説明

光学レンズ駆動装置および光ピックアップ装置

【課題】光学レンズを安定して光軸方向に摺動することができ、且つ耐久性に優れた、光ピックアップ装置の球面収差補正を目的とした光学レンズ駆動装置を提供すること。
【解決手段】モータと、当該モータの駆動力を受けて摺動軸と摺動自在に係合する、光学レンズを保持したレンズホルダとを備え、レンズホルダと摺動軸とが、レンズホルダに設けた軸孔を介して係合されてなり、レンズホルダの一部に、摺動軸を露出させる凹部を設け、当該凹部の内部に、潤滑油を含有した油吸収体を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズを光軸方向に摺動させる光学レンズ駆動装置と、それを用いた光ピックアップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、DVD等の光ディスクの再生又は記録を行う光ディスク装置に搭載される光ピックアップは、種々の要因により発生する波面収差の影響を受けて性能が劣化することが問題となっている。この波面収差には光ディスクのチルト角等に起因するコマ収差や、光ディスクのカバー層の厚み誤差や情報記録面の多層化に伴う球面収差、及び光学系に起因する非点収差などが存在する。これらの収差の中で特に前述の球面収差は光ディスクの記録密度が高密度化するに伴って影響が大きくなり、この球面収差を補正する技術が、今後の光ディスクの高密度化を実現する重要な要素の一つになっている。
【0003】
この球面収差を補正するために、光学レンズを光軸方向に摺動させて球面収差を打ち消す手段を備えた光ピックアップ装置が開示されている(たとえば特許文献1参照)。この光ピックアップ装置は、光源と、光源からの光ビームを情報記録媒体の記録層に集光させる対物レンズと、光源と対物レンズの間に球面収差補正用の光学レンズを配置し、この光学レンズを光軸方向に摺動させる光学レンズ駆動装置を備えて球面収差を打ち消し、高密度の光ディスクに対応している。
【0004】
特許文献1に記載された光ピックアップ装置における光学レンズ駆動装置の構成は、光学レンズを保持したレンズホルダに摺動受け部が設けられ、この摺動受け部と支持基板に設けられた2本のレンズホルダ摺動軸が係合している。また、レンズホルダに設けられたラックと、駆動手段であるモータに設けられた歯車とが係合している。そして、駆動手段であるモータによって歯車が回転すると、歯車に従動してラックが駆動され、その結果、2本のレンズホルダ摺動軸に係合している摺動受け部が摺動することによって、光学レンズが2本のレンズホルダ摺動軸に沿って移動する。
【0005】
この様に構成された光学レンズ駆動装置は、光学レンズの光軸方向に光学レンズを摺動する機構を備えており、光ピックアップ装置の光源と対物レンズの間に配置されることで球面収差を打ち消す作用を有するものとなる。
【0006】
【特許文献1】特開2002−312971号公報(第8−9頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の光ピックアップ装置における光学レンズ駆動装置は、球面収差補正装置として、レンズホルダに保持された光学レンズを光軸に沿って精度良く摺動させる必要があり、レンズホルダの構成としては、レンズホルダ摺動軸に係合する摺動受け部の長さをある程度長く設けなければいけない。
【0008】
しかし、レンズホルダに保持された光学レンズを精度よく摺動させるために、レンズホルダ摺動軸に係合する摺動受け部のレンズホルダ摺動軸方向の長さを長くすると、この摺動受け部とレンズホルダ摺動軸との軸受け部での摩擦が増加し、また、摺動受け部の内部への給油が困難となるため、摺動性が悪くなって光学レンズの動作が不安定になり、球面収差補正が正しく行われなくなるという問題が発生する。
【0009】
本発明の目的は上記課題を解決し、光学レンズを安定して光軸方向に摺動することができ、且つ耐久性に優れた、光ピックアップ装置の球面収差補正を目的とした光学レンズ駆動装置およびそれを搭載した光ピックアップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の光学レンズ駆動装置は、基本的には下記記載の構成を採用する。
【0011】
本発明の光学レンズ駆動装置は、モータと、当該モータの駆動力を受けてレンズホルダ摺動軸と摺動自在に係合する、光学レンズを保持したレンズホルダとを備え、レンズホルダとレンズホルダ摺動軸とが、レンズホルダに設けた軸孔を介して係合されてなり、レンズホルダの一部に、レンズホルダ摺動軸を露出させる凹部を設け、当該凹部の内部に、潤滑油を含有した油吸収体を配設したことを特徴とするものである。
