例9と同様にして偏光膜を作製した。この偏光膜の一方の面に、上記作製した光学補償フィルム5−Aの光学異方性層B1が形成されていない面(即ち、セルロースアセテートフィルムT1の裏面)を、他方の面に、表面を鹸化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタック TD80UL、富士写真フイルム(株)製)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせ、偏光板5−Aを作製した。このとき、偏光膜の吸収軸とセルロースアセテートフィルムT1の遅相軸とは直交となるようにした。
【0259】
(偏光板5−Bの作製)
上記作製した光学補償フィルム5−Bと実施例9の偏光板104とをアクリル系粘着剤を用いて貼り合せた。このとき、偏光膜の吸収軸と光学補償フィルム5−Bの遅相軸とは平行となるようにした。このようにして、光学補償フィルム付き偏光板5−Bを作製した。
【0260】
(偏光板5−Cの作製)
上記実施例9と同様にして偏光膜を作製した。この偏光膜の両方の面に、表面を鹸化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタック T40UZ、富士写真フイルム(株)製、Re=1nm、Rth=35nm、厚み40μm)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせ、偏光板301を作製した。
上記作製した光学補償フィルム5−Cと偏光板301とをアクリル系粘着剤を用いて貼り合せた。このとき、偏光膜の吸収軸と光学補償フィルム5−Cの遅相軸とは直交となるようにした。このようにして、光学補償フィルム付き偏光板5−Cを作製した。
【0261】
(偏光板5−Dの作製)
上記作製した光学補償フィルム5−Dと偏光板301とをアクリル系粘着剤を用いて貼り合せた。このとき、光学補償フィルム5−Dに含まれる光学異方性層B2が偏光板301側となるようにし、かつ、偏光膜の吸収軸と光学補償フィルム5−Dの遅相軸とは平行となるようにした。このようにして、光学補償フィルム付き偏光板5−Dを作製した。
【0262】
(IPSパネルへの実装評価)
液晶表示装置に用いる光学補償フィルムの光学特性の種類により、以下のA〜Dの4系統にてIPSパネルへの実装評価を行った。
【0263】
(分類A)
図5の構成で、光学補償フィルム4と偏光板1として上記偏光板5−A、液晶セル3としてIPS液晶セル、光学フィルム5と偏光板2として、上記実施例9で作製した偏光板104を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた。この際、偏光板5−Aの光学補償フィルム5−Aが液晶セル側になるように、かつ、偏光板104の光学フィルム004が液晶セル側になるように貼り合わせた。また、上下の偏光板の吸収軸を直交させ、下側の偏光板の吸収軸は液晶セルの分子長軸方向と直交(すなわち光学補償フィルム5−Aの遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は平行)とした。なお、液晶テレビTH−32LX500(松下電器産業(株)社製)から、液晶セルを取り出し、視認者側及びバックライト側に貼られてあった偏光板及び光学フィルムを剥したものを、液晶セル3として用いた。この液晶セルは、電圧無印加状態及び黒表示時では液晶分子はガラス基板間で実質的に平行配向しており、その遅相軸方向は画面に対して水平方向であった。同様にして、実施例9で得た比較例1、2の光学フィルムを本発明の光学フィルムの代わりに用いた偏光板を使用して同様の層構成で貼り合わせ実装した。
【0264】
(分類B)
図5の構成で、光学補償フィルム4と偏光板1として上記偏光板5−B、液晶セル3としてIPS液晶セル、光学フィルム5と偏光板2として、上記実施例9で作製した偏光板104を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた。この際、偏光板5−Bの光学補償フィルム5−Bが液晶セル側になるように、かつ、偏光板104の光学フィルム004が液晶セル側になるように貼り合わせた。また、上下の偏光板の吸収軸を直交させ、下側の偏光板の吸収軸は液晶セルの分子長軸方向と直交(すなわち光学補償フィルム5−Bの遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルは上記分類Aと同じ平行配向セルを用いた。同様にして、実施例9で得た比較例1、2の光学フィルムを本発明の光学フィルムの代わりに用いた偏光板を使用して同様の層構成で貼り合わせ実装した。
【0265】
(分類C)
図5の構成で、光学補償フィルム4と偏光板1として上記偏光板5−C、液晶セル3としてIPS液晶セル、光学フィルム5と偏光板2として、上記実施例9で作製した偏光板104を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた。この際、偏光板5−Cの光学補償フィルム5−Cが液晶セル側になるように、かつ、偏光板104の光学フィルム004が液晶セル側になるように貼り合わせた。また、上下の偏光板の吸収軸を直交させ、下側の偏光板の吸収軸は液晶セルの分子長軸方向と直交(すなわち光学補償フィルム5−Cの遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は平行)とした。液晶セルは上記分類Aと同じ平行配向セルを用いた。同様にして、実施例9で得た比較例1、2の光学フィルムを本発明の光学フィルムの代わりに用いた偏光板を使用して同様の層構成で貼り合わせ実装した。
【0266】
(分類D)
図5の構成で、光学補償フィルム4と偏光板1として上記偏光板5−D、液晶セル3としてIPS液晶セル、光学フィルム5と偏光板2として、上記実施例9で作製した偏光板104を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた。この際、偏光板5−Dの光学補償フィルム5−Dが液晶セル側になるように、かつ、偏光板104の光学フィルム004が液晶セル側になるように貼り合わせた。また、上下の偏光板の吸収軸を直交させ、下側の偏光板の吸収軸は液晶セルの分子長軸方向と直交(すなわち光学補償フィルム5−Dの遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルは上記分類Aと同じ平行配向セルを用いた。同様にして、実施例9で得た比較例1、2の光学フィルムを本発明の光学フィルムの代わりに用いた偏光板を使用して同様の層構成で貼り合わせ実装した。
【0267】
以上のようにして作製した液晶表示装置において、装置正面からの方位角方向45度、極角方向60度における黒表示時の光漏れ率および色味変化を測定した。結果を表4に示す。本発明の光学フィルムを用いた偏光板104を用いた液晶表示装置では、斜めから見た色味変化がなく、漏れ光も小さかったのに対し、比較例1、2を用いた偏光板を用いた液晶表示装置では色味変化が大きく、漏れ光も大きかった。
【0268】
[実施例13]
(OCBパネルへの実装評価)
実施例1で得た本発明の光学フィルム001を用いて、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置での評価をしたところ、コントラスト視野角が良好な性能が得られ、この際の色味変化も上記の実施例10で行った同様の評価を行ったところ良好な結果を得た。また、比較例1、2の光学フィルムを用いて同様の評価を実施したところ、本発明よりも劣っていた。以上の結果を表4に示す。
【0269】
以上のように、本発明の光学フィルム、それを用いた光学補償フィルム、それを用いた偏光板は、色味変化を抑制可能で、広範囲の視野角にわたり高いコントラスト比を有する優れた光学フィルムであることが分かった。
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に有用な光学フィルムに関するものである。また、さらにそれを用いた光学補償フィルム、偏光板などの光学材料および液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低電圧・低消費電力で小型化・薄膜化が可能など様々な利点からパーソナルコンピューターや携帯機器のモニター、テレビ用途に広く利用されている。このような液晶表示装置は液晶セル内の液晶分子の配列状態により様々なモードが提案されているが、従来は液晶セルの下側基板から上側基板に向かって約90°捩れた配列状態になるTNモードが主流であった。
一般に液晶表示装置は液晶セル、光学補償シート、偏光子から構成される。光学補償シートは画像着色を解消したり、視野角を拡大するために用いられており、延伸した複屈折フィルムや透明フィルムに液晶を塗布したフィルムが使用されている。例えば、特許文献1ではディスコティック液晶をトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し配向させて固定化した光学補償シートをTNモードの液晶セルに適用し、視野角を広げる技術が開示されている。しかしながら、大画面で様々な角度から見ることが想定されるテレビ用途の液晶表示装置は視野角依存性に対する要求が厳しく、前述のような手法をもってしても要求を満足することはできていない。そのため、IPS(In−Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、VA(Vertically Aligned)モードなど、TNモードとは異なる液晶表示装置が研究されている。特にVAモードはコントラストが高く、比較的製造の歩留まりが高いことからTV用の液晶表示装置として着目されている。
【0003】
しかしながらVAモードでは、パネル法線方向においてはほぼ完全な黒色表示ができるものの、斜め方向からパネルを観察すると光漏れが発生し、視野角が狭くなるという問題があった。この問題を解決するためにフィルム面内の屈折率に対して膜厚方向の屈折率が十分小さい屈折率異方性を有する位相差板を液晶層と偏光板の間の少なくとも一方に配置することで光漏れを低減することが提案されている(例えば特許文献1)。また、正の一軸性の屈折率異方性を有する第一の位相差板とフィルム面内の屈折率に対して膜厚方向の屈折率が十分小さい負の屈折率異方性を有する第2の位相差板とを併用することにより光漏れを低減する方法が提案されている(例えば特許文献2)。さらにフィルムの3次元方向の屈折率がいずれも異なる、光学的に二軸の位相差板を用いることによりVAモードの液晶表示装置の視野角特性を向上することが提案されている(例えば特許文献3)。
【0004】
一方IPSモードにおいても、黒表示時の対角位斜め入射方向での僅かな光漏れが表示品質の低下の原因として顕在化してきた。この色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、液晶層と偏光板の間に複屈折特性を有する光学補償材料を配置することがIPSモードにおいても検討されている。例えば、傾斜時の液晶層のレターデーションの増減を補償する作用を有する光軸を互いに直交した複屈折媒体を基板と偏光板との間に配置することで、白表示又は中間調表示を斜め方向から直視した場合の色付きが改善できることが開示されている(特許文献4参照)。また、負の固有複屈折を有するスチレン系ポリマーやディスコチック液晶性化合物からなる光学補償フィルムを使用した方法(特許文献5、6、7参照)や、光学補償フィルムとして複屈折が正で光学軸がフィルムの面内にある膜と複屈折が正で光学軸がフィルムの法線方向にある膜とを組み合わせる方法(特許文献8参照)、レターデーションが二分の一波長の二軸性の光学補償シートを使用する方法(特許文献9参照)、偏光板の保護膜として負のレターデーションを有する膜を使い、この表面に正のレターデーションを有する光学補償層を設ける方式(特許文献10参照)が提案されている。また、Nzが0.4〜0.6であり、面内位相差が200〜350nmの位相差膜を用いることにより直交偏光板を斜めから見た場合の偏光軸交差角度の直交からのズレに基づく光漏れを抑える発明が開示されている(特許文献11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−210423号
【特許文献2】特許3027805号
【特許文献3】特許3330574号
【特許文献4】特開平9−80424号公報
【特許文献5】特開平10−54982号公報
【特許文献6】特開平11−202323号公報
【特許文献7】特開平9−292522号公報
【特許文献8】特開平11−133408号公報
【特許文献9】特開平11−305217号公報
【特許文献10】特開平10−307291号公報
【特許文献11】特開2004−4642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の方法はある波長域(例えば550nm付近の緑光)に対して光漏れを低減しているのみであり、それ以外の波長域(例えば450nm付近の青光、650nm付近の赤光)に対する光漏れは考慮していない。このため例えば黒表示をして斜めから観察すると、青色や赤色に着色するいわゆるカラーシフトの問題が解決されていなかった。
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、広範囲にわたり高いコントラスト比を有し、カラーシフト(斜め方向から見た際の色味変化)を抑制可能な光学フィルム並びに該光学フィルムを用いた光学補償フィルム、偏光板などの光学材料及び液晶表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は以下の手段によって達成された。
<1>
レターデーションが下記式(1)〜(3)及び(4−A)〜(7−A)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
(1)0≦Re(550)≦10
(2)−25≦Rth(550)≦25
(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)
(4−A)−50≦I≦0
(5−A)0≦II≦50
(6−A)−50≦III<0
(7−A)0<IV≦50
ここで、I=Re(450)−Re(550)II=Re(650)−Re(550)III=Rth(450)−Rth(550)IV=Rth(650)−Rth(550)である。
(式中Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
<2>
光学フィルムの原料ポリマーにセルロースアシレートが使用されていることを特徴とする<1>に記載の光学フィルム。
<3>
セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基のみからなり、その全置換度が2.56〜3.00であることを特徴とする<2>に記載の光学フィルム。
<4>
セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなり、その全置換度が2.50〜3.00であることを特徴とする<2>に記載の光学フィルム。
<5>
Rth(550)を低下させる化合物を、下記式(8)および(9)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(8)(Rth[A]−Rth[0])/A≦−1.0
(9)0.01≦A≦30
ここで、Rth[A]:Rth(550)を低下させる化合物をA%含有した光学フィルムの550nmにおけるRth(nm)Rth[0]:Rth(550)を低下させる化合物を含有しない光学フィルムの550nmにおけるRth(nm)A:光学フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
<6>
下記式(10)で表されるΔRthを増加させる化合物を、下記式(11)および(12)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(10)ΔRth=Rth(450)−Rth(650)
(11)(ΔRth[B]−ΔRth[0])/B≧1.0
(12)0.01≦B≦30
ここで、ΔRth[B]:ΔRthを増加させる化合物をB%含有した光学フィルムのΔRth(nm)ΔRth[0]:ΔRthを増加させる化合物を含有しない光学フィルムのΔRth(nm)B:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
<7>
膜厚が20〜200μmであることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の光学フィルム。
<8>
<1>〜<7>のいずれか1項に記載の光学フィルムおよび下記式(13)および(14)を満たす光学異方性層を含むことを特徴とする光学補償フィルム。
(13)0≦Re≦400
(14)−400≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
<9>
<1>〜<7>のいずれか1項に記載の光学フィルム、又は<8>に記載の光学補償フィルムの少なくとも1枚と、偏光子とを有することを特徴とする偏光板。
<10>
<1>〜<7>のいずれか1項に記載の光学フィルム、<8>に記載の光学補償フィルム、及び<9>に記載の偏光板の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
<11>
<1>〜<7>のいずれか1項に記載の光学フィルム、<8>に記載の光学補償フィルム、及び<9>に記載の偏光板の少なくともいずれかを含み、かつ、下記式(15)および(16)を満たす光学異方性層を少なくとも一層含むことを特徴とする液晶表示装置。
(15)0≦Re≦400
(16)−400≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
<12>
黒表示時に液晶分子が垂直配向、平行配向、またはベンド配向している液晶セルを含むことを特徴とする<10>または<11>に記載の液晶表示装置。
<13>
