説明

光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンおよびその前駆体の製造方法

【課題】光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンおよびその前駆体を簡便に効率よく工業的に製造することができる方法を提供すること。
【解決手段】式(II):


(式中、RはC1−5アルキル基である)
で表される2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステルに、R体を優先的に加水分解し得る、アスペルギルス(Aspergillus)属の微生物由来のエステラーゼを作用させることにより光学分割する、式(III):


(式中、Rは上記で定義した通りである)
で表される光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンおよびその前駆体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下式で表されるエポチロン誘導体は、抗癌剤として有用である。
【0003】
【化1】

【0004】
エポチロン誘導体の合成において、C〜C12のビルディングブロックとしては、光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンが有用であり、当該化合物は光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸からそのエステルを経て誘導することができる(特許文献1および2、非特許文献1および2を参照)。2−メチル−6−オキソヘプタン酸については、種々の製法が提案されている(非特許文献3〜8を参照)。しかしながら、非特許文献3〜6に記載の製法は、対応する天然物を抽出・単離し、それを酸化する方法であるため、原料入手に問題があった。また、非特許文献6に記載の製法は、(R)体の製法である。さらに、非特許文献7および8に記載の製法は、過マンガン酸カリウムを用いて2,6−ジメチルシクロヘキサノンを酸化する方法であるが、得られる生成物は2−メチル−6−オキソヘプタン酸のラセミ体であり、光学的に不活性であった。
【0005】
【特許文献1】DE19751200
【特許文献2】WO2005/003071
【非特許文献1】J.A.C.S.,119,7974(1997)
【非特許文献2】Chem.Eur.J.,2,1477(1996)
【非特許文献3】Natural Product Letters,3,189(1993)
【非特許文献4】J.Nat.Prod.,66,251(2003)
【非特許文献5】Natural Product Letters,4,51(1994)
【非特許文献6】Helv.Chim.Acta,73,733(1990)
【非特許文献7】J.Med.Chem.,26,426(1983)
【非特許文献8】Collect.Czech.Chem.Commun.,30,1214(1965)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンおよびその前駆体である光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル等を簡便に効率よく工業的に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(RS混合物)を、特定のエステラーゼを作用させることにより光学分割すると、高い光学純度で(S)体が得られるという知見を得、この光学分割を利用すれば、光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンを簡便に効率よく工業的に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1] 式(II):
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、RはC1−5アルキル基を表す。)
で表される2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(以下、2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)ともいう)に、R体を優先的に加水分解し得る、アスペルギルス(Aspergillus)属の微生物由来のエステラーゼを作用させることにより光学分割する、式(III):
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
で表される光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(以下、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)ともいう)の製造方法。
【0013】
[2] 光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)のカルボニル基を保護して、式(IV):
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、Aは酸素原子または硫黄原子を表し、Rは前記と同じ意味を表し、RおよびRは、それぞれ独立してC1−5アルキル基を表すか、または互いに結合してC2−5アルキレン基を表す。)
で表される光学活性(S)−ケタールエステル(以下、光学活性(S)−ケタールエステル(IV)ともいう)を得る工程をさらに含む上記[1]に記載の製造方法。
【0016】
[3] 光学活性(S)−ケタールエステル(IV)を還元して、式(V):
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、A、RおよびRは、前記と同じ意味を表す。)
で表される光学活性(S)−ケタールアルコール(以下、光学活性(S)−ケタールアルコール(V)ともいう)を得る工程をさらに含む上記[2]に記載の製造方法。
【0019】
[4] 2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)に、R体を優先的に加水分解し得る、アスペルギルス属の微生物由来のエステラーゼを作用させることにより光学分割して、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)を得る工程;
光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)のカルボニル基を保護して、光学活性(S)−ケタールエステル(IV)を得る工程;
光学活性(S)−ケタールエステル(IV)を還元して、光学活性(S)−ケタールアルコール(V)を得る工程;および
光学活性(S)−ケタールアルコール(V)を脱保護して、式(I):
【0020】
【化6】

【0021】
で表される光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オン(以下、光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オン(I)ともいう)を得る工程;
を含む、光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オン(I)の製造方法。
【0022】
[5] 光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)の光学純度が95〜100%eeである上記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
【0023】
[6] Rがメチル基である上記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
【0024】
[7] RおよびRが、共にメチル基であるか、または互いに結合してエチレン基またはプロピレン基を表す上記[2]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
【0025】
[8] アスペルギルス属の微生物がアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)である上記[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
【0026】
[9] アスペルギルス属の微生物がアスペルギルス・フラバスATCC11492株である上記[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
【0027】
[10] 式(IV’):
【0028】
【化7】

