説明

光学活性な複素環化合物、その製造方法、医薬組成物及び治療方法

【課題】
副作用がより少なく、より安全で、かつ、薬理活性がより優れる光学活性な複素環化合物、その製造方法、及び医薬用組成物を提供する。
【解決手段】
例えば、式[I]


[式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を、Qは、−(CH−(nは0〜3の整数を表す。)、又は−CH=CH−を、Rは、置換されていてもよい(アルキル基又はフェニル基)等を、Rは置換されていてもよいフェニル基等を、Rは、水素原子、置換されていてもよい(アルキル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基等)を、R、Rは、水素原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基等をそれぞれ表す。]で表される複素環化合物、その複合体、その製造方法及び医薬用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性な複素環化合物、その製造方法、前記複素環化合物若しくはその複合体を有効成分として含有する医薬組成物、及び炎症性疾患又は障害の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オキサゾリジン化合物及びチアゾリジン化合物(以下、これらをまとめて「オキサ(チア)ゾリジン化合物」ということがある。)が、ホスホリパーゼA(2)(以下、「PLA(2)」と略記する。)活性阻害作用又は抗炎症作用を示すことが知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、なお抗炎症作用、安全性が不十分であり、より高い抗炎症活性を示し、より安全性の高い化合物が望まれている。
【0003】
一方、4位に置換基を有さないオキサゾリジン化合物がロイコトリエン系に関わる薬理活性を示すことが知られている。例えば、非特許文献1及び特許文献2には、下記式で表される化合物がロイコトリエンD4拮抗作用による抗炎症等の薬理活性を有することが記載されている。しかし、これらの文献には、本発明化合物については記載されていない。
【0004】
【化1】

【0005】
【特許文献1】国際公開03/000668号パンフレット
【特許文献2】英国特許(GB)2183641号公報
【非特許文献1】Journal of Medicinal Chemistry,第30巻,2087−2093頁(1987年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた抗炎症活性を示し、副作用が少なく安全性の高い光学活性複素環化合物、その製造方法、前記複素環化合物若しくはその複合体を有効成分として含有する医薬組成物、及び炎症性疾患又は障害の治療方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のオキサ(チア)ゾリジン化合物において、オキサゾリジン環又はチアゾリジン環(以下、「オキサ(チア)ゾリジン環」という。)の4位と5位の炭素原子に水素以外の置換基が結合している場合には、4種の光学異性体(2つのジアステレオマー鏡像体対)が存在し得る。
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、
(A)前記オキサ(チア)ゾリジン化合物において、オキサ(チア)ゾリジン環の、5位の立体配置がRであり、かつ、4位と5位の立体配置がトランスである光学活性オキサ(チア)ゾリジン化合物は、そのラセミ体に比べ、副作用が低減し、より優れた抗炎症作用を有すること、
(B)オキサ(チア)ゾリジン環の、5位の立体配置がSであり、かつ、4位と5位の立体配置がトランスである光学活性オキサ(チア)ゾリジン化合物は抗炎症作用が弱く、そのラセミ体と同様の副作用を示すこと、
(C)オキサ(チア)ゾリジン環の、5位の立体配置がSであり、4位と5位の立体配置がトランス又はシスである光学活性オキサ(チア)ゾリジン化合物は、アラキドン酸カスケード下流の脂質メディエーターの変動を伴う炎症に関わる薬理活性を示すこと、
を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記(1)〜(43)に示す発明に関するものである。
(1)式[I]
【0010】
【化2】

【0011】
{式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。
は、式:−(CH−(nは0〜3の整数を表す。)で表される基、又は式:−CH=CH−で表される基を表す。
は、Aで置換されていてもよい(C1−6アルキル基、フェニルC1−6アルキル基、又はフェニル基)を表す。
は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C1−6ハロアルキル基、C3−8シクロアルキル基、(ハロゲン原子、C1−6アルキル基若しくはC1−6ハロアルキル基で置換されてもよい)フェニル基、ピリジル基、チエニル基、C1−6アルコキシ基、メチレンジオキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、ベンジル基、フェネチル基、フェノキシ基、フェニルチオ基、ベンゾイル基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6ハロアルキルカルボニル基、C1−6ハロアルコキシカルボニル基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、カルバモイル基、モノC1−6アルキルカルバモイル基又はジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。
【0012】
は、Aで置換されていてもよい(フェニル基、ナフチル基、インダニル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基)、又はAで置換されていてもよい、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環基を表す。
【0013】
は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C1−6ハロアルキル基、C3−8シクロアルキル基、(ハロゲン原子、C1−6アルキル基若しくはC1−6ハロアルキル基で置換されてもよい)フェニル基、ピリジル基、チエニル基、C1−6アルコキシ基、メチレンジオキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、ベンジル基、フェネチル基、フェノキシ基、フェニルチオ基、ベンゾイル基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6ハロアルキルカルボニル基、C1−6ハロアルコキシカルボニル基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、カルバモイル基、又はモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。
【0014】
は、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルキルスルホニル基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
【0015】
は、水素原子、Aで置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C1−6アルキルカルボニル基、C2−6アルケニルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C2−6アルケニルオキシカルボニル基、C1−6アルキルスルホニル基、C2−6アルケニルスルホニル基)、Aで置換されていてもよい(ベンゾイル基、フェニルスルホニル基)、又は式
【0016】
【化3】

【0017】
〔式中、Qは、−CO−、−CS−、又は−S(O)−を表し、mは1又は2を表す。
は、水素原子又はC1−6アルキル基を表す。
は、Aで置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルキルスルホニル基)、Aで置換されていてもよい(C3−8シクロアルキル基、C5−8シクロアルケニル基)、Aで置換されていてもよい、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環基、又はAで置換されていてもよい(フェニル基、ベンゾイル基、フェニルスルホニル基)を表す。
【0018】
は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、アミノ基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニルオキシ基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルボニルアミノ基、モルホリノ基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されてもよいピリジル基を表す。
は、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルキルスルホニル基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
【0019】
は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、ピリジル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、又はモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。〕で表される基を表す。
【0020】
は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、アミノ基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニルオキシ基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルボニルアミノ基、モルホリノ基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されてもよいピリジル基を表す。
【0021】
は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、ピリジル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、又はモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、Aで置換されていてもよい(フェニルC1−6アルキル基、フェニル基)、又は式
【0022】
【化4】

【0023】
〔式中、Qは、−CO−又は−S(O)−(mは1又は2を表す。)を表す。
は、アミノ基、A10で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C1−6アルコキシ基、C2−6アルケニルオキシ基、C2−6アルキニルオキシ基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基)、A11で置換されていてもよい(C3−8シクロアルキル基、C5−8シクロアルケニル基)、A11で置換されていてもよい、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環基、又はA12で置換されていてもよい(フェニル基、フェノキシ基、アニリノ基)を表す。
【0024】
10は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、アミノ基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニルオキシ基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルボニルアミノ基、モルホリノ基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されてもよいピリジル基を表す。
11は、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルキルスルホニル基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
【0025】
12は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、ピリジル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、又はモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。〕で表される基を表す。
【0026】
は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C1−6ハロアルキル基、C3−8シクロアルキル基、(ハロゲン原子、C1−6アルキル基若しくはC1−6ハロアルキル基で置換されてもよい。)フェニル基、ピリジル基、チエニル基、C1−6アルコキシ基、メチレンジオキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、ベンジル基、フェネチル基、フェノキシ基、フェニルチオ基、ベンゾイル基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6ハロアルキルカルボニル基、C1−6ハロアルコキシカルボニル基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、カルバモイル基、又はモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。}で表される複素環化合物。
【0027】
(2)5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである(1)に記載の複素環化合物。
(3)式[II]
【0028】
【化5】

【0029】
(式中、Rは前記と同じ意味を表し、R’は水素原子を除く前記Rと同じ意味を表す。)で表されるビスメチルチオエチレン類と、式[III]
【0030】
【化6】

【0031】
(式中、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表される2−アミノエタノール類とを反応させることを特徴とする、式[I−1]
【0032】
【化7】

【0033】
(式中、R、R、R’、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサゾリジン化合物の製造方法。
(4)式[IV]
【0034】
【化8】

【0035】
(式中、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表される2−メチルチオ−2−チアゾリン類と、式[V]
【0036】
【化9】

【0037】
(式中、R’及びRは前記と同じ意味を表す。)で表される活性メチレン類とを反応させることを特徴とする、式[I−2]
【0038】
【化10】

【0039】
(式中、R、R、R’、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるチアゾリジン化合物の製造方法。
(5)式[I−3]
【0040】
【化11】

【0041】
(式中、X、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサ(チア)ゾリジン類類と、式[VI]
【0042】
【化12】

【0043】
〔式中、R’は、水素原子、Aで置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C1−6アルキルカルボニル基、C2−6アルケニルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C2−6アルケニルオキシカルボニル基、C1−6アルキルスルホニル基、C2−6アルケニルスルホニル基)、Aで置換されていてもよい(ベンゾイル基、フェニルスルホニル基)、又は式
【0044】
【化13】

【0045】
(R、R及びmは前記と同じ意味を表す。)で表される基を表し、A、Aは前記と同じ意味を表し、Halはハロゲン原子を表す。〕で表されるハライド類とを反応させることを特徴とする、式[I−4]
【0046】
【化14】

【0047】
(式中、X、R、R、R’、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサ(チア)ゾリジン化合物の製造方法。
(6)式[I−3]
【0048】
【化15】

【0049】
(式中、X、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサ(チア)ゾリジン類と、式[VII]
【0050】
【化16】

【0051】
(式中、Rは前記と同じ意味を表し、Zは酸素原子又は硫黄原子を表す。)で表される化合物とを反応させることを特徴とする、式[I−5]
【0052】
【化17】

