説明

光学フィルム

【課題】 光源を用いる表示装置の輝度を向上させて光エネルギー利用効率をより向上させることができる光学フィルムを提供すること。
【解決手段】 光学フィルム1は、延伸フィルム1から構成されている。延伸フィルム1は、連続相1aと、連続相1aに分散されている分散相1bとを有する。分散相1bは、連続相1a内に特定方向(x方向)に軸方向が揃うように分散されている。分散相1bは、少なくとも、連続相1aの延伸方向(x方向)と垂直な方向(y方向)における屈折率よりも高い屈折率の粒子と、連続相1aの延伸方向(x方向)と垂直な方向(y方向)における屈折率よりも低い屈折率の粒子を含み、分散相1b全体としての屈折率は、連続相1aの延伸方向(x方向)と垂直な方向(y方向)における屈折率と整合されるように設定される。また、延伸フィルム1は複屈折率を有するように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学フィルムに関し、特に、液晶表示装置などの表示デバイスに用いる光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低消費電力、低電圧駆動を特徴にして大きく発展してきたが、ノートパソコンなどに用いられている透過型のカラー液晶表示装置では、必ずしも光エネルギーの利用効率が高いとはいえない。カラー液晶表示装置の液晶パネルでは、偏光板やカラーフィルタが存在するために、光透過率が10%以下となり、バックライトから出射される光エネルギーの利用効率が低い。このため、バックライトでの消費電力が上昇してしまうという問題がある。この問題を解決するために、液晶表示装置における光エネルギー利用効率を改善させるための光学フィルムが開発されている(特許文献1、2)。
【特許文献1】特表平11−509014号公報
【特許文献2】特表2000−506989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ノートパソコンやビデオカメラのモニターディスプレイなどの用途においては、軽量化とバッテリーの長寿命化の相反する要求を満足させるために、バックライトの消費電力をさらに低下させることが重要な技術課題となっており、そのため、液晶表示装置における輝度を向上させて光エネルギー利用効率のさらなる改善が必要とされている。
特許文献1や2は、フィルム中の連続相と分散相の屈折率を、延伸方向あるいは延伸垂直方向で一致させる光学フィルムを用いることにより、光エネルギー利用効率の改善をなすものであった。この屈折率を一致させるという必要性のため、分散相に選ばれる物質の屈折率は厳密に制御される必要があり、製造は困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、前記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、分散相に、フィルム中の連続相とどの方向でも屈折率が厳密に一致しない原料を用いながら、光エネルギー利用効率の改善をなす光学フィルムを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) 複屈折率を有する連続相と、延伸方向に軸方向が揃うように前記連続相に分散された分散相とを有する延伸フィルムからなる光学フィルムであって、前記分散相が、少なくとも前記連続相の前記延伸方向に垂直な方向における屈折率より高い屈折率を有する粒子1種及び低い屈折率を有する粒子1種を含むことを特徴とする光学フィルム。
(2) 前記分散相は、平均粒径が0.01μm以上1μm以下である一次粒子が集合してなり、平均幅が0.1μm以上1μm以下であり、平均長さが0.5μm以上50μm以下である長尺の二次粒子であることを特徴とする(1)記載の光学フィルム。
(3) 前記延伸フィルムが1μm以上3000μm以下の厚さを有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の光学フィルム。
(4) 前記延伸フィルムが1軸延伸したフィルムであり、前記連続相がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート及びこれらの共重合物からなる群より選ばれたものを含むことを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の光学フィルム。
(5) 少なくとも(1)から(4)のいずれかに記載の光学フィルムを含んでなるディスプレイ。
【発明の効果】
【0005】