黒表示時に液晶分子が垂直配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層が下記式(17)および(18)を満たす層を少なくとも一層含むことを特徴とする<12>に記載の液晶表示装置。
(17)10≦Re≦150
(18)50≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
<14>
黒表示時に液晶分子が平行配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層が下記式(19)〜(22)のいずれかを満たす層を少なくとも一層含むことを特徴とする<12>に記載の液晶表示装置。
(19)100≦Re≦400、且つ−50≦Rth≦50
(20)0≦Re≦20、且つ−400≦Rth≦−50
(21)60≦Re≦200、且つ20≦Rth≦120
(22)30≦Re≦150、且つ100≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
<15>
黒表示時に液晶分子がベンド配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層がディスコティック液晶化合物を含有する層を少なくとも含むことを特徴とする<12>に記載の液晶表示装置。
<16>
レターデーションが下記式(1)〜(3)及び(4−A)〜(7−A)を満たす光学フィルムを用い、かつIPS型の液晶セルを有する液晶表示装置。
(1)0≦Re(550)≦10
(2)−25≦Rth(550)≦25
(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)
(4−A)−50≦I≦0
(5−A)0≦II≦50
(6−A)−50≦III<0
(7−A)0<IV≦50
ここで、I=Re(450)−Re(550)
II=Re(650)−Re(550)
III=Rth(450)−Rth(550)
IV=Rth(650)−Rth(550)である。
(式中Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
本発明は、上記<1>〜<16>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項についても記載している。
【0008】
[1]フィルムのレターデーションが下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
(1)0≦Re(550)≦10
(2)−25≦Rth(550)≦25
(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)ここで、I=Re(450)−Re(550)II=Re(650)−Re(550)III=Rth(450)−Rth(550)IV=Rth(650)−Rth(550)である。
(式中Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)は波長450nm、550nm、650nmそれぞれの光で測定した厚み方向のレターデーション値である。)
[2]前記I、II、III、及びIVが下記式(4−A)〜(7−A)を満たすことを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
(4−A)−50≦I≦0
(5−A)0≦II≦50
(6−A)−50≦III<0
(7−A)0<IV≦50
[3]前記I、II、III、及びIVが下記式(4−B)〜(7−B)を満たすことを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
(4−B)−50≦I<0
(5−B)0<II≦50
(6−B)0≦III≦50
(7−B)−50≦IV≦0
[4]前記I、II、III、及びIVが下記式(4−C)〜(7−C)を満たすことを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
(4−C)0≦I≦50
(5−C)−50≦II≦0
(6−C)0<III≦50
(7−C)−50≦IV<0
[5]前記I、II、III、及びIVが下記式(4−D)〜(7−D)を満たすことを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
(4−D)0<I≦50
(5−D)−50≦II<0
(6−D)−50≦III≦0
(7−D)0≦IV≦50
【0009】
[6]光学フィルムの原料ポリマーに、セルロースアシレートが使用されていることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の光学フィルム。
[7]セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基のみからなり、その全置換度が2.56〜3.00であることを特徴とする[6]に記載の光学フィルム。
[8]セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなり、その全置換度が2.50〜3.00であることを特徴とする[6]に記載の光学フィルム。
[9]Rth(550)を低下させる化合物を、下記式(8)および(9)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の光学フィルム。
(8)(Rth[A]−Rth[0])/A≦−1.0
(9)0.01≦A≦30ここで、Rth[A]:Rth(550)を低下させる化合物をA%含有した光学フィルムの550nmにおけるRth(nm)Rth[0]:Rth(550)を低下させる化合物を含有しない光学フィルムの550nmにおけるRth(nm)A:光学フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
[10]下記式(10)で表されるΔRthを増加させる化合物を、下記式(11)および(12)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載の光学フィルム。
(10)ΔRth=Rth(450)−Rth(650)
(11)(ΔRth[B]−ΔRth[0])/B≧1.0
(12)0.01≦B≦30
ここで、ΔRth[B]:ΔRthを増加させる化合物をB%含有した光学フィルムのΔRth(nm)ΔRth[0]:ΔRthを増加させる化合物を含有しない光学フィルムのΔRth(nm)B:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
【0010】
[11]膜厚が20〜200μmであることを特徴とする[1]〜[10]に記載の光学フィルム。
[12][1]〜[11]のいずれかに記載の光学フィルムおよび下記式(13)及び
(14)を満たす光学異方性層を含むことを特徴とする光学補償フィルム。
(13)0≦Re≦400
(14)−400≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
[13]光学異方性層がディスコティック液晶を含むことを特徴とする[12]に記載の光学補償フィルム。
[14]光学異方性層がコレステリック液晶を含むことを特徴とする[12]または[13]に記載の光学補償フィルム。
[15]光学異方性層が棒状液晶を含むことを特徴とする[12]〜[14]のいずれかに記載の光学補償フィルム。
【0011】
[16]光学異方性層がポリマーフィルムを含むことを特徴とする[12]〜[15]のいずれかに記載の光学補償フィルム。
[17]光学異方性層を形成するポリマー化合物が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、およびポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマー材料を含有することを特徴とする[12]〜[16]のいずれかに記載の光学補償フィルム。
[18][1]〜[11]のいずれかに記載の光学フィルム、又は[12]〜[17]のいずれかに記載の光学補償フィルムの少なくとも1枚と、偏光子とを有することを特徴とする偏光板。
[19][1]〜[11]のいずれかに記載の光学フィルム、[12]〜[17]のいずれかに記載の光学補償フィルム、及び[18]に記載の偏光板、の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
[20][1]〜[11]のいずれかに記載の光学フィルム、[12]〜[17]のいずれかに記載の光学補償フィルム、及び[18]に記載の偏光板の少なくともいずれかを含み、かつ、下記式(15)及び(16)を満たす光学異方性層を少なくとも1層含むことを特徴とする液晶表示装置。
(15)0≦Re≦400
(16)−400≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【0012】
[21]光学異方性層がディスコティック液晶を含むことを特徴とする[20]に記載の液晶表示装置。
[22]光学異方性層がコレステリック液晶を含むことを特徴とする[20]または[21]に記載の液晶表示装置。
[23]光学異方性層が棒状液晶を含むことを特徴とする[20]〜[22]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[24]光学異方性層がポリマーフィルムを含むことを特徴とする[20]〜[23]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[25]光学異方性層を形成するポリマー化合物が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、およびポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマー材料を含有することを特徴とする[20]〜[24]のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0013】
[26]黒表示時に液晶分子が垂直配向、平行配向、またはベンド配向している液晶セルを含むことを特徴とする[19]〜[25]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[27]黒表示時に液晶分子が垂直配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層が下記式(17)および(18)を満たす層を少なくとも一層含むことを特徴とする[26]に記載の液晶表示装置。
(17)10≦Re≦150
(18)50≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
[28]黒表示時に液晶分子が平行配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層が下記式(19)〜(22)のいずれかを満たす層を少なくとも一層含むことを特徴とする[26]に記載の液晶表示装置。
(19)100≦Re≦400、−50≦Rth≦50
(20)0≦Re≦20、−400≦Rth≦−50
(21)60≦Re≦200、20≦Rth≦120
(22)30≦Re≦150、100≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
[29]黒表示時に液晶分子がベンド配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層がディスコティック液晶化合物を含有する層を少なくとも含むことを特徴とする[26]に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学フィルムは、本発明者らの鋭意検討の結果得られた知見に基づいて完成されたものであり、素材や製造方法を適宜選択する等により、光学補償フィルムの面内のレターデーションと厚さ方向のレターデーションの波長分散を独立に制御し、その光学的な最適値を求め、液晶セルの黒状態の視角補償を全ての波長において可能にするものである。具体的には、素材に関しては、ポリマー原料素材の選択、光学特性を制御する添加剤の種類と量を適宜選択した。その結果、本発明の液晶表示装置は、黒表示時の斜め方向の光抜けが軽減され、視野角コントラストが著しく改善されている。また、本発明の液晶表示装置は、黒表示時の斜め方向の光抜けを全ての可視光波長領域で抑えることができるため、従来問題であった視野角に依存した黒表示時の色ずれが大きく改善されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の液晶表示装置の構成例を説明する概略模式図である。
【図2】従来の液晶表示装置の構成例を説明する概略模式図である。
【図3】従来の液晶表示装置の構成例を説明する概略模式図である。
【図4】従来の液晶表示装置の一例における入射光の偏光状態の変化を説明するために用いたポアンカレ球の概略図である。
【図5】本発明の液晶表示装置の構成例を説明する概略模式図である。
【図6】本発明の液晶表示装置の一例における入射光の偏光状態の変化を説明するために用いたポアンカレ球の概略図である。
【図7】本発明に用いられる光学フィルムの一例についての光学特性を示すグラフである。
【図8】偏光状態を説明するために用いたポアンカレ球の概略図である。
【図9】セルロースアシレートのアシル置換度と光学フィルムのRthの関係の一例について示すグラフである。
【図10】Rth低下剤濃度と光学フィルムのRthの関係の一例について示すグラフである。
【図11】波長分散調整剤濃度とΔRthの関係の一例について示すグラフである。
【図12】本発明の液晶表示装置の一例(実施例11のIPS−1)における入射光の偏光状態の変化を説明するために用いたポアンカレ球の概略図である。
【図13】従来の液晶表示装置の一例(実施例11のIPS−2)における入射光の偏光状態の変化を説明するために用いたポアンカレ球の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の作用を説明する。本発明は液晶表示装置の駆動方式には依存せずすべての液晶モードで有効であるが、例として図1では、一般的なVAモードの液晶表示装置の構成を示す模式図を示した。VAモードの液晶表示装置は、電圧無印加時、即ち黒表示時に、液晶が基板面に対して垂直配向する液晶層を有する液晶セル3と、該液晶セル3を挟持し、且つ互いの透過軸方向(図1では縞線で示した)を直交させて配置された偏光板1及び偏光板2とを有する。図1中、光は、偏光板1側から入射するものとする。電圧無印加時に、法線方向、即ち、z軸方向に進む光が入射した場合、偏光板1を通過した光は、直線偏光状態を維持したまま、液晶セル3を通過し、偏光板2において完全に遮光される。その結果、コントラストの高い画像を表示できる。
【0017】
しかし、図2に示す様に、斜光入射の場合には状況が異なる。光が、z軸方向でない斜め方向、即ち、偏光板1および2の偏光方向に対して斜めの方位(いわゆるOFF AXIS)から入射する場合、入射光は、液晶セル3の垂直配向した液晶層を通過する際に、斜め方向のレターデーションの影響を受け、その偏光状態が変化する。さらに、偏光板1と偏光板2の見かけの透過軸が直交配置からずれる。この2つの要因のため、OFF AXISにおける斜め方向からの入射光は、偏光板2で完全に遮光されず、黒表示時に光抜けが生じ、コントラストを低下させることになる。
【0018】
ここで、極角と方位角を定義する。極角はフィルム面の法線方向、即ち、図1及び図2中のz軸からの傾き角であり、例えば、フィルム面の法線方向は、極角=0度の方向である。方位角は、x軸の正の方向を基準に反時計回りに回転した方位を表しており、例えばx軸の正の方向は方位角=0度の方向であり、y軸の正の方向は方位角=90度の方向である。前述したOFF AXISにおける斜め方向とは、極角が0度ではない場合で且つ、方位角=45度、135度、225度、315度の場合を主に指す。
【0019】
図3に、通常の液晶表示装置における偏光の作用を説明するための構成例の模式図を示す。図3の構成は、図1の構成に、液晶セル3と偏光板1との間に光学補償フィルム4を配置した構成である。この構成のVAモード液晶表示装置において光学補償フィルム4は、一般に波長550nmにおけるRe(550)=20〜100nmおよびRth(550)=100〜300nm程度のものが用いられる。また光学補償フィルム4は通常、正の屈折率異方性素材を用いて作製される場合はRe(450)≧Re(550)≧Re(650)かつRth(450)≧Rth(550)≧Rth(650)、すなわちRe、Rthともに短波長ほど大きい値を持つものである。
【0020】
図4に、図3の構成における補償機構について、ポアンカレ球を用いて説明した図を示す。ポアンカレ球は偏光状態を記述する三次元マップで、球の赤道上は直線偏光を表している。ここで、光の伝播方向は方位角=45度、極角=34度である。図4中、S2軸は、紙面上から下に垂直に貫く軸であり、図4は、ポアンカレ球を、S2軸の正の方向から見た図である。また、図4は、平面的に示されているので、偏光状態の変化前と変化後の点の変位は、図中直線の矢印で示されているが、実際は、液晶層や光学補償フィルムを通過することによる偏光状態の変化は、ポアンカレ球上では、それぞれの光学特性に応じて決定される特定の軸の回りに、特定の角度回転させることで表される。
【0021】
図3中の偏光板1を通過した入射光の偏光状態は、図4では点(i)に相当し、図3中の偏光板2の吸収軸によって遮光される偏光状態は、図4では点(ii)に相当する。従来、VAモードの液晶表示装置において、斜め方向におけるOFF AXISの光抜けは、この点(i)と点(ii)がずれていることに起因する。光学補償フィルムは、一般的に、液晶層における偏光状態の変化も含めて、入射光の偏光状態を点(i)から点(ii)に変化させるために用いられる。液晶セル3の液晶層は正の屈折率異方性を示し、垂直配向しているので、液晶層を通過することによる入射光の偏光状態の変化は、ポアンカレ球上では、図4中の上から下への矢印で示され、S1軸回りの回転として表される。
【0022】
