光学情報読取装置
【課題】 結像光学部の焦点距離を可変とした場合でも、実際の読取視野に対応したマーカ光を照射することを可能とする。
【解決手段】 受光センサ13の前部に位置する結像光学部14は、レンズの一部を移動させることにより焦点距離(画角)を3段階で変更する焦点可変機構を備える。情報コードがきされた読取対象Rまでの距離を測定する測距センサの検出に基づいて、制御回路は焦点可変機構を制御する。マーカ光照射部16は、LEDとマーカ結像用レンズを備え、読取対象Rに対して読取位置(読取視野V)を示すためのマーカ光Mを照射する。結像光学部14の視野の大きさ(読取対象Rまでの距離)に応じて、前記LEDを前後方向に移動させてマーカ光Mの大きさを3段階に変更するマーカ光調整機構を設ける。
【解決手段】 受光センサ13の前部に位置する結像光学部14は、レンズの一部を移動させることにより焦点距離(画角)を3段階で変更する焦点可変機構を備える。情報コードがきされた読取対象Rまでの距離を測定する測距センサの検出に基づいて、制御回路は焦点可変機構を制御する。マーカ光照射部16は、LEDとマーカ結像用レンズを備え、読取対象Rに対して読取位置(読取視野V)を示すためのマーカ光Mを照射する。結像光学部14の視野の大きさ(読取対象Rまでの距離)に応じて、前記LEDを前後方向に移動させてマーカ光Mの大きさを3段階に変更するマーカ光調整機構を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取対象に記された情報コードを光学的に読取るための結像光学部及び受光センサを備えると共に、前記読取対象に対し読取位置を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えてなる光学情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードや二次元コード等の情報コードを読取るためのハンディタイプの光学情報読取装置においては、近年、使い勝手の良さから、読取対象から離れた位置から読取りができるものが供されてきている。このものは、例えば、手持ち可能に構成された本体ケース内に、CCDエリアセンサなどの撮像素子、結像レンズを有する結像光学部、LEDなどの照明装置等を備えて構成される。そして、読取時の読取対象(情報コード)と装置(読取口)との間の位置合せのために、レーザダイオードやLEDを用いて、読取対象に対して読取位置(撮像素子の視野やその視野の中心位置)を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えるものが一般的となってきている。
【0003】
この種のマーカ光照射手段として、視認性の良いマーカ光を照射できるレーザダイオードを光源として用い、また、フォログラム画像により様々なデザインのマーカ光を照射するものが知られている(例えば特許文献1参照)。このものは、図12示すように、CCDエリアセンサ1及び結像光学部2の近傍(上部)に、マーカ光照射部3が配置される。詳しく図示はしないが、マーカ光照射部3は、レーザダイオード、その先方に配置されたコリメートレンズ、その先方に配置された回折格子プレート等から構成される。
【0004】
これにて、レーザダイオードから発せられた光が、コリメートレンズにより集光されて回折格子プレートのフォログラムパターン面に入射され、1次、2次の回折光が所定パターンのマーカ光Mとして読取対象に照射されるのである。尚、この場合、マーカ光Mは、例えばCCDエリアセンサ1の読取視野Vの4つのコーナー部に対応した4個のL字状のパターンと、読取視野Vの中心部と左右両端部とを示す3個の十字状のパターンとからなる線状の光の組合せから構成される。
【特許文献1】米国特許第6347163号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような光学情報読取装置にあっては、近年では、本体ケースから読取対象Rまでの読取可能距離の範囲を広げるために、上記結像光学部2に可変焦点レンズ(又はズームレンズ)を採用して焦点距離を可変とすることが考えられている。しかし、そのような結像光学部2に可変焦点レンズを採用したものの場合には、焦点距離の調整に応じて読取りの画角が順次変動するので、仮に上記したマーカ光照射部3をそのまま適用すると、読取対象に照射されたマーカ光Mが実際の読取位置(読取視野V)に対応しなくなる不具合の発生が予測される。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、マーカ光照射手段を備えるものにあって、結像光学部の焦点距離を可変とした場合でも、実際の読取視野に対応したマーカ光を照射することが可能な光学情報読取装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の光学情報読取装置は、読取対象に記された情報コードを光学的に読取るための結像光学部及び受光センサを備えると共に、前記読取対象に対し読取位置を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えてなるものにあって、前記結像光学部の焦点距離又は画角を変更する焦点可変機構を設けると共に、前記結像光学部の視野の大きさに応じて、前記マーカ光照射手段により前記読取対象に照射されるマーカ光の大きさを変更するマーカ光可変手段を設けたところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0008】
これによれば、結像光学部の焦点距離又は画角を変更する焦点可変機構を設けたことにより、読取対象までの読取可能距離の範囲を広げることができる。そして、結像光学部の焦点距離の調整に応じて読取りの画角が順次変動することになるが、その結像光学部の視野の大きさに応じて、マーカ光可変手段により、読取対象に照射されるマーカ光の大きさが変更されるようになる。従って、結像光学部の焦点距離を可変とした場合でも、読取対象に照射されるマーカ光の大きさを実際の読取視野に対応したものとすることができ、正しい読取位置(読取視野)をユーザに知らせることが可能となる。
【0009】
本発明の第2の光学情報読取装置は、読取対象に記された情報コードを光学的に読取るための結像光学部及び受光センサを備えると共に、前記読取対象に対し読取位置を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えてなるものにあって、前記結像光学部の焦点距離又は画角を変更する焦点可変機構を設けると共に、前記結像光学部の視野の大きさに応じて、前記マーカ光照射手段により前記読取対象に照射されるマーカ光の形状を変更するマーカ光可変手段を設けたところに特徴を有する(請求項2の発明)。
【0010】
これによれば、結像光学部の焦点距離又は画角を変更する焦点可変機構を設けたことにより、読取対象までの読取可能距離の範囲を広げることができる。そして、結像光学部の焦点距離の調整に応じて読取りの画角が順次変動することになるが、その結像光学部の視野の大きさに応じて、マーカ光可変手段により、読取対象に照射されるマーカ光の形状が変更されるようになる。従って、結像光学部の焦点距離を可変とした場合でも、読取対象に照射されるマーカ光の形状を読取視野に対応したものとすることができ、正しい読取位置(読取視野)をユーザに知らせることが可能となる。
【0011】
この場合、複数種類のマーカ光照射手段を設け、マーカ光可変手段を、それらマーカ光照射手段を選択的に動作させるように構成することができる(請求項3の発明)。これによれば、複数種類のマーカ光照射手段を選択的に動作させることにより、読取対象に照射されるマーカ光の大きさや形状を簡単な制御で変更することができる。
【0012】
あるいは、マーカ光照射手段を、光源と、複数の異なるパターンのマーカ光を形成するための複数のパターン形成部材とを設けて構成し、マーカ光可変手段を、それらパターン形成部材のいずれかを選択的に使用位置に移動させるように構成することができる(請求項4の発明)。複数のパターン形成部材を移動させて選択的に使用位置に位置させることによって、マーカ光の大きさや形状の変更を容易に行なうことができる。
【0013】
より具体的には、複数のパターン形成部材を回転移動部材に所定間隔で並んで設け、マーカ光可変手段を、モータによりその回転移動部材を回転移動させることによって、いずれかのパターン形成部材を使用位置に移動させるように構成することができる(請求項5の発明)。又は、複数のパターン形成部材を直線移動部材に移動方向に並んで設け、マーカ光可変手段を、モータ又は電磁石によりその直線移動部材を直線移動させることによって、いずれかのパターン形成部材を使用位置に移動させるように構成することができる(請求項6の発明)。いずれも、比較的簡単な構成でマーカ光可変手段を実現することができる。尚、上記パターン形成部材としては、回折格子(ホログラム)、スリット板、半円柱状レンズ等を採用することができる。
【0014】
また、読取対象に照射されるマーカ光の大きさを変更する場合には、マーカ光可変手段を、マーカ光照射手段を構成している光源及びマーカ結像用レンズの少なくとも一方を移動させることにより、それらの間隔を変更するように構成することができる(請求項7の発明)。更にこのとき、マーカ光可変手段を、モータ又は電磁石により光源及びマーカ結像用レンズの少なくとも一方を直線移動させるように構成することができる(請求項8の発明)。比較的簡単な構成で、読取対象に照射されるマーカ光の大きさを変更することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<1>第1の実施例