本発明の光学フィルムは、光源を用いる表示装置の輝度を向上させて光エネルギー利用効率をより向上させることができ、しかも、製造が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る光学フィルムを示す概略図である。(a)は光学フィルムの斜視図であり、(b)は分散相を構成する二次粒子を説明するための図であり、(c)は一次粒子を示す断面図である。
図1(a)に示す光学フィルム1は、連続相1aと、連続相1aに分散されている分散相1bとを有する。連続相1aは、分散相1bのマトリックスである。また、連続相1aは、延伸方向(x方向)と、延伸方向に垂直な方向(以下、垂直方向という)(y方向)との間で複屈折を有する。また、分散相1bは、延伸フィルム1の延伸方向に軸方向が揃うように連続相1aに分散されている。本実施の形態においては、図1(a)に示すように、分散相1bは、その軸方向が延伸フィルム1の延伸方向(x方向)に揃うように分散されている。
【0007】
分散相1bは、少なくとも、垂直方向における連続相1aの屈折率より高い屈折率を有する粒子1cと、垂直方向における連続相1aの屈折率より低い屈折率を有する粒子1dを含む。
分散相1b全体としての屈折率は、延伸フィルム1の延伸方向と垂直な方向における屈折率と整合するように設定される。このため、延伸フィルム1の垂直方向において、連続相1aと分散相1bとの間で屈折率が整合されている(屈折率が一致)状態である。また、連続相1aにおいては、延伸方向(x方向)と垂直方向(y方向)との間で屈折率に差があり、屈折率が不一致の状態である。また、ここで、屈折率が一致するとは、両者の屈折率の差が約0.05以下であり、屈折率が不一致とは、両者の屈折率の差が約0.05を超えることをいう。
【0008】
すなわち、分散相全体としての屈折率Nは、連続相1aの垂直方向における屈折率nとの間に、n−0.05<N<n+0.05の関係が成り立つ場合、光源を用いる表示装置の輝度を向上させて光エネルギー利用効率を向上させることができる。例えば、分散相が図1の(a)の通り、2種類の粒子1cと1dだけから成る場合、粒子1c、1dの屈折率をそれぞれn1c、n1dとし、粒子1cの分散相中の体積分率をV1cとおくと、粒子1dの分散相中の体積分率は1−V1cとなり、Nは概ねn1c*V1c+n1d*(1−V1c)となるため、n−0.05<n1c*V1c+n1d*(1−V1c)<n+0.05となることが好ましく、このように設定される。また、粒子1c、1dの配合比を変えることで、屈折率の整合を容易に行うことができる。
【0009】
一般に、特定の軸において屈折率差が大きいと、その軸に沿って偏光された光は反射・散乱され、特定の軸においてその差が小さいと、その軸に沿って偏光された光は透過する。このため、延伸フィルム1の垂直方向においては、連続相1aと分散相1bとの間で屈折率が整合されているので、その方向に沿って偏光された光(y方向に振動する入射偏光成分)は透過する。一方、延伸フィルムの延伸方向においては、垂直方向と異なり、連続相1aと分散相1bとの間で屈折率不一致の状態であるので、その方向に沿って偏光された光(x方向に振動する入射偏光成分)は反射・散乱する。その結果、光学フィルム1をz方向に通る光(図中の下側から上側に向う光)は、y方向に振動する光の入射偏光成分が光学フィルム1を透過する。
【0010】
分散相1bは、図1(b)に示すように、二種以上の一次粒子1c、1dが複数集合して形成してなる長尺の二次粒子である。連続相との分散性を考慮すると、個々の一次粒子1c、1dの平均粒径D1c、D1dが、それぞれ0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。平均粒径は、走査型電子顕微鏡により求めることができる。また、二次粒子である分散相1bは、光の散乱性を考慮すると、平均幅(D)は0.1μm以上1μm以下が好ましく、平均長さ(L)は0.5μm以上50μm以下が好ましい。
前記延伸フィルム1は、1μm以上3000μm以下の厚さを有することが好ましい。光源を用いる表示装置の輝度の向上の観点から、1μm以上が好ましく、延伸の観点から、3000μm以下が好ましい。
【0011】
フィルム平面の直交軸方向とフィルムの厚さ方向における屈折率をそれぞれn、n、nとした場合に、n>nとしてn>nであると、延伸方向(x方向)と垂直方向(y方向)との間で屈折率の差が大きくなり、光源を用いる表示装置の輝度がより向上するため、好ましい。
>nとなる延伸フィルムは、例えば、樹脂フィルムを延伸処理する際に、樹脂フィルムの延伸方向と直交する方向の収縮力を付与することにより製造される。