【0029】
(式中、Aは酸素原子または硫黄原子であり、R1’はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であり、かつR2’およびR3’は共にメチル基であるか、あるいは、Aは酸素原子または硫黄原子であり、R1’はメチル基であり、かつR2’およびR3’は互いに結合してエチレン基またはプロピレン基を表す。)
で表される光学活性(S)−ケタールエステル(以下、光学活性(S)−ケタールエステル(IV’)ともいう)。
【0030】
[11] Aが酸素原子であり、かつR1’、R2’およびR3’が共にメチル基である上記[10]に記載の光学活性(S)−ケタールエステル。
【発明の効果】
【0031】
本発明の製造方法によれば、光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オン(I)およびその前駆体である光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)を簡便に効率よく工業的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明を詳細に説明する。
まず、本明細書において使用する基の定義を以下に説明する。
「C1−5アルキル基」とは、炭素数1〜5個の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。中でも、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0033】
「C2−5アルキレン基」とは、炭素数2〜5個の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。好ましくは、エチレン基、プロピレン基である。
【0034】
は、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基であり、より好ましくはメチル基である。
およびRは、好ましくは、共にメチル基であるか、あるいは一緒になってエチレン基またはプロピレン基を形成する。
【0035】
本発明では、まず、2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)に、R体を優先的に加水分解し得る、アスペルギルス属の微生物由来のエステラーゼを作用させることにより光学分割して、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)を製造する(工程a)。
【0036】
2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)には、−CO基のα位の炭素原子を不斉中心とする2種の光学異性体(S体とR体)が存在するが、本発明の製造方法に用いられる2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)は、これらの光学異性体を等量含むラセミ体であっても、一方の光学異性体を過剰に(任意の割合で)含む混合物であってもよい。好ましくはラセミ体である。なお、式(II)における波線は、メチル基との単結合を表し、該メチル基が結合する炭素原子を不斉中心として、2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)が、上記のラセミ体または上記の一方の光学異性体を過剰に(任意の割合で)含む混合物であることを表す。
【0037】
2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)は、例えば、上記特許文献1、2、7、非特許文献1、2等の記載を参照して、2−メチル−6−オキソヘプタン酸をエステル化することによって得ることができる。また、この2−メチル−6−オキソヘプタン酸は、例えば、非特許文献7、8等を参照して、工業的に容易に入手可能な2,6−ジメチルシクロヘキサノンを、過マンガン酸カリウムを用いて酸化することによって得ることができる。
【0038】
工程aで使用されるエステラーゼは、R体を優先的に加水分解し得るものである。本発明では、R体を優先的に加水分解し得る、アスペルギルス属(Aspergillus)の微生物由来のエステラーゼ(以下、単にエステラーゼともいう)が使用され、好ましくは、R体を優先的に加水分解し得る、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)由来のエステラーゼ、より好ましくは、アスペルギルス・フラバスATCC11492株由来のエステラーゼが使用される。また、これらのエステラーゼは、これらの微生物が有する酵素遺伝子が導入されることによって形質転換された組換え微生物が産生するエステラーゼであっても、これら微生物から突然変異剤もしくは紫外線等の処理により誘導された突然変異体由来のエステラーゼであっても、あるいは遺伝子工学的手法によりこれらエステラーゼのアミノ酸配列中の特定アミノ酸が1個ないし数個、欠如、付加あるいは置換されてなる変異型エステラーゼ等であってもよい。これらの微生物は、通常の方法、例えば、滅菌した液体培地に該微生物を接種し、20〜40℃で往復振とう培養する方法等によって容易に液体培養することができる。また、必要に応じて固体培養してもよい。なお、動物由来のものとしては、例えば、ステアプシン、パンクレアチン、豚内蔵、羊内蔵を由来とするもの等が挙げられる。植物由来のものとしては、例えば、小麦胚芽を由来とするもの等が挙げられる。
【0039】
エステラーゼの形態は、特に限定されるものではなく、精製エステラーゼ、粗エステラーゼ、エステラーゼ含有物、微生物培養液、微生物培養物、菌体、菌体培養液、およびそれらを処理したもの等の種々の形態で用いることができるが、工業的な製造方法を提供する観点から、上記のような種々の形態のエステラーゼを固定化したものを用いることが好ましい。固定化の方法としては、該エステラーゼを、例えば、シリカゲル、セラミックス等の無機担体、セルロース等の天然樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の合成樹脂等へ、吸着法、ポリアクリルアミド法、含硫多糖類ゲル法、アルギン酸ゲル法、寒天ゲル法等の公知の方法を用いて固定化する方法が挙げられる。これらの中で、吸着法によって固定化されたエステラーゼが好ましく用いられる。
【0040】
エステラーゼの使用量は、加水分解が立体選択性よく良好に進行するよう、エステラーゼの形態、酵素活性等に応じて適宜選択すればよい。例えば、エステラーゼが精製エステラーゼまたは粗エステラーゼの形態である場合、その使用量は、2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)1重量部に対して、通常0.001〜2重量部の範囲であり、好ましくは0.002〜0.5重量部の範囲である。また、微生物培養物、菌体及びそれらの処理物の形態である場合の使用量は、2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)1重量部に対して、通常0.01〜200重量部の範囲であり、好ましくは0.1〜50重量部の範囲である。
【0041】
エステラーゼによる加水分解は、水、或いは水と有機溶媒の混合溶媒中で行われる。
水の使用量は、2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)1重量部に対して、通常0.5〜200重量部、好ましくは0.5〜20重量部である。
【0042】
有機溶媒としては、疎水性有機溶媒と親水性有機溶媒が挙げられ、疎水性有機溶媒としては、例えば、メチルtert−ブチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類等が挙げられる。親水性有機溶媒としては、例えば、tert−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;アセトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらの疎水性有機溶媒および親水性有機溶媒はそれぞれ、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよく、あるいは、疎水性有機溶媒と親水性有機溶媒とを組み合わせて用いてもよい。
【0043】
有機溶媒の使用量は、2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)1重量部に対して、通常は200重量部以下であり、好ましくは0.1〜100重量部である。
【0044】
また、エステラーゼによる加水分解は、エステラーゼの種類にもよるが、加水分解の立体選択性が低下しないような値、通常はpH4〜10、好ましくはpH6〜8に維持して行われる。