【0012】
このようにレンズホルダにレンズホルダ摺動軸を露出させる凹部を設け、潤滑油を含有した油吸収体を配置したので、常に油吸収体からレンズホルダ摺動軸へと潤滑油が供給され、潤滑油の不足を防ぐことができ、レンズホルダ摺動軸と摺動受け部との摩擦の増大を防ぐことができる。
【0013】
また、本発明の光学レンズ駆動装置における前述した凹部は、レンズホルダに設けられた軸孔の形成方向に沿って、複数個設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
このことにより、摺動受け部を長く設けても軸受け部の負担を増加することがなく、しかも、この摺動受け部に設けた凹部内に埃が入りにくい構造とすることができる。
【0015】
また、本発明の光ピックアップ装置は、本発明の光学レンズ駆動装置をレーザ光源と対物レンズを含む光学系の光路中に備えたことを特徴とするものである。
【0016】
この様に構成された光ピックアップ装置は、常に安定して球面収差を補正することができる様になるので、特に、Blu−rayディスク等の高密度光ディスクや多層記録光ディスクの再生/記録に好適となる。
【発明の効果】
【0017】
上記の如く本発明によれば、レンズホルダにレンズホルダ摺動軸を露出させる凹部を設け、この凹部に潤滑油を含有した油吸収体を配置したので、レンズホルダ摺動軸に沿って摺動受け部を繰り返し摺動させても、常に油吸収体からレンズホルダ摺動軸へと潤滑油が供給され、潤滑油の不足を防ぐことができ、レンズホルダ摺動軸と摺動受け部との摩擦の増大を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の光学レンズ駆動装置は、従来技術で説明をした、摺動受け部とレンズホルダ摺動軸との係合を、光学レンズの両側で支持する構成(以下、光学レンズ両持ち構造と記す。)と、当該光学レンズの片側を支持する構造(以下、光学レンズ片持ち構造と記す。)の両方に適用できるものであるが、以下の説明では、光学レンズ片持ち構造について説明をする。なお、上記光学レンズ両持ち構造と光学レンズ片持ち構造とは、基本的には光ピックアップ装置において同じ機能を有するものであり、光ピックアップ装置における載置が許されるサイズによって選択されるものである。
【0019】
以下、図面により本発明の実施の形態を詳述する。図1は、本発明の実施例1の光学レンズ駆動装置の概略を示す斜視図である。図2は、図1に示した光学レンズ駆動装置に搭
載する油吸収体の変形例を示す斜視図である。図3は、本発明の実施例2の光学レンズ駆動装置の概略を示す斜視図である。図4は、本発明の光学レンズ駆動装置を搭載する光ピックアップ装置の構成例を示すブロック図である。図5は、本発明の光学レンズ駆動装置を搭載する光ピックアップ装置の他の構成例を示すブロック図である。
【実施例1】
【0020】
まず、本発明の光学レンズ駆動装置の実施例1の構成を図1に基づいて説明する。
実施例1の光学レンズ駆動装置の特徴は、図1に示すように、レンズホルダの摺動受け部にレンズホル摺動軸を露出させる凹部を設け、この凹部に潤滑油を含んだ油吸収体を有していることにある。図1において1は光学レンズ駆動装置である。2は光学レンズ駆動装置1の主な部品を配設し搭載する支持基板である。この支持基板2の一部は、直角に立ち上がった支持壁2a〜2dを有している。レンズホルダ4は、光学レンズ3を支持するレンズ支持部4a、レンズホルダ摺動軸32aと係合している摺動受け部4bとラック部4cとガイド軸受け部4dとを有している。また、摺動受け部4bには凹部4eが設けてあり、凹部4eには潤滑油を含んだ油吸収体30が配置されている。
【0021】
10は駆動手段であるステップモータであり、支持基板2に固着されている。11はステップモータ10によって回転駆動される回転出力歯車である。回転出力歯車11がレンズホルダ4と一体となっているラック部4cと歯合することで回転出力歯車11の回転運動を直線運動に変換する。
【0022】
32a、32bは2つのレンズホルダ摺動軸であり、光学レンズ3の光軸5と平行になるように支持基板2に固定される。摺動受け部4bとガイド軸受け部4dはそれぞれこの2つのレンズホルダ摺動軸32a、32bと摺動自在に係合し、回転出力歯車11からの駆動力によってラック部4cが移動すると、一体となっているレンズホルダ4とレンズホルダ4に支持される光学レンズ3は、結合するレンズホルダ摺動軸32a、32bにガイドされて光軸5に沿って矢印Aの方向に移動する。
【0023】
次に、本発明の光学レンズ駆動装置1の特徴部分である摺動受け部4bの詳細について説明する。