S1軸回りに回転した回転角度は、液晶層の斜め方向からの実効的なレターデーションΔn’d’を光の波長λで割った値Δn’d’/λに比例するので、波長が異なるR、G、Bの各波長においては、回転角度は一致しない。従って、回転後にはR、G、Bのいずれかの波長の光が(ii)からずれてしまう。このずれた波長の光だけが偏光板2で遮断されないため光漏れとなる。光の色はR、G、Bの足し合わせからなるので、特定の波長の光だけが光漏れすると、R、G、Bの足し合わせの比率がずれるために、色味の変化がおこる。これが、液晶表示装置を斜め方向から見たときに「色味変化」となって観察される。
【0023】
ここで、本明細書においては、R、G、Bの波長として、Rは波長650nm、Gは波長550nm、Bは波長450nmを用いた。R、G、Bの波長は必ずしもこの波長で代表されるものではないが、本発明の効果を奏する光学特性を規定するのに適当な波長であると考えられる。
【0024】
上述したように、光学補償フィルム4が通常の正の固有複屈折を持つ素材から作製されたものであれば、レターデーションはRe(450)≧Re(550)≧Re(650)かつRth(450)≧Rth(550)≧Rth(650)、すなわちRe、Rthともに短波長ほど大きい値を持つものであり、この場合液晶表示装置を斜め方向から見た場合の実効的なレターデーションも短波長ほど大きい値(R≦G≦B)を持つ。このとき(i)の位置からの移動量はこの実効的なレターデーションの大きさに依存するので、移動量もR≦G≦Bとなり三者はずれている。
【0025】
同様にして液晶セルを通過するときの偏光状態の変化も、液晶セルの液晶分子が通常正の固有複屈折を持つ素材であるため、Re、Rthともに短波長ほど大きい値を持つものであり、この場合液晶表示装置を斜め方向から見た場合の実効的なレターデーションも短波長ほど大きい値を持つ。したがって(ii)の位置への移動量短波長ほど大きくなるためにR、G、B三者の位置関係は図4のようになる。
【0026】
そこで本発明では、R、G、B三者の位置関係を(ii)で一致させるために、本発明の光学フィルム5を用いた。図5に、本発明の作用を説明するための構成例についての模式図を示す。ここで本発明の光学フィルム5の位置は液晶セル3と偏光板2の間に置かれているが、本発明においてこの位置は特に限定されるものではない。
【0027】
図6に、図5の構成における補償機構について、ポアンカレ球を用いて説明した図を示す。光学フィルム5を挿入することで、R、G、Bをほぼ一点に一致させることができる。具体的には、斜め方向に入射したR、G、B各波長の光について、各波長ごとに異なった遅相軸及びレターデーションで光学補償している。すなわち、R、G、Bの波長R(650nm)は(ii)地点より右上にあり、ここから(ii)へ左下へ移動させるには、光学フィルム5のRe(650)は正でかつRth(650)が負の値であれば良い。同様にして波長G(550nm)は(ii)地点から移動させる必要が無いのでRe(550)、Rth(550)はともにゼロであれば良い。さらに、波長B(450nm)は(ii)地点より左下にあり、ここから(ii)へ右上へ移動させるには、光学フィルム5のRe(450)は負でかつRth(450)が正の値であれば良い。以上の光学性能を持つような光学フィルム5のReおよびRthの波長依存性を図7に示した。
【0028】
以上の議論は、通常の液晶表示装置における光学補償において、(ii)地点で中心波長であるG(550nm)を合わせても、RやBがずれてしまう全ての場合に適用することができる。図8に、ポアンカレ球で(ii)地点周辺を拡大し、(ii)地点からずれた点1〜9を表記し、これら1〜9の点を(ii)へ移動させるために必要な光学フィルム5に求められる性能を表1に示した。なお図8および表1中の点5は(ii)地点と同一である。
【0029】
【表1】
【0030】
R、G、BのうちG(550nm)が目標とする点5に合わせても、RやBがずれてしまう場合を、図8の点1〜9を用いて考えると、表2の(1)〜(8)に場合分けできるが、これらはA=(1)〜(2)、B=(3)〜(4)、C=(5)〜(6)、D=(7)〜(8)の4つに分類できる(表2)。このとき光学フィルム5に要求されるRe、Rthの値を表1から読み取り、ReおよびRthの波長依存性を同時に表3にまとめた。
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
なお、以上の説明では、R、G、Bのうち中心波長であるG(550nm)が理想の点
(ii)となる場合、すなわちRe(550)およびRth(550)がともにゼロである場合を例示したが、実際の液晶表示装置においては、必ずしも完全にRe(550)およびRth(550)がともにゼロを達成することは困難である。できる限りこれらRe(550)およびRth(550)がともにゼロであることが求められるが、本発明の発明者は、Re(550)およびRth(550)ができるだけゼロに近く色味変化が許容できる範囲として、本発明の光学フィルムの光学性能は、0≦Re(550)≦10nmかつー25≦Rth(550)≦25(nm)、好ましくは0≦Re(550)≦5nmかつ−15≦Rth(550)≦15(nm)であることを見出した。
【0034】
このように、本発明によれば、液晶表示装置の出射側の偏光板の手前でR、G、Bが分離しているのを表3のA、B、C、Dに分類したいずれかの波長依存性を有する光学フィルムを適用すればR、G、Bを一致させて光漏れを防ぐことができる。すなわちどのような液晶モード、光学材料・光学部品の構成であっても、本発明の光学フィルムを用いて表3のA、B、C、Dに分類したいずれかRe、Rthの波長依存性を持つ光学フィルムを適用すれば斜めから見た際の色味変化を防ぐことができる。すなわち本発明の範囲は、液晶層の表示モードによって限定されず、VAモード、IPSモード、OCBモード、TNモードおよびECBモード等、いずれの表示モードの液晶層を有する液晶表示装置にも用いることができる。
【0035】
本発明の光学フィルムは、フィルムのレターデーションが下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする。
(1)0≦Re(550)≦10
(2)−25≦Rth(550)≦25
(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)
ここで、I=Re(450)−Re(550)
II=Re(650)−Re(550)
III=Rth(450)−Rth(550)
IV=Rth(650)−Rth(550)である。
【0036】
上の(1)および(2)は先に述べたように、本発明の光学フィルムは、Re(550)およびRth(550)ができるだけゼロに近い値である必要があることを示す。式(3)は、R、G、Bを液晶表示装置で一致させるためには、適当なReおよびRthの波長依存性が必要であることを示す。式(3)を満たさない光学性能のフィルムは、ReおよびRthの波長依存性がほとんどないことを示し、このフィルムでは液晶表示装置を斜めから見たときに生じる色味変化を低減できないことがわかる。
【0037】
式(3)は、好ましくは
|I|+|II|+|III|+|IV|>2.0(nm)
であり、さらに好ましくは
|I|+|II|+|III|+|IV|>4.0(nm)
である。
【0038】
本発明の光学フィルムは、上記した様にA、B、C、Dに分類することができ、それぞれ以下の光学性能を持つ。
【0039】
本発明の光学フィルムのうち、分類Aに属する光学フィルムのレタ−デーションは、先の式(1)〜(3)を満たし、かつ下記式(4−A)〜(7−A)を満たすことが好ましい。
(4―A)−50≦I≦0
(5―A)0≦II≦50
(6―A)−50≦III<0
(7―A)0<IV≦50
より好ましくは、
(4―A’)−25≦I≦0
(5―A’)0≦II≦25
(6―A’)−25≦III<0
(7―A’)0<IV≦25である。
【0040】
本発明の光学フィルムのうち、分類Bに属する光学フィルムのレタ−デーションは、先の式(1)〜(3)を満たし、かつ下記式(4−B)〜(7−B)を満たすことが好ましい。
(4―B)−50≦I<0
(5―B)0<II≦50
(6―B)0≦III≦50
(7―B)−50≦IV≦0
より好ましくは、
(4―B’)−25≦I<0
(5―B’)0<II≦25
(6―B’)0≦III≦25
(7―B’)−25≦IV≦0である。
【0041】
本発明の光学フィルムのうち、分類Cに属する光学フィルムのレタ−デーションは、先の式(1)〜(3)を満たし、かつ下記式(4−C)〜(7−C)を満たすことが好ましい。
(4―C)0≦I≦50
(5―C)−50≦II≦0
(6―C)0<III≦50
(7―C)−50≦IV<0
より好ましくは、
(4―C’)0≦I≦25
(5―C’)−25≦II≦0
(6―C’)0<III≦25
(7―C’)−25≦IV<0である。
【0042】
本発明の光学フィルムのうち、分類Dに属する光学フィルムのレタ−デーションは、先の式(1)〜(3)を満たし、かつ下記式(4−D)〜(7−D)を満たすことが好ましい。
(4―D)0<I≦50
(5―D)−50≦II<0
(6―D)−50≦III≦0
(7―D)0≦IV≦50
より好ましくは、
(4―D’)10≦I≦50
(5―D’)−50≦II≦−10
(6―D’)−50≦III≦−30
(7―D’)30≦IV≦50である。
【0043】
[レターデーションおよびその波長分散特性]
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。IPSモードの場合にはRth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフイルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフイルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の2方向からレタデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。dはフィルムの膜厚を表す。
【0044】
【数1】
【0045】
注記:上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレタデーション値をあらわす。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d −−− 式(2)
【0046】
[光学フィルムの材質]
本発明の光学フィルムを形成する材料としては、光学性能、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるポリマーが好ましく、上述のRe、Rthが、上述した光学性能を満たす範囲であればどのような材料を用いても良い。例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーを混合したポリマーも例として挙げられる。
【0047】
また、本発明の光学フィルムを形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることができる。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等が挙げられる。
【0048】
また、本発明の光学フィルムを形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきたセルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を特に好ましく用いることができる。セルロースアシレートの代表例としては、トリアセチルセルロースが挙げられる。以下にセルロースアシレートについて詳細を説明する。
【0049】
[セルロースアシレート原料綿]
本発明の光学フィルムに用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、セルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0050】
[セルロースアシレート置換度]
次に上述のセルロースを原料に製造されるセルロースアシレートについて記載する。セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。セルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。
【0051】
上述のようにセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることがのぞましい。さらには置換度が2.56〜3.00であることがのぞましく、2.75〜3.00であることがよりのぞましい。アシル置換度が大きいほどフィルムの光学異方性を低下させることができる。
【0052】
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
【0053】
本発明の発明者が鋭意検討した結果、上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基が、実質的にアセチル基、プロピオニル基及びブタノイル基から選ばれる少なくとも2種類である場合においては、その全置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性が低下できることがわかった。より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、さらにのぞましくは2.65〜3.00である。
【0054】
[セルロースアシレートの重合度]
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538に詳細に記載されている。特に、アシル置換基が、実質的にアセチル基のみからなり、平均重合度が180〜550であるセルロースアシレートを用いて本発明の光学フィルムを作製すると、良好な性能を発揮できる。
【0055】
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。2.0〜4.0であることが好ましく、2.0〜3.5であることがさらに好ましく、2.3〜3.3であることが最も好ましい。
【0056】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0057】
セルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
【0058】
[光学フィルムへの添加剤]
本発明の光学フィルム溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下させる化合物、光学異方性を上昇させる化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0059】
[Rthを低下させる化合物]
本発明の光学フィルムは、フィルム膜厚方向のレターデーションRth(550)を低下させる化合物(以下、Rth低下剤ともいう)を、下記式(8)および(9)をみたす範囲で少なくとも一種含有することが望ましい。
(8)(Rth[A]−Rth[0])/A≦−1.0
(9)0.01≦A≦30である。
上記数式(8)、(9)において、より望ましくは、
(8’):(Rth[A]−Rth[0])/A≦−2.0
(9’):0.01≦A≦20であり、さらに望ましくは、
(8”):(Rth[A]−Rth[0])/A≦−3.0
(9”):0.01≦A≦15である。
ここで、Rth[A]:Rth(550)を低下させる化合物をA%含有した光学フィルムの550nmでのRth(nm)Rth[0]:Rth(550)を低下させる化合物を含有しない光学フィルムの550nmでのRth(nm)A:光学フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
【0060】
(Rth低下剤の構造的特徴)
本発明の光学フィルムにおけるRth低下剤の構造と機能について以下に説明する。光学異方性を十分に低下させ、Re、Rthがともにゼロに近くなるようにするためには、フィルム中の高分子ポリマーが、正面方向及び膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いることが好ましい。また、光学異方性を低下させる化合物は、高分子ポリマーに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
【0061】
Rth低下剤は、芳香族基を含有してもよいし、含有しなくてもよい。またRth低下剤は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
【0062】
(LogP値)
本発明の光学フィルムを作製するに当たって材料としてセルロースアシレートのような親水性ポリマーを用いる場合には、上記のように、フィルム中の高分子ポリマーが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制するRth低下剤のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜7である化合物を選択することが好ましい。logP値が7以下の化合物であれば、高分子ポリマーとの相溶性に優れ、フィルムの白濁や粉吹きなどの不都合を生じない。またlogP値が0以上の化合物は、親水性が高くなりすぎることがなく、セルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させるなどの問題が生じないので好ましい。logP値としてさらに好ましい範囲は1〜6であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
【0063】