pHを上記範囲とするには、緩衝水溶液が用いられ、緩衝水溶液としては、例えば、リン酸アルカリ金属塩水溶液(リン酸ナトリウム水溶液、リン酸カリウム水溶液等)等の無機酸塩の緩衝水溶液、酢酸アルカリ金属塩水溶液(酢酸ナトリウム水溶液、酢酸カリウム水溶液等)等の有機酸塩の緩衝水溶液等が挙げられる。この緩衝液の濃度は、好ましくは0.01〜0.3M、より好ましくは0.05〜0.1Mである。なお、この緩衝液は溶媒も兼ねる。
【0045】
また、上記の範囲にpHを維持するために、必要に応じて、反応系に塩基を添加して調整してもよい。かかる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等のリン酸塩;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;アンモニア等が挙げられる。これらの塩基は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。塩基は、通常は水溶液として添加されるが、有機溶媒と水との混合溶媒の溶液として添加してもよい。この有機溶媒としては、上記と同様のものが挙げられる。また、塩基は、固体として添加してもよく、懸濁液として添加してもよい。
【0046】
加水分解を行う方法は、特に限定されるものではなく、例えば、水(例えば、緩衝水溶液)、2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)およびエステラーゼ(例えば、樹脂等に固定化したもの)を混合する方法が挙げられる。有機溶媒を用いる場合には、該有機溶媒中で水、2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)およびエステラーゼを混合すればよい。
【0047】
反応温度は、高すぎるとエステラーゼの安定性が低下する傾向にあり、低すぎると反応速度が低下する傾向にある。反応温度は、好ましくは5〜65℃程度の範囲であり、より好ましくは10〜50℃程度の範囲である。反応時間は、反応温度によっても異なるが、通常1〜100時間である。
【0048】
上記加水分解によって、2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)中のR体が立体選択的に、その立体配置を保持したままカルボン酸に加水分解される(即ち、光学活性(R)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸が生成する)。
【0049】
かくして、未反応の光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)および加水分解生成物である光学活性(R)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸を含む反応混合物が得られる。
反応混合物中のこれらの化合物を分離するために、又は反応で使用したエステラーゼ、緩衝剤(緩衝水溶液の構成成分)等とこれらの化合物とを分離するために、さらに後処理操作を行ってもよい。後処理操作としては、例えば、反応混合物中の溶媒を留去した後にシリカゲルクロマトグラフィーを用いて分離精製する方法、分液操作により分離精製する方法等が挙げられる。具体的には、加水分解後の反応混合物を、例えば、次のような処理に供することによって、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)を単離することができる。まず、反応混合物中に不溶のエステラーゼ、固定化担体等が存在する場合は、反応混合物を必要に応じて濾過助剤を通して濾過し、これらの不溶物を除去する。ここで、濾過性を改善するために、エステラーゼに加熱変性または酸変性の処理を施してもよく、あるいは、ボディーフィード濾過(反応混合物に濾過助剤を混合して濾過する)を行ってもよい。次いで、必要により、濾液のpHを6〜9に調整した後、水層と有機層とに分液し、有機層として光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)の溶液を得る。ここで、分液性を改善するために、濾液にメタノール、エタノール、n−ブタノール等のアルコール類を添加してもよい。加水分解において疎水性有機溶媒を用いた場合等には、得られた反応混合物をそのまま分液してもよいが、加水分解において疎水性有機溶媒を用いなかった場合、その使用量が少ないために容易には分液できない場合、あるいは水の使用量が少ないために容易には分液できない場合等には、疎水性有機溶媒または水等を適宜加えた後に分液すればよい。疎水性有機溶媒としては、例えば、メチルtert−ブチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。
【0050】
次いで、得られた光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)の有機溶媒溶液から有機溶媒を留去することによって、目的の光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)を取り出すことができる。得られた光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)はさらに、蒸留、カラムクロマトグラフィー処理等によって精製してもよい。
【0051】
なお、加水分解生成物である光学活性(R)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸は、分液後の水層に含まれており、これは、水を留去すること、あるいは中和処理後に有機溶媒を用いて抽出すること等によって、容易に水層から取り出すことができる。得られた光学活性(R)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸は、エステル化およびラセミ化の処理に供することによって、2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)として再利用することができる。
【0052】
このようにして得られた光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)の光学純度は、好ましくは90〜100%eeであり、より好ましくは95〜100%eeであり、最も好ましくは98〜100%eeである。
【0053】
この光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)は、以下の工程b〜dにより、目的とする光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オン(I)へと導くことができる。
【0054】
(工程b)
この工程は、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)のカルボニル基を保護して、光学活性(S)−ケタールエステル(IV)を得る工程である。なお、本発明においては、光学活性(S)−ケタールエステル(IV)は、光学活性(S)−チオケタールエステルを含むものとする。
【0055】
カルボニル基の保護方法は、特に限定されるものではなく、カルボニル基をケタール基(A=O)またはチオケタール基(A=S)に変換する(即ち、カルボニル基を保護する)ために当該分野で通常用いられている任意の方法を採用することができる。例えば、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)を、有機溶媒中、酸触媒存在下、RおよびRに対応するアルコール類またはオルトギ酸エステル類或いはチオール類と反応させる方法が挙げられる。
【0056】
有機溶媒としては、反応の進行を妨げない限り特に限定されるものではなく、例えば、メチルtert−ブチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類;トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)の種類等に応じて適宜調整すればよく、通常、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)1重量部に対して0.5〜50重量部である。
【0057】
酸触媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、塩酸、塩化アンモニウム等の無機酸;カンファースルホン酸、p−トルエンスルホン酸一水和物等の有機酸;アンバーリスト等の強酸性イオン交換樹脂類等が挙げられる。酸触媒の使用量は、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)1当量に対して、好ましくは0.001〜0.5当量であり、より好ましくは0.005〜0.2当量である。
【0058】