以下、本発明を手持ち式(ガンタイプ)の二次元コード読取装置に適用した第1の実施例について、図1乃至図8を参照しながら説明する。まず、図6及び図7を参照して、本実施例に係る光学情報読取装置たる二次元コード読取装置の全体構成について述べる。
【0016】
図7に示すように、二次元コード読取装置の本体ケース11は、丸みを帯びた薄型のほぼ矩形箱状をなす主部11aの下面側後部寄りに、ユーザが片手で把持して操作することが可能なグリップ部11bを一体的に有して構成されている。前記本体ケース11(主部11a)の先端面部には、矩形状をなし透光性を有する読取口11cが設けられている。また、前記グリップ部11bの上端部には、読取指示用のトリガスイッチ12が設けられている。
【0017】
前記本体ケース11(主部11a)内の先端側部分には、商品に付されたラベルやカタログ等の読取対象R(図6参照)に記録された情報コードQ(例えば図4に示すQRコードに代表される二次元コード)を読取るための読取機構が設けられる。図6にも示すように、この読取機構は、撮像素子たる受光センサ13、例えば複数枚の結像レンズから構成される結像光学部14、照明部15(図6にのみ図示)、読取口11cを通して読取対象Rにマーカ光Mを照射する後述するマーカ光照射手段としてのマーカ光照射部16などから構成されている。
【0018】
そのうち受光センサ13は、例えばCCDエリアセンサからなり、本体ケース11(主部11a)内の中央部に前記読取口11cを向いて配設されている。前記結像光学部14は、鏡筒内に複数枚のレンズ14a,14b(図4参照)を配設して構成され、前記受光センサ13の前方に配設されている。このとき、結像光学部14(レンズ14a,14b)の光軸は、前記読取口11c面の中心を直交するように延びており、前記受光センサ13は光軸の延長線上にその中心を一致させるように配設されている。また、後述するように、結像光学部14は、焦点可変機構を備えて構成されている。
【0019】
前記照明部15は、詳しく図示はしないが、照明光源となるLEDと、このLEDの前部に配置され光を集光及び拡散する照明用レンズとを、前記結像光学部14の周囲部(上部を除く)に、前記読取口11cに向けて複数組配設して構成されている。これにて、照明部15によって読取口11cを通して読取対象Rに記された情報コードQに照明光が照射され、情報コードQからの反射光が読取口11cを通して入射され、前記結像光学部14を介して受光センサ13上に結像され、以て、情報コードQの画像が取込まれる(撮像される)ようになっているのである。
【0020】
ここで、前記結像光学部14の焦点可変機構について簡単に述べておく。上述のように、鏡筒内に複数枚のレンズ14a,14bを備えて構成されているのであるが、図4に示すように、そのうち例えば2個のレンズ14a,14bは、光軸方向(前後方向)に沿って移動可能に設けられている。そして、各レンズ14a,14bは、図示しないモータ等のアクチュエータによって夫々独立して移動(位置変位)可能とされ、この場合、結像光学部14の焦点距離(及び画角)が3段階で調整可能とされている。
【0021】
即ち、図4(a)に示すように、2個のレンズ14a,14bが共に前方側(受光センサ13から離れる方向)に位置された状態では、読取対象Rまでの適切な読取距離(合焦位置)が遠距離となる(テレ)。図4(b)に示すように、レンズ14aが後方側に位置され、レンズ14bが中間部に位置された状態では、読取対象Rまでの適切な読取距離(合焦位置)が中間的な距離となる(ミドル)。図4(c)に示すように、レンズ14a,14bが共に後方側に位置された状態では、読取対象Rまでの適切な読取距離(合焦位置)が近距離となる(ワイド)。
【0022】
そして、このような結像光学部14の焦点距離(及び画角)の調整は、後述する制御回路26によりなされるようになっている。このとき、本実施例では、主部11aには、本体ケース11から前記読取対象Rまでの距離を測定する例えば赤外線方式等の測距センサ17(図6にのみ図示)が設けられている。この測距センサ17の検出信号は制御回路26に入力され、制御回路26は、検出距離に応じて、2本の信号線18によって、焦点可変機構を制御するようになっている。
【0023】
この場合、図5に示すように、測距センサ17の検出距離が比較的遠方の場合には、制御回路26は2本の信号線18に共にハイレベルの信号を出力し、これにて、2個のレンズ14a,14bが図4(a)に示す状態とされる。測距センサ17の検出距離が中間的な距離の場合には、制御回路26は一方の信号線18にハイレベル、他方の信号線ロウレベルの信号を出力し、これにて、2個のレンズ14a,14bが図4(b)に示す状態とされる。測距センサ17の検出距離が近距離の場合には、制御回路26は2本の信号線18に共にロウレベルの信号を出力し、これにて、2個のレンズ14a,14bが図4(c)に示す状態とされるのである。
【0024】
図7に示すように、本体ケース11(主部11a)内の後部側には、図6に示す各回路等が実装されている回路基板19が設けられている。さらに、図6のみに図示するように、本体ケース11の外面部(主部11aの上面部)には、ユーザが各種入力指示を行うための操作スイッチ20、報知用のLED21、液晶表示器22などが設けられている。本体ケース11内には報知用のブザー23や外部との通信を行うための通信インタフェイス24、駆動電源となる二次電池25なども設けられている。
【0025】
図6は、本実施例の二次元コード読取装置の電気的構成を概略的に示しており、前記回路基板19には、マイコンを主体として構成され、全体の制御やデコード処理等を行う制御回路26が設けられている。この制御回路26には、前記トリガスイッチ12、測距センサ17及び操作スイッチ20からの信号が入力されるようになっていると共に、制御回路26は、前記受光センサ13、結像光学部14の焦点可変機構、照明部15、マーカ光照射部16並びに後述するマーカ光調整機構を制御するようになっており、以て、読取対象Rに記された情報コードQの画像の取込み動作を実行するようになっている。また、この制御回路26は、前記LED21、ブザー23、液晶表示器22を制御し、通信インタフェイス24を介して外部(管理コンピュータ等)とのデータ通信を実行する。
【0026】
さらに、前記回路基板19には、増幅回路27、A/D変換回路28、メモリ29、特定比検出回路30、同期信号発生回路31、アドレス発生回路32などが実装され、これらも前記制御回路26により制御されるようになっている。これにて、受光センサ13による撮像信号が、増幅回路27にて増幅され、A/D変換回路28にてデジタル信号に変換されて画像データとしてメモリ29に記憶される。またこのとき、特定比検出回路30にて画像データ中の特定パターンが検出されるようになっている。前記受光センサ13及び特定比検出回路30、アドレス発生回路32には、同期信号発生回路31から同期信号が与えられるようになっている。
【0027】
さて、前記マーカ光照射部16について、図1ないし図3を参照しながら述べる。このマーカ光照射部16は、前記読取対象Rに対して読取位置を示すための所定のパターンのマーカ光Mを照射するものである。尚、図3に示すように、本実施例におけるマーカ光Mのパターン(形状)は、従来例(図12参照)で述べたと同様に、受光センサ13の読取視野V(やや横長の長方形をなす領域)の4つのコーナー部に対応した4個のL字状のパターンと、読取視野Vの中心部及び左右両端部を示す3個の十字状のパターンとからなる線状の光の組合せから構成される。
【0028】
このマーカ光照射部16は、図1、図2に示すように、光源としての複数個のLED33と、その前方に設けられたマーカ結像用レンズ34とを備えて構成され、図3に示すように、前記結像光学部14の上部に位置して設けられている。また、詳しい図示及び説明は省略するが、前記マーカ結像用レンズ34は、例えば複数個のレンズを組合せて構成されており、前記LED33から発せられた光を集光し、所定パターンのマーカ光Mとして出射し、読取対象R上に結像させるように構成されている。尚、このマーカ光照射部16は、照射されるマーカ光Mの光軸が、前記結像光学部14(受光センサ13)の光軸に対して、やや斜め下向きとなるように設けられている。
【0029】
そして、このマーカ光照射部16には、前記結像光学部14の視野の大きさに応じて、読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさを変更するマーカ光可変手段として機能するマーカ光調整機構35が設けられている。本実施例では、マーカ光調整機構35は、前記光源としてのLED33を、電磁石を駆動源として直線的に移動させることにより、マーカ結像用レンズ34との間隔を変更するように構成されている。
【0030】
即ち、図1、図2に示すように、前記LED33は、照明基板36に複数個例えば3個が並んで実装されている。このとき、前記照明基板36は、図示しないガイド部によって本体ケース11に対して前後方向(図2で左右方向)移動可能に設けられていると共に、図示しないコイルばねによって、通常時(外部から力が作用していない状態)には、図1(b)及び図2に示す中間位置に位置されるようになっている。そして、図2に示すように、この照明基板36の下面側には、永久磁石37が取付けられている。一方、本体ケース11(固定側)には、前記永久磁石37の後方に位置して第1のコイル38が設けられており、永久磁石37の前方に位置して第2のコイル39が設けられている。これらコイル38,39には、夫々ヨーク40,41が設けられている。
【0031】