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS Z−7260−107(2000)に記載のフラスコ震盪法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は、実測に代わって、計算化学的手法又は経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.comput.Sci.”,27巻、p.21(1987年)}、Viswanadhan’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.comput.Sci.”,29巻、p.163(1989年)}、Broto’s fragmentation法{“Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.”,19巻、p.71(1984年)}などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法がより好ましい。ある化合物のlogPの値が、測定方法又は計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断するものとする。
【0064】
(Rth低下剤の物性)
Rth低下剤は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。またRth低下剤は、高分子ポリマーフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
【0065】
Rth低下剤の添加量は、高分子ポリマーの0.01〜30質量%であることが好ましく、0.05〜25質量%であることがより好ましく、0.1〜20質量%であることが特に好ましい。
【0066】
Rth低下剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。Rth低下剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0067】
このようなRth低下剤としては、特開2005−139304に開示されている化合物を好ましく用いることができる。その中でも下記の一般式(1)で表される化合物が好ましい。次ぎに一般式(1)の化合物について説明する。
一般式(1):
【0068】
【化1】
【0069】
上記一般式(1)において、R11はアルキル基又はアリール基を表し、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。また、R11、R12及びR13の炭素原子数の総和は10以上であることが特に好ましく、またこれらのアルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。
【0070】
置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基及びスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基及びスルホンアミド基が特に好ましい。
【0071】
アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシルなど)が特に好ましい。
【0072】
アリール基としては、炭素原子数が6〜30のものが好ましく、6〜24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニルなど)が特に好ましい。一般式(1)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0073】
【化2】
【0074】
【化3】
【0075】
【化4】
【0076】
【化5】
【0077】
Rth低下剤としては、また下記の一般式(2)で表される化合物を例示することができる。
一般式(2):
【0078】
【化6】
【0079】
上記一般式(2)において、R21はアルキル基又はアリール基を表し、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものが最も好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。アリール基は炭素原子数が6〜36のものが好ましく、6〜24のものがより好ましい。さらに、R21及びR22の炭素原子数の総和は10以上であることが好ましく、それぞれ、アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。
【0080】
上記のアルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素など)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基及びアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基及びアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基及びアシルアミノ基である。
【0081】
以下に、一般式(2)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0082】
【化7】
【0083】
【化8】
【0084】
【化9】
【0085】
【化10】
【0086】
【化11】
【0087】
【化12】
【0088】
[波長分散調整剤]
本発明の光学フィルムにおいて、短波長側の光学異方性を大きくしたい場合には下記式(10)で表されるΔRthを増加させる化合物(以下、波長分散調整剤ともいう)を、下記式(11)および(12)をみたす範囲で少なくとも一種含有することが好ましい。光学フィルム原料として使用するポリマーの種類や、前述のRth低下剤等の他の添加剤との組み合わせにもよるが、短波長側のRthを大きくしたい場合(前述の表3の分類Bまたは分類C)には、単位フィルム原料ポリマー量に対する波長分散調整剤の使用量を多くすることが好ましい。逆に短波長側のRthを小さくしたい場合(前述の表3の分類Aまたは分類D)には、その使用量は少なくするか、もしくは使用しないことが好ましい。
(10)ΔRth=Rth(450)−Rth(650)
(11)(ΔRth[B]−ΔRth[0])/B≧1.0
(12)0.01≦B≦30
上記数式(11)、(12)において、より望ましくは、
(11’):(ΔRth[B]−ΔRth[0])/B≧5.0
(12’):0.05≦B≦20であり、さらに望ましくは、
(11”):(ΔRth[B]−ΔRth[0])/B≧10.0
(12”):0.1≦B≦10ここで、 ΔRth[B]:ΔRthを増加させる化合物をB%含有した光学フィルムのΔRth(nm)ΔRth[0]:ΔRthを増加させる化合物を含有しない光学フィルムのΔRth(nm)B:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
【0089】
上記の波長分散調整剤としては、200〜400nmの紫外領域に吸収を有する化合物を少なくとも1種用いることが好ましい。 200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は長波長側よりも短波長側の吸光度が大きい波長分散特性をもつ。この化合物自身が光学フィルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいては光学特性の波長分散は吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。
【0090】
したがって上述したような、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身の光学特性の波長分散が短波長側が大きいと想定されるものを用いることによって、光学フィルムの光学特性の波長分散を調製することができる。このためには波長分散を調整する化合物はフィルム原料ポリマーに十分均一に相溶することが要求される。このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmが好ましいが、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。
【0091】
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるに、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、波長分散調整剤を光学フィルムに添加する場合、分光透過率が優れている要求される。本発明の光学フィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下が好ましく、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがのぞましい。
【0092】
上述のような、本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤は揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
【0093】
上述した本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤の添加量は、フィルム原料ポリマーに対して0.01ないし30質量%であることが好ましく、0.1ないし20質量%であることがより好ましく、0.2ないし10質量%であることが特に好ましい。
【0094】
(波長分散調整剤の添加方法)
波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。またこれら波長分散調整剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0095】
本発明に好ましく用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
【0096】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、下記一般式(3)で示されるものが本発明の波長分散調整剤として好ましく用いられる。
一般式(3):Q31−Q32−OH
(式中、Q31は含窒素芳香族ヘテロ環、Q32は芳香族環を表す。)
【0097】
Q31は含窒素方向芳香族へテロ環をあらわし、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5〜6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等が挙げられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾールである。
【0098】
Q31で表される含窒素芳香族ヘテロ環は、更に置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
【0099】
Q32で表される芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。最も好ましくはベンゼン環である。
【0100】
芳香族ヘテロ環として、好ましくは窒素原子又は硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として、好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0101】
Q32で表される芳香族環として、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。Q32は更に置換基を有してもよく、下記の置換基Tが好ましい。
【0102】
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、i−プロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子
(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0103】
一般式(3)として、好ましくは下記一般式(3−1)で表される化合物である。一般式(3−1):
【0104】
【化13】
【0105】
上記一般式(3−1)において、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37及びR38は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、置換基としては上記の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は、更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0106】
R31及びR33として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
【0107】
R32、及びR34として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0108】
R35及びR38として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0109】
R36及びR37として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
【0110】
一般式(3)として、より好ましくは下記一般式(3−2)で表される化合物である。一般式(3−2):
【0111】
【化14】
【0112】
式中、R31、R33、R36及びR37は、上記一般式(3−1)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0113】
以下に一般式(3)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0114】
【化15】
【0115】
【化16】
【0116】
以上例にあげたベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以上のものが、本発明の光学フィルムを作製した場合に、保留性の点で有利であり好ましい。
【0117】
また本発明に用いられる波長分散調整剤の1つであるベンゾフェノン系化合物としては一般式(4)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(4):
【0118】
【化17】
【0119】
式中、Q41及びQ42は、それぞれ独立に芳香族環を表す。X41はNR41(R41は水素原子又は置換基を表す)、酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0120】
Q41及びQ42で表される芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0121】
Q41及びQ42で表される芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。更に好ましくはベンゼン環である。
【0122】
Q41及びQ42で表される芳香族ヘテロ環として、好ましくは酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のどれか1つを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0123】
Q41及びQ42であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換又は無置換のベンゼン環である。
【0124】
Q41及びQ42は更に置換基を有してもよく、前記の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸、スルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
【0125】
X41は、NR42(R42は水素原子又は置換基を表す。置換基としては前記の置換基Tが適用できる)、酸素原子又は硫黄原子を表し、X41として好ましくは、NR42
(R42として好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい)、又は酸素であり、特に好ましくは酸素である。
【0126】
一般式(4)として、好ましくは下記一般式(4−1)で表される化合物である。
一般式(4−1):
【0127】
【化18】
【0128】
式中、R411、R412、R413、R414、R415、R416、R417、R418及びR419は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、置換基としては前記の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は、更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0129】
R411、R413、R414、R415、R416、R418及びR419として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0130】
R412として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0131】
R417として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。
【0132】
一般式(4)として、より好ましくは下記一般式(4−2)で表される化合物である。
一般式(4−2):
【0133】
【化19】
【0134】
式中、R420は水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアリール基を表し、置換基としては前記の置換基Tが適用できる。R420として、好ましくは置換又は無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20の置換又は無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜12の置換又は無置換のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基、などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12の置換又は無置換のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。