【0053】
(式中、X、R、R、R、R、R、Q及びZは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサ(チア)ゾリジン化合物の製造方法。
(7)(1)又は(2)に記載の複素環化合物若しくはその複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
(8)脂質メディエーターであるアラキドン酸及びその代謝物、及び/又はリゾリン脂質、及び/又は血小板活性化因子により媒介される炎症性疾患又は障害の治療薬である(7)に記載の医薬組成物。
(9)ホスホリパーゼA(2)活性の亢進を伴う病態の治療薬である(7)又は(8)に記載の医薬組成物。
【0054】
(10)坑炎症剤である(7)〜(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
(11)前記炎症性疾患が、アナフィラキシー、アレルギー性炎症、喘息、鼻炎、気管支炎、肺炎、成人呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、炎症性腸管疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、虚血―再灌流における傷害、血管炎、動脈硬化、肝炎、腎炎、神経変性疾患、関節炎、皮膚炎、紫外線角化症、乾癬、敗血症性ショック、又は熱病である(7)〜(10)のいずれかに記載の医薬組成物。
(12)アレルギー疾患治療剤である(7)〜(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0055】
(13)免疫調節剤である(7)〜(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
(14)ホスホリパーゼA(2)活性阻害剤である(7)に記載の医薬組成物。
(15)哺乳動物に対して、(1)又は(2)に記載の複素環化合物若しくはその複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を投与することを特徴とする、炎症性疾患又は障害の治療方法。
【0056】
(16)式[VIII]
【0057】
【化18】

【0058】
(式中、X、R、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表される複素環化合物。
(17)5位の立体配置がSであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである(16)に記載の複素環化合物。
(18)式[II]
【0059】
【化19】

【0060】
(式中、R’及びRは前記と同じ意味を表す。)
で表されるビスメチルチオエチレン類と、式[IX]
【0061】
【化20】

【0062】
(式中、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表される2−アミノエタノール類とを反応させることを特徴とする、式[VIII−1]
【0063】
【化21】

【0064】
(式中、R、R、R’、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサゾリジン化合物の製造方法。
(19)式[X]
【0065】
【化22】

【0066】
(式中、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表される2−メチルチオ−2−チアゾリン類と、式[V]
【0067】
【化23】

【0068】
(式中、R’及びRは前記と同じ意味を表す。)
で表される活性メチレン類とを反応させることを特徴とする、式[VIII−2]
【0069】
【化24】

【0070】
(式中、R、R、R’、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるチアゾリジン化合物の製造方法。
(20)式[VIII−3]
【0071】
【化25】

【0072】
(式中、X、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサ(チア)ゾリジン類と、式[VI]
【0073】
【化26】

【0074】
(式中、R’は前記と同じ意味を表す。)で表されるハライド類とを反応させることを特徴とする、式[VIII−4]
【0075】
【化27】

【0076】
(式中、X、R、R、R’、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサ(チア)ゾリジン化合物の製造方法。
(21)式[VIII−3]
【0077】
【化28】

【0078】
(式中、X、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサ(チア)ゾリジン類と、式[VII]
【0079】
【化29】

【0080】
(式中、R及びZは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物とを反応させることを特徴とする、式[VIII−5]
【0081】
【化30】

【0082】
(式中、X、R、R、R、R、R、Q及びZは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサ(チア)ゾリジン化合物の製造方法。
(22)(16)又は(17)に記載の複素環化合物若しくはその複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
(23)脂質メディエーターであるアラキドン酸及びその代謝物により媒介される炎症性疾患又は障害の治療薬である(22)に記載の医薬組成物。
(24)アラキドン酸カスケード下流の膜質メディエーターの変動に関わる病態の治療薬である(22)又は(23)に記載の医薬組成物。
【0083】
(25)坑炎症剤である(22)〜(24)のいずれかに記載の医薬組成物。
(26)前記炎症性疾患が、アナフィラキシー、アレルギー性炎症、喘息、気管支炎、肺炎、鼻炎、結膜炎、腸炎、花粉症、蕁麻疹、又は皮膚炎である(22)〜(24)のいずれかに記載の医薬組成物。
(27)アレルギー疾患治療剤である(22)〜(24)のいずれかに記載の医薬組成物。
(28)免疫調節剤である(22)〜(24)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0084】
(29)哺乳動物に対して、(16)又は(17)に記載の複素環化合物若しくはその複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を投与することを特徴とする、炎症性疾患又は障害の治療方法。
(30)式[XI]
【0085】
【化31】

【0086】
(式中、X、R、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表される複素環化合物。
(31)5位の立体配置がSであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がシスである(30)に記載の複素環化合物。
(32)式[II]
【0087】
【化32】

【0088】
(式中、R’及びRは前記と同じ意味を表す。)で表されるビスメチルチオエチレン類と、式[XII]
【0089】
【化33】

【0090】
(式中、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表される2−アミノエタノール類とを反応させることを特徴とする、式[XI−1]
【0091】
【化34】

【0092】
(式中、R、R、R’、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサゾリジン化合物の製造方法。
(33)式[XIII]
【0093】
【化35】

【0094】
(式中、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表される2−メチルチオ−2−チアゾリン類と、式[V]
【0095】
【化36】

【0096】
(式中、R’及びRは前記と同じ意味を表す。)で表される活性メチレン類とを反応させることを特徴とする、式[XI−2]
【0097】
【化37】

【0098】
(式中、R、R、R’、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるチアゾリジン化合物の製造方法。
(34)式[XI−3]
【0099】
【化38】

【0100】
(式中、X、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサ(チア)ゾリジン類と、式[VI]
【0101】
【化39】

【0102】
(式中、R’は前記と同じ意味を表す。)で表されるハライド類とを反応させることを特徴とする、式[XI−4]
【0103】
【化40】

【0104】
(式中、X、R、R、R’、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサ(チア)ゾリジン化合物の製造方法。
(35)式[XI−3]
【0105】
【化41】

【0106】
(式中、X、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサ(チア)ゾリジン類と、式[VII]
【0107】
【化42】

【0108】
(式中、R及びZは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物とを反応させることを特徴とする、式[XI−5]
【0109】
【化43】

【0110】
(式中、X、R、R、R、R、R、Q及びZは前記と同じ意味を表す。)で表されるオキサ(チア)ゾリジン化合物の製造方法。
(36)(30)又は(31)に記載の複素環化合物若しくはその複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
(37)脂質メディエーターであるアラキドン酸及びその代謝物により媒介される炎症性疾患又は障害の治療薬である(36)に記載の医薬組成物。
(38)アラキドン酸カスケード下流の膜質メディエーターの変動に関わる病態の治療薬である(36)又は(37)に記載の医薬組成物。
【0111】
(39)坑炎症剤である(36)〜(38)のいずれかに記載の医薬組成物。
(40)前記炎症性疾患が、アナフィラキシー、アレルギー性炎症、喘息、気管支炎、肺炎、鼻炎、結膜炎、腸炎、花粉症、蕁麻疹、又は皮膚炎である(36)〜(39)のいずれかに記載の医薬組成物。
(41)アレルギー疾患治療剤である(36)〜(38)のいずれかに記載の医薬組成物。
(42)免疫調節剤である(36)〜(38)のいずれかに記載の医薬組成物。
(43)哺乳動物に対して、(30)又は(31)に記載の複素環化合物若しくはその複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を投与することを特徴とする、炎症性疾患又は障害の治療方法。
【発明の効果】
【0112】
本発明の前記式[I]で表される光学活性オキサ(チア)ゾリジン化合物は、そのラセミ体化合物と比較してより副作用が少なく、より安全で、かつ、より優れた薬理活性を有する。
本発明の前記式[I]で表される光学活性オキサ(チア)ゾリジン化合物又はその複合体を有効成分として含有する医薬組成物は、PLA(2)活性の亢進を伴う病態症状を軽減し、その関連する疾患に非常に効果的な作用を示し、治療薬又は予防薬として有用である。
【0113】
本発明の前記式[VIII]及び前記式[XI]で表される光学活性オキサ(チア)ゾリジン化合物は、アラキドン酸カスケード下流の膜質メディエーターの変動に関わる薬理活性を有する。
本発明の前記式[VIII]及び前記式[XI]で表される、光学活性オキサ(チア)ゾリジン化合物又はその複合体を有効成分として含有する医薬組成物は、アレルギー炎症に関わる病態症状を軽減し、その関連する疾患に非常に効果的な作用を示し、治療薬又は予防薬として有用である。
【0114】
本発明の製造方法によれば、本発明の光学活性オキサ(チア)ゾリジン化合物を効率よく製造することができる。
本発明の治療方法は、本発明の光学活性オキサ(チア)ゾリジン化合物を用いているので、炎症性疾患又は障害に対して安全で効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0115】
以下、本発明を詳細に説明する。
1)光学活性オキサ(チア)ゾリジン化合物
本発明は、前記式[I]、[VIII]、及び[XI]で表される光学活性オキサ(チア)ゾリジン化合物である。
【0116】
前記式[I]、[VIII]、及び[XI]中の、R〜R、A〜A12において、
「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「C1−6アルキル基」としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
「C2−6アルケニル基」としては、ビニル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、アリル基、2−ブテニル基等が挙げられる。
「C2−6アルキニル基」としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等が挙げられる。
【0117】
「C1−6アルキルカルボニル基」としては、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、イソブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、tert−ブチルカルボニル基等が挙げられる。
「C1−6アルコキシカルボニル基」としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
「C2−6アルケニルカルボニル基」としては、ビニルカルボニル基、アリルカルボニル基等が挙げられる。
【0118】
「C1−6アルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基等が挙げられる。
「C2−6アルケニルオキシ基」としては、エテニルオキシ基、プロペニルオキシ基、アリルオキシ基、ヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
「C2−6アルキニルオキシ基」としては、プロピニルオキシ基、ブチニルオキシ基、ヘキシニルオキシ基等が挙げられる。
【0119】
「C2−6アルケニルオキシカルボニル基」としては、エテニルオキシカルボニル基、プロペニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等が挙げられる。
「C1−6ハロアルキル基」としては、クロロメチル基、ジクロロエチル基、ブロモメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
「C1−6アルキルチオ基」としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基等が挙げられる。
【0120】
「C1−6アルキルスルフィニル基」としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基等が挙げられる。
「C1−6アルキルスルホニル基」としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基等が挙げられる。
「C2−6アルケニルスルホニル基」としては、エテニルスルホニル基、プロペニルスルホニル基、アリルスルホニル基等が挙げられる。
【0121】
「C3−8シクロアルキル基」としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロクチル基等が挙げられる。
「C5−8シクロアルケニル基」としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。
「C1−6アルキルカルボニル基」としては、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
【0122】
「5〜7員の複素環基」は、ヘテロ原子として酸素原子、硫黄原子及び窒素原子の少なくとも1種を有し、5乃至7個の原子で構成される飽和又は不飽和の複素環基を意味する。「5〜7員の複素環基」としては、具体的にはテトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、ピロリジニル基、ピラゾリジニル基、イミダゾリジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチアピラニル基、ピペリジノ基、ピペリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジル基、ピラジニル基、ピリジル基、モルホリノ基、モルホリニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基等が挙げられる。
【0123】
「モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基」としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ヘキシルアミノ基等が挙げられる。
「モノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基」としては、メチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、メチルエチルカルバモイル基等が挙げられる。
「モノ若しくはジC1−6アルキルカルボニルアミノ基」としては、アセチルアミノ基、ジアセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0124】
「C1−6ハロアルコキシ基」としては、クロロメトキシ基、ジクロロエトキシ基、ブロモメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
「C1−6ハロアルコキシカルボニル基」としては、クロロメトキシカルボニル基、ジクロロエトキシカルボニル基、ブロモメトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基等が挙げられる。
「C1−6アルキルカルボニルオキシ基」としては、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
「C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基」としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0125】
式[I]、[VIII]、及び[XI]で表される光学活性オキサ(チア)ゾリジン化合物において、Rが水素原子である場合には、下記に示す互変異性体が存在する。本発明の化合物はこの互変異性体も包含する。
【0126】
【化44】

