光学式エンコーダ
【課題】薄型の光学式エンコーダを提供する。
【解決手段】光学式エンコーダは、センサヘッド30と、センサヘッド30に対して変位し得るスケール20とから構成されている。センサヘッド30は、光源40と、光検出器50と、導電配線パターン62を有する平行平板状の光透過材60と、導電配線パターン72を有する高さ規定部材70とを有している。光源40と光検出器50は、導電配線パターン62に電気的に接続されて光透過材60に固定されている。高さ規定部材70は、導電配線パターン72が導電配線パターン62に電気的に接続されて、光源40と光検出器50とが固定された光透過材60の面に光源40と光検出器50とを露出させて固定されている。高さ規定部材70は、センサヘッド30を取り付けるための平坦な当て付け面74を有している。当て付け面74から光透過材60までの距離が均一である。
【解決手段】光学式エンコーダは、センサヘッド30と、センサヘッド30に対して変位し得るスケール20とから構成されている。センサヘッド30は、光源40と、光検出器50と、導電配線パターン62を有する平行平板状の光透過材60と、導電配線パターン72を有する高さ規定部材70とを有している。光源40と光検出器50は、導電配線パターン62に電気的に接続されて光透過材60に固定されている。高さ規定部材70は、導電配線パターン72が導電配線パターン62に電気的に接続されて、光源40と光検出器50とが固定された光透過材60の面に光源40と光検出器50とを露出させて固定されている。高さ規定部材70は、センサヘッド30を取り付けるための平坦な当て付け面74を有している。当て付け面74から光透過材60までの距離が均一である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出体の位置等を検出する光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
光学式エンコーダでは、格子パターンを有するスケールがセンサヘッドと相対移動することにより、センサヘッドから変位信号が得られる。ここで、変位信号とは、スケールとセンサヘッド間の相対移動に応じて周期的に変化する位相が90度ずれた2相のアナログ信号か、このアナログ信号を信号処理回路で変換したデジタル信号のことである。良好な変位信号を得るためにはセンサヘッドとスケールの位置関係を精度よく配置しなければならない。光学式エンコーダの分解能が高くなるほど、より高い配置精度が要求される。
【0003】
ここで、光源と、光源から出射した光を透過または反射する格子パターンを有するスケールと、スケールを透過したかスケールで反射された光を受光する光検出器から構成される小型の光学式エンコーダの代表例として、特許第3963885号明細書に開示された反射型光学式エンコーダを図15に示す。この光学式エンコーダは、図15に示すように、移動検出対象物に固定される反射型のスケール110と、スケール110の移動を検出するためのセンサヘッド120とで構成されている。センサヘッド120は、スケール110に照射される光ビームを射出する光源121と、スケール110によって反射され変調された光ビームを検出する光検出器123と、光源121と光検出器123を内包するパッケージとを有している。パッケージは、外側底面が平らな箱状の筐体130と、光を透過する部位を有する蓋部材129とからなる。光源121は筐体130の内側の空間内に固定されている。光検出器123は半導体基板125に形成されており、半導体基板125は内面に固定されている。
【0004】
この光学式エンコーダはタルボットイメージを利用している。タルボットイメージ回折理論によれば、光源として光出射口が点構造からなる点光源を用い、光源の光出射面からスケールの格子が形成された面までの距離をZ1、スケールの格子が形成された面から光検出器の光検出面までの距離をZ2とし、スケールの格子ピッチをp、点光源の波長をλ、nを整数とすると、Z1とZ2がおおよそ次の(1)式を満たす関係にあるときに、スケールの格子パターンと相似の明暗が光検出器の光検出面上に生成される。
【0005】
(1/Z1)+(1/Z2)=λ/(np2) …(1)
ここでZ1=Z2=Zとすると(2)式となる。
【0006】
Z=2np2/λ …(2)
従って、図15に示したような、センサヘッド120内において光源121の光出射面(蓋部材に形成した光源スリット127)と光検出器123の光検出面を揃えた光学式エンコーダでは、上記(2)式を満たすようにセンサヘッド120とスケール110の格子が形成された面間の配置を調整する必要がある。図15の光学式エンコーダでは、スケール110とセンサヘッド120の位置関係を精密に調整可能なように箱状の筐体130の底面を平らな当て付け面とすることにより小型でありながら良好なエンコーダ信号を得ることができるようにしている。
【特許文献1】特許第3963885号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図15に示した光学式エンコーダでは、光源121と光検出器123が形成された半導体基板125とが、箱状の筐体130と蓋部材129とからなるパッケージ内に内包されている。このため、光源121から出射された光がスケール110に向かう方向をヘッドの厚み方向としたときに、センサヘッド120の厚みは、箱状の筐体130の底面部の厚みと、光源121または半導体基板125のどちらか厚い方の厚みと、蓋部材129の厚みの少なくとも三つの部材の厚みの足し合わせとなる。現在、光学式エンコーダを必要とする各種装置の小型化に伴い、光学式エンコーダのより一層の小型化が望まれるが、図15に示した光学式エンコーダでは、センサヘッド120の厚みが少なくとも三つの部材の厚みの足し合わせとなるので、薄型化には限界がある。
【0008】