これにて、第1のコイル38に通電がなされると、永久磁石37が、コイルばねのばね力に抗して第1のコイルに38に吸引され、もって、図1(a)に示すように、照明基板36ひいてはLED33が後方に変位してマーカ結像用レンズ34から離れた離間位置に位置されるようになっている。このときには、図3(a)に示すように、マーカ光照射部16から出射されるマーカ光Mが比較的遠方に結像し、読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさが比較的小さくなる。
【0032】
これに対し、第2のコイル39に通電がなされると、永久磁石37が、コイルばねのばね力に抗して第2のコイルに39に吸引され、もって、図1(c)に示すように、照明基板36ひいてはLED33が前方に変位してマーカ結像用レンズ34に接近した近接位置に位置されるようになっている。このときには、図3(c)に示すように、マーカ光照射部16から出射されるマーカ光Mが比較的近距離に結像し、読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさが比較的大きくなる。
【0033】
さらに、上記のように、両コイル38,39の非通電状態では、コイルばねのばね力によって、図1(b)及び図2に示すように、照明基板36ひいてはLED33が中間位置に位置されるようになっている。このときには、図3(b)に示すように、マーカ光照射部16から出射されるマーカ光Mが中間的な距離で結像し、読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさも中間的なものとなる。
【0034】
上記コイル38,39に対する通断電の制御(及びLED33の点灯制御)は、やはり前記制御回路26により行われる。このとき、次の作用説明でも述べるように、制御回路26は、そのソフトウエア構成(制御プログラムの実行)により、例えばトリガスイッチ12がオン操作されると、前記測距センサ17により読取対象Rまでの距離を検出し、その検出距離に応じて、前記焦点可変機構を制御して結像光学部14の焦点距離(画角)を変更すると共に、それに合せてマーカ光調整機構35(コイル38,39)を制御して適切なマーカ光Mを照射させるようになっている。
【0035】
次に、上記構成の作用について、図8も参照して述べる。今、ユーザが、二次元コード読取装置を用いて、読取対象Rに記されたQRコード等の情報コードQの読取り作業を行うにあたっては、本体ケース11の読取口11cを読取対象Rに向け、トリガスイッチ12をオン操作する。すると、二次元コード読取装置の制御回路26は、図8のフローチャートに示す手順で情報コードQの読取り処理を実行する。
【0036】
即ち、トリガスイッチ12がオン操作されると、まずステップS1にて、測距センサ17による読取対象Rまでの距離の検出が行われ、その距離に基づいて結像光学部14における焦点位置(3段階のいずれか)が決定される。次のステップS2では、焦点可変機構が制御され、結像光学部14(レンズ14a,14b)が決定された所定位置に移動される。
【0037】
ステップS3では、上記検出距離に基づいてマーカ光Mの照射距離(マーカ光Mの大きさ)が決定される。次のステップS4にて、マーカ光調整機構35(コイル38,39)が制御され、決定された位置にLED33(照明基板36)が移動されると共に、LED33が点灯されてマーカ光Mが読取対象Rに照射される。ここで、ユーザは、マーカ光Mが示す読取視野V内に、情報コードQ全体が入る(情報コードQが読取視野Vの中央部に位置する)ように、本体ケース11の位置合せを行う。
【0038】
このとき、図3に示すように、読取対象Rが比較的遠方に位置している場合(a)、読取対象Rが中間的な距離に位置している場合(b)、読取対象Rが比較的近く位置している場合(c)の各々において、結像光学部14の焦点距離が変動して画角(視野V)の大きさも変動するが、マーカ光調整機構35によって、その視野Vに応じた大きさのマーカ光Mが照射されるようになる。つまり、読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさを常に実際の読取視野Vに対応したものとすることができ、正しい読取位置(読取視野)をユーザに知らせることが可能となるのである。
【0039】
次いで、ステップS5では、読取機構(受光センサ13)による画像取込み動作(露光)が実行される。この露光時には、マーカ光M(LED33)が消灯されると共に、照明部15により照明光が点灯され、読取対象Rに照明光が照射されてその反射光(情報コードQの撮影画像)が結像光学部41を介して受光センサ13に取込まれることになる。また、上記ステップS2にて、結像光学部14が、読取対象Rまでの離間距離に応じた適切な焦点距離(画角)に調整されているので、読取対象Rが近距離から遠距離までどの距離にあっても、画像の取込みが良好に行われるようになる。
【0040】
ステップS6では、その画像データから情報コードQのデコード処理が実行される。ステップS7では、デコードが成功したかどうかが判断され、デコードに成功した場合には(Yes)、例えばLED21の点灯などによりOKの報知がなされ、処理が終了する。デコードに失敗した場合には(ステップS7にてNo)、例えばブザー23によるNGの報知がなされた上で、ステップS1からの処理が繰返される。
【0041】
このように本実施例によれば、結像光学部14に焦点可変機構を設けたことにより、読取対象Rまでの読取可能距離の範囲を広げることができるものにあって、結像光学部14の視野Vの大きさに応じて、マーカ光照射部16により読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさを変更するマーカ光調整機構35を設けたので、読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさを実際の読取視野Vに対応したものとすることができ、ひいては正しい読取位置(読取視野V)をユーザに知らせることが可能となるという優れた効果を奏する。また、本実施例では、マーカ光調整機構35を、光源(LED33)をマーカ結像用レンズ34に対して直線的に移動させるように構成したので、簡単な構成で済ませることができるものである。
【0042】
<2>第2、第3の実施例、その他の実施例
図9及び図10は、本発明の第2の実施例を示している。尚、以下に述べる実施例においては、上記第1の実施例と同一部分については、同一符号を付して新たな図示及び詳しい説明を省略し、以下、異なる点についてのみ説明することとする。
【0043】
この第2の実施例が上記第1の実施例と異なる点は、マーカ光照射手段たるマーカ光照射部51の構成、及び、マーカ光可変手段としてのマーカ光調整機構52の構成にある。即ち、本実施例のマーカ光照射部51は、図10に示すように、光源としてのレーザダイオード53と、その前部に配置されるパターン形成部材としての回折格子(ホログラム)プレート54とを備えて構成されている。このとき、本実施例では、複数(この場合3種類)の異なる形状(パターン)のマーカ光M1,M2,M3(図9参照)を形成するための、複数個(3個)の回折格子プレート54(A),54(B),54(C)を備えている。
【0044】
そして、マーカ光調整機構52は、読取対象Rまでの距離に応じて調整される結像光学部14の視野の大きさに応じて、前記回折格子プレート54(A),54(B),54(C)のいずれかを選択的に使用位置(レーザダイオード53の前部の位置)に移動させることにより、読取対象Rに照射(投影)されるマーカ光の形状(及び大きさ)を変更するようになっている。
【0045】
具体的には、図10に示すように、3個の回折格子プレート54(A),54(B),54(C)は、リング状(車状)の回転移動部材55の外周部に、例えば120度間隔で並んで取付けられている。そして、その回転移動部材55はステッピングモータ56によって回転移動され、所定位置(各回折格子プレート54がレーザダイオード53の前部(使用位置)に配置される3つの位置のいずれか)に停止されるようになっている。前記ステッピングモータ56は、制御回路26により制御される。
【0046】
この実施例においては、読取対象Rが比較的遠方に位置している場合には、例えば回折格子プレート54(A)が使用位置に移動される。これにより、図9(a)に示すように、マーカ光照射部16から出射され読取対象Rに照射されるマーカ光M1は、受光センサ13の読取視野V(やや横長の長方形をなす領域)の4つのコーナー部に対応した4個のL字状のパターンと、読取視野Vの中心部及び左右両端部を示す3個の十字状のパターンと、左下部の「T」の文字のパターンとを有し、また、読取視野Vの大きさ(画角)に応じた大きさとされている。「T」の文字のパターンは、結像光学部14の合焦位置が比較的遠方(テレ)にあることを表している。
【0047】
読取対象Rが中間的な距離に位置している場合には、例えば回折格子プレート54(B)が使用位置に移動される。これにより、図9(b)に示すように、マーカ光照射部16から出射され読取対象Rに照射されるマーカ光M2は、受光センサ13の読取視野Vの大きさに対応したいわば「田」の字をなすパターンと、左下部の「M」の文字のパターンとを有して構成されている。「M」の文字のパターンは、結像光学部14の合焦位置が中間的な位置(ミドル)にあることを表している。
【0048】
読取対象Rが比較的近い距離に位置している場合には、例えば回折格子プレート54(C)が使用位置に移動される。これにより、図9(c)に示すように、マーカ光照射部16から出射され読取対象Rに照射されるマーカ光M3は、受光センサ13の読取視野Vの大きさに対応した矩形枠状のパターンと、読取視野Vの中心部を示す十字状のパターンと、左下部の「W」の文字のパターンとを有して構成されている。「W」の文字のパターンは、結像光学部14の合焦位置が比較的近距離で画角が大きい(ワイド)ことを表している。
【0049】