【0135】
一般式(4)であらわされる化合物は特開平11−12219号公報記載の公知の方法により合成できる。
【0136】
以下に一般式(4)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0137】
【化20】
【0138】
【化21】
【0139】
また本発明に用いられる波長分散調整剤の1つであるシアノ基を含む化合物としては一般式(5)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(5):
【0140】
【化22】
【0141】
式中、Q51及びQ52は、それぞれ独立に芳香族環を表す。X51及びX52は水素原子又は置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。Q51及びQ52で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0142】
芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。更に好ましくはベンゼン環である。
【0143】
芳香族ヘテロ環として、好ましくは窒素原子又は硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0144】
Q51及びQ52であらわされる芳香族環として、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。Q51及びQ52は更に置換基を有してもよく、前記の置換基Tが好ましい。
【0145】
X51及びX52は、水素原子又は置換基を表し、少なくともどちらか1つは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。X51及びX52で表される置換基は、前記の置換基Tを適用することができる。また、X51及びX52はで表される置換基は更に他の置換基によって置換されてもよく、X51及びX52は、それぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
【0146】
X51及びX52として、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基{−C(=O)OR51(R51は、炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基及びこれらを組み合せたもの)}である。
【0147】
一般式(5)として、好ましくは下記一般式(5−1)で表される化合物である。
一般式(5−1):
【0148】
【化23】
【0149】
式中、R511、R512、R513、R514、R515、R516、R517、R518、R519及びR520は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、置換基としては前記の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。X511及びX512は、それぞれ前記一般式(5)におけるX51及びX52と同義である。
【0150】
R511、R512、R514、R515、R516、R517、R519及びR520として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0151】
R513及びR518として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0152】
一般式(5)として、より好ましくは下記一般式(5−2)で表される化合物である。
一般式(5−2):
【0153】
【化24】
【0154】
式中、R513及びR518は一般式(5−1)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。X513は水素原子又は置換基を表し、置換基としては、前記の置換基Tが適用でき、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。
【0155】
X513は水素原子又は置換基を表し、置換基としては、前記の置換基Tが適用でき、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。X513として、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基{−C(=O)OR52(R52は、炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基及びこれらを組み合せたもの)}である。
【0156】
一般式(5)として、更に好ましくは一般式(5−3)で表される化合物である。
一般式(5−3):
【0157】
【化25】
【0158】
式中、R513及びR518は、一般式(5−1)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R52は炭素数1〜20のアルキル基を表す。R52として、好ましくは、R513及びR518が両方水素の場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
【0159】
R52として、好ましくはR513及びR518が水素以外の場合には、一般式(5−3)で表される化合物の分子量が300以上になり、且つ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。
【0160】
本発明において、一般式(5)で表される化合物は、“J.Am.Chem.Soc.”,63巻、3452頁(1941年)記載の方法によって合成できる。
【0161】
以下に一般式(5)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0162】
【化26】
【0163】
【化27】
【0164】
【化28】
【0165】
本発明の光学フィルムは、以上で説明したRth(550)を低下させる化合物と、式
(10)ΔRth=Rth(450)−Rth(650)で表されるΔRthを増加させる化合物とを、それぞれ少なくとも1種ずつ含んでも良い。
【0166】
[高分子ポリマー溶液の有機溶媒]
本発明では、光学フィルムの製造方法は特に限定はされない。公知のあらゆる技術を用いることができ、溶融製膜法を用いても溶液製膜法を用いてもよい。ソルベントキャスト法により高分子からなる光学フィルムを製造することが好ましく、原料のポリマーを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。本発明の主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0167】
以上、本発明の光学フィルムに対しては塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としても良いし、発明協会公開技報2001−1745(12頁〜16頁)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としても良く、本発明の光学フィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0168】
その他、本発明の光学フィルムに用いる高分子ポリマー溶液及びフィルムについての溶媒は、その溶解方法も含め以下の特許に開示されており、好ましい態様である。それらは、例えば、特開2000−95876、特開平12−95877、特開平10−324774、特開平8−152514、特開平10−330538、特開平9−95538、特開平9−95557、特開平10−235664、特開平12−63534、特開平11−21379、特開平10−182853、特開平10−278056、特開平10−279702、特開平10−323853、特開平10−237186、特開平11−60807、特開平11−152342、特開平11−292988、特開平11−60752、特開平11−60752などに記載されている。これらの特許によると本発明の高分子ポリマーに好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、本発明においても好ましい態様である。
【0169】
[光学フィルムの製造工程]
[溶解工程]
本発明の高分子ポリマー溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明における高分子ポリマー溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
【0170】
(ドープ溶液の透明度)
本発明の高分子ポリマー溶液のドープ透明度としては85%以上であることがのぞましい。より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上であることがのぞましい。本発明においては高分子ポリマードープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認した。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、島津製作所)で550nmの吸光度を測定した。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比から高分子ポリマー溶液の透明度を算出した。
【0171】
[流延、乾燥、巻き取り工程]
次に、本発明の高分子ポリマー溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明の光学フィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が好ましく用いられる。以下に、該方法の好ましい態様について述べる。
溶解機(釜)から調製されたドープ(高分子ポリマー溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ドープ膜を金属支持体からフィルムとして剥離後、フィルムを延伸する工程を設けてもよい。この際、延伸温度や延伸倍率等を適宜調節することによりフィルムの光学特性の波長依存性を調節することもできる。本発明の光学フィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
【0172】
本発明の光学フィルムの膜厚は20〜200μmであることが好ましい。30〜160μmであることがより好ましく、40〜120μmであることがさらに好ましい。
【0173】
[積層型の光学補償フィルム]
本発明の光学フィルムは、下記式(13)〜(14)を満たす光学異方性層と積層してもよい。
(13)0≦Re≦400
(14)−400≦Rth≦400好ましくは、
(13’)0≦Re≦300
(14’)−300≦Rth≦300である。
尚、式(13)〜(14’)中のRe及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。測定する波長は、400〜700nmであることが好ましく、450〜650nmであることがより好ましく、500〜600nmであることが最も好ましい。
【0174】
本発明において、上記(13)および(14)を満たす光学異方性層は単層構造に限定されるものではなく、複数の層を積層した積層構造を有していてもよい。積層構造の態様では、各層の素材は同種でなくてもよく、例えば、ディスコティック液晶、コレステリック液晶、棒状液晶を用いた光学異方性層を単独または組み合わせて用いても良い。また、ポリマーフィルムと液晶性化合物からなる光学異方性層との積層体であってもよい。積層構造の態様では、厚さを考慮すると、高分子の延伸フィルムの積層体よりも、塗布によって形成された層を含む塗布型の積層体が好ましい。
【0175】
(液晶化合物からなる光学補償フィルム)
上記(13)および(14)を満たす光学異方性層の作製にあたっては、光学異方性層の作製に液晶性化合物を用いた場合は、液晶性化合物には多様な配向形態があるので、液晶性化合物を特定の配向状態に固定して作製した光学異方性層は、単層でまたは複数層の積層体により、所望の光学的性質を発現する。即ち、前記光学異方性層は、支持体と該支持体上に形成された1以上の光学異方性層とからなる態様であってもよい。かかる態様の光学異方性層全体のレターデーションは、光学異方性層の光学異方性によって調整することができる。液晶性化合物は、その分子の形状から、ディスコティック液晶、コレステリック液晶、棒状液晶に分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがあり、いずれも使用することができる。
【0176】
(ポリマーフィルムからなる光学異方性層)
上記した様に、光学異方性層はポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびセルロースエステル(例、セルローストリアセーテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体あるいはポリマー混合物を用いてもよい。
【0177】
ポリマーフィルムの光学異方性は、延伸により得ることが好ましい。延伸は一軸延伸または二軸延伸であることが好ましい。具体的には、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、またはポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸、これらを組み合わせての二軸延伸が好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを用いて、二枚以上のフィルム全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることが最も好ましい。
【0178】
また、光学異方性層を形成するポリマーフィルムとして、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドポリエステルイミド、およびポリアリールエーテルケトン、からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマー材料を用い、これを溶媒に溶解した溶液を基材に塗布し、溶媒を乾燥させてフィルム化する方法も好ましく用いることができる。この際、上記ポリマーフィルムと基材とを積層後、ともに延伸して光学異方性を発現させて光学異方性層として用いる手法も好ましく用いることができ、本発明の光学フィルムは上記基材として好ましく用いることができる。また、上記ポリマーフィルムを別の基材の上で作製しておき、ポリマーフィルムを基材から剥離させたのちに本発明の光学フィルムと貼合し、合わせて光学異方性層として用いることも好ましい。この手法ではポリマーフィルムの厚さを薄くすることができ、50μm以下であることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
【0179】
[表面処理]
本発明の光学フィルムは、場合により表面処理を行うことによって、光学フィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0180】
[アルカリ鹸化処理によるフィルム表面の接触角]
本発明の光学フィルムを偏光板の透明保護フィルムとして用いる場合、表面処理の有効な手段の1つとしてアルカリ鹸化処理が上げられる。この場合、アルカリ鹸化処理後のフィルム表面の接触角が55°以下であることがのぞましい。よりのぞましくは50°以下であり、45°以下であることがさらにのぞましい。接触角の評価法はアルカリ鹸化処理後のフィルム表面に直径3mmの水滴を落とし、フィルム表面と水滴のなす角をもとめる通常の手法によって親疎水性の評価として用いることができる。
【0181】
[偏光板]
本発明の光学フィルムは、偏光板の透明保護膜として好ましく用いることができる。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られた光学フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面に保護フィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。保護フィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、保護フィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置してもよい。全ての可視光波長領域で光学補償できるようにする本発明の目的からは、液晶セル側の偏光板保護フィルムとして本発明の光学フィルムを用いることが効果的であり好ましい。
【0182】
[光学補償フィルム一体型偏光板]
本発明の光学フィルムを光学補償フィルムとして用いた場合、例えば本発明の光学フィルムの片面に光学異方性層を塗布または貼り合わせた場合は、すでに偏光子の両面を保護フィルムで貼り合わせて作製された偏光板に粘着剤を介して光学補償フィルムを貼り合わせてもよいし、もしくは、本発明の光学フィルムの光学異方性層を塗布または貼り合わせていない側を表面処理し、偏光板の保護フィルムとして、直接偏光子と貼り合わせてもよい。この場合、例えばポリビニルアルコール系の偏光板を作製する方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。たとえば、光学フィルムの表面をアルカリ鹸化処理、プラズマ処理、コロナ放電処理などにより表面改変し、ポリビニルアルコールフィルム(PVA)を沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に貼り合わせる方法を用いることができる。