およびRに対応するアルコール類としては、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。アルコール類の使用量は、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)1当量に対して、好ましくは1〜50当量であり、より好ましくは2〜10当量であり、場合によっては溶媒量であってもよい。
【0059】
およびRに対応するオルトギ酸エステル類としては、特に限定されるものではなく、例えば、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルトギ酸プロピル等が挙げられる。オルトギ酸エステルの使用量は、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)1当量に対して、好ましくは1〜50当量であり、より好ましくは2〜10当量である。
【0060】
およびRに対応するチオール類としては、特に限定されるものではなく、例えば、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、イソプロパンチオール、ブタンチオール、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール等が挙げられる。チオール類の使用量は、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)1当量に対して、好ましくは1〜50当量であり、より好ましくは2〜10当量であり、場合によっては溶媒量であってもよい。
【0061】
反応温度は、好ましくは10〜120℃であり、より好ましくは20〜60℃である。反応時間は、反応温度によっても異なるが、通常10分〜50時間である。
【0062】
上記反応で得られた反応混合物を、例えば、分液操作等に供することによって、光学活性(S)−ケタールエステル(IV)を単離することができる。単離した光学活性(S)−ケタールエステル(IV)は、必要に応じて蒸留、クロマトグラフィー等の慣用の手段により精製することができる。
【0063】
(工程c)
この工程は、光学活性(S)−ケタールエステル(IV)を還元して、光学活性(S)−ケタールアルコール(V)を得る工程である。なお、本発明においては、光学活性(S)−ケタールアルコール(V)は、光学活性(S)−チオケタールアルコールを含むものとする。
【0064】
還元方法は、特に限定されるものではなく、カルボン酸エステルをアルコールに還元するために当該分野で通常用いられている任意の方法を採用することができる。例えば、光学活性(S)−ケタールエステル(IV)を、有機溶媒中、還元剤と反応させる方法が挙げられる。
【0065】
有機溶媒としては、反応の進行を妨げない限り特に限定されるものではなく、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル類;ヘキサン、ヘプタン、トルエン等の炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、光学活性(S)−ケタールエステル(IV)の種類等に応じて適宜調整すればよく、通常、光学活性(S)−ケタールエステル(IV)1重量部に対して1〜100重量部である。
【0066】
還元剤としては、通常、エステルを還元してアルコールを与えるものが用いられる。例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム等の水素化ホウ素アルカリ金属塩;水素化トリエチルホウ素リチウム等の水素化トリアルキルホウ素アルカリ金属塩;水素化アルミニウムリチウム等の水素化アルミニウムアルカリ金属塩;水素化ジイソブチルアルミニウム等の水素化ジアルキルアルミニウム;等が挙げられる。還元剤の使用量は、光学活性(S)−ケタールエステル(IV)1当量に対して、好ましくは0.5〜20当量であり、より好ましくは1〜10当量である。
【0067】
反応温度は、好ましくは−78〜60℃であり、より好ましくは−40〜30℃である。反応時間は、反応温度によっても異なるが、通常1〜70時間である。
【0068】
(工程d)
この工程は、光学活性(S)−ケタールアルコール(V)を脱保護して、光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オン(I)を得る工程である。
脱保護方法は、特に限定されるものではなく、工程bで保護されたカルボニル基を脱保護する(即ち、ケタール基(A=O)またはチオケタール基(A=S)をカルボニル基に変換する)ために当該分野で通常用いられている任意の方法を採用することができる。例えば、水或いは有機溶媒中、酸処理する方法が挙げられる。
【0069】
有機溶媒としては、反応の進行を妨げない限り特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;アセトン等のケトン類;トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の炭化水素類;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、光学活性(S)−ケタールアルコール(V)の種類等に応じて適宜調整すればよく、通常、光学活性(S)−ケタールアルコール(V)1重量部に対して2〜50重量部である。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、また、水と混合して用いてもよい。
【0070】
酸としては、特に限定されるものではなく、例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸;トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、オキザリル酸等の有機酸;アンバーリスト等の強酸性イオン交換樹脂類等が挙げられる。酸の使用量は、光学活性(S)−ケタールアルコール(V)1当量に対して、好ましくは0.001〜50当量であり、より好ましくは0.1〜10当量である。
【0071】
反応温度は、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは20〜80℃である。反応時間は、反応温度によっても異なるが、通常30分〜24時間である。
【0072】
なお、チオケタール基(A=S)の場合には、上記の酸処理以外に、金属塩、酸化剤、ハロゲン化剤等の反応試剤を用いる方法もあり、反応性の点から、当該方法が好ましい。
金属塩としては、過塩素酸銀(I)、酸化銀、硝酸銀等の銀塩;塩化水銀、酸化水銀等の水銀塩;硝酸タリウム(III)、トリフルオロ酢酸タリウム(III)等のタリウム塩;塩化銅(I)、酸化銅(I)等の銅塩が挙げられる。酸化剤としては、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)、m−クロロ過安息香酸(mCPBA)、セリウムアンモニウムニトリル、過ヨウ素酸ナトリウム、過酸化水素、分子状酸素等が挙げられる。ハロゲン化剤としては、ヨウ素、N−ブロモスクシンイミド、N−クロロスクシンイミド等が挙げられる。これら反応試剤の使用量は、光学活性(S)−ケタールアルコール(V)1当量に対して、好ましくは1〜20当量であり、より好ましくは1〜10当量である。
【0073】
反応溶媒としては、有機溶媒、或いは有機溶媒と水の混合溶媒が用いられる。有機溶媒としては、反応の進行を妨げない限り特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;アセトン等のケトン類;トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の炭化水素類;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、光学活性(S)−ケタールアルコール(V)の種類等に応じて適宜調整すればよく、通常、光学活性(S)−ケタールアルコール(V)1重量部に対して1〜100重量部である。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよい。
【0074】
反応温度は、好ましくは−45〜160℃であり、より好ましくは0〜80℃である。反応時間は、反応温度によっても異なるが、通常5分〜20時間である。
【0075】
このようにして得られた光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オン(I)は、必要に応じて、蒸留、クロマトグラフィー等の慣用の手段により精製することができる。なお、工程b〜dは、別個の工程として独立して行ってもよく、あるいは連続した単一の工程として行ってもよい。
【0076】
あるいは、工程aおよび工程bの代わりに、以下の工程AおよびBを行ってもよい。
工程A:2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(II)のカルボニル基を保護して、式(VI):
【0077】
【化8】