本発明の目的は、薄型の光学式エンコーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による光学式エンコーダは、センサヘッドと、前記センサヘッドに対して変位し得るスケールとから構成されている。前記センサヘッドは、少なくとも一つの光源と、少なくとも一つの光検出器と、第一の導電配線パターンを有する平行平板状の光透過材と、第二の導電配線パターンを有する高さ規定部材とを有している。前記光源と前記光検出器は、前記第一の導電配線パターンに電気的に接続されて前記光透過材に固定されている。前記高さ規定部材は、前記第二の導電配線パターンが前記第一の導電配線パターンに電気的に接続されて、前記光源と前記光検出器とが固定された前記光透過材の面に前記光源と前記光検出器とを露出させて固定されている。前記高さ規定部材はさらに、前記センサヘッドを取り付けるための平坦な当て付け面を有し、前記当て付け面から前記光透過材までの距離が均一である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、薄型の光学式エンコーダが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態による光学式エンコーダを図1と図2に示す。図1と図2に示す光学式エンコーダは反射型光学式エンコーダである。
【0013】
図1と図2に示すように、光学式エンコーダ10は、センサヘッド30と、センサヘッド30に対して変位し得るスケール20とから構成されている。
【0014】
スケール20は、センサヘッド30に対して直線的に変位可能であり、スケール20の移動方向に一定のピッチで光学的特性が変化する反射格子パターンを有している。反射格子パターンは、例えば、クロムやアルミなどから作られている。
【0015】
センサヘッド30は、一つの光源40と、一つの光検出器50と、導電配線パターン62を有する平行平板状の光透過材60と、導電配線パターン72を有する高さ規定部材70とを有している。光源40は、例えば、光出射口が点構造からなるLEDや、半導体レーザなどで構成されている。光検出器50は、例えば、PDアレイ52を有する半導体集積回路(IC)から構成されている。光透過材60は、例えば、ガラスやプラスチックなどから構成されている。導電配線パターン62は、例えば、クロムや金属導電性酸化物(例えば一般的なITO)などから作られている。
【0016】
光源40と光検出器50は、導電配線パターン62に電気的に接続されて光透過材60に固定されている。例えば、光源40と光検出器50は、一般的にチップオングラス(COG)といわれる構成で、金などの導電材64を介して導電配線パターン62に電気的に接続されている。光源40は小型化を考慮すると半導体チップで構成されると好ましい。その場合、光源40の両面から電気的な接続配線をとる必要がある。このため、光透過材60と光源40との接合面と反対側の光源40の面と光透過材60の導電配線パターン62とが金やアルミニウムなどの導電ワイヤ42によって電気的に接続されている。
【0017】
高さ規定部材70は、導電配線パターン72が導電配線パターン62に電気的に接続され、かつ、光源40と光検出器50とが固定された光透過材60の面に光源40と光検出器50とを露出させて固定されている。高さ規定部材70は、例えば、枠状の部材で構成されており、光源40と光検出器50を取り囲むように配置されている。高さ規定部材70の基材は、例えば、ガラスエポキシ材料である。導電配線パターン72は、例えば、金などから作られている。高さ規定部材70の導電配線パターン72は、導電材64を介して光透過材60の導電配線パターン62に電気的に接続されている。高さ規定部材70の内側の空間にはエポキシやシリコンなどの樹脂80が配されており、光源40と光検出器50は樹脂80で覆われている。高さ規定部材70はさらに、センサヘッド30を取り付けるための平坦な当て付け面74を有している。当て付け面74から光透過材60までの距離が均一である。つまり高さ規定部材70は一定の厚みを有している。
【0018】
スケール20に対向する光透過材60の面は、格子パターンが形成されたスケール20の面に対して平行である。
【0019】
センサヘッド30は、光源40から出射されスケール20で反射された光を光検出器50で検出してスケール20の変位を反映した変位信号を出力する。
【0020】
次にセンサヘッド30の製造方法を図3〜図8を参照しながら説明する。
【0021】
まず、ガラスやプラスチックなどの光透過材60にクロムやITOなどからなる導電材を蒸着やスパッタなどの製法で薄膜状に成膜し、その後にフォトリソ法などで導電配線パターン62を形成する(図3)。
【0022】
次に、金などの導電配線パターン72を有するガラスエポキシなどの材料で構成された高さ規定部材70を、金などの導電材64を介して導電配線パターン62と導電配線パターン72とが電気的に接続されるように、接着材(図示なし)で光透過材60に固定する(図4,図5)。
【0023】
続いて、半導体チップ状のLEDまたは半導体レーザなどの光源40と、PDアレイ52を有するICからなる半導体チップ状の光検出器50とを、金などの導電材64を介して導電配線パターン62に電気的に接続しながら固定する(図6,図7)。
【0024】
その後、光透過材60と光源40との接合面と反対側の光源40の面と光透過材60の導電配線パターン62とを金などの金属の導電ワイヤ42でワイヤボンディングした後、光源40と光検出器50を覆うようにエポキシやシリコンなどの樹脂80を高さ規定部材70の内側の空間に充てんして(図8)、センサヘッド30が完成する。
【0025】
以上はセンサヘッド30を単体で製作する場合について説明したが、本構造のセンサヘッドでは安価に製造する方法として、集合基板の光透過材60と集合基板の高さ規定部材70を用いた多数個取り法で製作する方法も可能である。また、光源40と光検出器50を光透過材60に電気的に接続させて固定した後に高さ規定部材70を電気的に接続させて固定する方法も可能である。
【0026】
次に以上のように作製したセンサヘッド30と、格子パターンを有するスケール20の取り付けについて説明する。タルボットイメージを利用した方式において、本実施形態のようにセンサヘッド30内において光源40の光出射面と光検出器50の光検出面を揃えた構成では、スケール20に形成された格子パターンの面と光透過材60のスケール側の面とを平行に配置し、光源40の光出射面および光検出器50の光検出面とスケール20の格子が形成された面との間隔を(2)式を満たすように調整する必要がある。従って、図9に示したように、センサヘッド30を取り付ける取り付け基板90とスケール20の格子パターン面との間隔を一定間隔のTとしたときに(2)式を満たすようなZを確保するためには、高さ規定部材70が一定の厚みtを有するとともに、取り付け基板90に当て付けるための当て付け面74を底面に有している必要がある。本実施形態のセンサヘッド30では、高さ規定部材70が均一な厚みtを有しており、取り付け基板90に当て付けられる当て付け面74が平坦なので、所望のZを確保しながらセンサヘッド30を取り付け基板90に取り付けることが容易である。