【0183】
[機能層]
本発明の光学フィルムを偏光板の保護膜とし、液晶表示装置に用いる場合、表面に各種の機能層を付与してもよい。それらは、例えば、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、防眩層、反射防止層、易接着層、光学補償層、配向層、液晶層帯電防止層、などである。本発明の光学フィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0184】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、光学フィルム(光学補償フィルム)、液晶セル、偏光板を組み合わせて用いる。光学フィルム(光学補償フィルム)、液晶セル、偏光板は密着していることが好ましく、密着させるためには公知の粘着剤や接着剤を用いることができる。
【0185】
本発明の光学フィルム、およびこれを用いた光学補償フィルムや偏光板は、様々な表示モードの液晶表示装置に適用することができる。代表的な表示モードとして、VA(Vertically Aligned)、IPS(In−Plane Switching)、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の光学フィルムを用いたときの効果は、とくに大画面液晶表示装置で顕著であり、その点で大型TV用に用いられるVAモード、IPSモード、OCBモードの液晶表示装置に用いることが特に好ましい。
【0186】
本発明の光学フィルムは、VAモードなどの黒表示時に液晶分子が垂直配向する表示モード、IPSやFFSモードなどの黒表示時に液晶分子が平行配向する表示モード、液晶分子がベンド配向するOCBモードなどに好ましく用いることができる。
例えば本発明の光学フィルム、光学補償フィルム、及び偏光板の少なくともいずれかを液晶表示装置に使用する場合、液晶表示装置は、光学異方性層を少なくとも一層含んでいてもよい。該光学異方性層は下記式(15)および(16)を満たすことが好ましい。
(15)0≦Re≦400
(16)−400≦Rth≦400
尚、(15)及び(16)式中、Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。測定する波長は、400〜700nmであることが好ましく、450〜650nmであることがより好ましく、500〜600nmであることが最も好ましい。
光学異方性層は単層構造に限定されるものではなく、複数の層を積層した積層構造を有していてもよい。積層構造の態様では、各層の素材は同種でなくてもよく、例えば、ディスコティック液晶、コレステリック液晶、棒状液晶を用いた光学異方性層を単独または組み合わせて用いても良い。また、ポリマーフィルムと液晶性化合物からなる光学異方性層との積層体であってもよい。積層構造の態様では、厚さを考慮すると、高分子の延伸フィルムの積層体よりも、塗布によって形成された層を含む塗布型の積層体が好ましい。
光学異方性層については、例えば前述の積層型の光学補償フィルムの説明において挙げたものを使用することができる。
【0187】
液晶表示装置が、黒表示時に液晶分子が垂直配向する液晶セルを含むとき、斜め方向の光漏れが小さく、かつ色味変化が小さい良好な視野角特性を得るためには、10≦Re≦150、および、50≦Rth≦400を満たす光学異方性層を少なくとも一層含むことが好ましい。該光学異方性層は、20≦Re≦120、および、60≦Rth≦350を満たすことがさらに好ましく、30≦Re≦100、および、80≦Rth≦300を満たすことが最も好ましい。
液晶表示装置が、黒表示時に液晶分子が平行配向する液晶セルを含むとき、斜め方向の光漏れが小さく、かつ色味変化が小さい良好な視野角特性を得るためには、下記式(19)〜(22)のいずれかを満たす光学異方性層を少なくとも一層含むことが好ましい。本発明の液晶表示装置のさらに好ましい態様の一つは、式(20)を満たす光学異方性層および式(21)を満たす光学異方性層を含む。もう一つのさらに好ましい態様は、式(20)を満たす光学異方性層および式(22)を満たす光学異方性層を含む。
(19)100≦Re≦400、且つ−50≦Rth≦50
(20)0≦Re≦20、且つ−400≦Rth≦−50
(21)60≦Re≦200、且つ20≦Rth≦120
(22)30≦Re≦150、且つ100≦Rth≦400
液晶表示装置が、黒表示時に液晶分子がベンド配向する液晶セルを含むとき、斜め方向の光漏れが小さく、かつ色味変化が小さい良好な視野角特性を得るためには、ディスコティック液晶化合物を含有する光学異方性層を少なくとも一層含むことが好ましい。該ディスコティック液晶化合物の配向状態は、円盤面が該光学異方性層面に対して傾斜していることが好ましく、該傾斜角は光学異方性層の厚さ方向において変化するハイブリッド配向であることがさらに好ましい。
尚、各光学異方性層のRe及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。測定する波長は、400〜700nmであることが好ましく、450〜650nmであることがより好ましく、500〜600nmであることが最も好ましい。
【実施例】
【0188】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本発明を実施するにあたり、原料素材の選択の際の検討基準としてポリマー素材にセルロースアシレートを用いた場合は、そのアシル置換度が大きいほどレターデーションを低下させるのに有効なことを見出した。セルローストリアセテートのアシル置換度を変えた場合のRth(550)を図9に示した。
【0189】
また、本発明ではフィルムの光学特性を制御する添加剤のひとつとして、Rth低下剤の量が多いほどフィルムのレターデーションを低下させるのに有効なことを見出した。化合物119の量を変えた場合のRth(550)を図10に示した。
【0190】
また、本発明ではフィルムの光学特性を制御する添加剤のひとつとして、波長分散調整剤の量が多いほどフィルムのΔRthを上昇させるのに有効なことを見出した。化合物UV102の量を変えた場合のRth(550)を図11に示した。
【0191】
以上のようにして本発明の光学フィルムは、ポリマー素材の種類や、光学特性を制御する添加剤の種類と量を適宜選択した。図9〜11は一例であり効果は素材の組合せなどにより程度が異なるが、これらの考えに基づいて光学フィルム作製の設計指針とした。
尚、本実施例において、Rth低下剤及び波長分散調整剤として示した化合物は、明細書中記載の化合物を表す。
【0192】
[実施例1]
(セルロースアシレート溶液CA−1の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレートの溶液CA−1を調製した。
【0193】
(セルロースアシレート溶液CA−1組成)
Ac置換度2.92のセルロースアセテート 100.0質量部
Rth低下剤 化合物119 14.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
【0194】
(マット剤溶液MT−1の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液MT−1を調製した。
【0195】
(マット剤溶液MT−1組成)
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアシレート溶液CA−1 10.3質量部
【0196】
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液AD−1を調製した。
【0197】
(添加剤溶液AD−1組成)
波長分散調整剤 UV−208 7.6質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液CA−1 12.8質量部
【0198】
(光学フィルム試料001の作製)
上記セルロースアシレート溶液CA−1を94.6質量部、マット剤溶液MT−1を1.3質量部、添加剤溶液AD−1を2.3質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成でRth低下剤および波長分散調整剤のセルロースアシレートに対する質量比はそれぞれ14.0%、1.0%であった。残留溶剤量30%でフィルムをバンドから剥離し、135℃で20分間乾燥させセルロースアシレートフィルムを製造した。出来あがった光学フィルム001の残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は80μmであった。
【0199】
このフィルムを25℃60%RHの環境下で2時間以上調湿したのち、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて25℃60%RHの環境下で2時間以上調湿し、波長450nm,550nm,650nmにおいて3次元複屈折測定を行い、面内のレターデーションReおよび傾斜角を変えてReを測定することで得られる膜厚方向のレターデーションRthを求めたところ表4に示す光学性能であることがわかった。
【0200】
[実施例2]
実施例1のセルロースアシレート溶液CA−1中の化合物119の量を12.0質量部に、添加剤溶液AD−1中のUV−208の量を3.0質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム002を得た。
【0201】
[実施例3]
実施例1のセルロースアシレート溶液CA−1中の化合物119の量を10.0質量部に、添加剤溶液AD−1中のUV−208の量を1.5質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム003を得た。
【0202】
[実施例4]
実施例1の添加剤溶液AD−1中のUV−208をUV−20に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム004を得た。
【0203】
[実施例5]
実施例1の添加剤溶液AD−1中のUV−208をUV−3に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム005を得た。
【0204】
[実施例6]
実施例1のセルロースアシレート溶液CA−1中の化合物119の量を16.0質量部に、添加剤溶液AD−1中のUV−208をUV−3に、UV−3の量を15.2質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム006を得た。
【0205】
[実施例7]
実施例6の添加剤溶液中のUV−3の量を12.2質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム007を得た。
【0206】
[実施例8]
実施例1のセルロースアシレート溶液CA−1中の化合物119の量を12.0質量部に、添加剤溶液AD−1中のUV−208をUV−102に、UV−102の量を9.1質量部に変えた以外は実施例1と同様の操作により、膜厚80μm、表4に示す光学性能である光学フィルム008を得た。
【0207】
[比較例1]
比較例として、市販のセルロースアシレートフィルムであるフジタックTD80UL(富士写真フィルム社製、膜厚80μm)を用意した。このフィルムは表4に示す光学性能を持っていた。
【0208】
[比較例2]
比較例として、市販のシクロオレフィンのフィルムであるゼオノアZF−14(日本ゼオン社製、膜厚100μm)を用意した。このフィルムは表4に示す光学性能を持っていた。
【0209】
【表4】
【0210】
[実施例9]
(偏光板加工)
(偏光板の作製)
本発明の光学フィルム001の表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理した光学フィルム001と、同様のアルカリ鹸化処理したフジタックTD80UL(富士写真フィルム社製)を用意し、これらの鹸化した面が偏光膜側となるようにして偏光膜を間に挟んで貼り合わせ、光学フィルム001とTD80ULが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板101を得た。この際、光学フィルム001およびTD80ULの遅相軸が偏光膜の吸収軸と平行になるように貼り付けた。同様にして本発明の光学フィルム002〜008についても偏光板を作製し、以下これら偏光板を偏光板102〜108という。これら偏光板はいずれも十分な偏光性能を持っていた。
【0211】
比較例1のTD80ULについても上記と同様の操作により偏光板201を作製した。すなわち偏光板201は、両面がTD80ULで保護されている偏光板である。また、比較例2のゼオノアフィルムZF−14については、表面処理をアルカリ鹸化ではなく、コロナ放電処理を行い、それ以外の方法は同様にして偏光板202を得た。これら偏光板201、202は十分な偏光性能を持っていた。
【0212】
[実施例10]
(VAパネルへの実装)
液晶表示装置に用いる光学補償フィルムの光学特性の種類により、以下のA〜Dの4系統にてVAパネルへの実装評価を行った。
【0213】
(分類A)
本発明の光学フィルムをVAモードの液晶表示装置にて実装評価を行った。VAモードの液晶TV(LC−20C5、シャープ(株)製)の表裏の偏光板および位相差板を剥して実装用の液晶セルとして用いた。上記実施例9と同様にして偏光膜を作製した。この偏光膜の一方の面に、表面を鹸化処理した光学補償フィルム4−Aを、他方の面に、表面を鹸化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタック TD80UL、富士写真フイルム(株)製)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせ、偏光板4−Aを作製した。光学補償フィルム4−Aの光学特性を表5に示す。図5の構成で、光学補償フィルム4と偏光板1として偏光板4−A、液晶セル3として上記のVA液晶セル、光学フィルム5と偏光板2として上記実施例9で作製した偏光板101を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた。この際、偏光板4−Aの光学補償フィルム4−Aが液晶セル側になるように、かつ、偏光板101の光学フィルム001が液晶セル側になるように貼り合わせた。また光学補償フィルム4−Aの遅相軸は偏光板1の吸収軸と直交するように貼り合わせた。上記と同様にして、実施例9で得た偏光板102、比較例1、2を用いた偏光板201、202も表5に示す光学補償フィルム4−Aとの組合せで貼り合わせ実装した。
【0214】
【表5】
【0215】
(分類B)
上記実施例10(分類A)と同様の構成にて、偏光板101の代わりに偏光板103、104、201、または202を用い、さらに光学補償フィルム4−Aの代わりに表6に示す光学性能を有する光学補償フィルム4−Bを用いて貼り合わせ実装した。
【0216】
【表6】
【0217】
(分類C)
上記実施例10(分類A)と同様の構成にて、偏光板101の代わりに偏光板105、106、201、または202を用い、さらに光学補償フィルム4−Aの代わりに表7に示す光学性能を有する光学補償フィルム4−Cを用いて貼り合わせ実装した。
【0218】
【表7】
【0219】
(分類D)
上記実施例10(分類A)と同様の構成にて、偏光板101の代わりに偏光板107、108、201、または202を用い、さらに光学補償フィルム4−Aの代わりに表8に示す光学性能を有する光学補償フィルム4−Dを用いて貼り合わせ実装した。
【0220】
【表8】
【0221】
なお、以上表5〜表8に示した光学補償フィルム4−A、4−B、4−C、4−D、の作製は以下のようにしておこなった。
【0222】
(光学補償フィルムの作製)(セルロースアシレート溶液CA−2の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレートの溶液CA−2を調製した。
【0223】
(セルロースアシレート溶液CA−2組成)
Ac置換度2.81のセルロースアセテート 100.0質量部
TPP(トリフェニルフォスフェート) 7.8質量部
BDP(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
【0224】
(マット剤溶液MT−2の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液MT−2を調製した。
【0225】
(マット剤溶液MT−2組成)
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアシレート溶液CA−2 10.3質量部
【0226】
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液AD−2を調製した。
【0227】
(添加剤溶液AD−2組成)
下記のレターデーション発現剤X 11.5質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液CA−2 12.8質量部
【0228】
レターデーション発現剤X
【0229】
【化29】
【0230】
(セルロースアシレートフィルム試料401の作製)
上記セルロースアシレート溶液CA−2を94.6質量部、マット剤溶液MT−2を1.3質量部、添加剤溶液AD−2を2.3質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成でレターデーション発現剤のセルロースアシレートに対する質量比は1.0%であった。残留溶剤量30%でフィルムをバンド から剥離し、140℃で40分間乾燥させセルロースアシレートフィルムを製造した。出来あがったセルロースアシレートフィルム401の残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は140μmであった。
【0231】
(光学補償フィルム4−Aの作製)