【0127】
また本発明化合物は、場合によってはそのプロドラッグ化合物、及びその代謝物についても包含されるものである。
【0128】
「複素環化合物の複合体」は、当該化合物と一定の比率でイオン結合、水素結合、或いは配位結合で相互作用する無毒性の低分子化合物とからなる複合体を意味し、薬理学的に許容されるものであれば特に制限されない。例えば、水溶液中では当該化合物を遊離せしめるもの、具体的には塩酸塩、有機酸塩、及びアミノ酸塩等の塩、水和物等の溶媒和物等が挙げられる。
【0129】
前記式[I]、[VIII]、及び[XI]で表される化合物又はその複合体は、そのままであるいは慣用の製剤担体と共に人及び動物に投与することができる。
投与単位形態は特に限定されず、必要に応じ全身性投与及び局所適用、即ち非全身性投与のいずれからも適宜選択して使用される。投与単位形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口用液剤、トローチ剤等の経口投与製剤、或いは静脈注射、筋肉注射、皮下注射等の注射用溶液又は懸濁液等を例示できる。また、坐剤等の直腸投与やエアゾール剤や吸入用粉剤等の経気道(経鼻又は口内吸入。)投与の形態を利用することもできる。
【0130】
局所投与に適した処方物としては、炎症部位に皮膚や粘膜等を通して浸透するのに適した形態として、例えば液剤、リニメント剤、クリーム、乳剤、軟膏剤又はペースト、並びに眼、耳又は鼻への適用に適した滴剤等が挙げられる。
【0131】
投与されるべき有効成分の量は特に限定されず、投与の形態、選択された個々の化合物、投与される人又は動物により広い範囲から適宜選択される。所期の効果を発揮するためには、1日当り体重1kg当り0.01〜100mgの用量にて1〜数回に分けて投与するのが好ましい。また、投与単位形態中に有効成分を0.1〜1000mg含有せしめるのが好ましい。
【0132】
前記錠剤、カプセル剤、顆粒剤、経口用液剤等の経口剤は常法にしたがって製造することができる。
即ち錠剤は、前記式[I]、[VIII]、或いは[XI]で表される化合物又はその複合体を(以下、「有効成分」ということがある。)、澱粉、乳糖、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、滑石、アラビアゴム等の製剤学的賦形剤と混合し、賦形することにより製造することができる。
カプセル剤は、有効成分を不活性の製剤充填剤もしくは希釈剤と混合し、硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填することにより製造することができる。
経口溶液剤のシロップ剤もしくはエリキシル剤は、有効成分を、蔗糖等の甘味剤、メチル−及びプロピル−パラベン類等の防腐剤、着色剤、調味剤等と混合することにより製造することができる。
また非経口剤は、例えば、有効成分を、滅菌した液状担体に溶解させることにより製造することができる。好ましい担体は水又は食塩水である。
【0133】
所望の透明度、安定性及び非経口使用の適応性を有する液剤は、約0.1〜1000mgの有効成分を、水及び有機溶剤に溶解し、且つ分子量が200〜5000であるポリエチレングリコールに溶解させることにより製造することができる。
【0134】
液剤には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ナトリウムカルボキシメチルセルローズ、メチルセルローズ等の潤滑剤が含有されているのが好ましい。
さらには、上記液剤中にベンジルアルコール、フェノール、チメロサール等の殺菌剤及び防カビ剤、さらに必要に応じ蔗糖、塩化ナトリウム等の等張剤、局所麻酔剤、安定剤、緩衝剤等が含まれてもよい。
【0135】
また、安定性を高めるために、非経口投与用薬剤は充填後冷凍され、この分野で公知の凍結乾燥技術により水を除去することができる。また、使用直前に凍結乾燥粉末から液剤を再調製することもできる。
【0136】
次に、本発明の医薬組成物の製剤例を示す。
(製剤例1) 錠剤
配 合 量(重量部)
本発明化合物 5
乳糖(日本薬局方品) 50
コーンスターチ(日本薬局方品) 25
結晶セルローズ(日本薬局方品) 25
メチルセルローズ(日本薬局方品) 1.5
ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方品) 1
【0137】
本発明化合物、乳糖、コーンスターチ及び結晶セルローズを充分混合し、メチルセルローズの5%水溶液で顆粒化し200メッシュの篩に通して注意深く乾燥する。乾燥した顆粒はステアリン酸マグネシウムと混合して常法により打錠して錠剤1000錠が調製される。
【0138】
(製剤例2) カプセル剤
配 合 量(重量部)
本発明化合物 10
乳糖(日本薬局方品) 80
澱粉(日本薬局方品) 30
滑石(日本薬局方品) 5
ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方品) 1
【0139】
上記成分を細かく粉末にし、均一な混合物となるように充分に撹拌した後、所望の寸法を有する経口投与用のゼラチンカプセルに充填することにより、1000個の2片ゼラチンカプセルが調製される。
【0140】
(製剤例3) 注射剤
配 合 量(重量部)
本発明化合物 1
ポリエチレングリコール4000(日本薬局方品) 0.3
塩化ナトリウム(日本薬局方品) 0.9
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(日本薬局方品) 0.4
メタ重亜硫酸ナトリウム(日本薬局方品) 0.1
メチルーパラベン(日本薬局方品) 0.18
プロピルーパラベン(日本薬局方品) 0.02
注射用蒸留水 適宜
(最終容量) 100(mL)
【0141】
上記パラベン類、メタ重亜硫酸ナトリウム及び塩化ナトリウムを撹拌しながら80℃で上記の約半量の注射用蒸留水に溶解する。得られた溶液を40℃まで冷却し、上記本発明化合物、次にポリエチレングリコール及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを添加してその溶液中に溶解する。次にその溶液に残余の蒸留水を加えて最終の容量に調製し、適当なフィルターを用いて滅菌濾過することにより滅菌し、非経口投与に適する水溶液製剤を得る。
【0142】
(製剤例4) 軟膏剤
配 合 量(重量部)
本発明化合物 0.1
白色軟パラフィン 10
本発明化合物を基材中に均一になるまで混和する。
【0143】
(製剤例5) エアゾール剤
配 合 量(重量部)
本発明化合物 0.25
エタノール 29.75
プロペラント22(クロロジフルオロメタン) 70
【0144】
本発明化合物をエタノールと混合し、さらにプロペラント22の1部を添加して混和後に−30℃まで冷却し、充填装置に入れる。次いで、投与に必用な量をステンレス容器に移し入れ、残りのプロペラント22で希釈することにより調製される。このステンレス容器にバルブユニットを装着して投与する。
【0145】
(製剤例6) ドライパウダー吸入製剤
配 合 量(重量部)
本発明化合物 5
ラクトース 95
【0146】
本発明化合物をラクトースと均一に混合した後に、この混和物をドライパウダー吸入器に加える。
【0147】
(製剤例7) 坐剤
配 合 量(重量部)
本発明化合物 0.225
飽和脂肪酸グリセリド 2.000
【0148】
本発明化合物をNo.60メッシュU.S.篩に通し、必用最小限の加熱により予め溶解させた飽和脂肪酸グリセリド中に懸濁する。次いで、この混和物を表示容量2gの坐剤型に注入した後冷却する。
【0149】
次に、本発明の光学活性な複素環化合物の製造方法について説明する。
本発明の複素環化合物のラセミ体は、例えば、国際公開03/000668号パンフレットに記載の製造方法により得ることができる。
【0150】
本発明の光学活性な複素環化合物は、(i)当該ラセミ体の、光学活性な有機酸類を用いたジアステレオマー塩の溶解度差を利用した光学分割法、(ii)当該ラセミ体の光学異性体分離用カラムクロマトグラフィーを使用する分離方法、(iii)立体選択的に化学合成する方法、(iv)光学活性な原料、例えば特開昭58−110577号公報に記載の光学活性アミノアルコールを原料として用いて、光学活性な複素環化合物を製造する方法、及び(v)これらの2種以上の方法を組み合わせる方法、等により製造することができる。
より具体的な製造方法を以下に説明する。
【0151】
(製造法1)
前記式[I]において、Xが酸素原子で、Rが水素原子であり、Rが水素原子以外の基であって、5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである化合物[I−1]は、下記反応式に示すように、ビスメチルチオエチレン類[II]と2−アミノエタノール類[III]とを反応させることにより製造することができる。
同様に、5位の立体配置がSであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである化合物[VIII−1]は、ビスメチルチオエチレン類[II]と2−アミノエタノール類[IX]とを反応させることにより製造することができる。
また、5位の立体配置がSであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がシスである化合物[XI−1]はビスメチルチオエチレン類[II]と2−アミノエタノール類[XII]とを反応させることにより製造することができる。
【0152】
【化45】