本発明の光学レンズ駆動装置1は、摺動受け部4bとレンズホルダ摺動軸32aとが係合する箇所に、レンズホルダ摺動軸32aが露出する凹部4eを設けている。ここで示す凹部4eは貫通孔であり、凹部4eとレンズホルダ摺動軸32aとの間に十分潤滑油を含ませた2つの油吸収体30をレンズホルダ摺動軸32aに接触するように配置している。油吸収体30は、潤滑油を吸収保持する機能を備えており、柔軟性を有するものとすることが肝要である。
【0024】
上記の構成とすることにより、例え摺動精度を上げるために摺動受け部4bを、光軸5方向に長く設けたとしても、常に油吸収体30からレンズホルダ摺動軸32aへと潤滑油が供給されるため、摺動受け部4bとレンズホルダ摺動軸32aとの間の摩擦が緩和されて、両部材の摺動特性を向上させることができる。そのため、摺動特性が損なわれずに安定して駆動する光学レンズ駆動装置1を提供することができる。
【0025】
次に、油吸収体30の変形例を図2に基づいて説明する。
ここで示す変形例は、油吸収体30の構成のみが異なっており、他の構成は同じである。従って、以下の説明は、油吸収体30の変形構成例について主に説明をし、他の要件の説明は、図1に示した光学レンズ駆動装置の構成を引用して説明する。
図1、図2に示すように、本変形例における油吸収体30は、レンズホルダ摺動軸32aを通すための貫通孔30aが設けた構成となっている。そして、レンズホルダ摺動軸32aをこの貫通孔30aに通し、レンズホルダ摺動軸32aと油吸収体30を接触させる
ことで潤滑油を供給する。
【0026】
この様に構成することにより、前述した構成と同様に、摺動受け部4bを長く設けても摺動性を損なわない光学レンズ装置1を提供することができる。また、図1に示した2つの油吸収体30を配置するときに比べて、油吸収体の部品点数が減り、レンズホルダ摺動軸32a全面から給油することができる。したがって、本変形例を適用すれば、図1に示した構成に比べて、より効率良くレンズホルダ4を光軸5方向に移動できる光学レンズ装置1とすることができる。
【0027】
以上のように摺動受け部4bに凹部4eを設け、その凹部4eに、レンズホルダ摺動軸32aと接触させて油吸収体30を配置することで、光学レンズ駆動の精度を上げるために摺動受け部4bを長く設けたとしても、摺動特性を損なわない光学レンズ駆動装置1とすることができる。
【0028】
なお、実施例1では、光学レンズ片持ち構造とした場合について述べたが、光学レンズ両持ち構造としても同様な効果が得られる。また、摺動受け部4bに設ける凹部4eを貫通孔としたが、貫通孔でなくてもよい。貫通孔でない場合には、凹部4eが器の様になり、潤滑油、あるいは油吸収体30自体が落下してしまうことがなくなるので、摺動受け部4bに潤滑油をより長く留めることができる。
【実施例2】
【0029】
次に、本発明の光学レンズ駆動装置の他の構成例を図3に基づいて説明する。
実施例2の光学レンズ駆動装置1は、実施例1で示した摺動受け部に凹部4eを2つ設け、それぞれの凹部4eに油吸収体30を配置することを特徴とするものである。尚、実施例1で示した光学レンズ駆動装置と同一要素には同一番号を付け、重複する説明は省略する。
【0030】
図3における、1は本実施例の光学レンズ駆動装置の他の構成例を示している。ここで、光学レンズ駆動装置1は、基本的には実施例1で示した光学レンズ駆動装置(図1参照)と同様であり、実施例1で示した光学レンズ駆動装置と異なる点は、摺動受け部4bに設ける凹部4eを、軸孔の形成方向に沿って複数個設け、各々の凹部4eのそれぞれに油吸収体30を配した点のみである。
【0031】
このように構成すれば、実施例1と同様に、摺動受け部4bを長くしても摺動特性を損なわない光学レンズ駆動装置1を提供することができる。
【0032】
また、摺動安定性を増すために摺動受け部4bをより長く設けると、レンズホルダ摺動軸32aと係合している軸受け部間の距離も長くなってしまう。また、この軸受け部間の距離を長くした摺動受け部4bに凹部4eを広い面積にわたって設けると、軸受けしている箇所に局所的に荷重がかかってしまう上、外部から侵入する埃などのごみもこの凹部内に侵入しやすくなる。そこで、摺動受け部4bに凹部4eを複数個設けて、レンズホルダ摺動軸32aと摺動受け部4bとの軸受けの支持点を増やし、軸受け部4bへの負担を軽減させる構成とすれば、高精度に光学レンズ3を光軸5方向に摺動することができるのである。
【0033】
また、本図に示す様に、複数個の凹部4eを設けることで、一つ一つの凹部4eの面積を小さく出来るため、外部から侵入する埃などのごみの混入がし難い光学レンズ装置1とすることが出来る。