【0027】
本実施形態では、高さ規定部材70が枠状の部材で構成されており、光源40と光検出器50とを露出させるように光透過材60の面に固定されているので、箱状の筐体130と蓋部材129とからなるパッケージ内に光源121と光検出器123とが内包された図15の光学式エンコーダと比較して、少なくとも箱状の筐体130の底面部の厚み分が確実に薄型化された光学式エンコーダ10が得られる。さらに半導体チップ状の光源と光検出器を用いることによりセンサヘッドの薄型化をさらに図ることができる。
【0028】
図9に示すように、高さ規定部材70の厚み(t)は、半導体チップ状の光源40の厚み(tl)に導電ワイヤ42の突出し(tw)をプラスした厚み(tl+tw)か、半導体チップ状の光検出器50の厚み(td)のいずれか大きい方よりも多少大きくしておくだけでよい。一般的には半導体チップ状の光源40と光検出器50の厚みは0.3mmより薄くでき、導電ワイヤ42の突出しは0.2mm程度なので、高さ規定部材70のtは0.5mm以下が可能である。また光透過材60の厚みは一般的には0.3mm以下にできるので、センサヘッド30の厚みは0.8mm以下の薄型化が可能となる。
【0029】
また、高さ規定部材70は、取り付け基板90に当て付けられる当て付け面74を有し、当て付け面74から光透過材60までの距離が均一であることにより、光源40の光出射面および光検出器50の光検出面とスケール20の格子パターン面との間隔を所望の間隔(Z)に保持できるので、本実施形態のセンサヘッド30は高分解能な光学式エンコーダ10を得ることが可能である。
【0030】
なお、本実施形態の各構成は、当然、各種の変形や変更が施されてもよい。
【0031】
光源40と光検出器50の個数はそれぞれ一つに限らず多数であってもよい。スケール20の格子パターンも1種類に限らず多種類であってもよい。
【0032】
光検出器50は、PDアレイ52のみならず他にアナログ信号をデジタル信号に変換する回路や、内挿分割回路、光源40のドライバーなどを搭載していてもよい。
【0033】
導電配線パターン72は枠状の高さ規定部材70の外側に形成されているが、図10と図11に示すように、枠状の高さ規定部材70の内側に形成されていてもよい。導電配線パターン72を高さ規定部材70の内側に形成することにより、導電異物による電気的ショートなどの発生が防止できる。
【0034】
樹脂80は透明樹脂や黒樹脂など用途に応じた材料が使用されてよい。また樹脂80は、例えば、熱伝導性が高い樹脂や熱伝導性が高い材料を添加した樹脂で構成されていてもよい。これにより、光源40や光検出器50が発する熱が良好に拡散され、光源40や光検出器50の熱による破損や特性変化が抑制されるため、安定したエンコーダ信号が得られる。
【0035】
光透過材60に形成される導電配線パターン62は遮光性のあるクロムやアルミなどで構成され、導電配線としての機能に加えて、エンコーダ信号成分に不要な光を遮光する遮光パターンの機能が持たされてもよい。
【0036】
光透過材60を一般的なPETのようなフィルム材とすることにより光透過材60の厚みは0.1mmより薄くすることが可能である。
【0037】
高さ規定部材70は耐熱性のあるセラミックでもよい。高さ規定部材70は閉じた枠状の部材で構成されているが、一辺が開いた枠状の部材で構成されてもよく、また分離した二つ以上の部材で構成されてもよい。
【0038】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態による光学式エンコーダのセンサヘッドを図12に示す。図12に示すセンサヘッドは、図1や図2に示したセンサヘッドに代えて使用可能である。
【0039】
本実施形態のセンサヘッドでは、図12に示すように、光透過材60と光源40との接合面と反対側の光源40の面と光透過材60の導電配線パターン62とが導電性フィルム44によって電気的に接続されている。導電性フィルム44は、例えば、アルムニウムやクロムや金などの金属薄膜または一般的な金属導電性酸化物であるITO薄膜などを有するプラスチック材などで構成されてよいが、導電性を有するフィルムであればよく、これに限るものではない。導電性フィルム44を除いたセンサヘッドの構造、作製方法、センサヘッド30とスケール20の取り付けについては、前述した第一実施形態と同様なので説明を省略する。導電性フィルム44の厚みは0.1mm程度が可能なので、可撓性を有しており、従って導電ワイヤ42のような突き出し構造にはならず、導電ワイヤ42を使用した第一実施形態よりもさらに薄型化された高分解能な光学式エンコーダを得ることが可能となる。
【0040】
本実施形態の各構成は、第一実施形態と同様な各種の変形や変更が施されてもよい。
【0041】
<第三実施形態>
本発明の第三実施形態による光学式エンコーダのセンサヘッドを図13に示す。図13に示すセンサヘッドは、図1や図2に示したセンサヘッドに代えて使用可能である。
【0042】
本実施形態では、図13に示すように、光透過材60と光源40との接合面と反対側の光源40の面と、光透過材60と光検出器50との接合面と反対側の光検出器50の面とが導電性フィルム44によって電気的に接続されており、グランド電位が光検出器50から光源40に供給される。導電性フィルム44は、例えば、アルムニウムやクロムや金などの金属薄膜または一般的な金属導電性酸化物であるITO薄膜などを有するプラスチック材などで構成されてよいが、導電性を有するフィルムであればよく、これに限るものではない。導電性フィルム44を除いたセンサヘッドの構造、作製方法、センサヘッド30とスケール20の取り付けについては、前述した第一実施形態と同様なので説明を省略する。導電性フィルム44の厚みは0.1mm程度が可能なので、可撓性を有しており、従って導電ワイヤ42のような突き出し構造にはならず、導電ワイヤ42を使用した第一実施形態よりもさらに薄型化された高分解能な光学式エンコーダを得ることが可能となる。さらに、導電性フィルム44が曲げられることなくほぼ平面状態で保持されるので、環境変化による断線などが発生しづらく信頼性が高い高分解能な光学式エンコーダを得ることが可能となる。