【0078】
(式中、A、R、RおよびRは上記で定義した通りである。)
で表されるケタールエステル(以下、ケタールエステル(VI)ともいう)を得る工程、および
工程B:ケタールエステル(VI)に、R体を優先的に加水分解し得る、アスペルギルス属の微生物由来のエステラーゼを作用させることにより光学分割して、光学活性(S)−ケタールエステル(IV)を得る工程。
【0079】
なお、工程Aは工程bと同様の方法により行うことができる。また、工程Bは工程aと同様の方法により行うことができる。
【0080】
光学活性(S)−ケタールエステル(IV)のうち、式(IV’):
【0081】
【化9】

【0082】
(式中、Aは酸素原子または硫黄原子であり、R1’はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であり、かつR2’およびR3’は共にメチル基であるか、あるいは、Aは酸素原子または硫黄原子であり、R1’はメチル基であり、かつR2’およびR3’は互いに結合してエチレン基またはプロピレン基を表す。)
である化合物は新規化合物である。また、光学活性(S)−ケタールアルコール(V)も新規化合物である。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を参考例および実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
参考例1
2−メチル−6−オキソヘプタン酸のラセミ体の合成(その1)
2,6−ジメチルシクロヘキサノン(120.0g、0.95mol)と水(600ml)との混合物を激しく攪拌しながら、過マンガン酸カリウム(195.7g、1.24mol)の水(1390ml)の懸濁液を30℃以下で約1時間かけて注意深く添加し、一晩室温で攪拌した。生成した二酸化マンガンを濾過し、濾過ケーキをメチルtert−ブチルエーテル(250ml)および水(250ml)で洗浄した。濾液の有機層を分離し、水層を35%濃塩酸(約150ml)でpH 1.0とし、塩化ナトリウム(400g)を加え、酢酸エチル(300ml×5)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、得られた残渣のオイルを真空ポンプで減圧蒸留した。沸点130〜144℃/267Paの留分を採集し、79.92g(収率53.2%)の2−メチル−6−オキソヘプタン酸のラセミ体を得た。
【0085】
参考例2
2−メチル−6−オキソヘプタン酸のラセミ体の合成(その2)
2,6−ジメチルシクロヘキサノン(93.0g、0.737mol)、水(1057ml)およびアセトン(333ml)を2Lのコルベンに仕込み、温水バスにて、内温50℃まで昇温した。攪拌下、45〜55℃にて、約9時間半かけて過マンガン酸カリウム(326g、2.06mol)を9分割して添加した。同温度にて約2時間攪拌した。同温度にて、生成した二酸化マンガンを直径12cmのヌッチェを用いて濾過し、水(300ml)およびアセトン(100ml)で濾上物を洗いこんだ。濾液をバス温40℃、14.7〜17.3kPaで減圧下攪拌し、アセトンを留去した。
こうして得られた水溶液に食塩(330g)を添加して溶解し、酢酸エチル(200ml)で洗浄した。さらにTHF(200ml)で洗浄後、THF(500ml)を加え、35%合成塩酸(107ml)を滴下し、水溶液のpHを8.7から0.81まで酸性にした。THF層と水層とに分液した後、水層をさらにTHF(150ml)で抽出し、最初のTHF層と合わせた。
得られたTHF溶液に塩化マグネシウム(4.0g)を添加し、30分間攪拌した。THF層から分離してくる水層を分液して除去した。この後THFをバス温40℃にて減圧留去し、さらにバス温50℃にて、マグネティックスターラーで攪拌しつつ真空ポンプ(133Pa)にて60分掃引し、106.27g(含量93.9%(ガスクロマトグラフィー(GC);対蒸留品)、純度換算収率85.7%)の2−メチル−6−オキソヘプタン酸のラセミ体を得た。
【0086】
参考例3
2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのラセミ体の合成
2−メチル−6−オキソヘプタン酸のラセミ体43g(純度99.65%、0.27mmol)をメタノール214.25gに溶解させた後、濃硫酸2.14gを加えて混合した。次いで、混合物を65℃に昇温後、同温度で5時間反応させた。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、反応混合物を元の重量の4分の1程度になるまで減圧下で濃縮した後、水30gを加えた。さらにメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)128.55gを加えた後、攪拌下、室温にて5%炭酸水素ナトリウム水溶液55.06gを滴下した。得られた混合物を室温にて充分に攪拌した後、分液し、水層をさらにMTBE64.27gで分液した。得られた有機層を合わせ、減圧下で濃縮し、2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのラセミ体の粗生成物45.4g(含量94.3%、収率92%)を無色油状物として得た。得られた粗生成物をそのまま次の反応に使用した(なお、得られた粗生成物は、必要に応じて蒸留(沸点107℃/1333Pa)後、次の反応に使用してもよい)。
【0087】
実施例1
2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのラセミ体のアスペルギルス・フラバスATCC11492株由来のエステラーゼを用いた加水分解による光学分割(その1)
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)5.0gに2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのラセミ体1.0g(5.75mmol)を懸濁させた。懸濁液を10℃に冷却後、固定化されたアスペルギルス・フラバスATCC11492株由来のエステラーゼ(公開特許公報2003−70471記載の方法により調製した)0.7g(水分率56%、酵素活性4028KU/Kg、ドライ換算)を加え、4%NaOH水溶液を適宜加えてpHを6〜7に維持しながら、10℃にて23時間撹拌した。その後、反応液の一部を取って、HPLC〔Chiralpak AS−H、4.6mm×25cm(ダイセル社製)〕にて分析し、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルの光学純度及び反応収率を求めた。その結果、光学純度は100%ee、反応収率は47%(光学純度より算出した値)であった。
参考として、加水分解生成物である光学活性(R)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸の光学純度は90.4%ee、反応収率は52.5%(光学純度より算出した値)であった。
【0088】
実施例2
2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのラセミ体のアスペルギルス・フラバスATCC11492株由来のエステラーゼを用いた加水分解による光学分割(その2)
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)5.0gに2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのラセミ体1.0g(5.75mmol)とメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)2.0gとを懸濁させた。懸濁液を10℃に冷却後、固定化されたアスペルギルス・フラバスATCC11492株由来のエステラーゼ(公開特許公報2003−70471記載の方法により調製した)0.7g(水分率56%、酵素活性4028KU/Kg、ドライ換算)を加え、4%NaOH水溶液を適宜加えてpHを6〜8に維持しながら、10℃にて23時間撹拌した。その後、反応液の一部を取って、HPLC〔Chiralpak AS−H、4.6mm×25cm(ダイセル社製)〕にて分析し、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルの光学純度及び反応収率を求めた。その結果、光学純度は100%ee、反応収率は47%(光学純度より算出した値)であった。
