説明

光学フィルム用粘着剤層の製造方法、光学フィルム用粘着剤層、粘着剤層付光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】水分散型粘着剤を用いて形成された光学フィルム用粘着剤層であっても、偏光解消を低減することができる光学フィルム用粘着剤層の製造方法を提供すること。
【解決手段】水分散型粘着剤を支持基材に塗布する工程(1)および塗布された水分散型粘着剤を加熱する工程(2)を有する光学フィルム用粘着剤層の製造方法であって、前記加熱工程(2)は、加熱温度が50〜200℃の高温加熱工程(A)を少なくとも1つ有し、かつ、前記高温加熱工程(A)は、当該高温加熱工程(A)の加熱温度をX(℃)とし、加熱時間をY(分間)として、Z=X×Y、とした場合に、Z=650〜27000を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型粘着剤を用いた光学フィルム用粘着剤層の製造方法に関する。また本発明は、前記製造方法により得られた光学フィルム用粘着剤層、および当該粘着剤層が光学フィルムに積層された粘着剤層付光学フィルムに関する。さらには、本発明は、前記粘着剤層付光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置および前面板などの画像表示装置と共に使用される部材、に関する。前記光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、や、反射防止フィルム等の表面処理フィルム、さらにはこれらが積層されているものを用いることができる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置および有機EL表示装置等は、その画像形成方式から、例えば、液晶表示装置では、液晶セルの両側に偏光素子を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光フィルムが貼着されている。また液晶パネルおよび有機ELパネル等の表示パネルには偏光フィルムの他に、ディスプレイの表示品位を向上させるために様々な光学素子が用いられるようになってきている。また液晶表示装置や有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置を保護したり、高級感を付与したり、デザインを差別化するために前面板が使用されている。これら液晶表示装置および有機EL表示装置等の画像表示装置や前面板などの画像表示装置と共に使用される部材には、例えば、着色防止としての位相差フィルム、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム、さらにはディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム、表面の耐擦傷性を付与するために用いられるハードコートフィルム、画像表示装置に対する写り込みを防止するためのアンチグレア処理フィルム、アンチリフレクティブフィルム、ローリフレクティブフィルムなどの反射防止フィルム等の表面処理フィルムが用いられている。これらのフィルムは総称して光学フィルムと呼ばれる。
【0003】
前記光学フィルムを液晶セルおよび有機ELパネル等の表示パネル、または前面板に貼着する際には、通常、粘着剤が使用される。また、光学フィルムと液晶セルおよび有機ELパネル等の表示パネル、または前面板、または光学フィルム間の接着は、通常、光の損失を低減するため、それぞれの材料は粘着剤を用いて密着されている。このような場合に、光学フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、光学フィルムの片側に予め粘着剤層として設けられた粘着剤層付光学フィルムが一般的に用いられる。
【0004】
従来から、上記粘着剤層付光学フィルムの粘着剤層の形成に用いる粘着剤としては、加熱または加湿熱環境で耐久性に優れる点から、有機溶剤型粘着剤が主に使用されてきた。しかし、近年、地球環境負荷の低減、作業安定性の向上の観点から有機溶剤を使用しない無溶剤型粘着剤の開発が盛んになされている。
【0005】
無溶剤型粘着剤としては、分散媒として水を用いて、水中に粘着剤成分を分散させた水分散型粘着剤が提案されている。水分散型粘着剤としては、例えば、所定量のウレタン成分とアクリル成分とからなるポリマーが実質的に乳化剤を使用することなく水に分散されてなり、かつ所定量の溶剤不溶分と所定量のシランカップリング剤を含む水分散型光学部材用粘着剤組成物が提案されている(特許文献1)。また、水分散型粘着剤としては、水分散型重合体と粘土鉱物の水分散液とが所定量配合されており、厚み200μmのシート状に成形したときに、ヘイズ値が3%以下、全光線透過率が90〜100%の水分散型粘着剤組成物が提案されている(特許文献2)。また、水分散型粘着シート類として、粘着剤層中の気泡サイズが100μm以下であり、かつ粘着剤層のヘイズ値が15%以下を満足するものが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−323761号公報
【特許文献2】特開2009−062264号公報
【特許文献3】特開2002−069394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液晶表示装置には、画像の見栄えが要求されており、液晶表示装置には白表示と黒表示に係わる高コントラスト化が要求されている。液晶表示装置の高コントラスト化のために種々の部材が開発されている。そのため、液晶表示装置に用いられる部材、例えば、粘着剤層等には高コントラスト化を阻害しないことが求められる。
【0008】
高コントラスト化を阻害しないためには、液晶表示装置に用いられる部材が偏光解消を生じさせないことが望まれる。特に、液晶表示装置において、液晶セルの両側に粘着剤層を介して配置される2枚の偏光フィルムより内側の部材(偏光フィルムにおける液晶セル側の透明保護フィルム、粘着剤層、液晶セル)については偏光解消を生じさせないことが求められる。その他、有機ELパネル等の表示パネル、または前面板においても偏光フィルム等とともに適用する場合には偏光解消を生じさせないことが求められる。
【0009】
従来、コントラストが低い偏光フィルムや液晶セルを用いた場合には、偏光フィルムの粘着剤層として水分散型粘着剤を用いて形成された粘着剤層を用いた場合においても偏光解消は特に問題にはならなかった。しかし、上記のような高コントラスト化が進むなかで、偏光フィルムや液晶セルについて各種の開発がなされている結果、従来の水分散型粘着剤を用いて形成された粘着剤層を、高コントラスト用の高偏光度を有する偏光フィルム等に適用した場合には、溶剤型粘着剤を用いて形成された粘着剤層に比べて偏光解消を生じやすいものであった。特に特許文献1では、アクリル成分の他にウレタン成分を有していることから偏光解消を生じやすくなる。また、特許文献2では、ヘイズ値が小さく、透過率の値が大きな粘着剤層が示されており粘着剤層の透明性は確保されているが、ヘイズ値は偏光の透過率を測定する指標ではなく、ヘイズ値が小さいからといって偏光解消が低減されているわけではない。また、特許文献3では粘着剤層中の気泡の発生を抑制したことに関することが記載されているが、気泡の発生の抑制によって偏光解消が低減されるわけではない。
【0010】
本発明は、水分散型粘着剤を用いて形成された光学フィルム用粘着剤層であって、当該光学フィルム用粘着剤層が高コントラスト用の高偏光度を有する偏光フィルム等に適用される場合に、特に偏光解消を低減することができる光学フィルム用粘着剤層の製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、前記製造方法により得られた光学フィルム用粘着剤層を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも片側に、前記光学フィルム用粘着剤層が積層されている粘着剤層付光学フィルムを提供することを目的にする。さらに発明は、前記粘着剤層付光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記の光学フィルム用粘着剤層の製造方法等により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち本発明は、少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている水分散液を含有する水分散型粘着剤を支持基材に塗布する工程(1)および塗布された水分散型粘着剤を加熱する工程(2)を有する光学フィルム用粘着剤層の製造方法であって、
前記加熱工程(2)は、加熱温度が50〜200℃の高温加熱工程(A)を少なくとも1つ有し、かつ、
前記高温加熱工程(A)は、当該高温加熱工程(A)の加熱温度をX(℃)とし、加熱時間をY(分間)として、Z=X×Y、とした場合に、Z=650〜27000を満足することを特徴とする光学フィルム用粘着剤層の製造方法、に関する。
【0014】