樹脂フィルムの延伸時における延伸方向と直交する方向の収縮力の付与は、例えば、加熱延伸時に延伸方向と直交ないし交差する方向に収縮する収縮性フィルムを延伸対象の樹脂フィルムの片面、又は両面に接着してその積層体を加熱延伸処理する方法などにより行うことができる。これにより、収縮性フィルムの収縮力に基づいて、樹脂フィルムの厚さ方向に延伸応力を発生することができる。
【0012】
この延伸応力を付与しながら延伸を行うことにより、フィルムの平面方向に配向した分子群と、厚さ方向に配向した分子群が混在してなる複屈折率性フィルムを得ることができ、n>nを達成する。
上記した収縮性フィルムとしては、例えば二軸延伸フィルムや、一軸延伸フィルムなどが挙げられる。その中でも、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンの如き樹脂からなり、処理対象の樹脂フィルムよりもその延伸方向と直行する方向への収縮率が5%以上の熱収縮性を有する延伸フィルムが好ましく用いられる。収縮率が10%以上の熱収縮性を有する延伸フィルムを用いると、より好ましい。
【0013】
樹脂フィルムと収縮性フィルムの接着は、収縮性フィルムの熱収縮方向が少なくとも樹脂フィルムの延伸方向と直交する方向の成分を含むように行われる。すなわち、収縮性フィルムの熱収縮力の全部又は一部が樹脂フィルムの延伸方向と直交する方向に作用するように行われる。従って収縮性フィルムの熱収縮方向が樹脂フィルムの延伸方向と斜交していてもよく、完全に直交する方向にある必要はない。
樹脂フィルムと収縮性フィルムの接着処理は、フィルム自体の粘着力や粘着剤などの剥離可能な接着手段を利用して適宜に行ってよい。目的とする光学フィルムの屈折率の制御は、収縮性フィルムの加熱延伸時における延伸方向と直交する方向の収縮力を調節することにより行うことができる。なお光学フィルムは通例、収縮性フィルムを剥離除去して実用に供される。
【0014】
一次粒子1c、1dとしては、連続相と相溶化せず、かつ前述の1次粒子径の微粒子を製造することができる、公知の種々の有機物を用いることができる。
例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、MBS樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ブダジエン系ゴム・ラテックス、フッ素樹脂、及びこれらのコポリマー、ポリマーブレンド、架橋体が挙げられる。これらは加水分解処理や酸化処理をされたものでも構わない。これらは、中空状や多孔質であっても構わない。
また、一次粒子1c、1dとしては、連続相と相溶化せず、かつ前述の1次粒子径の微粒子を製造することができる、公知の種々の無機物を用いることができる。
【0015】
例えば、Li、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Cs、Ba、Si、Al、Zr、Sb、Ti、Ta、Hf、Y、In、Sn、Ce、Nb、Zn、Gd、Cr、W、Cu、Fe、Ni、Bi、Sm、Nd、Ag、Pb、Te、Cd、Hg、La、Eu、の金属、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、フッ化物や塩化物や臭化物などのハロゲン化物、シアン化物、アンモニウム化合物、リン酸水素化物、リン酸塩、硫化物、炭化物、窒化物、複合酸化物、複合化合物。Pt、Au、Ag、Cuの金属。これらは、中空状や多孔質であっても構わない。
また、一次粒子1c、1dとしては、連続相と相溶化せず、かつ前述の一次粒子径の微粒子を製造することができる、公知の種々の有機−無機ハイブリッド化合物を用いることができる。例えば、有機−無機ハイブリッド化合物として、前記の有機物や無機物の表面を、SiやTiやAlなどのカップリング剤を処理して得られる有機−無機ハイブリッド化合物が挙げられる。
【0016】
また、有機−無機ハイブリッド化合物として、有機−無機カゴ状ポリシルセスキオキサンハイブリッド化合物や、メチルシルセスキオキサン化合物などの、オリゴ及びポリシロキサンを用いた有機−無機ポリシルセスキオキサンハイブリッド化合物が挙げられる。また、骨格にSi原子を含む無機骨格型エポキシ樹脂化合物であっても構わない。これらは加水分解処理や酸化処理をされたものでも構わない。また、中空状や多孔質であっても構わない。
また、有機−無機ハイブリッド化合物として、加水分解基含有化合物を原料とする、ゾル−ゲル法により調製される一連の有機−無機ハイブリッド化合物が挙げられる。