【0043】
本実施形態の各構成は、第一実施形態と同様な各種の変形や変更が施されてもよい。
【0044】
<第四実施形態>
本発明の第四実施形態による光学式エンコーダのセンサヘッドを図14に示す。図14に示すセンサヘッドは、図1や図2に示したセンサヘッドに代えて使用可能である。
【0045】
本実施形態では、光透過材60が光源40に対向する領域に格子パターン66を有している。格子パターン66は、例えば、導電配線パターン62と同じ材料で作られている。格子パターン66は、クロムやアルミニウムなどの遮光性と導電性とを有する金属で構成すると、導電配線パターン62と兼用可能である。格子パターン66は、黒樹脂などで構成されてもかまわない。回折理論によると、光源40上の格子パターン66のピッチをPslitとし、格子パターン66面からスケールの格子が形成された面までの距離をZ1、スケールの格子が形成された面から光検出器50のPDアレイ52面までの距離をZ2とし、スケールの格子ピッチをpとすると、(3)式を満たす関係にあるときに、スケールの格子パターンと相似の明暗であるタルボットイメージがPDアレイ52上に生成される。
【0046】
Pslit=p×(Z1+Z2)/Z2 …(3)
ここでZ1=Z2=Zとすると(4)式となる。
【0047】
Pslit=2p …(4)
従って、スケール20に形成された格子パターン面と光透過材60のスケール側の面とを平行に配置し、(4)を満たす格子パターン66のピッチで、(2)式を満たすように、光源40の光出射面および光検出器50の光検出面とスケール20の格子が形成された面との間隔を調整することにより良好なエンコーダ信号を得ることができる。
【0048】
これ以外のセンサヘッドの構造、作製方法、センサヘッド30とスケール20の取り付けについては、前述した第一実施形態と同様なので説明を省略する。
【0049】
本実施形態では、第一実施形態と同様な薄型化が可能であるとともに、光源40は光出射口が点構造である必要がないので、光源40の選択自由度が広がり安価な光源の使用が可能となる。従って安価で高分解能な光学式エンコーダを得ることができる。
【0050】
本実施形態の各構成は、上記第一実施形態と同様な各種の変形や変更が施されてもよい。
【0051】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第一実施形態による光学式エンコーダの斜視図である。
【図2】図1に示した光学式エンコーダの断面図である。
【図3】図1に示したセンサヘッドの製造方法の最初の工程を示している。
【図4】図1に示したセンサヘッドの製造方法の図3に続く工程を示した斜視図である。
【図5】図1に示したセンサヘッドの製造方法の図3に続く工程を示した断面図である。
【図6】図1に示したセンサヘッドの製造方法の図4と図5に続く工程を示した斜視図である。
【図7】図1に示したセンサヘッドの製造方法の図4と図5に続く工程を示した断面図である。
【図8】図1に示したセンサヘッドの製造方法の図6と図7に続く最後の工程を示している。
【図9】図1に示した光学式エンコーダの断面図であり、高さ規定部材の厚みtと光源の厚みtlと導電ワイヤの突出しtwと光検出器の厚みtdとを示している。
【図10】本発明の第一実施形態の変形例による光学式エンコーダの斜視図である。
【図11】図10に示した光学式エンコーダの断面図である。
【図12】本発明の第二実施形態による光学式エンコーダのセンサヘッドを示している。
【図13】本発明の第三実施形態による光学式エンコーダのセンサヘッドを示している。
【図14】本発明の第四実施形態による光学式エンコーダのセンサヘッドを示している。
【図15】特許第3963885号明細書に開示された光学式エンコーダを示している。
【符号の説明】
【0053】
10…光学式エンコーダ、20…スケール、30…センサヘッド、40…光源、42…導電ワイヤ、44…導電性フィルム、50…光検出器、52…PDアレイ、60…光透過材、62…導電配線パターン、64…導電材、66…格子パターン、70…高さ規定部材、72…導電配線パターン、74…付け面、80…樹脂、90…取り付け基板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出体の位置等を検出する光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
光学式エンコーダでは、格子パターンを有するスケールがセンサヘッドと相対移動することにより、センサヘッドから変位信号が得られる。ここで、変位信号とは、スケールとセンサヘッド間の相対移動に応じて周期的に変化する位相が90度ずれた2相のアナログ信号か、このアナログ信号を信号処理回路で変換したデジタル信号のことである。良好な変位信号を得るためにはセンサヘッドとスケールの位置関係を精度よく配置しなければならない。光学式エンコーダの分解能が高くなるほど、より高い配置精度が要求される。
【0003】
ここで、光源と、光源から出射した光を透過または反射する格子パターンを有するスケールと、スケールを透過したかスケールで反射された光を受光する光検出器から構成される小型の光学式エンコーダの代表例として、特許第3963885号明細書に開示された反射型光学式エンコーダを図15に示す。この光学式エンコーダは、図15に示すように、移動検出対象物に固定される反射型のスケール110と、スケール110の移動を検出するためのセンサヘッド120とで構成されている。センサヘッド120は、スケール110に照射される光ビームを射出する光源121と、スケール110によって反射され変調された光ビームを検出する光検出器123と、光源121と光検出器123を内包するパッケージとを有している。パッケージは、外側底面が平らな箱状の筐体130と、光を透過する部位を有する蓋部材129とからなる。光源121は筐体130の内側の空間内に固定されている。光検出器123は半導体基板125に形成されており、半導体基板125は内面に固定されている。
【0004】
この光学式エンコーダはタルボットイメージを利用している。タルボットイメージ回折理論によれば、光源として光出射口が点構造からなる点光源を用い、光源の光出射面からスケールの格子が形成された面までの距離をZ1、スケールの格子が形成された面から光検出器の光検出面までの距離をZ2とし、スケールの格子ピッチをp、点光源の波長をλ、nを整数とすると、Z1とZ2がおおよそ次の(1)式を満たす関係にあるときに、スケールの格子パターンと相似の明暗が光検出器の光検出面上に生成される。