前記光学フィルム用粘着剤層の製造方法において、加熱工程(2)としては、塗布された水分散型粘着剤を乾燥して粘着剤層を形成する工程(21)および形成された粘着剤層のエージングを行なう工程(22)を有することができ、前記形成工程(21)およびエージング工程(22)のいずれか少なくとも一方において、高温加熱工程(A)を有し、かつ前記形成工程(21)およびエージング工程(22)における高温加熱工程(A)のZの合計が、Z=650〜27000を満足することができる。
【0015】
前記光学フィルム用粘着剤層の製造方法において、加熱工程(2)としては、塗布された水分散型粘着剤を乾燥して粘着剤層を形成する工程(21)が挙げられ、前記形成工程(21)において、前記高温加熱工程(A)を有し、かつ、Z=650〜27000を満足することができる。
【0016】
前記光学フィルム用粘着剤層の製造方法において、前記高温加熱工程(A)におけるZは、Z=3000〜27000を満足することが好ましい。
【0017】
前記光学フィルム用粘着剤層の製造方法において、前記水分散型粘着剤におけるベースポリマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーが好適である。
【0018】
前記ベースポリマーである、(メタ)アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有するモノマー成分を、乳化剤、ラジカル重合開始剤の存在下に乳化重合により得られたものが挙げられる。ラジカル重合開示剤としては、アゾ系のラジカル重合開始剤が好適である。
【0019】
また本発明は、前記製造方法により得られたものであることを特徴とする光学フィルム用粘着剤層、に関する。
【0020】
前記光学フィルム用粘着剤層は、偏光フィルムの片面に前記光学フィルム用粘着剤層を積層した粘着剤層付偏光フィルムにおいて、偏光フィルムの偏光度(P1)と粘着剤層付偏光フィルムの偏光度(P2)との差(P1−P2)で表される偏光解消性値が、0.015以下を満足することが好ましい。
【0021】
また本発明は、光学フィルムの少なくとも片側に、前記光学フィルム用粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着剤層付光学フィルム、に関する。
【0022】
また本発明は、前記粘着剤層付光学フィルムを少なくとも1枚用いていることを特徴とする画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0023】
水分散型粘着剤により形成される光学フィルム用粘着剤層において生じる偏光解消は、水分散型粘着剤自体がエマルション粒子の集合体であることから、エマルション粒子間の界面で散乱を起こして、それが原因で偏光解消を生じることが分かった。散乱は、種々の要因により発生するが、粒子の集合体である水分散型粘着剤では、エマルション粒子に界面があるために、界面と粒子成分との屈折率差で散乱が発生していると考えられる。
【0024】
上記のように、本発明では、粘着剤層の形成に係る加熱工程(2)において、50〜200℃の高温加熱工程(A)が、上記で定義されるZが、Z=650〜27000を満足するように所定の時間施される。かかる高温加熱工程(A)により、粘着剤層の形成過程において、水分散型粘着剤に係るエマルション粒子同士を、エマルション粒子間の界面がなくなるように密着(融着)させることができる。その結果、散乱の原因になっている、前記界面を減少させることができ、偏光解消性を抑制して視認性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の製造方法では、水分散型粘着剤により光学フィルム用粘着剤層を形成する。
【0026】
水分散型粘着剤は、少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている水分散液である。当該水分散液としては、通常は、界面活性剤の存在下にベースポリマーが分散しているものが用いられるが、ベースポリマーが水中に分散含有されているものであれば、自己分散性ベースポリマーの自己分散によって、水分散液になっているものを用いることができる。
【0027】
また、水分散液中のベースポリマーは、モノマーを乳化剤の存在下において乳化重合したり、または界面活性剤の存在下に分散重合したりして重合することにより得られたものが挙げられる。
【0028】
また、水分散液は、別途製造したベースポリマーを、乳化剤の存在下に水中で乳化分散することにより製造することができる。乳化方法としては、ポリマーと乳化剤を予め加熱溶融し、または加熱溶融することなく、それらと水とを、例えば加圧ニーダー、コロイドミル、高速攪拌シャフト等の混合機を用いて、高剪断をかけて均一に乳化分散させた後、分散粒子が融着凝集しないように冷却して所望の水分散体を得る方法(高圧乳化法)や、ポリマーを予めベンゼン、トルエン、酢酸エチル等の有機溶剤に溶解した後、前記乳化剤及び水を添加し、例えば高速乳化機を用いて、高剪断をかけて均一に乳化分散させた後、減圧−加熱処理等により有機溶剤を除去して所望の水分散体とする方法(溶剤溶解法)等が挙げられる。
【0029】
水分散型粘着剤としては、各種の粘着剤を用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、フッ素系粘着剤などが挙げられる。前記粘着剤の種類に応じて粘着性のベースポリマーや分散手段が選択される。
【0030】
前記粘着剤のなかでも、本発明では、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れる点から水分散型のアクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0031】
水分散型アクリル系粘着剤のベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー成分を、乳化剤、ラジカル重合開始剤の存在下に乳化重合することにより共重合体エマルションとして得られる。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0032】
(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1〜20のものを例示できる。例えば、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、エイコシル基等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3〜9であるのが好ましい。特に、本発明においては、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アクリル酸ブチルのような、水よりも沸点が高いモノマーが特に好適に使用される。
【0033】
前記(メタ)アクリル系ポリマー中には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外に、水分散液の安定化、粘着剤層の光学フィルム等の支持基材に対する密着性の向上、さらには、被着体に対する初期接着性の向上などを目的として、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合に係る重合性の官能基を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。
【0034】
前記共重合モノマーの具体例としては、特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレートなどのカルボキシル基含有モノマー;例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステル;例えば、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;例えば、スチレンやα−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどのヒドロキシル基含有モノマー;例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの窒素原子含有モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有モノマー;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどの官能性モノマー;例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;例えば、ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;例えば、塩化ビニルなどのハロゲン原子含有モノマー;その他、例えば、N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリンなどのビニル基含有複素環化合物や、N−ビニルカルボン酸アミド類などが挙げられる。
【0035】
また、共重合性モノマーとして、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;例えば、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマーが挙げられる。