【0153】
(式中、R、R、R’、R、及びQは前記と同じ意味を表す。)
2−アミノエタノール類[III]、[IX]又は[XII]から、オキサゾリジン化合物[I−1]、[VIII−1]又は[XI−1]へ誘導する反応は、適当な溶媒中で行うことができる。
【0154】
用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール等のアルコール類;及びN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略記する。)、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」と略記する。)等の極性溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、アルコール類の使用が好ましい。
上記反応は、室温から用いる溶媒の沸点までの温度、好ましくは70〜130℃で円滑に進行する。反応時間は、通常1時間から数時間である。
【0155】
(製造法2)
前記式[I]において、Xが酸素原子であり、Rが水素原子である化合物[I−6]は、下記反応式に示すように、2−アミノエタノール類[III]又は[XII]をそれぞれ対応するN−アシル体[III−2]あるいは[XII−2]に導いた後、閉環反応を行うことにより製造することができる。
【0156】
同様に、前記式[VIII]において、Xが酸素原子であり、Rが水素原子である化合物[VIII−6]は、下記反応式に示すように、2−アミノエタノール類[IX]又は[XIV]をそれぞれ対応するN−アシル体[IX−2]あるいは[XIV−2]に導いた後、閉環反応を行うことにより製造することができる。
【0157】
【化46】

【0158】
(式中、R、R、R、R、及びQは前記と同じ意味を表す。Lは水酸基;Cl、Br、I等のハロゲン原子;トシルオキシ基等のアリールスルホニルオキシ基;又は、メシルオキシ基等のアルキルスルホニルオキシ基;を表す。)
【0159】
(製造法3)
前記式[I]において、Xが硫黄原子であり、Rが水素原子であり、Rが水素原子以外の置換基である化合物[I−2]は、2−メチルチオ−2−チアゾリン類[IV]と活性メチレン類[V]とを反応させることにより製造することができる。
【0160】
同様に、前記式[VIII]又は[XI]において、Xが硫黄原子であり、Rが水素原子であり、Rが水素原子以外の置換基である化合物[VIII−2]又は化合物[XI−2]は、各々対応する立体配置を有する2−メチルチオ−2−チアゾリン類[X]又は[XIII]と活性メチレン類[V]とを反応させることにより製造することができる。
【0161】
【化47】

【0162】
(式中、R、R、R’、R、及びQは前記と同じ意味を表す。)
上記各反応は、溶媒中又は無溶媒で、塩化亜鉛等の酸性触媒の存在下に加熱することにより行われる。好ましい反応条件は、窒素雰囲気下、塩化亜鉛触媒の存在下、ベンゼン、トルエン、DMF等の不活性溶媒中、70〜120℃程度に加熱するものである。
【0163】
前記式[IV]、[X]、及び[XIII]で表される2−メチルチオ−2−チアゾリン類の多くは公知物質であり、例えば、特開昭63−41471号公報記載の方法に準じて製造することができる。
【0164】
【化48】

【0165】
(式中、R、R、及びQは前記と同じ意味を表す。)
【0166】
(製造法4)
前記式[I]、[VIII]、及び[XI]において、R及びRが水素原子である化合物は、前記製造法1、製造法2、又は製造法3に基づいて製造される化合物のうち、各々同じ立体配置を有する式[I−7]、[VIII−7]、及び[XI−7]で表される化合物から、下記に示すように誘導することができる。
【0167】
【化49】

【0168】
(式中、X、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表し、RはC1−6アルキル基を表す。)
上記各反応は、溶媒中又は無溶媒で行うことができる。用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;及びDMF、DMSO等の極性溶媒類;等が挙げられる。なかでも、ハロゲン化炭化水素類の使用が好ましい。
反応は−10℃から用いる溶媒の沸点までの温度、好ましくは−10℃から室温までの温度範囲で円滑に進行する。
反応時間は、通常、1時間から数時間である。
【0169】
上記各反応は、酸の存在下で行うこともできる。用いる酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、硝酸、燐酸等の無機酸;トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸;が挙げられる。
【0170】
(製造法5)
前記式[I]において、Rが水素原子以外の置換基である光学活性化合物は、下記に示すように、前記の製造法1、製造法2、製造法3又は製造法4で得られた各々の対応する光学活性化合物[I−3]、[VIII−3]、及び[XI−3]と、ハライド類[VI]、又は式[VII]で表されるイソシアネート類若しくはイソチオシアネート類とを反応をさせて製造することができる。
【0171】
【化50】

【0172】
(式中、X、R、R、R’、R、R、R、Z及びQは前記と同じ意味を表す。)
光学活性化合物[I−3]、[VIII−3]、及び[XI−3]と、ハライド類[VI]との反応は、有機溶媒中、塩基の存在下で行うことができる。
用いる有機溶媒としては、DMF、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略記する。)、DMSO等の極性溶媒類;及びメチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類;等が挙げられる。
【0173】
用いる塩基としては、水素化ナトリウム等の金属水素化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルコキシド類;トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−セン(以下、「DBU」と略記する。)、ピリジン等の有機塩基;等が挙げられる。
【0174】
反応は、−20℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは0〜50℃の温度範囲で円滑に進行する。
反応時間は、通常、1時間から数十時間である。
【0175】
光学活性化合物[I−3]、[VIII−3]、及び[XI−3]と、シアネート類又はイソチオシアネート類[VII]との反応は、有機溶媒中、塩基の存在下で行うことができる。
用いる有機溶媒としては、DMF等の極性溶媒類;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ジオキサン、THF等のエーテル類;ベンゼン等の芳香族炭化水素類;及び酢酸エチル等のエステル類;等が挙げられる。
用いる塩基としては、トリエチルアミン、DBU、ピリジン等が挙げられる。
【0176】
この反応は、通常、−20℃〜+60℃までの温度範囲、好ましくは0℃から室温までの温度範囲で円滑に進行する。反応時間は、通常1時間から数十時間である。
【0177】
いずれの反応を行った場合も、反応終了後は通常の後処理操作、及び必要に応じて公知の分離・精製操作を行うことにより、目的物を単離することができる。
【0178】
本発明化合物の構造は、MASSスペクトル、NMRスペクトル等から決定することができる。
本発明化合物の光学純度は、得られた化合物自体、或いはその適切な誘導体について、高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」と略記する。)法にて分離定量分析する方法等から算出することができる。
【0179】
以上のようにして製造される本発明の化合物の代表例を、下記第1〜3表に示す。なお、表中の記号及び略号は下記の意味を表す。
Me:メチル、Et:エチル、Pr:プロピル、Bu:ブチル、Hex:ヘキシル、Hep:ヘプチル、Allyl:アリル、Ac:アセチル、Naph:ナフチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、Bz:ベンゾイル、THP:テトラヒドロピラニル、n:ノルマル、c:シクロ、i:イソ、t:tert−、c:シクロ
【0180】
【表1】

【0181】
【表2】

【0182】
【表3】

【0183】
【表4】

【0184】
【表5】

【0185】
【表6】

【0186】
【表7】

【0187】
【表8】

【0188】
【表9】

【0189】
【表10】

【0190】
【表11】

【0191】
【表12】

【0192】
【表13】

【0193】
【表14】

【0194】
【表15】

【0195】
【表16】

【0196】
【表17】

【0197】
【表18】

【0198】
【表19】

【0199】
【表20】

【0200】
【表21】

【0201】
【表22】

【0202】
【表23】

【0203】
【表24】

【0204】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0205】
(参考例1)光学分割による(1R,2R)−2−アミノ−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オールの合成
【0206】
【化51】

【0207】
dl−スレオ−2−アミノ−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オール12.5g、L(+)酒石酸11.3g、及び92%エタノール水溶液125mlを混合し、熱水浴にて加熱溶解し、その後室温にて一晩放置した。析出した塩を濾取し、得られた塩を88〜90%エタノール水溶液にて6回再結晶を繰り返すことにより精製して、6.3gの塩を得た。
このものの[α]20.5は、−15.25°(c=0.544,MeOH)であった。
【0208】
次いで、この塩を25%アンモニア水で処理した後、クロロホルムにて抽出した。抽出液を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、(1R,2R)−2−アミノ−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オール2.86gを得た。
融点:100〜102℃
【0209】
このものをベンゾイル化した後、HPLC法にて定量分析して、得られた(1R,2R)−2−アミノ−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オールの光学純度を求めた。測定結果を以下に示す。
光学純度(ee)>99.0%(HPLCより算出)
[α]18.8−30.78°(c=0.510,MeOH)
【0210】
[光学純度 HPLC分析条件]
カラム:CHIRALCEL OJ 4.6mmI.D.x250mm(ダイセル化学工業(株)製,登録商標)
移動相:n−ヘキサン/エタノール(9/1,v/v)
流速:1.0ml/分
カラム温度:30℃
検出波長:254nm
【0211】
(実施例1)(4R,5R)−5−(4−メチルフェニル)−4−メチル−2−[(tert−ブトキシカルボニル)フェニルスルホニルメチレン]−オキサゾリジン(化合物番号I−108)の合成
【0212】
【化52】