【0005】
(1/Z1)+(1/Z2)=λ/(np2) …(1)
ここでZ1=Z2=Zとすると(2)式となる。
【0006】
Z=2np2/λ …(2)
従って、図15に示したような、センサヘッド120内において光源121の光出射面(蓋部材に形成した光源スリット127)と光検出器123の光検出面を揃えた光学式エンコーダでは、上記(2)式を満たすようにセンサヘッド120とスケール110の格子が形成された面間の配置を調整する必要がある。図15の光学式エンコーダでは、スケール110とセンサヘッド120の位置関係を精密に調整可能なように箱状の筐体130の底面を平らな当て付け面とすることにより小型でありながら良好なエンコーダ信号を得ることができるようにしている。
【特許文献1】特許第3963885号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図15に示した光学式エンコーダでは、光源121と光検出器123が形成された半導体基板125とが、箱状の筐体130と蓋部材129とからなるパッケージ内に内包されている。このため、光源121から出射された光がスケール110に向かう方向をヘッドの厚み方向としたときに、センサヘッド120の厚みは、箱状の筐体130の底面部の厚みと、光源121または半導体基板125のどちらか厚い方の厚みと、蓋部材129の厚みの少なくとも三つの部材の厚みの足し合わせとなる。現在、光学式エンコーダを必要とする各種装置の小型化に伴い、光学式エンコーダのより一層の小型化が望まれるが、図15に示した光学式エンコーダでは、センサヘッド120の厚みが少なくとも三つの部材の厚みの足し合わせとなるので、薄型化には限界がある。
【0008】
本発明の目的は、薄型の光学式エンコーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による光学式エンコーダは、センサヘッドと、前記センサヘッドに対して変位し得るスケールとから構成されている。前記センサヘッドは、少なくとも一つの光源と、少なくとも一つの光検出器と、第一の導電配線パターンを有する平行平板状の光透過材と、第二の導電配線パターンを有する高さ規定部材とを有している。前記光源と前記光検出器は、前記第一の導電配線パターンに電気的に接続されて前記光透過材に固定されている。前記高さ規定部材は、前記第二の導電配線パターンが前記第一の導電配線パターンに電気的に接続されて、前記光源と前記光検出器とが固定された前記光透過材の面に前記光源と前記光検出器とを露出させて固定されている。前記高さ規定部材はさらに、前記センサヘッドを取り付けるための平坦な当て付け面を有し、前記当て付け面から前記光透過材までの距離が均一である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、薄型の光学式エンコーダが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態による光学式エンコーダを図1と図2に示す。図1と図2に示す光学式エンコーダは反射型光学式エンコーダである。
【0013】
図1と図2に示すように、光学式エンコーダ10は、センサヘッド30と、センサヘッド30に対して変位し得るスケール20とから構成されている。
【0014】
スケール20は、センサヘッド30に対して直線的に変位可能であり、スケール20の移動方向に一定のピッチで光学的特性が変化する反射格子パターンを有している。反射格子パターンは、例えば、クロムやアルミなどから作られている。
【0015】
センサヘッド30は、一つの光源40と、一つの光検出器50と、導電配線パターン62を有する平行平板状の光透過材60と、導電配線パターン72を有する高さ規定部材70とを有している。光源40は、例えば、光出射口が点構造からなるLEDや、半導体レーザなどで構成されている。光検出器50は、例えば、PDアレイ52を有する半導体集積回路(IC)から構成されている。光透過材60は、例えば、ガラスやプラスチックなどから構成されている。導電配線パターン62は、例えば、クロムや金属導電性酸化物(例えば一般的なITO)などから作られている。
【0016】
光源40と光検出器50は、導電配線パターン62に電気的に接続されて光透過材60に固定されている。例えば、光源40と光検出器50は、一般的にチップオングラス(COG)といわれる構成で、金などの導電材64を介して導電配線パターン62に電気的に接続されている。光源40は小型化を考慮すると半導体チップで構成されると好ましい。その場合、光源40の両面から電気的な接続配線をとる必要がある。このため、光透過材60と光源40との接合面と反対側の光源40の面と光透過材60の導電配線パターン62とが金やアルミニウムなどの導電ワイヤ42によって電気的に接続されている。
【0017】
高さ規定部材70は、導電配線パターン72が導電配線パターン62に電気的に接続され、かつ、光源40と光検出器50とが固定された光透過材60の面に光源40と光検出器50とを露出させて固定されている。高さ規定部材70は、例えば、枠状の部材で構成されており、光源40と光検出器50を取り囲むように配置されている。高さ規定部材70の基材は、例えば、ガラスエポキシ材料である。導電配線パターン72は、例えば、金などから作られている。高さ規定部材70の導電配線パターン72は、導電材64を介して光透過材60の導電配線パターン62に電気的に接続されている。高さ規定部材70の内側の空間にはエポキシやシリコンなどの樹脂80が配されており、光源40と光検出器50は樹脂80で覆われている。高さ規定部材70はさらに、センサヘッド30を取り付けるための平坦な当て付け面74を有している。当て付け面74から光透過材60までの距離が均一である。つまり高さ規定部材70は一定の厚みを有している。
【0018】
スケール20に対向する光透過材60の面は、格子パターンが形成されたスケール20の面に対して平行である。
【0019】
センサヘッド30は、光源40から出射されスケール20で反射された光を光検出器50で検出してスケール20の変位を反映した変位信号を出力する。
【0020】
次にセンサヘッド30の製造方法を図3〜図8を参照しながら説明する。
【0021】