従って、この第2の実施例によっても、上記第1の実施例と同様に、結像光学部14に焦点可変機構を設けて読取対象Rまでの読取可能距離の範囲を広げることができるものにあって、結像光学部14の視野Vの大きさに応じて、マーカ光照射部16により読取対象Rに照射されるマーカ光のパターン(形状及び大きさ)が変更されるので、読取対象Rに照射されるマーカ光を読取視野Vに対応したものとすることができ、ひいては正しい読取位置(読取視野V)をユーザに知らせることが可能となるという優れた効果を得ることができる。特に、結像光学部14の合焦位置を表す文字のパターンをマーカ光に付加したことにより、ユーザにとって一層判りやすいものとすることができる。
【0050】
図11は、本発明の第3の実施例を示すものである。この第3の実施例においては、マーカ光照射手段たるマーカ光照射部61は、光源としてのレーザダイオード53と、その前部に配置されるパターン形成部材としての3個の回折格子(ホログラム)プレート54(A),54(B),54(C)とを備えて構成されている。マーカ光可変手段としてのマーカ光調整機構62は、読取対象Rまでの距離に応じて調整される結像光学部14の視野の大きさに応じて、電磁石を用いた直線移動により、前記回折格子プレート54(A),54(B),54(C)のいずれかを選択的に使用位置(レーザダイオード53の前部の位置)に移動させるようになっている。
【0051】
即ち、3個の回折格子プレート54(A),54(B),54(C)は、左右方向に横長な直線移動部材63に左右方向に並んで取付けられている。この直線移動部材63は、ガイドレール64に沿って左右方向に直線移動自在に設けられている。また、この直線移動部材63には、上下の辺部に位置して、永久磁石65,65が取付けられている。そして、直線移動部材63の上下部には、夫々複数個のコイル66が横方向に直線的に並べて設けられている。前記各コイル66は、制御回路26からの指令信号に基づいて駆動装置67によって通電制御がなされるようになっている。
【0052】
これにて、直線移動部材63は、コイル66への通電に伴う永久磁石65との間での磁気吸引力により直線移動され、所定位置(各回折格子プレート54がレーザダイオード53の前部(使用位置)に配置される3つの位置のいずれか)に停止されるようになっている。この場合も、上記第2の実施例と同様に、読取対象Rまでの距離(結像光学部14の合焦位置)に応じて、形状(及び大きさ)が相違するマーカ光M1,M2,M3が選択的に読取対象Rに照射(投影)されるようになっている。従って、この第3の実施例によっても、読取対象Rに照射されるマーカ光を読取視野Vに対応したものとすることができ、ひいては正しい読取位置(読取視野V)をユーザに知らせることが可能となる等の効果を得ることができる。
【0053】
尚、上記した各実施例では、1つのマーカ光照射部において、照射されるマーカ光の大きさや形状を変更するように構成したが、マーカ光照射手段を複数設け(例えばLEDを光源としたものとレーザダイオードを光源としたもの等)、それらを選択的に動作させることにより、照射されるマーカ光の大きさや形状を変更することも可能である。また、上記各実施例では、結像光学部の焦点距離(画角)や、マーカ光の大きさ(形状)を、夫々3段階に変更可能としたが、2段階或いは4段階以上で変更したり、さらには、ズームレンズのように無段階で(連続的に)変更するように構成することもできる。
【0054】
そして、上記各実施例では、測距センサ17を設けて読取対象Rまでの距離を測定し、その距離に応じて自動で結像光学部の焦点距離を調整するようにしたが、測距センサ以外の方法例えば受光センサ13によって撮像された画像に基づいて距離を判定するようにしたり、あるいは、読取距離をユーザが手動設定(例えばスイッチ操作)することに基づいて、結像光学部の焦点距離(画角)及びマーカ光の大きさや形状を変更するように構成しても良い。
【0055】
また、マーカ光照射手段の構成としても、様々な変形例が考えられ、パターン形成部材としてスリット板を採用することも可能である。上記第1の実施例では、光源側を移動させるようにしたが、パターン形成部材(マーカ結像用レンズ)側を移動させるようにしたり、双方を移動させるように構成したりすることもできる。移動手段としても、モータや電磁石に限定されず、圧電素子を用いるなど他の駆動源を採用することも可能である。上記第2及び第3の実施例では、「T」,「M」,「W」の文字のパターンをマーカ光に付加するようにしたが、これら文字パターンは必要に応じて設ければ良い。
【0056】
その他、本発明は上記し且つ図面に示した各実施例に限定されるものではなく、例えば光学情報読取装置の構成としても、ガンタイプにものに限らず、ハンディタイプのもの等であっても良く、マーカ光Mのパターン(形状)についても、読取視野Vの4つの角部及び中心を示す点状のものであっても良いなど、様々な変形が考えられ、さらには、読取る情報コードとしても、QRコードに限らず、他の二次元コードや、バーコード等の一次元コードであっても良いなど、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施例を示すもので、マーカ光調整機構における光源の3つの位置とマーカ光の大きさとの関係を示す図
【図2】マーカ光調整機構の構成を概略的に示す側面図
【図3】結像光学部の読取視野と読取対象に照射されるマーカ光との関係を、遠距離(a)、中間(b)、近距離(c)に関して夫々示す図
【図4】結像光学部の焦点可変機構におけるレンズの位置と適切な読取距離との関係を概略的に示す側面図
【図5】焦点可変機構の2本の信号線の信号パターンとレンズ状態との関係を示す図
【図6】二次元コード読取装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図7】二次元コード読取装置の構成を概略的に示す縦断側面図
【図8】制御回路が実行する情報コードの読取時の処理手順を示すフローチャート
【図9】本発明の第2の実施例を示すもので、図3相当図
【図10】マーカ光照射部及びマーカ光調整機構の構成を概略的に示す平面図(a)及び側面図(b)
【図11】本発明の第3の実施例を示すもので、マーカ光照射部及びマーカ光調整機構の構成を概略的に示す正面図
【図12】従来例を示すもので、結像光学部の読取視野と読取対象に照射されるマーカ光との関係を示す図
【符号の説明】
【0058】
図面中、11は本体ケース、11cは読取口、13は受光センサ、14は結像光学部、14a,14bはレンズ、15は照明部、16,51,61はマーカ光照射部(マーカ光照射手段)、17は測距センサ、26は制御回路、33はLED(光源)、34はマーカ結像用レンズ、35,52,62はマーカ光調整機構(マーカ光可変手段)、53はレーザダイオード(光源)、54は回折格子プレート(パターン形成部材)、55は回転移動部材、56はモータ、63は直線移動部材、Rは読取対象、M,M1〜M3はマーカ光、Vは読取視野、Qは情報コードを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取対象に記された情報コードを光学的に読取るための結像光学部及び受光センサを備えると共に、前記読取対象に対し読取位置を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えてなる光学情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードや二次元コード等の情報コードを読取るためのハンディタイプの光学情報読取装置においては、近年、使い勝手の良さから、読取対象から離れた位置から読取りができるものが供されてきている。このものは、例えば、手持ち可能に構成された本体ケース内に、CCDエリアセンサなどの撮像素子、結像レンズを有する結像光学部、LEDなどの照明装置等を備えて構成される。そして、読取時の読取対象(情報コード)と装置(読取口)との間の位置合せのために、レーザダイオードやLEDを用いて、読取対象に対して読取位置(撮像素子の視野やその視野の中心位置)を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えるものが一般的となってきている。
【0003】
この種のマーカ光照射手段として、視認性の良いマーカ光を照射できるレーザダイオードを光源として用い、また、フォログラム画像により様々なデザインのマーカ光を照射するものが知られている(例えば特許文献1参照)。このものは、図12示すように、CCDエリアセンサ1及び結像光学部2の近傍(上部)に、マーカ光照射部3が配置される。詳しく図示はしないが、マーカ光照射部3は、レーザダイオード、その先方に配置されたコリメートレンズ、その先方に配置された回折格子プレート等から構成される。
【0004】
これにて、レーザダイオードから発せられた光が、コリメートレンズにより集光されて回折格子プレートのフォログラムパターン面に入射され、1次、2次の回折光が所定パターンのマーカ光Mとして読取対象に照射されるのである。尚、この場合、マーカ光Mは、例えばCCDエリアセンサ1の読取視野Vの4つのコーナー部に対応した4個のL字状のパターンと、読取視野Vの中心部と左右両端部とを示す3個の十字状のパターンとからなる線状の光の組合せから構成される。