【0036】
また、共重合性モノマーとしては、リン酸基含有モノマーが挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、下記一般式(1):
【化1】

(一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数1〜4のアルキレン基、mは2以上の整数を示し、M1およびM2は、それぞれ独立に、水素原子またはカチオンを示す。)で表されるリン酸基またはその塩を示す。)で表されるリン酸基含有モノマーが挙げられる。
【0037】
なお、一般式(1)中、mは、2以上、好ましくは、4以上、通常40以下であり、mは、オキシアルキレン基の重合度を表す。また、ポリオキシアルキレン基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等が挙げられ、これらポリオキシアルキレン基は、これらのランダム、ブロックまたはグラフトユニットなどであってもよい。また、リン酸基の塩に係る、カチオンは、特に制限されず、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、例えば、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属などの無機カチオン、例えば、4級アミン類などの有機カチオンなどが挙げられる。
【0038】
また、共重合性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;その他、例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルや、フッ素(メタ)アクリレートなどの複素環や、ハロゲン原子を含有するアクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。
【0039】
さらに共重合性モノマーとして、シリコーン系不飽和モノマーが挙げられる。シリコーン系不飽和モノマーには、シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーや、シリコーン系ビニルモノマーなどが含まれる。シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリブトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリアルコキシシラン;例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。また、シリコーン系ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシランなどのビニルトリアルコキシシランの他、これらに対応するビニルアルキルジアルコキシシランや、ビニルジアルキルアルコキシシラン、例えば、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシランなどのビニルアルキルトリアルコキシシランの他、これらに対応する(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシランや、(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0040】
さらに、共重合性モノマーとして、水分散型粘着剤のゲル分率の調整などのために、多官能性モノマーを用いることができる。多官能モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する化合物などが挙げられる。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの他、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル等の反応性の不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。また、多官能性モノマーとしては、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどの骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどを用いることもできる。
【0041】
これらの共重合モノマーの中でも、水分散液(エマルション等)の安定化や、当該水分散液から形成される粘着剤層の被着体であるガラスパネルへの密着性の確保の観点から、アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シリコーン系不飽和モノマーが好ましく用いられる。
【0042】
(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするものであり、その配合割合は、モノマー成分全量に対して、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。また、その上限は、特に制限されず、例えば、100重量%、好ましくは99重量%、さらに好ましくは98重量%である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合が50重量%未満であると、粘着剤層の接着力などの粘着特性が低下する場合がある。
【0043】
また、共重合性モノマーの配合割合は、モノマー成分全量に対して、例えば、50重量%未満、好ましくは、40重量%未満、さらに好ましくは、30重量%未満である。共重合性モノマーは、各共重合性モノマーの種類に応じて、配合割合を適宜選択することができる。例えば、共重合性モノマーが、カルボキシル基含有モノマーの場合、その割合はモノマー成分全量に対して0.1〜6重量%であるのが好ましく、リン酸基含有モノマーの場合その割合は0.5〜5重量%であるのが好ましく、シリコーン系不飽和モノマーの場合その割合は0.005〜0.2重量%であるのが好ましい。
【0044】
前記モノマー成分の乳化重合は、常法により、モノマー成分を水に乳化させた後に、乳化重合することにより行う。これにより(メタ)アクリル系ポリマー水分散液を調製する。乳化重合では、例えば、上記したモノマー成分とともに、乳化剤、ラジカル重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤などを、水中において適宜配合される。より具体的には、例えば、一括仕込み法(一括重合法)、モノマー滴下法、モノマーエマルション滴下法などの公知の乳化重合法を採用することができる。なお、モノマー滴下法、モノマーエマルション滴下法では、連続滴下または分割滴下が適宜選択される。これらの方法は適宜に組み合わせることができる。反応条件などは、適宜選択されるが、重合温度は、例えば、0〜150℃程度であるのが好ましく、重合時間は2〜15時間程度であるのが好ましい。
【0045】
乳化重合に用いられる乳化剤(界面活性剤)は、特に制限されず、乳化重合に通常使用される各種の界面活性剤が用いられる。界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が用いられる。アニオン系界面活性剤の具体例としては、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ポリオエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩類;ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物等を例示することができる。ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等を例示することができる。
【0046】
また、上記非反応性界面活性剤の他に、界面活性剤としては、エチレン性不飽和二重結合に係るラジカル重合性官能基を有する反応性界面活性剤を用いることができる。反応性界面活性剤としては、前記アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤に、プロペニル基やアリルエーテル基などのラジカル重合性官能基(ラジカル反応性基)が導入されたラジカル重合性界面活性剤などが挙げられる。これら界面活性剤は、適宜、単独または併用して用いられる。これらの界面活性剤の中でも、ラジカル重合性官能基を有したラジカル重合性界面活性剤は、水分散液の安定性、粘着剤層の耐久性の観点から、好ましく使用される。
【0047】