【0213】
参考例1で得た、(1R,2R)−2−アミノ−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オール2.0g、1−(tert−ブトキシカルボニル)−2,2−ビス(メチルチオ)−1−(フェニルスルホニル)エチレン4.36g、及びエタノール40mlを混合し、全容を一晩還流した。反応終了後、反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して、油状物質を得た。これをカラムクロマトグラフィーで分離精製して、目的物2.97gを得た。このもののH−NMRスペクトルデータ、光学純度(ee)、及び[α]20.5を下記に示す。
【0214】
H−NMR(DMSO−d,δppm)=1.25(s,9H),1.35(d,3H),2.3(s,3H),3.8−4.0(m,1H),5.5(d,1H),7.3(q,4H),7.4−7.7(m,3H),7.8(d,2H),9.45(br s,1H)
光学純度(ee)>99.0%(HPLCより算出)
[α]20.5 −33.27°(c=0.532,MeOH)
【0215】
[光学純度 HPLC分析条件]
カラム:CHIRALCEL OD−H 4.6mmI.D.x250mm(ダイセル化学工業(株)製,登録商標)
移動相:n−ヘキサン/エタノール(5/1,v/v)
流速:1.0ml/分
カラム温度:30℃
検出波長:254nm
【0216】
(実施例2)(4R,5R)−5−(4−メチルフェニル)−4−メチル−2−フェニルスルホニルメチレン−オキサゾリジン(化合物番号I−117)の合成
【0217】
【化53】

【0218】
実施例1で得た、(4R,5R)−5−(4−メチルフェニル)−4−メチル−2−[(tert−ブトキシカルボニル)フェニルスルホニルメチレン]−オキサゾリジン0.7gにジクロロメタン7mlを加え、さらにトリフルオロ酢酸0.6mlを氷冷下で滴下し、滴下終了後さらに室温で2時間撹拌した。反応溶液に氷水及び重炭酸ナトリウム水溶液を加えることにより溶液をアルカリ性にし、酢酸エチルで抽出した。抽出液を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、油状物質を得た。それをカラムクロマトグラフィーで分離精製して、目的物0.39gを得た。
【0219】
このものの融点、光学純度(ee)、及び[α]20.5を下記に示す。
融点:82.0〜84.0℃
光学純度(ee)>99.0%(HPLCより算出)
[α]24.0 +20.39°(c=0.510,CHCl
【0220】
[光学純度 HPLC分析条件]
カラム:CHIRALCEL OJ 4.6mmI.D.x250mm(ダイセル化学工業(株)製,登録商標)
移動相:n−ヘキサン/エタノール(3/1,v/v)
流速:1.0ml/分
カラム温度:30℃
検出波長:254nm
【0221】
(参考例2)光学分割による(1R,2R)−2−アミノ−1−(4−クロロフェニル)プロパン−1−オールの合成
【0222】
【化54】

【0223】
dl−スレオ−2−アミノ−1−(4−クロロフェニル)プロパン−1−オール60g、L(+)酒石酸48.5gに93%エタノール水溶液640mlを加え、熱水浴にて加熱溶解し、その後室温にて一晩放置した。析出した塩を濾過、分離した後93%エタノール水溶液にて2回再結晶を繰り返すことにより精製し、22.5gの塩を得た。
[α]34.0−15.29°(c=0.500,HO)
【0224】
次いで、この塩を25%アンモニア水溶液で処理してクロロホルムにて抽出した。得られた抽出液を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に溶媒を減圧下留去し、(1R,2R)−2−アミノ−1−(4−クロロフェニル)プロパン−1−オール11.0gを得た。このものの融点、光学純度、及び[α]18.8を以下に示す。なお、光学純度については、ベンゾイル化した後にHPLC法にて定量分析した。
【0225】
融点:107〜109℃
光学純度(ee)>99.0%(HPLCより算出)
[α]18.8 +53.70°(c=0.500,CHCl
【0226】
[光学純度 HPLC分析条件]
カラム:CHIRALCEL OJ 4.6mmI.D.x250mm(ダイセル化学工業(株)製,登録商標)
移動相:n−ヘキサン/エタノール(14/1,v/v)
流速:1.0ml/分
カラム温度:35℃
検出波長:254nm
【0227】
(実施例3)(4R,5R)−5−(4−クロロフェニル)−4−メチル−2−[(シアノ)トシルメチレン]−オキサゾリジン(化合物番号I−44)の合成
【0228】
【化55】

【0229】
参考例2で得た、(1R,2R)−2−アミノ−1−(4−クロロフェニル)プロパン−1−オール8.3g、1−シアノ−2,2−ビス(メチルチオ)−1−トシルエチレン 4.36g、及びエタノール200mlを混合し、全容を一晩還流した。反応終了後、反応溶液に水を加えたものを酢酸エチルで抽出した。抽出液を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧下留去し油状物質を得た。それをカラムクロマトグラフィーで分離精製して目的物15.0gを得た。このものの融点、光学純度及び[α]34.0を下記に示す。
【0230】
融点:128.0〜130.0℃
光学純度(ee)>99.0%(HPLCより算出)
[α]34.0 −72.46°(c=0.500,CHCl
【0231】
[光学純度 HPLC分析条件]
カラム:CHIRALCEL OJ 4.6mmI.D.x250mm(ダイセル化学工業(株)製,登録商標)
移動相:n−ヘキサン/エタノール(2/1,v/v)
流速:1.0ml/分
カラム温度:35℃
検出波長:222nm
【0232】
(参考例3)光学分割による(1S,2S)−2−アミノ−1−(4−クロロフェニル)プロパン−1−オールの合成
【0233】
【化56】

【0234】
dl−スレオ−2−アミノ−1−(4−クロロフェニル)プロパン−1−オール10g、D(−)酒石酸8.1g、及び91%エタノール水溶液110mlを混合し、熱水浴にて加熱溶解し、その後室温にて一晩放置した。析出した塩を濾取した後、90%エタノール水溶液にて2回再結晶を繰り返すことにより精製し、6.0gの塩を得た。
このものの[α]30.8は、+14.24°(c=0.500,HO)であった。
【0235】
このものを25%アンモニア水で処理した後クロロホルムにて抽出した。抽出液を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に溶媒を減圧留去し、(1S,2S)−2−アミノ−1−(4−クロロフェニル)プロパン−1−オール3.0gを得た。このものの融点、光学純度及び[α]30.8を下記に示す。なお、光学純度についてはベンゾイル化した後にHPLC法にて定量分析した。
【0236】
融点:107〜109℃
光学純度(ee)>99.0%(HPLCより算出)
[α]30.8 +53.99°(c=0.500,CHCl
【0237】
[光学純度 HPLC分析条件]
カラム:CHIRALCEL OJ 4.6mmI.D.x250mm(ダイセル化学工業(株)製,登録商標)
移動相:n−ヘキサン/エタノール(14/1,v/v)
流速:1.0ml/分
カラム温度:35℃
検出波長:254nm
【0238】
(実施例4)(4S,5S)−5−(4−クロロフェニル)−4−メチル−2−[(シアノ)トシルメチレン]−オキサゾリジンの(化合物番号II−44)合成
【0239】
【化57】

【0240】
参考例3で得た、(1S,2S)−2−アミノ−1−(4−クロロフェニル)プロパン−1−オール2.0g、1−シアノ−2,2−ビス(メチルチオ)−1−トシルエチレン 3.2g、及びエタノール40mlを混合し、全容を一晩還流した。反応終了後、反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して油状物質を得た。それをカラムクロマトグラフィーで分離精製して、目的物4.0gを得た。このものの融点、光学純度及び[α]30.8を下記に示す。
【0241】
融点:128.0〜130.0℃
光学純度(ee)>99.0%(HPLCより算出)
[α]30.8 +64.77°(c=0.500,CHCl
【0242】
[光学純度 HPLC分析条件]
カラム:CHIRALCEL OJ 4.6mmI.D.x250mm(ダイセル化学工業(株)製,登録商標)
移動相:n−ヘキサン/エタノール(2/1,v/v)
流速:1.0ml/分
カラム温度:35℃
検出波長:222nm
【0243】
(参考例4)光学分割による(1S,2S)−2−アミノ−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オールの合成
【0244】
【化58】

【0245】
dl−スレオ−2−アミノ−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オール12.5g、D(−)酒石酸11.3g、及び92%エタノール水溶液125mlを混合し、熱水浴にて加熱溶解し、その後室温にて一晩放置した。析出した塩を濾取し、88〜90%エタノール水溶液中にて6回再結晶を繰り返すことにより精製し、6.5gの塩を得た。このものの[α]21.0は、+15.15°(c=0.574,MeOH)であった。
【0246】
次いで、この塩を25%アンモニア水で処理した後、クロロホルムにて抽出した。抽出液を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に溶媒を減圧留去して、(1S,2S)−2−アミノ−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オール2.98gを得た。このものの融点、光学純度及び[α]18.8を下記に示す。なお、光学純度についてはベンゾイル化した後にHPLC法にて定量分析した。
【0247】
融点:100〜102℃
光学純度(ee)>99.0%(HPLCより算出)
[α]18.8+30.10°(c=0.495,MeOH)
【0248】
[光学純度 HPLC分析条件]
カラム:CHIRALCEL OJ 4.6mmI.D.x250mm(ダイセル化学工業(株)製,登録商標)
移動相:n−ヘキサン/エタノール(9/1,v/v)
流速:1.0ml/分
カラム温度:30℃
検出波長:254nm
【0249】
(実施例5)(4S,5S)−5−(4−メチルフェニル)−4−メチル−2−[(tert−ブトキシカルボニル)フェニルスルホニルメチレン]−オキサゾリジン(化合物番号II−108)の合成
【0250】
【化59】