加水分解基含有化合物の加水分解基とは、加水分解により水酸基が生じる基であればよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、エノキシ基、オキシム基等が挙げられる。
【0017】
本発明における加水分解基含有化合物として、下記一般式(1)、(2)で表される加水分解基含有化合物を用いることが出来る。
MX4−n (1)
(式中、Rは水素又は炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を表す。またこれらの置換基上にさらにハロゲン基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基等の官能基を有していても良い。Xは加水分解基を表す。nは0〜3の整数である。Mは、Li、Be、B、C、Na、Mg、Al、Si、P、S、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Hg、Tl、Pb、Biのいずれか1種である。)
【0018】
M−R−MX (2)
(式中、Xは加水分解基を表し、Mは(1)と同じであり、Rは炭素数1〜6のアルキレン基又はフェニレン基を表す。また、nは0又は1である)
また、下記一般式(3)にて表される加水分解基含有化合物も好適に用いることができる。
−(O−M(OR−OR (3)
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。Mは(1)と同じであり、nは2〜8の整数である。)
【0019】
上記加水分解基含有化合物は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
これらの加水分解基含有化合物は、加水分解反応により加水分解基の一部又は全部がM−OH基に変換される。そのため、上記の加水分解基含有化合物の一部又は全部の代わりに、M−OH基を含有する化合物を用いても良い。
一次粒子1c及び1dは、ブタジエン、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン及びこれらの共重合物からなる群より選ばれたもので構成されていてもよい。また、一次粒子1c、1dは、図1(c)に示すように、コアシェル構造であることが好ましい。例えば、一次粒子1cのコア部分1eがポリスチレンで構成され、シェル部分1fがアクリル樹脂で構成される。このように、一次粒子1cや1dがコアシェル構造であることにより、連続相との間で分散性を制御しつつ、屈折率を制御することが可能である。
【0020】
前記延伸フィルムは、1軸延伸したフィルムであると、連続相の高分子鎖が軸配向し、複屈折を生じるため、好ましい。2軸延伸したフィルムでは、X方向とY方向の延伸倍率の差が大きい場合、連続相の複屈折が大きくなり好適に用いられる。
また、延伸フィルム1のマトリクスである連続相1aを構成する材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート及びこれらの共重合物からなる群より選ばれたものであることが、複屈折率が大きいことから好ましい。
本発明の光学フィルムには、反射防止層又は拡散層を設けても良い。
本発明の光学フィルムの表面には、延伸方向に沿った稜線を持つ複数のプリズムを有していてもよい。このプリズムは、加工性を考慮すると、1μm以上200μm以下のピッチを有することが好ましい。
【0021】
本発明の光学フィルムは、偏光板、導光板、拡散板、レンズシート、プリズムシート、輝度向上シートと積層されていても良い。
本発明の光学フィルムには、種々の添加剤を添加しても良い。例えば、滑剤として、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛など、また、酸化防止剤として、例えば、日本国チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製イルガノックス(登録商標)1076が挙げられる。
上記構成を有する光学フィルムにおいては、延伸フィルム1の垂直方向において、連続相1aと分散相1b全体との間で屈折率が整合されている(屈折率が一致)状態であり、延伸フィルム11の延伸方向において、連続相1aと分散相1b全体との間で屈折率に差があり、屈折率が不一致の状態であるので、垂直方向に振動する入射偏光成分は透過するが、延伸方向に振動する入射偏光成分は反射・散乱する。
【0022】
次に、上述した光学フィルム1を液晶表示装置に装着したディスプレイについて説明する。液晶表示装置としては、透過型液晶表示装置を用いることができる。図2は、本発明の実施の形態に係る光学フィルムを用いた液晶表示装置を示す概略図である。