参考として、加水分解生成物である光学活性(R)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸の光学純度は88.2%ee、反応収率は53%(光学純度より算出した値)であった。
【0089】
実施例3
2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのラセミ体のアスペルギルス・フラバスATCC11492株由来のエステラーゼを用いた加水分解による光学分割(その3)
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)5.0gに2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのラセミ体1.0g(5.75mmol)とMTBE2.0gとを懸濁させた。懸濁液を10℃に冷却後、固定化されたアスペルギルス・フラバスATCC11492株由来のエステラーゼ(公開特許公報2003−70471記載の方法により調製した)0.1g(水分率56%、酵素活性4028KU/Kg、ドライ換算)を加え、4%NaOH水溶液を適宜加えてpHを6〜8に維持しながら、10℃にて99時間撹拌した。その後、反応液の一部を取って、HPLC〔Chiralpak AS−H、4.6mm×25cm(ダイセル社製)〕にて分析し、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルの光学純度及び反応収率を求めた。その結果、光学純度は99.8%ee、反応収率は48.5%(光学純度より算出した値)であった。
参考として、加水分解生成物である光学活性(R)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸の光学純度は94.2%ee、反応収率は51.5%(光学純度より算出した値)であった。
【0090】
実施例4
2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのラセミ体のアスペルギルス・フラバスATCC11492株由来のエステラーゼを用いた加水分解による光学分割(その4)
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)50.0gに2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのラセミ体10.6g(含量94.3%、5.75mmol)とMTBE20.0gとを懸濁させた。懸濁液を10℃に冷却後、固定化されたアスペルギルス・フラバスATCC11492株由来のエステラーゼ(公開特許公報2003−70471記載の方法により調製した)2.0g(水分率56%、酵素活性4028KU/Kg、ドライ換算)を加え、4%NaOH水溶液を適宜加えてpHを7.0〜7.5に維持しながら、10℃にて51時間撹拌した。その後、反応液をラヂオライト(濾過助剤、商品名:昭和化学工業製)を用いて濾過し、エステラーゼを除去した。得られた濾液を、メチルイソブチルケトン(MIBK)25gおよび12.5gで2回抽出した後、得られた有機層を合わせ、15%食塩水で洗浄することにより、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのMIBK溶液(光学純度98.9%ee、収率41.5%)を得た。なお、光学純度は、実施例1と同様に、HPLC〔Chiralpak AS−H、4.6mm×25cm(ダイセル社製)〕にて分析した。
【0091】
実施例5
2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのラセミ体のアスペルギルス・フラバスATCC11492株由来のエステラーゼを用いた加水分解による光学分割(その5)
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)50.0gに2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのラセミ体10.6g(含量94.3%、5.75mmol)とMTBE20.0gとを懸濁させた。懸濁液を10℃に冷却後、固定化されたアスペルギルス・フラバスATCC11492株由来のエステラーゼ(公開特許公報2003−70471記載の方法により調製した)2.0g(水分率56%、酵素活性4028KU/Kg、ドライ換算)を加え、4%NaOH水溶液を適宜加えてpHを7.5〜8.0に維持しながら、10℃にて48時間撹拌した。その後、反応液をラヂオライト(濾過助剤、商品名:昭和化学工業製)を用いて濾過し、エステラーゼを除去した。得られた濾液を、MIBK25gおよび12.5gで2回抽出した後、得られた有機層を合わせ、15%食塩水で洗浄することにより、光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステルのMIBK溶液(光学純度98.8%ee、収率40.3%)を得た。なお、光学純度は、実施例1と同様に、HPLC〔Chiralpak AS−H、4.6mm×25cm(ダイセル社製)〕にて分析した。
【0092】
参考例4
6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタン酸メチルエステルの合成
2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステル15.4g(含量84.4%、75.5mmol)をメタノール24.2g(0.75mol)に溶解させた後、オルトギ酸メチル40.1g(0.38mol)およびp−トルエンスルホン酸一水和物0.14g(0.75mmol)を加えて混合した。次いで、混合物を65℃まで昇温し、同温度で1.5時間反応させた。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却した。次に、反応混合物にトルエン39gおよび3%炭酸水素ナトリウム水溶液26gを加え、充分に撹拌した。反応混合物を分液後、得られた有機層を減圧濃縮することにより、6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタン酸メチルエステルの粗生成物22.8g(含量69.5%、反応収率95%)を得た。得られた6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタン酸メチルエステルの粗生成物は、そのまま次の反応へ用いた。
また、得られた6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタン酸メチルエステルの粗生成物の一部をカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状の6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタン酸メチルエステルを得た。
H−NMR(CDCl,300MHz):δ1.15(3H,d,J=7.0Hz),1.24(2H,s),1.27−1.47(3H,m),1.56−1.74(3H,m),2.45(1H,dt,J=7.0,14.0Hz),3.15(6H,s),3.67(3H,s).
【0093】
参考例5
7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンの合成(その1)
6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタン酸メチルエステルのラセミ体1.90g(含量84.4%、7.3mmol)をTHF4.8gに溶解させ、塩化リチウム0.93g(21.9mmol)と水素化ホウ素ナトリウム1.66g(含量90%、39.5mmol)とを順次加えて混合した。次いで、反応混合物にメタノール8.80gを室温で4時間かけて滴下した後、同温にて一晩撹拌した。次に、反応混合物に5%塩酸32.07gを室温にて滴下し、7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オン0.96g(収率90.7%)を含む均一溶液45.3gを得た。