上記で得たセルロースアシレートフィルム401を、連続した長尺フィルムをテンタークリップの長手方向の間隔が把持、搬送している間に狭くなる構造のテンターを用いて幅方向に延伸する工程を持っている延伸装置に送り出し、フィルム温度を180℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に延伸を開始、フィルム長手方向は0.72倍緩和収縮させ、テンタークリップにより幅方向を1.23倍延伸し、延伸後の膜厚182μmの光学補償フィルム4−Aを得た。
【0232】
(光学補償フィルム4−Bの作製)
上記光学補償フィルム4−Aの作製方法において、セルロースアシレート溶液CA−2組成中、Ac置換度2.81のセルロースアセテートをAc置換度2.92のセルロースアセテートにかえる以外は、同様の操作を行い、セルロースアシレートフィルム試料402を得た。これを用いて、上記光学補償フィルム4−Aの作製と同様の手法により光学補償フィルム4−Bを得た。
【0233】
(光学補償フィルム4−Cの作製)
上記光学補償フィルム4−Aの作製方法において、セルロースアシレート溶液CA−2組成中、Ac置換度2.81のセルロースアセテートをAc置換度2.86のセルロースアセテートにかえる以外は、同様の操作を行い、セルロースアシレートフィルム試料403を得た。これを用いて、フィルム温度を180℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に固定ニ軸延伸を開始、フィルム長手方向は1.2倍、幅方向を1.1倍延伸し、延伸後の膜厚180μmの光学補償フィルム4−Cを得た。
【0234】
(光学補償フィルム4−Dの作製)
上記光学補償フィルム4−Aの作製方法において、添加剤溶液AD−2組成中、レターデーション発現剤である化合物Xの量を11.5質量部から8.6質量部に変える以外は、同様の操作を行い、セルロースアシレートフィルム試料404を得た。これを用いて、フィルム温度を180℃に設定して30秒後加熱ゾーンを通過した後に固定ニ軸延伸を開始、フィルム長手方向は1.2倍、幅方向を1.1倍延伸し、延伸後の膜厚180μmの光学補償フィルム4−Dを得た。
【0235】
(パネルの色味視野角評価)
上記(分類A)〜(分類D)で作製したVAモードの実装パネルを、図5の構成で偏光板1側にバックライトを設置した液晶表示装置とし、各々のサンプルについて、画面を黒表示とした場合の方位角45度、極角60度からの斜め方向の色味変化を評価した。結果は表4に記載した。色味評価において、色味変化(黄色味または赤味)が全く見られない場合を○、極角60度で色味変化が見られるが極角を60度から30度まで戻すと色味変化はなくなる場合を△、いずれの極角でも色味変化が認められる場合を×、とした。結果を表4に示す。本実施例にて作製した本発明の光学フィルム001〜008を用いたサンプルはいずれも斜め方向見ても色味変化が無く、また光漏れが見られなかった。一方、比較例1および2のフィルムを用いた液晶パネルを斜め方向から見たところ光漏れが認められ、漏れている光の着色(やや赤み傾向あり)が確認できた。これは、比較例1のTD80ULはRe、Rthの光学性能、とくにRthの絶対値が大きく、十分な光学補償が行われていないためである。また、比較例2のゼオノアZF−14は、本発明の光学フィルムと異なり、波長依存性がないため、図6において液晶セルを通過した偏光状態がR、G、B各波長で異なる点に移動しているのを、図5の光学フィルム5で一致させることができないためである。また、画面を白表示とした際にも測定を行い、黒表示時とのコントラスト比を求めたところ、本発明の光学フィルムを用いた場合はいずれも優れたコントラスト比を有することがわかった。
【0236】
以上より、本発明のReおよびRthが所望の性能をもつ光学フィルムは、色味変化を抑制可能で広範囲にわたり高いコントラスト比を有する優れたものであり、これらを用いた偏光板、さらには液晶表示装置も優れた性能を有することを確認できた。
【0237】
[実施例11]
(IPSパネルへの実装評価)
図2の構成で、偏光板1として、上記実施例9で作製した偏光板108、偏光板2として、上記実施例9で作製した偏光板201、液晶セル3として市販のIPS型の液晶セル、を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた液晶表示装置(IPS−1)を作製した。この際、液晶セルと偏光板108の光学フィルム008側を貼り合わせた。また上下の偏光板の透過軸を直交させ、上側の偏光板の透過軸は液晶セルの分子長軸方向と平行(すなわち光学補償層の遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルや電極・基板はIPSとして従来から用いられているものがそのまま使用できる。液晶セルの配向は水平配向であり、液晶は正の誘電率異方性を有している。一例として、IPSモードを用いた市販の液晶テレビ(松下電器製、TH−32LX500)から、偏光板やその他部材を取り除いた液晶セル、を好ましく用いることができる。
【0238】
比較例として上記と同様にして、図2の構成で、偏光板1、偏光板2の両方とも上記実施例9で作製した偏光板201、液晶セル3として市販のIPS型の液晶セル、を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた液晶表示装置(IPS−2)を作製した。
【0239】
以上のようにして作製した液晶表示装置IPS−1、IPS−2について、実施例10で行ったのと同様の評価方法で装置正面からの方位角方向45度、極角方向60度における黒表示時の光漏れ率を測定した。結果を表4に示す。本発明の光学フィルムを用いた偏光板108を用いた液晶表示装置IPS−1では、光漏れが小さく、斜めから見た色味変化がなかったのに対し、比較例1の光学フィルムを用いた偏光板201を用いた液晶表示装置IPS−2では光漏れがあり、色味変化が見られた。さらにIPS−1の方が、コントラストの視野角特性に優れていることがわかった。
【0240】
なお、本実施例11と比較例をポアンカレ球上で表記すると図12および図13となる。図12の偏光板1側の入射光がTinで偏光板2側の出射光がPoutである。実際の理想の出射光のポイントはAoutであるため、PoutとAoutの距離が近いほど理想に近い。この距離が黒表示時の光漏れに相当する。図13において、TinからP1までは偏光板201に使用された比較例のフィルムのレターデーションによって動く。P1からP2はAoutを中心に円弧を描いて液晶セルのレターデーション分だけ動く。さらにP2から偏光板2に使用した比較例のフィルムのレターデーションによってPoutへ動く。一方、図12では本発明の光学フィルム108にはほとんどレターデーションがないためにTinからP1の動きがほとんどない。このことによってP1からP2の動きの円弧の半径が小さくなり、結果としてPoutとAoutの距離が、図13の場合よりも近くなる。以上のことからも、本発明の光学フィルムを用いた場合の光漏れが少ないことを説明できる。
【0241】
[実施例12]
(光学補償フィルム5−Aの作製)
上記実施例10と同様にして、セルロースアシレートを含む溶液を調製した。セルロースアシレート溶液CA−2を100質量部とマット剤溶液MT−2を1.3質量部を混合し、さらに、セルロースアセテート100質量部に対してレタデーション発現剤Xが6質量部となるように添加剤溶液AD−2を混合し、製膜用ドープを調製した。
【0242】
得られたドープを、幅2mで長さ65mの長さのバンドを有する流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、130℃の条件で、テンターを用いて20%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外してセルロースアセテートフィルムを作製した。延伸終了後、さらに乾燥して残留溶媒量を0.1質量%未満としてセルロースアセテートフィルム(T1)を作製した。なお、使用したセルロースアシレートのTgは140℃である。
【0243】
作製したフィルムを温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、下記の組成のアルカリ溶液をバーコーターにより、14ml/m2塗布し、110℃に加熱したスチーム式遠赤外線ヒーター((株)ノリタケカンパニー製)の下に10秒間滞留させた後、同じくバーコーターを用いて純水を3ml/m2塗布した。このときのフィルム温度は40℃であった。次いでファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返して後に、70℃の乾燥ゾーンに2秒滞留させて乾燥した。このようにして、セルロースアセテートフィルム表面に鹸化処理を施した。
【0244】
<アルカリ溶液組成>
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.7質量部
イソプロパノール 64.8質量部
プロピレングリコール 14.9質量部
C16H33O(CH2CH2O)10H(界面活性剤) 1.0質量部
【0245】
得られたセルロースアセテートフィルムT1の幅は1340mmであり、厚さは88μmであった。自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)社製)を用いて、作製したセルロースアセテートフィルム(T1)の光学特性を測定した。590nmにおける面内のレタデーション(Re)は60nmであり、厚さ方向のレタデーション(Rth)は190nmであった。この光学異方性層の遅相軸の平均方向はフィルム長手に対して実質的に直交していた。
【0246】
上記作製した長尺状のセルロースアセテートフィルム(T1)の鹸化処理を施した面に、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。
【0247】
配向膜塗布液の組成
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
【0248】
【化30】
【0249】
下記の組成の棒状液晶化合物を含む塗布液を、上記作製した配向膜上に#5.0のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度は20m/minとした。室温から80℃に連続的に加温する工程で溶媒を乾燥させ、その後、80℃の乾燥ゾーンで90秒間加熱し、棒状液晶性化合物を配向させた。続いて、フィルムの温度を60℃に保持して、UV照射により液晶化合物の配向を固定化し、光学異方性層B1を形成した。続いて、55℃の1.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液中に作製したフィルムを2分間浸漬した後、水に浸漬し十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、35℃の5mmol/L硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。このようにして、セルロースアセテートフィルムT1に光学異方性層B1が積層された光学補償フィルム5−Aを作製した。
【0250】
棒状液晶化合物を含む塗布液の組成
下記の棒状液晶性化合物(I) 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のフッ素系ポリマー 0.4質量部
下記のピリジニム塩 1質量部
メチルエチルケトン 172質量部
【0251】
【化31】
【0252】
【化32】
【0253】
【化33】
【0254】
作製した光学補償フィルム5−Aから棒状液晶性化合物を含む光学異方性層B1のみを剥離し、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)社製)を用いて光学特性を測定した。波長590nmで測定した光学異方性層B1のみのReは0nmであり、Rthは−260nmであった。また、棒状液晶分子がフィルム面に対して実質的に垂直に配向している光学異方性層が形成されたことが確認できた。
【0255】
(光学補償フィルム5−Bの作製)
ポリカーボネートフィルムの両面に、熱収縮性フィルムをアクリル系粘着層を介して接着し、これを加熱して熱収縮性フィルムを収縮させながら延伸装置を用いて延伸した後、熱収縮性のフィルムを剥がした。このようにして、Reが268nm、Rthが1nm、厚さが60μmである光学補償フィルム5−Bを作製した。
【0256】
(光学補償フィルム5−Cの作製)
アートンフィルム(JSR(株)製)の両面に、熱収縮性フィルムをアクリル系粘着層を介して接着し、これを加熱して熱収縮性フィルムを収縮させながら延伸装置を用いて延伸した後、熱収縮性のフィルムを剥がした。このようにして、Reが195nm、Rthが−20nm、厚さが135μmである光学補償フィルム5−Cを作製した。
【0257】
(光学補償フィルム5−Dの作製)
アートンフィルム(JSR(株)製)を一軸延伸して、Reが170nm、Rthが85nm、厚さが70μmであるフィルムA1を作製した。
アートンフィルムA1の表面にコロナ処理を施し、その上に、上記と同様にして配向膜を形成した。さらに、上記の棒状液晶化合物を含む塗布液を用いて光学異方性層B2を形成した。光学異方性層B2のみのReは0nmであり、Rthは−135nmであった。また、棒状液晶分子がフィルム面に対して実質的に垂直に配向している光学異方性層が形成されたことが確認できた。このようにして、アートンフィルムA1に光学異方性層B2が積層された光学補償フィルム5−Dを作製した。
【0258】
(偏光板5−Aの作製)
上記実施例9と同様にして偏光膜を作製した。この偏光膜の一方の面に、上記作製した光学補償フィルム5−Aの光学異方性層B1が形成されていない面(即ち、セルロースアセテートフィルムT1の裏面)を、他方の面に、表面を鹸化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタック TD80UL、富士写真フイルム(株)製)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせ、偏光板5−Aを作製した。このとき、偏光膜の吸収軸とセルロースアセテートフィルムT1の遅相軸とは直交となるようにした。
【0259】
(偏光板5−Bの作製)
上記作製した光学補償フィルム5−Bと実施例9の偏光板104とをアクリル系粘着剤を用いて貼り合せた。このとき、偏光膜の吸収軸と光学補償フィルム5−Bの遅相軸とは平行となるようにした。このようにして、光学補償フィルム付き偏光板5−Bを作製した。
【0260】
(偏光板5−Cの作製)
上記実施例9と同様にして偏光膜を作製した。この偏光膜の両方の面に、表面を鹸化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタック T40UZ、富士写真フイルム(株)製、Re=1nm、Rth=35nm、厚み40μm)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせ、偏光板301を作製した。
上記作製した光学補償フィルム5−Cと偏光板301とをアクリル系粘着剤を用いて貼り合せた。このとき、偏光膜の吸収軸と光学補償フィルム5−Cの遅相軸とは直交となるようにした。このようにして、光学補償フィルム付き偏光板5−Cを作製した。
【0261】
(偏光板5−Dの作製)
上記作製した光学補償フィルム5−Dと偏光板301とをアクリル系粘着剤を用いて貼り合せた。このとき、光学補償フィルム5−Dに含まれる光学異方性層B2が偏光板301側となるようにし、かつ、偏光膜の吸収軸と光学補償フィルム5−Dの遅相軸とは平行となるようにした。このようにして、光学補償フィルム付き偏光板5−Dを作製した。
【0262】
(IPSパネルへの実装評価)
液晶表示装置に用いる光学補償フィルムの光学特性の種類により、以下のA〜Dの4系統にてIPSパネルへの実装評価を行った。
【0263】
(分類A)
図5の構成で、光学補償フィルム4と偏光板1として上記偏光板5−A、液晶セル3としてIPS液晶セル、光学フィルム5と偏光板2として、上記実施例9で作製した偏光板104を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた。この際、偏光板5−Aの光学補償フィルム5−Aが液晶セル側になるように、かつ、偏光板104の光学フィルム004が液晶セル側になるように貼り合わせた。また、上下の偏光板の吸収軸を直交させ、下側の偏光板の吸収軸は液晶セルの分子長軸方向と直交(すなわち光学補償フィルム5−Aの遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は平行)とした。なお、液晶テレビTH−32LX500(松下電器産業(株)社製)から、液晶セルを取り出し、視認者側及びバックライト側に貼られてあった偏光板及び光学フィルムを剥したものを、液晶セル3として用いた。この液晶セルは、電圧無印加状態及び黒表示時では液晶分子はガラス基板間で実質的に平行配向しており、その遅相軸方向は画面に対して水平方向であった。同様にして、実施例9で得た比較例1、2の光学フィルムを本発明の光学フィルムの代わりに用いた偏光板を使用して同様の層構成で貼り合わせ実装した。
【0264】
(分類B)
図5の構成で、光学補償フィルム4と偏光板1として上記偏光板5−B、液晶セル3としてIPS液晶セル、光学フィルム5と偏光板2として、上記実施例9で作製した偏光板104を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた。この際、偏光板5−Bの光学補償フィルム5−Bが液晶セル側になるように、かつ、偏光板104の光学フィルム004が液晶セル側になるように貼り合わせた。また、上下の偏光板の吸収軸を直交させ、下側の偏光板の吸収軸は液晶セルの分子長軸方向と直交(すなわち光学補償フィルム5−Bの遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルは上記分類Aと同じ平行配向セルを用いた。同様にして、実施例9で得た比較例1、2の光学フィルムを本発明の光学フィルムの代わりに用いた偏光板を使用して同様の層構成で貼り合わせ実装した。