まず、ガラスやプラスチックなどの光透過材60にクロムやITOなどからなる導電材を蒸着やスパッタなどの製法で薄膜状に成膜し、その後にフォトリソ法などで導電配線パターン62を形成する(図3)。
【0022】
次に、金などの導電配線パターン72を有するガラスエポキシなどの材料で構成された高さ規定部材70を、金などの導電材64を介して導電配線パターン62と導電配線パターン72とが電気的に接続されるように、接着材(図示なし)で光透過材60に固定する(図4,図5)。
【0023】
続いて、半導体チップ状のLEDまたは半導体レーザなどの光源40と、PDアレイ52を有するICからなる半導体チップ状の光検出器50とを、金などの導電材64を介して導電配線パターン62に電気的に接続しながら固定する(図6,図7)。
【0024】
その後、光透過材60と光源40との接合面と反対側の光源40の面と光透過材60の導電配線パターン62とを金などの金属の導電ワイヤ42でワイヤボンディングした後、光源40と光検出器50を覆うようにエポキシやシリコンなどの樹脂80を高さ規定部材70の内側の空間に充てんして(図8)、センサヘッド30が完成する。
【0025】
以上はセンサヘッド30を単体で製作する場合について説明したが、本構造のセンサヘッドでは安価に製造する方法として、集合基板の光透過材60と集合基板の高さ規定部材70を用いた多数個取り法で製作する方法も可能である。また、光源40と光検出器50を光透過材60に電気的に接続させて固定した後に高さ規定部材70を電気的に接続させて固定する方法も可能である。
【0026】
次に以上のように作製したセンサヘッド30と、格子パターンを有するスケール20の取り付けについて説明する。タルボットイメージを利用した方式において、本実施形態のようにセンサヘッド30内において光源40の光出射面と光検出器50の光検出面を揃えた構成では、スケール20に形成された格子パターンの面と光透過材60のスケール側の面とを平行に配置し、光源40の光出射面および光検出器50の光検出面とスケール20の格子が形成された面との間隔を(2)式を満たすように調整する必要がある。従って、図9に示したように、センサヘッド30を取り付ける取り付け基板90とスケール20の格子パターン面との間隔を一定間隔のTとしたときに(2)式を満たすようなZを確保するためには、高さ規定部材70が一定の厚みtを有するとともに、取り付け基板90に当て付けるための当て付け面74を底面に有している必要がある。本実施形態のセンサヘッド30では、高さ規定部材70が均一な厚みtを有しており、取り付け基板90に当て付けられる当て付け面74が平坦なので、所望のZを確保しながらセンサヘッド30を取り付け基板90に取り付けることが容易である。
【0027】
本実施形態では、高さ規定部材70が枠状の部材で構成されており、光源40と光検出器50とを露出させるように光透過材60の面に固定されているので、箱状の筐体130と蓋部材129とからなるパッケージ内に光源121と光検出器123とが内包された図15の光学式エンコーダと比較して、少なくとも箱状の筐体130の底面部の厚み分が確実に薄型化された光学式エンコーダ10が得られる。さらに半導体チップ状の光源と光検出器を用いることによりセンサヘッドの薄型化をさらに図ることができる。
【0028】
図9に示すように、高さ規定部材70の厚み(t)は、半導体チップ状の光源40の厚み(tl)に導電ワイヤ42の突出し(tw)をプラスした厚み(tl+tw)か、半導体チップ状の光検出器50の厚み(td)のいずれか大きい方よりも多少大きくしておくだけでよい。一般的には半導体チップ状の光源40と光検出器50の厚みは0.3mmより薄くでき、導電ワイヤ42の突出しは0.2mm程度なので、高さ規定部材70のtは0.5mm以下が可能である。また光透過材60の厚みは一般的には0.3mm以下にできるので、センサヘッド30の厚みは0.8mm以下の薄型化が可能となる。
【0029】
また、高さ規定部材70は、取り付け基板90に当て付けられる当て付け面74を有し、当て付け面74から光透過材60までの距離が均一であることにより、光源40の光出射面および光検出器50の光検出面とスケール20の格子パターン面との間隔を所望の間隔(Z)に保持できるので、本実施形態のセンサヘッド30は高分解能な光学式エンコーダ10を得ることが可能である。
【0030】
なお、本実施形態の各構成は、当然、各種の変形や変更が施されてもよい。
【0031】
光源40と光検出器50の個数はそれぞれ一つに限らず多数であってもよい。スケール20の格子パターンも1種類に限らず多種類であってもよい。
【0032】
光検出器50は、PDアレイ52のみならず他にアナログ信号をデジタル信号に変換する回路や、内挿分割回路、光源40のドライバーなどを搭載していてもよい。
【0033】
導電配線パターン72は枠状の高さ規定部材70の外側に形成されているが、図10と図11に示すように、枠状の高さ規定部材70の内側に形成されていてもよい。導電配線パターン72を高さ規定部材70の内側に形成することにより、導電異物による電気的ショートなどの発生が防止できる。
【0034】
樹脂80は透明樹脂や黒樹脂など用途に応じた材料が使用されてよい。また樹脂80は、例えば、熱伝導性が高い樹脂や熱伝導性が高い材料を添加した樹脂で構成されていてもよい。これにより、光源40や光検出器50が発する熱が良好に拡散され、光源40や光検出器50の熱による破損や特性変化が抑制されるため、安定したエンコーダ信号が得られる。
【0035】
光透過材60に形成される導電配線パターン62は遮光性のあるクロムやアルミなどで構成され、導電配線としての機能に加えて、エンコーダ信号成分に不要な光を遮光する遮光パターンの機能が持たされてもよい。
【0036】
光透過材60を一般的なPETのようなフィルム材とすることにより光透過材60の厚みは0.1mmより薄くすることが可能である。
【0037】
高さ規定部材70は耐熱性のあるセラミックでもよい。高さ規定部材70は閉じた枠状の部材で構成されているが、一辺が開いた枠状の部材で構成されてもよく、また分離した二つ以上の部材で構成されてもよい。
【0038】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態による光学式エンコーダのセンサヘッドを図12に示す。図12に示すセンサヘッドは、図1や図2に示したセンサヘッドに代えて使用可能である。