【実施例3】
【0034】
次に、本発明の光ピックアップ装置の全体構成の概略を図4のブロック図に基づいて説明する。
図4において、60は本発明の光ピックアップ装置であり、その内部に実施例1および実施例2で示した光学レンズ駆動装置1がレーザ光源と対物レンズを含む光学系の光路中に組み込んだ構成としている。また、光ピックアップ装置60の内部には、3つのレーザ光源41a、41b、41cが備えられている。
【0035】
ここで、レーザ光源41aは、例えば、波長λ=405nmのレーザ光である光ビーム42aを発し、Blu−rayディスク等の高密度光ディスクに対応する。レーザ光源41bは、例えば、波長λ=785nmのレーザ光である光ビーム42bを発し、CD等の光ディスクに対応する。レーザ光源41cは、例えば、波長λ=660nmのレーザ光である光ビーム42cを発し、DVD等の光ディスクに対応する。
【0036】
また、43a、43bはプリズムであり、レーザ光源41aの光路上に配置され、プリズム43aは、レーザ光源41bからの光ビーム42bを入射して光路を90度変更する。また、プリズム43bは、レーザ光源41cからの光ビーム42cを入射して光路を90度変更する。これにより、光ビーム42b、42cの光路は、光ビーム42aの光路と一致する。44は偏向ビームスプリッタ(以下、PBSと略す)であり、光ビーム42a、42b、42cを通過して、後述する反射光の光路を90度変更する。
【0037】
また、45はλ/4位相差板であり、46は対物レンズであり、共に光ビーム42a〜42cの光路中に配置される。そして、本発明の光学レンズ駆動装置1は、3つのレーザ光源41a、41b、41cと対物レンズ46を含む光学系の光路中に備えられて球面収差補正を行う。すなわち、光学レンズ駆動装置1の光学レンズ3は、光ビーム42a〜42cの光路中に置かれ、駆動IC62からのモータ駆動信号M1がステップモータ10に供給され、ステップモータ10は、摺動機構(図1のラック4cなど)を介して光学レンズ3を移動する。
【0038】
また、液晶素子71は、光学レンズ駆動装置1とλ/4位相差板45の間に配設され、駆動IC62からの液晶駆動信号O1が液晶素子71に供給されて収差補正を行う。尚、駆動IC62は外部から制御信号C1を入力してステップモータ10と液晶素子71の制御を実行する。
【0039】
また、47は情報の再生又は記録が可能な光ディスクであり、対物レンズ46によって集光された光ビーム42a〜42cが照射され、反射光42dが反射される。48は集光レンズであり、PBS44によって光路が90度変更された反射光42dの光路中に配置される。49は光検出器であって、集光レンズ48からの反射光42dを入射して電気信号に変換する。
【0040】
次に、図4に基づいて本発明の光ピックアップ装置60の作用を説明する。
尚、光ピックアップ装置60に搭載される本発明の光学レンズ駆動装置1に関連する重複する説明は一部省略する。また説明の前提として、Blu−rayディスク等の高密度光ディスクを再生する場合を想定して説明する。
【0041】
図4において、レーザ光源41aから405nmの光ビーム42aが発せられると、光ビーム42aは、2つのプリズム43a、43bとPBS44を通過し、更に光学レンズ駆動装置1の光学レンズ3と液晶素子71を通過する。
【0042】
そして、光ビーム42aはλ/4位相差板45と対物レンズ46を通過し、対物レンズ46によって集光されてBlu−rayディスク等の高密度光ディスク47の情報記録面
に照射される。光ディスク47に照射された光ビーム42aは、光ディスク47の情報記録面で反射して反射光42dとなって再び対物レンズ46とλ/4位相差板45を通過する。λ/4位相差板45を通過した反射光42dは、再び液晶素子71と光学レンズ駆動装置1の光学レンズ3を通過してPBS44に入射する。
【0043】
PBS44に入射した反射光42dは、PBS44で光路が90度変更されて集光レンズ48によって集光されて光検出器49に入射する。光検出器49は、反射光42dの強弱を電気信号に変換し、図示しないが光検出信号を外部のコントローラに送り、光ディスク47に記録された情報を再生する。また、光検出信号を入力するコントローラは、光ビーム42aとその反射光42dの収差を補正するために、駆動IC62に制御信号C1を出力し、光学レンズ駆動装置1のステップモータ10と、液晶素子71とをそれぞれ制御して光路中で発生する収差を補正し、最適な反射光42dを得る。
【0044】