図2に示す液晶表示装置は、光を発光するバックライトのような発光装置21と、この発光装置21上に配置された拡散板22と、拡散板22上に配置された本発明に係る光学フィルム23と、光学フィルム23上に配置された、両面に偏光板25(y方向に振動する偏光を通す)、26を有する液晶パネル24とから主に構成されている。発光装置21は、光を供給する光源21aと、光源21aから出射した光を反射させて液晶パネル24に向ける反射板21bとから構成されている。なお、光源21aとしては、冷陰極管(CCFL)や外部電極ランプ(EEFL)などのランプやLED、有機EL、無機EL、プラズマなどを用いることができる。
【0023】
液晶パネル24は、透過型液晶パネルであり、ガラス基板24a,24b間に液晶層24cを挟持して構成されている。なお、液晶表示装置が通常有する素子構造については説明を省略する。
このような液晶表示装置においては、発光装置21の光源21aから出射された光は、一部21bの反射板で反射されるが、拡散板22で拡散された後に、光学フィルム23を介して液晶パネル24側に向けられ、液晶表示に用いられる。
仮に、光学フィルム23がない場合には、発光装置21から出射された光は、偏光板25がy方向に振動する偏光のみを通すので、光の利用効率は最大で50%である。
【0024】
しかし、光学フィルム23が存在する場合には、光学フィルム23に入射する光のうちy方向に振動する入射偏光成分は透過して液晶パネル24側に向けられる。x方向に振動する偏光成分は反射・散乱され拡散板22に向けられ、拡散板22を通って反射板21bで反射され、再び拡散板22を通って、x方向に振動する偏光とy方向に振動する偏光に変換されて、光学フィルム23に戻ってくる。この時、y方向に振動する偏光成分は光学フィルム23を透過し、x方向に振動する偏光成分は反射・散乱される。このことを繰り返すことにより、光の利用効率は最大で50%を超え、輝度を向上させることができる。
【実施例】
【0025】
本発明を実施例に基づいて説明する
(屈折率の測定)
延伸フィルムについては、まず、延伸フィルムを延伸方向(x方向)と平行な面で切断し、その切断面に浸液を滴下し、偏光顕微鏡(オリンパス社製BX51−33P−OC)を用いて偏光をx方向に合わせてベッケ線を観察することにより行った。この場合、屈折率を0.01ずつ変化させた一連の浸液の中からベッケ線が最も現れない浸液をx方向の屈折率とした。なお、光源の波長は550nmとし、温度は20℃であった。同様にして、偏光をy方向に合わせてベッケ線が最も現れない浸液をy方向の屈折率とした。また、分散相を構成する粒子の屈折率は、粒子を真空・加熱成型し、成型体を小切片に切断し、同様にしてx方向とy方向の屈折率を測定して、その平均値を求めることにより求めた。
(粒子の平均粒径測定)
粒子の平均粒径測定は、試料台に粒子を分散後、Os(オスミウム)を3nm程度コーティングして検鏡用試料とした後、走査型電子顕微鏡HITACHI S−4700により、加速電圧1.0kVで観察し、100個の一次粒子の粒径を測定し、その平均を計算により、求めた。
(分散相の形状測定)
分散相の形状は、延伸フィルムをx方向に垂直な断面、及びy方向に垂直な断面を、クライオミクロトームで切り出し、試料台に固定、フラットミリング装置HITACHI E−3200によるエッチングを行った後、観察面にOsを2nm程度コーティングし、検鏡用試料とした後、走査型電子顕微鏡HITACHI S−4700により、加速電圧1.0kVで観察し、100個の一次粒子の平均粒径、また、長尺二次粒子の平均幅及び平均長さを100個測定して平均値として表した。
(厚さの測定)
光学フィルムの厚さは、ダイヤルゲージ(尾崎製作所製PEACOCK25)により測定して平均値として表した。
(輝度の測定)
バックライト(市販のLCD用23インチ型)の拡散板上に、測定サンプルを全面に渡って載置し、最上層に直線偏光板(吸収型、透過率42%、直交透過率0.01%)を載せた。輝度計(トプコン社製BM−7)を用いて発光面中央部の輝度を測定した。測定距離は500mm、測定角は1度、測定サンプルを挿入しない場合の輝度は、3900〜4200cd/mの範囲にあった。