【特許文献1】米国特許第6347163号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような光学情報読取装置にあっては、近年では、本体ケースから読取対象Rまでの読取可能距離の範囲を広げるために、上記結像光学部2に可変焦点レンズ(又はズームレンズ)を採用して焦点距離を可変とすることが考えられている。しかし、そのような結像光学部2に可変焦点レンズを採用したものの場合には、焦点距離の調整に応じて読取りの画角が順次変動するので、仮に上記したマーカ光照射部3をそのまま適用すると、読取対象に照射されたマーカ光Mが実際の読取位置(読取視野V)に対応しなくなる不具合の発生が予測される。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、マーカ光照射手段を備えるものにあって、結像光学部の焦点距離を可変とした場合でも、実際の読取視野に対応したマーカ光を照射することが可能な光学情報読取装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の光学情報読取装置は、読取対象に記された情報コードを光学的に読取るための結像光学部及び受光センサを備えると共に、前記読取対象に対し読取位置を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えてなるものにあって、前記結像光学部の焦点距離又は画角を変更する焦点可変機構を設けると共に、前記結像光学部の視野の大きさに応じて、前記マーカ光照射手段により前記読取対象に照射されるマーカ光の大きさを変更するマーカ光可変手段を設けたところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0008】
これによれば、結像光学部の焦点距離又は画角を変更する焦点可変機構を設けたことにより、読取対象までの読取可能距離の範囲を広げることができる。そして、結像光学部の焦点距離の調整に応じて読取りの画角が順次変動することになるが、その結像光学部の視野の大きさに応じて、マーカ光可変手段により、読取対象に照射されるマーカ光の大きさが変更されるようになる。従って、結像光学部の焦点距離を可変とした場合でも、読取対象に照射されるマーカ光の大きさを実際の読取視野に対応したものとすることができ、正しい読取位置(読取視野)をユーザに知らせることが可能となる。
【0009】
本発明の第2の光学情報読取装置は、読取対象に記された情報コードを光学的に読取るための結像光学部及び受光センサを備えると共に、前記読取対象に対し読取位置を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えてなるものにあって、前記結像光学部の焦点距離又は画角を変更する焦点可変機構を設けると共に、前記結像光学部の視野の大きさに応じて、前記マーカ光照射手段により前記読取対象に照射されるマーカ光の形状を変更するマーカ光可変手段を設けたところに特徴を有する(請求項2の発明)。
【0010】
これによれば、結像光学部の焦点距離又は画角を変更する焦点可変機構を設けたことにより、読取対象までの読取可能距離の範囲を広げることができる。そして、結像光学部の焦点距離の調整に応じて読取りの画角が順次変動することになるが、その結像光学部の視野の大きさに応じて、マーカ光可変手段により、読取対象に照射されるマーカ光の形状が変更されるようになる。従って、結像光学部の焦点距離を可変とした場合でも、読取対象に照射されるマーカ光の形状を読取視野に対応したものとすることができ、正しい読取位置(読取視野)をユーザに知らせることが可能となる。
【0011】
この場合、複数種類のマーカ光照射手段を設け、マーカ光可変手段を、それらマーカ光照射手段を選択的に動作させるように構成することができる(請求項3の発明)。これによれば、複数種類のマーカ光照射手段を選択的に動作させることにより、読取対象に照射されるマーカ光の大きさや形状を簡単な制御で変更することができる。
【0012】
あるいは、マーカ光照射手段を、光源と、複数の異なるパターンのマーカ光を形成するための複数のパターン形成部材とを設けて構成し、マーカ光可変手段を、それらパターン形成部材のいずれかを選択的に使用位置に移動させるように構成することができる(請求項4の発明)。複数のパターン形成部材を移動させて選択的に使用位置に位置させることによって、マーカ光の大きさや形状の変更を容易に行なうことができる。
【0013】
より具体的には、複数のパターン形成部材を回転移動部材に所定間隔で並んで設け、マーカ光可変手段を、モータによりその回転移動部材を回転移動させることによって、いずれかのパターン形成部材を使用位置に移動させるように構成することができる(請求項5の発明)。又は、複数のパターン形成部材を直線移動部材に移動方向に並んで設け、マーカ光可変手段を、モータ又は電磁石によりその直線移動部材を直線移動させることによって、いずれかのパターン形成部材を使用位置に移動させるように構成することができる(請求項6の発明)。いずれも、比較的簡単な構成でマーカ光可変手段を実現することができる。尚、上記パターン形成部材としては、回折格子(ホログラム)、スリット板、半円柱状レンズ等を採用することができる。
【0014】
また、読取対象に照射されるマーカ光の大きさを変更する場合には、マーカ光可変手段を、マーカ光照射手段を構成している光源及びマーカ結像用レンズの少なくとも一方を移動させることにより、それらの間隔を変更するように構成することができる(請求項7の発明)。更にこのとき、マーカ光可変手段を、モータ又は電磁石により光源及びマーカ結像用レンズの少なくとも一方を直線移動させるように構成することができる(請求項8の発明)。比較的簡単な構成で、読取対象に照射されるマーカ光の大きさを変更することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<1>第1の実施例
以下、本発明を手持ち式(ガンタイプ)の二次元コード読取装置に適用した第1の実施例について、図1乃至図8を参照しながら説明する。まず、図6及び図7を参照して、本実施例に係る光学情報読取装置たる二次元コード読取装置の全体構成について述べる。
【0016】
図7に示すように、二次元コード読取装置の本体ケース11は、丸みを帯びた薄型のほぼ矩形箱状をなす主部11aの下面側後部寄りに、ユーザが片手で把持して操作することが可能なグリップ部11bを一体的に有して構成されている。前記本体ケース11(主部11a)の先端面部には、矩形状をなし透光性を有する読取口11cが設けられている。また、前記グリップ部11bの上端部には、読取指示用のトリガスイッチ12が設けられている。
【0017】
前記本体ケース11(主部11a)内の先端側部分には、商品に付されたラベルやカタログ等の読取対象R(図6参照)に記録された情報コードQ(例えば図4に示すQRコードに代表される二次元コード)を読取るための読取機構が設けられる。図6にも示すように、この読取機構は、撮像素子たる受光センサ13、例えば複数枚の結像レンズから構成される結像光学部14、照明部15(図6にのみ図示)、読取口11cを通して読取対象Rにマーカ光Mを照射する後述するマーカ光照射手段としてのマーカ光照射部16などから構成されている。
【0018】
そのうち受光センサ13は、例えばCCDエリアセンサからなり、本体ケース11(主部11a)内の中央部に前記読取口11cを向いて配設されている。前記結像光学部14は、鏡筒内に複数枚のレンズ14a,14b(図4参照)を配設して構成され、前記受光センサ13の前方に配設されている。このとき、結像光学部14(レンズ14a,14b)の光軸は、前記読取口11c面の中心を直交するように延びており、前記受光センサ13は光軸の延長線上にその中心を一致させるように配設されている。また、後述するように、結像光学部14は、焦点可変機構を備えて構成されている。
【0019】
前記照明部15は、詳しく図示はしないが、照明光源となるLEDと、このLEDの前部に配置され光を集光及び拡散する照明用レンズとを、前記結像光学部14の周囲部(上部を除く)に、前記読取口11cに向けて複数組配設して構成されている。これにて、照明部15によって読取口11cを通して読取対象Rに記された情報コードQに照明光が照射され、情報コードQからの反射光が読取口11cを通して入射され、前記結像光学部14を介して受光センサ13上に結像され、以て、情報コードQの画像が取込まれる(撮像される)ようになっているのである。
【0020】
ここで、前記結像光学部14の焦点可変機構について簡単に述べておく。上述のように、鏡筒内に複数枚のレンズ14a,14bを備えて構成されているのであるが、図4に示すように、そのうち例えば2個のレンズ14a,14bは、光軸方向(前後方向)に沿って移動可能に設けられている。そして、各レンズ14a,14bは、図示しないモータ等のアクチュエータによって夫々独立して移動(位置変位)可能とされ、この場合、結像光学部14の焦点距離(及び画角)が3段階で調整可能とされている。
【0021】
即ち、図4(a)に示すように、2個のレンズ14a,14bが共に前方側(受光センサ13から離れる方向)に位置された状態では、読取対象Rまでの適切な読取距離(合焦位置)が遠距離となる(テレ)。図4(b)に示すように、レンズ14aが後方側に位置され、レンズ14bが中間部に位置された状態では、読取対象Rまでの適切な読取距離(合焦位置)が中間的な距離となる(ミドル)。図4(c)に示すように、レンズ14a,14bが共に後方側に位置された状態では、読取対象Rまでの適切な読取距離(合焦位置)が近距離となる(ワイド)。
【0022】
そして、このような結像光学部14の焦点距離(及び画角)の調整は、後述する制御回路26によりなされるようになっている。このとき、本実施例では、主部11aには、本体ケース11から前記読取対象Rまでの距離を測定する例えば赤外線方式等の測距センサ17(図6にのみ図示)が設けられている。この測距センサ17の検出信号は制御回路26に入力され、制御回路26は、検出距離に応じて、2本の信号線18によって、焦点可変機構を制御するようになっている。
【0023】