【0251】
参考例4で得た、(1S,2S)−2−アミノ−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オール2.0g、1−(tert−ブトキシカルボニル)−2,2−ビス(メチルチオ)−1−(フェニルスルホニル)エチレン4.36g、及びエタノール40mlを混合し、全容を一晩還流した。反応終了後、反応溶液に水を加え、酢酸エチルを用いて抽出した。抽出液を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して、油状物質を得た。それをカラムクロマトグラフィーで分離精製して、目的物2.97gを得た。このもののH−NMRスペクトルデータ、光学純度及び[α]20.5を下記に示す。
【0252】
H−NMR(DMSO−d,δppm)=1.25(s,9H),1.35(d,3H),2.3(s,3H),3.8−4.0(m,1H),5.5(d,1H),7.3(q,4H),7.4−7.7(m,3H),7.8(d,2H),9.45(br s,1H)
光学純度(ee)>99.0%(HPLCより算出)
[α]20.5 +33.15°(c=0.564,MeOH)
【0253】
[光学純度 HPLC分析条件]
カラム:CHIRALCEL OD−H 4.6mmI.D.x250mm(ダイセル化学工業(株)製,登録商標)
移動相:n−ヘキサン/エタノール(5/1,v/v)
流速:1.0ml/分
カラム温度:30℃
検出波長:254nm
【0254】
(参考例5)光学分割による(1S,2R)−2−アミノ−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オールの合成
【0255】
【化60】

【0256】
dl−エリスロ−2−アミノ−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オール12.5g、L(+)酒石酸11.3g、及び92%エタノール水溶液125mlを混合し、熱水浴にて加熱溶解し、その後室温にて一晩放置した。析出した塩を濾取した後、88〜90%エタノール水溶液中にて7回再結晶を繰り返すことにより精製し、5.8gの塩を得た。このものの[α]22.5は、+32.53°(c=0.500,MeOH)であった。
【0257】
次いで、この塩を25%アンモニア水で処理した後、クロロホルムにて抽出した。抽出液を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に溶媒を減圧留去して、(1S,2R)−2−アミノ−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オール2.56gを得た。
このものの融点、光学純度及び[α]17.0を下記に示す。
光学純度についてはベンゾイル化した後にHPLC法にて定量分析した。
【0258】
融点:82.5〜85.0℃
光学純度(ee)>99.0%(HPLCより算出)
[α]17.0+17.60°(c=0.500,MeOH)
【0259】
[光学純度 HPLC分析条件]
カラム:CHIRALCEL OJ 4.6mmI.D.x250mm(ダイセル化学工業(株)製,登録商標)
移動相:n−ヘキサン/エタノール(9/1,v/v)
流速:1.0ml/分
カラム温度:30℃
検出波長:254nm
【0260】
(実施例6)(4R,5S)−5−(4−メチルフェニル)−4−メチル−2−[(tert−ブトキシカルボニル)フェニルスルホニルメチレン]−オキサゾリジン(化合物番号III−108)の合成
【0261】
【化61】

【0262】
参考例5で得た、(1S,2R)−2−アミノ−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オール2.0g、1−(tert−ブトキシカルボニル)−2,2−ビス(メチルチオ)−1−(フェニルスルホニル)エチレン4.36g、及びエタノール40mlを混合し、全容を一晩還流した。反応終了後、反応溶液に水を加え、酢酸エチルを用いて抽出した。抽出液を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、油状物質を得た。それをカラムクロマトグラフィーで分離精製して目的物2.97gを得た。このもののH−NMRスペクトルデータ、光学純度及び[α]23.0を下記に示す。
【0263】
H−NMR(CDCl,δppm)=0.85(br d,3H)、1.38(br s,9H)、2.37(s、3H)、4.27−4.47(m,1H)、5.90(br d,1H)、7.00−7.33(m,4H)、7.33−7.68(m,3H)、7.83−8.05(m,2H)、9.22(br s,1H)
光学純度(ee)>99.0%(HPLCより算出)
[α]23.0 +136.94°(c=0.504,MeOH)
【0264】
[光学純度 HPLC分析条件]
カラム:CHIRALCEL OD−H 4.6mmI.D.x250mm(ダイセル化学工業(株)製,登録商標)
移動相:n−ヘキサン/エタノール(5/1,v/v)
流速:1.0ml/分
カラム温度:30℃
検出波長:254nm
【0265】
(比較例1)トランス−5−(4−クロロフェニル)−4−メチル−2−[(シアノ)トシルメチレン]−オキサゾリジンの合成
【0266】
【化62】

【0267】
スレオ−2−アミノ−1−(4−クロロフェニル)プロパン−1−オール10.0g、1−シアノ−2,2−ビス(メチルチオ)−1−トシルエチレン21.8g、及びエタノール300mlを混合し、全容を一晩還流した。反応終了後、反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して油状物質を得た。それをカラムクロマトグラフィーで分離精製して、147〜148℃の融点を有する目的物8.15gを得た。
【0268】
(分析試験例1)溶解度試験
血液中の溶解性の指標として、実施例3、4、及び比較例1で得られた各化合物について、水及びHanks’ balansed salt solution(以下、HBSSと略記する。)への溶解度を測定した。粉末状の各化合物を試験管に2mgずつ秤量し、水又はHBSSを5ml添加して超音波処理を行った。各試験管を25℃において30分間振とう後にポアサイズ0.45μmのフィルターにて濾過した濾液に等量のアセトニトリルを添加し、逆相系高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量分析した。各化合物の溶解度を第4表に示す。
【0269】
[HPLC分析条件]
カラム:イナートシルODS−3 4.0mmI.D.x150mm(GLサイエンス(株)製,登録商標)
移動相:メタノール/17mMリン酸(6/4,v/v)
流速:1.0ml/分
カラム温度:40℃
検出波長:265nm
【0270】
【表25】

【0271】
光学活性化合物である実施例3及び実施例4の化合物は、当該ラセミ体化合物である比較例1の化合物に比較して、HBSSへの溶解性が高くなっていた。
【0272】
次に、本発明の、前記式[I]の立体配置を有する光学活性化合物の抗炎症活性と安全性についての評価試験を行った。
【0273】
(薬理試験例1)抗炎症活性評価試験(1)
Carlson,R.P.らの方法(Agents and Actions,17(2):197−204(1985))及びChang,Jらの方法(Europian Journal of Pharmacology,142:197−205(1987).。)を参考にして行った。即ち、ICR系雄性マウス(7週齢)の右耳介の表裏にエタノールに溶解したPhorbol 12−Myristate 13−Acetate(以下、「TPA」と略記する。Sigma社製)5μg/20μLを塗布し、7時間後に両耳介一定部位の厚さを、デジタルノギス(JAPAN MICROMETER MFG.Co.Ltd.製)を用いて3回測定して各々の平均値を算出した。TPAを塗布した右耳介の厚さより無処置の左耳介の厚さを減じて耳介浮腫とした。
【0274】
被験化合物は0.1%Tween80/アセトン溶液に溶解し、同じく右耳介の表裏に塗布することによりその抗炎症活性を評価した。単回投与の場合にはTPA塗布の30分後に、2回投与を行う場合にはTPA塗布の30分前及び30分後に、毎回20μlの被験化合物溶液を塗布した。陽性対照としてはDexamethasone−21−acetate(以下、DEX−Acと略記する、Sigma社製)0.1%Tween80/アセトン溶液を被験化合物と同様に投与した。
【0275】
抗炎症活性は、溶媒対照区の耳介浮腫に対する阻害度(%)として算出した。国際公開03/000668号パンフレットに記載の比較例1の化合物の光学活性体化合物である実施例3の化合物、及び実施例4の化合物の抗炎症活性試験結果を第5表に示す。
【0276】
薬理試験においては各化合物の投与前及び試験翌日に体重を測定した。また、毒性所見を得る目的で、投与後のマウスの症状を観察し、更に、翌日の体重測定後に動物を安楽死させて解剖を行い、主要な内臓の状態を観察した。特に高薬量投与群において臓器の大きさが異なった脾臓についてはその湿重量を測定した。体重変化及び脾臓重量についての比較を第6表に示す。なお、第3表中の数字に付記した及び**は、Studentのt検定において各々p<5%及びp<1%の危険率で試験群No.1に対して統計的に有意な差が算出されたことを、表中のN.D.は非計測を、各々示す。また、第6表中の試験群No.は、第5表中の試験群No.に対応している。
【0277】
【表26】

【0278】
実施例3の化合物は強い抗炎症活性を示したが、実施例4の化合物は弱い抗炎症活性しか示さなかった。
【0279】
【表27】

【0280】
陽性対照化合物DEX−Ac投与群の脾臓は溶媒対照群のものに比較して有意に小さく、比較例1の化合物(ラセミ体)投与群において認められた脾臓の腫脹は、薬理活性成分である実施例3の化合物投与群には認められず、実施例4の化合物[(4S,5S)−(+)]投与群に認められた。
【0281】
本発明にかかる光学活性化合物は、当該ラセミ体化合物に比較してより副作用が少なく、より安全で、かつ、より優れた薬理活性を有する。そのため、その光学活性化合物を有効成分として含有する組成物は、PLA(2)活性の亢進を伴う病態症状を軽減し、その関連する疾患に非常に効果的な作用を示し、治療薬又は予防薬として有用である。
【0282】
以上の試験結果より、本発明の、式[I]の立体配置を有する光学活性化合物は、当該ラセミ体化合物より副作用が軽減し、より安全な活性特性を示すことは明らかである。また、一般に、化合物の結晶の融点が高いほど、また、等張塩類緩衝液への溶解性が低いほど、その血液中の溶解性は低くなり、ひいては投与された薬剤の体内動態は、薬効発現に不利となる。
【0283】
国際公開03/000668号パンフレットに記載の比較例1の化合物の融点が147〜148℃であるのに対して、その光学活性体化合物である実施例3の化合物及び実施例4の化合物の融点は、それぞれ128.0〜130.0℃と低かった。更に、哺乳動物体液に類似したpHの等張塩類緩衝液であるHBSSに対する溶解度を測定した結果、ラセミ体に比較して光学活性体の溶解性が向上した。
【0284】
次に、本発明の、式[VIII]、及び[XI]の立体配置を有する光学活性化合物がcPLA(2)阻害とは異なる抗炎症・抗アレルギー薬理活性を示すことを説明する。
【0285】
(薬理試験例2)抗炎症活性評価試験(2)
Chang,Jらの方法(Europian Journal of Pharmacology,142:197−205(1987))を参考にして行った。即ち、ICR系雄性マウス(7週齢。)の右耳介の表裏にアセトンに溶解したアラキドン酸(Sigma社製)5mg/20μLを塗布し、1時間後に両耳介一定部位の厚さを、デジタルノギス(JAPAN MICROMETER MFG.Co.Ltd.製)を用いて3回測定して各々の平均値を算出した。アラキドン酸を塗布した右耳介の厚さより無処置の左耳介の厚さを減じて耳介浮腫とした。
【0286】
被験化合物は0.1%Tween80/アセトン溶液に溶解し、同じく右耳介の表裏に塗布することによりその抗炎症活性を評価した。アラキドン酸塗布の30分前及び30分後に、毎回20μlの被験化合物溶液を2回塗布した。陽性対照としてはインドメタシン0.1%Tween80/アセトン溶液を被験化合物と同様に投与した。抗炎症活性は、溶媒対照区の耳介浮腫に対する阻害度(%)として算出した。抗炎症活性を第7表に示す。
【0287】
【表28】