【0026】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(日本ユニペット社製、RT−560C、固有粘度1.0)70部に、コアシェル構造を有するゴム系粒子パラロイドEXL2603(ローム・アンド・ハース社製、屈折率1.50、平均粒径200nm)17部、コアシェル構造を有するゴム系粒子パラロイドKCA801(ローム・アンド・ハース社製、屈折率1.57、平均粒径100nm)13部を加え、同方向二軸押出機を用いて280℃で溶融混練し、ペレタイズした。得られたペレットに滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.01phr添加し、Tダイ付単軸押出機で270℃でシート成型し、厚さ1mmのシートを得た。
【0027】
次いで、フィルム成型用の横延伸機を用いて、得られたシートをx方向に3.8倍延伸して延伸フィルムを得た。延伸温度は80℃、速度は1000%/分であった。得られた延伸フィルムの屈折率は、x軸方向が1.67であり、y軸方向が1.53であり、複屈折率が0.14であった。
この光学フィルムの分散相の形状を測定したところ、一次粒子の平均粒径は150nm、平均幅が300nm、平均長さが10μmであった。
この光学フィルムの厚さは、400μmであった。
この光学フィルムを、バックライト上の拡散板と偏光板との間に挿入し、この構成で輝度を測定した。その結果、4700cd/mであり、光学フィルムを挿入しない場合に比べて輝度がかなり向上した。
【0028】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態における数値や材料についてこれに限定されず、適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の光学フィルムは、光源を用いる表示装置の分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る光学フィルムを示す概略図であり、(a)は光学フィルムの斜視図であり、(b)は分散相を構成する二次粒子を説明するための図であり、(c)は一次粒子を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光学フィルムを用いた液晶表示装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0031】
1 光学フィルム(延伸フィルム)
1a 連続相
1b 分散相
1c 一次粒子
1d 一次粒子
1e コア部分
1f シェル部分
21 発光装置
21a 光源
21b 反射板
22 拡散板
23 光学フィルム(延伸フィルム)
24 液晶パネル
24a,24b ガラス基板
24c 液晶層
25,26 偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複屈折率を有する連続相と、延伸方向に軸方向が揃うように前記連続相に分散された分散相とを有する延伸フィルムからなる光学フィルムであって、前記分散相が、少なくとも前記連続相の前記延伸方向に垂直な方向における屈折率より高い屈折率を有する粒子1種及び低い屈折率を有する粒子1種を含むことを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
前記分散相は、平均粒径が0.01μm以上1μm以下である一次粒子が集合してなり、平均幅が0.1μm以上1μm以下であり、平均長さが0.5μm以上50μm以下である長尺の二次粒子であることを特徴とする請求項1記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記延伸フィルムが1μm以上3000μm以下の厚さを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記延伸フィルムが1軸延伸したフィルムであり、前記連続相がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート及びこれらの共重合物からなる群より選ばれたものを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項5】
少なくとも請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学フィルムを含んでなるディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−333901(P2007−333901A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163989(P2006−163989)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】