この場合、図5に示すように、測距センサ17の検出距離が比較的遠方の場合には、制御回路26は2本の信号線18に共にハイレベルの信号を出力し、これにて、2個のレンズ14a,14bが図4(a)に示す状態とされる。測距センサ17の検出距離が中間的な距離の場合には、制御回路26は一方の信号線18にハイレベル、他方の信号線ロウレベルの信号を出力し、これにて、2個のレンズ14a,14bが図4(b)に示す状態とされる。測距センサ17の検出距離が近距離の場合には、制御回路26は2本の信号線18に共にロウレベルの信号を出力し、これにて、2個のレンズ14a,14bが図4(c)に示す状態とされるのである。
【0024】
図7に示すように、本体ケース11(主部11a)内の後部側には、図6に示す各回路等が実装されている回路基板19が設けられている。さらに、図6のみに図示するように、本体ケース11の外面部(主部11aの上面部)には、ユーザが各種入力指示を行うための操作スイッチ20、報知用のLED21、液晶表示器22などが設けられている。本体ケース11内には報知用のブザー23や外部との通信を行うための通信インタフェイス24、駆動電源となる二次電池25なども設けられている。
【0025】
図6は、本実施例の二次元コード読取装置の電気的構成を概略的に示しており、前記回路基板19には、マイコンを主体として構成され、全体の制御やデコード処理等を行う制御回路26が設けられている。この制御回路26には、前記トリガスイッチ12、測距センサ17及び操作スイッチ20からの信号が入力されるようになっていると共に、制御回路26は、前記受光センサ13、結像光学部14の焦点可変機構、照明部15、マーカ光照射部16並びに後述するマーカ光調整機構を制御するようになっており、以て、読取対象Rに記された情報コードQの画像の取込み動作を実行するようになっている。また、この制御回路26は、前記LED21、ブザー23、液晶表示器22を制御し、通信インタフェイス24を介して外部(管理コンピュータ等)とのデータ通信を実行する。
【0026】
さらに、前記回路基板19には、増幅回路27、A/D変換回路28、メモリ29、特定比検出回路30、同期信号発生回路31、アドレス発生回路32などが実装され、これらも前記制御回路26により制御されるようになっている。これにて、受光センサ13による撮像信号が、増幅回路27にて増幅され、A/D変換回路28にてデジタル信号に変換されて画像データとしてメモリ29に記憶される。またこのとき、特定比検出回路30にて画像データ中の特定パターンが検出されるようになっている。前記受光センサ13及び特定比検出回路30、アドレス発生回路32には、同期信号発生回路31から同期信号が与えられるようになっている。
【0027】
さて、前記マーカ光照射部16について、図1ないし図3を参照しながら述べる。このマーカ光照射部16は、前記読取対象Rに対して読取位置を示すための所定のパターンのマーカ光Mを照射するものである。尚、図3に示すように、本実施例におけるマーカ光Mのパターン(形状)は、従来例(図12参照)で述べたと同様に、受光センサ13の読取視野V(やや横長の長方形をなす領域)の4つのコーナー部に対応した4個のL字状のパターンと、読取視野Vの中心部及び左右両端部を示す3個の十字状のパターンとからなる線状の光の組合せから構成される。
【0028】
このマーカ光照射部16は、図1、図2に示すように、光源としての複数個のLED33と、その前方に設けられたマーカ結像用レンズ34とを備えて構成され、図3に示すように、前記結像光学部14の上部に位置して設けられている。また、詳しい図示及び説明は省略するが、前記マーカ結像用レンズ34は、例えば複数個のレンズを組合せて構成されており、前記LED33から発せられた光を集光し、所定パターンのマーカ光Mとして出射し、読取対象R上に結像させるように構成されている。尚、このマーカ光照射部16は、照射されるマーカ光Mの光軸が、前記結像光学部14(受光センサ13)の光軸に対して、やや斜め下向きとなるように設けられている。
【0029】
そして、このマーカ光照射部16には、前記結像光学部14の視野の大きさに応じて、読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさを変更するマーカ光可変手段として機能するマーカ光調整機構35が設けられている。本実施例では、マーカ光調整機構35は、前記光源としてのLED33を、電磁石を駆動源として直線的に移動させることにより、マーカ結像用レンズ34との間隔を変更するように構成されている。
【0030】
即ち、図1、図2に示すように、前記LED33は、照明基板36に複数個例えば3個が並んで実装されている。このとき、前記照明基板36は、図示しないガイド部によって本体ケース11に対して前後方向(図2で左右方向)移動可能に設けられていると共に、図示しないコイルばねによって、通常時(外部から力が作用していない状態)には、図1(b)及び図2に示す中間位置に位置されるようになっている。そして、図2に示すように、この照明基板36の下面側には、永久磁石37が取付けられている。一方、本体ケース11(固定側)には、前記永久磁石37の後方に位置して第1のコイル38が設けられており、永久磁石37の前方に位置して第2のコイル39が設けられている。これらコイル38,39には、夫々ヨーク40,41が設けられている。
【0031】
これにて、第1のコイル38に通電がなされると、永久磁石37が、コイルばねのばね力に抗して第1のコイルに38に吸引され、もって、図1(a)に示すように、照明基板36ひいてはLED33が後方に変位してマーカ結像用レンズ34から離れた離間位置に位置されるようになっている。このときには、図3(a)に示すように、マーカ光照射部16から出射されるマーカ光Mが比較的遠方に結像し、読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさが比較的小さくなる。
【0032】
これに対し、第2のコイル39に通電がなされると、永久磁石37が、コイルばねのばね力に抗して第2のコイルに39に吸引され、もって、図1(c)に示すように、照明基板36ひいてはLED33が前方に変位してマーカ結像用レンズ34に接近した近接位置に位置されるようになっている。このときには、図3(c)に示すように、マーカ光照射部16から出射されるマーカ光Mが比較的近距離に結像し、読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさが比較的大きくなる。
【0033】
さらに、上記のように、両コイル38,39の非通電状態では、コイルばねのばね力によって、図1(b)及び図2に示すように、照明基板36ひいてはLED33が中間位置に位置されるようになっている。このときには、図3(b)に示すように、マーカ光照射部16から出射されるマーカ光Mが中間的な距離で結像し、読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさも中間的なものとなる。
【0034】
上記コイル38,39に対する通断電の制御(及びLED33の点灯制御)は、やはり前記制御回路26により行われる。このとき、次の作用説明でも述べるように、制御回路26は、そのソフトウエア構成(制御プログラムの実行)により、例えばトリガスイッチ12がオン操作されると、前記測距センサ17により読取対象Rまでの距離を検出し、その検出距離に応じて、前記焦点可変機構を制御して結像光学部14の焦点距離(画角)を変更すると共に、それに合せてマーカ光調整機構35(コイル38,39)を制御して適切なマーカ光Mを照射させるようになっている。
【0035】
次に、上記構成の作用について、図8も参照して述べる。今、ユーザが、二次元コード読取装置を用いて、読取対象Rに記されたQRコード等の情報コードQの読取り作業を行うにあたっては、本体ケース11の読取口11cを読取対象Rに向け、トリガスイッチ12をオン操作する。すると、二次元コード読取装置の制御回路26は、図8のフローチャートに示す手順で情報コードQの読取り処理を実行する。
【0036】
即ち、トリガスイッチ12がオン操作されると、まずステップS1にて、測距センサ17による読取対象Rまでの距離の検出が行われ、その距離に基づいて結像光学部14における焦点位置(3段階のいずれか)が決定される。次のステップS2では、焦点可変機構が制御され、結像光学部14(レンズ14a,14b)が決定された所定位置に移動される。
【0037】
ステップS3では、上記検出距離に基づいてマーカ光Mの照射距離(マーカ光Mの大きさ)が決定される。次のステップS4にて、マーカ光調整機構35(コイル38,39)が制御され、決定された位置にLED33(照明基板36)が移動されると共に、LED33が点灯されてマーカ光Mが読取対象Rに照射される。ここで、ユーザは、マーカ光Mが示す読取視野V内に、情報コードQ全体が入る(情報コードQが読取視野Vの中央部に位置する)ように、本体ケース11の位置合せを行う。
【0038】
このとき、図3に示すように、読取対象Rが比較的遠方に位置している場合(a)、読取対象Rが中間的な距離に位置している場合(b)、読取対象Rが比較的近く位置している場合(c)の各々において、結像光学部14の焦点距離が変動して画角(視野V)の大きさも変動するが、マーカ光調整機構35によって、その視野Vに応じた大きさのマーカ光Mが照射されるようになる。つまり、読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさを常に実際の読取視野Vに対応したものとすることができ、正しい読取位置(読取視野)をユーザに知らせることが可能となるのである。
【0039】