【0288】
陽性対照化合物のインドメタシンはアラキドン酸より下流の脂質メディエーターの産生を阻害するため、本薬理試験において阻害活性を示すのに対して、実施例1の化合物はcPLA(2)より下流のアラキドン酸により惹起される炎症に対しては阻害活性を示さなかった。実施例5の化合物及び実施例6の化合物は強い抗炎症活性を示したことから、アラキドン酸より下流の脂質メディエーターに関与していることが示された。
【0289】
(薬理試験例3) 鎮痛活性評価試験
Inoue,K.,Motonaga,A.&Nishimura,T.の方法(Arzneimittel Forshung/Drug Research,41(1):235−239(1991))及びMurata,T.,らの方法(Nature,388:678−682(1997))を参考にして行った。即ち、0.75%酢酸水溶液7.0 mL/kgをICR系雄性マウス(6〜8週齢)の腹腔内に投与し、その5分後から20分後に観察されるwrithing(腹部を収縮させ、或いは体を捻り後肢を伸展させる特有の苦悶症状)の回数を測定した。
【0290】
本発明化合物は、Tween80:エタノール:蒸留水(2:2:96)に均質化して酢酸注射による刺激の惹起1時間前に経口投与した。本発明化合物の鎮痛作用は、投与によるwrithing反応回数の抑制にて評価した。陽性対照としてはインドメタシン及びイブプロフェンを投与した。鎮痛活性の測定結果を第8表に示す。
【0291】
【表29】

【0292】
陽性対照化合物のインドメタシン及びはイブプロフェンはアラキドン酸からのプロスタグランジン(以下、PGと略記する。)E産生を阻害するため、本薬理試験において鎮痛活性を示し、実施例1の化合物は、cPLA(2)阻害によりプロスタグランジン産生阻害を引き起こすため、同様に鎮痛活性を示す。
ところが、実施例5の化合物及び実施例6の化合物は鎮痛活性を示さなかったことから、アラキドン酸より下流の脂質メディエーターの中ではPGE以外に関与していることが示された。
【0293】
(薬理試験例4) 抗アレルギー炎症活性評価試験
Nagai H.らの方法(J Allergy Clin Immunol. 100:S39−44.(1997))を参考にして行った。即ち、BALB/c系雄性マウス(5週齢)の一方の耳介の表裏にアセトン:オリーブ油(3:1)に溶解した2,4−ジニトロフルオロベンゼン(以下、「DNFB」と略記する。)0.1%溶液25μLを塗布して感作した。その後、1週間毎に前記の0.1%DNFB溶液25μLを左右耳介に交互に塗布する感作を7回以上反復することにより、アレルギーI型反応を示す皮膚炎発症モデルを作成した。
【0294】
最終感作の1週間後に、同様に一方の耳介に0.1%DNFB溶液25μLを塗布することによりアレルギーI型反応を惹起した。感作物質を塗布する側の耳介の一定部位の厚さを、惹起前及び惹起後に経時的にデジタルノギス(JAPAN MICROMETER MFG.Co.Ltd.製)を用いて3回測定して各々の平均値を算出した。各測定時間の耳介の厚さより惹起前の耳介の厚さを減じて耳介浮腫とした。
【0295】
被験化合物は0.1%Tween80/アセトン溶液に溶解し、感作物質を塗布する側の耳介の表裏に塗布することによりその抗アレルギー炎症活性を評価した。単回投与の場合には0.1%DNFB溶液塗布の30分後に、2回投与を行う場合には0.1%DNFB溶液塗布の30分前及び15分後に、毎回20μlの被験化合物溶液を塗布した。陽性対照としてはDEX−Acの0.1%Tween80/アセトン溶液を被験化合物と同様に投与した。
【0296】
抗アレルギー炎症活性は、溶媒対照区の耳介浮腫に対する阻害度(%)として算出した。即時型反応に対する薬理活性としては惹起45分後の、遅発型反応に対する薬理活性としては惹起6時間後、及び遅延型反応に対する薬理活性としては惹起24時間後の各耳介浮腫に対する阻害度をもって評価し、抗アレルギーI型炎症活性としては、即時型反応及び遅発型反応に対する薬理活性をもって評価した。塗布投与の溶媒対照群の耳介浮腫は、惹起45分後に0.14±0.01、6時間後に0.23±0.01、及び24時間後には0.19±0.02mmであった。また、経口投与の溶媒対照群の耳介浮腫は、惹起45分後に0.18±0.01、6時間後に0.24±0.01、及び24時間後には0.21±0.01mmであった。抗アレルギー炎症活性の測定結果を第9表に示す。
【0297】
【表30】

【0298】
陽性対照化合物のDEX−Acは即時型のアレルギー反応に対しては作用が認められなかったが、遅発から遅延型のアレルギー炎症反応を抑制した。(4R,5R)とは異なる立体配置を有する光学活性化合物は、アラキドン酸より下流の脂質メディエーターの中ではPGE以外に関与していることが示されたが、実施例4の化合物及び実施例6の化合物は、アレルギー反応惹起後の即時反応から阻害し、抗アレルギー炎症作用が見出された。
【0299】
これらの試験結果等により、本発明にかかる、式[VIII]及び式[XI]の立体配置を有する光学活性化合物は、アラキドン酸より下流の脂質メディエーターに関連し、その中ではPGE以外に関与していることが示され、cPLA(2)阻害とは異なる抗炎症・抗アレルギー薬理活性が見出された。
【0300】
以上の試験結果等により、本発明にかかる式[I]の立体配置を有する光学活性化合物は優れたPLA(2)活性阻害作用を有し、低毒性で強力な抗炎症活性を有していることは明らかである。従って、本発明にかかる式[I]の立体配置を有する光学活性化合物を有効成分として含有する組成物は、PLA(2)活性の亢進を伴う病態症状を軽減し、その関連する疾患に非常に効果的な作用を示し、今までにない新しいタイプの治療薬又は予防薬として有用である。
【0301】
また、本発明にかかる式[VIII]及び式[XI]の立体配置を有する光学活性化合物は、cPLA(2)阻害とは異なり、アラキドン酸より下流の脂質メディエーターに関連し、その中ではPGE以外に関与することにより、抗炎症活性及び/又は抗アレルギー活性を示す。従って、本発明にかかる式[VIII]及び式[XI]の立体配置を有する光学活性化合物を有効成分として含有する組成物は、新規なアレルギー炎症の治療薬又は予防薬として有用である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[I]
【化1】

{式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。
は、式:−(CH−(nは0〜3の整数を表す。)で表される基、又は式:−CH=CH−で表される基を表す。
は、Aで置換されていてもよい(C1−6アルキル基、フェニルC1−6アルキル基、又はフェニル基)を表す。
は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C1−6ハロアルキル基、C3−8シクロアルキル基、(ハロゲン原子、C1−6アルキル基若しくはC1−6ハロアルキル基で置換されてもよい)フェニル基、ピリジル基、チエニル基、C1−6アルコキシ基、メチレンジオキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、ベンジル基、フェネチル基、フェノキシ基、フェニルチオ基、ベンゾイル基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6ハロアルキルカルボニル基、C1−6ハロアルコキシカルボニル基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、カルバモイル基、モノC1−6アルキルカルバモイル基又はジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。
は、Aで置換されていてもよい(フェニル基、ナフチル基、インダニル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基)、又はAで置換されていてもよい、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環基を表す。
は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C1−6ハロアルキル基、C3−7シクロアルキル基、(ハロゲン原子、C1−6アルキル基若しくはC1−6ハロアルキル基で置換されてもよい)フェニル基、ピリジル基、チエニル基、C1−6アルコキシ基、メチレンジオキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、ベンジル基、フェネチル基、フェノキシ基、フェニルチオ基、ベンゾイル基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6ハロアルキルカルボニル基、C1−6ハロアルコキシカルボニル基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、カルバモイル基、又はモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。
は、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルキルスルホニル基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
は、水素原子、Aで置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C1−6アルキルカルボニル基、C2−6アルケニルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C2−6アルケニルオキシカルボニル基、C1−6アルキルスルホニル基、C2−6アルケニルスルホニル基)、Aで置換されていてもよい(ベンゾイル基、フェニルスルホニル基)、又は式
【化2】

〔式中、Qは、−CO−、−CS−、又は−S(O)−を表し、mは1又は2を表す。
は、水素原子又はC1−6アルキル基を表す。
は、Aで置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルキルスルホニル基)、Aで置換されていてもよい(C3−8シクロアルキル基、C5−8シクロアルケニル基)、Aで置換されていてもよい、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環基、又はAで置換されていてもよい(フェニル基、ベンゾイル基、フェニルスルホニル基)を表す。
は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、アミノ基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニルオキシ基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルボニルアミノ基、モルホリノ基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されてもよいピリジル基を表す。
は、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルキルスルホニル基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
は、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、ピリジル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、又はモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。〕で表される基を表す。
は、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、アミノ基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニルオキシ基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルボニルアミノ基、モルホリノ基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されてもよいピリジル基を表す。
は、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、ピリジル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、又はモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、Aで置換されていてもよい(フェニルC1−6アルキル基、フェニル基)、又は式
【化3】