【0265】
(分類C)
図5の構成で、光学補償フィルム4と偏光板1として上記偏光板5−C、液晶セル3としてIPS液晶セル、光学フィルム5と偏光板2として、上記実施例9で作製した偏光板104を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた。この際、偏光板5−Cの光学補償フィルム5−Cが液晶セル側になるように、かつ、偏光板104の光学フィルム004が液晶セル側になるように貼り合わせた。また、上下の偏光板の吸収軸を直交させ、下側の偏光板の吸収軸は液晶セルの分子長軸方向と直交(すなわち光学補償フィルム5−Cの遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は平行)とした。液晶セルは上記分類Aと同じ平行配向セルを用いた。同様にして、実施例9で得た比較例1、2の光学フィルムを本発明の光学フィルムの代わりに用いた偏光板を使用して同様の層構成で貼り合わせ実装した。
【0266】
(分類D)
図5の構成で、光学補償フィルム4と偏光板1として上記偏光板5−D、液晶セル3としてIPS液晶セル、光学フィルム5と偏光板2として、上記実施例9で作製した偏光板104を用い、それぞれを粘着剤を用いて貼り合わせた。この際、偏光板5−Dの光学補償フィルム5−Dが液晶セル側になるように、かつ、偏光板104の光学フィルム004が液晶セル側になるように貼り合わせた。また、上下の偏光板の吸収軸を直交させ、下側の偏光板の吸収軸は液晶セルの分子長軸方向と直交(すなわち光学補償フィルム5−Dの遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。液晶セルは上記分類Aと同じ平行配向セルを用いた。同様にして、実施例9で得た比較例1、2の光学フィルムを本発明の光学フィルムの代わりに用いた偏光板を使用して同様の層構成で貼り合わせ実装した。
【0267】
以上のようにして作製した液晶表示装置において、装置正面からの方位角方向45度、極角方向60度における黒表示時の光漏れ率および色味変化を測定した。結果を表4に示す。本発明の光学フィルムを用いた偏光板104を用いた液晶表示装置では、斜めから見た色味変化がなく、漏れ光も小さかったのに対し、比較例1、2を用いた偏光板を用いた液晶表示装置では色味変化が大きく、漏れ光も大きかった。
【0268】
[実施例13]
(OCBパネルへの実装評価)
実施例1で得た本発明の光学フィルム001を用いて、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置での評価をしたところ、コントラスト視野角が良好な性能が得られ、この際の色味変化も上記の実施例10で行った同様の評価を行ったところ良好な結果を得た。また、比較例1、2の光学フィルムを用いて同様の評価を実施したところ、本発明よりも劣っていた。以上の結果を表4に示す。
【0269】
以上のように、本発明の光学フィルム、それを用いた光学補償フィルム、それを用いた偏光板は、色味変化を抑制可能で、広範囲の視野角にわたり高いコントラスト比を有する優れた光学フィルムであることが分かった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レターデーションが下記式(1)〜(3)及び(4−A)〜(7−A)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
(1)0≦Re(550)≦10
(2)−25≦Rth(550)≦25
(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)
(4−A)−50≦I≦0
(5−A)0≦II≦50
(6−A)−50≦III<0
(7−A)0<IV≦50
ここで、I=Re(450)−Re(550)II=Re(650)−Re(550)III=Rth(450)−Rth(550)IV=Rth(650)−Rth(550)である。
(式中Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【請求項2】
光学フィルムの原料ポリマーにセルロースアシレートが使用されていることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基のみからなり、その全置換度が2.56〜3.00であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなり、その全置換度が2.50〜3.00であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項5】
Rth(550)を低下させる化合物を、下記式(8)および(9)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(8)(Rth[A]−Rth[0])/A≦−1.0
(9)0.01≦A≦30
ここで、Rth[A]:Rth(550)を低下させる化合物をA%含有した光学フィルムの550nmにおけるRth(nm)Rth[0]:Rth(550)を低下させる化合物を含有しない光学フィルムの550nmにおけるRth(nm)A:光学フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
【請求項6】
下記式(10)で表されるΔRthを増加させる化合物を、下記式(11)および(12)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(10)ΔRth=Rth(450)−Rth(650)
(11)(ΔRth[B]−ΔRth[0])/B≧1.0
(12)0.01≦B≦30
ここで、ΔRth[B]:ΔRthを増加させる化合物をB%含有した光学フィルムのΔRth(nm)ΔRth[0]:ΔRthを増加させる化合物を含有しない光学フィルムのΔRth(nm)B:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
【請求項7】
膜厚が20〜200μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルムおよび下記式(13)および(14)を満たす光学異方性層を含むことを特徴とする光学補償フィルム。
(13)0≦Re≦400
(14)−400≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム、又は請求項8に記載の光学補償フィルムの少なくとも1枚と、偏光子とを有することを特徴とする偏光板。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム、請求項8に記載の光学補償フィルム、及び請求項9に記載の偏光板、の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム、請求項8に記載の光学補償フィルム、及び請求項9に記載の偏光板の少なくともいずれかを含み、かつ、下記式(15)および(16)を満たす光学異方性層を少なくとも一層含むことを特徴とする液晶表示装置。
(15)0≦Re≦400
(16)−400≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【請求項12】
黒表示時に液晶分子が垂直配向、平行配向、またはベンド配向している液晶セルを含むことを特徴とする請求項10または11に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
黒表示時に液晶分子が垂直配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層が下記式(17)および(18)を満たす層を少なくとも一層含むことを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
(17)10≦Re≦150
(18)50≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【請求項14】
黒表示時に液晶分子が平行配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層が下記式(19)〜(22)のいずれかを満たす層を少なくとも一層含むことを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
(19)100≦Re≦400、且つ−50≦Rth≦50
(20)0≦Re≦20、且つ−400≦Rth≦−50
(21)60≦Re≦200、且つ20≦Rth≦120
(22)30≦Re≦150、且つ100≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【請求項15】
黒表示時に液晶分子がベンド配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層がディスコティック液晶化合物を含有する層を少なくとも含むことを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
レターデーションが下記式(1)〜(3)及び(4−A)〜(7−A)を満たす光学フィルムを用い、かつIPS型の液晶セルを有する液晶表示装置。
(1)0≦Re(550)≦10
(2)−25≦Rth(550)≦25
(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)
(4−A)−50≦I≦0
(5−A)0≦II≦50
(6−A)−50≦III<0
(7−A)0<IV≦50
ここで、I=Re(450)−Re(550)
II=Re(650)−Re(550)
III=Rth(450)−Rth(550)
IV=Rth(650)−Rth(550)である。
(式中Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【請求項1】
レターデーションが下記式(1)〜(3)及び(4−A)〜(7−A)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
(1)0≦Re(550)≦10
(2)−25≦Rth(550)≦25
(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)
(4−A)−50≦I≦0
(5−A)0≦II≦50
(6−A)−50≦III<0
(7−A)0<IV≦50
ここで、I=Re(450)−Re(550)II=Re(650)−Re(550)III=Rth(450)−Rth(550)IV=Rth(650)−Rth(550)である。
(式中Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【請求項2】
光学フィルムの原料ポリマーにセルロースアシレートが使用されていることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基のみからなり、その全置換度が2.56〜3.00であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
セルロースアシレートのアシル置換基が実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなり、その全置換度が2.50〜3.00であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項5】
Rth(550)を低下させる化合物を、下記式(8)および(9)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(8)(Rth[A]−Rth[0])/A≦−1.0
(9)0.01≦A≦30
ここで、Rth[A]:Rth(550)を低下させる化合物をA%含有した光学フィルムの550nmにおけるRth(nm)Rth[0]:Rth(550)を低下させる化合物を含有しない光学フィルムの550nmにおけるRth(nm)A:光学フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
【請求項6】
下記式(10)で表されるΔRthを増加させる化合物を、下記式(11)および(12)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(10)ΔRth=Rth(450)−Rth(650)
(11)(ΔRth[B]−ΔRth[0])/B≧1.0
(12)0.01≦B≦30
ここで、ΔRth[B]:ΔRthを増加させる化合物をB%含有した光学フィルムのΔRth(nm)ΔRth[0]:ΔRthを増加させる化合物を含有しない光学フィルムのΔRth(nm)B:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。
【請求項7】
膜厚が20〜200μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルムおよび下記式(13)および(14)を満たす光学異方性層を含むことを特徴とする光学補償フィルム。
(13)0≦Re≦400
(14)−400≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム、又は請求項8に記載の光学補償フィルムの少なくとも1枚と、偏光子とを有することを特徴とする偏光板。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム、請求項8に記載の光学補償フィルム、及び請求項9に記載の偏光板、の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム、請求項8に記載の光学補償フィルム、及び請求項9に記載の偏光板の少なくともいずれかを含み、かつ、下記式(15)および(16)を満たす光学異方性層を少なくとも一層含むことを特徴とする液晶表示装置。
(15)0≦Re≦400
(16)−400≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【請求項12】
黒表示時に液晶分子が垂直配向、平行配向、またはベンド配向している液晶セルを含むことを特徴とする請求項10または11に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
黒表示時に液晶分子が垂直配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層が下記式(17)および(18)を満たす層を少なくとも一層含むことを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
(17)10≦Re≦150
(18)50≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【請求項14】
黒表示時に液晶分子が平行配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層が下記式(19)〜(22)のいずれかを満たす層を少なくとも一層含むことを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
(19)100≦Re≦400、且つ−50≦Rth≦50
(20)0≦Re≦20、且つ−400≦Rth≦−50
(21)60≦Re≦200、且つ20≦Rth≦120
(22)30≦Re≦150、且つ100≦Rth≦400
(式中Re及びRthは、各々可視領域のいずれかの波長の光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)及び厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【請求項15】
黒表示時に液晶分子がベンド配向している液晶セルを含み、前記光学異方性層がディスコティック液晶化合物を含有する層を少なくとも含むことを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
レターデーションが下記式(1)〜(3)及び(4−A)〜(7−A)を満たす光学フィルムを用い、かつIPS型の液晶セルを有する液晶表示装置。
(1)0≦Re(550)≦10
(2)−25≦Rth(550)≦25
(3)|I|+|II|+|III|+|IV|>0.5(nm)
(4−A)−50≦I≦0
(5−A)0≦II≦50
(6−A)−50≦III<0
(7−A)0<IV≦50
ここで、I=Re(450)−Re(550)
II=Re(650)−Re(550)
III=Rth(450)−Rth(550)
IV=Rth(650)−Rth(550)である。
(式中Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した面内レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)はそれぞれ波長450nm、550nm、650nmの光で測定した厚み方向のレターデーション値(単位:nm)である。)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−133386(P2012−133386A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27821(P2012−27821)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【分割の表示】特願2006−236403(P2006−236403)の分割
【原出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【分割の表示】特願2006−236403(P2006−236403)の分割
【原出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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