アニオン系反応性界面活性の具体例としては、アルキルエーテル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH−05、KH−10、KH−20、旭電化工業株式会社製アデカリアソープSR−10N、SR−20N、花王株式会社製ラテムルPD−104等);スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば、花王株式会社製ラテムルS−120、S−120A、S−180P、S−180A、三洋化成株式会社製エレミノールJS−2等);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンH−2855A、H−3855B、H−3855C、H−3856、HS−05、HS−10、HS−20、HS−30、BC−05、BC−10、BC−20、旭電化工業株式会社製アデカリアソープSDX−222、SDX−223、SDX−232、SDX−233、SDX−259、SE−10N、SE−20N);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製アントックスMS−60、MS−2N、三洋化成工業株式会社製エレミノールRS−30等);リン酸エステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製H−3330PL,旭電化工業株式会社製アデカリアソープPP−70等)が挙げられる。ノニオン系反応性界面活性剤としては、例えばアルキルエーテル系(市販品としては、例えば、旭電化工業株式会社製アデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40、花王株式会社製ラテムルPD−420、PD−430、PD−450等);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50、旭電化工業株式会社製アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40等);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製RMA−564、RMA−568、RMA−1114等)が挙げられる。
【0048】
前記乳化剤の配合割合は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー成分100重量部に対して、例えば、0.1〜5重量部程度、好ましくは0.4〜4重量部である。乳化剤の配合割合が、この範囲であると、耐水性、粘着特性、さらには重合安定性、機械的安定性などの向上を図ることができる。
【0049】
ラジカル重合開始剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用される公知のラジカル重合開始剤が用いられる。例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などのアゾ系開始剤;例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤;例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤;例えば、フェニル置換エタンなどの置換エタン系開始剤;例えば、芳香族カルボニル化合物などのカルボニル系開始剤などが挙げられる。これら重合開始剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、乳化重合を行なうに際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用するレドックス系開始剤とすることができる。これにより、乳化重合速度を促進したり、低温において乳化重合をおこなったりすることが容易になる。このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラートなどの金属塩等の還元性有機化合物;チオ硫酸案トリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物;塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素などを例示できる。
【0050】
前記ラジカル重合開始剤のなかでも、アゾ系のラジカル重合開示剤は、本発明において形成される粘着剤層の透明性を向上させることができ好ましい。コントラストの低下の原因としては白色輝度時の白色の輝度低下が挙げられるが、アゾ系のラジカル重合開示剤は、加熱工程(2)における変色ことを抑えることができ、変色によるコントラストの低下を小さくすることができる。これら重合開始剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、ラジカル重合開始剤の配合割合は、適宜選択されるが、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.02〜0.5重量部程度、好ましくは、0.08〜0.3重量部である。0.02重量部未満であると、ラジカル重合開始剤としての効果が低下する場合があり、0.5重量部を超えると、水分散型の(メタ)アクリル系ポリマーの分子量が低下し、水分散型粘着剤組成物の粘着性が低下する場合がある。
【0051】
連鎖移動剤は、必要により、水分散型の(メタ)アクリル系ポリマーの分子量を調節するものであって、通常、乳化重合に通常使用される連鎖移動剤が用いられる。例えば、1−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール、メルカプトプロピオン酸エステル類などのメルカプタン類などが挙げられる。これら連鎖移動剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、連鎖移動剤の配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.001〜0.3重量部である。
【0052】
このような乳化重合によって、水分散型の(メタ)アクリル系ポリマーを水分散液(エマルション)として調製することができる。このような水分散型の(メタ)アクリル系ポリマーは、その平均粒子径が、例えば、0.05〜3μm、好ましくは、0.05〜1μmに調整される。平均粒子径が0.05μmより小さいと、水分散型粘着剤の粘度が上昇する場合があり、1μmより大きいと、粒子間の融着性が低下して凝集力が低下する場合がある。
【0053】
また、前記水分散液の分散安定性を保つために、前記水分散液に係る(メタ)アクリル系ポリマーが、共重合性モノマーとしてカルボキシル基含有モノマー等を含有する場合には、当該カルボキシル基含有モノマー等を中和することが好ましい。中和は、例えば、アンモニア、水酸化アルカリ金属等により行なうことができる。
【0054】
本発明の水分散型の(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、重量平均分子量は100万以上のものが好ましい。特に重量平均分子量で100万〜400万のものが耐熱性、耐湿性の点で好ましい。重量平均分子量が100万未満であると耐熱性、耐湿性が低下し好ましくない。また乳化重合で得られる粘着剤はその重合機構より分子量が非常に高分子量になるので好ましい。ただし、乳化重合で得られる粘着剤は一般にはゲル分が多くGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定できないので分子量に関する実測定での裏付けは難しいことが多い。
【0055】
本発明の水分散型粘着剤は、上記のベースポリマーに加えて、架橋剤を含有することができる。水分散型粘着剤が水分散型アクリル系粘着剤の場合に用いられる架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤などの一般に用いられているものを使用できる。これら架橋剤は、官能基含有単量体を用いることにより重合体中に導入した官能基と反応して架橋する効果を有する。
【0056】
ベースポリマーと架橋剤の配合割合は特に限定されないが、通常、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(固形分)10重量部程度以下の割合で配合される。前記架橋剤の配合割合は、0.001〜10重量部が好ましく、さらには0.01〜5重量部程度が好ましい。
【0057】
さらには、本発明の水分散型粘着剤には、必要に応じて、粘度調整剤、剥離調整剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤(顔料、染料など)、pH調整剤(酸または塩基)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などとしても良い。これら添加剤もエマルションとして配合することができる。
【0058】
本発明の水分散型粘着剤の固形分濃度は、特に制限されず、固形分濃度によって、本発明の効果が損なわれることはないが、塗工外観の観点から、20〜70重量%であるのが好ましく、さらには30〜65重量%であるのが好ましく、さらには37〜55重量%であるのが好ましい。
【0059】
本発明の光学フィルム用粘着剤層は、水分散型粘着剤を支持基材に塗布する工程(1)を施した後に、前記工程(1)で塗布された水分散型粘着剤を加熱する工程(2)が施されることにより製造される。
【0060】
上記塗布工程(1)には、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0061】