【0039】
本実施形態のセンサヘッドでは、図12に示すように、光透過材60と光源40との接合面と反対側の光源40の面と光透過材60の導電配線パターン62とが導電性フィルム44によって電気的に接続されている。導電性フィルム44は、例えば、アルムニウムやクロムや金などの金属薄膜または一般的な金属導電性酸化物であるITO薄膜などを有するプラスチック材などで構成されてよいが、導電性を有するフィルムであればよく、これに限るものではない。導電性フィルム44を除いたセンサヘッドの構造、作製方法、センサヘッド30とスケール20の取り付けについては、前述した第一実施形態と同様なので説明を省略する。導電性フィルム44の厚みは0.1mm程度が可能なので、可撓性を有しており、従って導電ワイヤ42のような突き出し構造にはならず、導電ワイヤ42を使用した第一実施形態よりもさらに薄型化された高分解能な光学式エンコーダを得ることが可能となる。
【0040】
本実施形態の各構成は、第一実施形態と同様な各種の変形や変更が施されてもよい。
【0041】
<第三実施形態>
本発明の第三実施形態による光学式エンコーダのセンサヘッドを図13に示す。図13に示すセンサヘッドは、図1や図2に示したセンサヘッドに代えて使用可能である。
【0042】
本実施形態では、図13に示すように、光透過材60と光源40との接合面と反対側の光源40の面と、光透過材60と光検出器50との接合面と反対側の光検出器50の面とが導電性フィルム44によって電気的に接続されており、グランド電位が光検出器50から光源40に供給される。導電性フィルム44は、例えば、アルムニウムやクロムや金などの金属薄膜または一般的な金属導電性酸化物であるITO薄膜などを有するプラスチック材などで構成されてよいが、導電性を有するフィルムであればよく、これに限るものではない。導電性フィルム44を除いたセンサヘッドの構造、作製方法、センサヘッド30とスケール20の取り付けについては、前述した第一実施形態と同様なので説明を省略する。導電性フィルム44の厚みは0.1mm程度が可能なので、可撓性を有しており、従って導電ワイヤ42のような突き出し構造にはならず、導電ワイヤ42を使用した第一実施形態よりもさらに薄型化された高分解能な光学式エンコーダを得ることが可能となる。さらに、導電性フィルム44が曲げられることなくほぼ平面状態で保持されるので、環境変化による断線などが発生しづらく信頼性が高い高分解能な光学式エンコーダを得ることが可能となる。
【0043】
本実施形態の各構成は、第一実施形態と同様な各種の変形や変更が施されてもよい。
【0044】
<第四実施形態>
本発明の第四実施形態による光学式エンコーダのセンサヘッドを図14に示す。図14に示すセンサヘッドは、図1や図2に示したセンサヘッドに代えて使用可能である。
【0045】
本実施形態では、光透過材60が光源40に対向する領域に格子パターン66を有している。格子パターン66は、例えば、導電配線パターン62と同じ材料で作られている。格子パターン66は、クロムやアルミニウムなどの遮光性と導電性とを有する金属で構成すると、導電配線パターン62と兼用可能である。格子パターン66は、黒樹脂などで構成されてもかまわない。回折理論によると、光源40上の格子パターン66のピッチをPslitとし、格子パターン66面からスケールの格子が形成された面までの距離をZ1、スケールの格子が形成された面から光検出器50のPDアレイ52面までの距離をZ2とし、スケールの格子ピッチをpとすると、(3)式を満たす関係にあるときに、スケールの格子パターンと相似の明暗であるタルボットイメージがPDアレイ52上に生成される。
【0046】
Pslit=p×(Z1+Z2)/Z2 …(3)
ここでZ1=Z2=Zとすると(4)式となる。
【0047】
Pslit=2p …(4)
従って、スケール20に形成された格子パターン面と光透過材60のスケール側の面とを平行に配置し、(4)を満たす格子パターン66のピッチで、(2)式を満たすように、光源40の光出射面および光検出器50の光検出面とスケール20の格子が形成された面との間隔を調整することにより良好なエンコーダ信号を得ることができる。
【0048】
これ以外のセンサヘッドの構造、作製方法、センサヘッド30とスケール20の取り付けについては、前述した第一実施形態と同様なので説明を省略する。
【0049】
本実施形態では、第一実施形態と同様な薄型化が可能であるとともに、光源40は光出射口が点構造である必要がないので、光源40の選択自由度が広がり安価な光源の使用が可能となる。従って安価で高分解能な光学式エンコーダを得ることができる。
【0050】
本実施形態の各構成は、上記第一実施形態と同様な各種の変形や変更が施されてもよい。
【0051】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第一実施形態による光学式エンコーダの斜視図である。
【図2】図1に示した光学式エンコーダの断面図である。
【図3】図1に示したセンサヘッドの製造方法の最初の工程を示している。
【図4】図1に示したセンサヘッドの製造方法の図3に続く工程を示した斜視図である。
【図5】図1に示したセンサヘッドの製造方法の図3に続く工程を示した断面図である。
【図6】図1に示したセンサヘッドの製造方法の図4と図5に続く工程を示した斜視図である。
【図7】図1に示したセンサヘッドの製造方法の図4と図5に続く工程を示した断面図である。
【図8】図1に示したセンサヘッドの製造方法の図6と図7に続く最後の工程を示している。
【図9】図1に示した光学式エンコーダの断面図であり、高さ規定部材の厚みtと光源の厚みtlと導電ワイヤの突出しtwと光検出器の厚みtdとを示している。
【図10】本発明の第一実施形態の変形例による光学式エンコーダの斜視図である。
【図11】図10に示した光学式エンコーダの断面図である。
【図12】本発明の第二実施形態による光学式エンコーダのセンサヘッドを示している。
【図13】本発明の第三実施形態による光学式エンコーダのセンサヘッドを示している。
【図14】本発明の第四実施形態による光学式エンコーダのセンサヘッドを示している。
【図15】特許第3963885号明細書に開示された光学式エンコーダを示している。
【符号の説明】
【0053】