ここで、光学レンズ駆動装置1は、駆動IC62からのモータ駆動信号M1によってステップモータ10を駆動し、光学レンズ3は、図1、図2に示した摺動受け部4b、ガイド軸受け部4dを含む摺動機構によって矢印Aの方向に移動し、対物レンズ46との距離を変化させることにより、光ディスク47のカバー層の厚み誤差等による球面収差を補正する。特に、Blu−rayディスク等の高密度光ディスクの再生/記録では、この球面収差が性能に大きく影響するので、球面収差補正は重要である。
【0045】
また、液晶素子71を、光学レンズ駆動装置1とλ/4位相差板45の間に備えることにより、球面収差の補正を行ったり、光ディスク47のチルト角等に起因するコマ収差や光学系に起因する非点収差等の補正を行う。
【0046】
このように、本発明の光ピックアップ装置60は、実施例1、2に示した光学レンズ駆動装置1を組み込むことにより、液晶素子71と共に機能して光ビームの複数の収差を一括して補正することが出来るので、特に、Blu−rayディスク等の高密度光ディスクや多層記録光ディスクの再生/記録に好適である。
【0047】
尚、CD等の光ディスクに対応するレーザ光源41bとDVD等の光ディスクに対応するレーザ光源41cがそれぞれ発する光ビーム42b、42cは、それぞれの光路上にあるプリズム43a、43bで光路が90度変更され、その後の光路は光ビーム42aと同じ光路を通り、作用は基本的に同じであるので、以降の説明は省略する。
【0048】
以上のように本発明の光ピックアップ装置60は、光学レンズ駆動装置1によって球面収差補正を行い、また、液晶素子71によってコマ収差や非点収差等の補正を行うことが出来るので、高精度な収差補正を必要とする高密度光ディスクの記録・再生に好適な光ピックアップ装置60を提供することができる。
【実施例4】
【0049】
次に、図5に基づいて本発明の光ピックアップ装置の全体構成の概略を説明する。
ここで、本実施例の光ピックアップ装置50の特徴は、搭載される光学レンズ駆動装置1の球面収差補正のための光学レンズが2つで構成されている点である。尚、実施例3と同一要素には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
図5において、50は本発明の光ピックアップ装置であり、その内部に実施例1および実施例2で示した光学レンズ駆動装置1が組み込まれている。光学レンズ駆動装置1は、実施例1、2で示した光学レンズ駆動装置1と基本的に同じであるが、2つの光学レンズを有し、そのうちの一つの光学レンズがステップモータによって移動される点が異なる。
【0051】
ここで、光ピックアップ装置50の内部には、レーザ光源41aが備えられている。レーザ光源41aは、例えば、波長λ=405nmのレーザ光である光ビーム42aを発し、Blu−rayディスク等の高密度光ディスクに対応する。
【0052】
また、光ビーム42aの光路上には、コリメータレンズ51とPBS44と液晶素子71とλ/4位相差板45と対物レンズ46が配置される。そして、光学レンズ駆動装置1は、PBS44とλ/4位相差板45の間に置かれ、光学レンズ駆動装置1の2つの光学レンズとしての凹レンズ81と凸レンズ82が、光ビーム42aの光路上に配置されている。
【0053】
また、光学レンズ駆動装置1を制御する駆動IC62は、実施例3と同様に、制御信号C1を入力し、液晶駆動信号O1を出力して液晶素子71を駆動し、また、モータ駆動信号M1を出力してステップモータ10を駆動し、凹レンズ81を矢印Aの方向に移動する。他の構成は、実施例3と同様であるので説明は省略する。尚、実施例4では、実施例3の構成要素であるレーザ光源41b、41c等は省略している。
【0054】
次に、図5に基づいて本発明の光ピックアップ装置50の作用を説明する。尚、説明の前提として、Blu−rayディスク等の高密度光ディスクを再生する場合を想定して説明する。
【0055】
図5において、レーザ光源41aから405nmの光ビーム42aが発せられると、光ビーム42aは、コリメータレンズ51とPBS44を通過し、更に、光学レンズ駆動装置1の凹レンズ81と凸レンズ82、及び液晶素子71を通過する。
【0056】
そして、液晶素子71から出射した光ビーム42aは、λ/4位相差板45と対物レンズ46を通過し、対物レンズ46によって集光されてBlu−rayディスク等の高密度光ディスク47の情報記録面に照射される。光ディスク47に照射された光ビーム42aは、光ディスク47の情報記録面で反射して反射光42dとなって再び対物レンズ46とλ/4位相差板45を通過する。λ/4位相差板45を通過した反射光42dは、再び液晶素子71と光学レンズ駆動装置1の凸レンズ82と凹レンズ81を通過し、PBS44に入射する。
【0057】