また、塗布工程(1)では、形成される粘着剤層が所定の厚み(乾燥後厚み)になるようにその塗布量が制御される。粘着剤層の厚み(乾燥後厚み)は、通常、1〜100μm程度、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜40μmの範囲に設定される。
【0062】
次いで、塗布工程(1)で塗布された水分散型粘着剤に対して、加熱工程(2)が施される。前記加熱工程(2)は、少なくとも、塗布された水分散型粘着剤を乾燥して粘着剤層を形成する工程(21)を含む。当該形成工程(21)により粘着剤層が形成される。形成工程(21)の乾燥温度は、通常、30〜200℃であり、好ましくは30〜150℃、より好ましくは30〜130℃である。また、形成される粘着剤層の外観を良好にする観点から、形成工程(21)の温度は、後述のエージング工程(22)の温度よりも低く設定することが好ましい。形成工程(21)において、高温をかけてしまうと、発泡を生じやすく、偏光解消が起こる傾向にある。また形成工程(21)の加熱時間は、通常、0.3〜26分間であり、好ましくは0.3〜3分間、より好ましくは0.3から1.6分間である。
【0063】
また前記加熱工程(2)には、前記形成工程(21)の他に、形成工程(21)により形成された粘着剤層のエージングを行なう工程(22)を含むことができる。エージング工程(22)の加熱温度は、200℃以下であり、50℃以上であることが好ましく、50℃を超えることが好ましい。エージング工程(22)の加熱温度は、50〜200℃であるのが好ましく、60〜200℃であるのがより好ましく、さらに好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは120〜200℃を採用することができる。エージング工程(22)において高温をかけてしまうと、粘着剤層に変色が生じ、偏光解消が起こる傾向にある。またエージングを行なう工程(22)の加熱時間は、通常、3.5〜449分間であり、好ましくは15〜449分間、より好ましくは50〜270分間、さらに好ましくは100〜225分間である。
【0064】
なお、前記形成工程(21)とエージング工程(22)は同じ加熱温度を採用してもよく、異なる加熱温度を採用してもよい。また、前記形成工程(21)、エージング工程(22)は、それぞれの工程内において、異なる加熱温度を採用して、前記形成工程(21)、エージング工程(22)を加熱温度が異なる複数工程に分けて行なうこともできる。
【0065】
本発明の製造方法では、前記加熱工程(2)において、加熱温度が50〜200℃の高温加熱工程(A)を有する。例えば、前記加熱工程(2)が形成工程(21)のみである場合には、当該形成工程(21)に高温加熱工程(A)を有する。また、例えば、前記加熱工程(2)として、形成工程(21)およびエージング工程(22)を有する場合には、当該形成工程(21)およびエージング工程(22)のいずれか少なくとも一方において、高温加熱工程(A)を有する。前記高温加熱工程(A)は、エージング工程(22)において有するのが好ましい。特にエージング工程(22)では、高温においてエマルション粒子同士の密着(融着)を促進することができる。
【0066】
前記高温加熱工程(A)として、加熱温度50〜200℃での乾燥処理を所定時間施すことによって、エマルション粒子同士を密着(融着)させて、粘着剤層の偏光解消性を小さくすることができる。前記高温加熱工程(A)における加熱温度は100℃以上が好ましく、さらには120℃以上が好ましい。加熱温度が50℃未満では、エマルション粒子同士を密着(融着)が十分ではなく、加熱時間を長くしても、形成される粘着剤層の偏光解消性を十分に小さくすることができない。前記高温加熱工程(A)における加熱温度が、200℃を超える場合には、却って偏光解消を低減することが難しくなる。
【0067】
また、前記高温加熱工程(A)に係る加熱時間Y(分間)は、高温加熱工程(A)の加熱温度をX(℃)として、Z=X×Y、とした場合に、Z=650〜27000を満足するように制御される。前記Z値が650未満では、加熱時間が短いため、加熱温度が50℃以上の場合にも、エマルション粒子同士の密着(融着)が十分ではなく、粘着剤層の偏光解消性を十分に小さくすることができない。一方、前記Z値が27000を超える場合には、高温下での加熱時間が長くなるため、粘着剤層が着色してしまい、粘着剤層の偏光解消性を十分に小さくすることができない。前記Z値は、Z=3000〜27000を満足することが好ましく、さらには10000〜27000を満足することが好ましく、さらには20000〜27000を満足することが好ましい。
【0068】
加熱工程(2)が形成工程(21)のみの場合には、当該形成工程(21)において、前記Z=650〜27000を満足するように、前記高温加熱工程(A)に係る加熱温度をX(℃)、加熱時間Y(分間)が制御される。
【0069】
また加熱工程(2)が形成工程(21)およびエージングを行なう工程(22)を有する場合には、前述のとおり、高温加熱工程(A)は形成工程(21)およびエージング工程(22)のいずれか少なくとも一方において有していればよい。例えば、形成工程(21)またはエージング工程(22)のいずれか一方にのみ高温加熱工程(A)を有する場合には、形成工程(21)またはエージング工程(22)において、前記Z=650〜27000を満足するように、前記高温加熱工程(A)に係る加熱温度をX(℃)、加熱時間Y(分間)が制御される。一方、例えば、形成工程(21)およびエージング工程(22)の両者に高温加熱工程(A)を有する場合には、形成工程(21)およびエージング工程(22)における、各高温加熱工程(A)について求められる前記Zの合計が、前記Z=650〜27000を満足するように、前記形成工程(21)およびエージング工程(22)における各高温加熱工程(A)に係る加熱温度をX(℃)、加熱時間Y(分間)が制御される。
【0070】
高温加熱工程(A)が複数工程の場合には、前記Z=650〜27000は、各高温加熱工程(A)に係るZの合計であればよいが、前記Zは、形成工程(21)またはエージング工程(22)のいずれかにおいて満足するのが好ましく、特にエージング工程(22)において満足するのが好ましい。なお、形成工程(21)、エージング工程(22)において、加熱温度が異なる複数工程が採用され、かつ当該複数工程が高温加熱工程(A)を満足する場合には、前記複数工程に係る高温加熱工程(A)のZの合計が、前記Z=650〜27000を満足するように、各高温加熱工程(A)に係る加熱温度をX(℃)、加熱時間Y(分間)が制御される。
【0071】
本発明の光学フィルム用粘着剤層の製造方法では、前記塗布工程(1)および加熱工程(2)を有するが、塗布工程(1)において、水分散型粘着剤が塗布される支持基材に応じて、加熱工程(2)として下記の製法を採用することができる。支持基材としては、各種基材を用いることができるが、例えば、光学フィルムまたは離型フィルムが挙げられる。例えば、支持基材が光学フィルムの場合には下記の製法(A)を、支持基材が離型フィルムの場合には下記製法(B)を採用することができる。
【0072】
製法(A)では、塗布工程(1)において、直接、光学フィルムに水分散型粘着剤が塗布されており、加熱工程(2)により、粘着剤層付光学フィルムが得られる。製法(A)では加熱工程(2)として、前記形成工程(21)のみを採用することができ、また前記形成工程(21)およびエージング工程(22)を採用することができる。
【0073】
一方、製法(B)では、塗布工程(1)において、離型フィルムに水分散型粘着剤が塗布され、離型フィルム上に塗布された水分散型粘着剤に対して、加熱工程(2)における形成工程(21)が少なくとも施されて粘着剤層が形成される。次いで、当該粘着剤層を光学フィルムに貼り合せる工程(3)により、当該粘着剤層が光学フィルムに転写されて、粘着剤層付光学フィルムが得られる。製法(B)では、離型フィルム上に塗布された水分散型粘着剤に対して、加熱工程(2)として、前記形成工程(21)のみを採用することができる。この場合、光学フィルムに転写された粘着剤層に対しては、加熱工程(2)をさらに施してもよく施さなくてもよい。光学フィルムに転写された粘着剤層に対して加熱工程(2)が施される場合、当該加熱工程(2)はエージング工程(22)に該当する。また、離型フィルム上に塗布された水分散型粘着剤に対して、加熱工程(2)として、前記形成工程(21)およびエージング工程(22)を施すことができる。この場合にも、光学フィルムに転写された粘着剤層に対しては、エージング工程(22)に該当する加熱工程(2)をさらに施してもよく施さなくてもよい。なお、上記の通り、光学フィルムに転写された粘着剤層に対してエージング工程(22)を施すことは任意であるが、当該エージング工程(22)での加熱温度が高温加熱工程(A)に係る50〜200℃を満足する場合には、当該エージング工程(22)は、前記Zの算出に加えられる。当該エージング工程(22)での加熱温度が高温加熱工程(A)に係る50〜200℃から外れる場合には、融着としての効果は薄い。
【0074】