次いで、ステップS5では、読取機構(受光センサ13)による画像取込み動作(露光)が実行される。この露光時には、マーカ光M(LED33)が消灯されると共に、照明部15により照明光が点灯され、読取対象Rに照明光が照射されてその反射光(情報コードQの撮影画像)が結像光学部41を介して受光センサ13に取込まれることになる。また、上記ステップS2にて、結像光学部14が、読取対象Rまでの離間距離に応じた適切な焦点距離(画角)に調整されているので、読取対象Rが近距離から遠距離までどの距離にあっても、画像の取込みが良好に行われるようになる。
【0040】
ステップS6では、その画像データから情報コードQのデコード処理が実行される。ステップS7では、デコードが成功したかどうかが判断され、デコードに成功した場合には(Yes)、例えばLED21の点灯などによりOKの報知がなされ、処理が終了する。デコードに失敗した場合には(ステップS7にてNo)、例えばブザー23によるNGの報知がなされた上で、ステップS1からの処理が繰返される。
【0041】
このように本実施例によれば、結像光学部14に焦点可変機構を設けたことにより、読取対象Rまでの読取可能距離の範囲を広げることができるものにあって、結像光学部14の視野Vの大きさに応じて、マーカ光照射部16により読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさを変更するマーカ光調整機構35を設けたので、読取対象Rに照射されるマーカ光Mの大きさを実際の読取視野Vに対応したものとすることができ、ひいては正しい読取位置(読取視野V)をユーザに知らせることが可能となるという優れた効果を奏する。また、本実施例では、マーカ光調整機構35を、光源(LED33)をマーカ結像用レンズ34に対して直線的に移動させるように構成したので、簡単な構成で済ませることができるものである。
【0042】
<2>第2、第3の実施例、その他の実施例
図9及び図10は、本発明の第2の実施例を示している。尚、以下に述べる実施例においては、上記第1の実施例と同一部分については、同一符号を付して新たな図示及び詳しい説明を省略し、以下、異なる点についてのみ説明することとする。
【0043】
この第2の実施例が上記第1の実施例と異なる点は、マーカ光照射手段たるマーカ光照射部51の構成、及び、マーカ光可変手段としてのマーカ光調整機構52の構成にある。即ち、本実施例のマーカ光照射部51は、図10に示すように、光源としてのレーザダイオード53と、その前部に配置されるパターン形成部材としての回折格子(ホログラム)プレート54とを備えて構成されている。このとき、本実施例では、複数(この場合3種類)の異なる形状(パターン)のマーカ光M1,M2,M3(図9参照)を形成するための、複数個(3個)の回折格子プレート54(A),54(B),54(C)を備えている。
【0044】
そして、マーカ光調整機構52は、読取対象Rまでの距離に応じて調整される結像光学部14の視野の大きさに応じて、前記回折格子プレート54(A),54(B),54(C)のいずれかを選択的に使用位置(レーザダイオード53の前部の位置)に移動させることにより、読取対象Rに照射(投影)されるマーカ光の形状(及び大きさ)を変更するようになっている。
【0045】
具体的には、図10に示すように、3個の回折格子プレート54(A),54(B),54(C)は、リング状(車状)の回転移動部材55の外周部に、例えば120度間隔で並んで取付けられている。そして、その回転移動部材55はステッピングモータ56によって回転移動され、所定位置(各回折格子プレート54がレーザダイオード53の前部(使用位置)に配置される3つの位置のいずれか)に停止されるようになっている。前記ステッピングモータ56は、制御回路26により制御される。
【0046】
この実施例においては、読取対象Rが比較的遠方に位置している場合には、例えば回折格子プレート54(A)が使用位置に移動される。これにより、図9(a)に示すように、マーカ光照射部16から出射され読取対象Rに照射されるマーカ光M1は、受光センサ13の読取視野V(やや横長の長方形をなす領域)の4つのコーナー部に対応した4個のL字状のパターンと、読取視野Vの中心部及び左右両端部を示す3個の十字状のパターンと、左下部の「T」の文字のパターンとを有し、また、読取視野Vの大きさ(画角)に応じた大きさとされている。「T」の文字のパターンは、結像光学部14の合焦位置が比較的遠方(テレ)にあることを表している。
【0047】
読取対象Rが中間的な距離に位置している場合には、例えば回折格子プレート54(B)が使用位置に移動される。これにより、図9(b)に示すように、マーカ光照射部16から出射され読取対象Rに照射されるマーカ光M2は、受光センサ13の読取視野Vの大きさに対応したいわば「田」の字をなすパターンと、左下部の「M」の文字のパターンとを有して構成されている。「M」の文字のパターンは、結像光学部14の合焦位置が中間的な位置(ミドル)にあることを表している。
【0048】
読取対象Rが比較的近い距離に位置している場合には、例えば回折格子プレート54(C)が使用位置に移動される。これにより、図9(c)に示すように、マーカ光照射部16から出射され読取対象Rに照射されるマーカ光M3は、受光センサ13の読取視野Vの大きさに対応した矩形枠状のパターンと、読取視野Vの中心部を示す十字状のパターンと、左下部の「W」の文字のパターンとを有して構成されている。「W」の文字のパターンは、結像光学部14の合焦位置が比較的近距離で画角が大きい(ワイド)ことを表している。
【0049】
従って、この第2の実施例によっても、上記第1の実施例と同様に、結像光学部14に焦点可変機構を設けて読取対象Rまでの読取可能距離の範囲を広げることができるものにあって、結像光学部14の視野Vの大きさに応じて、マーカ光照射部16により読取対象Rに照射されるマーカ光のパターン(形状及び大きさ)が変更されるので、読取対象Rに照射されるマーカ光を読取視野Vに対応したものとすることができ、ひいては正しい読取位置(読取視野V)をユーザに知らせることが可能となるという優れた効果を得ることができる。特に、結像光学部14の合焦位置を表す文字のパターンをマーカ光に付加したことにより、ユーザにとって一層判りやすいものとすることができる。
【0050】
図11は、本発明の第3の実施例を示すものである。この第3の実施例においては、マーカ光照射手段たるマーカ光照射部61は、光源としてのレーザダイオード53と、その前部に配置されるパターン形成部材としての3個の回折格子(ホログラム)プレート54(A),54(B),54(C)とを備えて構成されている。マーカ光可変手段としてのマーカ光調整機構62は、読取対象Rまでの距離に応じて調整される結像光学部14の視野の大きさに応じて、電磁石を用いた直線移動により、前記回折格子プレート54(A),54(B),54(C)のいずれかを選択的に使用位置(レーザダイオード53の前部の位置)に移動させるようになっている。
【0051】
即ち、3個の回折格子プレート54(A),54(B),54(C)は、左右方向に横長な直線移動部材63に左右方向に並んで取付けられている。この直線移動部材63は、ガイドレール64に沿って左右方向に直線移動自在に設けられている。また、この直線移動部材63には、上下の辺部に位置して、永久磁石65,65が取付けられている。そして、直線移動部材63の上下部には、夫々複数個のコイル66が横方向に直線的に並べて設けられている。前記各コイル66は、制御回路26からの指令信号に基づいて駆動装置67によって通電制御がなされるようになっている。
【0052】
これにて、直線移動部材63は、コイル66への通電に伴う永久磁石65との間での磁気吸引力により直線移動され、所定位置(各回折格子プレート54がレーザダイオード53の前部(使用位置)に配置される3つの位置のいずれか)に停止されるようになっている。この場合も、上記第2の実施例と同様に、読取対象Rまでの距離(結像光学部14の合焦位置)に応じて、形状(及び大きさ)が相違するマーカ光M1,M2,M3が選択的に読取対象Rに照射(投影)されるようになっている。従って、この第3の実施例によっても、読取対象Rに照射されるマーカ光を読取視野Vに対応したものとすることができ、ひいては正しい読取位置(読取視野V)をユーザに知らせることが可能となる等の効果を得ることができる。
【0053】
尚、上記した各実施例では、1つのマーカ光照射部において、照射されるマーカ光の大きさや形状を変更するように構成したが、マーカ光照射手段を複数設け(例えばLEDを光源としたものとレーザダイオードを光源としたもの等)、それらを選択的に動作させることにより、照射されるマーカ光の大きさや形状を変更することも可能である。また、上記各実施例では、結像光学部の焦点距離(画角)や、マーカ光の大きさ(形状)を、夫々3段階に変更可能としたが、2段階或いは4段階以上で変更したり、さらには、ズームレンズのように無段階で(連続的に)変更するように構成することもできる。
【0054】
そして、上記各実施例では、測距センサ17を設けて読取対象Rまでの距離を測定し、その距離に応じて自動で結像光学部の焦点距離を調整するようにしたが、測距センサ以外の方法例えば受光センサ13によって撮像された画像に基づいて距離を判定するようにしたり、あるいは、読取距離をユーザが手動設定(例えばスイッチ操作)することに基づいて、結像光学部の焦点距離(画角)及びマーカ光の大きさや形状を変更するように構成しても良い。
【0055】
また、マーカ光照射手段の構成としても、様々な変形例が考えられ、パターン形成部材としてスリット板を採用することも可能である。上記第1の実施例では、光源側を移動させるようにしたが、パターン形成部材(マーカ結像用レンズ)側を移動させるようにしたり、双方を移動させるように構成したりすることもできる。移動手段としても、モータや電磁石に限定されず、圧電素子を用いるなど他の駆動源を採用することも可能である。上記第2及び第3の実施例では、「T」,「M」,「W」の文字のパターンをマーカ光に付加するようにしたが、これら文字パターンは必要に応じて設ければ良い。