〔式中、Qは、−CO−又は−S(O)−(mは1又は2を表す。)を表す。
は、アミノ基、A10で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C1−6アルコキシ基、C2−6アルケニルオキシ基、C2−6アルキニルオキシ基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基)、A11で置換されていてもよい(C3−8シクロアルキル基、C5−8シクロアルケニル基)、A11で置換されていてもよい、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環基、又はA12で置換されていてもよい(フェニル基、フェノキシ基、アニリノ基)を表す。
10は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、アミノ基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニルオキシ基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基、モノ若しくはジC1−6アルキルカルボニルアミノ基、モルホリノ基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されてもよいピリジル基を表す。
11は、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルキルスルホニル基、又はC1−6アルコキシカルボニル基を表す。
12は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、ピリジル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、又はモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。〕で表される基を表す。
は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C1−6ハロアルキル基、C3−8シクロアルキル基、(ハロゲン原子、C1−6アルキル基若しくはC1−6ハロアルキル基で置換されてもよい)フェニル基、ピリジル基、チエニル基、C1−6アルコキシ基、メチレンジオキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルスルフィニル基、C1−6アルキルスルホニル基、モノ若しくはジC1−6アルキルアミノ基、C1−6ハロアルコキシ基、ベンジル基、フェネチル基、フェノキシ基、フェニルチオ基、ベンゾイル基、C1−6アルキルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6ハロアルキルカルボニル基、C1−6ハロアルコキシカルボニル基、C1−6アルキルカルボニルオキシ基、カルバモイル基、又はモノ若しくはジC1−6アルキルカルバモイル基を表す。}
で表される複素環化合物。
【請求項2】
5位の立体配置がRであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである請求項1に記載の複素環化合物。
【請求項3】
式[II]
【化4】

(式中、Rは前記と同じ意味を表し、R’は水素原子を除く前記Rと同じ意味を表す。)
で表されるビスメチルチオエチレン類と、式[III]
【化5】

(式中、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表される2−アミノエタノール類とを反応させることを特徴とする、式[I−1]
【化6】

(式中、R、R、R’、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサゾリジン化合物の製造方法。
【請求項4】
式[IV]
【化7】

(式中、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表される2−メチルチオ−2−チアゾリン類と、式[V]
【化8】

(式中、R’及びRは前記と同じ意味を表す。)
で表される活性メチレン類とを反応させることを特徴とする、式[I−2]
【化9】

(式中、R、R、R’、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるチアゾリジン化合物の製造方法。
【請求項5】
式[I−3]
【化10】

(式中、X、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサ(チア)ゾリジン類と、式[VI]
【化11】

〔式中、R’は、水素原子、Aで置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C1−6アルキルカルボニル基、C2−6アルケニルカルボニル基、C1−6アルコキシカルボニル基、C2−6アルケニルオキシカルボニル基、C1−6アルキルスルホニル基、C2−6アルケニルスルホニル基)、Aで置換されていてもよい(ベンゾイル基、フェニルスルホニル基)、又は式
【化12】

(R、R及びmは前記と同じ意味を表す。)
で表される基を表し、A、Aは前記と同じ意味を表し、Halはハロゲン原子を表す。〕
で表されるハライド類とを反応させることを特徴とする、式[I−4]
【化13】

(式中、X、R、R、R’、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサ(チア)ゾリジン化合物の製造方法。
【請求項6】
式[I−3]
【化14】

(式中、X、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサ(チア)ゾリジン類と、式[VII]
【化15】

(式中、Rは前記と同じ意味を表し、Zは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
で表される化合物とを反応させることを特徴とする、式[I−5]
【化16】

(式中、X、R、R、R、R、R、Q及びZは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサ(チア)ゾリジン化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の複素環化合物若しくはその複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
脂質メディエーターであるアラキドン酸及びその代謝物、及び/又はリゾリン脂質、及び/又は血小板活性化因子により媒介される炎症性疾患又は障害の治療薬である請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ホスホリパーゼA(2)活性の亢進を伴う病態の治療薬である請求項7又は8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
坑炎症剤である請求項7〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記炎症性疾患が、アナフィラキシー、アレルギー性炎症、喘息、鼻炎、気管支炎、肺炎、成人呼吸窮迫症候群、慢性閉鎖性肺疾患、炎症性腸管疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、虚血―再灌流における傷害、血管炎、動脈硬化、肝炎、腎炎、神経変性疾患、関節炎、皮膚炎、紫外線角化症、乾癬、敗血症性ショック、又は熱病である請求項7〜10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
アレルギー疾患治療剤である請求項7〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
免疫調節剤である請求項7〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
ホスホリパーゼA(2)活性阻害剤である請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項15】
哺乳動物に対して、請求項1又は2に記載の複素環化合物若しくはその複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を投与することを特徴とする、炎症性疾患又は障害の治療方法。
【請求項16】
式[VIII]
【化17】

(式中、X、R、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表される複素環化合物。
【請求項17】
5位の立体配置がSであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がトランスである請求項16に記載の複素環化合物。
【請求項18】
式[II]
【化18】

(式中、R’及びRは前記と同じ意味を表す。)
で表されるビスメチルチオエチレン類と式[IX]
【化19】

(式中、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表される2−アミノエタノール類とを反応させることを特徴とする、式[VIII−1]
【化20】

(式中、R、R、R’、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサゾリジン化合物の製造方法。
【請求項19】
式[X]
【化21】

(式中、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表される2−メチルチオ−2−チアゾリン類と、式[V]
【化22】

(式中、R’及びRは前記と同じ意味を表す。)
で表される活性メチレン類とを反応させることを特徴とする、式[VIII−2]
【化23】

(式中、R、R、R’、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるチアゾリジン化合物の製造方法。
【請求項20】
式[VIII−3]
【化24】

(式中、X、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサ(チア)ゾリジン類と、式[VI]
【化25】

(式中、R’は前記と同じ意味を表す。)
で表されるハライド類とを反応させることを特徴とする、式[VIII−4]
【化26】

(式中、X、R、R、R’、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサ(チア)ゾリジン化合物の製造方法。
【請求項21】
式[VIII−3]
【化27】

(式中、X、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサ(チア)ゾリジン類と、式[VII]
【化28】

(式中、R及びZは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物とを反応させることを特徴とする、式[VIII−5]
【化29】

(式中、X、R、R、R、R、R、Q及びZは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサ(チア)ゾリジン化合物の製造方法。
【請求項22】
請求項16又は17に記載の複素環化合物若しくはその複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項23】
脂質メディエーターであるアラキドン酸及びその代謝物により媒介される炎症性疾患又は障害の治療薬である請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
アラキドン酸カスケード下流の膜質メディエーターの変動に関わる病態の治療薬である請求項22又は23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
坑炎症剤である請求項22〜24のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記炎症性疾患が、アナフィラキシー、アレルギー性炎症、喘息、気管支炎、肺炎、鼻炎、結膜炎、腸炎、花粉症、蕁麻疹、又は皮膚炎である請求項22〜25のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項27】
アレルギー疾患治療剤である請求項22〜24のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項28】
免疫調節剤である請求項22〜24のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項29】
哺乳動物に対して、請求項16又は17に記載の複素環化合物若しくはその複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を投与することを特徴とする、炎症性疾患又は障害の治療方法。
【請求項30】
式[XI]
【化30】

(式中、X、R、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表される複素環化合物。
【請求項31】
5位の立体配置がSであり、かつ、4位の置換基:Rと5位の置換基:Q−Rとの立体配置がシスである請求項30に記載の複素環化合物。
【請求項32】
式[II]
【化31】

(式中、R’及びRは前記と同じ意味を表す。)
で表されるビスメチルチオエチレン類と、式[XII]
【化32】

(式中、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表される2−アミノエタノール類とを反応させることを特徴とする、式[XI−1]
【化33】

(式中、R、R、R’、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサゾリジン化合物の製造方法。
【請求項33】
式[XIII]
【化34】

(式中、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表される2−メチルチオ−2−チアゾリン類と、式[V]
【化35】

(式中、R’及びRは前記と同じ意味を表す。)
で表される活性メチレン類とを反応させることを特徴とする、式[XI−2]
【化36】

(式中、R、R、R’、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるチアゾリジン化合物の製造方法。
【請求項34】
式[XI−3]
【化37】

(式中、X、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサ(チア)ゾリジン類と、式[VI]
【化38】

(式中、R’は前記と同じ意味を表す。)
で表されるハライド類とを反応させることを特徴とする、式[XI−4]
【化39】

(式中、X、R、R、R’、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサ(チア)ゾリジン化合物の製造方法。
【請求項35】
式[XI−3]
【化40】

(式中、X、R、R、R、R及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサ(チア)ゾリジン類と、式[VII]
【化41】

(式中、R及びZは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物とを反応させることを特徴とする、式[XI−5]
【化42】

(式中、X、R、R、R、R、R、Q及びZは前記と同じ意味を表す。)
で表されるオキサ(チア)ゾリジン化合物の製造方法。
【請求項36】
請求項30又は31に記載の複素環化合物若しくはその複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項37】
脂質メディエーターであるアラキドン酸及びその代謝物により媒介される炎症性疾患又は障害の治療薬である請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
アラキドン酸カスケード下流の膜質メディエーターの変動に関わる病態の治療薬である請求項36又は37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
坑炎症剤である請求項36〜38のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記炎症性疾患が、アナフィラキシー、アレルギー性炎症、喘息、気管支炎、肺炎、鼻炎、結膜炎、腸炎、花粉症、蕁麻疹、又は皮膚炎である請求項36〜39のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項41】
アレルギー疾患治療剤である請求項36〜38のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項42】
免疫調節剤である請求項36〜38のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項43】
哺乳動物に対して、請求項30又は31に記載の複素環化合物若しくはその複合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を投与することを特徴とする、炎症性疾患又は障害の治療方法。


【公開番号】特開2006−104197(P2006−104197A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262990(P2005−262990)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】