なお、加熱工程(2)において、形成工程(21)とエージング工程(22)が連続して施される場合には、両者の区別が困難な場合があるが、本発明において、その区別は特に重要ではなく、加熱工程(2)において、前記Z=650〜27000を満足するように、高温加熱工程(A)に係る加熱温度をX(℃)、加熱時間Y(分間)が制御されていればよい。なお、前記形成工程(21)は、例えば、形成される粘着剤層の水分率が85重量%以下になっていることにより終了していると判断することができる。形成工程(21)が施された粘着剤層の水分率は10〜85重量%であるのが好ましく、さらには25〜85重量%であるのが好ましい。このことを基準として、前記形成工程(21)とエージング工程(22)を区別することができる。なお、水分散型粘着剤は、一度固まると再溶解しないため、乾燥工程(2)を、粘着剤層の形成工程(21)において初めは穏やかに行い、粘着剤層の表面のみを形成させて、粘着剤層を安定させてから、エージング工程(22)を行なうことができる。前記粘着剤層の水分率の測定は、形成工程(21)により形成された粘着剤層の重量(w1)と、当該粘着剤層を150℃で20分間乾燥(絶乾燥)した場合の重量(w2)から、下記式により求められる。
粘着剤層の水分率(%)={(w1−w2)/w1}×100
【0075】
本発明の製造方法により得られる光学フィルム用粘着剤層は、偏光解消性値が小さい。例えば、偏光フィルムの片面に前記光学フィルム用粘着剤層を積層した粘着剤層付偏光フィルムにおいて、偏光フィルムの偏光度(P1)と粘着剤層付偏光フィルムの偏光度(P2)との差(P1−P2)を偏光解消性値と定義した場合、当該偏光解消性値は0.015以下と小さい値に制御することができる。偏光解消性値は小さいほど好ましく、0.012以下がより好ましく、さらには、0.011以下が好ましい。例えば、前記Z値を、Z=3000〜27000を満足することにより、偏光解消性値を0.011以下にすることが可能である。なお、偏光解消性値に係る偏光度の測定は、実施例の記載に基づいて行なわれる。偏光解消性値の測定に用いられる偏光フィルムの偏光度は99.400以上が好ましく、さらには99.900以上であるのが好ましい、さらには99.995以上であるのが好ましい。偏光解消性値の測定に用いられる偏光フィルムの偏光度が99.400未満の場合はコントラストが低く偏光解消性値に差が見られなくなる。
【0076】
離型フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などを挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0077】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0078】
前記離型フィルムの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記離型フィルムには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記離型フィルムの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0079】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで離型フィルムで粘着剤層を保護してもよい。なお、上記の剥離フィルムは、そのまま粘着剤層付光学フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0080】
また、光学フィルムの表面に、粘着剤層との間の密着性を向上させるために、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0081】
上記アンカー層の形成材としては、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、分子中にアミノ基を含むポリマー類、オキサゾリニル基を含むポリマー類から選ばれるアンカー剤が用いられ、特に好ましくは、分子中にアミノ基を含んだポリマー類、オキサゾリニル基を含むポリマー類である。分子中にアミノ基を含むポリマー類、オキサゾリニル基を含むポリマー類は、分子中のアミノ基、オキサゾリニル基が粘着剤中のカルボキシル基等と反応またはイオン性相互作用などの相互作用を示すため、良好な密着性が確保される。
【0082】
分子中にアミノ基を含むポリマー類としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジン、ジメチルアミノエチルアクリレート等の含アミノ基含有モノマーの重合体などを挙げることができる。
【0083】
光学フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、光学フィルムとしては偏光フィルムが挙げられる。偏光フィルムは偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0084】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0085】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0086】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0087】
また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差フィルム(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルム、表面処理フィルム等の液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものが挙げられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光フィルムに、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0088】
偏光フィルムに前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光フィルムと他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0089】
表面処理フィルムは、前面板に貼り合せても設けられる。表面処理フィルムとしては、表面の耐擦傷性を付与するために用いられるハードコートフィルム、画像表示装置に対する写り込みを防止するためのアンチグレア処理フィルム、アンチリフレクティブフィルム、ローリフレクティブフィルムなどの反射防止フィルム等が挙げられる。前面板は、液晶表示装置や有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置を保護したり、高級感を付与したり、デザインにより差別化したりするために、前記画像表示装置の表面に貼り合せて設けられる。また前面板は、3D−TVにおけるλ/4板の支持体として用いられる。例えば、液晶表示装置では、視認側の偏光フィルムの上側に設けられる。本発明の粘着剤層を用いた場合には、前面板として、ガラス基材の他に、ポリカーボネート基材、ポリメチルメタクリレート基材等のプラスチック基材においてもガラス基材と同様の効果を発揮する。
【0090】
本発明の粘着剤層付光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セル等の表示パネルと粘着剤層付光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着剤層付光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0091】
液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に粘着剤層付光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散層、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散シート、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0092】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置:OLED)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0093】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0094】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0095】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0096】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光フィルムを設けるとともに、これら透明電極と偏光フィルムとの間に位相差フィルムを設けることができる。