【0056】
その他、本発明は上記し且つ図面に示した各実施例に限定されるものではなく、例えば光学情報読取装置の構成としても、ガンタイプにものに限らず、ハンディタイプのもの等であっても良く、マーカ光Mのパターン(形状)についても、読取視野Vの4つの角部及び中心を示す点状のものであっても良いなど、様々な変形が考えられ、さらには、読取る情報コードとしても、QRコードに限らず、他の二次元コードや、バーコード等の一次元コードであっても良いなど、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施例を示すもので、マーカ光調整機構における光源の3つの位置とマーカ光の大きさとの関係を示す図
【図2】マーカ光調整機構の構成を概略的に示す側面図
【図3】結像光学部の読取視野と読取対象に照射されるマーカ光との関係を、遠距離(a)、中間(b)、近距離(c)に関して夫々示す図
【図4】結像光学部の焦点可変機構におけるレンズの位置と適切な読取距離との関係を概略的に示す側面図
【図5】焦点可変機構の2本の信号線の信号パターンとレンズ状態との関係を示す図
【図6】二次元コード読取装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図7】二次元コード読取装置の構成を概略的に示す縦断側面図
【図8】制御回路が実行する情報コードの読取時の処理手順を示すフローチャート
【図9】本発明の第2の実施例を示すもので、図3相当図
【図10】マーカ光照射部及びマーカ光調整機構の構成を概略的に示す平面図(a)及び側面図(b)
【図11】本発明の第3の実施例を示すもので、マーカ光照射部及びマーカ光調整機構の構成を概略的に示す正面図
【図12】従来例を示すもので、結像光学部の読取視野と読取対象に照射されるマーカ光との関係を示す図
【符号の説明】
【0058】
図面中、11は本体ケース、11cは読取口、13は受光センサ、14は結像光学部、14a,14bはレンズ、15は照明部、16,51,61はマーカ光照射部(マーカ光照射手段)、17は測距センサ、26は制御回路、33はLED(光源)、34はマーカ結像用レンズ、35,52,62はマーカ光調整機構(マーカ光可変手段)、53はレーザダイオード(光源)、54は回折格子プレート(パターン形成部材)、55は回転移動部材、56はモータ、63は直線移動部材、Rは読取対象、M,M1〜M3はマーカ光、Vは読取視野、Qは情報コードを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象に記された情報コードを光学的に読取るための結像光学部及び受光センサを備えると共に、前記読取対象に対し読取位置を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えてなる光学情報読取装置であって、
前記結像光学部の焦点距離又は画角を変更する焦点可変機構を設けると共に、
前記結像光学部の視野の大きさに応じて、前記マーカ光照射手段により前記読取対象に照射されるマーカ光の大きさを変更するマーカ光可変手段を設けたことを特徴とする光学情報読取装置。
【請求項2】
読取対象に記された情報コードを光学的に読取るための結像光学部及び受光センサを備えると共に、前記読取対象に対し読取位置を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えてなる光学情報読取装置であって、
前記結像光学部の焦点距離又は画角を変更する焦点可変機構を設けると共に、
前記結像光学部の視野の大きさに応じて、前記マーカ光照射手段により前記読取対象に照射されるマーカ光の形状を変更するマーカ光可変手段を設けたことを特徴とする光学情報読取装置。
【請求項3】
前記マーカ光照射手段は、複数種類が設けられており、
前記マーカ光可変手段は、それらマーカ光照射手段を選択的に動作させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光学情報読取装置。
【請求項4】
前記マーカ光照射手段は、光源と、複数の異なるパターンのマーカ光を形成するための複数のパターン形成部材とを備えて構成され、
前記マーカ光可変手段は、それらパターン形成部材のいずれかを選択的に使用位置に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光学情報読取装置。
【請求項5】
前記パターン形成部材は、回転移動部材に所定間隔で並んで設けられ、
前記マーカ光可変手段は、モータにより前記回転移動部材を回転移動させることによって、いずれかのパターン形成部材を使用位置に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項4記載の光学情報読取装置。
【請求項6】
前記パターン形成部材は、直線移動部材に移動方向に並んで設けられ、
前記マーカ光可変手段は、モータ又は電磁石により前記直線移動部材を直線移動させることによって、いずれかのパターン形成部材を使用位置に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項4記載の光学情報読取装置。
【請求項7】
前記マーカ光照射手段は、光源と、マーカ結像用レンズとを含んで構成されており、
前記マーカ光可変手段は、前記光源及びマーカ結像用レンズの少なくとも一方を移動させることによりそれらの間隔を変更するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の光学情報読取装置。
【請求項8】
前記マーカ光可変手段は、モータ又は電磁石により前記光源及びマーカ結像用レンズの少なくとも一方を直線移動させるように構成されていることを特徴とする請求項7記載の光学情報読取装置。
【請求項1】
読取対象に記された情報コードを光学的に読取るための結像光学部及び受光センサを備えると共に、前記読取対象に対し読取位置を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えてなる光学情報読取装置であって、
前記結像光学部の焦点距離又は画角を変更する焦点可変機構を設けると共に、
前記結像光学部の視野の大きさに応じて、前記マーカ光照射手段により前記読取対象に照射されるマーカ光の大きさを変更するマーカ光可変手段を設けたことを特徴とする光学情報読取装置。
【請求項2】
読取対象に記された情報コードを光学的に読取るための結像光学部及び受光センサを備えると共に、前記読取対象に対し読取位置を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えてなる光学情報読取装置であって、
前記結像光学部の焦点距離又は画角を変更する焦点可変機構を設けると共に、
前記結像光学部の視野の大きさに応じて、前記マーカ光照射手段により前記読取対象に照射されるマーカ光の形状を変更するマーカ光可変手段を設けたことを特徴とする光学情報読取装置。
【請求項3】
前記マーカ光照射手段は、複数種類が設けられており、
前記マーカ光可変手段は、それらマーカ光照射手段を選択的に動作させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光学情報読取装置。
【請求項4】
前記マーカ光照射手段は、光源と、複数の異なるパターンのマーカ光を形成するための複数のパターン形成部材とを備えて構成され、
前記マーカ光可変手段は、それらパターン形成部材のいずれかを選択的に使用位置に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光学情報読取装置。
【請求項5】
前記パターン形成部材は、回転移動部材に所定間隔で並んで設けられ、
前記マーカ光可変手段は、モータにより前記回転移動部材を回転移動させることによって、いずれかのパターン形成部材を使用位置に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項4記載の光学情報読取装置。
【請求項6】
前記パターン形成部材は、直線移動部材に移動方向に並んで設けられ、
前記マーカ光可変手段は、モータ又は電磁石により前記直線移動部材を直線移動させることによって、いずれかのパターン形成部材を使用位置に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項4記載の光学情報読取装置。
【請求項7】
前記マーカ光照射手段は、光源と、マーカ結像用レンズとを含んで構成されており、
前記マーカ光可変手段は、前記光源及びマーカ結像用レンズの少なくとも一方を移動させることによりそれらの間隔を変更するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の光学情報読取装置。
【請求項8】
前記マーカ光可変手段は、モータ又は電磁石により前記光源及びマーカ結像用レンズの少なくとも一方を直線移動させるように構成されていることを特徴とする請求項7記載の光学情報読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−146785(P2006−146785A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339014(P2004−339014)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
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