10…光学式エンコーダ、20…スケール、30…センサヘッド、40…光源、42…導電ワイヤ、44…導電性フィルム、50…光検出器、52…PDアレイ、60…光透過材、62…導電配線パターン、64…導電材、66…格子パターン、70…高さ規定部材、72…導電配線パターン、74…付け面、80…樹脂、90…取り付け基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサヘッドと、
前記センサヘッドに対して変位し得るスケールとから構成された光学式エンコーダであり、
前記センサヘッドは、
少なくとも一つの光源と、
少なくとも一つの光検出器と、
第一の導電配線パターンを有する平行平板状の光透過材と、
第二の導電配線パターンを有する高さ規定部材とを有しており、
前記光源と前記光検出器は、前記第一の導電配線パターンに電気的に接続されて前記光透過材に固定されており、
前記高さ規定部材は、前記第二の導電配線パターンが前記第一の導電配線パターンに電気的に接続されて、前記光源と前記光検出器とが固定された前記光透過材の面に前記光源と前記光検出器とを露出させて固定されており、前記高さ規定部材はさらに、前記センサヘッドを取り付けるための平坦な当て付け面を有し、前記当て付け面から前記光透過材までの距離が均一である、光学式エンコーダ。
【請求項2】
前記高さ規定部材が枠状の部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項3】
前記光源と前記光検出器とが樹脂で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項4】
前記光透過材と光源との接合面と反対側の前記光源の面が導電性フィルムによって前記光透過材の前記第一の導電配線パターンに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光式エンコーダ。
【請求項5】
前記光透過材と前記光源との接合面と反対側の前記光源の面と、前記光透過材と前記光検出器との接合面と反対側の前記光検出器の面とが導電性フィルムによって電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光式エンコーダ。
【請求項6】
前記光透過材が前記光源に対向する領域に格子パターンを有していることを特徴とする請求項1に記載の光式エンコーダ。
【請求項7】
前記格子パターンが前記第一の導電配線パターンと同じ材料から作られていることを特徴とする請求項6に記載の光式エンコーダ。
【請求項8】
前記樹脂が熱伝導性を有していることを特徴とする請求項3に記載の光学式エンコーダ
【請求項9】
前記高さ規定部材の基材はガラスエポキシ材料であることを特徴とする請求項1に記載の光式エンコーダ。
【請求項10】
前記スケールは、前記スケールの移動方向に一定のピッチで光学的特性が周期的に変化する格子パターンを有し、前記スケールに対向する前記光透過材の面は、前記格子パターンが形成された前記スケールの面に対して平行であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかひとつに記載の光学式エンコーダ。
【請求項1】
センサヘッドと、
前記センサヘッドに対して変位し得るスケールとから構成された光学式エンコーダであり、
前記センサヘッドは、
少なくとも一つの光源と、
少なくとも一つの光検出器と、
第一の導電配線パターンを有する平行平板状の光透過材と、
第二の導電配線パターンを有する高さ規定部材とを有しており、
前記光源と前記光検出器は、前記第一の導電配線パターンに電気的に接続されて前記光透過材に固定されており、
前記高さ規定部材は、前記第二の導電配線パターンが前記第一の導電配線パターンに電気的に接続されて、前記光源と前記光検出器とが固定された前記光透過材の面に前記光源と前記光検出器とを露出させて固定されており、前記高さ規定部材はさらに、前記センサヘッドを取り付けるための平坦な当て付け面を有し、前記当て付け面から前記光透過材までの距離が均一である、光学式エンコーダ。
【請求項2】
前記高さ規定部材が枠状の部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項3】
前記光源と前記光検出器とが樹脂で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項4】
前記光透過材と光源との接合面と反対側の前記光源の面が導電性フィルムによって前記光透過材の前記第一の導電配線パターンに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光式エンコーダ。
【請求項5】
前記光透過材と前記光源との接合面と反対側の前記光源の面と、前記光透過材と前記光検出器との接合面と反対側の前記光検出器の面とが導電性フィルムによって電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光式エンコーダ。
【請求項6】
前記光透過材が前記光源に対向する領域に格子パターンを有していることを特徴とする請求項1に記載の光式エンコーダ。
【請求項7】
前記格子パターンが前記第一の導電配線パターンと同じ材料から作られていることを特徴とする請求項6に記載の光式エンコーダ。
【請求項8】
前記樹脂が熱伝導性を有していることを特徴とする請求項3に記載の光学式エンコーダ
【請求項9】
前記高さ規定部材の基材はガラスエポキシ材料であることを特徴とする請求項1に記載の光式エンコーダ。
【請求項10】
前記スケールは、前記スケールの移動方向に一定のピッチで光学的特性が周期的に変化する格子パターンを有し、前記スケールに対向する前記光透過材の面は、前記格子パターンが形成された前記スケールの面に対して平行であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかひとつに記載の光学式エンコーダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−2324(P2010−2324A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161928(P2008−161928)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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