【0097】
位相差フィルムおよび偏光フィルムは、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差フィルムを1/4波長板で構成し、かつ偏光フィルムと位相差フィルムとの偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0098】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光フィルムにより直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差フィルムにより一般に楕円偏光となるが、とくに位相差フィルムが1/4波長板でしかも偏光フィルムと位相差フィルムとの偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0099】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差フィルムに再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光フィルムの偏光方向と直交しているので、偏光フィルムを透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0100】
上記のように有機EL表示装置では、鏡面反射を遮るために、有機ELパネルに、位相差フィルムおよび偏光フィルムを組み合わせた楕円偏光フィルムまたは円偏光フィルムを粘着剤層を介して用いることができるが、その他に、楕円偏光フィルムまたは円偏光フィルムを有機ELパネルに直接貼り合わせずに、楕円偏光フィルムまたは円偏光フィルムをタッチパネルに粘着剤層を介して貼り合わせたものを、有機ELパネルに適用することができる。
【0101】
本発明において適用される、タッチパネルとしては、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などの各種の方式を採用できる。抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電性薄膜を有するタッチ側のタッチパネル用電極板と透明導電性薄膜を有するディスプレイ側のタッチパネル用電極板を、透明導電性薄膜同士が対向するようにスペーサを介して対向配置してなるものである。他方、静電容量方式のタッチパネルは、通常、所定のパターン形状を有する透明導電性薄膜を備えた透明導電性フィルムがディスプレイ表示部の全面に形成されている。本発明の粘着剤層付光学フィルムは、タッチ側、ディスプレイ側のいずれの側にも適用される。
【実施例】
【0102】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。
【0103】
実施例1
(水分散型アクリル系粘着剤の調製)
容器に、原料モノマーとして、アクリル酸ブチル89部、アクリル酸5部、モノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(プロピレンオキシドの平均重合度約5.0)1部、および3−メタクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM−503)0.01部、反応性乳化剤であるアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)0.3部、イオン交換水83.5部を加え、ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製)を用い、5分間、6000rpmで攪拌し、モノマーエマルションを調製した。
【0104】
次に、冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび攪拌羽根を備えた反応容器に、上記で調製したモノマーエマルションのなかの75部およびイオン交換水51.6部、反応性乳化剤であるアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)0.7部を仕込み、次いで、反応容器を十分窒素置換した後、過硫酸アンモニウムを固形分で0.01部を添加して、60℃で1時間重合した。次いで、過硫酸アンモニウムを固形分で0.07部を加え、残りのモノマーエマルションを、反応容器に3時間かけて滴下し、その後、3時間重合した。さらにその後、窒素置換しながら、60℃で3時間重合し、固形分濃度42%の水分散型アクリル系粘着剤(エマルション)を得た。次いで、上記水分散型アクリル系粘着剤を室温まで冷却した後、これに、濃度10%のアンモニア水を添加してpHを8に調整した。
【0105】
(偏光フィルムの調製)
ポリビニルアルコールフィルム(厚み80μm)を、40℃のヨウ素水溶液中で、元長の5倍に延伸し、その後、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液から引き上げ、50℃で、4分間乾燥させて、偏光子を得た。この偏光子の両側に、ポリビニルアルコール型接着剤を用いて、透明保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを接着して、偏光フィルムを得た。
【0106】
(粘着剤層の形成および粘着剤層付偏光フィルムの作成)
上記水分散型アクリル系粘着剤を、乾燥後の厚みが23μmとなるように、離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製,ダイアホイルMRF−38,ポリエチレンテレフタレート基材)上にアプリケーターにより塗布した後、熱風循環式オーブンにより60℃で0.8分間加熱して、粘着剤層を形成した。当該粘着剤層の水分率は19%であった。引き続いて、当該粘着剤層を、熱風循環式オーブンにより150℃で150分間加熱して、エージングを行なった。その後、エージングされた粘着剤層を、上記で調製した偏光フィルムに貼り合せて、粘着剤層付偏光フィルムを作成した。
【0107】
実施例2〜18、比較例1〜6
実施例1の(粘着剤層の形成および粘着剤層付偏光フィルムの作成)において、熱風循環式オーブンによる粘着剤層を形成する際の加熱温度および時間、形成された粘着剤層のエージングに係る加熱時間および時間を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成した。また、実施例1と同様にして、粘着剤層付偏光フィルムを作成した。粘着剤層を形成した際(エージング前の粘着剤層)の水分率は表1に示す。
【0108】
実施例19
(粘着剤層の形成および粘着剤層付偏光フィルムの作成)
上記実施例1で調製した水分散型アクリル系粘着剤を、乾燥後の厚みが23μmとなるように、離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製,ダイアホイルMRF−38,ポリエチレンテレフタレート基材)上にアプリケーターにより塗布した後、熱風循環式オーブンにより60℃で0.8分間加熱して、粘着剤層を形成した。当該粘着剤層の水分率は19%であった。引き続いて、当該粘着剤層を、熱風循環式オーブンにより120℃で3.2分間加熱して、エージングを行なった。その後、エージングされた粘着剤層を、上記で調製した偏光フィルムに貼り合せた後、さらに150℃で6時間エージング処理して、粘着剤層付偏光フィルムを作成した。
【0109】
実施例20
(粘着剤層の形成および粘着剤層付偏光フィルムの作成)
上記実施例1で調製した水分散型アクリル系粘着剤を、乾燥後の厚みが23μmとなるように、離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製,ダイアホイルMRF−38,ポリエチレンテレフタレート基材)上にアプリケーターにより塗布した後、熱風循環式オーブンにより60℃で0.8分間加熱して、粘着剤層を形成した。当該粘着剤層の水分率は19%であった。引き続いて、当該粘着剤層を、熱風循環式オーブンにより120℃で3.2分間加熱して、エージングを行なった。その後、エージングされた粘着剤層を、上記で調製した偏光フィルムに貼り合せた後、さらに70℃で300時間エージング処理して、粘着剤層付偏光フィルムを作成した。
【0110】
実施例21
(水分散型アクリル系粘着剤の調製)
実施例1において、水分散型アクリル系粘着剤(エマルション)の調製にあたり、過硫酸アンモニウムの代わりに、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(和光純薬社製のV−50)を用いたこと以外は実施例1と同様にして水分散型アクリル系粘着剤(エマルション)を調製した。
【0111】
(粘着剤層の形成および粘着剤層付偏光フィルムの作成)
上記で調製した水分散型アクリル系粘着剤を、乾燥後の厚みが23μmとなるように、離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製,ダイアホイルMRF−38,ポリエチレンテレフタレート基材)上にアプリケーターにより塗布した後、熱風循環式オーブンにより60℃で0.8分間加熱して、粘着剤層を形成した。当該粘着剤層の水分率は19%であった。引き続いて、当該粘着剤層を、熱風循環式オーブンにより200℃で120分間加熱して、エージングを行なった。その後、エージングされた粘着剤層を、上記で調製した偏光フィルムに貼り合せて、粘着剤層付偏光フィルムを作成した。