そして、PBS44に入射した反射光42dは、PBS44で光路が90度変更されて集光レンズ48によって集光されて光検出器49に入射する。光検出器49は、反射光42dの強弱を電気信号に変換し、図示しないが、光検出信号を外部のコントローラに送り、光ディスク47に記録された情報を再生する。また、光検出信号を入力するコントローラは、光ビーム42aとその反射光42dの収差を補正するために光学レンズ駆動装置1に制御信号C1を出力し、ステップモータ10と液晶素子71を制御して収差を補正し、最適な反射光42dを得る。
【0058】
このように、実施例4の光ピックアップ装置50は、光学レンズ駆動装置1を搭載し、2つの光学レンズのうち、凹レンズ81を移動することによって光ビームの球面収差を補正することが出来る。また、本実施例の光ピックアップ装置50は、球面収差補正を2つの光学レンズによって行うので、球面収差を高精度に行うことが出来る。尚、光学レンズ駆動装置1によって移動する光学レンズは、凸レンズ82でも良く、また、凹レンズ81と凸レンズ82の両方でも良い。
【0059】
以上のように、本発明の実施例4の光ピックアップ装置50は、実施例3の光ピックアップ装置60と同様な機能を備え、高密度光ディスクの記録・再生に好適である。尚、本発明の実施例で示した斜視図やブロック図は、この構成に限定されるものではなく、本発
明の要旨を満たすものであれば、どのような構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例1に係わる光学レンズ駆動装置の概略を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係わる光学レンズ駆動装置に搭載される油吸収体の変形例である。
【図3】本発明の実施例2に係わる光学レンズ駆動装置の概略を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例3に係わる光学レンズ駆動装置を搭載した光ピックアップ装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例4に係わる光学レンズ駆動装置を搭載した光ピックアップ装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
1 光学レンズ駆動装置
2 支持基板
2a〜2d 支持壁
3 光学レンズ
4 レンズホルダ
4a レンズ支持部
4b 摺動受け部
4c ラック部
4d ガイド軸受け部
4e 凹部
5 光軸
10 ステップモータ
11 回転出力歯車
30 油吸収体
32a、32b レンズホルダ摺動軸
41a、41b、41c レーザ光源
42a、42b、42c 光ビーム
42d 反射光
43a、43b プリズム
44 偏向ビームスプリッタ(PBS)
45 λ/4位相差板
46 対物レンズ
47 光ディスク
48 集光レンズ
49 光検出器
50、60 光ピックアップ装置
62 駆動IC
71 液晶素子
81 凹レンズ
82 凸レンズ
C1 制御信号
M1 モータ駆動信号
O1 液晶駆動信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、当該モータの駆動力を受けてレンズホルダ摺動軸と摺動自在に係合する、光学レンズを保持したレンズホルダと、を備え
前記レンズホルダと前記レンズホルダ摺動軸とは、前記レンズホルダに設けた軸孔を介して係合されてなり、
前記レンズホルダの一部に、前記レンズホルダ摺動軸を露出させる凹部を設け、当該凹部の内部に、潤滑油を含有した油吸収体を配設した
ことを特徴とする光学レンズ駆動装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記レンズホルダに設けられた前記軸孔の形成方向に沿って、複数個設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の光学レンズ駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学レンズ駆動装置を、レーザ光源と対物レンズを含む光学系の光路中に配した
ことを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−192216(P2008−192216A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24121(P2007−24121)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】