【0094】
参考例6
7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンの合成(その2)
水素化アルミニウムリチウム0.74g(含量80%、15.6mmol)をTHF7.0gに懸濁させ、得られた懸濁液を0℃まで冷却した。次いで、6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタン酸メチルエステル2.37g(含量84.4%、9.2mmol)をTHF3.0gに溶解させた溶液を、懸濁液に0℃にて1.5時間かけて滴下した。次いで、同温にて反応混合物を3時間撹拌した後、メタノール1.47g(45.9mmol)を滴下して未反応の水素化アルミニウムリチウムをクエンチした。次に、反応混合物に2%水酸化ナトリウム水溶液2.74gを室温にて滴下した後、生じた水酸化アルミニウムをラヂオライト(濾過助剤、商品名:昭和化学工業製)を用いる濾過によって除去し、続いて酸処理をすることにより、7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オン1.07g(収率80.9%)を含む均一溶液を得た。
【0095】
実施例6
(S)−6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタン酸メチルエステルの合成
(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸メチルエステル21.52g(含量94.0%、0.117mol)をメタノール37.2g(1.16mol)に溶解させた後、オルトギ酸メチル62.4g(0.59mol)、p−トルエンスルホン酸一水和物0.22g(1.2mmol)を加え混合した。次いで反応混合物を65℃まで昇温し、同温度で3時間反応させた。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却した。次に反応混合物にトルエン61g、3%炭酸水素ナトリウム水溶液40.4gを加え、充分に撹拌した。分液後、得られた有機層を減圧濃縮することにより、(S)−6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタン酸メチルエステルの粗生成物25.14g(含量96.2%、反応収率94.4%)を得た。上記(S)−6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタン酸メチルエステルの粗生成物は、そのまま次の反応へ用いた。このとき、得られた(S)−6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタン酸メチルエステルの粗生成物の一部をカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状(S)−6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタン酸メチルエステルを得た。
[α]27 =22.6゜(5.01% in EtOH)
【0096】
実施例7
(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンの合成
水素化ホウ素リチウム0.65g(含量90%、26.6mmol)にTHF15gを加えた懸濁液に、(S)−6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタン酸メチルエステル5.13g(含量96.2%、22.6mmol)をTHF10gに溶解させたものを、室温にて滴下した。次いで反応混合物を55℃まで昇温し、同温度で9時間反応させることにより、(S)−6,6−ジメトキシ−2−メチルヘプタノールとした。次いで、この反応混合物にメタノール7.32gを室温でおよそ1時間かけて滴下した後、同温にて4時
間撹拌した。次いで、この反応混合物に5%塩酸25.08gを室温にて滴下し、同温にて更に30分撹拌した。この溶液をメチルイソブチルケトン15gおよび12.5gで2回抽出した後、得られた有機層を合わせ、15%炭酸ナトリウム水溶液10gで2回洗浄することにより、(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オン2.95g(収率89.5%)を含むMIBK溶液51.7gを得た。これを減圧下で溶媒を留去することにより(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンの粗生成物3.68gを淡黄色油状物として得た。このものは精製することなく次の反応に使用しても良いし、必要に応じて減圧蒸留により精製しても良い。なお、得られた(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンの粗生成物の一部を蒸留精製し、無色油状(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンを得た。
[α]27 =−13.9゜(5.03% in EtOH)
【0097】
参考例7
エステラーゼの取得
滅菌した液体培地(水1000mlにグリセロール5g、酵母エキス6g、リン酸1カリウム4g、リン酸2カリウム9.3gを溶解したもの)10mlに50mg/mlのアンピシリン水溶液10μlとE.coli JM105/pYHNK2株のグリセロールストック(特開2001−46084号公報参照)0.1mlとを加え30℃で9時間振盪した(得られた培養液を培養液Aと記す。)。
滅菌した液体培地(水13000mlにグリセロール225g、酵母エキス150g、総合アミノ酸F225g、リン酸1カリウム60g、硫酸マグネシウム36g、硫酸第1鉄7水和物0.6g及び塩化カルシウム2水和物を溶解し、さらに水を加えて全量を150000mlにしたもの)15000mlに4Mリン酸水溶液と14%(W/W)アンモニア水を加えpH7.0とした。ここに、上記の培養液A7.5mlを加え30℃で通気攪拌培養した。培養開始から14時間経過後に滅菌した液体培地(水1100gとグリセロール1500gの混合物に酵母エキス280g及び総合アミノ酸F420gを溶解したもの)を徐々に加えた。また、培養開始から18時間後にisopropyl thio -β-D-galactosideを50μMとなるように加えた。
培養開始から40時間後に、培養液にエタノール1950mlを加え、さらに30℃で24時間攪拌した。その後、この混合物を6000gとり、水6200gと混合した。この溶液を連続遠心処理(20000rpm、流速130g/min)して、遠心上清液11200gを得た。この遠心上清液にラジオライト#200(昭和化学工業株式会社商品名) 220gを加えて攪拌し、さらにラジオライト#200を通して濾過することにより、タンパク質の清澄液を得た。
【0098】
参考例8
エステラーゼの固定化
水洗したダイヤイオンHP20SS(三菱化学株式会社商品名)(ダイヤイオンHP20SS 12gと水300mlとを混合して30分間攪拌し、濾過し、さらに水400mlで洗浄したもの)と参考例7により製造したタンパク質の清澄液600gとを混合し、10℃で18時間攪拌した。その後、濾過し、水400gで洗浄して、固定化酵素12.5gを得た。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の製造方法によれば、光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オン(I)およびその前駆体である光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステル(III)を簡便に効率よく工業的に製造することができる。この光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オン(I)は、抗癌剤として使用されるエポチロン誘導体の合成において、C〜C12のビルディングブロックとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】