【0112】
上記実施例および比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムについて以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0113】
<偏光度の測定>
偏光フィルムおよび粘着剤層付偏光フィルムの光学特性は、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製のV7100)を用いて測定した。なお、偏光度は、2枚の同じ偏光フィルムまたは粘着剤層付偏光フィルムを両者の透過軸が平行となるように重ね合わせた場合の透過率(平行透過率:Tp)および、両者の透過軸が直交するように重ね合わせた場合の透過率(直交透過率:Tc)を以下の式に適用することにより求められるものである。
偏光度(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
各透過率は、グランテラープリズム偏光子を通して得られた完全偏光を100%として、JIS Z8701の2度視野(C光源)により視感度補整したY値で示したものである。
【0114】
<偏光解消性値>
上記で測定した偏光フィルムの偏光度(P1)および粘着剤層付偏光フィルムの偏光度(P2)の測定結果から差(P1−P2)を算出して、偏光解消性値を導いた。なお、偏光フィルムの偏光度は99.997であった。
【0115】
実施例および比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムを用いて下記液晶表示装置Aを作成した。
【0116】
≪液晶表示装置A≫
VAモードの液晶セルを含む市販の液晶表示装置(ソニー(株)製,46インチ液晶テレビ,商品名「BraviaKDL−46WS」)から液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた偏光フィルム等の光学フィルムを全て取り除いた。この液晶セルのガラス板の表裏を洗浄したものを液晶セルAとした。当該液晶セルAの視認側に、実施例および比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムを、偏光フィルムの吸収軸方向が液晶セルAの長辺方向と実質的に平行になるように、粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層側を液晶セルAに貼り合せた。次いで、液晶セルAの視認側とは反対側(バックライト側)にも、前記と同じ実施例および比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムを、偏光フィルムの吸収軸方向が液晶セルAの長辺方向と実質的に直交するように、粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層側を液晶セルAに貼り合せた。これを液晶パネルAとする。液晶パネルAの視認側の粘着剤層付偏光フィルムとバックライト側の粘着剤層付偏光フィルムの各偏光フィルムの吸収軸方向は実質的に直交である。液晶パネルAを、元の液晶表示装置のバックライトユニットと結合し、液晶表示装置Aを作製した。
【0117】
<コントラストの測定方法>
液晶表示装置Aについて、正面方向のコントラスト比を測定した。コントラスト比の測定は、23℃の暗室でバックライトを点灯させてから30分間経過した後、トプコン社製の製品名「BM−5」を用いて、レンズをパネル情報の50cm位置に配置し、白画像および黒画像を表示した際のXYZ表示系のY値を測定した。白画像におけるY値(YW:白輝度)と黒画像におけるY値(YB:黒輝度)とから、正面方向のコントラスト比「YW/YB」を算出した。液晶表示装置Aのコントラスト(1)は、2600以上であることが好ましく、2700以上、2800以上、2900以上、さらには3000以上であるのが好ましい。
【0118】
【表1】

【0119】
表1に示すように、加熱工程(2)のエージング工程(22)において、加熱温度が50〜200℃で、Z値が650〜27000を満足する実施例は偏光解消性値が小さいことが認められる。一方、比較例1〜3では、エージング工程(22)の加熱温度が50℃以上であるが加熱時間が短く、Z値が650未満のため、偏光解消性値を小さい値に制御できていない。比較例4では、加熱温度が50℃以上であるが、加熱時間が長すぎるため、Z値が27000を超えているため、粘着剤層に変色が生じ、偏光解消性値を小さい値に制御できていない。また比較例3、4では形成工程(21)で250℃の高温をかけているため、粘着剤層に発泡が生じ、偏光解消を小さく制御できていない。比較例5では、加熱温度が50℃未満であるため、加熱時間が長くても、偏光解消性値を小さい値に制御できていない。比較例6では、加熱温度が200℃を超えているため、偏光解消性値を小さい値に制御できていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともベースポリマーが水中に分散含有されている水分散液を含有する水分散型粘着剤を支持基材に塗布する工程(1)および塗布された水分散型粘着剤を加熱する工程(2)を有する光学フィルム用粘着剤層の製造方法であって、
前記加熱工程(2)は、加熱温度が50〜200℃の高温加熱工程(A)を少なくとも1つ有し、かつ、
前記高温加熱工程(A)は、当該高温加熱工程(A)の加熱温度をX(℃)とし、加熱時間をY(分間)として、Z=X×Y、とした場合に、Z=650〜27000を満足することを特徴とする光学フィルム用粘着剤層の製造方法。
【請求項2】
加熱工程(2)が、塗布された水分散型粘着剤を乾燥して粘着剤層を形成する工程(21)および形成された粘着剤層のエージングを行なう工程(22)を有し、
前記形成工程(21)およびエージング工程(22)のいずれか少なくとも一方において、高温加熱工程(A)を有し、かつ前記形成工程(21)およびエージング工程(22)における高温加熱工程(A)のZの合計が、Z=650〜27000を満足することを特徴とする請求項1記載の光学フィルム用粘着剤層の製造方法。
【請求項3】
加熱工程(2)が、塗布された水分散型粘着剤を乾燥して粘着剤層を形成する工程(21)であり、前記形成工程(21)において、前記高温加熱工程(A)を有し、かつ、Z=650〜27000を満足することを特徴とする請求項1記載の光学フィルム用粘着剤層の製造方法。
【請求項4】
前記高温加熱工程(A)におけるZが、Z=3000〜27000を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤層の製造方法。
【請求項5】
前記水分散型粘着剤におけるベースポリマーが、(メタ)アクリル系ポリマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤層の製造方法。
【請求項6】
前記ベースポリマーである、(メタ)アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有するモノマー成分を、乳化剤、ラジカル重合開始剤の存在下に乳化重合により得られたものであることを特徴とする請求項5のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤層の製造方法。
【請求項7】
ラジカル重合開示剤が、アゾ系のラジカル重合開始剤であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤層の製造方法。
【請求項8】
前記光学フィルム用粘着剤層は、
偏光フィルムの片面に前記光学フィルム用粘着剤層を積層した粘着剤層付偏光フィルムにおいて、
偏光フィルムの偏光度(P1)と粘着剤層付偏光フィルムの偏光度(P2)との差(P1−P2)で表される偏光解消性値が、0.015以下を満足することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤層の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得られたものであることを特徴とする光学フィルム用粘着剤層。
【請求項10】
光学フィルムの少なくとも片側に、請求項9記載の光学フィルム用粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着剤層付光学フィルム。
【請求項11】
請求項10記載の粘着剤層付光学フィルムを少なくとも1枚用いていることを特徴とする画像表示装置。


【公開番号】特開2012−224078(P2012−224078A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−65620(P2012−65620)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】