(式中、RはC1−5アルキル基を表す。)
で表される2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステルに、R体を優先的に加水分解し得る、アスペルギルス(Aspergillus)属の微生物由来のエステラーゼを作用させることにより光学分割する、式(III):
【化2】


(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
で表される光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
式(III):
【化3】


(式中、RはC1−5アルキル基を表す。)
で表される光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステルのカルボニル基を保護して、式(IV):
【化4】


(式中、Aは酸素原子または硫黄原子を表し、Rは前記と同じ意味を表し、RおよびRは、それぞれ独立してC1−5アルキル基を表すか、または互いに結合してC2−5アルキレン基を表す。)
で表される光学活性(S)−ケタールエステルを得る工程をさらに含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(IV):
【化5】


(式中、Aは酸素原子または硫黄原子を表し、RはC1−5アルキル基を表し、RおよびRは、それぞれ独立してC1−5アルキル基を表すか、または互いに結合してC2−5アルキレン基を表す。)
で表される光学活性(S)−ケタールエステルを還元して、式(V):
【化6】


(式中、A、RおよびRは、前記と同じ意味を表す。)
で表される光学活性(S)−ケタールアルコールを得る工程をさらに含む請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
式(II):
【化7】


(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
で表される2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステルに、R体を優先的に加水分解し得る、アスペルギルス属の微生物由来のエステラーゼを作用させることにより光学分割して、式(III):
【化8】


(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
で表される光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステルを得る工程;
式(III)で表される光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステルのカルボニル基を保護して、式(IV):
【化9】


(式中、Aは酸素原子または硫黄原子を表し、Rは前記と同じ意味を表し、RおよびRは、それぞれ独立してC1−5アルキル基を表すか、または互いに結合してC2−5アルキレン基を表す。)
で表される光学活性(S)−ケタールエステルを得る工程;
式(IV)で表される光学活性(S)−ケタールエステルを還元して、式(V):
【化10】


(式中、A、RおよびRは、前記と同じ意味を表す。)
で表される光学活性(S)−ケタールアルコールを得る工程;および
式(V)で表される光学活性(S)−ケタールアルコールを脱保護して、式(I):
【化11】


で表される光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンを得る工程;
を含む、式(I)で表される光学活性(S)−7−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン−2−オンの製造方法。
【請求項5】
式(III)で表される光学活性(S)−2−メチル−6−オキソヘプタン酸エステルの光学純度が95〜100%eeである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
がメチル基である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
およびRが、共にメチル基であるか、または互いに結合してエチレン基またはプロピレン基を表す請求項2〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
アスペルギルス属の微生物がアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
アスペルギルス属の微生物がアスペルギルス・フラバスATCC11492株である請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
式(IV’):
【化12】


(式中、Aは酸素原子または硫黄原子であり、R1’はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であり、かつR2’およびR3’は共にメチル基であるか、あるいは、Aは酸素原子または硫黄原子であり、R1’はメチル基であり、かつR2’およびR3’は互いに結合してエチレン基またはプロピレン基を表す。)
で表される光学活性(S)−ケタールエステル。
【請求項11】
Aが酸素原子であり、かつR1’、R2’およびR3’が共にメチル基である請求項10に記載の光学活性(S)−ケタールエステル。

【公開番号】特開2008−99661(P2008−99661A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75587(P2007−75587)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】